塗布装置
【課題】塗布液を無駄なく使用して環状のタイヤの内周に的確に塗布することができる塗布装置を提供する。
【解決手段】タイヤWを載置して塗布位置に搬入および塗布位置から搬出するタイヤ搬送手段2と、塗布位置に搬入されたタイヤWのビード部内周に接触可能な塗布ローラ3と、タイヤWと塗布ローラ3とを相対回転させて塗布ローラ3をタイヤWの内周に沿って相対移動させる駆動手段と、塗布ローラ3に塗布液を供給する塗布液供給手段と、塗布ローラ3から流下する余剰の塗布液を回収して前記塗布液供給手段に戻す塗布液循環手段と、を備えている。
【解決手段】タイヤWを載置して塗布位置に搬入および塗布位置から搬出するタイヤ搬送手段2と、塗布位置に搬入されたタイヤWのビード部内周に接触可能な塗布ローラ3と、タイヤWと塗布ローラ3とを相対回転させて塗布ローラ3をタイヤWの内周に沿って相対移動させる駆動手段と、塗布ローラ3に塗布液を供給する塗布液供給手段と、塗布ローラ3から流下する余剰の塗布液を回収して前記塗布液供給手段に戻す塗布液循環手段と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置に関し、更に詳しくは、タイヤ製造工程においてタイヤのビード部内周に潤滑液などの塗布液を塗布するのに好適な塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ製造工程においては、成型されたタイヤの重量バランスを検査する工程がある。この検査工程では、バランス検査装置に備えられた上下のリムにタイヤを嵌め込むことで装着し、その装着状態でタイヤを回転させることで当該タイヤにおける重量アンバランス箇所や重量アンバランス量を検査している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−15074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなバランス検査が終了したタイヤはリムから外されて次の工程へ搬送されるようになっている。そのため、バランス検査終了後にタイヤをリムから容易に取り外して次工程へ搬送させることができるように、タイヤをバランス検査装置に搬入する前に、当該タイヤのビード部に潤滑液を予め塗布することが行われている。このような塗布として、例えば、スプレー装置を用いて潤滑液を直接に、タイヤのビード部に吹付けることで塗布する方法が採用されている。
【0005】
しかし、タイヤのビード部へ、直接に、潤滑液を塗布液として吹き付ける塗布方法の場合、塗布を必要とする箇所以外の箇所にも潤滑液が吹き付けられることになる結果、タイヤ内部にその潤滑液が付着残留したり、周囲に潤滑液が飛散したりして当該潤滑液を無駄に消費してしまいやすく、そのうえ、潤滑液が周囲に霧散してしまって作業環境を悪化させてしまう要因にもなるおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、塗布液を無駄なく有効に使用できるようにしてタイヤの所定箇所にのみ的確に塗布することができる塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0008】
(1)本発明に係る塗布装置は、タイヤを塗布位置に搬入および塗布位置から搬出するタイヤ搬送手段と、前記塗布位置に搬入されたタイヤに接触可能な塗布ローラと、前記タイヤと当該タイヤに接触する前記塗布ローラとを相対回転させると共に、前記塗布ローラを前記タイヤの内周に沿って相対移動させる駆動手段と、前記塗布ローラに塗布液を供給する塗布液供給手段と、前記塗布ローラから流下する余剰の塗布液を回収して前記塗布液供給手段に戻す塗布液循環手段と、を備えている。
【0009】
「前記タイヤと当該タイヤに接触する前記塗布ローラとを相対回転させる」とは、タイヤと塗布ローラとの両方を回転させる場合、タイヤに接触する塗布ローラのみを回転させる場合、あるいは、タイヤのみを回転させる場合を含むものである。
【0010】
なお、タイヤと該タイヤに接触する前記塗布ローラとの両方を回転させる場合には、駆動手段は、前記両方を回転駆動してもよいし、あるいは、一方のみを回転駆動することによって、接触する他方を従動回転させるようにしてもよい。例えば、塗布ローラを遊転自在とし、タイヤを回転駆動して該タイヤに接触する塗布ローラを回転させてもよい。
【0011】
「塗布ローラをタイヤの内周に沿って相対移動させる」とは、塗布ローラをタイヤの内周に沿って移動させる場合、タイヤの内周を塗布ローラに沿わせながらタイヤを回転させる場合、あるいは、塗布ローラをタイヤの内周に沿って移動させると共に、タイヤの内周を塗布ローラに沿わせながらタイヤを回転させる場合を含むものである。
【0012】
タイヤ及び塗布ローラの回転は、一方向への回転であってもよいし、正逆両方向へ回転するものであってもよい。
【0013】
本発明の塗布装置によると、塗布液は必要量だけが塗布ローラからタイヤのビード部内周などの塗布箇所に転写塗布され、塗布箇所以外の箇所に付着残留したり、周囲に飛散するようなこともない。また、塗布ローラから流下する余剰の塗布液は回収されて再度塗布ローラに循環供給されることになり、無駄のない塗布を行うことができる。
【0014】
(2)本発明の塗布装置の別の実施態様では、前記塗布ローラをその軸方向に沿って移動させて、タイヤ搬送径路から外れた退避位置と、タイヤの中央孔に挿入した塗布作用位置とに切り替えるローラ移動手段と、前記塗布作用位置にある塗布ローラの先端側を固定の受け部材で受け止め支持するローラ姿勢保持手段とを備えている。
【0015】
この実施態様によると、塗布ローラは、タイヤから外れた退避位置では受け部材から外れた状態になり、塗布作用位置において受け部材に受け止め支持された一定姿勢となってタイヤからの押圧反力に耐える強度で保持されることになり、各種サイズのタイヤに対応できるように長い塗布ローラに構成しても姿勢変化なく安定して均一な塗布が行える。
【0016】
(3)本発明の塗布装置の好ましい実施態様では、前記駆動手段は、タイヤの外周面に押圧される一対の支持ローラを備え、タイヤの中央孔に挿入された前記塗布ローラと、前記一対の支持ローラとの3点接触状態でタイヤの位置を保持する。
【0017】
この実施態様によると、塗布位置に搬入されてきたタイヤの中央孔に塗布ローラを挿入した後、支持ローラをタイヤの外周面に押圧させることで、塗布ローラを塗布箇所に好適に接触させることができると共に、タイヤの位置を保持することができる。
【0018】
(4)本発明の塗布装置の別の実施態様では、前記タイヤ搬送手段は、タイヤをその中央孔が上下に向かう姿勢で載置して駆動される左右一対のコンベアを備えると共に、両コンベアを共に同方向へ駆動する状態と、両コンベアを互いに逆方向に駆動する状態とに切り換え可能としている。
【0019】
この実施態様によると、左右のコンベアを共に同方向に駆動することで、載置したタイヤを所定方向に移動させることができ、また、左右のコンベアを互いに逆方向に駆動することで、載置したタイヤをコンベア上で周方向に自転回動させることができ、タイヤを周方向に回転させる専用の駆動手段が不要となる、すなわち、タイヤ搬送手段を、駆動手段として兼用することができる。
【0020】
(5)本発明の塗布装置の別の実施態様では、前記塗布液供給手段は、前記塗布ローラの周りを囲む環状の噴出部を備え、前記噴出部から前記塗布ローラの外周面に塗布液を吹付けるものである。
【0021】
この実施態様によると、塗布ローラを回転させることなく、塗布ローラの外周面の全周に亘って環状の噴出部から塗布液を供給することができる。
【0022】
(6)本発明の塗布装置の更に別の実施態様では、前記塗布位置のタイヤに臨む箇所に、タイヤに取付けられたタイヤ情報記録媒体のタイヤ情報をタイヤの回転に伴って読み取るタイヤ情報読取手段を設け、前記駆動手段は、タイヤを塗布作用位置にある塗布ローラに対して回転させるものである。
【0023】
この実施態様によると、タイヤを回転させる塗布作業中に、タイヤ情報記録媒体からタイヤ情報を読取ることが可能となり、タイヤ情報を読取るための専用の工程が不要となり、全体としての処理サイクルの短縮化に有効となる。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明の塗布装置によれば、塗布液を無駄なく使用してタイヤのビード部内周などの塗布箇所に的確に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る塗布装置の縦断側面図である。
【図2】図2は図1の塗布装置の平面図である。
【図3】図3は図1の塗布装置の背面図である。
【図4】図4は図1の塗布装置における要部の斜視図である。
【図5】図5は図1の塗布装置による塗布処理状態の縦断側面図である。
【図6】図6は図1の塗布装置が備える塗布ローラの縦断側面図である。
【図7】図7は図1の塗布装置が備える塗布液供給手段の平面図である。
【図8】図8は図1の塗布装置が備えるタイヤ搬送手段の概略斜視図である。
【図9】図9は図1の塗布装置が備えるタイヤ支持ローラの駆動構造を示す斜視図である。
【図10】図10は図1の塗布装置による塗布の処理過程を説明する概略平面図である。
【図11】図11は図10の処理過程の次の処理過程を説明する概略平面図である。
【図12】図12は図11の処理過程の次の処理過程を説明する概略平面図である。
【図13】図13は図12の処理過程の次の処理過程を説明する概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態に係る塗布装置を詳細に説明する。図1に、本発明の一実施形態に係る塗布装置の縦断側面の構成を示し、図2に、その平面構成を示し、図3に、その背面構成を示し、図4に、その要部の構成を示し、図5に、塗布処理状態における塗布装置の縦断側面の構成を示す。
【0027】
これらの図を参照して実施形態の塗布装置1は、タイヤWの重量バランスを検査する図示略のバランス検査装置の搬送方向上手に隣接して設置されるものであって、該塗布装置1は、バランス検査装置のリムに嵌め付けて装着したタイヤWをバランス検査終了後に取り外すに際して、リムからの取り外しを容易にするため、タイヤにおけるビード部の内周にシリコーン溶液などの潤滑用の塗布液をバランス検査前に予め塗布するものである。
【0028】
塗布装置1には、搬入されてきたタイヤWをその中央孔が上下に向かう姿勢で載置して前方に向けて水平搬送するタイヤ搬送手段2、所定の塗布位置に搬送されてきたタイヤWの中央孔に挿抜される昇降可能な塗布ローラ3、塗布位置のタイヤWの外周を押圧して、塗布ローラ3とによるタイヤWに対して3点接触状態でタイヤ姿勢を保持する左右一対のタイヤ支持ローラ4、等が備えられている。
【0029】
図3及び図8等に示すように、タイヤ搬送手段2は、左右2組のコンベア5を並列配備して構成されている。各コンベア5は、装置フレーム6の上に左右に並列して立設したコンベアフレーム7に亘って多数の支軸8を所定の前後ピッチで左右水平に支持し、各支軸8にローラ9を遊転自在に支持したローラコンベアとして構成されている。なお、支軸8の多くは左右のコンベア5において共用されるが、塗布ローラ3を配備できるように両コンベア5間に形成した空間部においては支軸8が左右に分断されている。
【0030】
各ローラ9の横外端にはスプロケット10が固着されており、これらスプロケット10群と、装置フレーム6の後端部に取り付けた減速機付きのモータ11の駆動スプロケット12とに亘ってチェーン13が巻き掛けられて、各ローラ9が同調して回転駆動されるとともに、左右のコンベア5が独立して駆動されるようになっている。左右の各モータ11は、それぞれ駆動方向を正逆に切換え可能に構成されており、両コンベア5を共に正転駆動することで、載置したタイヤWを後方に向けて搬送することができる。
【0031】
また、両コンベア5を互いに逆向きに駆動することで、載置したタイヤWをその場で回転することができるようになっている。この実施形態では、搬送手段2を構成する両コンベア5は、左右一対のタイヤ支持ローラ4と共に、後述のようにタイヤWと該タイヤWに接触する塗布ローラ3とを相対回転させると共に、塗布ローラ3をタイヤWの内周に沿って相対移動させる駆動手段を構成する。
【0032】
タイヤ搬送手段2の前端部には、図2に示すように、タイヤWの搬入を検知するための反射型の光センサ14aおよびこれに対向する反射板14bが設置されると共に、タイヤ搬送手段2の後端部には、タイヤWの搬出を検知するための反射型の光センサ15aおよびこれに対向する反射板15bが配備されている。
【0033】
図6に示すように、塗布ローラ3は、中空に構成された芯筒16の外周を海綿繊維や毛織物などからなる塗布液含浸層17で囲繞して構成され、装置フレーム6に固定された縦長の液溜め槽18に上方から挿入されている。液溜め槽18の底部中心にはガイド軸19が立設固定されており、このガイド軸19に芯筒16が軸受けブッシュ20を介してスライド昇降および回転可能に挿嵌されている。
【0034】
液溜め槽18の後側には、ローラ移動手段としての昇降シリンダ21が縦向き姿勢で装置フレーム6に取り付けられており、そのピストンロッド21aの上端に備えた軸受けブラケット22に、芯筒16の上端支軸16aがベアリング23を介して回転可能に支持されている。なお、昇降シリンダ21の短縮によって塗布ローラ3が、図1及び図6に示すように最も下降された退避位置において、ローラ上端の軸受けブラケット22がタイヤ搬送手段2の搬送面より没入し、昇降シリンダ21が伸長して塗布ローラ3が、図5に示すように最も上昇した塗布作用位置において、塗布ローラ3が最大サイズのタイヤWよりも高く突出するように、塗布ローラ3の昇降ストロークが設定されている。
【0035】
図7に示すように、液溜め槽18の上部内方には、塗布ローラ3を囲む環状の噴出部としてのノズル24が配備されており、図6に示すように、別箇所のタンク25に貯留した塗布液を、ポンプ26によってノズル24に圧送して、塗布ローラ3に全周から吹き付け供給するよう構成されている。このノズル24は、塗布ローラ3に塗布液を供給する塗布液供給手段を構成する。
【0036】
液溜め槽18は、塗布ローラ3から流下した余剰の塗布液を回収するものであり、回収された塗布液を目の粗い第1フィルタ27および目の細かい第2フィルタ28を経てタンク25に戻して循環再使用するようになっている。この実施形態では、液溜め槽18、タンク25及びポンプ26等によって、過剰の塗布液を回収してノズル24に戻す塗布液循環手段が構成される。なお、タンク25には液面レベル計29が備えられ、塗布液の消費に応じて随時補給できるよう構成されている。
【0037】
タイヤ搬送径路の前部上方には、装置フレーム6から立設された門形フレーム30が設けられている。この門形フレーム30の左右中央部には、図1及び図4に示すように、ブラケット31を介してタイヤ情報読取り手段としてのバーコードリーダ32が下向きに配備されるとともに、前向き片持ち状に配備された前部ブラケット33を介して反射型の光センサ34aが下向きに設けられている。また、塗布ローラ3を支持する軸受けブラケット22の上面に、光センサ34aに対向する反射板34bが取り付けられている。
【0038】
さらに、前部ブラケット33の下面左右には下向きに開口した受け部材35が固着されるとともに、塗布ローラ3の上端部を支持する軸受けブラケット22の左右側面には、塗布ローラ3が上昇した際に前記受け部材35に係入される係合ピン36が備えられており、これら受け部材35と係合ピン36との係合によって、上昇された塗布ローラ3の振動や位置ズレを阻止するローラ姿勢保持手段が構成されている。
【0039】
装置フレーム6の左右横外側には、図2及び図9に示すように、縦向きの支点軸37が軸受けピロー38を介して回動可能に支持されており、各支点軸3の上端部に揺動アーム39がそれぞれ固着されるとともに、各揺動アーム39の遊端部に、搬入されたタイヤWの外周に押圧される支持ローラ4が遊転自在に軸支されている。
【0040】
一方の支点軸37に備えられた駆動アーム37aがシリンダ40によって揺動駆動されるとともに、この支点軸37に備えられた連係アーム37bと他方の支点軸37の駆動アーム37cとが連係リンク37dで連動連結されており、シリンダ40の伸縮作動によって左右の揺動アーム39が同調して支点a周りに内向き揺動および外向き揺動するようになっている。
【0041】
以上のように構成された塗布装置の塗布の動作を、図10ないし図13を参照して、説明する。
【0042】
(1)タイヤWが搬入されていない初期状態では、塗布ローラ3がタイヤ搬送装置2の搬送面より没入した退避位置まで下降されていると共に、左右のタイヤ支持ローラ4がタイヤ搬送径路の左右に退避されている。また、ノズル24からの塗布液噴射は常時行われており、塗布ローラ3の塗布液含浸層17には、塗布液が吸収含浸されている。なお、本発明の他の実施形態として、ノズル24からの塗布液の噴射を間欠的に行うようにしてもよい。
【0043】
(2)図10に示すように、成型されたタイヤWがタイヤ搬送手段2に搬入されてくると、これが光センサ14aで検知され、この検知に基づいてタイヤ搬送手段2の左右のコンベア5が共に正転方向に同調駆動され、タイヤWは前方に直進搬送されてゆく。
【0044】
(3)タイヤWの前半部が塗布ローラ3の上を通過すると、これが光センサ34aによって検知され、塗布ローラ3およびこれと一体に昇降する部位がタイヤWの中央孔に臨んだ状態でタイヤ搬送手段2は一旦停止される。
【0045】
(4)次に、塗布ローラ3が上昇されてタイヤWの中央孔に下方から挿通され、塗布作用位置に達すると、軸受けブラケット22に備えた係合ピン36が受け部材35に係入されると上昇が停止される。
【0046】
(5)次に、図11に示すように、タイヤ搬送手段2が所定短時間だけ正転駆動されてタイヤWが少し前進されてタイヤWにおけるビード部の内周が塗布ローラ3に接触支持されるとともに、シリンダ40が伸長作動して左右のタイヤ支持ローラ4が内向きに移動し、タイヤWの外周を前向きに押圧し、これら左右のタイヤ支持ローラ4と中央の塗布ローラ3との3点接触状態でタイヤWが所定の塗布位置に保持される。
【0047】
(6)このようにしてタイヤWが塗布位置に保持されると、図12に示すように、左右のコンベア5を互いに逆向きに駆動させる。これによって、上記3点接触状態を維持したままでタイヤWはその中心周りに回転されることになり、このタイヤ回転の間に、塗布ローラ3に周面に含浸されている塗布液がタイヤWのビード部内周に塗布されてゆく。
【0048】
(7)ビード部の上面には、タイヤWのサイズや個体識別情報などのタイヤ情報を記したタイヤ情報記録媒体としてのバーコードラベル41が予め貼り付けられており、上記したタイヤ回転塗布過程の間に、上方のバーコードリーダ32によってバーコードラベル41の読み取りが行われてタイヤ記録情報が取得され、このタイヤ情報は、タイヤWの重量バランスを検査するバランス検査装置に送信されて、検査に利用される。
【0049】
(8)タイヤWを1回以上回転させるに足る所要時間が経過すると、両コンベア5が停止されると共に、タイヤ支持ローラ4が退避位置まで復帰移動され、その後、塗布ローラ3が待機高さまで下降されて塗布処理が完了する。
【0050】
(9)塗布処理が完了すると、図13に示すように、タイヤ搬送手段2の両コンベア5が共に正転駆動されて、塗布処理の済んだタイヤWは前方に搬送されて行く。処理済みタイヤWの搬出は光センサ15aで検知され、塗布装置1のリセットや後続の装置へのタイヤ搬送の情報とされる。
【0051】
(他の実施形態)
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0052】
(1)塗布ローラ3をモータなどで回転駆動可能に構成するとともにノズル24をローラ周方向の一箇所に臨設し、塗布ローラ3をタイヤWの中央孔に挿入する過程で塗布ローラ3を自転させながらノズル24から塗布液を吹き付け供給するように構成することもできる。
【0053】
(2)塗布ローラ3における芯筒16の内部に塗布液を供給し、芯筒16に形成した多数の小孔から塗布液を外周の塗布液浸潤層17に供給することも可能である。
【0054】
(3)タイヤWの中央孔に挿入された塗布ローラ3の上端部を係入支持するローラ姿勢保持手段として、軸受けブラケット22の上に上向きに先細りのテーパピンを立設するとともに、前部ブラケット33に位置合わせ円形孔を形成した構造とし、上昇されてきたテーパピンを位置合わせ円形孔に案内係入させることで、塗布ローラ3の上端部が前後左右に動くことを阻止することもできる。
【0055】
(4)上記実施形態では、タイヤ搬送装置2における左右のコンベア5を互いに逆方向に回転することで塗布位置のタイヤWを回転させるようにしているが、タイヤ搬送装置2の適所で昇降可能な駆動ローラを別途配備し、この駆動ローラを上昇させてタイヤWをタイヤ搬送装置2から持ち上げ、この状態で駆動ローラを回転させてタイヤWを強制回転させることもできる。
【0056】
(5)上記実施形態では、塗布位置に搬入したタイヤWを塗布ローラ3に対して回転させて塗布処理を行うようにしているが、塗布位置のタイヤWを固定して、自転可能な塗布ローラ3をタイヤWの中心周りに回転移動させて、タイヤ内周に沿った塗布を行う形態とすることも可能である。
【0057】
(6)タイヤWに取付けたタイヤ情報記録媒体としては、バーコードラベルの他に、非接触型ICチップなどを利用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
2 タイヤ搬送手段
3 塗布ローラ
4 タイヤ支持ローラ
5 コンベア
24 ノズル
41 バーコードラベル
W タイヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置に関し、更に詳しくは、タイヤ製造工程においてタイヤのビード部内周に潤滑液などの塗布液を塗布するのに好適な塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ製造工程においては、成型されたタイヤの重量バランスを検査する工程がある。この検査工程では、バランス検査装置に備えられた上下のリムにタイヤを嵌め込むことで装着し、その装着状態でタイヤを回転させることで当該タイヤにおける重量アンバランス箇所や重量アンバランス量を検査している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−15074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなバランス検査が終了したタイヤはリムから外されて次の工程へ搬送されるようになっている。そのため、バランス検査終了後にタイヤをリムから容易に取り外して次工程へ搬送させることができるように、タイヤをバランス検査装置に搬入する前に、当該タイヤのビード部に潤滑液を予め塗布することが行われている。このような塗布として、例えば、スプレー装置を用いて潤滑液を直接に、タイヤのビード部に吹付けることで塗布する方法が採用されている。
【0005】
しかし、タイヤのビード部へ、直接に、潤滑液を塗布液として吹き付ける塗布方法の場合、塗布を必要とする箇所以外の箇所にも潤滑液が吹き付けられることになる結果、タイヤ内部にその潤滑液が付着残留したり、周囲に潤滑液が飛散したりして当該潤滑液を無駄に消費してしまいやすく、そのうえ、潤滑液が周囲に霧散してしまって作業環境を悪化させてしまう要因にもなるおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、塗布液を無駄なく有効に使用できるようにしてタイヤの所定箇所にのみ的確に塗布することができる塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0008】
(1)本発明に係る塗布装置は、タイヤを塗布位置に搬入および塗布位置から搬出するタイヤ搬送手段と、前記塗布位置に搬入されたタイヤに接触可能な塗布ローラと、前記タイヤと当該タイヤに接触する前記塗布ローラとを相対回転させると共に、前記塗布ローラを前記タイヤの内周に沿って相対移動させる駆動手段と、前記塗布ローラに塗布液を供給する塗布液供給手段と、前記塗布ローラから流下する余剰の塗布液を回収して前記塗布液供給手段に戻す塗布液循環手段と、を備えている。
【0009】
「前記タイヤと当該タイヤに接触する前記塗布ローラとを相対回転させる」とは、タイヤと塗布ローラとの両方を回転させる場合、タイヤに接触する塗布ローラのみを回転させる場合、あるいは、タイヤのみを回転させる場合を含むものである。
【0010】
なお、タイヤと該タイヤに接触する前記塗布ローラとの両方を回転させる場合には、駆動手段は、前記両方を回転駆動してもよいし、あるいは、一方のみを回転駆動することによって、接触する他方を従動回転させるようにしてもよい。例えば、塗布ローラを遊転自在とし、タイヤを回転駆動して該タイヤに接触する塗布ローラを回転させてもよい。
【0011】
「塗布ローラをタイヤの内周に沿って相対移動させる」とは、塗布ローラをタイヤの内周に沿って移動させる場合、タイヤの内周を塗布ローラに沿わせながらタイヤを回転させる場合、あるいは、塗布ローラをタイヤの内周に沿って移動させると共に、タイヤの内周を塗布ローラに沿わせながらタイヤを回転させる場合を含むものである。
【0012】
タイヤ及び塗布ローラの回転は、一方向への回転であってもよいし、正逆両方向へ回転するものであってもよい。
【0013】
本発明の塗布装置によると、塗布液は必要量だけが塗布ローラからタイヤのビード部内周などの塗布箇所に転写塗布され、塗布箇所以外の箇所に付着残留したり、周囲に飛散するようなこともない。また、塗布ローラから流下する余剰の塗布液は回収されて再度塗布ローラに循環供給されることになり、無駄のない塗布を行うことができる。
【0014】
(2)本発明の塗布装置の別の実施態様では、前記塗布ローラをその軸方向に沿って移動させて、タイヤ搬送径路から外れた退避位置と、タイヤの中央孔に挿入した塗布作用位置とに切り替えるローラ移動手段と、前記塗布作用位置にある塗布ローラの先端側を固定の受け部材で受け止め支持するローラ姿勢保持手段とを備えている。
【0015】
この実施態様によると、塗布ローラは、タイヤから外れた退避位置では受け部材から外れた状態になり、塗布作用位置において受け部材に受け止め支持された一定姿勢となってタイヤからの押圧反力に耐える強度で保持されることになり、各種サイズのタイヤに対応できるように長い塗布ローラに構成しても姿勢変化なく安定して均一な塗布が行える。
【0016】
(3)本発明の塗布装置の好ましい実施態様では、前記駆動手段は、タイヤの外周面に押圧される一対の支持ローラを備え、タイヤの中央孔に挿入された前記塗布ローラと、前記一対の支持ローラとの3点接触状態でタイヤの位置を保持する。
【0017】
この実施態様によると、塗布位置に搬入されてきたタイヤの中央孔に塗布ローラを挿入した後、支持ローラをタイヤの外周面に押圧させることで、塗布ローラを塗布箇所に好適に接触させることができると共に、タイヤの位置を保持することができる。
【0018】
(4)本発明の塗布装置の別の実施態様では、前記タイヤ搬送手段は、タイヤをその中央孔が上下に向かう姿勢で載置して駆動される左右一対のコンベアを備えると共に、両コンベアを共に同方向へ駆動する状態と、両コンベアを互いに逆方向に駆動する状態とに切り換え可能としている。
【0019】
この実施態様によると、左右のコンベアを共に同方向に駆動することで、載置したタイヤを所定方向に移動させることができ、また、左右のコンベアを互いに逆方向に駆動することで、載置したタイヤをコンベア上で周方向に自転回動させることができ、タイヤを周方向に回転させる専用の駆動手段が不要となる、すなわち、タイヤ搬送手段を、駆動手段として兼用することができる。
【0020】
(5)本発明の塗布装置の別の実施態様では、前記塗布液供給手段は、前記塗布ローラの周りを囲む環状の噴出部を備え、前記噴出部から前記塗布ローラの外周面に塗布液を吹付けるものである。
【0021】
この実施態様によると、塗布ローラを回転させることなく、塗布ローラの外周面の全周に亘って環状の噴出部から塗布液を供給することができる。
【0022】
(6)本発明の塗布装置の更に別の実施態様では、前記塗布位置のタイヤに臨む箇所に、タイヤに取付けられたタイヤ情報記録媒体のタイヤ情報をタイヤの回転に伴って読み取るタイヤ情報読取手段を設け、前記駆動手段は、タイヤを塗布作用位置にある塗布ローラに対して回転させるものである。
【0023】
この実施態様によると、タイヤを回転させる塗布作業中に、タイヤ情報記録媒体からタイヤ情報を読取ることが可能となり、タイヤ情報を読取るための専用の工程が不要となり、全体としての処理サイクルの短縮化に有効となる。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明の塗布装置によれば、塗布液を無駄なく使用してタイヤのビード部内周などの塗布箇所に的確に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る塗布装置の縦断側面図である。
【図2】図2は図1の塗布装置の平面図である。
【図3】図3は図1の塗布装置の背面図である。
【図4】図4は図1の塗布装置における要部の斜視図である。
【図5】図5は図1の塗布装置による塗布処理状態の縦断側面図である。
【図6】図6は図1の塗布装置が備える塗布ローラの縦断側面図である。
【図7】図7は図1の塗布装置が備える塗布液供給手段の平面図である。
【図8】図8は図1の塗布装置が備えるタイヤ搬送手段の概略斜視図である。
【図9】図9は図1の塗布装置が備えるタイヤ支持ローラの駆動構造を示す斜視図である。
【図10】図10は図1の塗布装置による塗布の処理過程を説明する概略平面図である。
【図11】図11は図10の処理過程の次の処理過程を説明する概略平面図である。
【図12】図12は図11の処理過程の次の処理過程を説明する概略平面図である。
【図13】図13は図12の処理過程の次の処理過程を説明する概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態に係る塗布装置を詳細に説明する。図1に、本発明の一実施形態に係る塗布装置の縦断側面の構成を示し、図2に、その平面構成を示し、図3に、その背面構成を示し、図4に、その要部の構成を示し、図5に、塗布処理状態における塗布装置の縦断側面の構成を示す。
【0027】
これらの図を参照して実施形態の塗布装置1は、タイヤWの重量バランスを検査する図示略のバランス検査装置の搬送方向上手に隣接して設置されるものであって、該塗布装置1は、バランス検査装置のリムに嵌め付けて装着したタイヤWをバランス検査終了後に取り外すに際して、リムからの取り外しを容易にするため、タイヤにおけるビード部の内周にシリコーン溶液などの潤滑用の塗布液をバランス検査前に予め塗布するものである。
【0028】
塗布装置1には、搬入されてきたタイヤWをその中央孔が上下に向かう姿勢で載置して前方に向けて水平搬送するタイヤ搬送手段2、所定の塗布位置に搬送されてきたタイヤWの中央孔に挿抜される昇降可能な塗布ローラ3、塗布位置のタイヤWの外周を押圧して、塗布ローラ3とによるタイヤWに対して3点接触状態でタイヤ姿勢を保持する左右一対のタイヤ支持ローラ4、等が備えられている。
【0029】
図3及び図8等に示すように、タイヤ搬送手段2は、左右2組のコンベア5を並列配備して構成されている。各コンベア5は、装置フレーム6の上に左右に並列して立設したコンベアフレーム7に亘って多数の支軸8を所定の前後ピッチで左右水平に支持し、各支軸8にローラ9を遊転自在に支持したローラコンベアとして構成されている。なお、支軸8の多くは左右のコンベア5において共用されるが、塗布ローラ3を配備できるように両コンベア5間に形成した空間部においては支軸8が左右に分断されている。
【0030】
各ローラ9の横外端にはスプロケット10が固着されており、これらスプロケット10群と、装置フレーム6の後端部に取り付けた減速機付きのモータ11の駆動スプロケット12とに亘ってチェーン13が巻き掛けられて、各ローラ9が同調して回転駆動されるとともに、左右のコンベア5が独立して駆動されるようになっている。左右の各モータ11は、それぞれ駆動方向を正逆に切換え可能に構成されており、両コンベア5を共に正転駆動することで、載置したタイヤWを後方に向けて搬送することができる。
【0031】
また、両コンベア5を互いに逆向きに駆動することで、載置したタイヤWをその場で回転することができるようになっている。この実施形態では、搬送手段2を構成する両コンベア5は、左右一対のタイヤ支持ローラ4と共に、後述のようにタイヤWと該タイヤWに接触する塗布ローラ3とを相対回転させると共に、塗布ローラ3をタイヤWの内周に沿って相対移動させる駆動手段を構成する。
【0032】
タイヤ搬送手段2の前端部には、図2に示すように、タイヤWの搬入を検知するための反射型の光センサ14aおよびこれに対向する反射板14bが設置されると共に、タイヤ搬送手段2の後端部には、タイヤWの搬出を検知するための反射型の光センサ15aおよびこれに対向する反射板15bが配備されている。
【0033】
図6に示すように、塗布ローラ3は、中空に構成された芯筒16の外周を海綿繊維や毛織物などからなる塗布液含浸層17で囲繞して構成され、装置フレーム6に固定された縦長の液溜め槽18に上方から挿入されている。液溜め槽18の底部中心にはガイド軸19が立設固定されており、このガイド軸19に芯筒16が軸受けブッシュ20を介してスライド昇降および回転可能に挿嵌されている。
【0034】
液溜め槽18の後側には、ローラ移動手段としての昇降シリンダ21が縦向き姿勢で装置フレーム6に取り付けられており、そのピストンロッド21aの上端に備えた軸受けブラケット22に、芯筒16の上端支軸16aがベアリング23を介して回転可能に支持されている。なお、昇降シリンダ21の短縮によって塗布ローラ3が、図1及び図6に示すように最も下降された退避位置において、ローラ上端の軸受けブラケット22がタイヤ搬送手段2の搬送面より没入し、昇降シリンダ21が伸長して塗布ローラ3が、図5に示すように最も上昇した塗布作用位置において、塗布ローラ3が最大サイズのタイヤWよりも高く突出するように、塗布ローラ3の昇降ストロークが設定されている。
【0035】
図7に示すように、液溜め槽18の上部内方には、塗布ローラ3を囲む環状の噴出部としてのノズル24が配備されており、図6に示すように、別箇所のタンク25に貯留した塗布液を、ポンプ26によってノズル24に圧送して、塗布ローラ3に全周から吹き付け供給するよう構成されている。このノズル24は、塗布ローラ3に塗布液を供給する塗布液供給手段を構成する。
【0036】
液溜め槽18は、塗布ローラ3から流下した余剰の塗布液を回収するものであり、回収された塗布液を目の粗い第1フィルタ27および目の細かい第2フィルタ28を経てタンク25に戻して循環再使用するようになっている。この実施形態では、液溜め槽18、タンク25及びポンプ26等によって、過剰の塗布液を回収してノズル24に戻す塗布液循環手段が構成される。なお、タンク25には液面レベル計29が備えられ、塗布液の消費に応じて随時補給できるよう構成されている。
【0037】
タイヤ搬送径路の前部上方には、装置フレーム6から立設された門形フレーム30が設けられている。この門形フレーム30の左右中央部には、図1及び図4に示すように、ブラケット31を介してタイヤ情報読取り手段としてのバーコードリーダ32が下向きに配備されるとともに、前向き片持ち状に配備された前部ブラケット33を介して反射型の光センサ34aが下向きに設けられている。また、塗布ローラ3を支持する軸受けブラケット22の上面に、光センサ34aに対向する反射板34bが取り付けられている。
【0038】
さらに、前部ブラケット33の下面左右には下向きに開口した受け部材35が固着されるとともに、塗布ローラ3の上端部を支持する軸受けブラケット22の左右側面には、塗布ローラ3が上昇した際に前記受け部材35に係入される係合ピン36が備えられており、これら受け部材35と係合ピン36との係合によって、上昇された塗布ローラ3の振動や位置ズレを阻止するローラ姿勢保持手段が構成されている。
【0039】
装置フレーム6の左右横外側には、図2及び図9に示すように、縦向きの支点軸37が軸受けピロー38を介して回動可能に支持されており、各支点軸3の上端部に揺動アーム39がそれぞれ固着されるとともに、各揺動アーム39の遊端部に、搬入されたタイヤWの外周に押圧される支持ローラ4が遊転自在に軸支されている。
【0040】
一方の支点軸37に備えられた駆動アーム37aがシリンダ40によって揺動駆動されるとともに、この支点軸37に備えられた連係アーム37bと他方の支点軸37の駆動アーム37cとが連係リンク37dで連動連結されており、シリンダ40の伸縮作動によって左右の揺動アーム39が同調して支点a周りに内向き揺動および外向き揺動するようになっている。
【0041】
以上のように構成された塗布装置の塗布の動作を、図10ないし図13を参照して、説明する。
【0042】
(1)タイヤWが搬入されていない初期状態では、塗布ローラ3がタイヤ搬送装置2の搬送面より没入した退避位置まで下降されていると共に、左右のタイヤ支持ローラ4がタイヤ搬送径路の左右に退避されている。また、ノズル24からの塗布液噴射は常時行われており、塗布ローラ3の塗布液含浸層17には、塗布液が吸収含浸されている。なお、本発明の他の実施形態として、ノズル24からの塗布液の噴射を間欠的に行うようにしてもよい。
【0043】
(2)図10に示すように、成型されたタイヤWがタイヤ搬送手段2に搬入されてくると、これが光センサ14aで検知され、この検知に基づいてタイヤ搬送手段2の左右のコンベア5が共に正転方向に同調駆動され、タイヤWは前方に直進搬送されてゆく。
【0044】
(3)タイヤWの前半部が塗布ローラ3の上を通過すると、これが光センサ34aによって検知され、塗布ローラ3およびこれと一体に昇降する部位がタイヤWの中央孔に臨んだ状態でタイヤ搬送手段2は一旦停止される。
【0045】
(4)次に、塗布ローラ3が上昇されてタイヤWの中央孔に下方から挿通され、塗布作用位置に達すると、軸受けブラケット22に備えた係合ピン36が受け部材35に係入されると上昇が停止される。
【0046】
(5)次に、図11に示すように、タイヤ搬送手段2が所定短時間だけ正転駆動されてタイヤWが少し前進されてタイヤWにおけるビード部の内周が塗布ローラ3に接触支持されるとともに、シリンダ40が伸長作動して左右のタイヤ支持ローラ4が内向きに移動し、タイヤWの外周を前向きに押圧し、これら左右のタイヤ支持ローラ4と中央の塗布ローラ3との3点接触状態でタイヤWが所定の塗布位置に保持される。
【0047】
(6)このようにしてタイヤWが塗布位置に保持されると、図12に示すように、左右のコンベア5を互いに逆向きに駆動させる。これによって、上記3点接触状態を維持したままでタイヤWはその中心周りに回転されることになり、このタイヤ回転の間に、塗布ローラ3に周面に含浸されている塗布液がタイヤWのビード部内周に塗布されてゆく。
【0048】
(7)ビード部の上面には、タイヤWのサイズや個体識別情報などのタイヤ情報を記したタイヤ情報記録媒体としてのバーコードラベル41が予め貼り付けられており、上記したタイヤ回転塗布過程の間に、上方のバーコードリーダ32によってバーコードラベル41の読み取りが行われてタイヤ記録情報が取得され、このタイヤ情報は、タイヤWの重量バランスを検査するバランス検査装置に送信されて、検査に利用される。
【0049】
(8)タイヤWを1回以上回転させるに足る所要時間が経過すると、両コンベア5が停止されると共に、タイヤ支持ローラ4が退避位置まで復帰移動され、その後、塗布ローラ3が待機高さまで下降されて塗布処理が完了する。
【0050】
(9)塗布処理が完了すると、図13に示すように、タイヤ搬送手段2の両コンベア5が共に正転駆動されて、塗布処理の済んだタイヤWは前方に搬送されて行く。処理済みタイヤWの搬出は光センサ15aで検知され、塗布装置1のリセットや後続の装置へのタイヤ搬送の情報とされる。
【0051】
(他の実施形態)
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0052】
(1)塗布ローラ3をモータなどで回転駆動可能に構成するとともにノズル24をローラ周方向の一箇所に臨設し、塗布ローラ3をタイヤWの中央孔に挿入する過程で塗布ローラ3を自転させながらノズル24から塗布液を吹き付け供給するように構成することもできる。
【0053】
(2)塗布ローラ3における芯筒16の内部に塗布液を供給し、芯筒16に形成した多数の小孔から塗布液を外周の塗布液浸潤層17に供給することも可能である。
【0054】
(3)タイヤWの中央孔に挿入された塗布ローラ3の上端部を係入支持するローラ姿勢保持手段として、軸受けブラケット22の上に上向きに先細りのテーパピンを立設するとともに、前部ブラケット33に位置合わせ円形孔を形成した構造とし、上昇されてきたテーパピンを位置合わせ円形孔に案内係入させることで、塗布ローラ3の上端部が前後左右に動くことを阻止することもできる。
【0055】
(4)上記実施形態では、タイヤ搬送装置2における左右のコンベア5を互いに逆方向に回転することで塗布位置のタイヤWを回転させるようにしているが、タイヤ搬送装置2の適所で昇降可能な駆動ローラを別途配備し、この駆動ローラを上昇させてタイヤWをタイヤ搬送装置2から持ち上げ、この状態で駆動ローラを回転させてタイヤWを強制回転させることもできる。
【0056】
(5)上記実施形態では、塗布位置に搬入したタイヤWを塗布ローラ3に対して回転させて塗布処理を行うようにしているが、塗布位置のタイヤWを固定して、自転可能な塗布ローラ3をタイヤWの中心周りに回転移動させて、タイヤ内周に沿った塗布を行う形態とすることも可能である。
【0057】
(6)タイヤWに取付けたタイヤ情報記録媒体としては、バーコードラベルの他に、非接触型ICチップなどを利用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
2 タイヤ搬送手段
3 塗布ローラ
4 タイヤ支持ローラ
5 コンベア
24 ノズル
41 バーコードラベル
W タイヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを塗布位置に搬入および塗布位置から搬出するタイヤ搬送手段と、
前記塗布位置に搬入されたタイヤに接触可能な塗布ローラと、
前記タイヤと当該タイヤに接触する前記塗布ローラとを相対回転させると共に、塗布ローラをタイヤの内周に沿って相対移動させる駆動手段と、
前記塗布ローラに塗布液を供給する塗布液供給手段と、
前記塗布ローラから流下する余剰の塗布液を回収して前記塗布液供給手段に戻す塗布液循環手段と、
を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記塗布ローラをその軸方向に沿って移動させて、タイヤ搬送径路から外れた退避位置と、タイヤの中央孔に挿入した塗布作用位置とに切り替えるローラ移動手段と、
前記塗布作用位置にある塗布ローラの先端側を固定の受け部材で受け止め支持するローラ姿勢保持手段と、
を備える請求項1記載の塗布装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、タイヤの外周面に押圧される一対の支持ローラを備え、 タイヤの中央孔に挿入された前記塗布ローラと、前記一対の支持ローラとの3点接触状態でタイヤの位置を保持する、
請求項1または2記載の塗布装置。
【請求項4】
前記タイヤ搬送手段は、タイヤをその中央孔が上下に向かう姿勢で載置して駆動される左右一対のコンベアを備えると共に、両コンベアを共に同方向へ駆動する状態と、両コンベアを互いに逆方向に駆動する状態とに切り換え可能とした、
請求項1ないし3のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項5】
前記塗布液供給手段は、前記塗布ローラの周りを囲む環状の噴出部を備え、前記噴出部から前記塗布ローラの外周面に塗布液を吹付ける、
請求項1ないし4のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項6】
前記塗布位置のタイヤに臨む箇所に、タイヤに取付けられたタイヤ情報記録媒体のタイヤ情報をタイヤの回転に伴って読み取るタイヤ情報読取手段を設け、
前記駆動手段は、タイヤを塗布作用位置にある塗布ローラに対して回転させる、
請求項1ないし5のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項1】
タイヤを塗布位置に搬入および塗布位置から搬出するタイヤ搬送手段と、
前記塗布位置に搬入されたタイヤに接触可能な塗布ローラと、
前記タイヤと当該タイヤに接触する前記塗布ローラとを相対回転させると共に、塗布ローラをタイヤの内周に沿って相対移動させる駆動手段と、
前記塗布ローラに塗布液を供給する塗布液供給手段と、
前記塗布ローラから流下する余剰の塗布液を回収して前記塗布液供給手段に戻す塗布液循環手段と、
を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記塗布ローラをその軸方向に沿って移動させて、タイヤ搬送径路から外れた退避位置と、タイヤの中央孔に挿入した塗布作用位置とに切り替えるローラ移動手段と、
前記塗布作用位置にある塗布ローラの先端側を固定の受け部材で受け止め支持するローラ姿勢保持手段と、
を備える請求項1記載の塗布装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、タイヤの外周面に押圧される一対の支持ローラを備え、 タイヤの中央孔に挿入された前記塗布ローラと、前記一対の支持ローラとの3点接触状態でタイヤの位置を保持する、
請求項1または2記載の塗布装置。
【請求項4】
前記タイヤ搬送手段は、タイヤをその中央孔が上下に向かう姿勢で載置して駆動される左右一対のコンベアを備えると共に、両コンベアを共に同方向へ駆動する状態と、両コンベアを互いに逆方向に駆動する状態とに切り換え可能とした、
請求項1ないし3のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項5】
前記塗布液供給手段は、前記塗布ローラの周りを囲む環状の噴出部を備え、前記噴出部から前記塗布ローラの外周面に塗布液を吹付ける、
請求項1ないし4のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項6】
前記塗布位置のタイヤに臨む箇所に、タイヤに取付けられたタイヤ情報記録媒体のタイヤ情報をタイヤの回転に伴って読み取るタイヤ情報読取手段を設け、
前記駆動手段は、タイヤを塗布作用位置にある塗布ローラに対して回転させる、
請求項1ないし5のいずれかに記載の塗布装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−96153(P2012−96153A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245301(P2010−245301)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000208444)大和製衡株式会社 (535)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000208444)大和製衡株式会社 (535)
【Fターム(参考)】
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