説明

塗抹標本作製装置

【課題】スライドガラス上への試料の塗抹を正確に行うことができ、しかも、塗抹に使用する器具を容易に洗浄することができる塗抹標本作製装置を提供すること。
【解決手段】試料容器から試料を採取し、所定位置にある長方形のスライドガラス7上面に試料を滴下し、スライドガラス7の長辺方向と直交するように配置された試料塗抹棒21をスライドガラス7の長辺方向に水平移動させることにより試料の塗抹を行う塗抹標本作製装置において、試料塗抹棒をステンレス製とし、この試料塗抹棒に溝を形成して塗抹部a(c)を画定し、この塗抹部a(c)の長さをスライドガラス7の短辺長さより小さくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿のような生体から採取した試料の塗抹標本を作製するための塗抹標本作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体から採取した試料を塗抹標本とし、細胞学的に病変を診断する細胞診が行われており、特に癌の診断に広く用いられている。
【0003】
試料の塗抹法として、例えば遠心沈渣塗抹法では、まず遠心操作による沈渣物をスライドガラスに滴下し、作業者がピペットやスポイトの腹、あるいは引きガラスを用いて塗抹する。
【0004】
ところが、作業者自身が塗抹する場合、大量の試料を処理することができない上、作業者の熟練度が低いと、スライドガラス上への試料の滴下量や塗抹領域の広さ、あるいは塗抹の際の押し圧等を均一にするのが困難である等の問題がある。
【0005】
そのため塗抹標本作製の自動化も図られており、例えば、特許文献1には、フィルター付プレパラートを用いてフィルター上に均一な塗抹標本を得るとともに残液の混入防止を図る技術が開示されている。この技術では、試料を採取した検体容器と廃液容器とをフィルター付プレパラートを装着できる作業プレートを介して支持し、この検体容器の底部と廃液容器の上部開口との間を試料が通過できる貫通孔を上下方向に有する吸盤で連結後、検体容器底部を穿孔することで塗抹標本を得るようにしており、検体容器と吸盤を使い捨てとしている。
【0006】
また、特許文献2には、引きガラスをスライドガラスに対して30°±10°の角度で接触させ、スプリングの弾性力を利用して所定圧力で押圧しながら引きガラスをスライドガラス上で摺動させることで、生体試料を自動的に塗抹する技術が開示されている。この技術では、使用された引きガラスを洗浄する洗浄部と、洗浄部に超音波を印加する超音波発生部を設けることで、使用された引きガラス上に堆積したタンパク質等の汚れを取り除き、引きガラスを繰り返し使用するようにしている。
【特許文献1】特開平10−221226号公報
【特許文献2】特開2003−83856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
作業者自身が塗抹する場合、上述のとおり、大量の試料を処理することができない上、スライドガラス上への試料の滴下量や塗抹領域の広さ、あるいは塗抹の際の押し圧等を均一にするのが困難である等の問題があり、塗抹の正確性に問題がある。
【0008】
また、自動機によって塗抹を行う場合でも、特殊な機器や消耗品が必要となり経済的な負担が発生したり、塗抹で使用する自動機内部の器具の洗浄が不十分であると良好な標本の作製が困難な場合があったりする等の問題がある。
【0009】
例えば、上記特許文献1の技術では、フィルター付プレパラートを用いて、一つの塗抹標本を得る毎に検体容器と吸盤とを廃棄するのでこれらが消耗品となる。また、特許文献1の技術では、大量の試料を自動的に処理することができない上に、試料を収納した検体容器単位で装置に設置後、作業者自身が鋭利な錐や千枚通し等で穿孔する必要があり、さらに、穿孔に替えて、検体容器にパイプ等を連結して真空装置を利用して送液する場合であっても、それら穿孔具やパイプ等の洗浄が問題となる。
【0010】
一方、上記特許文献2の技術は、引きガラスを用いて大量の試料を自動的に処理するものであり、さらに、その使用済み引きガラスを自動的に洗浄できるようにしたものであるが、引きガラスの洗浄のために特殊な機器や消耗品が必要となり経済的な負担が発生したり、引きガラスの洗浄が不十分であると良好な標本の作製が困難な場合があったりする等の問題がある。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、スライドガラス上への試料の塗抹を正確に行うことができ、しかも、塗抹に使用する器具を容易に洗浄することができる塗抹標本作製装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、試料容器から試料を採取し、所定位置にある長方形のスライドガラス上面に試料を滴下し、試料塗抹具をスライドガラス上で移動させることにより試料の塗抹を行う塗抹標本作製装置において、試料塗抹具をステンレス製の丸棒状の試料塗抹棒とし、この試料塗抹棒に溝を形成して塗抹部を画定し、この塗抹部の長さをスライドガラスの短辺長さより小さくし、試料塗抹棒の塗抹部をスライドガラスの長辺方向と直交するように配置するとともにスライドガラスの長辺方向に水平移動させることを特徴とするものである。
【0013】
このように、本発明では、塗抹に使用する試料塗抹具としてステンレス製の丸棒状の試料塗抹棒を用い、この試料塗抹棒に溝を形成することにより実際に試料を塗抹する塗抹部を画定する。そして、この試料塗抹棒の塗抹部をスライドガラスの長辺方向と直交するように配置するとともにスライドガラスの長辺方向に水平移動させることにより試料の塗抹を行う。このときに、塗抹部の長さはスライドガラスの短辺長さより小さく形成されているので、スライドガラスの短辺(幅)より狭い領域でスライドガラスからはみ出すことなく一定の塗抹領域の広さに、試料を正確に塗抹できる。さらに、試料塗抹棒は丸棒状の単純な形状であり、ステンレス製としているので、外部で容易に洗浄することができ、耐久性にも優れるので繰り返し使用することができる。なお、試料塗抹棒は試料の塗抹毎に交換を行う。
【0014】
本発明では、試料の種類や滴下された試料の滴下状態(試料の濃淡)に応じて、試料の滴下条件および塗抹条件を決定することが好ましい。これによって、より適切な試料の滴下条件および塗抹条件にて試料の塗抹を行うことができる、そのための具体的な手段としては、試料の種類に応じた試料の滴下条件および塗抹条件を記憶した装置管理コンピュータと、試料容器に付されたバーコードを読み取るバーコードリーダとを設け、装置管理コンピュータによって、バーコードリーダにより読み取られたバーコード情報に基づき試料の種類を特定する。そして、その試料の種類に応じた試料の滴下条件および塗抹条件を装置制御部に伝達する。装置制御部は、その試料の種類に応じた試料の滴下条件および塗抹条件に基づき装置を制御して試料の滴下および塗抹を実行する。
【0015】
さらに本発明では、スライドガラス上面に滴下された試料の濃淡を検出する試料濃淡検出器を設けることが好ましい。この場合、装置制御部は、試料濃淡検出器により検出された試料の濃淡情報により試料の塗抹条件を最終決定する。
【発明の効果】
【0016】
以上のとおり本発明によれば、溝により塗抹部を画定したステンレス製の試料塗抹棒を使用することで、スライドガラスからはみ出すことなく一定の塗抹領域の広さに、試料を正確に塗抹でき、良好な標本が作製できるようになる。
【0017】
また、ステンレス製の試料塗抹棒は、外部で容易に洗浄することができ、耐久性にも優れ、繰り返し使用することができるので、消耗品が不要であり経済的負担を軽減することができる。
【0018】
さらに、試料の種類や滴下された試料の滴下状態に応じて、試料の滴下条件および塗抹条件を決定することで、より適切な試料の滴下条件および塗抹条件にて試料の塗抹を行うことができ、より良好な標本が作製できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明を詳述する。
【0020】
<塗抹標本作製装置の全体構成および標本の作製工程>
図1は本発明の塗抹標本作製装置全体を示す平面図、図2は図1における試料容器搬送部4を示す正面図、図3は図1における供給スライドガラスストッカー部8およびスライドガラス供給部9を示す正面図、図4は図1におけるバーコードラベル貼り付け部11を示す側面図、図5は図1における試料塗抹部14を拡大した平面図、図6は図1における試料容器保持部15を示す正面図、図7は図1における試料吸引滴下部16を示す側面図、図8(a)は図1における試料塗抹棒ストッカー部20を示す正面図、図8(b)は同側面図、図9は図1におけるスライドガラス収納部23を示す側面図である。
【0021】
塗抹標本作製装置は、その制御用に基幹システム1、装置管理コンピュータ2および装置制御部3を備え、装置本体は、主に以下の構成からなる。なお、以下の説明において、X方向とY方向とは図1に示した方向であり、Z方向とは図1の紙面に垂直な方向である。
【0022】
(a)X走行軸4aおよびY走行軸4bに垂直昇降装置4cと水平旋回装置4dと試料容器掴み装置4eとバーコードリーダ4fが取り付けられている試料容器搬送部4(図2参照)
(b)試料容器6をセットする試料容器ストッカー部5
(c)供給用のスライドガラス7を段積みしてセットする供給スライドガラスストッカー部8(図3参照)
(d)垂直昇降装置9aにX方向スライド装置9bおよびY方向スライド装置9cが取り付けられているスライドガラス供給部9(図3参照)
(e)2本のベルト10aとステッピングモータ等からなるスライドガラス搬送部10
(f)Y方向スライド装置11aと2つのZ方向スライド装置11bと真空吸着装置11cとバーコードラベル発行部12が発行したバーコートラベル28を載置するバーコードラベル受け11dとからなるバーコードラベル貼り付け部11(図4参照)
(g)スライドガラス7に貼り付けるバーコードラベル28を発行するラベルプリンタが取り付けられているバーコードラベル発行部12
(h)スライドガラス7に貼り付けられたバーコードラベル28に印字されているバーコードの内容を読み取るバーコードリーダが取り付けられている貼り付けバーコードラベル読み取り部13
(i)垂直方向移動軸14aおよび水平方向移動軸14bに水平伸縮装置14cと試料塗抹棒掴み装置14dが取り付けられている試料塗抹部14(図5参照)
(j)スライド機構15aに試料容器掴み装置15bが取り付けられている2式の試料容器保持部15(図6参照)
(k)Y走行軸16aおよびZ走行軸16bに樹脂製チップ装着用ノズル16cとディスペンサ16dが取り付けられている試料吸引滴下部16(図7参照)
(l)樹脂製チップ18をセットするチップストッカー部17
(m)試料塗抹棒21をセットする試料塗抹棒ストッカー部20(図8参照)
(n)X走行軸23aおよびZ走行軸23bに水平伸縮装置23cとスライドガラス掴み装置23dが取り付けられているスライドガラス収納部23(図9参照)
(o)塗抹されたスライドガラスが収納される収納スライドガラスストッカー部24
以上の構成において、塗抹標本作製装置の自動運転の前に基幹システム1より装置管理コンピュータ2へ塗抹標本作製装置で塗抹を行おうとしている試料の詳細情報と、その試料の種類に応じた標本の作製条件(作製する標本数、試料の吸引量、滴下量等の試料の滴下条件、および塗抹条件等)が伝達され、その内容が蓄積される。
【0023】
塗抹標本作製装置の自動運転が開始されると、まず試料容器搬送部4が試料容器ストッカー部5へ移動し、試料容器ストッカー部5にセットされている試料容器6を1本ずつ掴み上げ、その試料容器を水平旋回させながらその試料容器6の側面に貼り付けられているバーコードラベル28に印字されているバーコードをバーコードリーダ4fで読み取る。試料容器搬送部4のバーコードリーダ4fで読み取ったバーコード情報は装置制御部3から装置管理コンピュータ2へ伝達される。
【0024】
装置管理コンピュータ2は装置制御部3から伝達されたバーコード情報をもとに、その試料の情報検索を行い、その試料の詳細情報と、その試料の種類に応じた標本の作製条件(作製する標本数、試料の吸引量、滴下量等の試料の滴下条件、および塗抹条件等)を装置制御部3へ伝達する。装置管理コンピュータ2から装置制御部3への情報伝送が終わると、装置制御部3は装置管理コンピュータ2から伝達された情報をもとに標本の作製を開始する。
【0025】
まず、スライドガラス供給部9が、複数枚のスライドガラス7が段積みされてセットされている供給スライドガラスストッカー部8の最下段から、作製する標本数分のスライドガラス7を1枚ずつX方向にスライドさせて取り出し、それをさらにY方向へスライドさせてスライドガラス搬送部10のベルト上に載せる。
【0026】
スライドガラス搬送部10はスライドガラス7が1枚載せられる毎に矢印Aの方向にピッチ送りを行い、スライドガラス7をバーコードラベル貼り付け部11へ搬送する。バーコードラベル貼り付け部11へスライドガラス7が搬送されると、バーコードラベル発行部12がそのスライドガラス7に応じたバーコードラベル28を発行し、バーコードラベル貼り付け部11がそのバーコードラベル28を真空吸着して搬送し、スライドガラス7に貼り付けを行う。
【0027】
スライドガラス7に貼り付けられたバーコードラベル28のバーコードに誤りがないかを確認するため、貼り付けバーコードラベル読み取り部13に取り付けられているバーコードリーダにて読み取りを行う。貼り付けバーコードラベル読み取り部13での読み取り確認で問題が無ければ再びスライドガラス搬送部10が矢印Aの方向にピッチ送りを行い、スライドガラス7は試料塗抹部14へと搬送される。
【0028】
スライドガラス7が試料塗抹部14へ搬送されると、試料容器搬送部4はバーコードの読み取りと情報の伝送が終了している試料容器6を試料容器保持部15へと搬送する。試料容器6が試料容器保持部15へと搬送されると、試料容器保持部15は試料容器6を試料の吸引位置へと搬送する。
【0029】
試料容器6が試料の吸引位置へ搬送されると試料吸引滴下部16がチップストッカー部17に移動し、樹脂製チップ18を装着する。試料吸引滴下部16は樹脂製チップ18を装着すると試料容器保持部15へと移動し、試料容器6の試料を吸引・吐出することにより混和を行った後、試料の吸引を行う。試料の吸引が終わったら試料吸引滴下部16は試料塗抹部14へ移動し、試料塗抹部14へ搬送されているスライドガラス7の上に、吸引している試料を滴下する。
【0030】
試料吸引滴下部16が試料をスライドガラス7へ滴下すると、試料吸引滴下部16はチップ廃棄部19へ移動し、装着している樹脂製チップ18の廃棄を行う。試料容器保持部15は試料容器6を元の位置へ搬送する。そして、試料容器搬送部4が試料容器保持部15から試料容器6を掴み上げ、試料容器ストッカー部5へ移動し、試料容器6を試料容器ストッカー部5へ収納する。
【0031】
試料吸引滴下部16により試料がスライドガラス7上に滴下された試料塗抹部14では試料塗抹部14が試料塗抹棒ストッカー部20にセットされている試料塗抹棒21を1本ずつ引き出して装着する。試料塗抹棒21を装着した試料塗抹部14は試料塗抹棒21を上下方向(Z方向)、およびスライドガラス7の長辺に沿って水平方向(Y方向)に移動させることによりスライドガラス7上に滴下されている試料の塗抹を行う。この塗抹動作については後で詳しく説明する。試料塗抹部14は試料の塗抹が終わると試料塗抹棒廃棄部22へ移動し、装着している試料塗抹棒21の廃棄を行う。
【0032】
試料塗抹部14での試料の塗抹が終わるとスライドガラス搬送部10が矢印Aの方向にピッチ送りを行い、スライドガラス7を搬送する。スライドガラス搬送部10上のスライドガラス7がスライドガラス収納部23へと搬送されると、スライドガラス収納部23がスライドガラス搬送部10上のスライドガラス7を掴み取り、収納スライドガラスストッカー部24へと搬送し、スライドガラス7を収納する。
【0033】
<試料塗抹部の動作の詳細>
図1および図5を参照して試料塗抹部14の動作の詳細を説明する。ここで、表1は図1の装置管理コンピュータ2が決定する標本の作製条件の例である。
【表1】

【0034】
スライドガラス搬送部10がスライドガラス7を試料塗抹部14へ搬送すると、スライドガラス位置決め・保持チャック25がスライドガラス7を掴み、スライドガラス7の位置を固定する。なお、図10には、スライドガラス位置決め・保持チャック25の側面図を示す。
【0035】
スライドガラス7の位置決めが完了すると、図1の試料吸引滴下部16が吸引している試料を、その試料の種類に応じて決定されている量(表1参照)だけスライドガラス7に滴下する。
【0036】
試料吸引滴下部16による試料の滴下が完了すると、試料濃淡検出器26がスライドガラス7の上に移動し、滴下されている試料へ光を照射し、その光の反射量でその試料の濃淡を検出し、その後元の位置に戻る。
【0037】
試料濃淡検出器26での試料の濃淡の検出が完了すると、図1の装置制御部3は、試料濃淡検出器26で検出した試料の濃淡情報と表1の標本の作製条件から試料塗抹棒21のスライドガラス7への接触圧、試料をスライドガラス7の短辺方向へ広げるための試料塗抹部・垂直方向移動軸14aの上下方向への駆動回数、および試料をスライドガラス7の長辺方向へ塗り広げるための試料塗抹部・水平方向移動軸14bの水平方向への移動距離等の試料の塗抹条件を最終的に決定する。
【0038】
試料の塗抹条件が決定されると、試料塗抹棒21を装着した試料塗抹部14がスライドガラス7の上に移動する。その後、試料塗抹部・垂直方向移動軸14aと試料塗抹部・水平方向移動軸14bが駆動して、試料塗抹棒21をスライドガラス7上に滴下されている試料に接触させる。そして、決定された塗抹条件に基づき、試料塗抹部・垂直方向移動軸14aを上下方向に駆動させることにより、滴下されている試料をスライドガラス7の短辺方向に広げ、その後、試料塗抹棒21をスライドガラス7の表面に接触させながら、試料塗抹部・水平方向移動軸14bを駆動させることにより、試料をスライドガラス7の長辺方向へ塗抹する。試料の塗抹が終わると試料塗抹部14は試料塗抹棒21を廃棄する。
【0039】
<試料塗抹棒の詳細>
図11は試料塗抹棒21の平面図、図12は試料塗抹棒21とスライドガラス7の位置関係を示す図である。
【0040】
試料塗抹棒21は円柱状のステンレス製の棒で、両端は面取り加工を施し、さらに2本の溝dが施されている。この溝dによって試料塗抹棒21のaとcの部分が塗抹部として画定されている。bはaとcとの間の中間部である。試料塗抹棒21のaとcの部分は同じ長さで、スライドガラス7の短辺長さよりも数ミリ程度小さくなるように画定されている。すなわち、この試料塗抹棒21が左右逆になっても同じ形状となり、一方がスライドガラス7に塗抹を行う塗抹部になると、他方は図5の試料塗抹棒掴み装置14dが試料塗抹棒21を把持する把持部となる。
【0041】
実際に塗抹を行う場合、図12に示すように試料塗抹棒21はスライドガラス7の長辺方向と直交し、かつスライドガラス7の淵から数ミリのところに試料塗抹棒21の先端が位置するように配置される。そうすると、試料塗抹棒21の塗抹部aあるいはcの長さがスライドガラスの短辺長さよりも小さいため、塗抹する試料がスライドガラス7からはみ出すことなく、図12に示す試料塗抹エリア27を正確に塗抹するができ、後の工程で行われるスライドガラス7へのカバーガラスの封入に支障がでることもない。
【0042】
また、この試料塗抹棒21はステンレス製としているので、試料塗抹棒廃棄部22から回収後、装置外部での各種洗浄液で容易に洗浄することができ、再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の塗抹標本作製装置全体を示す平面図である。
【図2】図1における試料容器搬送部を示す正面図である。
【図3】図1における供給スライドガラスストッカー部およびスライドガラス供給部を示す正面図である。
【図4】図1におけるバーコードラベル貼り付け部を示す側面図である。
【図5】図1における試料塗抹部を拡大した平面図である。
【図6】図1における試料容器保持部を示す正面図である。
【図7】図1における試料吸引滴下部を示す側面図である。
【図8】図1における試料塗抹棒ストッカー部を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図9】図1におけるスライドガラス収納部23を示す側面図である。
【図10】図5におけるスライドガラス位置決め・保持チャックを示す側面図である。
【図11】試料塗抹棒の平面図である。
【図12】試料塗抹棒とスライドガラスの位置関係を示す平面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 基幹システム
2 装置管理コンピュータ
3 装置制御部
4 試料容器搬送部
4a X走行軸
4b Y走行軸
4c 垂直昇降装置
4d 水平旋回装置
4e 試料容器掴み装置
4f バーコードリーダ
5 試料容器ストッカー部
6 試料容器
7 スライドガラス
8 供給スライドガラスストッカー部
9 スライドガラス供給部
9a 垂直昇降装置
9b X方向スライド装置
9c Y方向スライド装置
10 スライドガラス搬送部
10a ベルト
11 バーコードラベル貼り付け部
11a Y方向スライド装置
11b Z方向スライド装置
11c 真空吸着装置
11d バーコードラベル受け
12 バーコードラベル発行部
13 貼り付けバーコードラベル読み取り部
14 試料塗抹部
14a 垂直方向移動軸
14b 水平方向移動軸
14c 水平伸縮装置
14d 試料塗抹棒掴み装置
15 試料容器保持部
15a スライド機構
15b 試料容器掴み装置
16 試料吸引滴下部
16a Y走行軸
16b Z走行軸
16c 樹脂製チップ装着用ノズル
16d ディスペンサ
17 チップストッカー部
18 樹脂製チップ
19 チップ廃棄部
20 試料塗抹棒ストッカー部
21 試料塗抹棒
22 試料塗抹棒廃棄部
23 スライドガラス収納部
23a X走行軸
23b Z走行軸
23c 水平伸縮装置
23d スライドガラス掴み装置
24 収納スライドガラスストッカー部
25 スライドガラス位置決め・保持チャック
26 試料濃淡検出器
27 試料塗抹エリア
a 試料塗抹棒・塗抹部(把持部)
b 試料塗抹棒・中間部
c 試料塗抹棒・把持部(塗抹部)
28 バーコードラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料容器から試料を採取し、所定位置にある長方形のスライドガラス上面に試料を滴下し、試料塗抹具をスライドガラス上で移動させることにより試料の塗抹を行う塗抹標本作製装置において、
試料塗抹具をステンレス製の丸棒状の試料塗抹棒とし、この試料塗抹棒に溝を形成して塗抹部を画定し、この塗抹部の長さをスライドガラスの短辺長さより小さくし、試料塗抹棒の塗抹部をスライドガラスの長辺方向と直交するように配置するとともにスライドガラスの長辺方向に水平移動させることを特徴とする塗抹標本作製装置。
【請求項2】
試料の種類に応じた試料の滴下条件および塗抹条件を記憶した装置管理コンピュータと、試料容器に付されたバーコードを読み取るバーコードリーダとをさらに備え、装置管理コンピュータは、バーコードリーダにより読み取られたバーコード情報に基づき試料の種類を特定し、その試料の種類に応じた試料の滴下条件および塗抹条件を装置制御部に伝達する請求項1に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項3】
スライドガラス上面に滴下された試料の濃淡を検出する試料濃淡検出器をさらに備え、装置制御部は、試料濃淡検出器により検出された試料の濃淡情報により試料の塗抹条件を決定する請求項2に記載の塗抹標本作製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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