説明

塗料組成物、及びそれを用いた反射防止部材の製造方法、画像表示装置

【課題】煩雑な工程を行わずに、優れた反射防止性を有する反射防止部材を形成する塗料組成物であり、さらには優れた反射防止性、優れた耐擦傷性を有する反射防止部材の製造方法および画像表示装置を提供する。
【解決手段】2種類以上の無機粒子を含む塗料組成物であって、該2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類の無機粒子が、疎水性化合物Aにより表面処理された無機粒子(以後、疎水性化合物Aにより表面処理された無機粒子を、疎水性処理無機粒子とよぶ)であり、該塗料組成物の粘度変化(Δη)が、0.1mPa・s以上10mPa・s以下であることを特徴とする塗料組成物。(ここでΔηとは、せん断速度0.1s−1における粘度ηと、せん断速度10s−1における粘度ηの差(η−η)を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止部材に好適な塗料組成物、及び当該塗料組成物を用いて製造した反射防止部材、該反射防止部材を含む画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止部材は一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するようにディスプレイの最表面に配置される。
【0003】
このような反射防止部材として、支持基材上に(1)ハードコート層、(2)屈折率の高い物質からなる高屈折率層、(3)屈折率の低い物質からなる低屈折率層、を順に設けた3層構成が知られている。(特許文献1)
また、支持基材上に(1)ハードコート層と高屈折率層の2つの機能を兼ねた高屈折率ハードコート層、(2)低屈折率層、を順に設けた2層構成も提案されている。(特許文献2)
これらの構成とすることにより、支持基材に反射防止性と耐擦傷性の機能付加が可能である。また特許文献1は、支持基材上に計3回の塗布で機能付加しているのに対し、特許文献2は支持基材上に計2回の塗布で同等の機能を発現し、製造工程の簡略化を図っている。
【0004】
また製造工程を簡略化する別の方法として、ハードコート層を設けた支持基材上に、1回の塗布により高屈折率層と低屈折率層を同時に形成する製造方法が提案されている。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−254324号公報
【特許文献2】特開平9−226062号公報
【特許文献3】特開2008−70415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献2、3のいずれにおいても、製造工程が煩雑となるため更なる製造工程の簡略化が望まれていた。このような点から、製造工程の簡略化に加え、支持基材上に1回の塗布で反射防止性を付与することが強く望まれている。
【0007】
そこで本発明の目的は、支持基材上に1回のみ塗布することにより、優れた反射防止性を付与した反射防止部材を簡単な工程で製造可能な塗料組成物を提供することにあり、より好ましくは、ハードコート層を有さないフィルムを支持基材に用いた場合にも優れた反射防止性、耐擦傷性を同時に付与した反射防止部材を簡単な工程で製造可能な塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
1) 2種類以上の無機粒子を含む塗料組成物であって、
該2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類の無機粒子が、疎水性化合物Aにより表面処理された無機粒子(以後、疎水性化合物Aにより表面処理された無機粒子を、疎水性処理無機粒子とよぶ)であり、
該塗料組成物の粘度変化(Δη)が、0.1mPa・s以上10mPa・s以下であることを特徴とする塗料組成物。
(ここでΔηとは、せん断速度0.1s−1における粘度ηと、せん断速度10s−1における粘度ηの差(η−η)を表す。)
2) 前記塗料組成物が、以下の疎水性化合物Bを含むことを特徴とする、前記1)に記載の塗料組成物。
疎水性化合物Bとは、フッ素化合物B、長鎖炭化水素化合物B,及びシリコーン化合物Bからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である。
フッ素化合物Bとは、炭素数4以上のフルオロアルキル基を有する化合物である。
長鎖炭化水素化合物Bとは、炭素数8以上の炭化水素基を有する化合物である。
シリコーン化合物Bとは、シロキサン基を有する化合物である。
3) 前記疎水性化合物Bが、フッ素化合物Bを含み、
該フッ素化合物Bが、反応性部位を有し、さらに数平均分子量が300以上4000以下の化合物であることを特徴とする、前記2)に記載の塗料組成物。
4) 前記フッ素化合物Bが、下記一般式(A)のモノマー、一般式(B)のモノマー、一般式(A)のモノマーに由来するオリゴマー、及び一般式(B)のモノマーに由来するオリゴマーからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることを特徴とする前記3)に記載の塗料組成物。
【0009】
C=C(R)−COO−R−Rf1 ・・・一般式(A)
A−R−Rf1 ・・・一般式(B)
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rf1は炭素数4〜7の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、R、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、Aは反応性部位である。)
5) 前記疎水性処理無機粒子を除いた無機粒子を、他の無機粒子とした際に、前記塗料組成物が他の無機粒子を少なくとも1種類含有し、
疎水性処理無機粒子と他の無機粒子の含有比率(質量比率)が、疎水性処理無機粒子/他の無機粒子=1/30〜1/1であることを特徴とする、前記1)〜4)のいずれかに記載の塗料組成物。
6) 前記塗料組成物が、バインダー原料、溶媒を含有し、
バインダー原料、疎水性化合物B、溶媒が以下の関係を満たすことを特徴とする、前記2)〜5)のいずれかに記載の塗料組成物。
(バインダー原料、疎水性化合物B、溶媒)の三成分の質量比で決められる相図において、点A(90、0、10)、点B(100、0、0)、点C(0、100、0)、点D(0、90、10)で囲まれる領域内において、疎水性化合物Bがバインダー原料と分離する。
(但し、点ABCDで囲まれる領域とは、点ABCDで決められる台形の線上を含まない。)
7) 前記塗料組成物が、バインダー原料、溶媒を含有し、
バインダー原料、無機粒子(疎水性処理無機粒子と他の無機粒子との合計)、溶媒が以下の関係を満たすことを特徴とする、前記1)〜7)のいずれかに記載の塗料組成物。
(バインダー原料、無機粒子、溶媒)の三成分の質量比で決められる相図において、点E(50、0、50)、点F(0、50、50)、点G(0、0、100)で囲まれる領域内において、バインダー原料、無機粒子、溶媒からなる液のヘイズ値が10%以下である。
8) 前記1)〜7)のいずれかに記載の塗料組成物を、支持基材の少なくとも片面上に1回のみ塗布することにより、屈折率の異なる2層からなる反射防止層を形成することを特徴とする、反射防止部材の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、支持基材の少なくとも片面上に1回のみ塗布することにより、支持基材上に屈折率の異なる2層からなる反射防止層を形成することが可能な塗料組成物を得ることができる。そのため本発明の塗料組成物によれば、反射防止部材の製造工程が簡略化可能となるため、生産性を向上することができる。
【0011】
更には、本発明のより好ましい態様によれば、反射防止層を構成する屈折率の異なる2層として、高屈折率ハードコート層と低屈折率層を形成することが可能であり、良好な反射防止性、優れた耐擦傷性を示す、良好な反射防止部材を簡易な工程で製造可能な塗料組成物を得ることができる。つまり、ハードコート層を有さないフィルムを支持基材として用いた場合にも、反射防止性と耐擦傷性を同時に付与した反射防止部材を、生産性に優れた方法で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(バインダー原料、疎水性化合物B、溶媒)の三成分の相図
【図2】(バインダー原料、無機粒子(疎水性処理無機粒子と他の無機粒子との合計)、溶媒)の三成分の相図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
本発明は、2種類以上の無機粒子を含む塗料組成物であって、該2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類の無機粒子が、疎水性化合物Aにより表面処理された無機粒子であり、該塗料組成物の粘度変化(Δη)が、0.1〜10mPa・sであることを特徴とする。
【0015】
本発明の塗料組成物は、支持基材の少なくとも片面上に1回のみ塗布することにより、支持基材上に屈折率の異なる2層を形成することが可能であり、それにより反射防止性の良好な反射防止部材を形成することができる。そして本発明のより好ましい態様によれば、本発明の塗料組成物を支持基材の少なくとも片面上に1回のみ塗布することにより、支持基材上に屈折率の異なる2層を形成することができ、それにより反射防止性及び耐擦傷性の良好な反射防止部材を形成することができる。(ハードコート層の塗布乾燥、)高屈折率層の塗布乾燥、および低屈折率層の塗布乾燥といったプロセスが必要な通常の反射防止部材の製造方法と比べて、本発明の塗料組成物を用いた反射防止部材の製造方法は、コストを大幅に低減することができる。以下に本発明の各要件について説明する。
〔塗料組成物の粘度〕
本発明の塗料組成物は、2種類以上の無機粒子を含む塗料組成物であって、該2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類の無機粒子が、フッ素処理無機粒子等の疎水性処理無機粒子(疎水性処理無機粒子とは、疎水性化合物Aにより表面処理された無機粒子のことを意味し、フッ素処理無機粒子とは、フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子を意味する。以下同様である。)であり、該塗料組成物の粘度変化(Δη)が0.1mPa・s以上10mPa・s以下である。
【0016】
粘度変化(Δη)が10mPa・sより大きい場合、このような塗料組成物を用いて支持基材上に1回のみ塗布することで反射防止部材の製造を試みても、塗料組成物を塗布乾燥させる過程において、有機溶媒の揮発に伴い固形分濃度が上昇し、流動性が低下すると同時に、疎水性処理無機粒子同士の粒子間相互作用が大きくなり、または疎水性処理無機粒子同士が凝集体を形成し、疎水性処理無機粒子の空気側(最表面層)への移動が困難となり、屈折率差の大きな2層が得られず、その結果反射防止性が失われるという問題を生じる。
【0017】
一方、粘度変化(Δη)が0.1mPa・sよりも小さい場合には、前述の過程において疎水性処理無機粒子同士の粒子間相互作用の抑制、該粒子同士の凝集体形成が抑制できるものの、流動性が向上しすぎるために疎水性処理無機粒子の分離性が逆に困難となり、両層が混在するため、屈折率差の大きな2層が得られず、その結果反射防止性が失われるという問題を生じる。
【0018】
これらの点から、塗料組成物の粘度変化(Δη)としては、0.1mPa・s以上9mPa・s以下が好ましく、より好ましくは0.1mPa・s以上8mPa・s以下、さらに好ましくは0.1mPa・s以上7mPa・s以下である。
【0019】
ここで、該塗料組成物の粘度変化(Δη)とは、せん断速度0.1s−1における粘度ηとせん断速度10s−1における粘度ηの粘度の差(η−η)である。なお、せん断速度0.1s−1における粘度ηとせん断速度10s−1における粘度ηは、一般的な回転レオメーターを用いて測定することができる。
【0020】
ここでせん断速度とは、流体に対して与える歪みγの変化速度であり、数式1で表される。
【0021】
【数1】

【0022】
また、測定に用いる回転レオメーターによる測定原理は、2つの装置壁の相対的移動によって、間隙の試料にひずみを加えるもので、せん断速度やその時間変化を制御することができる。従って、定常流の粘度だけでなく、時間的に変化する流動の測定装置として用いることができる。
【0023】
回転レオメーターにて粘度を計る手法には、コーンアンドプレート型、プレートアンドプレート型、共軸円筒型の3通りが知られているが、本発明の塗料組成物の粘度であるηとηの測定は、測定結果の補正を必要としないコーンアンドプレート型、または共軸円筒型が適切であるが、必要液量が少なく、また簡便性に優れている点からコーンアンドプレート型により得られる値が最も適切であり、この方法により測定したものである。
【0024】
このコーンアンドプレート型は、円錐型の回転体(コーン)と静止した円板(プレート)が組み合わされたもので、円板と円錐の間の間隙角をδとなっている。円錐型の回転体と静止した円盤の間で試料をねじることにより測定を行い、円錐型の回転体を角速度Ωで回転させ、静止円板に作用するトルクMを測定する。このときの角速度Ωからせん断速度が、トルクMからせん断応力σが次の式のように得られる。
【0025】
【数2】

【0026】
【数3】

【0027】
さらに、粘度ηは次の式で表わされる。
【0028】
【数4】

【0029】
塗料組成物の粘度変化(Δη)を0.1mPa・s以上10mPa・s以下とするためには、塗料組成物中の2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類の無機粒子が、疎水性処理無機粒子であることが重要であり、さらに疎水性処理無機粒子に用いられた疎水性化合物Aとは別に、塗料組成物が疎水性化合物Bを含有することが好ましい。このようにすることで、塗料組成物の粘度変化(Δη)を好適に0.1mPa・s以上10mPa・s以下と制御することができる。
【0030】
また、塗料組成物の粘度変化(Δη)を0.1mPa・s以上10mPa・s以下と制御するためには、該塗料組成物が疎水性化合物Bを含有し、さらにバインダー原料として1分子中に3個以上のアクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートを有する塗料組成物とする方法も好ましい。
〔塗料組成物中に含まれる無機粒子〕
本発明の塗料組成物は、2種類以上の無機粒子を含む。そして無機粒子の種類数としては2種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは2種類以上10種類以下、さらに好ましくは2種類以上3種類以下であり、最も好ましくは2種類である。
【0031】
ここで無機粒子の種類とは、無機粒子を構成する元素の種類によって決まる(後述する疎水性処理無機粒子においては、表面処理される前の無機粒子を構成する元素の種類によって決まる。)。例えば、酸化チタン(TiO)と酸化チタンの酸素の一部をアニオンである窒素で置換した窒素ドープ酸化チタン(TiO2−x)とでは、無機粒子を構成する元素が異なるために、異なる種類の粒子である。また、同一の元素、例えばZn、Oのみからなる無機粒子(ZnO)であれば、その粒径が異なる無機粒子が複数存在しても、またZnとOとの組成比が異なっていても、これらは同一種類の無機粒子である。また酸化数の異なるZn粒子が複数存在しても、無機粒子を構成する元素が同一である限りは(この例ではZn以外の元素が全て同一である限りは)、これらは同一種類の無機粒子である。
【0032】
そして本発明の塗料組成物は、高屈折率層構成成分と、低屈折層構成成分とが混合されていることが好ましく、これにより本発明の塗料組成物を支持基材に1回のみ塗布することによって、高屈折率層、低屈折率層といった、支持基材上に屈折率の異なる2層からなる反射防止層を有する反射防止部材を得ることができる。
【0033】
本発明の塗料組成物における低屈折率層構成成分及び高屈折率層構成成分は、異なる種類の無機粒子で各々構成されることが好ましい。そのため、本発明の塗料組成物は、2種類以上の無機粒子を含むことが好ましい。以下、低屈折率層構成成分として好適な無機粒子及び高屈折率層構成成分として好適な無機粒子について述べる。
【0034】
初めに低屈折率層構成成分として好適に使用される無機粒子に関して説明する。本発明の塗料組成物の、2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類の無機粒子は、フッ素化合物A等の疎水性化合物Aにより表面処理された無機粒子(フッ素処理無機粒子等の疎水性処理無機粒子)であることが重要であり、この疎水性処理無機粒子が低屈折率層構成成分として好適である。この疎水性処理無機粒子の構成材料として好適な無機粒子としては、Si、Na、K、Ca、およびMgから選択される元素を含む無機粒子が好ましく挙げられ、さらに好ましくは、シリカ(SiO)、アルカリ金属フッ化物(NaF,KFなど)、およびアルカリ土類金属フッ化物(CaF、MgFなど)から選ばれる化合物を含む無機粒子であり、耐久性、屈折率などの点からシリカ粒子が特に好ましい。なお、フッ素化合物Aにより表面処理されたシリカ粒子は、以後フッ素処理シリカ粒子とよび、疎水性化合物Aにより表面処理されたシリカ粒子は、以後疎水性処理シリカ粒子とよぶ。
【0035】
疎水性処理無機粒子の構成材料の無機粒子として好ましく用いられるシリカ粒子とは、ケイ素化合物又は有機珪素化合物の重合(縮合)体のいずれかからなる組成物を含み成る粒子を指し、一般例として、SiOなどのケイ素化合物から導出される粒子の総称である。
【0036】
フッ素処理無機粒子等の疎水性処理無機粒子の構成材料である無機粒子の、表面処理される前の形状は特に限定されるものではないが、本発明の塗料組成物を用いて得られる反射防止部材に形成される層の屈折率の観点から、球状が好ましい。より好ましくは、疎水性処理無機粒子の構成材料である無機粒子がシリカ粒子であり、該シリカ粒子が中空及び/又は多孔質の形状であることが好ましい(中空シリカ粒子とは、粒子の内部に空洞を有するシリカ粒子であり、多孔質シリカ粒子とは、粒子の表面及び内部に細孔を有するシリカ粒子である。)。シリカ粒子などの無機粒子の形状が多面体構造であると、該粒子を含む塗料組成物を用いて得られた反射防止部材は、該反射防止部材の支持基材上の層中で隙間無く積層する可能性があり、画像表示装置に使用する際に必要な透明性が得られないことが考えられる。また、中空及び/又は多孔質を有するシリカ粒子などの無機粒子を用いることにより、得られる反射防止部材の支持基材上の反射防止層の一部である低屈折率層の密度を下げる効果が得られる。特に疎水性処理無機粒子の構成材料である無機粒子として、内部に空洞を有するシリカ粒子、並びに/または、表面及び内部に細孔を有するシリカ粒子を用いることが、該疎水性処理シリカ粒子が本発明の塗料組成物より得られる反射防止部材の低屈折率層に含有されやすく、低屈折率層を好適に形成することとなるために好ましい。なお、中空及び/又は多孔質を有するシリカ粒子のことを、以下中空粒子と記載する。
【0037】
続いて、低屈折率層に好適な、フッ素処理無機粒子等の疎水性処理無機粒子の構成材料である無機粒子の数平均粒子径について説明する。このような無機粒子の数平均粒子径(表面処理される前の数平均粒子径)が1nmよりも小さくなると、該粒子を含む塗料組成物より得られる反射防止部材における支持基材上の低屈折率層中の空隙密度が低下することによる屈折率の上昇や透明度の低下が起こることがあるため好ましくなく、無機粒子の数平均粒子径(疎水性化合物Aにより表面処理される前の数平均粒子径)が200nmよりも大きくなると、該粒子を含む塗料組成物より得られる反射防止部材の低屈折率層の厚さが厚くなり良好な反射防止性能が得られなくなり好ましくないため、本発明の塗料組成物中の、疎水性化合物Aにより表面処理される無機粒子は、数平均粒子径(表面処理される前の数平均粒子径)が、好ましくは1nmから200nm、より好ましくは5nmから180nm、更に好ましくは5nmから100nmである。
【0038】
なお、粒子の数平均粒子径は、後述するように透過型電子顕微鏡により反射防止部材の断面構造を観察することにより求めることができるが、疎水性処理無機粒子の外径を求める際は、表面処理に使用した疎水性化合物A等は観察できない。そのため、透過型電子顕微鏡により求めた疎水性処理無機粒子の数平均粒子径も、1nmから200nmが好ましく、5nmから180nmがより好ましく、5nmから100nmが更に好ましい。
【0039】
ここで数平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡により求めた粒子径をいう。倍率は50万倍とし、その画面に存在する10個の粒子の外径を測定し、その平均値とした。
【0040】
ここで外径とは、粒子の最大の径(つまり粒子の長径であり、粒子中の最も長い径を示す)を表し、内部に空洞を有する粒子の場合も同様に、粒子の最大の径を表す。
【0041】
フッ素処理無機粒子等の疎水性処理無機粒子は、好適に空気側(最表面層)へ移動して、好適に低屈折率層を形成することができるため、塗料組成物に用いられる2種類以上の無機粒子の少なくとも1種類の無機粒子には、疎水性化合物Aによる表面処理がされていることが重要である。なお、2種類以上の無機粒子の全ての無機粒子が疎水性処理無機粒子であるよりも、疎水性処理無機粒子と、該表面処理をされていない他の無機粒子(以後、疎水性処理無機粒子を除いた無機粒子を、他の無機粒子という)の両方を含む塗料組成物を用いる方が、屈折率差の大きい2層を得ることができるために、反射防止性の点で好ましい。つまり、本発明の塗料組成物においては、疎水性処理無機粒子と他の無機粒子の両方を各々少なくとも1種類含むことが好ましい。なお、他の無機粒子は高屈折率層構成成分として好適に使用されるので、後ほど説明する。
【0042】
また、フッ素化合物A等の疎水性化合物Aによる表面処理を施した無機粒子としては、中空シリカ粒子などのシリカ粒子であることが、つまり疎水性処理無機粒子としては、疎水性処理中空シリカ粒子であることが特に好ましい。
【0043】
中空シリカなどの無機粒子に対するフッ素化合物A等の疎水性化合物Aによる表面処理工程は、一段階で行われても良いし、多段階で行われても良い。また、複数の段階で疎水性化合物Aを用いても良いし、一つの段階のみで疎水性化合物Aを用いても良い。
【0044】
また中空シリカなどの無機粒子の表面処理工程にて好ましく用いられるフッ素化合物A等の疎水性化合物Aは、単一化合物でも良いし複数の異なる化合物を用いても良い。
【0045】
フッ素化合物A等の疎水性化合物Aによる表面処理とは、中空シリカ粒子などの無機粒子を化学的に修飾し、中空シリカ粒子などの無機粒子に疎水性化合物Aを導入する工程をさす。
【0046】
ここで疎水性化合物Aとは、分子中に疎水基と反応性部位とを有する化合物を表す。本発明における疎水性化合物Aの疎水基は、一般に疎水的な機能を有すれば特に限定されないが、疎水基の具体例としては、炭素数4以上のフルオロアルキル基、炭素数8以上の炭化水素基、及びシロキサン基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基が例示される(なお、以下の説明においては、炭素数4以上のフルオロアルキル基と反応性部位とを有する化合物を、フッ素化合物Aといい、炭素数8以上の炭化水素基と反応性部位とを有する化合物を、長鎖炭化水素化合物Aといい、シロキサン基と反応性部位とを有する化合物を、シリコーン化合物Aという。)。
【0047】
中空シリカ粒子などの無機粒子に直接フッ素化合物A等の疎水性化合物Aを導入する方法は、1分子中に疎水性セグメントとシリルエーテル基(シリルエーテル基が加水分解されたシラノール基を含む)との両方を持つ疎水性化合物を少なくとも1種類以上と開始剤とを共に撹拌することにより成される方法がある。しかし中空シリカ粒子などの無機粒子に直接疎水性化合物Aを導入する場合、反応性の制御が困難になったり、塗料化後塗布時に塗布斑等が発生しやすくなったりする場合がある。
【0048】
また中空シリカ粒子などの無機粒子にフッ素化合物Aなどの疎水性化合物Aにより表面処理を行って、中空シリカ粒子などの無機粒子にフルオロアルキル基等の疎水基を導入する更なる方法としては、中空シリカ粒子などの無機粒子を架橋成分にて処理し、疎水性化合物Aとつなぎ合わせる方法がある。このように疎水基を導入するためには反応性部位が必要となるが、このような分子中に疎水基と1種以上の反応性部位とを有する化合物である疎水性化合物Aとしては、長鎖炭化水素化合物A、シリコーン化合物A、及びフッ素化合物Aからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることが好ましい。
【0049】
疎水性化合物Aとして好適な長鎖炭化水素化合物A、シリコーン化合物A、フッ素化合物Aは、1種以上の反応性部位を分子中に有することが重要である。反応性部位としては、光または熱などのエネルギーを受けて発生したラジカルなどにより化学反応する部位であり、具体例としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基などの光または熱などのエネルギーをうけて化学反応する反応性部位を有することがより好ましい。
【0050】
長鎖炭化水素化合物Aは、分子中に疎水基である炭素数8以上の炭化水素基と、反応性部位とを有する化合物を表す。炭素数8以上の炭化水素基は、炭素数が8以上30以下であることが好ましい。また炭素数8以上の炭化水素基は、直鎖構造、分岐構造、脂環構造を問わず選択することができる。長鎖炭化水素化合物Aとしてより好ましくは、炭素数10以上22以下の直鎖状のアルキルアルコール、アルキルエポキシド、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アルキルカルボキシレート(酸無水物及びエステル類を含む)、などを用いることができる。
【0051】
長鎖炭化水素化合物Aの具体例としては、オクタノール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ステアリルアルコール、などの多価アルコール、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、2−ヒドロキシオクチルアクリレート、2−ヒドロキシオクチルメタクリレート、などのアクリレート(メタクリレート)、オクチルトリメトキシシランなどのアクリルシラン、などが挙げられる。
【0052】
シリコーン化合物Aは、分子中に疎水基であるシロキサン基と、反応性部位とを有する化合物を表す。シリコーン化合物Aの反応性部位は、(メタ)アクリレート基が好ましく用いられる。
【0053】
またシロキサン基としては、一般式(C)で示されるポリシロキサン基が好ましく用いられる。
−(Si(R)(R)−O)−・・・一般式(C)
(mは10〜200のいずれかの整数。)
(R、Rは特に限定されないが、炭素数1〜6のいずれかのアルキル基、フェニル基、3−アクリロイル−2−ヒドロキシプロピルシロキサン基、2−アクリロイル−3−ヒドロキシプロピルシロキサン基、末端アクリレート基を有するポリエチレングリコールプロピルエーテル基、末端ヒドロキシ基を有するポリエチレングリコールプロピルエーテル基、等から選択される。)
疎水基として一般式(C)のポリシロキサン基を有するシリコーン化合物Aの具体例は、下記一般式(III)で表されるジメチルシロキサン基と、さらに反応性部位とを有する化合物が挙げられる。ここで、kは0または1の整数、Rは炭素数1以上7以下のアルキルを表す。一般式(III)のジメチルシロキサン基と、さらに反応性部位とを有するシリコーン化合物Aの具体例として、X−22−164B,X−22−164C,X−22−5002、X−22−174D、X−22−167B(以上商品名、信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0054】
【数5】

【0055】
また、疎水基として一般式(C)のポリシロキサン基と反応性部位とを有するシリコーン化合物Aの別の具体例は、一般式(IV)で表される、メチル−3−アクリロイル−2−ヒドロキシプロピルシロキサン基、一般式(V)で表される、メチル−2−アクリロイル−3−ヒドロキシプロピルシロキサン基、を有する化合物を例示することができる。
【0056】
【数6】

【0057】
【数7】

【0058】
さらに疎水基として一般式(C)のポリシロキサン基と反応性部位とを有するシリコーン化合物Aの別の具体例は、一般式(VI)で表される、末端アクリレート基を有するポリエチレングリコールプロピルエーテル基(xは1〜10の整数。)とメチル基とを有する化合物、一般式(VII)で表される、末端ヒドロキシ基を有するポリエチレングリコールプロピルエーテル基(xは、1〜10の整数である。)とメチル基とを有する化合物を例示できる。
【0059】
【数8】

【0060】
【数9】

【0061】
フッ素化合物Aは、分子中に炭素数4以上のフルオロアルキル基と、反応性部位とを有する化合物を表す。なおフルオロアルキル基は、直鎖構造または分岐構造のいずれを用いることも可能である。またフルオロアルキル基としては、炭素数4以上8以下であることが好ましい。このようなフッ素化合物Aとしては、フルオロアルキルアルコール、フルオロアルキルエポキシド、フルオロアルキルハライド、フルオロアルキルアクリレート、フルオロアルキルメタクリレート、フルオロアルキルカルボキシレート(酸無水物及びエステル類を含む)、などを用いることができる。
【0062】
本発明におけるフッ素化合物A中のフルオロアルキル基の数は必ずしも一つである必要はなく、フッ素化合物Aは複数のフルオロアルキル基を有してもよい。
【0063】
なお、本発明でいうフルオロアルキル基とは、アルキル基が持つ全ての水素がフッ素に置き換わった置換基であり、フッ素原子と炭素原子のみから構成される置換基である。
【0064】
前述の通り疎水性化合物Aとしては、長鎖炭化水素化合物A、シリコーン化合物A、及びフッ素化合物Aからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物が好ましく用いられるが、フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子は、低表面エネルギーを有し、好適に空気側(最表面層)へ移動して、特に好適に低屈折率層を形成することができる点から、疎水性化合物Aとしてはフッ素化合物Aが特に好ましく、本発明の塗料組成物は疎水性処理無機粒子としてフッ素処理無機粒子を含有することが特に好ましい。
【0065】
また前述の疎水性化合物Aは、中空シリカ粒子などの無機粒子に対して直接表面処理することで、疎水性処理無機粒子を得ることもできるが、疎水性化合物Aによる表面処理前に、無機粒子を架橋成分にて表面処理しておくことが好ましい。中空シリカ粒子などの無機粒子を架橋成分にて処理する際の架橋成分としては、分子内にフッ素元素などの疎水基は無いが、フッ素化合物A等の疎水性化合物Aと反応可能な反応性二重結合基と、中空シリカ粒子などの無機粒子と反応可能な部位とを少なくとも一カ所ずつ持っている化合物を挙げることができる。そして、中空シリカ粒子などの無機粒子と反応可能な部位としては、反応性の観点からシリルエーテル及びシリルエーテルの加水分解物であることが好ましい。これら化合物は一般的にシランカップリング剤と呼ばれ、例としては、グリシドキシアルコキシシラン類、アミノアルコキシシラン類、アクリロイルシラン類、メタクリロイルシラン類、ビニルシラン類、メルカプトシラン類、などを用いることができる。
【0066】
またこのような架橋成分としては、以下の一般式(I)の化合物が好ましい。つまり、本発明の塗料組成物に好適な疎水性処理無機粒子は、無機粒子を下記一般式(I)の架橋成分で一度処理し、それに続けて疎水性化合物Aで処理する方法が好ましい。このように2段階で処理することで、無機粒子に対して疎水性化合物Aを処理しやすくなるため好ましい。
【0067】
B−R−SiR(OR3−n 一般式(I)
さらにこのような2段階で処理することで得られる疎水性処理無機粒子に関して、本発明の塗料組成物に好適な疎水性処理無機粒子のより好ましい形態は、シリカ粒子(特に中空シリカ粒子)を架橋成分である下記一般式(I)で示される化合物で処理し、更に下記一般式(II)で示されるフッ素化合物Aで処理した粒子である。
B−R−SiR(OR3−n 一般式(I)
D−R−Rf2 一般式(II)
(上記一般式中のB、Dは反応性二重結合基を示す。R、Rは、炭素数1から3のアルキレン基及びそれらから導出されるエステル構造を示す。R、Rは水素又は炭素数が1から4のアルキル基を示す。Rf2はフルオロアルキル基を示す。nは0から2の整数を示し、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。)
本発明における反応性二重結合基とは、反応性部位の一種であり、光または熱などのエネルギーを受けて発生したラジカルなどにより化学反応する官能基であり、具体例としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。
【0068】
一般式(I)の具体例としては、アクリロキシエチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシブチルトリメトキシシラン、アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、アクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン及びこれら化合物中のメトキシ基が他のアルコキシル基及び水酸基に置換された化合物を含むものなどが挙げられる。
【0069】
一般式(II)のフッ素化合物Aとしては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフロオロプロピルアクリレート、2−パーフルオロブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロデシルエチルアクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−3−メトキシブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−パーフルオロブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロデシルエチルメタクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−3−メチルブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1−トリフルオロメチルトリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0070】
分子中にフルオロアルキル基Rf2を有さない一般式(I)で表される化合物を用いることにより、簡便な反応条件で、中空シリカなどのシリカ粒子表面を修飾することが可能となるばかりではなく、シリカ粒子表面に反応性を制御しやすい官能基である反応性二重結合基を導入することが可能となり、その結果、反応性部位の一種である反応性二重結合基及びフルオロアルキル基Rf2を有するフッ素化合物A(一般式(II))を、一般式(I)で示される化合物を介して、シリカ粒子表面で反応させることが可能になる。
【0071】
ここで、前述したシリカ粒子及び一般式(I)で表される化合物、一般式(II)で表される化合物は、本発明で用いられる塗料組成物中では、シリカ粒子を一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表されるフッ素化合物Aにより表面処理して縮合体および/または重合体として存在していることが、シリカ粒子の低屈折率化を可能とし、低屈折率層を好適に形成可能であるため好ましい。
【0072】
なお、低屈折率層とは支持基材上に積層される屈折率の異なる2層からなる反射防止層中のうちの1層であり、隣接する1層(反射防止フィルム構成層であり空気層を除く)よりも相対的な屈折率が低い層である。上述のように本発明の製造方法により得られる反射防止部材は、支持基材、高屈折率層、低屈折率層がこの順に形成されることが好ましい。
【0073】
続いて前記フッ素処理無機粒子等の疎水性処理無機粒子を除いた他の無機粒子に関して説明する。疎水性処理無機粒子を除いた他の無機粒子は、高屈折率層構成成分として好適に用いられる。
【0074】
前記フッ素処理無機粒子等の疎水性処理無機粒子を除いた他の無機粒子は、特に限定されないが、金属や半金属の酸化物であることが好ましく、Zr,Ti,Al,In,Zn,Sb,Sn,およびCeよりなる群から選ばれる少なくとも一つの金属や半金属の酸化物粒子であることがさらに好ましい。また高屈折率層構成成分として好適に用いられる無機粒子は、シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子が好ましく、具体的には酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化アンチモン(Sb)、およびインジウムスズ酸化物(In)から選ばれる少なくとも一つの金属酸化物、や半金属酸化物であり、特に好ましくはアンチモン含有酸化スズ(ATO)や酸化チタン(TiO)である。
【0075】
本発明の塗料組成物は、これらフッ素処理無機粒子等の疎水性処理無機粒子を除いた他の無機粒子(金属酸化物や半金属酸化物からなる粒子など)を少なくとも1種類含むことが好ましい。より好ましくは疎水性処理無機粒子を除いた他の無機粒子を1種類以上5種類以下含む態様であり、特に好ましくは1種類含む態様である。
【0076】
塗料組成物中の高屈折率層構成成分として好適な他の無機粒子の数平均粒子径、特に低屈折率層構成成分として好適なシリカ粒子よりも屈折率が高い金属酸化物や半金属酸化物からなる無機粒子の数平均粒子径としては、好ましくは、1nmから150nm、より好ましくは2nmから100nmである。他の無機粒子の数平均粒子径が1nmよりも小さくなると、反射防止部材中で他の無機粒子を主として含むこととなる層(高屈折率層)中の空隙密度が低下することによる透明度の低下が起こるため好ましくなく、他の無機粒子の数平均粒子径が150nmよりも大きくなると、該高屈折率層の厚さが大きくなりすぎて良好な反射防止性能が得られにくくなり好ましくない。
【0077】
塗料組成物中の高屈折率層構成成分として好適な他の無機粒子の屈折率、特にシリカ粒子よりも屈折率が高い金属酸化物や半金属酸化物からなる無機粒子の屈折率としては、好ましくは1.58以上2.80以下、より好ましくは1.60以上2.50以下である。無機粒子の屈折率が1.58よりも小さくなると、高屈折率層の屈折率が低下することがあり、無機粒子の屈折率が2.80よりも大きくなると、高屈折率ハードコート層と支持基材との屈折率差が上昇し、良好な反射防止性能が得られなくなり、また干渉模様が発生し外観が悪化することがある。
【0078】
塗料組成物中の高屈折率層構成成分として用いられる他の無機粒子については前述した通りだが、フッ素化合物A等の疎水性化合物Aによる表面処理がされた無機粒子がシリカ粒子の場合は、該シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子であることが特に好ましく、このような該シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子としては、数平均粒子径が1nmから150nmであり、かつ屈折率が1.60から2.80の金属酸化物や半金属酸化物が好ましく用いられる。そのような金属酸化物や半金属酸化物の具体例としては、アンチモン含有酸化スズ(ATO)及び/または酸化チタン(TiO)が挙げられ、特に反射防止性の点から屈折率が高い酸化チタンがより好ましい。
【0079】
本発明の塗料組成物において、フッ素処理無機粒子等の疎水性処理無機粒子が、フッ素処理シリカ粒子等の疎水性処理シリカ粒子であり、他の無機粒子がシリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子である場合、支持基材の少なくとも片面上に該塗料組成物を1回のみ塗布して続いて乾燥することで、疎水性処理シリカ粒子を含有した低屈折率層と、シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子を含有する高屈折率層からなる反射防止層を、支持基材、高屈折率層、低屈折率層の順に好適に形成できるため好ましい態様である。
〔疎水性化合物B〕
本発明の塗料組成物は、前述の2種類以上の無機粒子に加えて、疎水性化合物Bを含有することが好ましい。疎水性化合物Bとは、疎水基を有する化合物であり、具体的にはフッ素化合物B、長鎖炭化水素化合物B、及びシリコーン化合物Bからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である。ここで、フッ素化合物Bとは、疎水基として炭素数4以上のフルオロアルキル基を有する化合物である。長鎖炭化水素化合物Bとは、疎水基として炭素数8以上の炭化水素基を有する化合物である。シリコーン化合物Bとは、疎水基としてシロキサン基を有する化合物である。なお、これらの疎水性化合物Bは、無機粒子同士の凝集体の形成が抑制しやいために、塗料組成物の粘度変化(Δη)を0.1mPa以上10mPa・s以下に制御しやすい点から、フッ素化合物Bがより好ましい。そしてフッ素化合物Bとしては、反応性部位を有し、数平均分子量が300以上4000以下であるフッ素化合物Bが特に好ましい。
【0080】
塗料組成物が、フッ素化合物B等の疎水性化合物Bを含有することにより、疎水性処理無機粒子同士の凝集を抑制することができ、屈折率の大きな2層の厚み制御が容易となり、該塗料組成物を用いて得られる反射防止部材が良好な反射防止性を発現することが可能となるために好ましい。
【0081】
なお、本発明における疎水性化合物Bは、分子中に、1種以上の反応性部位を有することがより好ましい。反応性部位としては、前述の通りである。
【0082】
また疎水性化合物Bは、疎水性処理無機粒子を得るための表面処理に用いられる疎水性化合物Aと同一化合物であってもよい。つまり、疎水性化合物Bとして、反応性部位を有する疎水性化合物Bを使用する場合には、疎水性化合物Bは疎水性化合物Aと同一の化合物を取り得るが、この疎水性化合物Aと疎水性化合物Bとが同一化合物になっても問題はない。しかし、疎水性処理無機粒子を得るための表面処理に用いた疎水性化合物Aとは別に、粒子表面に結合していない疎水性化合物Bを含むことで、疎水性処理無機粒子が好適に空気側(最表面層)へ移動して、好適に低屈折率層を形成することができるため、本発明の塗料組成物は疎水性化合物Bを含むことが好ましい。
【0083】
なお、疎水性化合物Bが、塗料組成物中で粒子の表面に結合していない事は、次の分析方法により確認することが可能である。本発明の塗料組成物を、日立卓上超遠心機(日立工機株式会社製:CS150NX)により遠心分離を行い(回転数30000rpm、分離時間30分)、無機粒子(疎水性処理無機粒子及びその他の無機粒子)を沈降させた後、得られた上澄み液を濃縮乾固し、溶媒としてDMSO−d6(太陽日酸株式会社製、ジメチルスルホキシド−d6)を用いて再溶解した後、C13−NMR(日本電子社製/核磁気共鳴装置JNM−GX270)を用いて測定し、疎水性化合物Bの存在を確認できれば、疎水性化合物Bが無機粒子表面と結合していないことが確認可能である。
【0084】
本発明における疎水性化合物Bとは、フッ素化合物B、長鎖炭化水素化合物B、及びシリコーン化合物Bからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である。このような化合物を以下に例示する。
【0085】
疎水性化合物Bである長鎖炭化水素化合物Bは、疎水基として炭素数8以上の炭化水素基を有する化合物である。そして長鎖炭化水素化合物Bは、反応性部位を有することが好ましい。長鎖炭化水素化合物Bが反応性部位を有する場合には、長鎖炭化水素化合物Bとしては前述の長鎖炭化水素化合物Aと同様の化合物を適宜選択して使用することができる。長鎖炭化水素化合物Bとして、炭素数10以上30以下の炭化水素基を有する長鎖炭化水素化合物がより好ましく、炭素数12以上30以下の炭化水素基を有する長鎖炭化水素化合物が特に好ましく、更に好ましくは炭素数14以上30以下の炭化水素基を有する長鎖炭化水素化合物である。炭素数が多くなるほど疎水性が高くなり、バインダー原料と分離しやすくなるため好ましい。
【0086】
疎水性化合物Bであるシリコーン化合物Bは、疎水基としてシロキサン基を有する化合物である。そしてシリコーン化合物Bは、反応性部位を有することが好ましい。シリコーン化合物Bが反応性部位を有する場合には、シリコーン化合物Bとしては前述のシリコーン化合物Aと同様の化合物を適宜選択して使用することができる。シリコーン化合物Bの好ましい様態としては、一般式(C)(−(Si(R)(R)−O)−)で示されるポリシロキサン基を有し、さらに一般式(C)中のR及びRの炭素数が3以上6以下であることが好ましく、より好ましくは炭素数4以上6以下、特に好ましくは炭素数5以上6以下である。
【0087】
続いて疎水性化合物Bであるフッ素化合物B(疎水基として炭素数4以上のフルオロアルキル基を有する化合物)について説明する。
【0088】
フッ素化合物B中のフルオロアルキル基の数は必ずしも一つである必要はなく、フッ素化合物Bは複数のフルオロアルキル基を有してもよい。なお、本発明でいうフルオロアルキル基とは、前述のフッ素化合物Aのフルオロアルキル基と同様に、アルキル基が持つ全ての水素がフッ素に置き換わった置換基であり、フッ素原子と炭素原子のみから構成される置換基であり、これがフッ素化合物Bにおける疎水基である。
【0089】
またフッ素化合物Bが有するフルオロアルキル基Rf1は、炭素数4以上であれば使用可能であるが、炭素数は4以上8以下が好ましく、炭素数4以上7以下の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基Rf1であることがより好ましい。フルオロアルキル基Rf1は、塗料組成物の乾燥時のフッ素処理粒子同士の粒子間相互作用の抑制の点から炭素数5以上7以下がさらに好ましく、特に好ましくは炭素数6以上7以下である。また分岐状に比べ直鎖状が立体障害が小さく、フッ素処理無機粒子に吸着し易い点から、直鎖状が好ましい。フルオロアルキル基を、炭素数4以上7以下の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基Rf1とすることにより、粒子の分離性が良化し、屈折率の異なる2層の自発的な層形成が容易になり、反射防止性が良化するため好ましい。
【0090】
本発明におけるフッ素化合物Bは、反応性部位を有することが好ましい。フッ素化合物B中の反応性部位とは、後述する一般式(B)においてはA、一般式(A)においてはアクリル基(HC=C(R)−)である。フッ素化合物B中の反応性部位の数は、一つである必要はなく、複数の反応性部位を有してもよい。特に反応性、ハンドリング性の観点から、反応性部位としてはアルコキシシリル基あるいはシラノール基や、アクリロイル(メタクリロイル)基が好ましい。
【0091】
本発明におけるフッ素化合物Bの数平均分子量は、300以上4000以下であることが好ましい。本発明の塗料組成物が、数平均分子量が300以上4000以下のフッ素化合物Bを含む場合は、フッ素化合物Bの親和力により、フッ素化合物Bがフッ素処理無機粒子表面に吸着し、フッ素処理無機粒子同士の粒子間相互作用、または凝集体の形成を抑制し、その結果塗料組成物の乾燥時の流動性の低下を防止し、屈折率の異なる2層の自発的な層形成が容易となり、良好な反射防止性を発現することが可能となるため、塗料組成物としては数平均分子量が300以上4000以下のフッ素化合物Bを含むことが好ましい。
【0092】
本発明における数平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒にし、分子量既知の単分散ポリスチレンを標準物質として用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定して求めたものである。また、数平均分子量とは、分子量Mの分子数をNとした際に、M=ΣM/ΣNで定義されるものである。なお数平均分子量は、液体クロマトグラフ(島津製作所社製:LC−10)にて、温度35℃、カラム(Shodex社製:K−804+K−805L)を用いて求めた。
【0093】
フッ素化合物Bは、振動式粘度計による粘度ηが1〜100mPa・sであり、かつ表面張力γが6〜26mN/mであることが好ましい。フッ素化合物Bの粘度ηは、より好ましくは1〜90mPa・sであり、さらに好ましくは1〜80mPa・sである。
【0094】
ここで、振動式粘度計による粘度ηは、フッ素化合物Bを25℃にて測定したときの粘度を表し、株式会社エー・アンド・デイ社製の音叉型振動式粘度計SV−10Aの利用により測定することができる。振動式粘度計の原理は、液体中で振動子を一定幅にて共振させ、振動子の粘性抵抗を加振力となる電流値を測定することから粘度を求めるものである。より具体的には、音叉形状を有する2枚の板バネの中央に、電磁駆動部を設置して板バネを一定の設定振幅にて共振させ、粘性抵抗により異なる駆動電流を検出し、あらかじめ記憶させている検量線と対応させて演算し、粘度を測定するものである。
【0095】
また本発明におけるフッ素化合物Bの表面張力γは、より好ましくは6mN/m以上24mN/m以下、さらに好ましくは6mN/m以上22mN/m以下である。
【0096】
フッ素化合物Bの振動式粘度計による粘度η及び表面張力は、フッ素処理無機粒子表面へのフッ素化合物Bの親和力を左右するパラメーターであり、フッ素化合物Bの粘度ηが1〜100mPa・sであったり、表面張力が6mN/m以上26mN/m以下であると、フッ素化合物Bの親和力により、フッ素化合物Bがフッ素処理無機粒子表面に吸着することが可能となり、フッ素処理無機粒子同士の凝集体の形成を抑制し、その結果塗料組成物の乾燥時の流動性の低下を防止し、屈折率の異なる2層の自発的な層形成が容易となり、良好な反射防止性を発現することが可能となる。そのためフッ素化合物Bは、振動式粘度計による粘度ηが1〜100mPa・sであり、かつ表面張力が6mN/m以上26mN/m以下であることが好ましい。
【0097】
ここで、フッ素化合物Bの表面張力γは、該フッ素化合物Bを25℃にて測定したときの表面張力を表し、協和界面化学株式会社製のCBVP−Zシリーズの全自動表面張力計の利用により測定することができる。表面張力γは、懸滴法(ペンダント・ドロップ法)により測定可能であり、鉛直方向に向けた細管の先端から液体を押し出すと、細管の先端に液滴が形成されるが、この「懸滴」の形状は、押し出された液体の量、密度、表面張力に依存するため、形状の解析により表面張力を算出することができる。
【0098】
なお、この針先より作成した液滴の輪郭形状および密度差の値から画像処理によりYoung−Laplaceの式をフィッティングさせて表面張力を算出することができる。
【0099】
本発明でいうフッ素化合物Bは、1種類であっても良いし、2種類以上を混合して用いてもよい。またフッ素化合物Bは、フッ素化合物Aと同一化合物となる場合があってもよい。また、塗料組成物中に紫外線などにより硬化するフッ素化合物Bを含有する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから、紫外線による硬化工程での酸素濃度はできるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。
【0100】
本発明のフッ素化合物Bのモル体積Vは、200(cm/mol)以上1000(cm/mol)以下であることが好ましい。モル体積Vが200(cm/mol)以上1000(cm/mol)以下であると、フッ素化合物Bがフッ素処理無機粒子表面に吸着されやすくなり、フッ素処理無機粒子同士の粒子間相互作用、または凝集体の形成を抑制し、その結果塗料組成物の乾燥時の流動性の低下を防止し、屈折率の異なる2層の自発的な層形成が容易となり、良好な反射防止性を発現することが可能となる。そのため、モル体積Vが200(cm/mol)以上1000(cm/mol)以下のフッ素化合物Bを含むことが好ましい。
【0101】
ここで、モル体積Vとは、分子量Mを密度ρで除した量であり、1molの体積(cm/mol)を表す。特にフッ素化合物Bのモル体積については、化合物に含まれる基のモル体積が算出されれば、加成性が成立するため、化合物のモル体積を算出することができる。基のモル体積は、「フッ素試薬」2008カタログ(ダイキン化成品販売株式会社)に記載されており、これに基づいて各種フッ素化合物Bのモル体積を算出することができる。
【0102】
また本発明におけるフッ素化合物Bは、以下の一般式(A)のモノマー、一般式(B)のモノマー、一般式(A)のモノマーに由来するオリゴマー、及び一般式(B)のモノマーに由来するオリゴマーからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることがより好ましい。
C=C(R)−COO−R−Rf1 ・・・一般式(A)
A−R−Rf1 ・・・一般式(B)
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rf1は炭素数4〜7の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキル基、Aは反応性部位である。)
なおフッ素化合物Bは、特定のフルオロアルキル基を有し、さらに反応性部位を有することが好ましいが、フルオロアルキル基および反応性部位を有するフッ素化合物Bは、一般式(A)のモノマーや一般式(A)のモノマーに由来するオリゴマーについては、Rf1がフルオロアルキル基であり、HC=C(R)−が反応性部位である。また、一般式(B)のモノマーや一般式(B)のモノマーに由来するオリゴマーについては、Rf1がフルオロアルキル基であり、Aが反応性部位である。
【0103】
一般式(A)のモノマーの化合物の具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフロオロプロピルアクリレート、2−パーフルオロブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロデシルエチルアクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−3−メトキシブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−パーフルオロブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロデシルエチルメタクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−3−メチルブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1−トリフルオロメチルトリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0104】
また一般式(A)のモノマーに由来するオリゴマーの化合物としては、上記一般式(A)のモノマーを用いて、ラジカル重合などの反応により得られる、平均重合度2〜10程度の化合物が例示される。
【0105】
一般式(B)のモノマーの化合物としては、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(TSL8233、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン(TSL8257、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)などをはじめとしたフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルシランが例示される。
【0106】
また一般式(B)のモノマーに由来するオリゴマーの化合物は、上述のフルオロアルキルシランに所定量の水を加え酸触媒の存在下にて副生するアルコールを留去しながら反応させることにより得られる化合物である。この反応により、フルオロアルキルシランの一部が加水分解し、更にこれらが縮合反応を起こしオリゴマーが得られる。加水分解率は使用する水の量によって調節することができる。加水分解に用いる水の量は、通常シランカップリング剤に対して1.5モル倍以上である。さらに得られるオリゴマーの平均重合度は2〜10の化合物であることが好ましい。
【0107】
振動式粘度計による粘度ηが1mPa・s以上100mPa・s以下であり、かつ表面張力γが6mN/m以上26mN/m以下であり、さらにモル体積Vが200(cm/mol)以上1000(cm/mol)以下のフッ素化合物Bとするためには、炭素数4以上7以下の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル鎖を有するのが好ましく、さらに前記一般式(A)のモノマー、(B)のモノマー、一般式(A)のモノマーに由来するオリゴマー、及び一般式(B)のモノマーに由来するオリゴマーから選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。上記のような好ましいフッ素化合物Bとして、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランなどが例示される。
[有機溶媒]
本発明の塗料組成物としては、前述の2種類以上の無機粒子やフッ素化合物B等の疎水性化合物Bに加えて、さらに有機溶媒を含むことが好ましい。有機溶媒を含むと、フッ素処理無機粒子等の疎水性無機粒子の粒子間相互作用を抑制し、またフッ素処理無機粒子等の疎水性無機粒子同士の凝集体が抑制しやすくなる。また、塗料組成物の乾燥時の流動性の低下を防止することが可能となるため、屈折率の異なる2層からなる反射防止層の自発的な層形成が容易となり、良好な反射防止性を発現することが可能となるため特に好ましい。
【0108】
有機溶媒は、特に限定されるものではないが、通常、常圧での沸点が200℃以下の溶媒が好ましい。具体的には、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭化水素類、アミド類、フッ素類等が用いられる。これらは、1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられ、特に無機粒子の安定性の点からイソプロピルアルコール、プロピレングリコールなどが特に好ましい。
【0109】
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコール、フェニチルアルコール等を挙げることができる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。エーテル類としては、例えば、ジブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどを挙げることができる。エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等を挙げることができる。芳香族類としては、例えば、トルエン、キシレン等を挙げることができる。アミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
[疎水性化合物Bの含有量]
また本発明の塗料組成物は、全成分の合計を100質量%とした際に、前記フッ素化合物B等の疎水性化合物Bを1質量%以上30質量%以下含むことが好ましく、より好ましくは2質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上20質量%以下である。ここで、本発明の全成分とは、塗料組成物中に含まれる全成分を表し、有機溶媒、後述するバインダー原料、その他各種添加剤も含む全ての成分を表す。
【0110】
本発明の塗料組成物が、全成分の合計100質量%において、前記フッ素化合物B等の疎水性化合物Bを1質量%以上30質量%以下含むことにより、疎水性化合物Bが疎水性処理無機粒子表面に吸着し、疎水性処理無機粒子同士の凝集体の形成を抑制し、その結果塗料組成物の乾燥時の流動性の低下を防止し、屈折率差の大きな2層の厚み制御が容易となり、良好な反射防止性を発現することが可能となるためフッ素化合物B等の疎水性化合物Bを上記範囲とすることが好ましい。またフッ素化合物B等の疎水性化合物Bは、塗料組成物を塗布し、乾燥させる過程における無機粒子の分散安定化に寄与するため、溶媒も含んだ全成分に対する割合が重要であり、無機粒子に対する割合ではなく、全成分に対する比率でフッ素化合物B等の疎水性化合物Bを上記範囲含有することが好ましい。
〔塗料組成物中のその他の成分〕
本発明の塗料組成物は、更に、バインダー原料を含むことが出来る。つまり、本発明の塗料組成物により得られる反射防止部材の反射防止層中の低屈折率層および高屈折率層には、前記した物質以外に別途塗料組成物中のバインダー原料に由来する成分(バインダー)を含んでいてもよい。ここで本発明において、塗料組成物中に含まれるバインダーを「バインダー原料」、反射防止部材中に含まれるバインダーを単に「バインダー」と表す。バインダー原料としては特に限定するものではないが、製造性の観点より、熱及び/または活性エネルギー線などにより、硬化可能なバインダー原料であることが好ましく、バインダー原料は一種類であっても良いし、二種類以上を混合して用いても良い。
【0111】
また、本発明における前記フッ素処理無機粒子等の疎水性無機粒子や、前記疎水性処理無機粒子以外の他の無機粒子を膜中に保持する観点より、分子中にアルコキシシランやアルコキシシランの加水分解物や反応性二重結合を有しているバインダー原料であることが好ましい。またUV線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。
【0112】
このようなバインダー原料として、成分中に多官能アクリレートを用いるのが好ましく、代表的なものを以下に例示する。1分子中に、3(より好ましくは4または5)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートおよびその変性ポリマー、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体のバインダー原料は、1種または2種以上を混合して使用することができる。また、市販されている多官能アクリル系のバインダー原料としては三菱レーヨン株式会社;(商品名”ダイヤビーム”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名”デナコール”シリーズなど)、新中村株式会社;(商品名”NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名”UNIDIC”など)、東亞合成化学工業株式会社;(”アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(”ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名”KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名”ライトエステル”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
【0113】
本発明の塗料組成物としては、更に開始剤や硬化剤や触媒を含むことが好ましい。開始剤及び触媒は、フッ素処理無機粒子等の疎水性処理無機粒子である疎水性処理シリカ粒子とバインダー原料との反応を促進したり、バインダー原料間の反応を促進するために用いられる。該開始剤としては、塗料組成物をアニオン、カチオン、ラジカル反応等による重合および/または縮合および/または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。
【0114】
該開始剤、該硬化剤、及び触媒は、種々のものを使用できる。また、複数の開始剤を同時に用いても良いし、単独で用いても良い。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤や光重合開始剤を併用しても良い。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられるがこれらに限定されるものではないが、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましく、具体例としては、2.2−ジメトキシ−1.2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタン、1−シクロヒキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、などが挙げられる。
【0115】
なお、該開始剤及び該硬化剤の含有割合は、塗料組成物中のバインダー原料の合計量100質量部に対して0.001質量部から30質量部が好ましく、より好ましくは0.05質量部から20質量部であり更に好ましくは0.1質量部から10質量部である。
【0116】
その他として、本発明の塗料組成物には更に、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜含有させても良い。
[塗料組成物中の各成分の含有量]
本発明の塗料組成物は、少なくとも1種類がフッ素処理無機粒子等の疎水性無機粒子である2種類以上の無機粒子を含み、該塗料組成物の粘度変化(Δη)が、0.1mPa・s以上10mPa・s以下である。本発明において、フッ素処理無機粒子等の疎水性処理無機粒子を除いた無機粒子を、他の無機粒子とした際に、疎水性処理無機粒子/他の無機粒子の含有比率(質量比率)が、疎水性処理無機粒子/他の無機粒子=1/30〜1/1であることが好ましい。
【0117】
疎水性処理無機粒子/他の無機粒子=1/30〜1/1とすることで、得られる反射防止フィルムの低屈折率層の厚みと高屈折率層の厚みの比を一定にすることができる。このため1回の塗布で、低屈折率層と高屈折率層の厚みを同時に、反射防止機能を有する厚みとすることが容易であるため好ましい。また高屈折率層の厚みを厚くすることも可能となり、ハードコート機能を付与しようとする場合にも、反射防止機能を損なうことなく、1回の塗布で必要な厚みとすることができるため、反射防止機能とハードコート機能の両立の点から疎水性処理無機粒子と他の無機粒子の割合を上記範囲とすることが可能となるため好ましい。疎水性処理無機粒子/他の無機粒子の含有比率(質量比率)として、より好ましくは疎水性処理無機粒子/他の無機粒子=1/29〜1/5、さらに好ましくは1/26〜1/10、特に好ましくは1/23〜1/15である。
【0118】
なお、疎水性処理無機粒子の質量について、疎水性処理無機粒子を有機溶媒分散体として入手した場合には、次の方法により求めることができる。他の無機粒子は含まず、疎水性処理無機粒子を含む塗料を、日立卓上超遠心機(日立工機株式会社製:CS150NX)により遠心分離を行い(回転数30000rpm、分離時間30分)、疎水性処理無機粒子を沈降させた後、得られた上澄み液を濃縮乾固し、質量を測定することで疎水性処理無機粒子の質量を測定することができる。
【0119】
また好ましくは、本発明の塗料組成物100質量%において、(フッ素処理無機粒子等の疎水性処理無機粒子を含む)全ての無機粒子(ここでいう全ての無機粒子には、フッ素化合物A等の疎水性化合物Aによる表面処理によって、疎水性処理無機粒子中の無機粒子と結合した疎水性化合物Aなど有機化合物も含めた疎水性処理無機粒子全体の質量も含める。)の合計が0.2質量%以上40質量%以下、有機溶媒を40質量%以上98質量%以下、疎水性化合物Bを1質量%以上30質量%以下、バインダー、開始剤、硬化剤、及び触媒などのその他の成分を0.1質量%以上20質量%以下を含む態様であり、より好ましくは、(疎水性処理無機粒子を含む)全ての無機粒子の合計が1質量%以上35質量%以下、有機溶媒を50質量%以上97質量%以下、疎水性化合物Bを2質量%以上25質量%以下、その他の成分を1質量%以上15質量%以下含む態様である。
【0120】
さらに好ましい態様としては、2種類以上の無機粒子が金属酸化物粒子とフッ素処理シリカ粒子等の疎水性シリカ粒子であり、これらの合計が本発明の塗料組成物100質量%において2質量%以上30質量%以下、有機溶媒が60質量%以上95質量%以下、疎水性化合物Bを3質量%以上20質量%以下、その他の成分が2質量%以上10質量%以下の態様である。
【0121】
[バインダー原料、疎水性化合物B、溶媒の相図]
本発明の塗料組成物は、バインダー原料、疎水性化合物B、溶媒を含有し、これら3成分が以下の関係を満たすことが好ましい。
【0122】
(バインダー原料、疎水性化合物B、溶媒)の三成分の質量比で決められる相図において、点A(90、0、10)、点B(100、0、0)、点C(0、100、0)、点D(0、90、10)で囲まれる領域内で、疎水性化合物Bがバインダー原料と分離する。但し、点ABCDで囲まれる領域とは、点ABCDで決められる台形の線上を含まない。ここで、点A、点B、点C、点Dで囲まれる領域内において、疎水性化合物Bがバインダーと分離するとは、この領域の全てにおいて常に疎水性化合物Bとバインダーが分離することが重要である。
この三成分の関係を図1に示した。
【0123】
この関係は、点H(0、0、100)、点A(90、0、10)、点D(0、90、10)、で囲まれる領域内では、バインダー原料、疎水性化合物B、溶媒の三成分は分離することなく、常に互いに相溶している状態を表す。また、点A(90、0、10)、点B(100、0、0)、点C(0、100、0)、点D(0、90、10)で囲まれる領域内では、疎水性化合物Bとバインダー原料が常に分離することを表す。
【0124】
ここで、前記「点A(90、0、10)、点B(100,0,0)、点C(0、100、0)、点D(0、90、10)で囲まれる領域内では、疎水性化合物Bとバインダー原料が分離する」関係を満たすためには、次の様な疎水性化合物B、バインダー原料、溶媒を選択することで達成可能となる。つまり疎水性化合物Bは、疎水性が高い程、点ABCDで囲まれる領域内ではバインダー原料と分離し易くなるため好ましく、一方バインダー原料は親水性が高い程、疎水性化合物Bと分離しやすくなるため好ましい。また溶媒は、点HADで囲まれる領域において、疎水性化合物B,バインダー原料をともに溶解させる必要があるので極性のある溶媒であることが好ましい。
【0125】
シリコーン化合物Bとしては、シロキサン基が多いものほど疎水性が高くなるため好ましく、シリコーンモノマーよりもシリコーンオリゴマーが好ましく、より好ましくはシリコーンポリマーである。
【0126】
バインダー原料としては、親水性が高いほど分離性が良好となるため疎水性化合物よりも相対的に親水性である化合物を用いることができ、多官能アクリレートなどを例示することができる。親水性、疎水性の相対評価としては、液体の表面張力を測定し、相対的に表面張力が高い化合物を疎水性が高く、表面張力が低い化合物を親水性が高い、と判断することが可能である。
【0127】
溶媒としては、点HADで囲まれる領域において、疎水性化合物B、バインダー原料を溶解させ、さらに点ABCDで囲まれる領域内では、その両者が分離するような極性のある溶媒であることが重要である。このような化合物としては、特にアルコール、ケトン系溶媒が挙げられ、その中でも特にエタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。その中でも特に、分離性の点からイソプロピルアルコールが特に好ましい。
【0128】
上記の関係を満たすような疎水性化合物B、バインダー原料、溶媒を選択して用いることにより、本発明における塗料組成物中では、疎水性化合物B、バインダー原料、溶媒の成分は互いに相溶し安定な状態を保つことが可能となる。一方、支持基材上に該塗料組成物を塗布し乾燥した状態では、異なる屈折率を有する2層を形成し、さらにその2層の界面がより明確となり反射防止性が更に向上するため好ましい。
【0129】
この現象については、以下のモデルを考えている。支持基材上に該塗料組成物を塗布し乾燥すると、該塗料組成物中に含まれる溶媒量が次第に減少し、塗料組成物中における、疎水性化合物B,バインダー原料、溶媒の関係が、図1における点H、A、Dの領域の関係から、点A、点B、点C、点Dの領域の関係へと移行し、その結果支持基材上に塗布した塗膜内にて、疎水性化合物Bとバインダー原料は分離する。疎水性化合物Bは元々表面エネルギーが低いため空気側へ向かうが、そのドライビングフォースに加え、疎水性化合物Bとバインダー原料が分離するドライビングフォースが更に作用することで疎水性化合物Bは、更に空気側へ向かうことになる。また、バインダー原料は疎水性化合物Bと分離するため、より支持基材側へ向かうこととなる。その結果、疎水性化合物B、また疎水性化合物Bと親和性のある疎水性処理無機粒子は一層空気側へ移動し、低屈折率層を形成する。一方、バインダー原料と親和性のある他の無機粒子は支持基材側へ移動し、高屈折率層を形成する。上記の関係を満たすことによりこのように、異なる屈折率を有する2層の間の界面がより明確となり反射防止性が更に向上するため好ましい。
【0130】
[バインダー原料、疎水性処理無機粒子と他の無機粒子、溶媒の相図]
本発明における塗料組成物は、さらに、バインダー原料、無機粒子(疎水性無機粒子と他の無機粒子の合計)、溶媒が以下の関係を満たすことが好ましい。(バインダー原料、無機粒子、溶媒)の三成分の質量比で決められる相図において、点E(50、0、50)、点F(0、50、50)、点G(0、0、100)で囲まれる領域内において、無機粒子、バインダー原料、溶媒からなる液のヘイズ値が10%以下であることがさらに好ましい。この関係を図2に示した。なお、疎水性処理無機粒子の質量の求め方は、前述の通りである。
【0131】
この関係は、図2における点E(50、0、50)、点F(0、50、50)、点G(0、0、100)で囲まれる領域内における点で、バインダー原料、無機粒子、溶媒の三成分のみを混合した場合に、無機粒子や、バインダー原料が凝集したりすることなく、この三成分からなる液のヘイズが常に10%以下であることを表す。
【0132】
本発明において、無機粒子、バインダー原料、溶媒が上記の関係を満たすことにより、無機粒子、バインダー原料がそれぞれ空気側、支持基材側へ移動する際に、凝集構造を形成することなく効率的に移動することができるため、反射防止性、透明性が更に向上するため好ましい。
【0133】
上記の関係を満たす、好ましい無機粒子、バインダー原料、溶媒を例示する。無機粒子としては、疎水性処理無機粒子と、疎水性処理無機粒子よりも親水性である他の無機粒子とを併用した態様である。特に、フッ素化合物Bと同程度の疎水性を有する疎水性処理無機粒子が好ましく、またバインダー原料と相溶性のある他の無機粒子であるのが好ましい。バインダー原料としては、上述のように、親水性が高いほど分離性が良好となるため、親水性に優れるバインダー原料である酸価が20以下のバインダー原料が特に好ましい。溶媒としては、極性のある溶媒であることが好ましく、特にアルコール、ケトン系溶媒が挙げられ、その中でも特にエタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。その中でも特に、分離性の点からイソプロピルアルコールが特に好ましい。
【0134】
[反射防止部材]
反射防止部材は、その必要性や要求される性能などは特開昭59−50401号公報に記載されている様に、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上の屈折率差を有する2層からなる反射防止層を支持基材上に積層させることで構成された様態である。また支持基材上の反射防止層を構成する2層の屈折率差は5.0以下であることが好ましい。また反射防止部材においては、支持基材から計測し最も離れた層が低屈折率層であることが更に好ましい。つまり支持基材、高屈折率層、低屈折率層がこの順になるように支持基材上に反射防止層が積層された様態が好ましい。
【0135】
屈折率差とは隣接する層間の屈折率を相対的に比較した値であり、相対的に屈折率が低い層を低屈折率層と呼び、相対的に屈折率が高い層を高屈折率層と呼ぶ。
【0136】
上述した本発明の塗料組成物は、特定の2種類以上の無機粒子を含み、少なくとも1種類の無機粒子がフッ素処理無機粒子等の疎水性処理無機粒子であり、塗料組成物の粘度変化(Δη)を0.1mPa・s以上10mPa・s以下としたことにより、該塗料組成物を支持基材の少なくとも片面に、1回のみ塗布する工程を設けることによって、反射防止性が優れた、屈折率の異なる2層を有する反射防止部材を製造することができる。なお、支持基材の少なくとも片面上に、塗料組成物を1回のみ塗布するとは、支持基材に対して1種類の塗料組成物を1回だけ塗布することによって、1層の液膜を形成することを指すものとする。
【0137】
本発明において上記1種類の塗料組成物から2層を構成する原理としては、前記のように塗料組成物中の2種類以上の無機粒子の表面自由エネルギー差をドライビングフォースとして、相分離構造を形成するものと考えられる。疎水性処理無機粒子は表面自由エネルギーが低いため、空気側(つまり最表面層)へ移動しやすいと考えられ上層側(空気側、つまり最表面層)へ移動しやすいと考えられる。
【0138】
しかし本発明において、該塗料組成物の粘度変化(Δη)が0.1mPa・s以上10mPa・s以下の範囲外であると、フッ素処理無機粒子等の疎水性処理無機粒子同士が凝集し、空気側(つまり最表面層)への移動が阻害され、屈折率の異なる2層を均一に構成することができなくなる。
【0139】
粘度変化(Δη)を0.1mPa・s以上10mPa・s以下とするには、塗料組成物が疎水性化合物Bを含有することにより可能である。そして特に好ましくは、上記疎水性化合物Bがフッ素化合物Bであり、さらにフルオロアルキル基および反応性部位を有し数平均分子量が300以上4000以下であるフッ素化合物Bであり、本発明の塗料組成物がこのフッ素化合物Bを、塗料組成物中に含む態様である。このフッ素化合物Bは、フッ素処理無機粒子等の疎水性処理無機粒子の表面にフッ素化合物Bが親和力により吸着し、疎水性処理無機粒子同士が凝集するのを防止することが可能となる。
【0140】
本発明における屈折率の異なる2層とは、反射分光膜厚計によって、300〜800nmの範囲での反射率を測定し、該装置付属のソフトウェア[FE−Analysis]を用いて得られる屈折率が異なる2つの層をさす。
【0141】
具体的には、反射分光膜厚計(FE−3000、大塚電子株式会社製)を用いて300〜800nmの範囲で反射率を測定し、大塚電子株式会社製[膜厚測定装置 総合カタログP6(非線形最小二乗法)]に記載の方法に従い、屈折率の波長分散の近似式としてCauchyの分散式(式5)を用い最小二乗法(カーブフィッティング法)により、光学定数(C、C、C)を計算することで屈折率を測定することができる。なお、屈折率は、550nmにおける値を用いた。
【0142】
【数10】

【0143】
ここで、λは波長、C、C、Cは光学定数を表す。
【0144】
各層の屈折率が測定可能な測定装置として、反射分光膜厚計(FE−3000 大塚電子株式会社製)、高精度屈折率測定装置(Film Teck Scientific Computing International社製)などが挙げられるが、この限りではない。
【0145】
なお、このような本発明の塗料組成物によって得られる反射防止部材には、屈折率の異なる2層からなる反射防止層中の高屈折率層と低屈折率層との間には、明確な界面があることが好ましい。
【0146】
本発明における明確な界面とは、1つの層と他の層とが区別可能な状態をいう。区別可能な界面とは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより判断することができる界面を表し、以下の方法に従い判断することができる。
【0147】
TEMにより20万倍の倍率で撮影した画像を、スキャナーを用いてプレゼンテーションソフトウェア(Microsoft Power Point2003)に貼り付ける。次いで貼り付けた写真のイメージコントロール処理(コントラストを90%とする)を行い、コントラストを強調する。この際に、1つの層と他の層との界面に明確な境界を引くことができる場合を、明確な界面があるとみなす。
【0148】
反射防止部材として良好な性能を示すには、分光測定に置いて最低反射率が好ましくは0%以上1.0%以下、より好ましくは0%以上0.7%以下、さらに好ましくは0%以上0.6%以下であり、特に好ましくは0%以上0.5%以下であることが望ましい。
【0149】
また、反射防止部材として良好な性質を示すには更に、透明性が高いことが望ましい。透明性が低い反射防止部材を画像表示装置の一部に用いた場合、画像彩度の低下などによる画質低下が生じるために好ましくない。本発明の塗料組成物により得られる反射防止部材の透明性の評価にはヘイズ値を用いることができる。ヘイズはJIS K 7136(2000)に規定された透明性材料の濁りの指標である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。反射防止部材のヘイズ値としては好ましくは3.0%以下であり、より好ましくは2.0%未満、更に好ましくは1.0%未満であり、値が小さいほど透明性の点で良好であるものの、0%とすることは困難であり、現実的な下限値は0.01%程度と思われる。ヘイズ値が3.0%以上であると、画像劣化が生じる可能性が高くなるため好ましくない。
【0150】
反射防止部材として良好な性質を示すには、高屈折率層、及び低屈折率層の厚みが特定の厚みであることが望ましく、低屈折率層の厚みが好ましくは50nm以上200nm以下、さらに好ましくは70nm以上150nm以下であり、特に好ましくは90nm以上130nm以下であることが望ましい。低屈折率層の厚みが50nm未満であると光の干渉効果が得られず反射防止効果が得られず画像の映り込みが大きくなるために好ましくない。また200nmを超える場合も光の干渉効果が得られなくなるため画像の映り込みが大きくなるために好ましくない。
【0151】
一方、高屈折率層の厚みは、好ましくは100nm以上6000nm以下、さらに好ましくは300nm以上5500nm以下、特に好ましくは400nm以上5000nm以下であることが望ましい。高屈折率層の厚みが100nm未満であると反射防止効果は得られるものの、耐擦傷性が得られず傷つきやすくなり外観欠点などの問題を引き起こしやすくなる。また6000nmを超える場合は、耐擦傷性が得られるものの、塗膜の硬化収縮が大きくなり反射防止部材が湾曲し、ハンドリング性が悪くなるばかりとなるだけではなく、塗膜表面にクラックなどの外観欠点を生じ易くなるなどの問題を発生しやすくなる。
【0152】
また高屈折率層の厚みを400nm以上6000nm以下とすると、反射防止機能に加えて、高屈折率層にハードコート機能を付与することができる。このような高屈折率ハードコート層は、支持基材に耐傷性と高屈折率の両方の機能を付与できるため好ましい。高屈折率層の厚みを400nm以上6000nm以下とするためには、本発明の塗料組成物を用いた反射防止部材の製造方法において、塗料組成物中の粒子の含有比率(質量比率)を、疎水性処理無機粒子/他の無機粒子=1/30〜1/1、とすることにより可能である。
【0153】
高屈折率ハードコート層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。本発明の塗料組成物により得られる反射防止部材には、さらに、易接着層、防湿層、帯電防止層、シールド層、下塗り層や保護層などを設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
[支持基材]
反射防止部材をCRT画像表示面やレンズ表面に直接設ける場合を除き、反射防止部材は支持基材を有することが重要である。支持基材としては、ガラス板よりもプラスチックフィルムの方が好ましい。プラスチックフィルムの材料の例には、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリエーテルケトンなどが含まれるが、これらの中でも特にトリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0154】
本発明の好ましい態様においては、上述のような耐擦傷性に欠けるプラスチックフィルム上に、該塗料組成物を1回塗布する工程を設けることにより、反射防止性に加え耐擦傷性も付与できるため、従来技術のように、支持基材上にハードコート層を設ける必要はなく(若しくは支持基材としてハードコート層を有するフィルムを使用する必要はなく)、支持基材自体の耐擦傷性が劣る材料でも適用可能である。また上述のように、支持基材は接着層、シールド層、滑り層などの各種機能層を有するフィルムとすることもできる。
【0155】
支持基材の光透過率は、80%以上100%以下であることが好ましく、86%以上100%以下であることがさらに好ましい。ここで光透過率とは、光を照射した際に試料を透過する光の割合のことであり、JIS K 7361−1(1997)に従い測定することができる透明材料の透明性の指標である。反射防止部材の光透過率としては値が大きいほど良好であり、値が小さいとヘイズ値が上昇、画像劣化が生じる可能性が高くなるため好ましくない。ヘイズはJIS K 7136(2000)に規定された透明材料の濁りの指標である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。
【0156】
支持基材のヘイズは、0.01%以上2.0%以下であることが好ましく、0.05%以上1.0%以下であることがさらに好ましい。
【0157】
支持基材の屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。なお、ここでいう屈折率とは、光が空気中からある物質中に進む時、その界面で進行方向の角度を変える割合のことであり、JIS K 7142(1996)に規定されている方法により測定することができる。
【0158】
支持基材は、赤外線吸収剤あるいは紫外線吸収剤を含有してもよい。赤外線吸収剤の含有量は、支持基材の全成分100質量%において0.01質量%以上20質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上10質量%以上であることがさらに好ましい。滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を透明支持体に含有してもよい。不活性無機化合物の例には、SiO、TiO、BaSO、CaCO、タルクおよびカオリンが含まれる。更に、支持基材に、表面処理を実施してもよい。
【0159】
支持基材の表面には、各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が含まれる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
〔本発明の塗料組成物を用いた反射防止フィルムの製造方法〕
本発明の塗料組成物を用いた反射防止フィルムの製造方法では、前述の本発明の塗料組成物を、支持基材の少なくとも片面上に、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法などの塗布方法によって少なくとも1回塗布する工程(塗布工程)を有することが重要である。そして、続いて塗布した塗料組成物を加熱などにより乾燥を行う工程(乾燥工程)により、反射防止フィルムを得ることができる。
【0160】
本発明の製造方法によれば、前記本発明の塗料組成物を、支持基材の少なくとも片面上に1回のみ塗布する工程により、支持基材上に屈折率の異なる二層を同時に形成することができる。
【0161】
この屈折率の異なる二層からなる反射防止層を同時に形成するメカニズムとして以下のモデルを考えている。本発明における塗料組成物の態様は、低屈折率層構成成分であるフッ素処理無機粒子等の疎水性処理無機粒子と、高屈折率層構成成分であるその他の無機粒子を含む構成であり、該塗料組成物の粘度変化(Δη)が0.1mPa・s以上10mPa・s以下である。そしてこの粘度範囲とする一つの方法として、フッ素化合物B等の疎水性化合物Bを含むことが好ましい。以下では本発明の好ましい態様である疎水性化合物Bを含む態様についてのメカニズムを例に取り説明する。
【0162】
まず塗料組成物中では、フッ素処理無機粒子等の疎水性処理無機粒子と親和性の高い、フッ素化合物B等の疎水性化合物Bが、疎水性処理無機粒子表面に選択的に吸着し、疎水性処理無機粒子とその他の無機粒子が均一に分散した状態を保っている。この塗料組成物を支持基材上に塗布した後においても、塗布された塗料組成物は同様に疎水性処理無機粒子とその他無機粒子が均一に分散した状態を保っている。そして乾燥する工程において、低屈折率構成成分である疎水性処理無機粒子は、エネルギー的に安定な空気側(最表面)に移行し、最表層に疎水性処理無機粒子からなる低屈折率層を形成する。しかし、この状態では、乾燥途中であるため揮発しきれていない溶媒が多く存在し、揮発も並行して進行している。その揮発過程において一旦形成された低屈折率層が一度破壊されるものの、共存する低揮発性の疎水性化合物Bの存在により、溶媒が少ない状態であっても疎水性処理無機粒子同士が凝集することなく粒子の移動を容易にし、一度破壊された低屈折率層は再配列し再び均一な低屈折率層を形成することができ、下層に高屈折率層を形成するものと考えている。また疎水性化合物Bを含まない場合においてもこのように該塗料組成物の粘度変化(Δη)を0.1mPa・s以上10mPa・s以下とすることにより、疎水性処理無機粒子同士の凝集が抑制でき、疎水性化合物Bを含有する場合と同様の現象が起こり、1回のみ塗布する工程により支持基材上に屈折率の異なる二層を同時に形成することができるものと考えている。さらにバインダー原料、疎水性化合物B、溶媒として、前述の相図の関係を満たす(つまり、(バインダー原料、疎水性化合物B、溶媒)の三成分の質量比による相図において、点A(90、0、10)、点B(100、0、0)、点C(0、100、0)、点D(0、90、10)で囲まれる領域内において、疎水性化合物Bがバインダー原料と分離する。)ものを種々選択することにより、乾燥過程において疎水性化合物Bとバインダー原料が分離し、そのドライビングフォースにより、疎水性粒子の移動もより一層促進され、支持基材上に屈折率の異なる二層の界面がより明確になり更に反射防止性が向上すると推定している。
【0163】
上記のような反射防止部材を得るためには、得られる反射防止部材中から完全に溶媒を除去する事に加え、欠陥なく二層に分離させるという観点からも、乾燥工程では加熱することが好ましい。乾燥工程は、(A)材料余熱期間、(B)恒率乾燥期間、(C)減率乾燥期間に分けられるが、材料予熱期間(材料全体が乾燥する温度まで昇温する期間)から、恒率乾燥期間(塗液が動かなくなるまでの期間)にかけて、溶媒の蒸発に伴い屈折率の異なる二層を形成するが、二層を形成する無機粒子の移動に十分な時間を確保するため、風速が低く、できるだけ低温で乾燥することが好ましい。
【0164】
この乾燥初期である(A)材料余熱期間や(B)恒率乾燥期間における風速としては、1m/s以上10m/s以下であることが好ましく、より好ましくは1m/s以上5m/s以下である。乾燥後期における減率乾燥期間においては、残存溶媒を減らせる点から、風速は10m/s以上70m/s以下であるのが好ましく、また温度は100℃以上200℃以下であるのが好ましい。加熱温度としては、用いる溶媒の沸点及びポリマーのガラス転移温度などから決定できるが特に限定される値ではない。乾燥工程における、加熱方式としては、熱風噴射、赤外線、マイクロ波、誘導加熱などが挙げられる。この中でも、乾燥初期である(A)材料余熱期間や(B)恒率乾燥期間においては、風速、温度の点から、塗工面に対し、平行に送風する熱風乾燥が好ましいが、特に限定されるものではない。また乾燥後期である(C)減率乾燥期間においては、汎用性、乾燥速度の点から塗工面に対し、垂直に送風する熱風乾燥であるのが好ましい。
【0165】
さらに、乾燥工程後に形成された支持基材上の2層に対して、熱またはエネルギー線を照射する事によるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化工程において、熱で硬化する場合には、室温から200℃であることが好ましく、溶媒の蒸発および、シラノールなどを含む樹脂の硬化助剤の観点から、より好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは130℃以上200℃以下である。100℃以上とすることにより、残存する溶媒量が減少し、非常に短時間でシラノールなどを含む樹脂の硬化が進むために好ましい。
【0166】
また、エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)及び/又は紫外線(UV線)であることが好ましい。また紫外線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。酸素濃度が高い場合には、最表面の硬化が阻害され、硬化が不十分となり、耐擦傷性、耐アルカリ性が不十分となる場合がある。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100mW/cm以上3000mW/cm以下、好ましくは200mW/cm以上2000mW/cm以下、さらに好ましくは300mW/cm以上1500mW/cm以下となる条件で紫外線照射を行うことが好ましく、紫外線の積算光量が100mJ/cm以上3000mJ/cm以下、好ましく200mJ/cm以上2000mJ/cm以下、さらに好ましくは300mJ/cm以上1500mJ/cm以下となる条件で紫外線照射を行うことがより好ましい。ここで、紫外線照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計及び被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
【0167】
硬化を熱により行う場合、乾燥工程と硬化工程とを同時におこなってもよい。
【0168】
また本発明の製法により得られた反射防止部材は、PDPなどの各種画像表示装置の視認側表面に設けることで、反射防止性に優れた画像表示装置を提供することができる。なおこの際は、反射防止部材における支持基材側を画像表示装置側として、反射防止部材などを設けることが重要である。
【実施例】
【0169】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
[製造例]
[高屈折率層構成成分(a)の調整]
高屈折率の酸化チタン粒子を含有するELCOM TO1019TIC(日揮触媒化成株式会社製:固形分30質量%)と多官能アクリレートであるカヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%)を混合し、固形分濃度40%の高屈率層構成成分(a)を得た。
【0170】
[高屈折率層構成成分(b)の調整]
高屈折率のアンチモン含有酸化スズ粒子を含有するオプスターTU4005(JSR社製:固形分30質量%)と多官能アクリレートであるカヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%)を混合し、固形分濃度40%の高屈率層構成成分(b)を得た。
【0171】
[高屈折率層構成成分(c)の調整]
高屈折率の酸化ジルコニウム粒子を含有するTYZ67−H01(東洋インキ株式会社製:固形分30質量%)と多官能アクリレートであるカヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%)を混合し、固形分40%の高屈折率層構成成分(c)を得た。
【0172】
[高屈折率層構成成分(d)の調整]
高屈折率の酸化チタン粒子を含有するELCOM TO1019TIC(日揮触媒化成株式会社製:固形分30質量%)と多官能アクリレートであるカヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%)を混合し、固形分濃度60%の高屈率層構成成分(d)を得た。
【0173】
[高屈折率層構成成分(e)の調整]
高屈折率の酸化チタン粒子を含有するELCOM TO1019TIC(日揮触媒化成株式会社製:固形分30質量%)と多官能アクリレートであるカヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%)を混合し、固形分濃度3.5%の高屈率層構成成分(e)を得た。
【0174】
[高屈折率層構成成分(f)の調整]
高屈折率の酸化アンチモン含有酸化スズであるオプスターTU4005(JSR社製:固形分30質量%)と多官能アクリレートであるカヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%)を混合し、固形分濃度40%の高屈率層構成成分(f)を得た。
【0175】
[低屈折率層構成成分の調整]
[低屈折率層構成成分(a)の調整]
中空シリカであるスルーリア4110(日揮触媒化成株式会社製:固形分濃度20質量%)15gに、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.37gと10質量%蟻酸水溶液0.17gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。ついで、疎水性化合物A(フッ素化合物A)であるHC=CH−COO−CH−(CFF 1.38g及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.057gを加えた後、60分間90℃にて加熱撹拌した。その後、イソプロピルアルコールを加え希釈し、固形分14質量%の低屈折率層構成成分(a)とした。
【0176】
[低屈折率層構成成分(b)の調整]
中空シリカであるスルーリア4110(日揮触媒化成株式会社製:固形分濃度20質量%)15gに、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.37gと10質量%蟻酸水溶液0.17gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。その後、イソプロピルアルコールを加え希釈し、固形分14質量%の低屈折率層構成成分(b)とした。
【0177】
[低屈折率層構成成分(c)の調整]
中空シリカであるスルーリア4110(日揮触媒化成株式会社製:固形分濃度20質量%)15gに、イソプロピルアルコールを加え希釈し、固形分14質量%の低屈折率層構成成分(c)とした。
【0178】
[低屈折率層構成成分(d)の調整]
中空シリカであるスルーリア4110(日揮触媒化成株式会社製:固形分濃度20質量%)15gに、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.37gと10質量%蟻酸水溶液0.17gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。ついで、疎水性化合物A(フッ素化合物A)であるHC=CH−COO−CH−(CFF 1.38g及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.057gを加えた後、60分間90℃にて加熱撹拌した。その後、イソプロピルアルコールを加え希釈し、固形分3.5質量%の低屈折率層構成成分(d)とした。
【0179】
[低屈折率層構成成分(e)の調整]
中空シリカであるスルーリア4110(日揮触媒化成株式会社製:固形分濃度20質量%)15gに、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.37gと10質量%蟻酸水溶液0.17gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。ついで、疎水性化合物A(フッ素化合物A)である、HC=CH−COO−CH−(CFFを0.90gと疎水性化合物A(シリコーン化合物A)である、PC−4131(大日本インキ化学工業株式会社製)0.48g及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.057gを加えた後、60分間90℃にて加熱撹拌した。その後、イソプロピルアルコールを加え希釈し、固形分3.5質量%の低屈折率層構成成分(e)とした。
【0180】
[低屈折率層構成成分(f)の調整]
中空シリカであるスルーリア4110(日揮触媒化成株式会社製:固形分濃度20質量%)15gに、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.37gと10質量%蟻酸水溶液0.17gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。ついで、疎水性化合物A(フッ素化合物A)である、HC=CH−COO−CH−(CFFを0.90gと、疎水性化合物A(シリコーン化合物A)である、PC−4151(大日本インキ化学工業株式会社製)0.48g及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.057gを加えた後、60分間90℃にて加熱撹拌した。その後、イソプロピルアルコールを加え希釈し、固形分3.5質量%の低屈折率層構成成分(f)とした。
【0181】
[低屈折率層構成成分(g)の調整]
中空シリカであるスルーリア4110(日揮触媒化成株式会社製:固形分濃度20質量%)15gに、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.37gと10質量%蟻酸水溶液0.17gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。ついで、疎水性化合物A(シリコーン化合物A)であるPC−4151(大日本インキ化学工業株式会社製)1.38g及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.057gを加えた後、60分間90℃にて加熱撹拌した。その後、イソプロピルアルコールを加え希釈し、固形分3.5質量%の低屈折率層構成成分(g)とした。
【0182】
[低屈折率層構成成分(h)の調整]
中空シリカであるスルーリア4110(日揮触媒化成株式会社製:固形分濃度20質量%)15gに、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.37gと10質量%蟻酸水溶液0.17gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。ついで、疎水性化合物A(長鎖炭化水素化合物A)である、PC−4151(大日本インキ化学工業株式会社製)1.38g及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.057gを加えた後、60分間90℃にて加熱撹拌した。その後、イソプロピルアルコールを加え希釈し、固形分3.5質量%の低屈折率層構成成分(h)とした。
【0183】
[低屈折率層構成成分(i)の調整]
中空シリカであるスルーリア4110(日揮触媒化成株式会社製:固形分濃度20質量%)15gに、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.37gと10質量%蟻酸水溶液0.17gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。ついで、疎水性化合物A(長鎖炭化水素化合物A)である、PC−4151(大日本インキ化学工業株式会社製)1.38g及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.057gを加えた後、60分間90℃にて加熱撹拌した。その後、イソプロピルアルコールを加え希釈し、固形分3.5質量%の低屈折率層構成成分(i)とした。
【0184】
〔塗料組成物1〜38〕
以下の方法により塗料組成物1〜38を調整した。
【0185】
[塗料組成物1]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0186】
[塗料組成物2]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(c)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0187】
[塗料組成物3]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(b)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0188】
[塗料組成物4]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0189】
[塗料組成物5]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0190】
[塗料組成物6]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合し、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0191】
[塗料組成物7]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0192】
[塗料組成物8]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0193】
[塗料組成物9]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物であるHC=CH−COO−CHCFCFを、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0194】
[塗料組成物10]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるCF(CFCHCHSi(OCHを、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0195】
[塗料組成物11]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるCF(CFCHCHSi(OCHを、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0196】
[塗料組成物12]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物Bである、CF(CFCHCHSi(OH)の9量体オリゴマーを、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0197】
[塗料組成物13]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物Bである、CF(CFCHCHSi(OH)の7量体オリゴマーを、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0198】
[塗料組成物14]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物Bである、HC=CH−COO−CH−(CFFの6量体オリゴマーを、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0199】
[塗料組成物15]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物Bである、CF(CFCHCHSi(OH)の3量体オリゴマーを、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0200】
[塗料組成物16]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物である、HO−CH−CFCFを20質量%となるように添加し、塗料組成物とした。
【0201】
[塗料組成物17]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物である、HO−CH−CFを20質量%となるように添加し、塗料組成物とした。
【0202】
[塗料組成物18]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物である、HC=CH−COO−CH−CFを20質量%となるように添加し、塗料組成物とした。
【0203】
[塗料組成物19]
低屈折率層構成成分(b)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物Bである、HC=CH−COO−CH−(CFFを表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0204】
[塗料組成物20]
低屈折率層構成成分(c)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物Bである、HC=CH−COO−CH−(CFFを表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0205】
[塗料組成物21]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(d)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0206】
[塗料組成物22]
低屈折率層構成成分(d)と高屈折率層構成成分(e)をそれぞれ質量比にて1:1となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0207】
[塗料組成物23]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにアクリレートモノマーであるトリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート[CH=CHCO−(OCH−OCH−CCHCHを44質量%添加し、塗料組成物とした。
【0208】
[塗料組成物24]
疎水性化合物Bを含まない以外は塗料組成物1と同様に作成し、塗料組成物とした。
【0209】
[塗料組成物25]
低屈折率層構成成分(d)と高屈折率層構成成分(e)をそれぞれ質量比にて10:1となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0210】
[塗料組成物26]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(f)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、塗料組成物とした。
【0211】
[塗料組成物27]
低屈折率層構成成分(e)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0212】
[塗料組成物28]
低屈折率層構成成分(f)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0213】
[塗料組成物29]
低屈折率層構成成分(g)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0214】
[塗料組成物30]
低屈折率層構成成分(h)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるCF(CFCHCHSi(OH)を、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0215】
[塗料組成物31]
低屈折率層構成成分(i)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるCF(CFCHCHSi(OH)を、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0216】
[塗料組成物32]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにシリコーン化合物BであるPC−4131を、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0217】
[塗料組成物33]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらに長鎖炭化水素化合物Bであるn−デシルトリメトキシシラン(Z−6210、東レ・ダウコーニング株式会社製)を、20質量%となるように添加し、塗料組成物とした。
【0218】
[塗料組成物34]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFとシリコーン化合物AであるPC−4131を、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0219】
[塗料組成物35]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFと長鎖炭化水素化合物Bであるn−オクチルトリトリエトキシシラン(Z−6341、東レ・ダウコーニング株式会社製)を、表に記載の(表面処理に使用していない)疎水性化合物Bの含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0220】
[塗料組成物36]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、塗料組成物とした。
【0221】
[塗料組成物37]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、塗料組成物とした。
【0222】
[塗料組成物38]
低屈折率層構成成分(b)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、塗料組成物とした。
【0223】
[反射防止部材の作製]
支持基材としてPETフィルム上に易接着性層が形成されているU46(東レフィルム株式会社製)をもちいた。この支持基材の易接着層面上に、実施例・比較例として表に記載の塗料組成物をバーコーター(#10)を用いて塗布後、100℃にて2分間乾燥し、160W/cmの高圧水銀灯ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600W/cm、積算光量800mJ/cmの紫外線を、酸素濃度0.1体積%の下で照射し、反射防止部材を作製した。
【0224】
[反射防止部材の評価]
作製した反射防止部材について次に示す性能評価を実施し、得られた結果を表に示した。特に断りのない場合を除き、測定は各実施例・比較例において、1つのサンプルについて場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。
[最低反射率(%)]
反射防止性能の評価は島津製作所製分光光度計UV−3100を用いて400nmから800nmの波長範囲にて行い、最低反射率(ボトム反射率)を測定し、1%以下を合格とした。測定は、反射防止部材中の屈折率の異なる2層の側(支持基材とは反対側)から行った。
[耐擦傷性]
反射防止部材に250g/cm荷重となるスチールウール(#0000)を垂直にあて、1cmの長さを10往復した際に目視される傷の概算本数を記載した。測定は、反射防止フィルム中の屈折率の異なる2層の側(支持基材とは反対側)から行った。
【0225】
傷の本数 0本以上〜5本未満 ◎
5本以上 ○
[反射防止部材サンプルの透明性]
反射防止部材サンプルの透明性はヘイズ値(%)を測定することにより判定した。測定はJIS K 7136(2000)に基づき、日本電色工業(株)製 ヘイズメーターを用いて、反射防止部材サンプルの支持基材とは反対側(屈折率の異なる2層の側)から光を透過するよう、装置に置いて測定を行い、1.0%未満は評価○、1.0%以上を評価×とした。
【0226】
[バインダー原料、無機粒子、溶媒の3成分のみからなる塗料の透明性]
50ccスクリュー管(アズワン製、商品名〔ラボランパック〕)に、塗料組成物に使用するバインダー原料、無機粒子、溶媒の3成分のみを、総量が30gとなるように図2の相図中の点X(1、1、98)、点Y(48、1、51)、点Z(1、48、51)の質量割合で計り取った塗料を攪拌機にて1分間攪拌した後、30ml石英セルに移し、その後25℃にて1分間静置した塗料のヘイズ値(%)を測定することにより判定した。ゼロ点補正は、石英セルのみを入れた状態で行った。
【0227】
測定は、JIS K7136(2000)に基づき、日本電色工業(株)製 ヘイズメーターを用いて塗料の透明性を測定した。点X、Y、Zの全ての点において10%以下の場合を評価○、点X,Y,Zのうちいずれかの点で10%を超える場合を評価×とした。
【0228】
[バインダー原料、疎水性化合物B,溶媒の3成分のみからなる塗料の分離性]
50ccスクリュー管(アズワン製、商品名〔ラボランパック〕)に、塗料組成物に使用するバインダー原料、疎水性化合物B、溶媒の3成分のみを、総量が30gとなるように図1の相図中の点ABCDで囲まれる領域内の点a(91、1、8)、点b(98,1,1)、点c(1、98、1)、点d(1、91、8)、点e(46,46、8)、点f(49.5、49.5、1)、さらに点HADで囲まれる領域内の点X(1,1,98)、点Y(48,1、51)、点Z(1、48、51)の質量割合でそれぞれ計り取る。そしてこの点a〜f、点X〜Zの塗料を、攪拌機にてそれぞれ1分間攪拌した後、25℃にて1時間静置する。
【0229】
静置して上層と下層とに分離した液の上層及び下層のそれぞれについて、C13−NMR(日本電子社製/核磁気共鳴装置JNM−GX270)を用いて分析することにより、上層中の疎水性化合物Bとバインダー原料との質量比率を算出し、上層中の疎水性化合物Bとバインダー原料の総和を100質量%とした際に、疎水性化合物Bの質量割合が80質量%以上か否かを確認した。さらに下層についても同様に、疎水性化合物Bとバインダー原料の質量割合を算出し、下層での疎水性化合物Bとバインダー原料の総和を100質量%とした際に、バインダー原料の質量割合が80質量%以上であるか否かを確認した。
【0230】
そして点a〜fが、上層中の疎水性化合物Bの質量割合が80質量%以上、かつ下層中のバインダー原料の質量割合が80質量%以上であり、さらに点X〜Zが、上層中の疎水性化合物Bの質量割合が80質量%未満、かつ下層中のバインダー原料の質量割合が80質量%未満である場合を、分離性○として、それ以外の場合を分離性×とした。
[2層の界面の有無]
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、支持基材上の2層の界面の有無を判断した。界面の有無の判断は以下の方法に従い判断した。TEMにより20万倍の倍率で撮影した画像を、スキャナーを用いてプレゼンテーションソフトウェア(Microsoft Power Point2003)に貼付した。次いで貼付した写真のイメージコントロール処理(コントラストを90%とする)を行い、コントラストを強調した。この際に、1つの層と他の層との界面に明確な境界を引くことができる場合を、明確な界面があるとみなした(明確な境界を引くことができる場合を界面有りとして「○」で示し、明確な境界を引くことができない場合を界面無しとして「×」で示した。)。
〔2層の層厚み〕
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、支持基材上の2層の各層の厚みを測定した。各層の厚みは、以下の方法に従い測定した。TEMにより20万倍の倍率で撮影した画像から各層の厚みを読み取った。合計で10点の層厚みを測定して平均値とした。
[2層個々の屈折率]
本発明における2層個々の屈折率は、反射分光膜厚計(大塚電子製、商品名[FE−3000])により、300〜800nmの範囲での反射率を測定し、該装置付属のソフトウェア[FE−Analysis]を用い、大塚電子株式会社製[膜厚測定装置 総合カタログP6(非線形最小二乗法)]に記載の方法に従い、550nmにおける屈折率を求めた。
【0231】
屈折率の波長分散の近似式としてCauchyの分散式(式5)を用い最小二乗法(カーブフィッティング法)により、光学定数(C、C、C)を計算し、550nmにおける屈折率を測定した。
[粒子の数平均粒子径]
粒子の数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡により反射防止部材の断面構造を観察することにより求めた。倍率を50万倍とし、その画面内に存在する10個の粒子の外径を測定し、その平均値とした。画面内に10個の粒子が存在しない場合は、同じ条件で別の箇所を観察し、その画面内に存在する粒子の外径を測定して、合計で10個の粒子の外径を測定して平均値とした。
【0232】
ここで外径とは、粒子の最大の径(つまり粒子の長径であり、粒子中の最も長い径を示す)を表し、内部に空洞を有する粒子の場合も同様に、粒子の最大の径を表す。
【0233】
なお、疎水性処理無機粒子における外径も、同様にARフィルムを倍率50万倍として観察することで求めているが、疎水性処理無機粒子については、表面処理に使用した疎水性化合物A等は観察できないため、実質的には表面処理される前の無機粒子の外径と同様の値となる。
[表面張力γ(mN/m)]
本発明におけるフッ素化合物Bの表面張力γは、自動接触角計(協和界面科学株式会社製、DM−501)により、25℃の環境下にてテフロン(登録商標)製のシリンジより液体の化合物を押し出し、シリンジの先端に液滴に形成された液滴の形状を付属の多機能統合解析ソフトである「FAMAS」により、「FAMAS取扱い説明書」に記載の方法に従い、表面張力を算出した。算出に必要なパラメーターとして、化合物の密度が必要であるが、化合物の密度は、25℃の環境下にて密度比重計(京都電子工業株式会社製、DA―130N)を用いて測定した値を用いた。
[振動式粘度計による粘度η(mPa/s)]
本発明におけるフッ素化合物Bの振動式粘度計による粘度ηは、音叉型振動式粘度計(株式会社エー・アンド・デイ製、SV−10)により、オプションである循環水ジャケットに通水し25℃の環境下にて、「振動式粘度計取扱い説明書」に記載の方法に従い、粘度ηを測定した。
[モル体積V(cm/mol)]
フッ素化合物Bのモル体積Vは、基のモル体積を「フッ素試薬」2008カタログ(ダイキン化成品販売株式会社)に基づいて算出し、フッ素化合物Bのモル体積Vを算出した。
[数平均分子量]
本発明におけるフッ素化合物Bの数平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒にし、分子量既知の単分散ポリスチレンを標準物質として用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GC−2010 株式会社島津製作所)により測定して求めた。
[粘度変化Δη]
塗料組成物のせん断粘度η及びηは次のように測定した。測定装置はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製レオメーターAR1000を使用し、測定用ジオメトリーには、直径40mm 角度2°のコーンアンドプレートを使用した。
【0234】
測定は、測定温度25℃で、ステップ状にせん断速度を変化させた定常流測定を行った。具体的には、せん断速度100s−1で予備せん断(30秒間)後、せん断速度1000s−1から0.01s−1まで、対数間隔で計16点(1000s−1、10s−1、0.1s−1、0.01s−1の4点を含む16点)の測定を行った。このデータからせん断速度0.1s−1における粘度η(mPa・s)、および10s−1における粘度η(mPa・s)を求めた。そして、粘度ηと粘度ηの差である粘度変化Δη(=η−η)を求めた。
【0235】
【表1−1】

【0236】
【表1−2】

【0237】
【表2−1】

【0238】
【表2−2】

【0239】
【表3−1】

【0240】
【表3−2】

【0241】
【表4−1】

【0242】
【表4−2】

【0243】
表において、「疎水性処理無機粒子」と記載された欄の数平均粒子径は、疎水性処理無機粒子とする前の(表面処理する前の)無機粒子の数平均粒子径である。
【0244】
表から明らかなように、塗料組成物の粘度変化(Δη)が0.1〜10mPa・sの場合(実施例1〜29)では、2層界面が明確な屈折率の異なる2層を形成し、反射防止性、耐擦傷性、透明性に優れたバランスのよいフィルムであった。
【0245】
また塗料組成物の粘度変化が0.1未満の場合(比較例1)では、透明性、耐擦傷性が良好であるものの、反射防止性に劣り、2層の明確な界面が見られないものであった。
【0246】
また塗料組成物の粘度変化が10を越える場合(比較例2、3、6〜9)では、透明性、耐擦傷性が良好であるものの、反射防止性に劣り、2層の明確な界面が見られないものであった。
【0247】
塗料組成物が、疎水性処理無機粒子を含有しない場合(比較例4、5、9)では、透明性、耐擦傷性が良好であるものの、反射防止性に劣り、2層の明確な界面が見られないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上の無機粒子を含む塗料組成物であって、
該2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類の無機粒子が、疎水性化合物Aにより表面処理された無機粒子(以後、疎水性化合物Aにより表面処理された無機粒子を、疎水性処理無機粒子とよぶ)であり、
該塗料組成物の粘度変化(Δη)が、0.1mPa・s以上10mPa・s以下であることを特徴とする塗料組成物。
(ここでΔηとは、せん断速度0.1s−1における粘度ηと、せん断速度10s−1における粘度ηの差(η−η)を表す。)
【請求項2】
前記塗料組成物が、以下の疎水性化合物Bを含むことを特徴とする、請求項1に記載の塗料組成物。疎水性化合物Bとは、フッ素化合物B、長鎖炭化水素化合物B、及びシリコーン化合物Bからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である。
フッ素化合物Bとは、炭素数4以上のフルオロアルキル基を有する化合物である。
長鎖炭化水素化合物Bとは、炭素数8以上の炭化水素基を有する化合物である。
シリコーン化合物Bとは、シロキサン基を有する化合物である。
【請求項3】
前記疎水性化合物Bが、フッ素化合物Bを含み、
該フッ素化合物Bが、反応性部位を有し、さらに数平均分子量が300以上4000以下の化合物であることを特徴とする、請求項2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記フッ素化合物Bが、下記一般式(A)のモノマー、一般式(B)のモノマー、一般式(A)のモノマーに由来するオリゴマー、及び一般式(B)のモノマーに由来するオリゴマーからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることを特徴とする請求項3に記載の塗料組成物。
C=C(R)−COO−R−Rf1 ・・・一般式(A)
A−R−Rf1 ・・・一般式(B)
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rf1は炭素数4〜7の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、R、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、Aは反応性部位である。)
【請求項5】
前記疎水性処理無機粒子を除いた無機粒子を、他の無機粒子とした際に、前記塗料組成物が他の無機粒子を少なくとも1種類含有し、
疎水性処理無機粒子と他の無機粒子の含有比率(質量比率)が、疎水性処理無機粒子/他の無機粒子=1/30〜1/1であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記塗料組成物が、バインダー原料、溶媒を含有し、
バインダー原料、疎水性化合物B、溶媒が以下の関係を満たすことを特徴とする、請求項2〜5のいずれかに記載の塗料組成物。
(バインダー原料、疎水性化合物B、溶媒)の三成分の質量比で決められる相図において、点A(90、0、10)、点B(100、0、0)、点C(0、100、0)、点D(0、90、10)で囲まれる領域内において、疎水性化合物Bがバインダー原料と分離する。
(但し、点ABCDで囲まれる領域とは、点ABCDで決められる台形の線上を含まない。)
【請求項7】
前記塗料組成物が、バインダー原料、溶媒を含有し、
バインダー原料、無機粒子(疎水性処理無機粒子と他の無機粒子との全成分)、溶媒が以下の関係を満たすことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の塗料組成物。
(バインダー原料、無機粒子、溶媒)の三成分の質量比で決められる相図において、点E(50、0、50)、点F(0、50、50)、点G(0、0、100)で囲まれる領域内において、バインダー原料、無機粒子、溶媒からなる液のヘイズ値が10%以下である。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の塗料組成物を、支持基材の少なくとも片面上に1回のみ塗布することにより、屈折率の異なる2層からなる反射防止層を形成することを特徴とする、反射防止部材の製造方法。
【請求項9】
請求項8の製造方法により得られる反射防止部材を設けたことを特徴とする、画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−84710(P2011−84710A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41582(P2010−41582)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】