説明

塗料組成物及びこれを用いた塗装金属板

【課題】硬度、低温加工性が良好であって、耐汚染性の優れた塗膜を形成できる、塗装鋼板用に適した塗料を得る。
【解決手段】(A)数平均分子量10,000〜30,000、ガラス転移温度−21〜−35℃、水酸基価3〜50mgKOH/gの水酸基含有ポリエステル樹脂60〜80重量部及び(B)メチルエーテル化メラミン樹脂とブチルエーテル化メラミン樹脂との混合メラミン樹脂硬化剤20〜40重量部の合計量100重量部に対して、(C)硬化触媒として、スルホン酸化合物又はスルホン酸化合物の中和物を該スルホン酸化合物の量に換算した値で0.1〜2.0重量部及び(D)沸点30〜250℃の2級アミン化合物0.3〜10重量部、を含有する塗料組成物及び該塗料組成物の硬化塗膜が形成されてなる塗装金属板。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塗膜外観、塗膜硬度、低温加工性が良好で、耐汚染性、耐ブロッキング性の優れた塗膜を形成できる塗料組成物、特に器物加工用のプレコート塗装鋼板用として適した塗料組成物、ならびにこの塗料組成物を塗装してなる塗装金属板に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来、器物加工用プレコート塗装鋼板用の上塗塗料としては、ポリエステル樹脂を基体樹脂とし、架橋剤としてメチルエーテル化メチロールメラミン樹脂を組合せた混合物に、硬化触媒を配合した塗料が、硬度、加工性のバランスに優れていることから多く用いられている。
【0003】上記従来の器物加工用プレコート塗装鋼板は、近年、硬度、加工性に加えて、耐汚染性といった性能が重要項目として要求されてきている。また、加工性については、冬期における加工の観点から0℃における低温加工性が要求されてきている。
【0004】上記従来のポリエステル樹脂−メチルエーテル化メチロールメラミン樹脂系塗料組成物において、メチルエーテル化メチロールメラミン樹脂量の増量、硬化触媒量の増量によって、塗膜の耐汚染性を向上させることができるが、加工性が低下するという問題があった。また、ポリエステル樹脂のガラス転移温度を低下させることによって加工性を向上させることができるが、塗膜の硬度、耐汚染性、耐ブロッキング性が低下するという問題があった。
【0005】本発明は、塗膜外観、硬度、低温加工性(0T加工/0℃)が良好であって、耐汚染性、耐ブロッキング性の優れた塗膜を形成できる、塗装鋼板用に適した塗料を得ることを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ポリエステル−メラミン樹脂系塗料において、ポリエステル樹脂として、非常に低いガラス転移温度を有する水酸基含有ポリエステル樹脂を使用し、メラミン樹脂としてメチルエーテル化メラミン樹脂とブチルエーテル化メラミン樹脂との混合メラミン樹脂を使用し、スルホン酸硬化触媒、及び2級アミン化合物を配合することによって上記目的を達成することができることを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】すなわち本発明は、(A)数平均分子量10,000〜30,000、ガラス転移温度−21〜−35℃、水酸基価3〜50mgKOH/gの水酸基含有ポリエステル樹脂60〜80重量部及び(B)メチルエーテル化メラミン樹脂とブチルエーテル化メラミン樹脂との混合メラミン樹脂であって、該混合メラミン樹脂中、該メチルエーテル化メラミン樹脂量が50〜99重量%であり、該ブチルエーテル化メラミン樹脂量が1〜50重量%であるメラミン樹脂硬化剤20〜40重量部の合計量100重量部に対して、(C)硬化触媒として、スルホン酸化合物又はスルホン酸化合物の中和物を該スルホン酸化合物の量に換算した値で0.1〜2.0重量部及び(D)沸点30〜250℃の2級アミン化合物0.3〜10重量部、を含有することを特徴とする塗料組成物を提供するものである。
【0008】また、本発明は、金属板上に、プライマー塗膜を介して、又は介さずに、上記塗料組成物の硬化塗膜が形成されてなることを特徴とする塗装金属板を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明塗料組成物について、さらに詳細に説明する。
【0010】ポリエステル樹脂(A)本発明組成物における(A)成分であるポリエステル樹脂は、水酸基を含有するポリエステル樹脂であり、オイルフリーポリエステル樹脂、油変性アルキド樹脂、また、これらの樹脂の変性物、例えばウレタン変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0011】上記オイルフリーポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とのエステル化物からなるものである。多塩基酸成分としては、例えば無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸などから選ばれる1種以上の二塩基酸及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが併用される。多価アルコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの二価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。両成分のエステル化又はエステル交換反応は、それ自体既知の方法によって行うことができる。酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が特に好ましい。
【0012】アルキド樹脂は、上記オイルフリーポリエステル樹脂の酸成分及びアルコール成分に加えて、油脂肪酸をそれ自体既知の方法で反応せしめたものであって、油脂肪酸としては、例えばヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、キリ油脂肪酸などを挙げることができる。アルキド樹脂の油長は30%以下、特に5〜20%程度のものが好ましい。
【0013】ウレタン変性ポリエステル樹脂としては、上記オイルフリーポリエステル樹脂、又は上記オイルフリーポリエステル樹脂の製造の際に用いられる酸成分及びアルコール成分を反応させて得られる低分子量のオイルフリーポリエステル樹脂を、ポリイソシアネート化合物とそれ自体既知の方法で反応せしめたものが挙げられる。また、ウレタン変性アルキド樹脂は、上記アルキド樹脂、又は上記アルキド樹脂製造の際に用いられる各成分を反応させて得られる低分子量のアルキド樹脂を、ポリイソシアネート化合物とそれ自体既知の方法で反応せしめたものが包含される。ウレタン変性ポリエステル樹脂及びウレタン変性アルキド樹脂を製造する際に使用しうるポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどが挙げられる。上記のウレタン変性樹脂は、一般に、ウレタン変性樹脂を形成するポリイソシアネート化合物の量がウレタン変性樹脂に対して30重量%以下の量となる変性度合のものを好適に使用することができる。
【0014】エポキシ変性ポリエステル樹脂としては、上記ポリエステル樹脂の製造に使用する各成分から製造したポリエステル樹脂を用い、この樹脂のカルボキシル基とエポキシ基含有樹脂との反応生成物や、ポリエステル樹脂中の水酸基とエポキシ樹脂中の水酸基とをポリイソシアネート化合物を介して結合した生成物などの、ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂との付加、縮合、グラフトなどの反応による反応生成物を挙げることができる。かかるエポキシ変性ポリエステル樹脂における変性の度合は、一般に、エポキシ樹脂の量がエポキシ変性ポリエステル樹脂に対して、0.1〜30重量%となる量であることが好適である。
【0015】以上に述べたポリエステル樹脂のうち、特に好適なものとしては、オイルフリーポリエステル樹脂が挙げられる。
【0016】ポリエステル樹脂(A)は、数平均分子量10,000〜30,000、好ましくは12,000〜25,000、ガラス転移温度(Tg点)−21〜−35℃、好ましくは−23℃〜−32℃、水酸基価3〜50mgKOH/g、好ましくは5〜30mgKOH/gであるポリエステル樹脂である。
【0017】本発明において、ガラス転移温度(Tg)は、示差熱分析(DTA)によるものであり、また数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものである。
【0018】ポリエステル樹脂(A)において、数平均分子量が10,000未満では低温加工性が劣り、一方、30,000を超えると得られる塗膜の架橋度が低くなり耐汚染性、耐ブロッキング性が低下しやすくなる。Tgが−35℃未満では得られる塗膜の硬度が低くなり、耐汚染性も低下しやすくなり、一方、−21℃を超えると得られる塗膜の低温加工性が劣化する。また水酸基価が3mgKOH/g未満になると得られる塗膜の架橋度が低くなり、耐汚染性、耐ブロッキング性が低下し、一方、50mgKOH/gを超えると得られる塗膜の低温加工性が劣化し、また塗面にちぢみ状の凹凸が生じやすくなり塗面の平滑性が低下する。
【0019】メラミン樹脂硬化剤(B)本発明組成物における(B)成分であるメラミン樹脂硬化剤は、メチルエーテル化メラミン樹脂とブチルエーテル化メラミン樹脂との混合メラミン樹脂である。
【0020】上記メチルエーテル化メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドなどのアルデヒド成分との付加反応生成物(1量体及び多量体のいずれであってもよい)であるメチロール化メラミン樹脂中のメチロール基の一部又は全部を、メタノールのみでエーテル化したメチル化メラミン樹脂、及びメチロール化メラミン樹脂中のメチロール基の一部又は全部を、メタノールと他の炭素原子数2〜4のアルコール、例えばエタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどとの両者によって混合エーテル化したメラミン樹脂のいずれも包含する。メチルエーテル化メラミン樹脂は、1種で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0021】上記メチルエーテル化メラミン樹脂としては、メチルエーテル化されたメチロール基の数がトリアジン核1個当り平均で3.0個以上、数平均分子量が1,000以下であるものが、ポリエステル樹脂(A)との相溶性、得られる塗膜の耐汚染性、加工性などの点から好ましい。
【0022】上記好ましいメチルエーテル化メラミン樹脂の市販品としては、例えばサイメル300、同303、同325、同327、同350、同730、同736、同738[以上、いずれも三井サイテック(株)製]、メラン522、同523[以上、いずれも日立化成(株)製]、ニカラックMS001、同MX430、同MX650[以上、いずれも三和ケミカル(株)製]、スミマールM−55、同M−100、同M−40S[以上、いずれも住友化学(株)製]、レジミン740、同747[以上、いずれもモンサント社製]などのメチル化メラミン樹脂;サイメル232、同266、同XV−514、同1130[以上、いずれも三井サイテック(株)製]、ニカラックMX500、同MX600、同MS95[以上、いずれも三和ケミカル(株)製]、レジミン753、同755[以上、いずれもモンサント社製]、スミマールM−66B[住友化学(株)製]などのメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂などを挙げることができる。
【0023】上記メチルエーテル化メラミン樹脂と混合して使用するブチルエーテル化メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドなどのアルデヒド成分との付加反応生成物(1量体及び多量体のいずれであってもよい)であるメチロール化メラミン樹脂中のメチロール基の一部又は全部を、n−ブチルアルコール又はイソブチルアルコールでエーテル化したメラミン樹脂であり、得られる塗料の塗料安定性、得られる塗膜の耐汚染性などの点から数平均分子量が800〜8,000、さらには、1,000〜3,000の範囲にあることが好ましい。ブチルエーテル化メラミン樹脂は、1種で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0024】上記好ましいブチルエーテル化メラミン樹脂の市販品としては、例えばユーバン20SE、同225[以上、いずれも三井東圧(株)製]、スーパーベッカミンJ820−60、同L−117−60、同L−109−65、同47−508−60、同L−118−60、同G821−60[以上、いずれも大日本インキ化学工業(株)製]などを挙げることができる。
【0025】本発明組成物におけるメラミン樹脂硬化剤(B)は、上記メチルエーテル化メラミン樹脂(前者)とブチルエーテル化メラミン樹脂(後者)との混合物であり、両者の合計固形分量における前者の固形分割合が、50〜99重量%、好ましくは70〜95重量%の範囲内のものが耐ブロッキング性、加工性、塗膜硬度、耐汚染性などの点から好適である。メチルエーテル化メラミン樹脂にブチルエーテル化メラミン樹脂を併用することにより、ポリエステル樹脂(A)との相溶性に劣るブチルエーテル化メラミン樹脂が塗膜表面に移行し、この硬化膜が耐汚染性に優れた効果を発揮するとともに、塗膜硬度の点にも有利に働く。塗膜内部の架橋は、主としてメチルエーテル化メラミン樹脂によって行うことができることから塗膜の加工性も保持できる。
【0026】硬化触媒(C)硬化触媒(C)は、ポリエステル樹脂(A)とメラミン樹脂硬化剤(B)との硬化反応を促進するため配合されるものであり、スルホン酸化合物又はスルホン酸化合物の中和物が用いられる。スルホン酸化合物の代表例としては、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などを挙げることができる。スルホン酸化合物の中和物における中和剤としては、1級アミン、2級アミン、3級アミン、アンモニア、苛性ソーダ、苛性カリなどの塩基性化合物を挙げることができ、なかでも2級アミンが好適である。2級アミンとしては、例えばジエチルアミン、ジn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジt−ブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、N−イソプロピルN−イソブチルアミンなどを挙げることができる。硬化触媒(C)としては、塗料の安定性、反応促進効果、得られる塗膜の物性などの点から、なかでもp−トルエンスルホン酸の2級アミン中和物及び/又はドデシルベンゼンスルホン酸の2級アミン中和物が好適である。
【0027】2級アミン化合物(D)2級アミン化合物(D)は、沸点30〜250℃の2級アミンであり、具体例として、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−プロピルアミン、ジアリルアミン、ジアミルアミン、ジn−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジsec−ブチルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ジn−オクチルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−、2,5−又は3,5−ルペチジン、ジメチルオキサゾリジン、3−ピペリジンメタノールなどが挙げられる。
【0028】塗料組成物の調製及び塗装本発明の塗料組成物は、以上に述べたポリエステル樹脂(A)、メラミン樹脂硬化剤(B)、硬化触媒(C)及び2級アミン化合物(D)を混合することによって調製することができる。
【0029】その際のポリエステル樹脂(A)とメラミン樹脂硬化剤(B)との固形分重量による配合比率は、成分(A)及び(B)の固形分の合計量を100重量部とすると以下のとおりの範囲である。
【0030】ポリエステル樹脂(A):60〜80重量部、好ましくは65〜75重量部、メラミン樹脂硬化剤(B):20〜40重量部、好ましくは25〜35重量部。
【0031】上記配合比率において、ポリエステル樹脂(A)の量が60重量部未満となる[メラミン樹脂硬化剤(B)の量が40重量部を超える]と得られる硬化塗膜の低温加工性、耐酸性が劣化し、一方、ポリエステル樹脂(A)の量が80重量部を超える[メラミン樹脂硬化剤(B)の量が20重量部未満となる]と得られる硬化塗膜の耐汚染性、耐ブロッキング性が低下しやすくなる。
【0032】硬化触媒(C)の配合量は、ポリエステル樹脂(A)及びメラミン樹脂硬化剤(B)の合計量100重量部あたり、スルホン酸化合物に換算した値として、0.1〜2.0重量部、好ましくは0.2〜1.5重量部の範囲内である。ここで「スルホン酸化合物に換算した値」とは、硬化触媒がスルホン酸の中和物である場合には、硬化触媒から中和剤を除いたスルホン酸そのものの量を意味する。硬化触媒が酸自体である場合には、その酸自体の量を意味する。上記硬化触媒(C)の配合量が、スルホン酸化合物に換算した値として、0.1重量部未満では、ポリエステル樹脂(A)とメラミン樹脂硬化剤(B)との反応を促進する効果が十分ではなく、一方、2.0重量部を超えると、得られる塗膜の加工性、耐水性が低下する。
【0033】2級アミン化合物(D)の配合量は、ポリエステル樹脂(A)及びメラミン樹脂硬化剤(B)の合計量100重量部あたり、0.3〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部の範囲内である。上記2級アミン化合物(D)の配合量が、0.3重量部未満では、耐汚染性の向上効果が十分でなく、一方、10重量部を超えると、硬化性が劣り、塗膜硬度も低下する。
【0034】本発明の塗料組成物は、上記ポリエステル樹脂(A)、メラミン樹脂硬化剤(B)、硬化触媒(C)及び2級アミン化合物(D)から実質的になることができるが、取扱い上及び塗装性の面などから、通常、有機溶剤が含有せしめられる。該有機溶剤としては、上記(A)、(B)、(C)及び(D)の各成分を溶解ないし分散できるものが使用でき、具体的には、例えば、トルエン、キシレン、高沸点石油系炭化水素などの炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテルアルコール系溶剤などを挙げることができ、これらは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0035】また、本発明組成物は、必要に応じて、着色顔料、アルミニウ粉、銅粉、ニッケル粉、酸化チタン被覆マイカ粉、酸化鉄被覆マイカ粉及び光輝性グラファイトなどの光輝性顔料;タルク、クレー、シリカ、マイカ、アルミナなどの体質顔料;塗料用としてそれ自体既知の消泡剤、塗面調整剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0036】上記着色顔料としては、塗料分野で通常使用されている着色顔料、例えば、チタン白、亜鉛華などの白色顔料;シアニンブルー、シアニングリーン、アゾ系やキナクリドン系などの有機赤色顔料、ベンツイミダゾロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系及びキノフタロン系などの有機黄色顔料;チタンイエロー、ベンガラ、カーボンブラック、黄鉛及び各種焼成顔料などの無機着色顔料が挙げられる。
【0037】本発明組成物は、例えば、金属板、プラスチックス、ガラス板などの種々の被塗物に塗装することができるが、塗装金属板を製造する場合には、被塗物として金属板を使用する。被塗物として使用される金属板としては、冷延鋼板、亜鉛系メッキ鋼板、アルミニウム板などを挙げることができ、なかでも亜鉛系メッキ鋼板を好適に使用することができる。亜鉛系メッキ鋼板としては、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、鉄−亜鉛合金メッキ鋼板、ニッケル−亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板(例えば「ガルバリウム」、「ガルファン」という商品名のメッキ鋼板)など、及びこれらの亜鉛系メッキ鋼板にリン酸亜鉛処理、クロメート処理などの化成処理を施してなる化成処理亜鉛系メッキ鋼板などを挙げることができる。また、金属板上に、耐食性の向上や塗料の密着性向上などを目的に、プライマー塗膜を設けたプライマー塗装金属板も被塗物として使用することができる。このプライマー塗膜としては、ポリエステル系プライマー、エポキシ系プライマーから得られる塗膜が好適であり、通常、2〜10μmの膜厚を有する。
【0038】本発明の塗料組成物の塗装は、特に制限されるものではなく、例えば、ロール塗装、カーテンフロー塗装、浸漬塗装、スプレー塗装などを用いて行うことができ、その際の塗装膜厚は、通常、乾燥塗膜厚で5〜30μm、特に10〜25μmの範囲内が好適である。また、上記塗料組成物の硬化条件は、塗料が硬化する焼付条件の中から適宜選択することができるが、連続的に移動する長尺の、金属板やプライマー塗装金属板に、ロール塗装などによって連続的に塗装するコイルコーティングの場合には、通常、素材到達最高温度(PMT)160〜260℃で15〜90秒の範囲内、特にPMT190〜230℃で20〜60秒の範囲内の条件が好適である。
【0039】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも重量基準によるものとする。
【0040】実施例1〜5及び比較例1〜7後記表1に示す組成配合にて塗料化を行い、各上塗塗料を得た。クロメート処理を施した厚さ0.5mmの電気亜鉛メッキ鋼板上に、関西ペイント(株)製、KPカラー8620プライマー(プレコート鋼板用ポリエステル系プライマー)を乾燥膜厚が約4μmとなるように塗装し、素材到達最高温度が220℃となるように30秒間焼付け、プライマー塗装鋼板を得た。このプライマー塗装鋼板上に上記のようにして得た各上塗塗料をバーコータにて乾燥膜厚が約18μmとなるように塗装し、素材到達最高温度が220℃となるように45秒間焼付けて各上塗塗装鋼板を得た。得られた塗装鋼板について各種試験を行った。
【0041】その試験結果を表3に示す。なお表1におけるポリエステル樹脂及びメラミン樹脂の量は固形分重量による表示であり、硬化触媒の量は、それぞれのスルホン酸化合物の量に換算して重量表示した。なお、実施例及び比較例の上塗塗料の塗料化に際しては、白色顔料であるチタン白の分散を行った。また、シクロヘキサノン/スワゾール1500(コスモ石油(株)製、芳香族石油系高沸点溶剤)=60/40(重量比)の混合溶剤を塗料粘度調整などのために使用した。塗装に際しては、塗料粘度をフォードカップ#4で約90秒(25℃)に調整した。
【0042】実施例6実施例1において、クロメート処理を施した厚さ0.5mmの電気亜鉛メッキ鋼板上に、プライマーを塗装せずに、この鋼板に直接に後記表1の実施例6の欄に記載の配合の塗料組成物を塗装する以外は実施例1と同様に行い、メッキ鋼板上にプライマー塗膜を介さずに上塗塗膜を形成した塗装鋼板を得た。塗料作成において、クロム酸ストロンチウムの分散はチタン白の分散に際してクロム酸ストロンチウムを混合して行った。得られた塗装鋼板について各種試験を行った。その結果を表3に示す。
【0043】
【表1】


【0044】表1中の(註)は、それぞれ下記のとおりの意味を有する。
【0045】表1中の(*1)〜(*8)に示すポリエステル樹脂は、下記表2に示す性状値を有する。
【0046】
【表2】


【0047】(*9)サイメル303:三井サイテック(株)製、低分子量メチルエーテル化メラミン樹脂、ヘキサキス(メトキシメチル)メラミンの含有量が60重量%以上。
【0048】(*10)J−820−60:商品名「スーパーベッカミンJ−820−60」、大日本インキ化学工業(株)製、n−ブチルエーテル化メラミン樹脂溶液。
(*11)ネイキュア5225:米国 キング インダストリイズ社製、ドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和物溶液。
【0049】(*12)ネイキュア2500X:米国 キング インダストリイズ社製、パラトルエンスルホン酸のアミン中和物溶液。
【0050】
【表3】


【0051】表3中における試験は下記試験方法に従って行った。
【0052】試験方法塗面外観:塗面(30cm×30cm)の外観を肉眼で観察した。塗面に縮みの発生がなく、ハジキ、凹み、曇りなどの塗面異常の認められないものを良好(○)とした。縮みが少し発生したものを(△縮み)、縮みが著しく発生したものを(×縮み)と表示した。
【0053】光沢:JIS K−5400 7.6(1990)に規定の60度鏡面光沢度に従い、60度鏡面反射率を測定した。
【0054】鉛筆硬度:塗装板の塗膜について、JIS K−5400 8.4.2(1990)に規定する鉛筆引っかき試験を行い、すり傷による評価を行った。
【0055】密着性:JIS K−5400 8.5.2(1990)碁盤目−テ−プ法に準じて、試験板の塗膜表面にカッターナイフで素地に到達するように、直交する縦横11本ずつの平行な直線を1mm間隔で引いて、1mm×1mmのマス目を100個作成した。その表面にセロハン粘着テ−プを密着させ、テ−プを急激に剥離した際のマス目の剥れ程度を観察し下記基準で評価した。
【0056】
○:塗膜の剥離が全く認められない△:塗膜がわずかに剥離したが、マス目は90個以上残存×:塗膜がかなり剥離し、マス目の残存数は90個未満。
【0057】耐衝撃性:JIS K−5400 8.3.2(1990)デュポン式耐衝撃性試験に準じて、落錘重量500g、撃芯の尖端直径1/2インチ、落錘高さ50cmの条件にて塗装板の塗面の衝撃を与えた。ついで衝撃を加えた部分にセロハン粘着テープを貼着し、瞬時にテープを剥がしたときの塗膜の剥がれ程度を下記基準で評価した。
【0058】
○:塗面に剥がれが認められない△:塗面にわずかの剥がれが認められる×:塗面にかなりの剥がれが認められる。
【0059】折曲げ加工性:0℃の室内において、塗面を外側にして試験板を180°折り曲げて、折曲げ部分にワレが発生しなくなるT数を目視にて評価し表示した。T数とは、折り曲げ部分の内側に何もはさまずに180°折り曲げを行った場合を0T、試験板と同じ厚さの板を1枚はさんで折り曲げた場合を1T、2枚の場合を2T、……(以下、同様)……、6枚の場合を6Tとした。
【0060】耐溶剤性:20℃の室内においてメチルエチルケトンをしみ込ませたガーゼにて塗面に約1Kg/cm2 の荷重をかけて、約5cmの長さの間を往復させた。プライマ−塗膜(プライマー塗膜のない場合は鋼板)が見えるまでの往復回数を記録した。50回の往復でプライマ−塗膜が見えないものは50<と表示した。
【0061】耐汚染性:塗面に赤色油性インキ(登録商標「マジックインキ」大型赤)で塗面に線を引いた後、エタノールをしみ込ませたガーゼにて拭き取ったときに残存するインキ跡の程度を目視にて評価した。
【0062】
◎:インキ跡が認められない○:インキ跡がわずかに認められる△:インキ跡がかなり認められる×:インキ跡が著しく認められる耐ブロッキング性:試験板の塗面を、クロメート処理を施した厚さ0.5mmの電気亜鉛メッキ鋼板上に「KPカラー1510ベージュ」(関西ペイント(株)製、ポリエステル−メラミン樹脂系裏面用塗料)を乾燥膜厚が約8μmとなるように塗装し、素材到達最高温度が220℃となるように45秒間焼付けた塗面に、試験板の塗面を重ね合せて、温度50℃、加重150kg/cm2 の条件で24時間密着させた後、試験板を剥がした。その剥がし易さを評価した。
【0063】
◎:塗面同志が全くくっつかず板が容易にとれる○:塗面同志がわずかにくっつくが、板が容易にとれる△:塗面同志がかなりくっつき、板を剥がすのに力を要するが、剥がした塗面に異常は認められない×:塗面同志が強くくっつき、剥がすと塗面に異常が認めらる。
【0064】
【発明の効果】本発明塗料組成物は、ポリエステル−メラミン樹脂系塗料において、ポリエステル樹脂としてガラス転移温度が非常に低いものを使用し、メラミン樹脂としてメチルエーテル化メラミン樹脂とブチルエーテル化メラミン樹脂との混合メラミン樹脂を使用し、スルホン酸硬化触媒、及び特定の2級アミン化合物を配合したものである。本発明塗料組成物によって、外観、硬度、低温加工性が良好であって、耐汚染性、耐ブロッキング性の優れた塗膜を形成できる。
【0065】本発明塗料組成物から得られる塗膜が、低温加工性、耐汚染性及び耐ブロッキング性に優れている理由としては、使用するポリエステル樹脂のガラス転移温度が非常に低いこと、ポリエステル樹脂焼付け硬化時に、2級アミン化合物の塗膜表面への移行とともにブチルエーテル化メラミン樹脂が表層部へ移行し、架橋剤の分布が、表層部にブチルエーテル化メラミン樹脂、内層部にメチルエーテル化メラミン樹脂が、多く存在するため、表層部の影響が大きい耐汚染性、耐ブロッキング性が、ブチルエーテル化メラミン樹脂によって良好となり、また内層部にメチルエーテル化メラミン樹脂が多く存在するのでブチルエーテル化メラミン樹脂による加工性の低下も少ないためと考えられる。また、本発明塗料組成物は、アミン化合物の配合によって、塗面に縮みを生じやすくなるのを、ブチルエーテル化メラミン樹脂の使用によって抑制できたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)数平均分子量10,000〜30,000、ガラス転移温度−21〜−35℃、水酸基価3〜50mgKOH/gの水酸基含有ポリエステル樹脂60〜80重量部及び(B)メチルエーテル化メラミン樹脂とブチルエーテル化メラミン樹脂との混合メラミン樹脂であって、該混合メラミン樹脂中、該メチルエーテル化メラミン樹脂量が50〜99重量%であり、該ブチルエーテル化メラミン樹脂量が1〜50重量%であるメラミン樹脂硬化剤20〜40重量部の合計量100重量部に対して、(C)硬化触媒として、スルホン酸化合物又はスルホン酸化合物の中和物を該スルホン酸化合物の量に換算した値で0.1〜2.0重量部及び(D)沸点30〜250℃の2級アミン化合物0.3〜10重量部、を含有することを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】 2級アミン化合物(D)が、炭素原子数2〜16のジアルキルアミンであることを特徴とする請求項1記載の塗料組成物。
【請求項3】 金属板上に、プライマー塗膜を介して、又は介さずに、請求項1記載の塗料組成物の硬化塗膜が形成されてなることを特徴とする塗装金属板。

【公開番号】特開2000−63739(P2000−63739A)
【公開日】平成12年2月29日(2000.2.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−230367
【出願日】平成10年8月17日(1998.8.17)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】