説明

塗料

【課題】白色以外に調色する場合の安価で且つ日射反射率を高める塗料を提供する。
【解決手段】非白色顔料と白色顔料を必須成分として含有する塗料において、白色顔料として平均粒子経が0.5〜1.4μmのルチル型酸化チタンを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗料に関し、特に白色顔料と非白色顔料を調色する際に非白色顔料の使用量を相対的に抑制可能であると共に高い日射反射率を有する塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
日射反射率を高めたいわゆる遮熱性塗料が近年注目を集めており、本出願人が提案した特許文献1の塗料は従来にみられない係れた日射反射能をもつものである。この塗料の典型例は、JIS A 5759に定義される日射反射率が15%以上であって、かつCIE1976L色空間におけるL値が24以下の顔料と白色顔料とからなるものである。
【0003】
白色顔料としては種々の顔料が知られており、ルチル型酸化チタンもこの一つである。一般に塗料用に用いられているルチル型酸化チタンは重量分布による平均粒子経(粒子径分布のピークも同様)が0.3μm以下のものである。
【0004】
人間が白色として物体を認識するためには0.35μm〜0.78μmの可視光線領域が高いレベルで反射される必要があり、ここで可視光線領域0.35μm〜0.78μmを反射せしめるためには、この波長のほぼ半分の粒子径を持つ上記のルチル型酸化チタンを白色塗料の願料として使用することは利にかなっているといえる。しかし上記のルチル型酸化チタンは、白色の着色力が強いために、白色以外に塗料を調色する場合には、多量の着色顔料を混合する必要があった。
【0005】
JIS A 5759に定義される350nm〜2,100nmの波長域における日射反射率の算出式に基づいて、上記のルチル型酸化チタンを用いた着色塗料の日射反射率を測定すると、白色では高い日射反射率を示すものの、明度が低い例えばCIE1976L色空間に於けるL値が80以下に調色した場合には、規定のL値を発現するためには相当量の黒色顔料を混合する必要があるため、該黒色顔料が日射を吸収してしまい、塗膜全体としての日射反射率を高く出来ない問題があった。また、塗料の調色において、白色以外の顔料を混合する場合に、該顔料の混合比が増えることは塗料全体のコストアップの原因にもなっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は上記した従来技術の問題点を解決することにあり、特に白色以外の着色顔料を相対的に少量含有させるだけで要求される色相に発色せしめ、また高い日射反射率を有する塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1に、非白色顔料と白色顔料を必須成分として含有する塗料において、白色顔料として平均粒子経が0.5〜1.4μmのルチル型酸化チタンを用いることを特徴とする塗料である。
【0008】
本発明は、第2に、非白色顔料がCIE1976L色空間に於けるL値が30以下の着色顔料からなる上記の塗料である。
【0009】
本発明は、第3に、非白色顔料がJIS A 5759に定義される350nm〜2,100nmの波長域における日射反射率が15%以上の着色顔料からなる上記の塗料である。
【0010】
本発明は、第4に、無機微細粒子および/または無機中空微細粒子を存在させてなる上記の塗料である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、白色以外の着色顔料の含有量を相対的に低下させても要求される色相に発色させることができ経済性に係れると共に、より高い日射反射率を達成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で用いる白色顔料は平均粒子経(重量分布による)が0.5〜1.4μmのルチル型酸化チタンであり、これは従来塗料に一般的に用いられていた粒子経が0.3μm以下のルチル型酸化チタンとは明瞭に区別される。本発明で用いるルチル型酸化チタンは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上が上記の0.5〜1.4μmの粒子径内にあるものが好ましい。
【0013】
本発明の塗料において上記のルチル型酸化チタンと組合せる非白色顔料即ち着色顔料としては、黒色や茶色を典型例とする混色系顔料が好ましく、特にCIE1976L色空間に於けるL値が30以下の混色系顔料、特にそれらのうちでもJIS A 5759に定義される350nm〜2,100nmの波長域における日射反射率が15%以上である混色系顔料が好ましい。前者の要件のみを満足する顔料の例としてはカーボンブラックや鉄黒等があり、これらの場合、白色顔料として上記の限定されたルチル型酸化チタンを用いることによって、従来のルチル型酸化チタンを用いた場合に比し、着色顔料の量を相対的に低下させることができる。
【0014】
上記の両要件を満足する混色系顔料の例としては、アゾメチアゾ系顔料(商品名もクロモファインブラックA−1103(大日精化工業(株)製)、モノアゾ系エロー(商品名ホスターパームエローH3G:ヘキスト(株)製)等の黄色系顔料、酸化鉄(商品名トダカラー120ED:戸田工業(株)製)、キナクリドンレッド(Hostaperm Red E2B70:ヘキスト(株)製)等の赤色系顔料、フタロシアニンブルー(商品名シヤニンブルーSPG−8:大日本インキ(株)製)等の青色系顔料、フタロシヤニングリーン(商品名シヤニングリーン5310:大日精化工業(株)製)等の緑色系顔料等が挙げられる。
【0015】
塗料を構成するバインダとしては塗料用として知られた適宜の樹脂を用いることができる。具体例としては、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン変性ポリエステル樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリケート樹脂、フッ素樹脂、塩素系樹脂、尿素系樹脂、メラミン樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、メチル(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。通常これらの樹脂は、溶剤溶液型、非水系分散型及び水溶性型等として用途に応じて用いられる。
【0016】
本発明の塗料中の各成分の割合は特に制限されないが、塗料全体の重量当り平均粒子経0.5〜1.4μmのルチル型酸化チタンを10〜15重量%存在させることが好ましい。非白色顔料は意図する色相に応じてその使用量を変化させうるが、通常白色顔料100重量部に対して5〜150重量部、特に10〜80重量部が好ましい。
【0017】
本発明の塗料には必要に応じ体質顔料その他の従来知られた添加剤を加えることができるが、特に無機微細粒子、無機中空微細粒子を加えることは好ましい。これらの粒子径は5〜150μmが好ましく、特に透明ないし半透明のセラミック中空微細粒子が好ましい。これらは塗料中に1〜20重量%程度配合しうる。
【0018】
尚、本発明では白色顔料として従来のルチル型酸化チタンを併用することもできる。次に本発明を実施例に基づいて説明する。
【0019】
例1:
平均粒子経が0.22μm(0.1〜0.4μmの粒子の含有量が89重量%)のルチル型酸化チタン(酸化チタンAと称する)と平均粒子径が1μm(0.5〜1.5μmの粒子の含有量が86重量%)のルチル型酸化チタン(酸化チタンBと称する)を単独でまた混合して白色塗料を試作し、その塗料を用いて乾燥膜厚が300μmとなるようにアルミ金属板に塗装したものをJIS A 5759に定義される350nm〜2,100nmの波長域における日射反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
波長と分光反射率の関係を図1に示す。
【0022】
図1から、波長域が1,300nm近辺より長い波長の反射率を見ると、酸化チタンBの配合量を増やせば増やすほど反射率が高くなっているのが分かる。このことから、1,300nm以上の波長に対しては酸化チタンBが日射反射率の向上に役立つことが分かる。
【0023】
次に、太陽光線に含まれる電磁波エネルギーの波長毎の照射強度を図2に示す。
図2から明らかなように、太陽光線の内約1,300nmより長い波長に含まれる太陽エネルギーの量は極端に少ない。従って、酸化チタンBを用いた塗料を日射が直接当たる屋外に使用する場合には、約1,300nmより長い波長の反射率は高いものの、太陽エネルギーの多くが含まれる約1,300nmより短い波長に対する反射率が低いために、太陽光を反射する能力が少ない。しかし、1,300nm以上の波長を多く含む白熱灯などの光を反射せしめる塗料に使用することに対しては有用である。
【0024】
例2:
次に、酸化チタンAと酸化チタンBの着色力に関する実験を行った。
酸化チタンAとBをそれぞれ用い、カーボンブラックCIE1976L色空間に於けるL値が30となるように調色した場合の重量配合比を比較すると表3のとおりとなった。ここで使用した樹脂はアクリル樹脂である。
【0025】
【表2】

【0026】
上記から、酸化チタンBを用いた方が、着色顔料の混合を少なくできることが分かる。
【0027】
着色顔料の配合量を少なくできるから、着色顔料が高価な場合には塗料製造に必要な原材料全体のコスト低減を図ることができることになる。
【0028】
例3:
次に、可視波長域で吸収を示し赤外線波長領域では反射または透過する特性を示す顔料で、JIS A 5759に定義される350nm〜2,100nmの波長域における日射反射率が10%以上好ましくは15%以上の顔料と、酸化チタンAおよび酸化チタンBをアクリル樹脂中に混入させて、CIE1976L色空間に於けるL値が30となる塗料を試作し、乾燥膜厚が200nmとなるような塗板を作成し、各日射反射率を測定した。結果を表3に示す。
【0029】
【表3】

【0030】
この結果から、酸化チタンBを使用した塗料では、黒色顔料の含有量を少なくできることから、太陽光に含まれる近赤外線領域の反射率を向上せしめ、JIS A 5759に定義される350nm〜2,100nmの波長領域における日射反射率を高くすることが明らかとなった。
【0031】
ここで、日射反射率の違いが塗膜表面温度の上昇に及ぼす影響を考察する。日射による表面温度上昇は一般的に下記の式で表される。(特許第3375603号参照)
T=Wx(1−日射反射率)/αo
ここで、
T: 日射による上昇温度(℃)
W: 日射量
αo:外表面熱伝達率
W=800、αo=20と仮定し、表3における2−1および2−2の配合による上昇温度を計算すると表4のとおりとなる。
【0032】
【表4】

【0033】
このように、本発明の選択されたルチル型酸化チタンを用いることによって従来型のルチル型酸化チタンを用いた場合より日射による温度上昇を抑制できることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例における波長と分光反射率の関係を示すグラフ。
【図2】太陽光線に含まれる電磁波エネルギーの照射強度と波長の関係を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非白色顔料と白色顔料を必須成分として含有する塗料において、白色顔料として平均粒子経が0.5〜1.4μmルチル型酸化チタンを用いることを特徴とする塗料。
【請求項2】
非白色顔料がCIE1976L色空間に於けるL値が30以下の着色顔料からなる請求項1記載の塗料。
【請求項3】
白色顔料がJIS A 5759に定義される350nm〜2,100nmの波長域における日射反射率が15%以上の着色顔料からなる請求項2記載の塗料。
【請求項4】
無機微細粒子および/または無機中空微細粒子を存在させてなる請求項1〜3のいずれか1項記載の塗料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−8874(P2006−8874A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189088(P2004−189088)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(591278770)長島特殊塗料株式会社 (5)
【出願人】(595019555)株式会社ハウステック (7)
【Fターム(参考)】