説明

塗膜形成方法

【課題】均一な膜厚で塗装を行うことができるとともに、虫食い状の模様が生じることを防止できる簡便な塗装方法を提供する。
【解決手段】所定膜厚の70〜100%の厚みを有し、厚みに対する短径の比(短径/厚み)が2/1以上である鱗片状粒子を、塗材100重量部に対し0.5重量部以上混合せしめた後、当該塗材を基材に塗付してコテ仕上げする。塗材としては、前記鱗片状粒子の厚みよりも小さな粒子径を有する粒状骨材を含むものが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物や土木構造物等における塗膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物や土木構造物等の表面化粧材として、各種骨材を含有する塗材がよく使用されている。このような骨材含有塗材を用いて平滑な塗膜を形成しようとする場合、通常は、塗装具としてコテが使用されている。ただし、このような塗付方法によって均一な厚みで大面積を仕上げるためには、施工者に熟練した技術が求められることが多い。
【0003】
これに対し、特許文献1には、均一な厚みを得るために、目標とする膜厚とほぼ同程度の直径をもつ粒子を適量添加することが記載されている。このような粒子は、均一な膜厚を得るためのガイドとしてはたらくものである。
しかしながら、特許文献1記載の方法では、コテで塗面を均す際に粒子が転がりやすい。すなわち、虫食い状の模様が生じ、平滑性が損われる場合がある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−309748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、均一な膜厚で塗装を行うための簡便な方法を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行なった結果、目標膜厚とほぼ同程度の厚みを有する鱗片状粒子を塗材に添加することで、鱗片状粒子がガイドとなり、均一な膜厚の塗膜が得られ、しかも、粒子形状が鱗片状であることから、コテで均した場合に粒子が転がらず、虫食い状の模様が生じないため平滑な塗膜が得られることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.塗材を所定膜厚にて塗装する塗膜形成方法であって、
上記所定膜厚の70〜100%の厚みを有し、厚みに対する短径の比(短径/厚み)が2/1以上である鱗片状粒子を、
塗材100重量部に対し0.5重量部以上混合せしめた後、
当該塗材を基材に塗付してコテ仕上げすることを特徴とする塗膜形成方法。
2.前記塗材が、前記鱗片状粒子の厚みよりも小さな粒子径を有する粒状骨材を含むものである1.記載の塗膜形成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熟練者でなくとも、均一な膜厚で、平滑な塗膜を形成することができる。また、使用する鱗片状粒子の色彩を適宜選択・調整することにより、塗膜にアクセント的な意匠性を付与することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0010】
本発明の塗膜形成方法は、建築物、土木構造物等における表面化粧方法に適したものである。塗装の対象となる基材は、建築・土木の分野で使用可能なものであれば特に限定されない。具体的には、例えばコンクリート、モルタル、磁器タイル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板、石綿セメント板、ALC板、サイディング板、押出成形板、鋼板、石膏ボード、合板、プラスチック板等が挙げられる。このうち、本発明では、平坦な面を有する基材に適用した場合に安定した効果が得られる。基材を平坦化するために、予め基材の表面をサーフェーサー、フィラー、パテ等で処理することは有効な手段である。
【0011】
本発明は、このような基材に対し、所定膜厚の塗膜を形成しようとする場合に有効な方法である。塗膜の膜厚は、通常0.1〜5mm、好ましくは0.3〜3mmである。なお、本発明における所定膜厚とは、塗装時の膜厚(すなわち塗材乾燥前の膜厚)のことである。
【0012】
このような基材に対し、本発明では、所定膜厚の70〜100%の厚みを有し、厚みに対する短径の比(短径/厚み)が2/1以上である鱗片状粒子を塗材に混合せしめて塗装を行う。本発明では、このような特定の鱗片状粒子を塗材に混合することで、均一かつ平滑な膜厚の塗膜を得ることができる。鱗片状粒子としては、所望の膜厚に応じた厚みの鱗片状粒子を使用すればよい。
【0013】
鱗片状粒子の厚みは、所定膜厚の70〜100%の範囲内であればよいが、好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%である。鱗片状粒子の厚みバラツキが小さければ、より均一な膜厚の塗膜を形成することができる。
鱗片状粒子の厚みに対する短径の比(短径/厚み)は2/1以上であり、好ましくは3/1以上、より好ましくは4/1以上である。鱗片状粒子がこのような形状であれば、コテ仕上げ時における粒子の転がりを十分に防止することができる。
なお、鱗片状粒子の短径に対する長径の比(長径/短径)は、通常5/1〜1/1程度である。
【0014】
鱗片状粒子としては、上述の条件を満たす粒子であればその素材は特に限定されず、例えばガラスフレーク、貝殻片、金属片等の無機質片、あるいはゴム片、プラスチック片、木片等を使用することができる。これらは、着色コーティング等が施されたものであってもよい。
【0015】
本発明では、塗材100重量部に対し、上述の鱗片状骨材を0.5重量部以上混合する。鱗片状骨材をこのような重量比率で混合すれば、膜厚の均一化を図ることができる。鱗片状骨材の混合量が0.5重量部より少ない場合は、鱗片状骨材が膜厚ガイドとして作用することが難しくなる。
鱗片状骨材の混合量の上限は特に限定されないが、混合量が多すぎる場合は鱗片状骨材どうしが重なり合い、膜厚均一化が難しくなるおそれがあるため、通常は20重量部以下とすることが望ましい。このような混合量であれば、鱗片状骨材の配合により、形成塗膜にアクセント的な意匠性を付与することもできる。
【0016】
本発明における塗材(鱗片状骨材混合前の塗材)としては、結合剤、及び骨材を含有するものが使用できる。
このうち、結合剤としては、水溶性樹脂、水分散性樹脂、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂、粉末樹脂等の各種結合剤、あるいはこれらを複合化した結合剤等を使用することができる。これらは架橋反応性を有するものであってもよい。また、結合剤の形態は特に限定されず、1液型、2液型のいずれであってもよい。本発明では特に、水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂が好適に用いられる。使用可能な樹脂の種類としては、例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。
【0017】
骨材としては、本発明の効果を損なわない限り、種々の形状・粒子径の骨材が使用できるが、上記鱗片状粒子の厚みよりも小さな粒子径を有する粒状骨材が好適である。このような骨材としては、自然石、自然石の粉砕物等の天然骨材、及び着色骨材等の人工骨材から選ばれる少なくとも1種以上を好適に使用することができる。具体的には、例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂、及びこれらの粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、金属粒等が挙げられる。さらに、これらの表面を着色コーティングしたもの等も使用できる。このような骨材を2種以上組み合せて使用することにより、種々の色彩を表出することができる。鱗片状粒子の厚みよりも大きな粒子径を有する骨材を使用した場合は、その骨材がコテ仕上げ時に転がり、虫食い状の模様が生じやすくなる。
【0018】
骨材の粒子径は、鱗片状粒子の厚みよりも小さな範囲内であれば特に限定されないが、通常は0.05〜1mm(好ましくは0.05〜0.4mm)程度である。骨材の混合比率は、結合剤の固形分100重量部に対し、通常100〜2000重量部(好ましくは200〜1500重量部)程度である。
【0019】
本発明における塗材は、揮発成分が少なく、高固形分であることが望ましい。具体的に、塗材の高固形分は60重量%以上(さらには70重量%以上)であることが望ましい。塗材がこのような高固形分であれば、乾燥時の肉痩せの度合が小さく、乾燥膜厚均一化の点で有利である。
【0020】
本発明における塗材は、上記成分の他に通常塗材に使用可能な成分、例えば、着色顔料、体質顔料、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、希釈剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維、触媒、架橋剤等を含むものであってもよい。なお、体質顔料としては、通常、粒子径が50μm未満のものを使用する。
【0021】
本発明では、基材に対し、上述のような塗材を基材に塗付してコテ仕上げを行う。本発明では、この工程でコテを用いて塗面を均す際に、上記鱗片状粒子が塗膜面に沿って配列し、塗付厚みのガイドとしてはたらくため、均一な膜厚で塗装を行うことができる。しかも、鱗片状粒子が転がりにくいため、虫食い状の模様等が生じるのを防止することができる。コテとしては、例えば金ゴテ、木ゴテ等が使用できる。なお、塗材を基材に塗付(配り塗り)する際には、コテが使用できるのは勿論であるが、その他の方法、例えば吹き付け、ローラー塗り等を採用することもできる。
コテ仕上げ後の塗膜の乾燥は、通常、常温(5〜40℃程度)で行えばよいが、必要に応じ高温下で行うこともできる。
【0022】
以上のような方法で得られる塗膜では、鱗片状粒子が塗膜中に点在することで、塗膜形成時ないし塗膜形成後に生じる塗膜内の応力を分散する効果がはたらき、局部的な応力集中が防止される。さらに、形成塗膜の強度も高められる。このような作用によって、本発明では塗膜の割れ発生を抑制することもできる。
【0023】
本発明では、塗材の乾燥後に、必要に応じクリヤー塗料を塗付することもできる。このようなクリヤー塗料としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等を結合剤とする塗料が使用できる。このようなクリヤー塗料は、公知の艶消し剤等によって艶の程度が調整されたものであってもよい。また、本発明の効果を阻害しない限り、着色が施されたものであってもよい。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0025】
(実施例1)
水分散性樹脂200重量部(固形分100重量部)に対し、粒状骨材Aを200重量部、粒状骨材Bを120重量部、粒状骨材Cを80重量部、水を30重量部、造膜助剤を8重量部、増粘剤を1重量部、消泡剤を2重量部混合し、常法にて均一に攪拌して塗材Aを製造した。この塗材Aの固形分は約78重量%であった。なお、塗材Aの製造に使用した原料は、以下の通りである。
・水分散性樹脂:アクリル樹脂エマルション(固形分50%、ガラス転移温度20℃)
・粒状骨材A:着色珪砂(茶色、平均粒子径70μm)
・粒状骨材B:着色珪砂(赤色、平均粒子径100μm)
・粒状骨材C:着色珪砂(淡黄色、平均粒子径150μm)
・造膜助剤:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート
・増粘剤:ヒドロキシエチルセルロース粉
・消泡剤:シリコーン系消泡剤(固形分50重量%)
【0026】
上記方法で得られた塗材A100重量部に対し、鱗片状粒子A(白色貝殻片;平均長径3mm、平均短径2mm、平均厚み0.5mm)を2重量部混合して均一に攪拌した。その後、この塗材を180cm×90cmのスレート板にコテ塗りした。塗付直後の膜厚をスレート板上の10箇所で測定したところ、いずれの箇所もほぼ0.5mmであった。また、虫食い状の模様はみられなかった。
【0027】
(実施例2)
塗材Aに対し、鱗片状粒子B(白色貝殻片;平均長径5mm、平均短径4mm、平均厚み1mm)を1.5重量部混合して均一に攪拌した。その後、この塗材を180cm×90cmのスレート板にコテ塗りした。塗付直後の膜厚をスレート板上の10箇所で測定したところ、いずれの箇所もほぼ1mmであった。また、虫食い状の模様はみられなかった。
【0028】
(比較例1)
塗材Aに対し、粒状骨材D(珪砂;平均粒子径1mm)を2重量部混合して均一に攪拌した。その後、この塗材を180cm×90cmのスレート板にコテ塗りした。塗付直後の膜厚をスレート板上の10箇所で測定したところ、いずれの箇所もほぼ1mmであったが、ところどころに虫食い状の凹み模様が生じてしまった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗材を所定膜厚にて塗装する塗膜形成方法であって、
上記所定膜厚の70〜100%の厚みを有し、厚みに対する短径の比(短径/厚み)が2/1以上である鱗片状粒子を、
塗材100重量部に対し0.5重量部以上混合せしめた後、
当該塗材を基材に塗付してコテ仕上げすることを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項2】
前記塗材が、前記鱗片状粒子の厚みよりも小さな粒子径を有する粒状骨材を含むものである請求項1記載の塗膜形成方法。

【公開番号】特開2006−95358(P2006−95358A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281337(P2004−281337)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】