説明

塗膜形成方法

【課題】長期耐久性や耐候性等の性質の低下を生じることなく、塗膜硬化時間短縮を図り、塗装設備の縮小化やCO削減を図ることができる塗膜形成方法を提供する。
【解決手段】
被塗物上にベースコート塗料を塗装する工程(1)、上記工程(1)によって形成されたベースコート層上にトップコート塗料を塗装する工程(2)、上記工程(1)(2)によって形成された未硬化塗膜にエネルギー線照射を行う工程(3)及び上記工程(3)後に焼き付け硬化させる工程(4)からなる塗膜形成方法であって、上記トップコート塗料は、水酸基含有樹脂(A)と不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)とポリイソシアネート化合物(C)を含有し、上記水酸基含有樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg)が−20〜50℃、重量平均分子量が10000〜30000、水酸基価が80〜230(KOHmg/g)、1級及び2級の水酸基の比が水酸基価基準で1級水酸基/2級水酸基=30/70〜80/20であり、上記ポリイソシアネート化合物(C)は、一分子あたりの平均イソシアネート基数が2.5〜3.4であり、水酸基含有樹脂(A)の水酸基とポリイソシアネート化合物(C)のイソシアネート基との当量比(NCO/OH)が1.2〜3.0であり、(A)(B)(C)の配合割合が重量比で((A)+(C))/(B)=90/10〜50/50である塗膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜品質の向上及び乾燥工程での工程短縮という効果を両立させた塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベースコート層上にウェットオンウェットでトップコート層を形成し、焼き付け硬化を行う塗膜形成方法は、自動車塗装、プラスチック塗装等の多くの技術分野において使用されている。近年、塗膜硬化時間短縮による塗装設備等の縮小化及びそれに伴うCO削減を目的として、光硬化性であり、かつイソシアネート硬化熱硬化性の塗料組成物が検討されている(例えば、特許文献1−3参照)。しかしながら、このような熱硬化性、光硬化性の双方を有する塗料組成物を使用した場合には、ベースコートの架橋が不充分で耐水性や耐候性等の性質が低下してしまうという問題があり、改善が求められていた。
【0003】
他方では、ベースコート層及びトップコート層からなる複層塗膜の形成において、トップコート層の組成を調整することによって、ベースコート層中への硬化剤成分の浸透を促進し、耐水性、耐候性、耐溶剤性等の性能を付与することが記載されている(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
しかしながら、エネルギー線硬化型の樹脂成分を含有する系では、塗料中に含まれる成分が相違するため、このような系においてベースコートに硬化剤を浸透させ、ベースコートを架橋させることにより、耐水性や耐候性を改善するための方法については、充分な検討がなされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−263616号公報
【特許文献2】特開2005−68384号公報
【特許文献3】特表2008−501051号公報
【特許文献4】特開2008−200587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述したような観点から、耐水性や耐候性等の性質の低下を生じることなく、塗膜硬化時間短縮を図り、塗装設備の縮小化やCO削減を図ることができる塗膜形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被塗物上にベースコート塗料を塗装する工程(1)、上記工程(1)によって形成されたベースコート層上にトップコート塗料を塗装する工程(2)、上記工程(1)(2)によって形成された未硬化塗膜にエネルギー線照射を行う工程(3)及び上記工程(3)後に焼き付け硬化させる工程(4)からなる塗膜形成方法であって、上記トップコート塗料は、水酸基含有樹脂(A)と不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)とポリイソシアネート化合物(C)を含有し、上記水酸基含有樹脂(A)は、
ガラス転移温度(Tg)が−20〜50℃、
重量平均分子量が10000〜30000、
水酸基価が80〜230(KOHmg/g)、
1級及び2級の水酸基の比が水酸基価基準で1級水酸基/2級水酸基=30/70〜80/20
であり、上記ポリイソシアネート化合物(C)は、一分子あたりの平均イソシアネート基数が2.5〜3.4であり、
水酸基含有樹脂(A)の水酸基とポリイソシアネート化合物(C)のイソシアネート基との当量比(NCO/OH)が1.2〜3.0であり、
(A)(B)(C)の配合割合が重量比で((A)+(C))/(B)=90/10〜50/50であることを特徴とする塗膜形成方法である。
【0008】
上記工程(4)は、70〜100℃で行われることが好ましい。
上記トップコート塗料は、不揮発分が45〜65質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、耐水性や耐候性等の性質の低下を生じることなく、塗膜硬化時間短縮を図り、塗装設備の縮小化やCO削減を図ることができるという効果を有する。更に、リコート性においてもすぐれた性質を有する。また、特に素材の耐熱性が低いために高温での硬化が困難であるプラスチック素材を基材とする塗装方法においても、上述したような性能において優れた効果を有するものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、被塗物上にベースコート塗料を塗装する工程(1)、上記工程(1)によって形成されたベースコート層上にトップコート塗料を塗装する工程(2)、上記工程(1)(2)によって形成された未硬化塗膜にエネルギー線照射を行う工程(3)及び上記工程(3)後に焼き付け硬化させる工程(4)からなる塗膜形成方法である。上記工程からなる塗膜形成方法において、特にトップコート塗料において上述した特定の組成を有する塗料を使用することを特徴とする。
【0011】
すなわち、本発明は上述したような工程(1)〜(4)を有する塗膜形成方法において、トップコート塗料に特定の組成を有する組成物を使用したものである。これによって、トップコート組成物中の成分(特にポリイソシアネート化合物(C))が一部、ベースコート層中に浸透し、これによってベースコートが架橋し、耐水性や耐候性等の性質が改善され、長期耐久性や耐候性等の性質の低下を生じることがないと推測される。
【0012】
本発明の工程(2)において使用するトップコート塗料は、水酸基含有樹脂(A)と不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)とポリイソシアネート化合物(C)を含有するものである。
【0013】
上記水酸基含有樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg)が−20〜50℃、重量平均分子量が10000〜30000、水酸基価が80〜230(KOHmg/g)、1級及び2級の水酸基の比が水酸基価基準で1級水酸基/2級水酸基=30/70〜80/20という性質を有するものである。本発明の塗膜形成方法においては、エネルギー線照射を行った後に熱硬化を行うものである。このため、上記成分(B)の反応によって形成された樹脂が、熱硬化反応に関与する成分(特にポリイソシアネート化合物(C))のベースコート層への移行を阻害する傾向にある。このような条件下においても、密着性が充分に得られ、長期耐久性や耐候性において良好な性質を有する複層塗膜を得ることを目的として、上記水酸基含有樹脂(A)の性質を特定のものに限定したものである。
【0014】
上記水酸基含有樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、−20℃〜50℃である。上記範囲内とすることによって、トップコート層上にエネルギー線照射を行い、活性エネルギー線硬化性化合物(B)による架橋鎖が形成された後でもポリイソシアネート化合物(C)のベースコート層への浸透を阻害することがない点で好ましい。
【0015】
上記水酸基含有樹脂(A)の重量平均分子量は、10000〜30000である。10000未満では、耐溶剤性、外観といったクリヤー層に要求される膜性能を発揮できず、30000を超えると、塗料粘度が高くなり、このような高粘度の状態では塗装作業が困難となり、塗膜の外観が悪くなってしまう。揮発性有機溶剤を用いて塗料中の不揮発分の割合を少なくすることで、粘度を低くすることも可能であるが、その場合、有機溶剤による環境汚染という問題が生じる。なお、本明細書において重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0016】
上記水酸基含有樹脂(A)の水酸基価は80〜230KOHmg/gであり、好ましくは、100〜180KOHmg/gである。80KOHmg/g未満ではクリヤー層の架橋密度が不十分となり、複層膜の耐溶剤性や耐候性が低下し、230KOHmg/gを超えると三次元架橋する速度が低下し、焼付後にタックが残ったり初期の硬度が不足したりする。
【0017】
上記水酸基含有樹脂(A)は、1級および2級の水酸基を含み、その含有比率(1級水酸基/2級水酸基)が水酸基価を基準として30/70〜80/20である。上記1級水酸基は、相対的にポリイソシアネート化合物との反応性が高く、2級水酸基は相対的にポリイソシアネート化合物との反応性が低い。このため、1級および2級の水酸基の含有比率がポリイソシアネート化合物のベースコート層への浸透の度合に対して大きな影響を与える。より具体的には、反応性が高い1級水酸基を多量に有する場合は、ポリイソシアネート化合物(C)のベースコート層への浸透よりも、水酸基含有樹脂(A)とポリイソシアネート化合物(C)との反応が早く進行するため、浸透は起こりにくくなる。本発明の上述した効果を得るためには、上述したような比率の範囲で1級水酸基と2級水酸基の両方を有する水酸基含有樹脂(A)を使用することが必要になる。
【0018】
したがって、1級水酸基の含有比率が30/70未満では、ポリイソシアネート化合物(C)のベースコート層への浸透は生じやすいが、クリヤー層での硬化が不十分となり、複層膜の耐溶剤性が低下する。逆に1級水酸基の含有比率が80/20を超えると、クリヤー層での硬化は十分であるが移行し難くなり、複層膜の耐水性が低下する。
【0019】
上記水酸基含有樹脂(A)は、より具体的にはアクリル酸及び/又はメタクリル酸を主成分とした共重合体であることが好ましい。上記アクリル酸及び/又はメタクリル酸を主成分とした共重合体である水酸基含有樹脂(A)の重合に使用する単量体としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のエチレン系不飽和カルボン酸単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等のエチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;マレイン酸エチル、マレイン酸ブチル、イタコン酸エチル、イタコン酸ブチル等のエチレン系不飽和ジカルボン酸のモノエステル単量体;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの反応物等の1級水酸基含有単量体である水酸基含有エチレン系不飽和カルボン酸エステル単量体;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等の2級水酸基含有単量体である水酸基含有エチレン系不飽和カルボン酸エステル単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ブチルアミノエチル等のエチレン系不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル単量体;アミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のエチレン系不飽和カルボン酸アミノアルキルアミド単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メトキシブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のその他のアミド基含有エチレン系不飽和カルボン酸単量体;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等の不飽和脂肪酸グリシジルエステル単量体;(メタ)アクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の飽和脂肪族カルボン酸ビニルエステル単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体等を挙げることができる。上記単量体混合物は、上記単量体を単独で使用するものであっても、2以上の成分を併用して使用するものであってもよい。
【0020】
上記アクリル樹脂を得るための重合方法は特に限定されるものではなく、溶液重合、高圧重合、連続重合等の公知の方法を使用することができる。
【0021】
上記水酸基含有樹脂(A)とポリイソシアネート化合物(C)との合計がトップコート中に含まれる樹脂固形分全量に対して、下限50質量%、上限90質量%の割合で含まれることが好ましい。50質量%未満であると、ポリイソシアネート化合物のベースコート層への移行量が低下して塗膜の耐水性、耐候性が低下し、またリコート性も低下する。90%を超えるとUV照射後の架橋密度が上がらず、焼付時に垂直面でのタレが発生し外観が低下するおそれがある。上記下限は60質量%であることが好ましく、上限は80%であることがより好ましい。
【0022】
上記不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)は、1分子当たり2個以上のα,β−不飽和カルボニル基を有する化合物であることが好ましい。上記α,β−不飽和カルボニル基は、カルボニル基に対するα炭素及びβ炭素の間に二重結合がある官能基であり、例えば、メタクリレート基、アクリレート基、マレエート基、フマレート基等を挙げることができる。上記α,β−不飽和カルボニル基を1個しか有さない場合は、充分な活性エネルギー線硬化性を示さない点で好ましくない。
【0023】
上記不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)としては特に限定されず、例えば、ポリオールの(メタ)アクリル酸エステル、フマル酸やマレイン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸を酸成分として含む不飽和ポリエステル重合体、エポキシ重合体(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロイル基含有ウレタン化合物、α,β−不飽和カルボニル基含有アクリル重合体、(メタ)アクリロイル基含有ポリエーテル重合体及び(メタ)アクリロイル基含有シリコーンオリゴマー等を挙げることができる。
【0024】
上記ポリオールの(メタ)アクリル酸エステルは、2以上の水酸基を有するポリオールとアクリル酸とのエステルである。上記2以上の水酸基を有する化合物は、低分子量化合物であっても重合体であってもよい。上記ポリオールの(メタ)アクリル酸エステルとしては特に限定されず、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキシルジメタノールジ(メタ)アクリレート、4,4’−イソプロピリデンジシクロヘキサノールジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ〔5,2,1,0〕デカンジ(メタ)アクリレート、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)シアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等の低分子量ポリオールの(メタ)アクリル酸エステル;水酸基を有するアクリル重合体の(メタ)アクリル酸エステル、ポリエステルポリオールの(メタ)アクリル酸エステル、ポリエーテルポリオールの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシポリオールの(メタ)アクリル酸エステル、ポリウレタンポリオールの(メタ)アクリル酸エステル及びシリコーンポリオールのポリ(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有重合体の(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタアクリレートを指す。
【0025】
上記不飽和ポリエステル重合体としては特に限定されず、例えば、無水マレイン酸、フマル酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸及び必要に応じて使用するその他の多価カルボン酸からなる酸成分と、水酸基を2以上有するポリオールとの重縮合により得られる重合体等を挙げることができる。
【0026】
上記不飽和ポリエステル重合体に使用するポリオールとしては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4’−イソプロピリデンジシクロヘキサノール、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ〔5,2,1,0〕デカン、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)シアヌル酸、イソプロピリデンビス(3,4−シクロヘキサンジオール)並びにこれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及び/又はカプロラクトン等の付加物等を挙げることができる。
【0027】
上記不飽和ポリエステル重合体に使用することができるその他の多価カルボン酸としては特に限定されず、例えば、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、ドデセニルコハク酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸等を挙げることができる。
【0028】
上記エポキシ重合体(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、ビスフェノール型、ノボラック型等のエポキシ重合体と(メタ)アクリル酸との開環付加反応によって得られる重合体等を挙げることができる。
【0029】
上記(メタ)アクロイル基含有ウレタン化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物(C)又はそのウレタンプレポリマーと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加反応によって得られる化合物等を挙げることができる。
【0030】
上記α,β−不飽和カルボニル基含有アクリル重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルを共重合したアクリル重合体に(メタ)アクリル酸を反応させることによって得られる(メタ)アクリレート基を側鎖に有するアクリル重合体;カルボキシル基含有アクリル重合体にグリシジル(メタ)アクリレート等エポキシ基含有アクリル系単量体を反応させることによって得られる(メタ)アクリレート基を側鎖に有するアクリル重合体等を挙げることができる。
【0031】
上記(メタ)アクリロイル基含有ポリエーテル重合体としては、例えば、末端に水酸基を有するポリエーテルに、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートを反応させて得られる化合物等を挙げることができる。
【0032】
上記(メタ)アクリロイル基含有シリコーンオリゴマーとしては、例えば、両末端に3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル基を有するポリオルガノシロキサン等を挙げることができる。
【0033】
なお、上記不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)は、α,β−不飽和カルボニル基の他に、水酸基等を複数個有するものであってもよい。上記不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
本発明の塗料組成物に含まれる不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)の数平均分子量(Mn)は、下限200、上限5000の範囲内であることが好ましい。上記数平均分子量(Mn)が200未満である場合、加熱硬化時の揮散、塗膜の硬度の低下、塗料の硬化性の低下によって塗膜の耐溶剤性、耐水性や耐候性が低下する場合がある。上記数平均分子量(Mn)が5000を超える場合、不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)自体の粘度が高くなり、塗布する際の希釈された塗料中の溶液の含有量が多量になる場合がある。上記下限は、250であることがより好ましい。上記上限は、3000であることがより好ましい。なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0035】
上記不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)の二重結合当量は、下限50、上限1500の範囲内であることが好ましい。上記二重結合当量が50未満である場合、得られる塗膜中に未反応の(メタ)アクリレート基が残存し、塗膜の耐候性が低下したり、得られる塗膜が硬く脆くなったりする場合がある。また、1500を超えると、得られる塗膜の架橋密度が小さくなり、塗膜物性や性能が低下する場合がある。なお、本明細書における二重結合当量は、二重結合1個当たりの分子量を意味するものである。上記下限は、70であることがより好ましく、上記上限は、1000であることがより好ましい。
【0036】
上記不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)の市販品としては、A−TMM−3L(商品名、新中村化学社製)、M−400(商品名、東亜合成社製)、TMPTA(東亜合成社製)、D−330(商品名、日本化薬社製)等を挙げることができる。
【0037】
本発明のトップコート塗料は、更に光重合開始剤を含有することが好ましい。
上記光重合開始剤としては、公知のものを用いることができ、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテルのようなベンゾイン及びベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンのようなアセトフェノン類;2−メチル1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、N,N−ジメチルアミノアセトフェノンのようなアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンのようなアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールのようなケタール類;ベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノンのようなベンゾフェノン類又はキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等を挙げることができる。これらは、2種以上であってもよく、更にトリエタノールアミン等の3級アミン、ジメチルアミノ安息香酸エチル等の光重合開始助剤を併用することができる。
上記光重合開始剤の市販品としては、ダロキュアー1173、Irgacure184、Irgacure500、Irgacure2959(商品名、いずれもチバスペシャリティケミカルズ社製)等を挙げることができる。
【0038】
上記光重合開始剤の配合量としては特に限定されず、熱硬化と光硬化の反応割合に応じて適宜設定される。また、要求される耐候性等の度合いにより、更に、紫外線吸収剤成分等の添加剤の種類や量に応じて調整することができる。本発明で用いられる硬化性バインダーを含有する塗料組成物における上記光重合開始剤の一般的な配合量としては、上記不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)に対して、例えば、0.01〜10質量%である。
【0039】
本発明のトップコート塗料は、更にポリイソシアネート化合物(C)を含有するものである。上記ポリイソシアネート化合物(C)の一分子あたりの平均イソシアネート基数は2.5〜3.4であり、好ましくは、2.7〜3.1である。2.5未満ではクリヤー層の架橋密度が不十分となり、複層膜の耐溶剤性が低下し、3.4を超えるとクリヤー層からベース層へのポリイソシアネート化合物の移行が起こり難くなり、複層膜の耐水性が低下する。
【0040】
上記ポリイソシアネート化合物(C)としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂肪族環式イソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチル等の脂環族イソシアネート、これらのビューレット体、ヌレート体等の多量体及び混合物等を挙げることができる。
【0041】
上記トップコート塗料において、上記水酸基含有樹脂(A)に対するポリイソシアネート化合物(C)の配合比は、イソシアネート基(NCO)と水酸基(OH)との当量比(NCO/OH)が、1.2〜3.0となるような割合でなければならない。すなわち、トップコート塗料においてはイソシアネート基過剰とすることで、ポリイソシアネート化合物(C)によって、トップコート層及びベースコート層の両方を硬化させる作用を得るものであり、これによって、長期耐久性及び耐候性を得ることができる。
【0042】
上記トップコート塗料は、水酸基含有樹脂(A)、不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)及びポリイソシアネート化合物(C)の配合割合が重量比で
((A)+(C))/(B)=90/10〜50/50
である。上記範囲内とすることによって、長期耐久性や耐候性において物性を低下させることなく、塗装設備の縮小化、CO削減等の効果を得ることができる。
【0043】
上記トップコート塗料中には、上記重合体の他、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、酸化防止剤、架橋樹脂粒子、表面調整剤等を配合しても良い。なお、上記トップコート塗料は、クリヤー塗料であることが好ましい。
【0044】
上記トップコート塗料は、その形態を特に限定するものではないが、溶剤系であることが好ましい。特に、溶剤として酢酸カービトール(ジエチレングリコールモノエチルアセテート)、N−メチル−ピロリドン、エチレングリコールエチルエーテルアセテートを使用すると、上記ポリイソシアネート化合物(C)の浸透が効率よく生じる点で特に好ましい。
上記トップコート塗料は、不揮発分が45〜65重量%であることが好ましい。45質量%未満であると、環境への負荷が高くなるおそれがあり、65質量%を超えると塗料の粘性が高くなるために、塗装が困難になるおそれがある。
【0045】
本発明は、上述したトップコート塗料を使用する塗膜形成方法である。本発明の塗膜形成方法は、被塗物上にベースコート塗料を塗装する工程(1)、上記工程(1)によって形成されたベースコート層上にトップコート塗料を塗装する工程(2)、上記工程(1)(2)によって形成された未硬化塗膜にエネルギー線照射を行う工程(3)及び上記工程(3)後に焼き付け硬化させる工程(4)からなる。
【0046】
上記工程(1)は、ベースコート塗料を塗装する工程である。上記工程(1)において使用するベースコート塗料は、特に限定されず、通常使用される任意のベースコート塗料を使用することができる。例えば、塗膜形成性樹脂、硬化剤、有機系,無機系又は光輝材等の着色顔料や体質顔料を含有する塗料組成物等を挙げることができる。上記ベースコート塗料の形態は特に限定されず、水性又は有機溶剤型のもの等を挙げることができる。
【0047】
ベースコート塗料を塗布する方法としては特に限定されず、例えば、ハケ塗り、ローラー塗布、エアースプレー塗布、エアーレススプレー塗布、浸漬塗布、流し塗り等を挙げることができる。より具体的には、マイクロマイクロベル、マイクロベルと呼ばれる回転霧化式の静電塗装機による塗装方法を挙げることができる。上記工程(1)における上記ベースコート塗料の塗装膜厚は、乾燥膜厚で下限10μm、上限30μmの範囲内であることが好ましい。
【0048】
上記工程(2)は、上記ベースコート層上にトップコート塗料を塗装する工程である。上記工程(2)は、未硬化のベースコート層上にウェットオンウェットで塗装を行うことが好ましい。上記工程(2)において、トップコート塗料を塗布する方法としては特に限定されず、上記工程(1)におけるベースコート塗料の塗装において使用できる方法を同様に適用することができる。上記工程(2)における上記トップコート塗料の塗装膜厚は、乾燥膜厚で下限20μm、上限45μmの範囲内であることが好ましい。
【0049】
上記工程(3)は、上記工程(1)(2)によって形成された未硬化塗膜に対して、エネルギー線を照射する工程である。これによって、上記不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)の硬化反応を進行させる。
【0050】
上記工程(3)における活性エネルギー線の照射は、紫外線照射、太陽光、可視光線、マイクロ波、電子線等を挙げることができるが、なかでも紫外線照射によって行うことが特に好ましい。上記紫外線照射は、カーボンアークランプ、無電極ランプ、水銀蒸気ランプ、キセノンランプ、蛍光ランプ、アルゴングロー放電等を紫外線照射源として照射することによって行うことができる。なかでも、複雑な構造を有する被塗装物に対しても均一に照射できることから、無電極ランプが好ましい。
【0051】
上記工程(3)は、工程(2)の直後に行うものであっても、工程(2)を行った後でプレヒート工程を行い、その後に行うものであってもよい。工程(3)における紫外線の照射強度は、500mJ/cm〜3000mJ/cmであることが好ましい。
【0052】
上記工程(4)は、工程(3)を行った後の被塗装物を加熱することによって硬化させる工程である。上記工程(4)の硬化条件は、使用する塗料組成物の組成によっても相違し、当業者によって適宜設定することができるが、一般的には70〜100℃、好ましくは80〜90℃で、加熱時間は10〜40分であることが好ましい。
【0053】
本発明のクリヤー塗膜形成方法においては、上記工程(4)を行った後の塗膜に対して更に活性エネルギー線を照射する工程(工程(5))を有するものであってもよい。上記工程(3)によって反応しなかった不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)が残存すると、耐候性等の性質が悪くなるおそれがあり、上記工程(5)を行うことによって、より高い架橋密度が得られるため、塗膜の耐衝撃性が向上する。上記工程(5)は、上記活性エネルギー線硬化性化合物(B)中の炭素−炭素不飽和二重結合をラジカル重合反応によって硬化させるものであり、具体的には、カーボンアークランプ、無電極ランプ、水銀蒸気ランプ、キセノンランプ、蛍光ランプ、アルゴングロー放電等を紫外線照射源として照射するものである。なかでも、複雑な構造を有する被塗装物に対しても均一に照射できることから、無電極ランプが好ましい。
【0054】
本発明のクリヤー塗膜形成方法において使用する被塗装物としては、種々の基材、例えば金属成型品、プラスチック成型品、発泡体等に用いることができるが、更に詳しくは、鉄、アルミニウム及びこれらの合金、アルマイト、真鍮、青銅、亜鉛メッキ鋼板、スズメッキ鋼板、ニッケルメッキ鋼板、クロムメッキ鋼板等の金属成型品やプラスチック成型品等を挙げることができる。本発明のクリヤー塗膜形成方法は、特に、70〜100℃という比較的低温での熱硬化によって充分な長期耐久性、耐候性を得ることができるものであることから、プラスチック成型品の塗装に特に優れている。
【0055】
本発明の塗膜形成方法は、基材が金属の場合は上記工程(1)の前に、硬化させた電着塗膜層上に中塗り塗料を塗布し、これを加熱硬化させて複層塗膜を形成する工程(A−1)や未硬化電着塗膜上に中塗り塗料を塗布し、これらを加熱硬化させて複層塗膜を形成する工程(B−1)、及び、上記複層塗膜上にベース塗料を塗布する工程(B−2)を更に含んでいてもよい。
また、基材がプラスチックの場合は、水性又は溶剤系プライマーを塗布する工程(C−1)を含んでもよい。
【0056】
上記工程(A−1)は、被塗装物上に形成された電着塗膜層上に中塗り塗料を塗布し、これを加熱硬化させて複層塗膜を形成する工程である。
本発明のクリヤー塗膜形成方法は、カチオン電着塗装可能な金属成型品に対して適用することが好ましい。上記被塗装物は、表面が化成処理されていることが好ましい。更に、被塗装物は、電着塗膜が形成されていてもよい。上記電着塗料としては、カチオン型及びアニオン型を使用できるが、防食性の観点から、カチオン型電着塗料であることが好ましい。
【0057】
また、上記電着塗膜層上に中塗り塗膜が形成されていてもよい。中塗り塗膜の形成には中塗り塗料が用いられる。上記中塗り塗料としては特に限定されず、当業者によってよく知られている水性又は有機溶剤型のもの等を挙げることができる。上記中塗り塗料を適用する際、上記電着塗膜は、未硬化のものであってもよい。すなわち、未硬化電着塗膜上に中塗り塗料を塗布し、これらを加熱硬化させて複層塗膜を形成してもよい(工程(B−1))。
上記中塗り塗料を加熱硬化させる方法としては、公知の方法を用いることができる。
【0058】
本発明の複層塗膜形成方法において、上記ベース塗料が水性のものである場合、良好な仕上がり塗膜を得るために、上記トップコート塗料を塗装する前に、ベース未硬化塗膜を40〜100℃で2〜10分間加熱して不揮発分を70質量%以上とすることが好ましい。
【0059】
本発明のクリヤー塗膜形成方法はまた、上記工程(4)の後、更にダブルクリヤー塗料を塗布する工程(D)を含んでいてもよい。上記ダブルクリヤー塗料は、より高外観を得る場合やベース塗膜中の顔料の粒径が大きい場合に、クリヤー塗膜を2層以上形成するためのものである。これらの形成方法としては、例えば、特開平11−253877号公報に記載されている方法を挙げることができる。
【実施例】
【0060】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
【0061】
(水酸基含有樹脂AC−1製造方法)
攪拌羽根、温度計、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入口および冷却管を備えた反応装置に酢酸ブチルを64.7部仕込み、窒素ガスを導入しつつ攪拌下125℃まで昇温した。次にスチレン5部、メタアクリル酸0.77部、n−ブチルアクリレート54.55部、メタアクリル酸メチル9.74部混合物とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート2部を酢酸ブチル10部に溶解した溶液とを反応装置中に3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成させてさらにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート0.2部を酢酸ブチル10部に溶解した溶液を1時間かけて反応装置中に滴下して125℃に保ったまま2時間熟成し反応を完了した。得られた水酸基含有樹脂の不揮発分は55%で、重量平均分子量は18100であった。得られた樹脂のガラス転移点温度を測定したところ、−15℃であった。なお、Tgの測定方法は以下に示すものである。
【0062】
(Tgの測定方法)
示差走査熱量計(DSC)(熱分析装置SSC5200(セイコー電子製))にて以下の工程により測定した値を用いた。すなわち、昇温速度10℃/minにて20℃から150℃に昇温する工程(工程1)、降温速度10℃/minにて150℃から−50℃に降温する工程(工程2)、昇温速度10℃/minにて−50℃から150℃に昇温する工程(工程3)において、工程3の昇温時のチャートから得られる値である。即ち、図1で示されるチャートの矢印で示される温度をTgとした。
【0063】
(水酸基含有樹脂AC−2〜16製造方法)
表1に示す配合により、水酸基含有樹脂AC−2〜AC−16を作製した。不揮発分を測定し、不揮発分が55%より高い場合は酢酸ブチルを用いて55%に調整した。
【0064】
【表1】

【0065】
(ポリイソシアネート化合物NCO−1の製造)
容器にタケネートD−178(三井化学株式会社製)33.3部を仕込み、よく攪拌しながらディスモジュールN3600(住化バイエルウレタン株式会社製)66.7部を仕込みNCO−1とした。
【0066】
(ポリイソシアネート化合物NCO−2〜5の製造)
上記NCO−1と同様の方法によりNCO−2〜5を製造した。なおNCO−5で使用されているスミジュールN3300は住化バイエルウレタン株式会社製の硬化剤である。
【0067】
【表2】

【0068】
(トップコート塗料1の調製)
容器に<水酸基含有樹脂の製造>で作製したAC−1を100部仕込み、よく攪拌しながらジペンタエリスリトールヘキサアクリレート23.58部(商品名 エベクリル8804;ダイセル・サイテック株株式会社製)23.58部、BYK−310(ビッグケミー・ジャパン株式会社製)0.31部、ビケトールスペシャル(ビッグケミー・ジャパン株式会社製)0.79部、1%−ジブチルすずジラウレート(DBTDL)の酢酸ブチル溶液1.57部、チヌビン292(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製)1.57部、チヌビン400(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製) 3.14部、イルガキュア184(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製)1.57部、イルガキュア184(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製)1.57部、酢酸ブチル43.98部、酢酸エチル43.98部を順次仕込み、均一になるまで攪拌し、主剤とした。
上記で作製した主剤245.7部と上述した方法によって製造したNCO−1の55.1部とを混合しデュアルキュアクリヤー塗料CL−1を得た。不揮発分は55.0%であった。
【0069】
(トップコート塗料2〜28の調製)
上記トップコート塗料1と同様の方法によって、表3,4に示した処方を有するトップコート塗料2〜28を調製した。
【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
(実施例1)
イソプロピルアルコールで洗浄したポリプロピレン素材(TSOP−6、日本ポリプロ株式会社製)に水性プライマー(WB−1200CD、日本ビー・ケミカル株式会社製)を乾燥膜厚10μとなるようスプレー塗装し、80℃で5分間乾燥した。次に室温まで冷却後水性メタリックベース(AR−2000、日本ペイント株式会社製)を乾燥膜厚15μになるようにスプレー塗装し室温にて2分間放置後80℃で5分間乾燥した。次に室温まで冷却後、<デュアルキュアクリヤー塗料の製造>で作製したCL−1を乾燥膜厚25μになるようスプレー塗装し室温にて5分間放置後90℃で5分間乾燥後高圧水銀ランプを用いて積算光量2500mJ照射し、直ちに90℃で10分間焼付けて乾燥硬化した塗装物品を得た。
【0073】
(実施例2〜15、比較例1〜13)
同様の塗装方法を適用して、表5,6に示した各塗料組成物を使用して実施例2〜15及び比較例1〜13の塗装物品を得た。
【0074】
<評価方法>
上述した実施例1〜15及び比較例1〜13によって得られた塗装物品の塗膜を以下に示す評価基準によって評価を行った。
【0075】
(肌)
塗板にクリヤーを塗装後、室温での放置から硬化完了までを水平に保ちWave−scanT(東洋精機製作所製)を用いてW1,W2,W3,W4を測定した。W1,W2,W3,W4の値がすべて10以下の場合を○、すべて15以下の場合を○△、15を超える値がひとつでもあった場合を×とした。
【0076】
(混層)
micro−TRI−gross(東洋精機製作所製)を用いて20℃光沢を測定した。光沢値が90以上の場合を○、85以上90未満の場合を○△、85未満の場合を×とした。
【0077】
(タレ性)
塗板にクリヤーを塗装後、室温での放置から硬化完了までを垂直に保ちWave−scanT(東洋精機製作所製)を用いてW1,W2,W3,W4を測定した。W1,W2,W3,W4の値がすべて10以下の場合を○、すべて15以下の場合を○△、15を超える値がひとつでもあった場合を×とした。
【0078】
(初期密着性)
最終塗板について、JIS K5600の碁盤目テープ剥離試験を行った。全く剥離がなかった場合を○、僅かでも剥離が認められた場合を×とした。
【0079】
(耐水性)
最終塗板を40℃の温水に240時間浸漬し、取り出し後10分以内にブリスター(塗膜の膨れ)をASTM D714に基づき目視評価すると共に、JIS K5600の碁盤目テープ剥離試験を行った。試験前と比較して外観に異状が認められず、かつ剥離もなかった場合を○、外観異状が認められる、あるいは僅かでも剥離が認められた場合を×とした。
【0080】
(初期タック性)
塗装板の焼付硬化終了後室温まで冷却し、70mm×150mmのクリヤー面同士を重ね合わせて500gの重りを乗せ、10秒間放置して片方の塗板を持ち上げ下の塗板が付いて持ち上がった場合を×、離れるときに大きな音がした場合を△、微かに音がした場合を○△、全く音がしなかった場合を○とした。
【0081】
(擦傷性)
爪で引っかき試験を実施し、傷が深い場合を×、浅い場合を○との基準により目視評価した。
【0082】
(耐候性)
サンシャインウエザオメーター(スガ試験機社製)を用い1200時間後に外観および密着性を評価した。
密着性はJIS K5600の碁盤目テープ剥離試験を行った。
外観は目視および色差、光沢値で評価した。
密着試験で全く剥離がなく、目視は著しい異状がなく、初期との色差(ΔE)が3.0以下であり、かつ光沢が80以上の場合を○とした。また、外観は上記条件を満たすが、密着試験で僅かなカケが認められた場合を○△とした。上記条件の内、1項目のみ不足した場合を△とし、2項目以上不足した場合を×とした。
【0083】
(リコート性)
実施例に記載した塗板作製方法にて塗板を作製し、25℃,65%RHの環境に10日間放置後、再度クリヤー塗膜上に上記塗板作製方法にてプライマー、ベースコートクリヤーコートを塗装して、塗板を作製した。室内に3日放置後、JIS K5600の碁盤目テープ剥離試験を行った。室内に3日放置後、JIS K5600の碁盤目テープ剥離試験を行った。その結果、全く剥離がなかった場合を○、僅かにカケが認められた場合を○△、それ以上剥離した場合を×とした。
【0084】
【表5】

【0085】
【表6】

【0086】
上記実施例から、本発明の塗膜形成方法によって得られた塗装物品は、耐水性、耐候性において優れた性質を有し、これによって塗膜物性の低下を生じることなく塗装設備の縮小化やCO削減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の塗膜形成方法は、種々の基材、例えば金属成型品、プラスチック成型品、発泡体等の塗装において広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明においてTgの測定方法におけるチャートからTgの読み取る際の読み取り方法を具体的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物上にベースコート塗料を塗装する工程(1)、
前記工程(1)によって形成されたベースコート層上にトップコート塗料を塗装する工程(2)
前記工程(1)(2)によって形成された未硬化塗膜にエネルギー線照射を行う工程(3)及び
前記工程(3)後に焼き付け硬化させる工程(4)からなる塗膜形成方法であって、
前記トップコート塗料は、水酸基含有樹脂(A)と不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)とポリイソシアネート化合物(C)を含有し、
前記水酸基含有樹脂(A)は、
ガラス転移温度(Tg)が−20〜50℃、
重量平均分子量が10000〜30000、
水酸基価が80〜230(KOHmg/g)、
1級及び2級の水酸基の比が水酸基価基準で
1級水酸基/2級水酸基=30/70〜80/20
であり、
前記ポリイソシアネート化合物(C)は、一分子あたりの平均イソシアネート基数が2.5〜3.4であり、
水酸基含有樹脂(A)の水酸基とポリイソシアネート化合物(C)のイソシアネート基との当量比(NCO/OH)が1.2〜3.0であり、
(A)(B)(C)の配合割合が重量比で
((A)+(C))/(B)=90/10〜50/50
であることを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項2】
前記工程(4)は、70〜100℃で行われる請求項1記載の塗膜形成方法。
【請求項3】
前記トップコート塗料は、不揮発分が45〜65質量%である請求項1又は2記載の塗膜形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−179256(P2010−179256A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25584(P2009−25584)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(593135125)日本ビー・ケミカル株式会社 (52)
【Fターム(参考)】