説明

塗装システム

【課題】塗装により発生する塗料ミストの影響を最小限度に抑えることができるとともに、装置を大型化することなくワークの入れ替えや塗料交換に伴う作業効率を向上することが可能な塗装にシステムを提供する。
【解決手段】塗料を噴霧可能な塗料カートリッジ12と、塗料カートリッジ12を装着可能とした塗装装置4とワークを係止可能な一対のワーク供給手段5と塗装装置4に装着された塗料カートリッジ12から塗料を噴霧するための駆動手段を備えた塗装ブース2と、塗料カートリッジ12に所望の塗料を充填するための塗料充填エリア10と、塗装ブース2と塗料充填エリア10との間に配設した、エアー圧力により塗料カートリッジ搬送するカートリッジ搬送路11を具備し、ワーク供給手段は、複数本のアームを連結することで構成され、アームを短くすることでワークの入れ替えを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗装システムに係り、より詳しくは、塗料ミストによる悪影響を最小限に抑えることができるとともに、装置を大型化することなく塗料交換の手間を最小限に抑えることを可能とした塗装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に塗装装置においては、塗装ブース内の床は閉鎖されているとともに、この塗装ブース内の床に、支柱等を介してワーク供給用テーブルを備えており、このワーク供給用テーブルに1又は複数のワークを装着し、このワークに向けて、スプレーガンから塗料を噴射してワークの塗装を行う構成としているが、この構成によってワークの塗装を行うと、塗料の噴射に伴うミストがワーク供給用テーブルや塗装ブース内に溜まってしまい、それにより、例えばワーク供給用テーブルを可動するための機構等に不具合が生じるおそれが考えられていた。
【0003】
しかしながら、従来の塗装装置では、このような塗料ミストによる悪影響を抑えるための手段は何ら講じられていなかった。
【0004】
また、従来から提供されている塗装装置においては、アームの両端にワーク供給テーブルを備えて、一方のワーク供給テーブルに固定したワークの塗装を行っている間に他方のワーク供給テーブルに未塗装のワークを固定し、一方のワーク供給テーブルに固定したワークの塗装が終了した後に、アームを180度回転して、塗装済のワークと未塗装のワークを入れ替える方法が採用される場合があるが、このような方法では、アームを180度回転させるための空間が必要になるために、塗装ブースを大型化しなければならず、塗装ブースが大型化した場合には、塗装システムを装備した塗装ルームの雰囲気を維持するための消費エネルギーも膨大になるという問題点が考えられる。
【0005】
更に、従来の塗装システムは、塗装ブース内において、スプレーガンによってワークへ向けて塗料を噴霧するための塗装装置と、前記スプレーガンへ塗料を供給するための塗料供給手段とを備えており、塗料供給手段には塗料タンクが備えられ、塗料タンクと塗装装置とを塗料搬送用のホースにより連結し、このホースを介して、塗装装置に塗料を供給する方法が採用されている。
【0006】
そのため、このような塗料ホースを用いた塗料供給方法では、塗料の交換を行う場合には塗料ホース内を洗浄しなければならず煩わしさに耐えないという問題点があるとともに、塗料の種類が多種類に亘る場合には、ホースの本数が多くなってしまい、ホース設置のために大きなスペースが必要になり、その設置作業も煩雑になってしまうという問題点が考えられる。
【0007】
特に、近年は多品種少量生産のワークが増加しており、塗装に用いる塗料の色を品種ごとに異なるものとする傾向にあるとともに、そのために、塗装に用いる塗料の量が少量化しているために、ホースを用いた塗料供給の方法では、塗装システム施工のためのコストが上がってしまうとともに、塗料交換の際の作業が大変で、更に塗料の無駄が多くなってしまうという問題点がある。
【0008】
この点、過去において、塗装装置に着脱可能な塗料カートリッジを用いるとともに、この塗料カートリッジ内に塗料を充填するための塗料充填装置を備え、カートリッジ把持手段により塗料カートリッジの交換を可能とした塗装方法が提案されており、この方法によれば、塗料ホースを用いた塗料供給方法に比較して、塗料の無駄を少なくすることが可能であるとともに、ホース設置のための作業等を無くすることができるという利点がある。
【0009】
しかしながら、カートリッジ把持手段により塗料カートリッジの交換を行なう方法では、塗装装置の近傍、少なくともカートリッジ把持手段の動作範囲内に塗装装置と塗料充填装置とを配置しておかなければならず、塗料の種類が多くなり、そのために塗料充填装置も大型化した場合には、必然的に塗装エリアが大型化してしまうという問題点が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−176333号公報(図1)
【特許文献2】特許第4230811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、塗装により発生する塗料ミストの影響を最小限度に抑えることができるとともに、更に、装置を大型化することなく、ワークの入れ替えや塗料交換に伴う作業効率を向上することが可能な塗装にシステムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の塗装システムは、
塗料を噴霧可能な塗料カートリッジと、
該塗料カートリッジを装着可能とした塗装装置と、被塗装物としてのワークを係止可能な一対のワーク供給手段と、前記塗装装置に装着された塗料カートリッジから塗料を噴霧するための駆動手段と、を備えた塗装ブースと、
前記塗料カートリッジに所望の塗料を充填するための塗料充填エリアと、
前記塗装ブースと前記塗料充填エリアとの間に配設した、エアー圧力により、塗料が充填された塗料カートリッジを塗料充填エリアから塗装ブースに供給し、あるいは使用済みの塗料カートリッジを塗装ブースから塗料充填エリアへ戻すためのカートリッジ搬送路と、を具備し、
前記塗装ブースは、床部分に塗料ミストを回収する手段を備え、
前記ワーク供給手段はそれぞれ、塗装ブースの内壁に回動自在に連結される第1アームと、該第1アームに第1アームと同方向へ回動自在に連結された第2アームと、該第2アームに第2アームと直交する方向へ連結された第3アームと、該第3アームに第3アームと並行に回動自在に連結された第4アームと、該第4アームの両端に回動自在に連結した、1又は複数個のワークを係止可能としたワーク係止治具と、を有して、ワークを任意の角度に傾けた状態にしての塗装を可能にするとともに、前記第4アームを第3アームと重なるように回動した状態で第1アームを回動することで、それぞれのワーク供給手段に係止したワークの塗装ブース内外への入れ替えを可能にし、
前記塗料カートリッジは、塗料が充填されるシリンジ部と該シリンジ部に一体的に連設されたヘッド部を備えるとともに、
前記シリンジ部は、全体として略円筒形状をしているとともに、先端部に、先端を開口部とした流路が内部に形成された塗料吐出部が突設され、内部にはピストンが移動自在に挿装され、前記ピストンを移動することでシリンジ部内の塗料を前記開口部から吐出可能とし、
前記ヘッド部は、前記開口部に連通するとともに先端部を塗料吐出口とした流路と、前記塗料吐出口を開閉自在としたニードルと、該ニードルを移動させるためのニードル稼動手段と、先端が前記塗料吐出口の周囲の任意の箇所で開口されるとともに基端にエアー注入手段が連結されるエアー供給路と、を具備し、
前記開口部から吐出された塗料を前記塗料吐出口から吐出するとともに、前記エアー供給路を介して塗料吐出口の周囲にエアーを供給することで、塗料吐出口より吐出された塗料を霧化するとともにこの霧化した塗料を先端方向へ噴射可能とした塗料カートリッジとし、
前記駆動手段は、少なくとも、塗料カートリッジにエアーを供給するためのエアー供給手段と、塗料カートリッジのピストンを移動させるためのピストン移動手段とを含み、
前記カートリッジ搬送路内に塗料カートリッジを収容した後に、前記カートリッジ搬送路内にエアーを供給し、この供給されたエアーの圧力によって、前記塗料カートリッジを、塗料充填エリアから塗装ブースへ、あるいは塗装ブースから塗料充填エリアへ搬送し、
前記塗料カートリッジを前記塗装装置に装着した状態で、前記エアー供給手段及びピストン移動手段を駆動することで、塗料カートリッジからワークへ向けて塗料を噴射し、
前記それぞれのワーク供給手段にワークを装着した状態において、それぞれの第4アームを第3アームと重なるように回動し、それぞれの第1アームを塗装ブースの外側あるいは塗装ブースの内部へ回動することで、塗装が終了したワークと未塗装のワークを入れ替える、ことを可能にしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の塗装システムでは、塗装ブースの床部分に塗料ミストを回収する手段を備えているので、塗料の噴射に伴うミストが塗装ブース内に溜まってしまことがない。そのため、ワーク供給用テーブルを可動するための機構等に不具合が生じることを防止することができる。
【0014】
また本発明の塗装システムにおけるワーク供給手段はそれぞれ、塗装ブースの内壁に回動自在に連結される第1アームと、第1アームに第1アームと同方向へ回動自在に連結された第2アームと、第2アームに第2アームと直交する方向へ連結された第3アームと、第3アームに第3アームと並行に回動自在に連結された第4アームを有し、第4アームの両端に、1又は複数個のワークを係止可能としたワーク係止治具を回動自在に連結して構成されている。そのため、ワークを任意の角度に傾けた状態にしての塗装を可能にするとともに、前記第4アームを第3アームと重なるように回動した状態で第1アームを回動することで、それぞれのワーク供給手段に係止したワークの塗装ブース内への入れ替えを可能にしている。
【0015】
このように、本発明におけるワーク供給手段は、複数本のアームを連結して構成するとともに、最先端のアームにワーク係止用の治具を連結しているため、ワーク供給テーブルを用いて、このワーク供給テーブル上にワークを装着する場合と異なり、塗装に伴い発生するミストがワーク供給手段に溜まってしまうことがなく、従って、塗料ミストによる悪影響を最小限度に抑えることができる。
【0016】
また、第4アームを第3アームと重なるように回動した状態で第1アームを回動することで、それぞれのワーク供給手段に係止したワークの塗装ブース内への入れ替えを可能にしているため、装置を大型化することなく、塗装済のワークと未塗装のワークの入れ替えを容易に行うことが可能である。
【0017】
更に、本発明の塗装システムでは、塗装ブースと塗料充填エリアとの間に、エアー圧により、塗料が充填された塗料カートリッジを塗料充填エリアから塗装ブースに供給し、あるいは使用済みの塗料カートリッジを塗装ブースから塗料充填エリアへ戻すためのカートリッジ搬送路を具備し、カートリッジ搬送路内に塗料カートリッジを収容した後に、カートリッジ搬送路内にエアーを供給し、この供給されたエアーの圧力によって、前記塗料カートリッジを、塗料充填エリアから塗装ブースへ、あるいは塗装ブースから塗料充填エリアへ搬送することとしており、塗料ホースによる塗料の搬送を不要にしているために、塗料の種類が多種類に亘る場合でも、塗料ホースの本数の増加による設置スペースの確保や装置の大型化を招くこともなく、また、塗料交換の場合でも塗料ホース内の洗浄による作業効率の低下を招くこともない。
【0018】
また、本発明における塗料カートリッジは、塗料が充填されるシリンジ部と、このシリンジ部に連設されたヘッド部を備え、ヘッド部より塗料を噴霧可能としているため、即ち、スプレーガンを一体に備えた塗料カートリッジとしているために、塗料交換の際にスプレーガンを洗浄する手間も不要で、これによっても、塗料交換時の作業効率を上げることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の塗装システムの実施例の全体を示す図である。
【図2】本発明の塗装システムの実施例における塗料充填エリアを説明するための図である。
【図3】本発明の塗装システムの実施例における塗装ブースを説明するための図である。
【図4】本発明の塗装システムの実施例におけるワーク供給手段を説明するための図である。
【図5】本発明の塗装システムの実施例におけるワーク供給手段を説明するための図である。
【図6】本発明の塗装システムの実施例における塗料カートリッジを説明するための図である。
【図7】本発明の塗装システムの実施例における塗料カートリッジを説明するための図である。
【図8】本発明の塗装システムの実施例における塗料カートリッジを説明するための図である。
【図9】本発明の塗装システムの実施例における塗料カートリッジを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の塗装システムでは、被塗装物としてのワークの塗装を行うための塗装ブースを有しており、塗装ブースの床部分には、オイルパン等の塗料ミストを回収する手段を備えている。
【0021】
また、塗装ブース内には、ワークに向けて霧化塗料を噴射するための塗装装置と、ワークを係止するためのワーク供給手段が配設され、塗装装置としては、例えば、塗装ブース内の天井近傍に塗装ブースの幅方向に向けて備えられたレールに可動自在に連結されたロボットアームが用いられる。
【0022】
更に、本発明の塗装システムでは、塗料カートリッジを有しており、この塗料カートリッジは、塗装ブース内に配設された塗装装置に装着され、塗装装置に備えた駆動手段によって駆動されることで、ワークに向けて塗料を噴霧可能としている。
【0023】
また、本発明の塗装システムでは、塗料カートリッジに所望の塗料を充填するための塗料充填エリアを有しており、塗装ブースと塗料充填エリアとの間には、エアー圧力により、塗料が充填された塗料カートリッジを塗料充填エリアから塗装ブースに供給し、あるいは使用済みの塗料カートリッジを塗装ブースから塗料充填エリアへ戻すためのカートリッジ搬送路が配設されている。そして、カートリッジ搬送路内に塗料カートリッジを収容した後に、カートリッジ搬送路内にエアーを供給することで、この供給されたエアーの圧力によって、塗料カートリッジを、塗料充填エリアから塗装ブースへ、あるいは塗装ブースから塗料充填エリアへ搬送することとしている。
【0024】
一方、ワーク供給手段は、塗装ブースにおける対向する内壁にそれぞれ連結された一対個としており、それぞれのワーク供給手段は、塗装ブースの内壁に回動自在に連結される第1アームを有しており、この第1アームは、塗装ブースの内壁の面と並行方向に回動自在なように連結されている。
【0025】
また、第1アームには、第1アームと同方向へ回動自在にして、第2アームが連結されており、この第2アームには、第2アームと直交する方向へ向けて第3アームが連結されている。
【0026】
更に、第3アームには、第4アームが回動自在に連結されており、この第4アームは、第3アームと並行にして第3アームに連結されており、回動することで、第3アームと重なり合うことを可能にしている。
【0027】
更にまた、第4アームの両端にはワーク係止治具が回動自在に連結され、このワーク係止治具は、第4アームと直交する上方に向けて連結された主軸と、この主軸の先端に放射状に連結された連結軸と、連結軸の先端を連通したリング状の係止部を有しており、係止部にワークを係止可能としている。
【0028】
そして、この構成により、ワークを任意の角度に傾けた状態にしての塗装を可能にするとともに、それぞれのワーク供給手段にワークを装着した状態において、それぞれの第4アームを第3アームと重なるように回動し、それぞれの第1アームを塗装ブースの外側あるいは塗装ブースの内部へ回動し、それに伴い、第2アームを任意の角度だけ回動することで、塗装が終了したワークと未塗装のワークを入れ替える、ことを可能にしている。
【0029】
また、塗料カートリッジは、塗料が充填されるシリンジ部と該シリンジ部に一体的に連設されたヘッド部を備えている。
【0030】
そして、シリンジ部は、全体として略円筒形状をしているとともに、先端部に塗料吐出部が突設され、この塗料吐出部の内部には、先端を開口部とした流路が形成されている。
【0031】
また、シリンジ部の内部にはピストンが移動自在に挿装されており、前記ピストンを移動することで、シリンジ部内の塗料を前記塗料吐出口から吐出可能としている。
【0032】
一方、ヘッド部は、シリンジ部の塗料吐出部内に形成した流路の開口部に連通する流路を有している。そして、この流路の先端部を塗料吐出口としているとともに、この塗料吐出口を開閉自在としたニードルが流路内に挿装され、更に、このニードルを移動させるためのニードル稼動手段を有している。
【0033】
また、ヘッド部にはエアー供給路が形成されており、このエアー供給路は、先端部が塗料吐出口の周囲の任意の箇所で開口されるとともに、基端にはエアー注入手段が連結されることとしている。
【0034】
そして、シリンジ部の塗料吐出部内に形成した流路の開口部から吐出された塗料をヘッド部の流路を介して塗料吐出口から吐出するとともに、前記エアー供給路を介して塗料吐出口の周囲にエアーを供給することで、塗料吐出口より吐出された塗料を、霧化して先端方向へ噴射可能としている。
【0035】
また、このような塗料カートリッジを駆動するために塗装装置に備えた駆動手段は、少なくとも、塗料カートリッジにエアーを供給するためのエアー供給手段と、塗料カートリッジのピストンを移動させるためのピストン移動手段とを含んでいる。
【0036】
そして、本発明はこのような構成によって、カートリッジ搬送路内に塗料カートリッジを収容した後に、カートリッジ搬送路内にエアーを供給し、この供給されたエアーの圧力によって、塗料カートリッジを、塗料充填エリアから塗装ブースへ、あるいは塗装ブースから塗料充填エリアへ搬送し、塗料カートリッジを塗装装置に装着した状態で、エアー供給手段及びピストン移動手段を駆動することで、塗料カートリッジからワークへ向けて塗料を噴射し、それぞれのワーク供給手段にワークを装着した状態において、それぞれの第4アームを第3アームと重なるように回動し、それぞれの第1アームを塗装ブースの外側あるいは塗装ブースの内部へ回動することで、塗装が終了したワークと未塗装のワークを入れ替える、ことを可能にしている。
【実施例1】
【0037】
本発明の塗装システムの実施例について図面を参照して説明すると、図1は、本実施例の塗料システム1の全体を示した概念図である。
【0038】
そして、本実施例の塗装システム1は、ワークの塗装を行なうための塗装ブース2と、塗料が充填される複数の塗料カートリッジ12と、この塗料カートリッジ12に塗料を充填するための塗料充填エリア10を有している。
【0039】
また、塗装ブース2と塗料充填エリア10間には、塗料カートリッジ搬送路11が配設され、この塗料カートリッジ搬送路11を用いて、前記塗料カートリッジ12を、塗装ブース2から塗料充填エリア10へ、あるいは塗料充填エリア10から塗装ブース2へ搬送することとしている。
【0040】
ここで、前記塗料カートリッジ12について図6乃至図9を用いて説明すると、図6乃至図9は本実施例における塗料カートリッジを説明するための図であり、本実施例において12が塗料カートリッジである。そして、本実施例にける塗料カートリッジ12は、スプレーガンを一体に備えた塗料カートリッジとしている。
【0041】
そのため、本実施例においては、スプレーガンに塗料を供給するための塗料ホースが不要であるとともに塗料交換の際は塗料カートリッジ12を交換するのみでよく、スプレーガンや塗料ホースを洗浄する手間が不要であり、これによって、塗料交換時の作業効率を上げることが可能である。
【0042】
即ち、図6は、本実施例における塗料カートリッジ12の外観を示す図であり、本実施例における塗料カートリッジ12では、塗料が充填されるシリンジ部13と、このシリンジ部13の先端部に一体的に連設されたヘッド部19とで構成されている。
【0043】
まず、前記シリンジ部13について説明すると、図7は前記シリンジ部13の構造を示す断面図であり、本実施例において前記シリンジ部13は、塗料を内部に充填するための塗料充填部14と、この塗料充填部14内の塗料を吐出するための塗料吐出部15とを具備している。
【0044】
そして、前記塗料充填部14は、全体として、先端を閉鎖して後端を開放とした略円筒形状をしており、内部が充填空間1401とされ、塗料充填部14の先端には吐出開口1402が形成されている。
【0045】
また、塗料充填部14内には、ピストン17が、塗料充填部14の先後方向に移動自在に挿装されており、このピストン17にはピストンロッド18が連結されている。そして、ピストンロッド18を介してピストン17を、吐出開口1402側へ移動することにより、シリンジ部13内の塗料を吐出開口1402から吐出可能としている。
【0046】
次に、前記塗料充填部14の先端部には塗料吐出部15が連結されている。そして、この塗料吐出部15の内部には流路16が形成されており、この流路16は、基端部が塗料吐出部15と塗料充填部14との連結面で開口1601とされ、先端部は、塗料吐出部15の先端面で開口1602とされ、基端部開口1601が前記塗料充填部14の先端部の吐出開口1402に連通している。
【0047】
次に、前記ヘッド部19について説明すると、図8は前記ヘッド部19の構造を示す一部断面図であり、図において、ヘッド部19は、前記塗料吐出部15の先端面に連結されている。
【0048】
そして、ヘッド部19の内部には、塗料を搬送するための流路20が形成されており、この流路20は、基端側においてはヘッド部19と塗料吐出部15との連結面で開口2001とされ、塗料吐出部15の内部に形成された流路16の先端部開口1602に連通している。
【0049】
一方、前記流路20の先端はヘッド19の先端面で開口とされており、この開口部分が、塗料吐出口2002とされている。
【0050】
また、前記流路20内にはニードル21が、ヘッド19の先後方向に移動自在に挿装されており、ニードル21をヘッド19の先端側へ移動することで、ニードル21の先端が前記塗料吐出口2002を閉鎖可能とし、一方、ニードル21をヘッド19の後側へ移動することで、ニードル21の先端による塗料吐出口2002の閉鎖を解除可能としている。即ち、ニードル21の移動によって前記塗料吐出口2002を開閉可能としている。
【0051】
ここで、前記ニードル21を移動させるためのニードル稼動手段について説明すると、図8において、流路20の基端部開口2001はヘッド19の中心から外れた位置に形成されている。
【0052】
そして流路20は、ヘッド19の中心から外れた位置においてヘッド19の先端側へ向けて進んでいき、ヘッド19の先端部より手前において、ヘッド19の中心側へ向けて進路を変えて進み、ヘッド19の中心部分に至った後に、ヘッド19の先端へ向けて進み、ヘッド19の先端面の中心部分において、塗料吐出口2002が形成されている。
【0053】
一方、前記ニードル21は、ヘッド19の中心部分を貫通して配設され、先端側は流路20内に位置しているが、基端側は、ヘッド19内において、前記流路20内から外れて流路20の下方に突出し、ヘッド19内に先後方向へ移動自在としたピストン2301が固定されている。そして、ピストン2301はバネ2302により、ヘッド19の先方向へ付勢されており、これにより、通常は、前記ニードル21は、ピストン2301とともにヘッド19の先端方向へ移動しており、塗料吐出口2002を閉鎖している。
【0054】
次に、ピストン2301の上方部分はエアー室2303とされるとともに、このエアー室2303には、基端部を外部に開口としたニードル稼動用エアー供給路2304が連通している。そして、この構成により、ニードル稼動用エアー供給路2304を介して前記エアー室2303内にエアーを供給することで、ピストン2301はヘッド19内の後側へ押圧され、それに伴って、ニードル21がヘッド19の後側へ移動し、ニードル21の先端による塗料吐出口2002の閉鎖が解除される。従って、本実施例では、エアー室2303内にエアーを供給し、あるいは供給しているエアーを抜くことにより、ニードル21を稼動して塗料吐出口2002を開閉することが可能である。
【0055】
なお、本実施例において前記ニードル稼動用エアー供給路2304は、ヘッド部19の後端面で開口とし、前記塗料吐出部15に形成したシリンジ側のニードル稼動用エアー供給路2304に連通しており、このシリンジ側ニードル稼動用エアー供給路2304は、塗料吐出部15の側面において開口とし、図示しないエアー注入手段に連結されることとしている。
【0056】
次に、前記ヘッド部19内には、先端部が前記塗料吐出口2002の周囲の任意の箇所で開口とされた霧化エアー供給路2201が形成されており、この霧化エアー供給路2201を介して塗料吐出口2002の周囲に霧化エアーを供給することで、塗料吐出口2002より吐出された塗料を霧化することを可能としている。
【0057】
また、同じくヘッド部19内には、先端部が、前記霧化エアー供給路2201の先端部開口部よりも外側で開口とされたパターンエアー供給路2202が形成されており、このパターンエアー供給路2202を介して霧化エアー供給路2201の先端部開口部の周囲にパターンエアーを供給することで、霧化エアーにより霧化された塗料の噴出パターンを変更することを可能としている
【0058】
なお、前記霧化エアー供給路2201及びパターンエアー供給路2202はいずれも、その基端部は、前記塗料吐出部15内に形成したエアー供給路(図示せず)に連通しており、この前記塗料吐出部15内に形成したエアー供給路は、塗料吐出部の側部において外部に開口とされ、使用に際してエアーホース等のエアー注入手段が連結される。
【0059】
次に、前記塗料充填エリア10について図2を参照して説明すると、図2は、前記塗料充填エリア10内の構成を概略で示すブロック図であり、図において、塗料充填エリア10には、複数個の塗料タンク101が備えられるとともに、この複数個の塗料タンク101内にはそれぞれ、色、種類等が異なる塗料が蓄えられている。
【0060】
また、この塗料充填エリア10では、空の塗料カートリッジ12を固定するための固定治具103が備えられるとともに、前記塗料タンク101と前記固定治具103は塗料ホース104で連通されており、固定治具103に塗料カートリッジ12を装着することで、塗料タンク101内の塗料を塗料カートリッジ12に供給可能としている。
【0061】
更に、前記塗料ホース104の任意の箇所にはそれぞれ、前記塗料タンク101内の塗料を塗料カートリッジ12に充填するための、ポンプ等の塗料充填手段102が介在されており、この塗料充填手段102を駆動することで、固定治具103に固定されたそれぞれの塗料カートリッジ12内に、所望の塗料を充填可能としている。
【0062】
次に、前記塗料カートリッジ搬送路11について説明すると、本実施例において前記カートリッジ搬送路11はそれぞれ、中空のパイプ状としており、前記塗装ブース2の近傍と、前記塗料充填エリア10の近傍に端部が配置され、これにより、前記塗装ブース2と塗料充填エリア10間で、塗料カートリッジ12を搬送可能としている。
【0063】
即ち、前記塗料カートリッジ搬送路11には、塗料充填エリア10側の端部近傍と、塗装ブース2側の端部近傍において、エアーホース1101が連結されており、それぞれのエアーホース1101にはコンプレッサー等の、圧縮エアーを供給可能であるとともにエアーを受入可能なエアー供給手段(図示せず)が連結されている。
【0064】
また、前記塗料カートリッジ搬送路11において、塗料充填エリア10側の端部近傍と、塗装ブース2側の端部近傍には、カートリッジ搬送路11内に塗料カートリッジ12を収容し、あるいはカートリッジ搬送路11内の塗料カートリッジ12を取り出すために用いる収容扉1102が備えられ、この収容扉1102を介して、カートリッジ搬送路11内に塗料カートリッジ12を収容し、あるいは、カートリッジ搬送路11内に塗料カートリッジ12を取り出すことを可能としている。
【0065】
そしてこの構成により、収容扉1102を開放して、塗料を充填した塗料カートリッジ12を塗料カートリッジ搬送路11内に収容した後に、エアーホース1101を介して塗料カートリッジ搬送路11内に供給することで、塗料カートリッジ搬送路11内の塗料カートリッジ12を、塗装ブース2側から塗料充填エリア10側へ搬送し、あるいは、塗料充填エリア10側から塗装ブース2側へ搬送することを可能としている。
【0066】
このように、本実施例の塗装システムでは、塗装ブース2と塗料充填エリア10との間にカートリッジ搬送路11を設置し、エアーの圧力によって塗料カートリッジ12を搬送可能としている。
【0067】
そのため、塗料充填エリア10と塗装ブース2を離れた箇所に設置することができ、塗料の種類が多くなった場合でも、塗装ブースを大きくする必要がなく、従って、塗料の種類に影響されずに常に一定の大きさの塗装ブースを設置することが可能である。また、塗料ホースを用いて塗装ブースまで塗料を搬送する方法と異なり、塗料の種類に応じてカートリッジ搬送路の数を増やす必要もなく、塗装システムの設置コストが上がることもない。
【0068】
なお、本実施例において、前記カートリッジ搬送路11及びエアー供給手段等としては、従来からビル内等において郵便物、書類等の移動に用いられているエアーシューターと同様の機能を有するものを用いており、その構造、機能等はエアーシューターと同様であるために詳細な説明は省略する。
【0069】
次に、前記塗装ブース2について説明すると、図3は、本実施例の塗装システム1における塗装ブース2を説明するための図であり、自動車のドアミラー(「ワーク」)を塗装する工程を示している。
【0070】
そして、本実施例において前記塗装ブース2内には、ワークに向けて塗料を噴霧するための塗装装置と、ワークを供給するためのワーク供給手段とが配設されており、ワーク供給手段に被塗装物としてのワークを係止し、塗装装置に塗料カートリッジを装着し、塗料カートリッジからワークに向けて霧化塗料を噴射することで、ワークの塗装を可能としている。
【0071】
また、本実施例における前記塗装ブース2の床部分には、塗料ミストを回収する手段として、オイルパン等を配設しており、このオイルパンにオイルあるいは水を流し、塗料の噴射に伴う塗料ミストはこのオイルパンで回収されつつ塗装ブースの外へ流されていくこととしている。そのため、これにより、塗料の噴射に伴うミストが塗装ブース内に溜まってしまことを防止することができる。
【0072】
次に、前記塗装装置について説明すると、図において4が塗装装置であり、本実施例における塗装装置4はロボットアームとしている。そして、本実施例において前記ロボットアーム4は、本体部401を有しており、塗装ブース2内の天井部分に備えた移動用レール3に、本体部401を移動自在に係止し、これによって、塗装ブース2内に、塗装装置としてのロボットアーム4を有している。
【0073】
また、本実施例において前記ロボットアーム4の下端部分には、一対の塗料カートリッジ装着部402を有しており、この塗料カートリッジ装着部402のそれぞれに、前記塗料カートリッジ12を装着可能としている。
【0074】
更に、前記ロボットアーム4は、塗料カートリッジ12から塗料を噴霧するための駆動手段を有しており、この駆動手段は、塗料カートリッジ12にエアーを供給するためのエアー注入手段としてのエアーホース403と、塗料カートリッジ12のピストン17を移動させるためのピストン移動手段9(図9参照)としている。
【0075】
そして、エアーホース403は、基端側は、圧縮エアーを供給可能な空気圧縮器等に連結され、先端側は、前記塗料吐出部15の側部において外部に開口とされたエアー供給路に連結されている。従って、エアーホース403は、前記霧化エアー供給路2201、パターンエアー供給路2202、シリンジ側のニードル稼動用エアー供給路2304に連通しており、これにより、エアーホース403を介して、塗料吐出口2002の周囲に霧化エアー及びパターンエアーを供給可能としているとともに、ニードル21を稼動可能としている。
【0076】
次に、前記ピストン移動手段9について図9を参照して説明すると、本実施例においてピストン移動手段9は、前記ピストンロッド18が連結される可動板901と、この可動板901に螺合させたスクリューネジ902と、スクリューネジ902が連結されたモーター903で構成されている。
【0077】
そのため、図9に示すように塗料カートリッジ12のピストンロッド18を可動板901に連結して、この状態においてモーター903を正転あるいは逆転すると、スクリューネジ902の回転に伴って、可動板901がスクリューネジ902に沿って前進し、それに伴って、ピストンロッド18及びピストン17がシリンジ部13内で移動し、塗料吐出口2002から塗料を吐出することが可能である。
【0078】
従って、ニードル21を稼動して塗料吐出口2002を開放するとともにピストン18を移動して塗料吐出口2002から塗料を吐出している状態で、エアーホース403を介して塗料カートリッジ12にエアーを供給して、これにより、霧化エアー供給路2201、パターンエアー供給路2202を介して塗料吐出口22の周囲にエアーを噴出することで、塗料吐出口2002から吐出されている塗料を、所望するパターンに霧化しながら噴射し、これによって、ワークの塗装を行うことが可能となる。
【0079】
次に、前記ワーク供給手段について説明すると、図3において5が、ワーク31を係止した状態のワーク供給手段である。即ち、本実施例の塗装システム1では、一対個のワーク供給手段5を備えており、一方に係止したワーク31を塗装ブース2内で塗装している間は、他方のワーク供給手段は塗装ブース2の外に待機することとしている。
【0080】
ここで、前記ワーク供給手段5について説明すると、図4は前記ワーク供給手段5を示した斜視図であり、図において31は、ワークとしてのドアミラーである。そして、図において本実施例の前記ワーク供給手段5は、4本のアームを順次連結することで構成されるとともに、最先端のアームにはワーク係止治具を有しており、このワーク係止治具にワークを係止することとしている。
【0081】
即ち、本実施例におけるワーク供給手段5は、塗装ブース2の対向する左右内壁201にそれぞれ、回動自在に軸支された第1アーム501を有しており、この第1アーム501は、塗装ブース2の対向する左右内壁201と並行な配置とされ、従って、塗装ブース2の対向する左右内壁201に沿うように回動自在とされている。
【0082】
そして、この第1アーム501の先端部分には、第2アーム502を回動自在に軸支しており、その軸支に際しては、第2アーム502が前記第1アーム501の回動方向と同一方向へ回動するようにしている。
【0083】
次に、前記第2アーム502の先端には第3アーム503が連結され、この第3アーム503は、前記第2アーム502と直交する方向へ向けて、第2アーム502に連結されている。
【0084】
また、この第3アーム503の先端部分には、第4アーム504が回動自在に軸支されており、その軸支に際しては、第4アーム504が第3アーム503と並行になるようにし、かつ、第4アーム504を第3アーム503側に回動することにより、第4アーム504が第3アーム503に重なり合うことが可能なようにしている。
【0085】
そして、前記第4アーム504の両端には、ワークを係止するためのワーク係止治具6が回動自在に軸支されている。
【0086】
ここで、前記ワーク係止治具19について説明すると、図4において、前記第4アーム504の両端部分にはそれぞれ、直交する上方へ向けて主軸601が回動自在に軸支されている。
【0087】
また、前記主軸601の先端部分には、放射状にして連結軸602が連結されており、更に、この連結軸602を、リング状の係止部603が連通し、これによりワーク係止治具6が構成され、係止部603にワーク31を係止することとしている。
【0088】
そして、このような構成において、係止部603にワーク31を係止し、その状態で、第1アーム501、第2アーム502を所望する角度だけ回動し、更に、第3アーム503に対して第4アーム504を所定の角度だけ回動することで、ワーク31を任意の角度に傾けつつ、ワーク31が前記塗料カートリッジ12による塗装可能な範囲内に入るように調整して、その状態で塗料カートリッジ12より塗料を噴射することでワークの塗装が可能である。
【0089】
また、それぞれの第4アーム504を第3アーム503と重なるように回動するとともに、適宜第2アーム502を任意の角度だけ回動し、それぞれの第1アーム501を塗装ブース2の外側あるいは塗装ブース2の内部へ回動することで、広い空間を必要とすることなく、それぞれのワーク係止治具6に係止したワーク31を衝突させることなく、塗装が終了したワークと未塗装のワークを入れ替えるが可能である。
【0090】
このように、本実施例におけるワーク供給手段5は、第1〜第4アーム501〜504を連結して構成するとともに、第1アーム501は、塗装ブース2の対向する左右内壁201にそれぞれ回動自在に軸支し、最先端の第4アーム504にワーク係止治具6を連結しているため、塗装ブース内の床に支柱等を介してワーク供給用テーブルを備え、このワーク供給テーブル上にワークを装着する場合と異なり、塗装に伴い発生するミストがワーク供給手段に溜まってしまうことがなく、従って、これによっても、塗料ミストによる悪影響を最小限度に抑えることができる。
【0091】
また、第4アームを第3アームと重なるように回動した状態で第1及び第3アームを回動することで、それぞれのワーク供給手段に係止したワークの塗装ブース内への入れ替えを可能にしているため、装置を大型化することなく、それぞれのワーク係止治具19に係止したワークを衝突させずに、塗装済のワークと未塗装のワークの入れ替えを容易に行うことが可能である。
【0092】
なお、図3において24は塗料カートリッジ載置エリアである。即ち、本実施例において前記塗装ブース2内には、塗料カートリッジ載置エリア24が備えられており、この塗料カートリッジ載置エリア24には、塗料が充填された未使用の塗料カートリッジ、使用済の塗料カートリッジが載置される。
【0093】
また、前記塗料カートリッジ載置エリア24にはハンドリングロボット25が配置されており、このハンドリングロボット25によって、未使用の塗料カートリッジはロボットアーム4に装着され、使用済の塗料カートリッジは塗料カートリッジ搬送路11内に収容された後に塗料充填エリア10へ搬送される。
【0094】
更に、図において32は制御ボックス部であり、本実施例においては、コンピューター等の制御手段を収容した制御ボックス部32を塗装ブース2に備えており、制御ボックス部32に収容したコンピューターを操作することで、前記ロボットアーム4、ハンドリングロボット25等を自動制御可能としている。
【0095】
また、図5は、前記ワーク係止治具6を回動するための機構を示している。即ち、本実施例においては、第1アーム501の基端側の内部に、塗装ブース2内に備えた駆動用モーター33の回転軸に連結された第1回転軸505を備えており、この第1回転軸505には駆動用ベルト506を連結している。
【0096】
一方、前記第1アーム501の先端部には、前記第1回転軸505と並行にして、前記駆動用ベルト506が連結された第2回転軸507が配設されている。
【0097】
そして、この第2回転軸507は、ギヤ508を介して、前記第2アーム502の内部に第2アーム502の長手方向に沿って配設した第3回転軸509に連結されており、この第3回転軸509の先端部は第2アーム502から延出して第3アーム503内に至っている。
【0098】
また、前記第3アーム503内には、第3アーム503の長手方向に沿って駆動用ベルト510が配設されており、この駆動用ベルト510は、第3アーム503の基端側において、前記第3回転軸509に連結されている。
【0099】
一方、前記第3アームの先端側と第4アームの基端側は、第4回転軸511により連結されており、この第4回転軸511は、前記第3アーム503内において、第3アーム503内に配設した駆動用ベルト510と連結されている。そして、前記第4回転軸511には、ワーク係止治具6を構成する主軸601の一方が連結されている。
【0100】
また、前記第4アーム504の先端部には、前記第4回転軸511と並行にして第5回転軸513が配設されるとともに、この第5回転軸513に、ワーク係止治具6を構成する主軸601の他方が連結され、更に、第5回転軸513と前記第4回転軸511とを、駆動用ベルト512が連通している。
【0101】
そして、この構成において、モーター33を駆動すると、第1回転軸505が回転するとともに駆動用ベルト506を介して第2回転軸507が回転する。
【0102】
そうすると、第2回転軸507の回転に伴って、ギヤ508を介して第3回転軸509が回転し、更に、第3アーム503内の駆動用ベルト510を介して第4回転軸511が回転する。
【0103】
一方、第4回転軸511にはワーク係止治具6を構成する主軸601が連結されているために、第4回転軸511が回転すると主軸601が回転し、それに伴って連結軸602、及び係止部603が回転して、ワーク31を回転することが可能となる。
【0104】
また、それとともに、第4アーム504内にはワーク係止治具6を構成する主軸601の他方が連結された第5回転軸513が配設されるとともに、この第5回転軸513は、駆動用ベルト512を介して前記第4回転軸511に連結されているために、第4回転軸511が回転すると、駆動用ベルト512を介して第5回転軸513も回転し、それに伴って主軸601の他方が回転し、更にそれに伴って連結軸602、及び係止部603が回転してワークを回転することが可能となる。
【0105】
従って、本実施例の塗装システム1においては、ワーク係止治具6に係止したワーク31を回転させながら、この回転しているワーク31に対して塗料を噴射して塗装することが可能である。
【0106】
次に、このように構成される本実施例の塗装システム1の作用について説明すると、まず、本実施例の塗装システムで塗料カートリッジ12を搬送するときは、収容扉1102を開放して、前記カートリッジ搬送路11内に塗料カートリッジ12を収容し、その後に、エアーホース1101を介して前記カートリッジ搬送路11内にエアーを供給する。
【0107】
そうすると、この供給されたエアーの圧力によって、前記塗料カートリッジ12は、塗料充填エリア10から塗装ブース2へ、あるいは塗装ブース2から塗料充填エリア10へ搬送される。
【0108】
そして、塗装ブース2へ搬送された塗料カートリッジ12は、ハンドリングロボット25等によって、塗料カートリッジ載置エリア24に載置され、更に、ロボットアーム4の塗料カートリッジ装着部402に装着され、これにより塗装が可能な状態になる。一方、使用済の塗料カートリッジ12は、塗料充填エリア10へ搬送された後に、塗料充填エリア10内に於いて塗料の充填がなされる。
【0109】
次に、ワークの塗装を行う場合には、ワーク係止治具6の係止部603にワーク31を係止し、第1アーム501、第2アーム502を所定角だけ回動するとともに第3アーム503に対して第4アーム504を所定角だけ回動することで、ワーク31を任意の角度に傾けつつ、ワーク31が塗料カートリッジ12による塗装可能な範囲内に入るように調整してワークを供給する。
【0110】
そして、前記塗料カートリッジ12を前記塗料カートリッジ装着部402に装着した状態で、前記エアーホース403を介してシリンジ側ニードル稼動用エアー供給路2304にエアーを供給することで、ニードル21を稼動して塗料吐出口2002を開放し、それとともに、ピストン移動手段を用いてピストン17を移動して塗料吐出口2002から塗料を吐出させ、更にそれとともに、塗料カートリッジの霧化エアー供給路2201、パターンエアー供給路2202にエアーを供給し、これにより、塗料カートリッジ12からワーク31へ向け、所定パターンとした霧化塗料を噴射する。
【0111】
また、ワーク31の塗装後に交換を行う場合には、塗装ブース2の内部にあるワーク供給手段、及び塗装ブース2の外部に待機しているワーク供給手段のそれぞれのワーク係止治具6にワーク31を装着した状態において、それぞれの第4アーム504を第3アーム503と重なるように回動するとともに、適宜第2アーム502を任意の角度だけ回動し、それぞれの第1アーム501を塗装ブース2の外側あるいは塗装ブース2の内部へ回動する。そうすると、互いのワーク31が邪魔になることなく、塗装が終了したワーク31と未塗装のワーク31を入れ替えることが可能である。
【0112】
このように、本実施例の塗装システムにおいては、第1〜第4アームを連結してワーク供給手段を構成しており、第4アームを第3アームと重なるように回動した状態で第1及び第3アームを回動することで、それぞれのワーク供給手段に係止したワークの塗装ブース内への入れ替えを可能にしているため、装置を大型化することなく、塗装済のワークと未塗装のワークの入れ替えを容易に行うことが可能である。
【0113】
また、複数本のアームを連結してワーク供給手段を構成するとともに、最基端側の第1アーム501は塗装ブース2の対向する左右内壁201にそれぞれ回動自在に軸支し、最先端の第4アームにワーク係止用の治具を連結することとしているため、塗装ブース内の床に支柱等を介してワーク供給用テーブルを備え、このワーク供給テーブル上にワークを装着する場合と異なり、塗装に伴い発生するミストがワーク供給手段に溜まってしまうことがなく、従って、これによっても、塗料ミストによる悪影響を最小限度に抑えることができる。
【0114】
そして、このとき、本実施例における塗装ブース2の床部分には、オイルパン等を配設し、このオイルパンにオイルあるいは水を流し、これにより、塗料の噴射に伴う塗料ミストをオイルパンで回収しつつ塗装ブースの外へ流しているために、塗料ミストが塗装ブース内に溜まってしまことを防止することができる。
【0115】
更に、本実施例の塗装システムでは、塗料カートリッジ搬送路を用いて、エアー圧力により、塗料カートリッジを塗装ブースと塗料充填エリア間で搬送しているため、塗料の種類が多種類に亘る場合でも、塗料ホースの本数の増加による装置の大型化を招くこともなく、また、塗料交換の場合でも塗料ホース内の洗浄による作業効率の低下を招くこともない。
【0116】
更にまた、本実施例における塗料カートリッジは、塗料が充填されるシリンジ部と、このシリンジ部に一体的に連設されたヘッド部を備え、ヘッド部より塗料を噴霧可能としているため、即ち、スプレーガンを一体に備えた塗料カートリッジとしているために、塗料交換の際にスプレーガンを洗浄する手間も不要で、塗料交換時の作業効率を上げることが可能である。
【0117】
なお、前述の実施例においては、前記塗料カートリッジ搬送路を1本備えた場合について説明したが、塗料が充填された塗料カートリッジを塗料充填エリアから塗装ブースへ搬送するための搬送路と、使用済の塗料カートリッジを塗装ブースから塗料充填エリアへ搬送する搬送路の2本を備えてもよい。
【0118】
また、塗装ブース又は塗料充填エリアのいずれかを複数箇所に設置し、あるいは塗装ブース及び塗料充填エリアを複数箇所に設置してもよく、これにより、確保可能なスペースに応じた塗装システムを構築することができる。
【0119】
例えば、塗料充填エリアを設置するためのスペースが少なく、色等が異なる塗料のすべてを1ヶ所に配置することが不可能な場合には、塗料充填エリアを複数箇所に分割すればよく、また、異なる製品の塗装を同時に行なうことを欲する場合には塗装ブースを複数箇所に設置するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の塗装システムでは、塗料ミストの影響を最小限度に抑えることができるとともに、装置を大型化することなくワークの入れ替えや塗料の交換作業の効率を向上可能としているため、ワークの入れ替えや塗料交換が不可避な塗装システムの全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0121】
1 塗装システム
2 塗装ブース
201 塗装ブースの左右内壁
3 移動用レール
4 ロボットアーム(塗装装置)
401 本体部
402 塗料カートリッジ装着部
403 エアーホース
5 ワーク供給手段
501 第1アーム
502 第2アーム
503 第3アーム
504 第4アーム
505 第1回転軸
506 第1駆動用ベルト
507 第2回転軸
508 ギヤ
509 第3回転軸
510 第2駆動用ベルト
511 第4回転軸
512 第3駆動用ベルト
513 第5回転軸
6 ワーク係止治具
601 主軸
602 連結軸
603 係止部
9 ピストン移動手段
901 可動板
902 スクリューネジ
903 モーター
10 塗料充填エリア
101 塗料タンク
102 ポンプ
103 固定治具
104 塗料ホース
11 塗料カートリッジ搬送路
1101 エアーホース
1102 収容扉
12 塗料カートリッジ
13 シリンジ部
14 塗料充填部
1401 充填空間
1402 吐出開口
15 塗料吐出部
16 流路
1601 基端部開口
1602 先端部開口
17 ピストン
18 ピストンロッド
19 ヘッド部
20 流路
2001 基端部開口
2002 塗料吐出口
21 ニードル
2201 霧化エアー供給路
2202 パターンエアー供給路
2301 ピストン
2302 押バネ
2303 エアー室
2304 エアー供給路
24 塗料カートリッジ載置エリア
25 ハンドリングロボット
31 ワーク
32 制御ボックス
33 モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を噴霧可能な塗料カートリッジ(12)と、
該塗料カートリッジ(12)を装着可能とした塗装装置(4)と、被塗装物としてのワークを係止可能な一対のワーク供給手段(5)と、前記塗装装置(4)に装着された塗料カートリッジ(12)から塗料を噴霧するための駆動手段(403、9)と、を備えた塗装ブース(2)と、
前記塗料カートリッジ(12)に所望の塗料を充填するための塗料充填エリア(10)と、
前記塗装ブース(2)と前記塗料充填エリア(10)との間に配設した、エアー圧力により、塗料が充填された塗料カートリッジ(12)を塗料充填エリア(10)から塗装ブース(2)に供給し、あるいは使用済みの塗料カートリッジ(12)を塗装ブース(2)から塗料充填エリア(10)へ戻すためのカートリッジ搬送路(11)と、を具備し、
前記塗装ブース(2)は、床部分に塗料ミストを回収する手段を備え、
前記ワーク供給手段(5)はそれぞれ、塗装ブース(2)の内壁に回動自在に連結される第1アーム(501)と、該第1アーム(501)に第1アーム(501)と同方向へ回動自在に連結された第2アーム(502)と、該第2アーム(502)に第2アーム(502)と直交する方向へ連結された第3アーム(53)と、該第3アーム(503)に第3アーム(503)と並行に回動自在に連結された第4アーム(504)と、該第4アーム(504)の両端に回動自在に連結した、1又は複数個のワークを係止可能としたワーク係止治具(6)と、を有して、ワークを任意の角度に傾けた状態にしての塗装を可能にするとともに、前記第4アーム(504)を第3アーム(503)と重なるように回動した状態で第1アーム(501)を回動することで、それぞれのワーク供給手段(5)に係止したワークの塗装ブース(2)内外への入れ替えを可能にし、
前記塗料カートリッジ(12)は、塗料が充填されるシリンジ部(13)と該シリンジ部(13)に一体的に連設されたヘッド部(19)を備えるとともに、
前記シリンジ部(13)は、全体として略円筒形状をしているとともに、先端部には、先端を開口部(1602)とした流路(16)が内部に形成された塗料吐出部(15)が連設され、内部にはピストン(17)が移動自在に挿装され、前記ピストン(17)を移動することでシリンジ部(13)内の塗料を前記開口部(1602)から吐出可能とし、
前記ヘッド部(19)は、前記開口部(1602)に連通するとともに先端部を塗料吐出口(2002)とした流路(20)と、前記塗料吐出口(2002)を開閉自在としたニードル(21)と、該ニードル(21)を移動させるためのニードル稼動手段と、先端が前記塗料吐出口(2002)の周囲の任意の箇所で開口されるとともに基端にエアー注入手段が連結されるエアー供給路(2201、2202)と、を具備し、
シリンジ部(13)内の塗料を前記塗料吐出口(2002)から吐出するとともに、前記エアー供給路(2201、2202)を介して塗料吐出口(2002)の周囲にエアーを供給することで、塗料吐出口(2002)より吐出された塗料を霧化するとともにこの霧化した塗料を先端方向へ噴射可能とした塗料カートリッジ(12)とし、
前記駆動手段は、少なくとも、塗料カートリッジ(12)にエアーを供給するためのエアー供給手段(403)と、塗料カートリッジ(12)のピストン(17)を移動させるためのピストン移動手段(9)とを含み、
前記カートリッジ搬送路(11)内に塗料カートリッジ(12)を収容した後に、前記カートリッジ搬送路(11)内にエアーを供給し、この供給されたエアーの圧力によって、前記塗料カートリッジ(12)を、塗料充填エリア(10)から塗装ブース(2)へ、あるいは塗装ブース(2)から塗料充填エリア(10)へ搬送し、
前記塗料カートリッジ(12)を前記塗装装置(4)に装着した状態で、前記エアー供給手段(403)及びピストン移動手段(9)を駆動することで、塗料カートリッジ(12)からワークへ向けて塗料を噴射し、
前記それぞれのワーク供給手段(5)にワークを装着した状態において、それぞれの第4アーム(504)を第3アーム(503)と重なるように回動し、それぞれの第1アーム(501)を塗装ブース(2)の外側あるいは塗装ブース(2)の内部へ回動することで、塗装が終了したワークと未塗装のワークを入れ替える、ことを可能にしたことを特徴とした塗装システム。
【請求項2】
前記ニードルを移動するためのニードル稼動手段は、前記ニードル(21)が固定されるとともに前記ヘッド(19)内に移動自在に挿装されたピストン(2301)と、該ピストン(2301)を塗料吐出口(2002)側に付勢するバネ(2302)と、前記ピストン(2301)をエアー圧力で反塗料吐出口(2002)側へ押圧するためのエアー供給手段(2304)と、を具備したことを特徴とする請求項1に記載の塗装システム。
【請求項3】
前記塗装装置(4)は、前記塗装ブース(2)内に備えられたレール(3)に可動自在に連結されたロボットアームであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の塗装システム。
【請求項4】
前記塗料充填エリア(10)又は/および塗装ブース(2)を複数個設置したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の塗装システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−274248(P2010−274248A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132546(P2009−132546)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(593081224)タクボエンジニアリング株式会社 (23)
【Fターム(参考)】