説明

塗装制御装置、塗装システム、及び塗装制御方法

【課題】遠隔操作のためのスイッチを別途設けることなく従来の塗装用手吹きガンから付随装置を遠隔操作できる塗装制御装置、塗装システム、及び塗装制御方法を提供する。
【解決手段】塗装用手吹きガン10を備えて構成される塗装設備に含まれる付随装置11を制御する塗装制御装置14であって、塗装用手吹きガン10のトリガ15の操作パターンを検知する検知手段13と、検知手段により検知された操作パターンに基づいて付随装置11を制御する制御手段16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装制御装置、塗装システム、及び塗装制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電塗装システムにおいて、高電圧発生回路から静電ガンに高電圧を供給する電力供給路に設けられている接点(付随装置)のオン/オフを静電ガンから遠隔操作するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この静電塗装システムでは、従来の静電ガンに静電ガン用スイッチユニットを取り付け、この静電ガン用スイッチユニットにより接点のオン/オフを遠隔操作している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−328013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の静電塗装システムによると、接点のオン/オフを遠隔操作するために静電ガンとは別に静電ガン用スイッチユニットを用意しなければならないという問題がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、遠隔操作のためのスイッチを別途設けることなく従来の塗装用手吹きガンから付随装置を遠隔操作できる塗装制御装置、塗装システム、及び塗装制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、塗装用手吹きガンを備えて構成される塗装設備に含まれる付随装置を制御する塗装制御装置であって、前記塗装用手吹きガンのトリガの操作パターンを検知する検知手段と、前記検知手段により検知された前記操作パターンに基づいて前記付随装置を制御する制御手段と、を備える。
この発明によると、塗装用手吹きガンのトリガの操作パターンを検知手段により検知し、その操作パターンに基づいて付随装置を制御するので、遠隔操作のためのスイッチを別途設けることなく従来の塗装用手吹きガンから付随装置を遠隔操作できる。
ここで付随装置とは、塗装設備の一部として動作する装置をいい、具体的には、塗料を帯電させるための電圧を塗装用手吹きガンに供給する電圧供給装置、高圧に加圧したエアを塗装用手吹きガンに供給するエア供給装置、高圧に加圧した塗料を塗装用手吹きガンに供給する塗料供給装置などである。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の塗装制御装置であって、前記制御手段は、制御パラメータに基づいて前記付随装置を制御するものであり、前記検知手段により検知された前記操作パターンが、互いに異なる複数の特定操作パターンのいずれかと合致するか否かを判定する判定手段と、前記判定手段で合致すると判定されると、当該操作パターンと合致する特定操作パターンに対応付けられている設定値を前記制御パラメータとして設定するパラメータ設定手段と、を有する。
この発明によると、制御パラメータに基づいて付随装置を制御する場合において、遠隔操作のためのスイッチを別途設けることなく従来の塗装用手吹きガンから付随装置を遠隔操作できる。
【0008】
第3の発明は、第2の発明の塗装制御装置であって、前記塗装用手吹きガンは塗料を帯電させて噴射する静電塗装ガンであり、前記付随装置は前記塗装用手吹きガンに塗料を帯電させるための電圧を供給する電圧供給装置であり、前記制御パラメータは、前記電圧供給装置により供給する前記電圧の電圧値である。
この発明によると、電圧供給装置により供給する電圧の電圧値を従来の塗装用手吹きガンを用いて設定できる。
【0009】
第4の発明は、第2の発明の塗装制御装置であって、前記付随装置は前記塗装用手吹きガンに塗料を供給する塗料供給装置であり、前記制御パラメータは、前記塗料供給装置により供給する前記塗料の圧力値である。
この発明によると、塗料供給装置により供給する塗料の圧力値を従来の塗装用手吹きガンを用いて設定できる。
【0010】
第5の発明は、第2の発明の塗装制御装置であって、前記塗装用手吹きガンは、塗料を霧化するエア、及び塗料の噴射パターンを制御するエアの少なくとも一方を噴射可能に構成されており、前記付随装置は前記塗装用手吹きガンに前記エアを供給するエア供給装置であり、前記制御パラメータは、前記エア供給装置により供給する前記エアの圧力値、又はエア消費量である。
この発明によると、エア供給装置により供給するエアの圧力値を従来の塗装用手吹きガンを用いて設定できる。
【0011】
第6の発明は、第2〜第5のいずれかの発明の塗装制御装置であって、前記塗装設備は複数の前記付随装置を含み、前記制御手段は、前記操作パターンに基づいていずれかの前記付随装置を選択する選択手段を有し、前記パラメータ設定手段は、前記選択手段により選択された前記付随装置の前記制御パラメータを設定する。
この発明によると、複数の付随装置の制御パラメータを従来の塗装用手吹きガンを用いて個別に設定できる。
【0012】
第7の発明は、第6の発明の塗装制御装置であって、前記選択手段は、前記トリガが第1の操作パターンで操作されると前記複数の付随装置のいずれかを選択する選択モードに遷移し、前記選択モードにおいていずれかの前記付随装置を最初の選択候補とし、前記トリガが第2の操作パターンで操作される毎に選択候補を順次切り替え、前記トリガが第3の操作パターンで操作されるとそのとき選択候補になっている前記付随装置を選択する。
この発明によると、付随装置を選択するための操作パターンの種類を低減できる。
【0013】
第8の発明は、第2〜第7のいずれかの発明の塗装制御装置であって、前記塗装設備は複数の前記付随装置を含み、前記パラメータ設定手段は、前記トリガの操作パターンに基づいて2以上の前記付随装置の前記制御パラメータを一括して設定する。
この発明によると、設定が関連する2以上の付随装置の制御パラメータを設定する際のトリガの操作回数を低減でき、これにより作業者は複数の付随装置の制御パラメータを容易に設定できる。
【0014】
第9の発明は、第1〜第8のいずれかの発明の塗装制御装置であって、前記塗装用手吹きガンはトリガが半引きされているときは塗料を噴射せず、トリガが全引きされると塗料を噴射するものであり、前記検知手段は、前記トリガが半引きされる操作の操作パターンを検知する。
この発明によると、付随装置を遠隔操作する際に作業者はトリガを全引きしなくてよいので、付随装置を遠隔操作する際に塗装用手吹きガンから塗料が噴射されてしまわないようにすることができる。
【0015】
第10の発明は、塗装システムであって、塗装用手吹きガンと、前記塗装用手吹きガンとともに塗装設備を構成する付随装置と、前記塗装用手吹きガンのトリガの操作パターンを検知する検知手段と、前記検知手段により検知された前記操作パターンに基づいて前記付随装置を制御する制御手段と、を備える。
この発明によると、遠隔操作のためのスイッチを別途設けることなく従来の塗装用手吹きガンから付随装置を遠隔操作できる。
【0016】
第11の発明は、塗装用手吹きガンを備えて構成される塗装設備に含まれる付随装置を制御する塗装制御方法であって、前記塗装用手吹きガンのトリガの操作パターンを検知手段により検知する検知段階と、前記検知段階で検知された前記操作パターンに基づいて制御手段により前記付随装置を制御する制御段階と、を含む。
この発明によると、遠隔操作のためのスイッチを別途設けることなく従来の塗装用手吹きガンから付随装置を遠隔操作できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、遠隔操作のためのスイッチを別途設けることなく従来の塗装用手吹きガンから付随装置を遠隔操作できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態1に係る塗装システムの全体構成を示す模式図。
【図2】パラメータ変更処理を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
次に本発明の実施形態1について図1から図2を参照して説明する。
(1)塗装システムの構成
図1は、塗装システム1の全体構成を示す模式図である。塗装システム1は塗装設備の一部であり、塗装用手吹きガン10、付随装置11、供給経路12、流体フロースイッチ13、及び塗装制御装置14を備えて構成されている。塗装設備にはこの他、塗装対象物を搬送するコンベアや、塗装ブースを照明する照明装置なども含まれる。
【0020】
(2)塗装用手吹きガン
塗装用手吹きガン10は所謂静電塗装ガンであり、トリガ15が半引きされると霧化用エア及びパターン用エアを噴射し、トリガ15が全引きされるとそれらのエアに加えて帯電された塗料を噴射する。噴射された塗料は霧化用エアによって霧化されるとともに、霧化された塗料に対してパターン用エアが吹き付けられることにより塗料の広がり(噴射パターン)が制御される。
【0021】
塗装用手吹きガン10は、トリガ15、及びガン本体の内部に収容されているエア噴射ノズル、塗料噴射ノズル、エア供給装置11bから供給されるエアをエア噴射ノズルに導くエア流路、塗料供給装置11cから供給される塗料を塗料噴射ノズルに導く塗料流路、トリガ15が半引きされると開弁してエア流路を開放する常閉式のエア流路開閉弁、トリガ15が全引きされると開弁して塗料流路を開放する常閉式の塗料流路開閉弁、塗料を帯電させるための電極、トリガ15が全引きされると電圧供給装置11aから供給される電圧を電極に印加するスイッチなどを備えて構成されている。
【0022】
(3)付随装置
付随装置11とは、塗装設備の一部として動作する装置であって、塗装制御装置14の制御の下で動作する装置をいう。本実施形態では付随装置11として電圧供給装置11a、エア供給装置11b、及び塗料供給装置11cを例に説明する。
【0023】
電圧供給装置11aは、塗料を帯電させるための電圧を塗装用手吹きガン10の電極に供給する装置である。電圧供給装置11aは、高電圧を発生させる高電圧発生回路と、高電圧発生回路により発生した電圧の電圧値を検出する電圧センサとを備えている。
【0024】
エア供給装置11bは、高圧に加圧したエアを塗装用手吹きガン10に供給する装置である。エア供給装置11bは、エアを高圧に加圧する高圧ポンプと、高圧ポンプにより加圧されたエアの圧力を検出するエア圧力センサとを備えている。
【0025】
塗料供給装置11cは、高圧に加圧した塗料を塗装用手吹きガン10に供給する装置である。塗料供給装置11cは、塗料が収容されている塗料供給源と、塗料供給源から供給される塗料を高圧に加圧する高圧ポンプと、高圧ポンプにより加圧された塗料の圧力を検出する塗料圧力センサとを備えている。
【0026】
(4)流体フロースイッチ
流体フロースイッチ13(検知手段の一例)には、エア供給装置11bから供給されるエアを塗装用手吹きガン10に導くエア供給経路12bに設けられているエアフロースイッチ13aと、塗料供給装置11cから供給される塗料を塗装用手吹きガン10に導く塗料供給経路12cに設けられている液フロースイッチ13bとがある。
【0027】
エアフロースイッチ13aは、エア供給経路12b内をエアが流れるとオンになり、エアの流れが停止するとオフになるスイッチである。トリガ15が引かれていないときは塗装用手吹きガン10のエア流路開閉弁が閉弁していることによりエアの流れが停止するので、エアフロースイッチ13aはオフになる。一方、トリガ15が半引きあるいは全引きされているときはエア流路開閉弁が開弁してエアが流れることにより、エアフロースイッチ13aはオンになる。エアフロースイッチ13aがオンになると塗装制御装置14に第1のトリガ信号が出力される。第1のトリガ信号はエアフロースイッチ13aがオンの間継続して出力され、エアフロースイッチ13aがオフになると出力が停止する。
【0028】
液フロースイッチ13bは、塗料供給経路12c内を塗料が流れるとオンになり、塗料の流れが停止するとオフになるスイッチである。トリガ15が引かれていないかあるいはトリガ15が半引きされているときは塗装用手吹きガン10の塗料流路開閉弁が閉弁していることにより塗料の流れが停止するので、液フロースイッチ13bはオフになる。一方、トリガ15が全引きされると塗料流路開閉弁が開弁して塗料が流れることにより、液フロースイッチ13bはオンになる。液フロースイッチ13bがオンになると塗装制御装置14に第2のトリガ信号が出力される。第2のトリガ信号は液フロースイッチ13bがオンの間継続して出力され、液フロースイッチ13bがオフになると出力が停止する。
【0029】
(5)塗装制御装置
塗装制御装置14は、制御部16、各種の信号が入力される入力部17(検知手段の一例)、各付随装置11に制御信号を出力する出力部18(制御手段の一例)、タイマー22(検知手段の一例)などを備えて構成されている。
【0030】
制御部16(検知手段、制御手段、判定手段、パラメータ設定手段、選択手段の一例)は、CPU19、ROM20、RAM21などで構成されている。ROM20にはCPU19により実行される塗装制御プログラムや各付随装置11の制御パラメータの初期値などが記憶されている。
【0031】
制御パラメータとは、具体的には例えば、電圧供給装置11aから塗装用手吹きガン10に供給する電圧の電圧値、エア供給装置11bから塗装用手吹きガン10に供給するエアの圧力値、塗料供給装置11cから塗装用手吹きガン10に供給する塗料の圧力値である。
【0032】
CPU19は、ROM20に記憶されている塗装制御プログラムを実行することにより、パラメータロード処理、フィードバック制御処理、検知処理、パラメータ変更処理などを実行する。
パラメータロード処理は、ROM20に記憶されている制御パラメータの初期値をロードしてRAM21に記憶する処理である。
【0033】
フィードバック制御処理は、RAM21に記憶されている制御パラメータに基づいて電圧供給装置11a、エア供給装置11b、及び塗料供給装置11cをフィードバック制御する処理である。
検知処理は、入力部17に入力されたトリガ信号によりトリガ15の操作パターンを検知する処理である。検知処理はパラメータ変更処理の中で実行される。
【0034】
パラメータ変更処理は、RAM21に記憶されている制御パラメータを、検知処理で検知した操作パターンに対応付けられている設定値に変更する処理である。CPU19は各付随装置11をフィードバック制御するときRAM21に記憶されている制御パラメータに基づいて制御するので、RAM21に記憶されている制御パラメータを変更した場合には、変更後の制御パラメータに基づいて付随装置11がフィードバック制御される。
以下、フィードバック制御処理、検知処理、及びパラメータ変更処理について説明する。
【0035】
(5−1)フィードバック制御処理
CPU19は、トリガ15が半引きあるいは全引きされてエアの供給が開始されると、エア供給装置11bが備えるエア圧力センサにより検出される圧力値を監視し、検出した圧力値とRAM21に記憶されているエア供給装置11bの制御パラメータ(エアの圧力値)との差が許容範囲内に収まるようにエア供給装置11bをフィードバック制御する。
【0036】
また、CPU19は、トリガ15が全引きされて塗料の供給が開始されると、電圧供給装置11aが備える電圧センサにより検出される電圧値を監視し、検出した電圧値とRAM21に記憶されている電圧供給装置11aの制御パラメータ(電圧値)との差が許容範囲内に収まるように電圧供給装置11aをフィードバック制御する。これとともに、CPU19は塗料供給装置11cが備える塗料圧力センサにより検出される圧力値を監視し、検出した圧力値とRAM21に記憶されている制御パラメータ(塗料の圧力値)との差が許容範囲内に収まるように塗料供給装置11cをフィードバック制御する。
【0037】
(5−2)検知処理、及びパラメータ変更処理
図2は、検知処理、及びパラメータ変更処理を説明するための模式図である。ここでは塗装用手吹きガン10から出力される第1のトリガ信号(トリガ15が半引きあるいは全引きされているときに出力されるトリガ信号)、及び第2のトリガ信号(トリガ15が全引きされているときに出力されるトリガ信号)のうち、第1のトリガ信号に基づいて制御パラメータを設定(変更)する場合を例に説明する。
また、ここでは第1のトリガ信号が入力されている状態をON、第1のトリガ信号が入力されていない状態をOFFと定義する。
【0038】
「通常作業中」では、CPU19は第1のトリガ信号を常時監視し、第1のトリガ信号により検知されるトリガ15の操作パターンが「2秒以内にトリガON/OFF5回」(第1の操作パターンの一例)と合致するか否かを判定する。CPU19は、トリガ15の操作パターンが第1の操作パターンと合致した場合には、制御パラメータの変更対象となる付随装置を選択する選択モードに遷移する。
【0039】
選択モードには、「電圧設定モード」(S102)、「エア圧設定モード」(S103)、及び「吐出量(吐出圧)設定モード」(S104)の3つの設定モードがあり、「電圧設定モード」が最初の設定モードとして予め設定されている。「電圧設定モード」は電圧供給装置11aが選択候補になっている状態である。
選択モードでは、CPU19は第1のトリガ信号を常時監視し、第1のトリガ信号により検知されるトリガ15の操作パターンが「1秒以内にトリガON/OFF2回」(第2の操作パターンの一例)、又は「1秒間トリガON保持」(第3の操作パターンの一例)のいずれか一方と合致するか否かを判定する。第2の操作パターンは設定モードを切り替えるための操作パターンであり、第3の操作パターンはそのとき切り替っている設定モードに対応する付随装置11を制御パラメータの変更対象として選択する操作パターンである。
【0040】
CPU19は、トリガ15の操作パターンが第2の操作パターンと合致した場合には、設定モードを「エア圧設定モード」に切り替える。「エア圧設定モード」はエア供給装置11bが選択候補になっている状態である。
そして、CPU19は「エア圧設定モード」に切り替っている状態でトリガ15の操作パターンが第2の操作パターンと合致した場合には、設定モードを「吐出量(吐出圧)設定モード」に切り替える。「吐出量(吐出圧)設定モード」は塗料供給装置11cが選択候補になっている状態である。
【0041】
そして、CPU19は「吐出量(吐出圧)設定モード」に切り替っている状態でトリガ15の操作パターンが第2の操作パターンと合致した場合には、設定モードを再び「電圧設定モード」に切り替える。
以後、CPU19は選択モードに遷移している間、トリガ15の操作パターンが第2の操作パターンと合致する毎に設定モードを循環して順次切り替える。
【0042】
そして、CPU19はトリガ15の操作パターンが第3の操作パターンと合致した場合には、そのとき切り替っている設定モードに対応する付随装置11を制御パラメータの変更対象として選択して選択モードを終了する。
【0043】
選択モードを終了すると、次にCPU19はパラメータ設定モードに遷移する。
パラメータ設定モードでは、CPU19は第1のトリガ信号を常時監視し、トリガ15の操作パターンが「1秒以内にトリガON/OFF2回」(特定操作パターンの一例、以下「第1の特定操作パターン」という)、又は「1秒以内にトリガON/OFF3回」(特定操作パターンの一例、以下「第2の特定操作パターン」という)と合致するか否かを判定する。
【0044】
これら複数の特定操作パターンにはそれぞれ付随装置11毎に異なる設定値が対応付けられている。例えば、電圧供給装置11aの場合は第1の特定操作パターンに「+10kv」、第2の特定操作パターンに「−10kv」が対応付けられている。エア供給装置11bの場合は第1の特定操作パターンに「+0.1MPa」、第2の特定操作パターンに「−0.1MPa」が対応付けられている。また、塗料供給装置11cの場合は第1の特定操作パターンに「+0.1MPa」、第2の特定操作パターンに「−0.1MPa」が対応付けられている。
【0045】
トリガ15の操作パターンが第1の特定操作パターンと合致した場合には、CPU19は第1の特定操作パターンに対応付けられている設定値のうち現在選択されている付随装置11に対応する設定値を、当該選択されている付随装置11の制御パラメータとして設定する。具体的には例えば、現在選択されている付随装置11が電圧供給装置11aであるとすると、CPU19はRAM21に記憶されている電圧供給装置11aの制御パラメータを、第1の特定操作パターンに対応付けられている設定値のうち電圧供給装置11aに対応する設定値「+10kv」で上書きする。第2の特定操作パターンについても同様である。
CPU19は、制御パラメータを設定(変更)すると、トリガ15の操作パターンが「1秒間トリガON保持」(第3の操作パターンの一例)と合致するまで待機し、合致するとパラメータ設定モードを終了して再び「通常作業中」の状態に戻る。なお、制御パラメータを設定(変更)すると、トリガ15の操作パターンが第3の操作パターンと合致するまで待機することなくパラメータ設定モードを終了してもよい。
【0046】
なお、ここでは一旦選択モードに遷移するといずれかの付随装置11の制御パラメータが変更されない限り「通常作業中」に戻らない場合を例に説明したが、例えば選択モードに遷移して一定時間経過しても制御パラメータが変更されない場合には「通常作業中」に戻るようにしてもよい。
【0047】
(6)実施形態の効果
以上説明した本発明の実施形態1に係る塗装制御装置14によると、塗装用手吹きガン10のトリガ15の操作パターンを検知手段(流体フロースイッチ13、入力部17、制御部16、及びタイマー22)により検知し、その操作パターンに基づいて付随装置11を制御するので、遠隔操作のためのスイッチを別途設けることなく従来の塗装用手吹きガン10から付随装置11を遠隔操作できる。
【0048】
更に、塗装制御装置14によると、制御パラメータに基づいて付随装置11を制御する場合において、遠隔操作のためのスイッチを別途設けることなく従来の塗装用手吹きガンから付随装置を遠隔操作できる。
【0049】
更に、塗装制御装置14によると、電圧供給装置11aにより供給する電圧の電圧値を従来の塗装用手吹きガン10を用いて設定できる。
【0050】
更に、塗装制御装置14によると、塗料供給装置11cにより供給する塗料の圧力値を従来の塗装用手吹きガン10を用いて設定できる。
【0051】
更に、塗装制御装置14によると、エア供給装置11bにより供給するエアの圧力値を従来の塗装用手吹きガン10を用いて設定できる。
【0052】
更に、塗装制御装置14によると、トリガ15の操作パターンに基づいていずれかの付随装置11を選択し、選択した付随装置11の制御パラメータを設定するので、複数の付随装置11の制御パラメータを従来の塗装用手吹きガン10を用いて個別に設定できる。
【0053】
更に、塗装制御装置14によると、トリガ15が第1の操作パターンで操作されると複数の付随装置11のいずれかを選択する選択モードに遷移し、選択モードにおいていずれかの付随装置11を最初の選択候補とし、トリガ15が第2の操作パターンで操作される毎に選択候補を順次切り替え、トリガ15が第3の操作パターンで操作されるとそのとき選択候補になっている付随装置11を選択するので、付随装置11を選択するための操作パターンの種類を低減できる。
【0054】
更に、塗装制御装置14によると、第1のトリガ信号(トリガ15が半引きあるいは全引きされているときに出力されるトリガ信号)に基づいて付随装置11を制御する。これにより、付随装置11を遠隔操作する際に作業者はトリガ15を全引きしなくてよいので、付随装置11を遠隔操作する際に塗装用手吹きガン10から塗料が噴射されてしまわないようにすることができる。
【0055】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を説明する。
実施形態2では、トリガ15の操作パターンに基づいて2以上の付随装置11の制御パラメータを一括して変更する。
【0056】
例えば、特定操作パターンと所定の塗装対象物に応じた塗装条件(電圧値、エアの圧力値、塗料の圧力値)とを対応付けておき、トリガ15の操作パターンが当該特定操作パターンと合致した場合は、電圧値、エアの圧力値、及び塗料の圧力値を当該特定操作パターンに対応付けられている塗装条件(電圧値、エアの圧力値、塗料の圧力値)に一括して変更する。
【0057】
以上説明した本発明の実施形態2に係る塗装制御装置によると、設定が関連する2以上の付随装置11の制御パラメータを設定する際のトリガ15の操作回数を低減でき、これにより作業者は複数の付随装置11の制御パラメータを容易に設定できる。
【0058】
<他の実施形態>
本発明は上記記述および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0059】
(1)上記実施形態では付随装置11として電圧供給装置11a、塗料供給装置11c、及びエア供給装置11bを例に説明したが、付随装置11は塗装設備の一部として動作する装置であればこれら以外のものであってもよい。
【0060】
例えば、塗装システム1が塗装対象物を搬送するコンベア(付随装置の一例)を含んで構成されているとし、コンベアの搬送速度が制御パラメータに応じて変化するものであるとすると、トリガ15の操作パターンに基づいてコンベアの搬送速度の制御パラメータを変更してもよい。
【0061】
また、例えば、塗装システム1が塗装ブース(付随装置の一例)を含んで構成されている場合には、塗装ブースを制御してもよい。具体的には例えば、塗装ブースの照明装置の明るさが制御パラメータに応じて変化するものであるとすると、トリガ15の操作パターンに基づいて照明装置の明るさの制御パラメータを変更してもよい。
【0062】
また、例えば、塗料供給装置11cが複数の色の塗料を供給可能に構成されており、制御パラメータに応じて供給する色を変更可能に構成されている場合、トリガ15の操作パターンに基づいて色の制御パラメータを変更してもよい。
【0063】
(2)上記実施形態ではトリガ15が全引きされると電極に電圧が印加される場合を例に説明したが、塗装用手吹きガンに設けられている別の手元スイッチで電圧の印加の開始/停止を指示する構成とし、その電圧の設定をトリガ15の操作パターンに基づいて変更してもよい。
【0064】
(3)上記実施形態ではエアフロースイッチ13aから出力されるトリガ信号(第1のトリガ信号)により操作パターンを検知する場合を例に説明したが、液フロースイッチ13bから出力されるトリガ信号(第2のトリガ信号)により操作パターンを検知してもよい。
【0065】
また、トリガ信号を直接出力可能に構成されている塗装用手吹きガンの場合には、そのトリガ信号により操作パターンを検知してもよい。具体的には例えば、トリガ15が引かれていないときはトリガ信号がオフになり、トリガ15が半引きあるいは全引きされているときにはトリガ信号がオンになるように構成されているリードスイッチを備えている塗装用手吹きガンもある。この種の塗装用手吹きガンを用いる場合には、リードスイッチから出力されるトリガ信号により操作パターンを検知してもよい。
【0066】
より具体的には、塗装用手吹きガンの中にはエアを噴射しないエアレスタイプのものもあるので、エアフロースイッチを設けることができない。この場合、半引き状態でトリガ信号が出力されるリードスイッチを備えるものであれば、そのリードスイッチから出力されるトリガ信号により操作パターンを検知してもよい。
【0067】
(4)上記実施形態では操作パターンに基づいて付随装置の制御パラメータを設定する場合を例に説明したが、操作パターンに基づいて付随装置の電源のオン/オフを制御してもよい。
【0068】
(5)上記実施形態では塗装制御装置14が付随装置11をフィードバック制御する場合を例に説明したが、この制御はフィードバック制御でなくてもよい。例えば、制御パラメータに基づいて自律的に動作するように構成されている付随装置の場合には、塗装制御装置14は付随装置に制御パラメータを出力するだけであってもよい。この場合は、付随装置に制御パラメータを出力することが「塗装制御装置による付随装置の制御」の一例である。
【0069】
(6)上記実施形態ではトリガ15の操作パターンをトリガ15が引かれた回数やトリガ15が引かれている時間の長さなどの組み合わせで判断しているが、トリガ15が引かれていない状態が継続している時間を含めて操作パターンを判断してもよい。
(7)上記実施形態ではエア供給装置11bの制御パラメータとしてエアの圧力値を例に説明したが、エア供給装置11bの制御パラメータはエア消費量であってもよい。具体的には例えば、エア供給装置11bに前述したエア圧力センサに替えてエアの流量を測定する流量センサを設け、流量センサによって測定される単位時間当たりのエアの流量(エア消費量)を制御パラメータに基づいて制御してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…塗装システム
10…塗装用手吹きガン
11…付随装置
11a…電圧供給装置(付随装置)
11b…エア供給装置(付随装置)
11c…塗料供給装置(付随装置)
12…供給経路
13…流体フロースイッチ(検知手段)
14…塗装制御装置
15…トリガ
16…制御部(検知手段、制御手段、判定手段、パラメータ設定手段、選択手段)
17…入力部(検知手段)
18…出力部(制御手段)
22…タイマー(検知手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装用手吹きガンを備えて構成される塗装設備に含まれる付随装置を制御する塗装制御装置であって、
前記塗装用手吹きガンのトリガの操作パターンを検知する検知手段と、
前記検知手段により検知された前記操作パターンに基づいて前記付随装置を制御する制御手段と、
を備える塗装制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗装制御装置であって、
前記制御手段は制御パラメータに基づいて前記付随装置を制御するものであり、
前記検知手段により検知された前記操作パターンが、互いに異なる複数の特定操作パターンのいずれかと合致するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段で合致すると判定されると、当該操作パターンと合致する特定操作パターンに対応付けられている設定値を前記制御パラメータとして設定するパラメータ設定手段と、
を有する、塗装制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の塗装制御装置であって、
前記塗装用手吹きガンは塗料を帯電させて噴射する静電塗装ガンであり、
前記付随装置は前記塗装用手吹きガンに塗料を帯電させるための電圧を供給する電圧供給装置であり、
前記制御パラメータは、前記電圧供給装置により供給する前記電圧の電圧値である、塗装制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の塗装制御装置であって、
前記付随装置は前記塗装用手吹きガンに塗料を供給する塗料供給装置であり、
前記制御パラメータは、前記塗料供給装置により供給する前記塗料の圧力値である、塗装制御装置。
【請求項5】
請求項2に記載の塗装制御装置であって、
前記塗装用手吹きガンは、塗料を霧化するエア、及び塗料の噴射パターンを制御するエアの少なくとも一方を噴射可能に構成されており、
前記付随装置は前記塗装用手吹きガンに前記エアを供給するエア供給装置であり、
前記制御パラメータは、前記エア供給装置により供給する前記エアの圧力値、又はエア消費量である、塗装制御装置。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれか一項に記載の塗装制御装置であって、
前記塗装設備は複数の前記付随装置を含み、
前記制御手段は、前記操作パターンに基づいていずれかの前記付随装置を選択する選択手段を有し、
前記パラメータ設定手段は、前記選択手段により選択された前記付随装置の前記制御パラメータを設定する、塗装制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の塗装制御装置であって、
前記選択手段は、前記トリガが第1の操作パターンで操作されると前記複数の付随装置のいずれかを選択する選択モードに遷移し、前記選択モードにおいていずれかの前記付随装置を最初の選択候補とし、前記トリガが第2の操作パターンで操作される毎に選択候補を順次切り替え、前記トリガが第3の操作パターンで操作されるとそのとき選択候補になっている前記付随装置を選択する、塗装制御装置。
【請求項8】
請求項2乃至請求項7のいずれか一項に記載の塗装制御装置であって、
前記塗装設備は複数の前記付随装置を含み、
前記パラメータ設定手段は、前記トリガの操作パターンに基づいて2以上の前記付随装置の前記制御パラメータを一括して設定する、塗装制御装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の塗装制御装置であって、
前記塗装用手吹きガンはトリガが半引きされているときは塗料を噴射せず、トリガが全引きされると塗料を噴射するものであり、
前記検知手段は、前記トリガが半引きされる操作の操作パターンを検知する、塗装制御装置。
【請求項10】
塗装用手吹きガンと、
前記塗装用手吹きガンとともに塗装設備を構成する付随装置と、
前記塗装用手吹きガンのトリガの操作パターンを検知する検知手段と、
前記検知手段により検知された前記操作パターンに基づいて前記付随装置を制御する制御手段と、
を備える塗装システム。
【請求項11】
塗装用手吹きガンを備えて構成される塗装設備に含まれる付随装置を制御する塗装制御方法であって、
前記塗装用手吹きガンのトリガの操作パターンを検知手段により検知する検知段階と、
前記検知段階で検知された前記操作パターンに基づいて制御手段により前記付随装置を制御する制御段階と、
を含む塗装制御方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−72968(P2011−72968A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229821(P2009−229821)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】