説明

塗装基材の製造方法

【課題】塗装の後、乾燥した建材を積み上げても、ブロッキングを生じることが無く、外観上問題のない塗装済み建材を、効率よく製造することが可能となる塗装基材の製造方法を提供する。
【解決手段】基材表面に、粒子を含有する着色塗膜を施し、次いで
該着色塗膜上にクリアー塗膜を施す、塗装基材の製造方法において、
前記着色塗膜及びクリアー塗膜の膜厚と、前記粒子の数平均粒子径が、以下の〔式1〕の関係にあることを特徴とする、塗装基材の製造方法。
(1/2)X≦粒子の数平均粒子径(μm)≦(3/2)(X+Y) 〔式1〕
(但し、X:着色塗膜の膜厚(μm)、Y:クリアー塗膜の膜厚(μm))

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装基材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築建材に対しては、意匠性、耐久性その他特殊機能を付与するために、塗料が塗装されることが一般的である。これら、建築建材に対して、塗料を塗装する際には、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、カーテンフローコーター、ロールコーター等の方法がとられている。また、これらの塗装方法と、ベルトコンベア等の搬送手段と組み合わせることで、塗装建材を大量に、効率よく製造することができる。
【0003】
建材を製造する際において、通常は塗料を塗装した後に乾燥工程が加わる。塗装した塗料を乾燥させて塗膜にし、塗装した建材を取り扱いやすくするためである。しかしながら、これら乾燥工程は製造効率の観点、及び設備の関係により、塗装工程全体中において、余り長い時間をかけられない場合がある。この場合、乾燥が不十分、若しくは乾燥後の除熱が不十分な状態で、建材が積み上げられることとなり、積み上げた建材どうしが接着する、いわゆるブロッキング現象が起こる。このブロッキング現象は、塗膜の仕上がりを低下させるだけでなく、塗膜の剥離等を生じることもあり、建材の塗装において、解決すべき問題として、従来から取り組まれてきた。
【0004】
そこで、上記のような問題を解決するために、いくつかの方法が検討されている。例えば、建材に塗装する塗料に対して、粒子を配合し、建材を積み重ねたときの接触面を少なくすることで、ブロッキングを防止する方法がこれに当たる。
【0005】
以下に挙げる文献は、上述のように、塗料に対して粒子を配合することで、ブロッキングを防止する方法について開示するものである。
【特許文献1】特開平9−57191号公報
【特許文献2】特開2001−348286号公報
【特許文献3】特開2005−162825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の技術を用いた際には、以下のような問題が生じた。それは、塗料に対して粒子を配合した場合においても、必ずしもブロッキングを防ぐことができない場合が生じる点にある。
【0007】
即ち、建材に対して塗装される塗料は、その塗膜の有する機能を発揮させるため、特定の塗布量で塗装される必要がある。ここで、前述の粒子を含有する塗料を塗装する場合において、その塗布量が少ない場合においては、ブロッキングを防止することが可能であるが、塗布量が多い場合には、その機能を発揮できない場合が生じた。
【0008】
これは、塗料の塗布量が特定の範囲で収まっている場合には、塗料中に配合した粒子が、ブロッキング防止機能を発揮できるのに対し、塗布量が特定の範囲を超えると、塗料中に配合した粒子が塗膜中に埋没し、ブロッキング防止機能を発揮できないことがその原因と考えられる。
【0009】
本発明の目的は、塗装の後、乾燥した建材を積み上げても、ブロッキングを生じることが無く、外観上問題のない塗装済み建材を、効率よく製造することが可能となる塗装基材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の粒子を塗料中に配合し、当該塗料を基材に対して塗装することで、上記問題を解決することができることを見出し、本発明に到ったものである。
【0011】
即ち本発明は、基材表面に、粒子を含有する着色塗膜を施し、次いで
該着色塗膜上にクリアー塗膜を施す、塗装基材の製造方法において、
前記着色塗膜及びクリアー塗膜の膜厚と、前記粒子の数平均粒子径が、以下の〔式1〕の関係にあることを特徴とする、塗装基材の製造方法である。
【0012】
(1/2)X≦粒子の数平均粒子径(μm)≦(3/2)(X+Y) 〔式1〕
(但し、X:着色塗膜の膜厚(μm)、Y:クリアー塗膜の膜厚(μm))
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、塗装済み基材を効率よく製造することが可能となる。即ち、本発明の方法によれば、塗装の後、乾燥した建材を積み上げても、ブロッキングを生じることが無く、外観上問題のない塗装済み建材を、効率よく製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明について具体的に説明する。
【0015】
〔塗装基材の製造方法〕
本発明の塗装基材の製造方法は、基材に対して塗料を塗装し、乾燥することにより実施することが可能である。
【0016】
本発明で塗装対象となる基材は、例えば、アルミ、鉄、ステンレス、亜鉛メッキ板等の金属基材;フレキシブルボード、ケイ酸カルシウム板、石膏スラグバーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボード等の無機基材;紙、木、ガラスなどのその他基材が代表的なものとして挙げられる。
【0017】
上記基材に対しては、基材の目止め、特に後に塗装する着色塗料の吸い込みを防止することを目的として、シーラーを塗装することができる。これらシーラーは、基材の種類に合わせて使い分けることが可能であり、各基材で一般的に使用されている何れのシーラーも用いることができる。シーラーを塗装した場合においては、塗装したシーラーを乾燥させることもできる。シーラーの乾燥条件は、使用するシーラーの配合により、適宜変えることが可能である。
【0018】
上記基材、若しくはシーラーを塗装した基材に対して、着色塗膜を施す。当該着色塗膜は、後述する着色塗料を塗装することにより、施される。
【0019】
着色塗料の塗装は、従来から使用されている塗装方法の何れも使用することが可能であり、これらの代表的なものとしては、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、カーテンフローコーター、ロールコーター、刷毛塗り等が挙げられる。
【0020】
着色塗料の塗布量は、着色塗膜の乾燥膜厚として好ましくは2〜300μm、より好ましくは5〜200μm、特に好ましくは10〜100μmの範囲になる量である。着色塗膜の乾燥膜厚が2μmより薄いと、着色塗膜の発色性が悪くなる傾向にある。一方、着色塗膜の乾燥膜厚が300μmより厚いと、着色塗膜の乾燥性が不十分となる傾向にある。
【0021】
着色塗料を塗装した後に、クリアー塗膜を施すため、クリアー塗料の塗装を行うが、その前に着色塗料を乾燥させることもできる。この場合における乾燥条件は、塗装した着色塗料の配合によって適宜替わり得るが、30〜150℃の範囲において、1〜30分乾燥させることが好ましい。また、この乾燥は、塗膜を完全に乾燥させることも、塗膜の表面を乾かす、いわゆる指触乾燥の段階であってもさしつかえない。
【0022】
基材の着色塗膜面に対して、クリアー塗料の塗装を行う。クリアーの塗装は、従来から使用されている塗装方法の何れも使用することが可能であり、これらの代表的なものとしては、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、カーテンフローコーター、ロールコーター、刷毛塗り等が挙げられる。
【0023】
クリアー塗料の塗布量は、クリアー塗膜の乾燥膜厚として好ましくは1〜300μm、より好ましくは5〜200μm、特に好ましくは5〜80μmの範囲になる量である。クリアー塗膜の乾燥膜厚が1μmより薄いと、クリアー塗膜による着色塗膜及び基材の保護性能が低下する傾向にある。一方、クリアー塗膜の乾燥膜厚が300μmより厚いと、クリアー塗膜の乾燥性が低下する傾向にある。
【0024】
クリアー塗料を塗装した後に、クリアー塗料及び着色塗膜を乾燥させる。当該乾燥は、着色塗膜及びクリアー塗膜を乾燥させるために行うものであり、その乾燥条件は使用する着色塗料及びクリアー塗料の配合により、適宜替わり得るが、一般的には50〜170℃の温度条件下で、1〜30分乾燥させることが好ましい。また、本発明においては、当該乾燥工程の後に、建材が積み上げられることがあるため、乾燥状態はいわゆる指触乾燥の状態ではなく、少なくともクリアー塗膜が乾燥している状態、より具体的には、クリアー塗膜に含有される溶媒が、クリアー塗料中に配合された溶媒の内80%以上蒸発した状態であることが好ましい。
【0025】
〔本発明で使用する塗料〕
〔着色塗料〕
本発明で使用する着色塗料は、結合剤、着色顔料、粒子、溶媒からなり、その他必要に応じて、体質顔料、その他添加剤等を配合することが可能である。
【0026】
上記結合剤としては、塗料で一般的に用いられている何れの樹脂も使用することが可能である。例えば、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、アクリルシリコン樹脂或いはこれらの変成樹脂等の内の1種、または2種以上、或いはこれらと硬化剤や硬化触媒等を組み合わせて使用することが可能である。
【0027】
上記着色顔料としては、塗料で一般的に使用されている着色顔料を、特に制限なく使用することができる。これら着色顔料の具体例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、カーボンブラック、黄鉛、オーカー、弁柄、複合酸化物(ニッケル・チタン系、クロム・チタン系、ビスマス・バナジウム系)等の無機系顔料や、フタロシアニンブルー、カーミンFB、ハンザイエロー、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、アンスラピラミジン、スレン、ジオキサジン等の有機系顔料等が挙げられる。
【0028】
上記粒子は、本発明の目的である、ブロッキング防止機能を付与するために、特に必要なものである。上記粒子は、特にその数平均粒子径が、以下の〔式1〕の関係を満たすものである必要がある。
【0029】
(1/2)X≦粒子の数平均粒子径(μm)≦(3/2)(X+Y) 〔式1〕
(但し、X:着色塗膜の膜厚(μm)、Y:クリアー塗膜の膜厚(μm))
【0030】
即ち、前述着色塗膜の膜厚、及びクリアー塗膜の膜厚に対して、配合する粒子の数平均粒子径が、上記の数式の範囲に入ることが必要である。例えば、着色塗膜の膜厚が30μmであり、クリアー塗膜の膜厚が20μmである場合において、配合する粒子の数平均粒子径の範囲は、15μm≦数平均粒子径≦75μmとなる。ここで、前記数平均粒子径は、塗料中に含まれている状態での数平均粒子径を指す。即ち、塗料に配合した際の数平均粒子径が上記範囲を越えるものであっても、練合工程により上記範囲となるものについては、当然に本発明の範囲に含まれる。
【0031】
尚、粒子の数平均粒子径が(1/2)Xより小さいと、耐ブロッキング性が低下する傾向にある。一方、粒子の数平均粒子径が(3/2)(X+Y)より大きいと、塗料中での粒子の分散安定性が悪くなるとともに塗装作業性も悪くなる傾向にある。
【0032】
前記粒子の配合量については、前述の通り、数平均粒子径が前記範囲にある粒子を添加しても良いし、前記範囲外にある粒子を配合し、練合することで、数平均粒子径を前記範囲とすることも可能である。着色塗料中における前記粒子の配合量は、特に制限はないが、好ましくは、着色塗膜の単位面積あたりにおける粒子の含有量が、以下の〔式2〕の関係を満たすようにすることが好ましい。
【0033】
[20000/(3×(X+Y))]≦粒子数(個/cm)≦1.2×(20000/X) 〔式2〕
(但し、X:着色塗膜の膜厚(μm)、Y:クリアー塗膜の膜厚(μm))
【0034】
例えば、前述のように、着色塗膜の膜厚が30μmであり、クリアー塗膜の膜厚が20μmである場合における単位面積あたりの粒子数は、17778個≦粒子数(個/cm)≦533333個の範囲にあれば良いこととなる。単位面積あたりの粒子の個数が、[20000/(3×(X+Y))]よりも少ないと、ブロッキング性への効果が減少する傾向にある。一方、単位面積あたりの粒子の個数が、1.2×(20000/X)よりも多いと、塗膜の緻密性が悪くなり塗膜強度が減少する傾向にある。
【0035】
上記数平均粒子径、及び粒子の配合量は、基材の設計段階において、目標とする着色塗膜の膜厚及びクリアー塗膜の膜厚を設定し、当該数値に基づいて、選択することが可能である。本発明では、着色塗料に配合する粒子を、上記のように決定することにより、基材の耐ブロッキング性を確実に機能させることができる。
【0036】
上記粒子としては、前述の条件を満たすものであれば、特に制限なく使用でき、これらの代表的なものとしては、有機系粒子または無機系粒子を選択することが可能である。
【0037】
上記無機系粒子としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫などがあり具体的にはガラスビーズ、陶器粉、珪砂等が代表的なものとして挙げられる。
【0038】
上記有機系粒子としては、例えば、各種単量体を共重合したものが代表的なものとして挙げられる。前記単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレートラウリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート、ヒドロキシヘキシルメタクリレート、ヒドロキシオクタデシルアクリレート、ヒドロキシオクタデシルメタクリレート、ヒドロキシラウリルメタクリレート、ヒドロキシラウリルアクリレート、フェネチルアクリレート、フェネチルメタクリレート、6-フェニルヘキシルアクリレート、6-フェニルヘキシルメタクリレート、フェニルラウリルアクリレート、フェニルラウリルメタクリレート、3-ニトロフェニル-6-ヘキシルメタクリレート、3-ニトロフェニル-18-オクタデシルアクリレート、エチレングリコールジシクロペンチルエーテルアクリレート、ビニルエチルケトン、ビニルプロピルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルオクチルケトン、ビニルブチルケトン、シクロヘキシルアクリレート、3-メタクリルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン、3-メタクリルオキシプロピルトリス-(トリメチルシロキシ) シラン、3-アクリルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロメチルスチレン、トリフルオロメチルアクリレート、トリフルオロメチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘプタフルオロブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、N,N-ジヘキシルアクリルアミド、N,N-ジオクチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、ピペリジノ-N-エチルアクリレート、ビニルプロピオネート、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルブチルエーテル、及びビニルプロピルエーテル、エチレン、スチレン、ビニルカルバゾール、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、メチルスチレン、ビニルビフェニル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルプロピレン、2-メチル-2-ビニルオキシラン、ビニルピリジン、アミノエチルメタクリレート、アミノエチルフェニルアクリレート、マレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ヘキシルマレイミド、N-ビニルフタルイミド、及びN-ビニルマレイミド、ポリ(エチレングリコール) メチルエーテルアクリレート、ポリビニルアルコール、ビニルピロリドン、ビニル4-メチルピロリドン、ビニル4-フェニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニル4-メチルイミダゾール、ビニル4-フェニルイミダゾール、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、アリールオキシジメチルアクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、アリールオキシピペリジン、及びN,N-ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、クロロメタクリル酸、マレイン酸、アリルアミン、N,N-ジエチルアリルアミン、ビニルスルホンアミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸アンモニウム、塩化アクリルアミドプロパントリエチルアンモニウム、塩化メタクリルアミドプロパントリエチルアンモニウム、ビニルピリジン塩酸塩、ビニルホスホン酸ナトリウム、及び1-メチルビニルホスホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、1-メチルビニルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、アクリルアミドプロパンスルホン酸ナトリウム、メタクリルアミドプロパンスルホン酸ナトリウム、及びビニルモルホリンスルホン酸ナトリウム、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ブテニルアクリレート、ウンデセニルアクリレート、ウンデセニルメタクリレート、ビニルアクリレート、及びビニルメタクリレート、ジエン(例えば、ブタジエン及びイソプレン)、飽和グリコールまたはジオールと不飽和モノカルボン酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート)、及び多官能芳香族化合物(例えば、ジビニルベンゼン)等が挙げられる。本発明においては、前記単量体の選択については、ガラス転移点(以下、Tg)が、着色塗膜に配合された樹脂ならびにクリアー塗膜に配合された樹脂のTgと比較して、10℃〜150℃、さらに好ましくは30〜150℃高いものを用いることが好ましい。Tg差が150℃より大きいと、衝撃により有機系粒子に亀裂が入りやすくなり好ましくない。着色塗膜に配合された樹脂ならびにクリアー塗膜に配合された樹脂とのTg差が10℃より小さいと、粒子を添加していない状態と等しくなってしまうため好ましくない。
【0039】
また、前記粒子は、980dyn(1gf)の荷重をかけた際の粒子径維持率が99.5〜30%の範囲にあることが好ましく、99〜70%の範囲にあるものがさらに好ましい。粒子径維持率が30%より小さいと、塗膜の強度が維持できずブロッキング性への効果が減少する傾向にある。また、99.5%より大きいと、衝撃により粒子に亀裂が入りやすくなり好ましくない。尚、ここで言う粒子径維持率とは、室温(25℃)において加重を加えていない時の粒子の直径を100%とし、粒子1つに980dyn(1gf)の加重をかけ変形した粒子の短径が加重を加えていなかったときの何%になるかということを意味する。変形率は、例えば微小硬さ試験機(Fisher Scope社製)HP100C Xypを用いて測定することが可能である。
【0040】
前記溶媒としては、塗料にて一般的に使用される溶媒の何れも使用することが可能であり、代表的なものとして、(1)アルコール(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、フルフリルアルコール、及びテトラヒドロフルフリルアルコール)、(2)ケトンまたはケトアルコール(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びジアセトンアルコール)、(3)エーテル(例えば、テトラヒドロフラン及びジオキサン)、(4)エステル(例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、炭酸エチレン、及び炭酸プロピレン)、(5)多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、及びチオグリコール)、(6)アルキレングリコールから誘導される低級アルキルモノエーテル及び低級アルキルジエーテル(例えば、エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノブチル(またはエチル)エーテル、プロピレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ポリエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、及びジエチレングリコールジメチル(またはエチル)エーテル)、(7)窒素含有環式化合物(例えば、ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)、(8)硫黄含有化合物(例えば、ジメチルスルホキシド、2,2'-チオジエタノール、及びテトラメチレンスルホン)、並びに(9)水が挙げられる。
【0041】
本発明で使用する着色塗料には、必要に応じて体質顔料を配合することが可能である。これら体質顔料としては、例えば、タルク、カオリン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、マイカ、珪石粉、珪藻土、非晶質シリカ、アロフェン、イモゴライト、ベントナイト、モンモリロナイト、セピオライト等が代表的なものとして挙げられる。
【0042】
また、本発明で使用する着色塗料には、必要に応じて各種添加剤を配合することが可能である。これら添加剤としては、分散剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、防腐剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0043】
〔クリアー塗料〕
本発明で使用するクリアー塗料は、基材に対して一般的に使用される何れのクリアー塗料も使用することが可能である。例えば、樹脂、溶媒からなり、その他必要に応じて着色顔料、体質顔料、その他添加剤等を配合することが可能である。
【0044】
前記樹脂は、塗料一般で使用されている何れの樹脂も使用することが可能である。例えば、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、アクリルシリコン樹脂或いはこれらの変成樹脂等の内の1種、または2種以上、或いはこれらと硬化剤や硬化触媒等を組み合わせて使用することが可能である。
【0045】
前記溶媒としては、塗料にて一般的に使用される溶媒の何れも使用することが可能であり、代表的なものとして(1)アルコール(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、フルフリルアルコール、及びテトラヒドロフルフリルアルコール)、(2)ケトンまたはケトアルコール(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びジアセトンアルコール)、(3)エーテル(例えば、テトラヒドロフラン及びジオキサン)、(4)エステル(例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、炭酸エチレン、及び炭酸プロピレン)、(5)多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、及びチオグリコール)、(6)アルキレングリコールから誘導される低級アルキルモノエーテル及び低級アルキルジエーテル(例えば、エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノブチル(またはエチル)エーテル、プロピレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ポリエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、及びジエチレングリコールジメチル(またはエチル)エーテル)、(7)窒素含有環式化合物(例えば、ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)、(8)硫黄含有化合物(例えば、ジメチルスルホキシド、2,2'-チオジエタノール、及びテトラメチレンスルホン)、並びに(9)水が挙げられる。
【0046】
本発明においては、クリアー塗料の透明性を損なわない範囲で、着色顔料や体質顔料を、必要に応じて添加することが可能である。これら着色顔料や体質顔料の具体例としては、前述の着色塗料で使用できる着色顔料・体質顔料がこれに当たる。
【0047】
また、本発明で使用するクリアー塗料には、必要に応じて各種添加剤を配合することが可能である。これら添加剤としては、分散剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、防腐剤等の各種添加剤が挙げられる。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。実施例中、「部」は質量部を示す。
【0049】
〔実施例1〜12、比較例1〜4〕
(有機系粒子−1)
撹拌装置、温度計、冷却管及び、滴下装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコにイオン交換水750部、ポリビニルアルコール10部、メチルメタクリレート90部、ジビニルベンゼン2部、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ABN−V)0.5部を加え、液温を80度で7時間維持し有機系粒子を得た。また目的とする粒径の有機系粒子は篩によって選別を行った。(ポリマーTg=100℃、真比重:1.20)
【0050】
(有機系粒子−2)
撹拌装置、温度計、冷却管及び、滴下装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコにイオン交換水750部、ポリビニルアルコール10部、メチルメタクリレート63部、ブチルメタクリレート27部、ジビニルベンゼン1部、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ABN−V)0.5部を加え、液温を80度で7時間維持し有機系粒子を得た。また目的とする粒径の有機系粒子は篩によって選別を行った。(ポリマーTg=75℃、真比重:1.17)
【0051】
(有機系粒子−3)
撹拌装置、温度計、冷却管及び、滴下装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコにイオン交換水750部、ポリビニルアルコール10部、ブチルメタクリレート90部、ジビニルベンゼン1部、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ABN−V)0.5部を加え、液温を80度で7時間維持し有機系粒子を得た。また目的とする粒径の有機系粒子は篩によって選別を行った。(ポリマーTg=20℃、真比重:1.10)
【0052】
(エマルション樹脂合成)
撹拌装置、温度計、冷却管及び、滴下装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコにイオン交換水50部及び、炭酸水素ナトリウム(pH調整剤)0.1部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸ナトリウム(界面活性剤)3部を仕込み、フラスコ内部を窒素で置換しながら70℃まで昇温した後、過硫酸カリウム(重合開始剤)0.5部を加え、メチルメタクリレート25部、エチルアクリレート15部、メタクリル酸メチル0.9部の混合液を4時間かけて連続滴下し、引き続き過硫酸アンモニウム(重合開始剤)0.5部をイオン交換水5部で溶かした溶液を添加した。その後、70℃で2時間撹拌を続けながら熟成し、25℃まで冷却した後、アンモニア水でpH9.0に調整することによって、エマルション樹脂粒子が分散した水性エマルション樹脂液を得た。(樹脂固形分=44%、ポリマーTg=45℃)
【0053】
(着色塗料)
水9部に酸化チタン20部、顔料分散剤(BYK−190)1部を加え練合を行ったミルベースに上記エマルションを70部加え着色塗料を得た。さらに成膜助剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテルを添加し最低造膜温度を約25℃に調節した。
【0054】
(クリアー塗料)
上記エマルションに成膜助剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテルを添加し最低造膜温度を約25℃に調節した。
【0055】
(乾燥方法)
着色塗料を塗布し80℃で15分間乾燥し、その上にクリアー塗料を塗布し80℃で30分間乾燥を行った。
【0056】
(評価方法)
塗膜温度を35℃に維持し、接触面積が1cmの表面が鏡面加工されている正方形の鉄板を塗膜上に置き、その上から49N(5kg)の加重を加え、その跡の残り方でブロッキング性の評価を行った。また、室温にて塗膜より20cm高い位置から50gの鉄球を落とし衝撃試験を行った。
【0057】
結果を表1、表2に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
実施例1、2、5、6、8、9、10、11は有機系粒子−1の粒子を使用し、実施例3、4、7は有機系粒子−2の粒子を使用し、実施例12はガラスビーズ(株式会社ユニオン社製UB−1618S)を使用した。
【0061】
比較例1、2は有機系粒子−1の粒子を使用し、比較例3は有機系粒子−3の粒子を使用し、比較例4は石英ビーズ(株式会社藤原製作所製)を使用した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に、粒子を含有する着色塗膜を施し、次いで
該着色塗膜上にクリアー塗膜を施す、塗装基材の製造方法において、
前記着色塗膜及びクリアー塗膜の膜厚と、前記粒子の数平均粒子径が、以下の〔式1〕の関係にあることを特徴とする、塗装基材の製造方法。
(1/2)X≦粒子の数平均粒子径(μm)≦(3/2)(X+Y) 〔式1〕
(但し、X:着色塗膜の膜厚(μm)、Y:クリアー塗膜の膜厚(μm))
【請求項2】
前記粒子が、980dyn(1gf)の荷重をかけた際の粒子径維持率が99.5〜30%の範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の塗装基材の製造方法。
【請求項3】
前記粒子が、有機系粒子及び無機系粒子の少なくとも1種、または2種以上からなることを特徴とする、請求項1に記載の塗装基材の製造方法。
【請求項4】
前記着色塗膜の単位面積あたりに、前記粒子が以下の〔式2〕の範囲で含有されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の塗装基材の製造方法。
[20000/(3×(X+Y))]≦粒子数(個/cm)≦1.2×(20000/X) 〔式2〕
(但し、X:着色塗膜の膜厚(μm)、Y:クリアー塗膜の膜厚(μm))

【公開番号】特開2007−307519(P2007−307519A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141465(P2006−141465)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】