説明

塗装材の製造方法、クリア塗料及び塗装材

【目的】 塗装の剥離、特に、着色層における塗装の剥離を効果的に抑制できる塗装材の製造方法、塗装材に利用するクリア塗料、及び、塗装材を提供すること。
【構成】 塗装木質材100の製造方法は、基材表面101Hに予め硬化された着色層103を有する木質基材101の着色層103上に、長波長領域に最大吸収波長を有する第1光重合開始剤を含有する第1光硬化性塗料を塗布する第1塗料塗布工程を備える。また、この第1光硬化性塗料が塗布された木質基材101に光を照射し、第1光硬化性塗料を硬化させて、着色層103上にクリア塗料層(下塗クリア塗料層)105を形成する第1塗料硬化工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質基材などの基材に塗装が施された塗装材の製造方法、塗装材に利用するクリア塗料、及び、塗装材に関し、特に、基材表面に着色層が形成され、更にその上に光硬化性塗料によりクリア塗料層が形成された塗装材の製造方法、塗装材に利用するクリア塗料、及び、塗装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、木材や木質系合板などの木質基材の基材表面に着色層が形成され、更にその上にクリア塗料層が形成された塗装木質材が知られている。このような塗装をするのは、木質基材に地肌とは異なる色を付与して見栄えを良くし、木質材の付加価値を向上させるためである。塗装木質材は、建築物のフロア材、階段材、ドア、家具の天板材などに広く利用されている。
近年、クリア塗料層の形成には、紫外線などの光の活性エネルギーを塗料の硬化手段として利用した方法が多く採用されている。光硬化は通常数秒から数十秒と短時間で完了するため硬化設備の縮小化が可能であること、光硬化性塗料には通常揮発性の有機溶剤が含まれないため塗料組成が変化せず均質な塗装ができること、揮発性有機溶媒を排出するための大がかりな排気装置が必要ないこと、一般にこのようなクリア塗料層は溶剤に溶けないため耐熱、耐ブロッキング、耐摩擦、耐薬品性等の物性に優れていること、などの利点を有するからである。
【0003】
しかしながら、光硬化性塗料を利用して塗装した(クリア塗料層を形成した)塗装木質材は、特にフロア材、階段材等に用いると、塗装のひび割れや剥離などが発生し美観を損ねるなど耐久性に問題があった。このような現象が起こる原因としては、次のような理由が考えられる。即ち、着色層又は未硬化の着色塗料上に光硬化性塗料を塗布すると、光硬化性塗料が着色層内部(着色塗料内)や場合によっては木質基材内(基材表面近傍)までしみ込む。そうすると、塗料硬化のために光を照射したとき、着色層(着色塗料)上の光硬化性塗料は硬化するものの、着色層中(着色塗料中)や基材表面近傍にしみ込んだ光硬化性塗料は十分に硬化しない。着色塗料に含まれる顔料等の着色料が邪魔になって、塗料硬化に必要な波長の光が着色層中(着色塗料中)や基材表面近傍まで十分に透過しないためである。その結果、着色層の木質基材に対する密着性が低下し、木質基材と着色層との層間や着色層の層内から塗装の剥離が起こるものと考えられる。
【0004】
このような問題に対し、特許文献1及び特許文献2にはそれぞれ改善案が提案されている。即ち、特許文献1の開示された木材の着色方法では、木材の表面に、バインダーとしての紫外線硬化型プレポリマーと着色剤と溶剤との混合物からなる着色塗料を塗布する。次いで、この着色塗料の表面に上面塗膜用の紫外線硬化型塗料を塗布し、その後、紫外線を照射して着色塗料及び紫外線硬化型塗料を硬化させる(特許文献1の特許請求の範囲の記載等を参照)。
また、特許文献2で開示された木質基材の塗装方法では、木質基材の表面に着色用ステイン組成物を塗布し、乾燥・硬化させる。次に、アクリレート系紫外線硬化樹脂とポリイソシアネートと吸水剤と紫外線重合開始剤とを含有する紫外線硬化性木質基材用塗料組成物を塗布し、UV硬化させる。その後、エポキシアクリレート系紫外線硬化樹脂と紫外線重合開始剤とを含有する上塗り用塗料組成物を塗布し、UV硬化させる(特許文献1の(0035)等を参照)。
【特許文献1】実開平6−271805号公報
【特許文献2】特開10−168387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の木材の着色方法では、着色塗料に紫外線硬化型プレポリマーを用いているためコストが高くなる。また、乾燥していない着色塗料上に上面塗膜用の紫外線硬化型塗料を塗布しているため、木質材から着色剤がにじみ出したり噴出するなどの問題が発生する。更に、ロールコータや刷毛塗り等の接触塗装機で紫外線硬化型塗料を塗布すると、着色剤が紫外線硬化型塗料に混入してしまうという問題もあった。
一方、特許文献2の木質基材の塗装方法では、ポリイソシアネートを利用しているが、これをアクリレート系紫外線硬化樹脂に加えると塗料の硬化が進行するため、塗料のポットライフ(可使時間)が短くなる(翌日には既に使用できない状態になることがある)。その結果、未使用の廃棄塗料が増加し、コスト高になる。一方、ポリイソシアネートは硬化が遅いため(完全硬化させるのに時間が掛かるため)、紫外線照射直後では塗装の密着性が十分ではない。このため、その後の研磨加工や後加工工程において塗膜の剥離が起きやすいという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、塗装の剥離、特に、着色層における塗装の剥離を効果的に抑制できる塗装材の製造方法、塗装材に利用するクリア塗料、及び、塗装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その解決手段は、基材と、前記基材の基材表面に形成された着色層と、前記着色層上に形成された1又は複数のクリア塗料層と、を備える塗装材の製造方法であって、前記基材表面に予め硬化された前記着色層を有する前記基材の前記着色層上に、350nm以上の最大吸収波長を有する第1光重合開始剤を含有する第1光硬化性塗料を塗布する第1塗料塗布工程と、前記第1光硬化性塗料が塗布された前記基材に光を照射し、前記第1光硬化性塗料を硬化させて、前記着色層上に前記クリア塗料層を形成する第1塗料硬化工程と、を備える塗装材の製造方法である。
【0008】
本発明によれば、第1塗料塗布工程において、硬化された着色層上に、350nm以上の最大吸収波長を有する第1光重合開始剤を含有する第1光硬化性塗料を塗布する。そして、第1塗料硬化工程において、基材に光を照射し、第1光硬化性塗料を硬化させて、着色層上にクリア塗料層を形成する。
一般に、長波長の光ほど着色層内部や基材内部にまで透過しやすい。このため、上記のように350nm以上の長波長領域に最大吸収波長を有する第1光重合開始剤を利用すれば、基材に光を照射したときに、着色層上に存在する第1光重合開始剤だけでなく、着色層中や基材の表面近傍にしみ込んだ第1光重合開始剤も多量の反応開始種(ラジカル)を生成する。その結果、着色層上の第1光硬化性塗料だけでなく、着色層中や基材の表面近傍にしみ込んだ第1光硬化性塗料も十分に硬化する。従って、着色層の基材に対する密着性を向上させることができ、着色層における塗装の剥離を効果的に抑制できる。
【0009】
ここで、基材は特に限定されるものではない。例えば、床、階段、机、椅子、タンス、その他の家具等に利用される木質基材や、布、紙、フィルム等のシートを貼り付けた木質基材などが挙げられる。また、携帯電話、腕時計、コンパクトディスク、オーディオ機器、OA機器等の電気電子機器に利用される基材、電子材料部品に利用される基材、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ等の家電製品に利用される基材、自動車のメーターパネル、ダッシュボード等の内装に利用される基材、プレコートメタル鋼板、自動車のボディ、バンパー、スポイラー、ドアノブ、ハンドル、ヘッドランプ、オートバイのガソリンタンクに利用される基材、メッキ、蒸着、スパッタリングが施されたアルミホイールやドアミラー等の自動車部品に利用される基材、亜鉛、鉄、アルミ等の金属基材、カーポートの屋根、採光屋根に利用される基材、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、
ポリカーボネート、ABS樹脂等からなるプラスチック成型品に利用される樹脂基材、フィルム、シート、布、紙等のシート状基材、厚型スレート、平型スレート、粘土等の瓦、窯業系サイディングボード、コンクリート等の壁に利用される基材、無機質基材などが挙げられる。
【0010】
着色層は、基材の基材表面に着色塗料を塗布し硬化させることにより形成できる。着色塗料は特に限定されるものではないが、例えば、着色塗料には、着色剤の他、増量剤や基材表面の目止め剤としての体質顔料を配合したり、塗布作業性の向上あるいは貯蔵時の安定性、品質維持等のために、消泡剤、分散剤、色分れ防止剤、沈降防止剤等の各種添加剤を配合できる。
このうち、着色剤には、着色顔料や染料を用いることができる。着色顔料としては、例えば、酸化チタン、硫化亜鉛、亜鉛華、鉛白、リトポン、カーボンブラック、油煙、紺青、フタロシアニンブルー、群青、カーミンFB、黄鉛、亜鉛黄、ハンザイエロー、オーカー、ベンガラなどを利用できる。また、染料としては、不溶性含有金属アゾ染料等を利用できる。また、染料には、酸性染料と塩基性染料とがある。酸性染料としては、例えば、均染性染料、耐縮充性染料、酸性媒染染料、金属錯塩酸性染料を利用できる。塩基性染料としては、例えば、m−フェレンジアミン誘導体を利用できる。また、染料として、直接染料、反応染料、ナフトール染料などを利用できる。
【0011】
第1光重合開始剤は、最大吸収波長が350nm以上であり、光照射により多量の反応開始種を生成できるものであれば、いずれのものを利用しても良い。例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。また、第1光重合開始剤として、複数種の第1光重合開始剤を加えたものを利用しても良い。
なお、第1光重合開始剤は、最大吸収波長が450nm以下のものを利用するのが好ましい。最大吸収波長が450nmを超えると、可視光でも容易に多量の反応開始種を生成してしまうため、生産上その取り扱いに注意が必要となるからである。また、場合によっては、可視光を避けるために多大な設備投資が必要となるからである。
【0012】
第1光硬化性塗料は、上記第1光重合開始剤(硬化剤)を含有し、光硬化するものであれば、いずれのものを利用しても良い。光硬化型塗料には、通常、光重合開始剤の他に、光硬化型プレポリマー、補助剤などが配合される。また、色を付けるために、着色顔料や染料などの着色剤を配合しても良い。
光硬化型プレポリマーとしては、例えば、オリゴマー、モノマー及び両者の混合物が挙げられる。
オリゴマーは、通常、分子量が1000〜10000のものを使用する。オリゴマーとしては、例えば、エポキシ・アクリル系、エポキシ化油アクリル系、ウレタン・アクリル系、不飽和ポリエステル系、ポリエステル・アクリル系、ポリエーテル・アクリル系のものなどを利用できる。
【0013】
モノマーは、通常、反応希釈剤として利用される。この反応希釈剤としては、例えば、単官能反応性希釈剤、多官能反応性希釈剤、これらの変性アクリレートなどが挙げられる。単官能反応性希釈剤としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエン、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロ(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、フェノキシEO(エチレンオキサイド)変性アクリレート、フェノキシPO(プロピレンオキサイド)変性アクリレートなどを利用できる。多官能反応性希釈剤としては、例えば、1−6ヘキサン・ジオール・ジアクリレート、トリメチロール・プロパン・トリアクリレート、ペンタエリスリトール・トリアクリレート
、ジペンタエリスリトール・ヘキサアクリレート、トリプロピレン・グリコール・ジアクリレート、テトラエチレン・グリコール・ジアクリレートなどを利用できる。変性アクリレートとしては、例えば、上記化合物をエチレンオキサイド(EO)やプロピレンオキサイド(PO)により変性したものなどを利用できる。
補助剤としては、例えば、消泡剤、ワックス、レベリング剤、滑剤、チキソトロピー化剤、安定剤などを利用できる。
【0014】
第1塗料塗布工程など、塗布工程における塗料の塗布方法としては、例えば、ハケ塗り、ローラ塗り、スプレ塗り、カーテンフローコータ及びフローコータ等の流し塗り、ローラコータ及びローラブッシ等のローラ塗装、減圧塗装法、浸漬塗装法などが挙げられる。また、その塗布量は特に限定されるものでなく、目的に応じて適宜変更できる。
【0015】
第1塗料硬化工程において照射する光は、使用する第1光重合開始剤に反応開始種(ラジカル)を生成させ、第1光硬化性塗料を硬化できるものであればよい。本発明では、通常、紫外線及び可視光線のうち波長の短いものが利用される。光の照射は、例えば、高圧水銀灯や蛍光灯型の紫外線ランプなどを利用して行えばよい。光の照射時間は、第1光硬化性塗料を硬化できる範囲内で適宜変更すればよい。光の照射に際しては、基材を例えばベルトコンベア上に載置し、基材を連続的に移動させながら照射すると、生産性を向上させることができる。
【0016】
更に、上記の塗装材の製造方法であって、前記基材は、少なくとも前記基材表面が多孔質からなる塗装材の製造方法とすると良い。
【0017】
基材表面が多孔質状の基材は、基材中に塗料が吸い込まれやすいため、塗料硬化のために光を照射したときに、基材中にしみ込んだ光硬化性塗料が十分に硬化しにくい。
しかし、このような基材に対しても前述した発明を適用すれば、基材中にしみ込んだ第1光硬化性塗料も十分に硬化する。従って、着色層の基材に対する密着性を向上させることができ、着色層における塗装の剥離を効果的に抑制できる。
【0018】
更に、上記の塗装材の製造方法であって、前記基材は、木質基材である塗装材の製造方法とすると良い。
【0019】
木質基材は、特に、基材中に塗料が吸い込まれやすいため、塗料硬化のために光を照射したときに、基材中にしみ込んだ光硬化性塗料が十分に硬化しにくい。
しかし、このような木質基材に対しても前述した発明を適用すれば、基材中にしみ込んだ第1光硬化性塗料も十分に硬化する。従って、着色層の基材に対する密着性を向上させることができ、着色層における塗装の剥離を効果的に抑制できる。
【0020】
更に、上記のいずれかに記載の塗装材の製造方法であって、前記第1光硬化性塗料は、前記第1光重合開始剤と共に、前記第1光重合開始剤よりも最大吸収波長が短い第2光重合開始剤を含有する塗装材の製造方法とすると良い。
【0021】
光重合開始剤として第1光重合開始剤のみを含む第1光硬化性塗料を用いても、クリア塗料層を形成することは可能である。しかし、場合によっては、クリア塗料層の表面硬度が若干劣ることがある。これに対し、本発明では、第1光重合開始剤の他に、第1光重合開始剤よりも最大吸収波長が短い(350nm以下)第2光重合開始剤を含有する第1光硬化性塗料を用いる。このため、クリア塗料層の表面硬度を向上させることができる。
また、一般に、最大吸収波長が短い第2光重合開始剤に比べ、最大吸収波長が長い第1光重合開始剤の方が高価であるため、光重合開始剤として第1光重合開始剤のみを用いると、コスト高になりやすい。しかし、本発明のように第2光重合開始剤も併用することに
より、低コスト化を図ることができる。
【0022】
更に、上記のいずれかに記載の塗装材の製造方法であって、前記第1光硬化性塗料は、前記第1光重合開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルエトキシホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドの少なくともいずれかを含む塗装材の製造方法とすると良い。
【0023】
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルエトキシホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドは、第1光重合開始剤として特に好適である。即ち、これらを用いれば、着色層の基材に対する密着性をより向上させることができ、着色層における塗装の剥離をより効果的に抑制できる。
【0024】
更に、上記のいずれかに記載の塗装材の製造方法であって、前記塗装材は、前記クリア塗料層を複数層有し、前記クリア塗料層のうち、前記着色層上に直接形成されたクリア塗料層以外のクリア塗料層は、前記第2光重合開始剤を含有し、かつ、前記第1光重合開始剤を含有しない第2光硬化性塗料を用いて形成する塗装材の製造方法とすると良い。
【0025】
本発明によれば、着色層上に複数層のクリア塗料層を形成する場合には、着色層上に直接形成する一層目のクリア塗料層のみ、第1光重合開始剤を含有する第1光硬化性塗料を用いて形成する。一方、二層目以降のクリア塗料層は、第2光重合開始剤を含有し、かつ、第1光重合開始剤を含有しない第2光硬化性塗料を用いて形成する。このように一層目のクリア塗料層の形成にのみ第1光硬化性塗料を用いれば、着色層の基材に対する密着性を向上させることができ、着色層における塗装の剥離を効果的に抑制できる。一方、二層目以降のクリア塗料層の形成に第2光硬化性塗料を用いることにより、クリア塗料層の表面硬度を向上させると共に、クリア塗料層を安価に形成できる。
【0026】
更に、上記のいずれかに記載の塗装材の製造方法であって、前記基材の前記基材表面に、着色塗料を2.5g/(30cm)2 以上の割合で塗布する着色塗料塗布工程と、前記基材に塗布された前記着色塗料を硬化させて、前記基材表面に前記着色層を形成する着色塗料硬化工程と、を備える塗装材の製造方法とすると良い。
【0027】
着色塗料の塗布量は、基材の材質や塗装材の美観などを考慮して決められる。一般的には、着色塗料の塗布量を1g/(30cm)2 〜2g/(30cm)2 とすることが多い。しかし、基材に通常よりも色を濃く付けたい場合や、基材の材質が悪く(例えば、基材の密度が低い、突き板のワレがある、毛羽立ちやすいなど)、着色ムラが出来やすい場合、使用する塗装機などの問題から塗布量を少なく制限しにくい場合などには、着色塗料が多く用いられる。このように着色塗料の塗布量を多くすると、その後にクリア塗料層を形成する際、着色層中や基材の表面近傍にしみ込んだ第1光硬化性塗料が硬化しにくくなる場合がある。具体的には、着色塗料の塗布量が2.5g/(30cm)2 以上になると、着色層中や基材の表面近傍にしみ込んだ第1光硬化性塗料が硬化しにくくなることがある。
【0028】
これに対し、本発明では、着色塗料の塗布量を2.5g/(30cm)2 以上としているにも拘わらず、クリア塗料層の形成において、長波長領域(350nm以上)に最大吸収波長を有する第1光重合開始剤を含有する第1光硬化性塗料を利用する。このため、着色層中や基材の表面近傍ににしみ込んだ第1光硬化性塗料も十分に硬化できる。従って、使用する着色塗料が多いにも拘わらず、着色層の基材に対する密着性を向上させることができ、着色層における塗装の剥離を効果的に抑制できる。
【0029】
また、他の解決手段は、基材を塗装するためのクリア塗料であって、350nm以上の最大吸収波長を有する第1光重合開始剤を含有するクリア塗料である。
【0030】
このようなクリア塗料を利用して、前述したように塗装材を製造すれば、基材に光を照射したときに、着色層上に存在する第1光重合開始剤だけでなく、着色層中や基材の表面近傍にしみ込んだ第1光重合開始剤も多量の反応開始種(ラジカル)を生成する。その結果、着色層上の第1光硬化性塗料だけでなく、着色層中や基材の表面近傍にしみ込んだ第1光硬化性塗料も十分に硬化する。従って、着色層の基材に対する密着性を向上させることができ、着色層における塗装の剥離を効果的に抑制できる。
【0031】
更に、上記のクリア塗料であって、前記第1光重合開始剤と共に、前記第1光重合開始剤よりも最大吸収波長が短い第2光重合開始剤を含有するクリア塗料とすると良い。
【0032】
光重合開始剤として第1光重合開始剤のみを含むクリア塗料を用いて塗装材を製造しても、クリア塗料層を形成することは可能である。しかし、場合によっては、クリア塗料層の表面硬度が若干劣ることがある。これに対し、本発明のクリア塗料は、第1光重合開始剤の他に、第1光重合開始剤よりも最大吸収波長が短い(350nm以下)第2光重合開始剤を含有する。このため、これを利用して塗装材を製造すれば、クリア塗料層の表面硬度を向上させることができる。
また、一般に、最大吸収波長が短い第2光重合開始剤に比べ、最大吸収波長が長い第1光重合開始剤の方が高価であるため、光重合開始剤として第1光重合開始剤のみを用いると、コスト高になりやすい。しかし、本発明のように第2光重合開始剤も併用することにより、クリア塗料の低コスト化を図ることができる。
【0033】
更に、上記のいずれかに記載のクリア塗料であって、前記第1光重合開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルエトキシホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドの少なくともいずれかを含むクリア塗料とすると良い。
【0034】
このような第1光重合開始剤を含むクリア塗料を用いれば、塗装材を製造したときに、着色層の基材に対する密着性をより向上させることができ、着色層における塗装の剥離をより効果的に抑制できる。
【0035】
また、他の解決手段は、基材と、前記基材の基材表面に形成された着色層と、前記着色層上に形成された1又は複数のクリア塗料層と、を備える塗装材であって、前記クリア塗料層のうち、少なくとも前記着色層上に直接形成されたクリア塗料層は、光硬化性塗料から形成されてなり、前記着色層の一部にも、硬化した前記光硬化性塗料が含まれている塗装材である。
【0036】
本発明によれば、クリア塗料層のうち、少なくとも着色層上に直接形成されたクリア塗料層は、光硬化性塗料から形成されている。そして、着色層の一部にも、硬化したこの光硬化性塗料が含まれている。このような塗装材は、着色層中にしみ込んだ光硬化性塗料も硬化されているため、着色層の基材に対する密着性が高い。従って、着色層における塗装の剥離が生じにくい。
【0037】
また、他の解決手段は、基材と、前記基材の基材表面に形成された着色層と、前記着色層上に形成された1又は複数のクリア塗料層と、を備える塗装材であって、前記クリア塗料層のうち、少なくとも前記着色層上に直接形成されたクリア塗料層は、350nm以上
の最大吸収波長を有する第1光重合開始剤を含有する第1光硬化性塗料から形成されてなり、前記着色層の一部にも、硬化した前記第1光硬化性塗料が含まれている塗装材である。
【0038】
本発明によれば、クリア塗料層のうち、少なくとも着色層上に直接形成されたクリア塗料層は、長波長領域(350nm以上)に最大吸収波長を有する第1光重合開始剤を含有する第1光硬化性塗料から形成されている。そして、着色層の一部にも、硬化したこの第1光硬化性塗料が含まれている。このような塗装材は、着色層中にしみ込んだ第1光硬化性塗料も硬化されているため、着色層の基材に対する密着性が高い。従って、着色層における塗装の剥離が生じにくい。また、前述したように、第1光硬化性塗料を用いてクリア塗料層を形成すれば、光照射の際、着色層中にしみ込んだ第1光硬化性塗料も容易に硬化させることができるので、塗装材の製造を容易かつ確実に行うことができる。
【0039】
更に、上記のいずれかに記載の塗装材であって、前記基材は、少なくとも前記基材表面が多孔質からなる塗装材とすると良い。
【0040】
基材表面が多孔質状の基材は、基材中に着色層(着色塗料)が吸い込まれやすいため、塗料硬化のために光を照射したときに、基材中にしみ込んだ光硬化性塗料が十分に硬化しにくい。
しかし、このような基材に対しても前述した発明を適用すれば、基材中にしみ込んだ第1光硬化性塗料も十分に硬化する。従って、着色層の基材に対する密着性を向上させることができ、着色層における塗装の剥離を効果的に抑制できる。
【0041】
更に、上記のいずれかに記載の塗装材であって、前記基材は、木質基材である塗装材とすると良い。
【0042】
木質基材は、特に基材中に着色層(着色塗料)が吸い込まれやすいため、塗料硬化のために光を照射したときに、基材中にしみ込んだ光硬化性塗料が十分に硬化しにくい。
しかし、このような木質基材に対しても前述した発明を適用すれば、基材中にしみ込んだ第1光硬化性塗料も十分に硬化する。従って、着色層の基材に対する密着性を向上させることができ、着色層における塗装の剥離を効果的に抑制できる。
【0043】
更に、上記のいずれかに記載の塗装材であって、前記第1光硬化性塗料には、前記第1光重合開始剤と共に、前記第1光重合開始剤よりも最大吸収波長が短い第2光重合開始剤が含まれている塗装材とすると良い。
【0044】
本発明によれば、クリア塗料層を形成するための第1光硬化性塗料には、第1光重合開始剤と共に、第1光重合開始剤よりも最大吸収波長が短い(350nm以下)第2光重合開始剤が含まれている。このため、クリア塗料層の表面硬度が高い。また、一般に、第2光重合開始剤を併用することにより第1光硬化性塗料を安価にできるため、塗装材を安価に提供できる。
【0045】
更に、上記のいずれかに記載の塗装材であって、前記第1光重合開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルエトキシホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドの少なくともいずれかが含まれている塗装材とすると良い。
【0046】
本発明によれば、クリア塗料層を形成するための第1光硬化性塗料に含まれる第1光重合開始剤には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2
,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルエトキシホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドの少なくともいずれかが含まれている。このため、着色層の基材に対する密着性がより高く、着色層における塗装の剥離がより生じにくい。
【0047】
更に、上記のいずれかに記載の塗装材であって、前記クリア塗料層を複数層有し、前記クリア塗料層のうち、前記着色層上に直接形成されたクリア塗料層以外のクリア塗料層は、前記第2光重合開始剤を含有し、かつ、前記第1光重合開始剤を含有しない第2光硬化性塗料から形成されてなる塗装材とすると良い。
【0048】
本発明によれば、着色層上に直接形成された一層目のクリア塗料層は、第1光重合開始剤を含有する第1光硬化性塗料を用いて形成されている。一方、二層目以降のクリア塗料層は、第2光重合開始剤を含有し、かつ、第1光重合開始剤を含有しない第2光硬化性塗料を用いて形成されている。一層目のクリア塗料層は第1光硬化性塗料から形成されているため、前述したように、着色層の基材に対する密着性が高く、着色層における塗装の剥離が生じにくい。一方、二層目以降のクリア塗料層は第2光硬化性塗料から形成されているため、クリア塗料層の表面硬度が高い。また、塗装材を安価に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
まず、本実施形態の塗装木質材(塗装材)100について説明する。図1に塗装木質材100の概略を表す断面図を示す。この塗装木質材100は、木質基材(基材)101の基材表面101Hに着色層103が形成され、更にその着色層103上に3層のクリア塗料層105,107,109、即ち、着色層103側から下塗クリア塗料層105、中塗クリア塗料層107及び上塗クリア塗料層109が形成されている。
【0050】
木質基材101は、ナラ突き板合板からなり、長さ約606mm、幅約303mm、厚さ約12mmの板形状をなす。
着色層103は、木質基材101の木目等をより美しく見せるなどの目的で形成されている。着色層103は、水性ステイン(着色塗料)を用いて形成されている。また、着色層103には、下塗クリア塗料層105の形成に用いた下塗り用の光硬化性塗料(第1光硬化性塗料)がしみ込み、十分に硬化している。着色層103は基材表面101Hの導管内にも形成され、基材表面101Hからの厚さは約10μmである。
【0051】
下塗クリア塗料層105は、下塗り用の光硬化性塗料(第1光硬化性塗料)から形成されている。具体的には、この光硬化性塗料は、オリゴマーとしてのKRM7756(ダイセルUCB社製)が約45wt%、モノマーとしてのACMO(興人社製)が約37wt%、体質顔料としてタルクが約10wt%、助剤としてのBYK077(BYKジャパン社製)が約5wt%、実施例1〜16において後述する光重合開始剤が3wt%混合されたものである。この光重合開始剤には、実施例1〜16において後述するように、長波長領域(350nm以上)に最大吸収波長を有する光重合開始剤(第1光重合開始剤)が含まれている。下塗クリア塗料層105の厚みは約30μmである。
【0052】
中塗クリア塗料層107は、中塗り用の光硬化性塗料(第2光硬化性塗料)から形成されている。具体的には、この光硬化性塗料は、無溶剤紫外線硬化性塗料であるIST400(ナトコ社製)である。この光硬化性塗料は、350nmよりも小さい最大吸収波長を有する光重合開始剤(第2光重合開始剤)が配合されているが、350nm以上の最大吸収波長を有する光重合開始剤(第1光重合開始剤)は配合されていない。中塗クリア塗料層107の厚みは約20μmである。
【0053】
上塗クリア塗料層109は、上塗り用の光硬化性塗料(第2光硬化性塗料)から形成されている。具体的には、この光硬化性塗料は、無溶剤紫外線硬化性塗料であるIST500(ナトコ社製)である。この光硬化性塗料も、350nm以下の最大吸収波長を有する光重合開始剤(第2光重合開始剤)が配合されているが、350nm以上の最大吸収波長を有する光重合開始剤(第1光重合開始剤)は配合されていない。上塗クリア塗料層109の厚みは約10μmである。
【0054】
次いで、この塗装木質材(塗装材)100の製造方法について説明する。
まず、公知の手法により所定形状に加工されたナラ突き板合板からなる木質基材101を用意する。
次に、着色塗料塗布工程において、木質基材101の基材表面101Hに着色塗料を塗布する。具体的には、水性ステイン100に対し水50を加えた着色塗料を用意し、スポンジロールコータ、リバースカキトリ、ナチュラルロールコータをこの順序で用いて、この着色塗料を、実施例1〜16において後述するように1.5g/(30cm)2 〜4.5g/(30cm)2 の割合で基材表面101Hに塗布する。
その後、着色塗料硬化工程において、着色塗料が塗布された木質基材101を100℃で1分間加熱し、着色塗料を乾燥、硬化させ、基材表面101Hに着色層103を形成する。
【0055】
次に、下塗塗料塗布工程(第1塗料塗布工程)において、木質基材101に形成された着色層103上に下塗り用の光硬化性塗料を塗布する。具体的には、オリゴマーとしてのKRM7756(ダイセルUCB社製)を約45wt%、モノマーとしてのACMO(興人社製)を約37wt%、体質顔料としてタルクを約10wt%、助剤としてのBYK077(BYKジャパン社製)を約5wt%、実施例1〜16において後述する光重合開始剤を3wt%混合し、下塗り用の光硬化性塗料(第1光硬化性塗料)を作成する。この光重合開始剤には、実施例1〜16において後述するように、長波長領域に最大吸収波長を有する光重合開始剤(第1光重合開始剤)が含まれている。そして、スポンジロールコータ、リバースカキトリ、ナチュラルロールコータをこの順序で用いて、この下塗り用の光硬化性塗料を3.0g/(30cm)2 の割合で着色層103上に塗布する。このとき、下塗り用の光硬化性塗料の一部は、着色層103中や場合によっては木質基材101の表面近傍にまでしみ込む。
【0056】
その後、下塗塗料硬化工程(第1塗料硬化工程)において、下塗り用の光硬化性塗料が塗布された木質基材101に光を照射し、下塗り用の光硬化性塗料を硬化させて、着色層103上に下塗クリア塗料層105を形成する。具体的には、UVランプ(アイグラフィック社製)を用いて、木質基材101に200mjの紫外線を照射し、下塗り用の光硬化性塗料を硬化させて、着色層103上に下塗クリア塗料層105を形成する。その際、着色層103中や木質基材101の表面近傍にしみ込んだ下塗り用の光硬化性塗料も十分に硬化する。
【0057】
次に、中塗塗料塗布工程において、下塗クリア塗料層105上に中塗り用の光硬化性塗料(第2光硬化性塗料)を塗布する。具体的には、中塗り用の光硬化性塗料としてIST400(ナトコ社製)を用意する。この塗料には、最大吸収波長が350nmよりも小さい光重合開始剤(第2光重合開始剤)が配合されているが、最大吸収波長が350μm以上の光重合開始剤(第1光重合開始剤)は配合されていない。そして、この中塗り用の光硬化性塗料を2つのナチュラルロールコータを用いて2.0g/(30cm)2 の割合で下塗クリア塗料層105上に塗布する。
【0058】
その後、中塗塗料硬化工程において、中塗り用の光硬化性塗料が塗布された木質基材101に光を照射し、中塗り用の光硬化性塗料を硬化させて、下塗クリア塗料層105上に中塗クリア塗料層107を形成する。具体的には、上記のUVランプを用いて、木質基材101に200mjの紫外線を照射し、中塗り用の光硬化性塗料を硬化させて、下塗クリア塗料層105上に中塗クリア塗料層107を形成する。
そしてその後、研磨工程において、#320のサンドペーパにより、中塗クリア塗料層107の表面を研磨する。
【0059】
次に、上塗塗料塗布工程において、中塗クリア塗料層107上に上塗り用の光硬化性塗料(第2光硬化性塗料)を塗布する。具体的には、上塗り用の光硬化性塗料としてIST500(ナトコ社製)を用意する。この塗料には、最大吸収波長が350nmよりも小さい光重合開始剤(第2光重合開始剤)が配合されているが、最大吸収波長が350μm以上の光重合開始剤(第1光重合開始剤)は配合されていない。そして、この上塗り用の光硬化性塗料を2つのナチュラルロールコータを用いて1.0g/(30cm)2 の割合で中塗クリア塗料層107上に塗布する。
【0060】
その後、上塗塗料硬化工程において、上塗り用の光硬化性塗料が塗布された木質基材101に光を照射し、上塗り用の光硬化性塗料を硬化させて、中塗クリア塗料層107上に上塗クリア塗料層109を形成する。具体的には、上記のUVランプを用いて、木質基材101に300mjの紫外線を照射し、上塗り用の光硬化性塗料を硬化させて、中塗クリア塗料層107上に上塗クリア塗料層109を形成する。
このようにして、上記塗装木質材100が完成する。
【0061】
(実施例1〜16)
本発明を適用した実施例として、下塗り用の光硬化性塗料に含まれる光重合開始剤の種類や着色塗料の塗布量を変更し、16種類の様々な塗装木質材100を製造した。
表1に示すように、実施例1〜実施例4の塗装木質材100では、下塗り用光硬化性塗料の光重合開始剤として、長波長領域に最大吸収波長を有する光重合開始剤A(第1光重合開始剤)を用い、これを下塗り用光硬化性塗料中に3wt%配合した。この光重合開始剤Aは、最大吸収波長が380nmの2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(ルシリンTPO(BASFジャパン社製))である。そして、実施例1では着色塗料の塗布量を1.5g/(30cm)2 とし、実施例2では着色塗料の塗布量を2.5g/(30cm)2 とし、実施例3では着色塗料の塗布量を3.5g/(30cm)2 とし、実施例4では着色塗料の塗布量を4.5g/(30cm)2 とした。
【0062】
また、実施例5〜実施例8の塗装木質材100では、下塗り用光硬化性塗料の光重合開始剤として、長波長領域に最大吸収波長を有する光重合開始剤B(第1光重合開始剤)を用い、これを下塗り用光硬化性塗料中に3wt%配合した。この光重合開始剤Bは、最大吸収波長が370nmの2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルエトキシホスフィンオキサイド(ルシリンTPO−L(BASFジャパン社製))である。そして、実施例5では着色塗料の塗布量を1.5g/(30cm)2 とし、実施例6では着色塗料の塗布量を2.5g/(30cm)2 とし、実施例7では着色塗料の塗布量を3.5g/(30cm)2 とし、実施例8では着色塗料の塗布量を4.5g/(30cm)2 とした。
【0063】
また、実施例9〜実施例12の塗装木質材100では、下塗り用光硬化性塗料の光重合開始剤として、長波長領域に最大吸収波長を有する光重合開始剤C(第1光重合開始剤)を用い、これを下塗り用光硬化性塗料中に3wt%配合した。この光重合開始剤Cは、最大吸収波長が400nmのビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(イルガキュア819(チバガイギ社製))である。そして、実施例9では着色塗料の塗布量を1.5g/(30cm)2 とし、実施例10では着色塗料の塗布量を2.5g/(30cm)2 とし、実施例11では着色塗料の塗布量を3.5g/(30cm)2 とし、実施例12では着色塗料の塗布量を4.5g/(30cm)2 とした。
【0064】
また、実施例13〜実施例16の塗装木質材100では、下塗り用光硬化性塗料の光重合開始剤として、長波長領域に最大吸収波長を有する光重合開始剤A(第1光重合開始剤)と、短波長領域に最大吸収波長を有する光重合開始剤D(第2光重合開始剤)を用いた。下塗り用光硬化性塗料中に光重合開始剤Aを2wt%、光重合開始剤Dを1wt%配合した。この光重合開始剤Aは、上記のように、最大吸収波長が380nmの2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(ルシリンTPO(BASFジャパン社製))である。一方、光重合開始剤Dは、最大吸収波長が322nmの2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュア1173(チバガイギ社製))である。そして、実施例13では着色塗料の塗布量を1.5g/(30cm)2 とし、実施例14では着色塗料の塗布量を2.5g/(30cm)2 とし、実施例15では着色塗料の塗布量を3.5g/(30cm)2 とし、実施例16では着色塗料の塗布量を4.5g/(30cm)2 とした。
【0065】
【表1】

【0066】
(比較例1〜16)
一方、上記実施例と比較するための比較例として、下塗り用の光硬化性塗料に含まれる光重合開始剤の種類や着色塗料の塗布量を変更し、16種類の様々な塗装木質材を製造した。
表2に示すように、比較例1〜比較例4の塗装木質材では、下塗り用光硬化性塗料の光重合開始剤として、短波長領域に最大吸収波長を有する光重合開始剤D(第2光重合開始剤)を用い、これを下塗り用光硬化性塗料中に3wt%配合した。この光重合開始剤Dは、上記のように、最大吸収波長が322nmの2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュア1173(チバガイギ社製))である。そして、比較例1では着色塗料の塗布量を1.5g/(30cm)2 とし、比較例2では着色塗料の塗布量を2.5g/(30cm)2 とし、比較例3では着色塗料の塗布量を3.5g/(3
0cm)2 とし、比較例4では着色塗料の塗布量を4.5g/(30cm)2 とした。
【0067】
また、比較例5〜比較例8の塗装木質材では、下塗り用光硬化性塗料の光重合開始剤として、短波長領域に最大吸収波長を有する光重合開始剤E(第2光重合開始剤)を用い、これを下塗り用光硬化性塗料中に3wt%配合した。この光重合開始剤Eは、最大吸収波長が336nmの2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア651(チバガイギ社製))である。そして、比較例5では着色塗料の塗布量を1.5g/(30cm)2 とし、比較例6では着色塗料の塗布量を2.5g/(30cm)2 とし、比較例7では着色塗料の塗布量を3.5g/(30cm)2 とし、比較例8では着色塗料の塗布量を4.5g/(30cm)2 とした。
【0068】
また、比較例9〜比較例12の塗装木質材は、下塗り用光硬化性塗料の光重合開始剤として、短波長領域に最大吸収波長を有する光重合開始剤F(第2光重合開始剤)を用い、これを下塗り用光硬化性塗料中に3wt%配合した。この光重合開始剤Fは、最大吸収波長が330nmの1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184(チバガイギ社製))である。そして、比較例9では着色塗料の塗布量を1.5g/(30cm)2 とし、比較例10では着色塗料の塗布量を2.5g/(30cm)2 とし、比較例11では着色塗料の塗布量を3.5g/(30cm)2 とし、比較例12では着色塗料の塗布量を4.5g/(30cm)2 とした。
【0069】
また、比較例13〜比較例16の塗装木質材は、下塗り用光硬化性塗料の光重合開始剤として、短波長領域に最大吸収波長を有する光重合開始剤G(第2光重合開始剤)を用い、これを下塗り用光硬化性塗料中に3wt%配合した。この光重合開始剤Gは、最大吸収波長が280nmの1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(イルガキュア2959(チバガイギ社製))である。そして、比較例13では着色塗料の塗布量を1.5g/(30cm)2 とし、比較例14では着色塗料の塗布量を2.5g/(30cm)2 とし、比較例15では着色塗料の塗布量を3.5g/(30cm)2 とし、比較例16では着色塗料の塗布量を4.5g/(30cm)2 とした。
【0070】
【表2】

【0071】
次に、実施例1〜実施例16及び比較例1〜比較例16の塗装木質材100等について、それぞれ塗膜の密着試験を行った。具体的には、JIS K5400に準拠して、試料の塗膜側に2.0mm間隔で碁盤目状のクロスカットを入れ、この上にセロハンテープを密着させた。そして、これを垂直方向に引っ張り、100個の碁盤目の中で塗膜が剥がれなかったものの数をカウントした。その結果を実施例1〜16については表1、比較例1〜16については表2に示す。
【0072】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜実施例16では、いずれの塗装木質材100も上記密着試験において塗膜が全く剥がれなかった。
一方、表2の結果から明らかなように、比較例のうち、比較例1,2,5,9,10,13では、塗膜が全く剥がれなかった。なお、本試験においては対応する実施例と比較し
て差が認められないが、更に過酷な条件で剥離試験を行えば、実施例と比較例との間で有意な差が確認されるものと思われる。
【0073】
これに対し、それ以外の比較例3,4,6〜8,11,12,14〜16では、塗膜の剥離が認められた。着色塗料の塗布量が多くなるほど、塗装の剥離が増加することが判る。特に、着色塗料の塗布量が4.5g/(30cm)2 である比較例4,8,12,16では、全部あるいは大部分の塗膜が剥離している。このような結果から、着色塗料の塗布量が2.5g/(30cm)2 以上、更には3.5g/(30cm)2 以上、特に4.5g/(30cm)2 以上において、本発明の効果が顕著に表れることが判る。
このように、本発明を適用すれば、着色塗料の塗布量が多くなっても、塗膜の密着性を十分に向上させることができる。
【0074】
以上で説明したように、本実施形態では、下塗塗料塗布工程(第1塗料塗布工程)において、硬化された着色層103上に、350nm以上の最大吸収波長を有する第1光重合開始剤を含有する下塗り用の光硬化性塗料を塗布している。そして、下塗塗料硬化工程(第1塗料硬化工程)において、木質基材101に紫外線を照射し、下塗り用の光硬化性塗料を硬化させて、着色層103上に下塗クリア塗料層(クリア塗料層)105を形成している。このようにすることで、着色層103上の下塗り用光硬化性塗料だけでなく、着色層103中や木質基材101の表面近傍にしみ込んだ下塗り用光硬化性塗料も十分に硬化する。従って、着色層103の木質基材101に対する密着性を向上させることができ、着色層103における塗装の剥離を効果的に抑制できる。
【0075】
更に、本実施形態の一部(実施例13〜16)では、最大吸収波長が350nm以上である第1光重合開始剤の他に、これよりも最大吸収波長が短い第2光重合開始剤を含有する下塗り用光硬化性塗料を用いている。このため、下塗クリア塗料層105の表面硬度を向上させることができる。また、塗装木質材100の低コスト化を図ることができる。
また、第1光重合開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルエトキシホスフィンオキサイド、又は、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドを利用している。このため、着色層103の木質基材101に対する密着性をより向上させることができ、着色層103における塗装の剥離をより効果的に抑制できる。
【0076】
また、着色層103上に直接形成する一層目の下塗クリア塗料層105のみ、第1光重合開始剤を含有する光硬化性塗料を用いて形成し、二層目以降の中塗クリア塗料層107及び上塗クリア塗料層109は、第2光重合開始剤を含有し、かつ、第1光重合開始剤を含有しない第2光硬化性塗料を用いて形成している。このため、着色層103の木質基材101に対する密着性を向上させることができ、着色層103における塗装の剥離を効果的に抑制できる。また、中塗クリア塗料層107及び上塗クリア塗料層109の表面硬度を向上させることができ、また、これらを安価に形成できる。
【0077】
また、本実施形態の一部(実施例2〜4,6〜8,10〜13,15〜16)では、着色塗料の塗布量を2.5g/(30cm)2 以上と多くしているにも拘わらず、下塗クリア塗料層105の形成において、最大吸収波長が長い第1光重合開始剤を含有する下塗り用光硬化性塗料を利用している。このため、着色層103中にしみ込んだ下塗り用光硬化性塗料も十分に硬化できる。従って、使用する着色塗料が多いにも拘わらず、着色層103の木質基材101に対する密着性を向上させることができ、着色層103における塗装の剥離を効果的に抑制できる。
【0078】
(実施形態2)
次いで、第2の実施形態について説明する。なお、上記実施形態1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図2に本実施形態2の塗装樹脂材200の概略を表す断面図を示す。この塗装樹脂材200は、基材が木質基材ではなく、樹脂基材201である点が上記実施形態1と大きく異なる。また、クリア塗料層205が、3層ではなく、1層である点も上記実施形態1と異なる。
【0079】
この塗装樹脂材200は、樹脂基材(基材)201の基材表面201Hに着色層203が形成され、更にその着色層203上に1層のクリア塗料層205が形成されている。
樹脂基材201は、ABS(エンジニアリングテストサービス製)からなり、板形状をなす。
着色層203は、アクリルラッカーであるチンチングレット(ナトコ株式会社製Y4−122)を用いて形成されている。また、着色層203には、クリア塗料層205の形成に用いた光硬化性塗料(第1光硬化性塗料)がしみ込み、十分に硬化している。着色層203の基材表面201Hからの厚さは約10μmである。
【0080】
クリア塗料層205は、光硬化性塗料(第1光硬化性塗料)から形成されている。具体的には、この光硬化性塗料は、オリゴマーとしてのKRM7756(ダイセルUCB社製)を80部、アロニックスM−5400(東亜合成株式会社製)を20部に、光重合開始剤を3部、MEKを50部、イソブタノールを50部調合したものである。クリア塗料層205の厚みは約20μmである。なお、光重合開始剤は、前述の光重合開始剤A、即ち、最大吸収波長が380nmの2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(ルシリンTPO(BASFジャパン社製))である。
【0081】
次いで、この塗装樹脂材(塗装材)200の製造方法について説明する。
まず、公知の手法により所定形状に加工された樹脂基材201を用意する。
次に、着色塗料塗布工程において、樹脂基材201の基材表面201Hに着色塗料を塗布する。具体的には、前述のアクリルラッカーをエアスプレーを用いて、塗膜が10μmになるように基材表面201Hに塗装する。
その後、着色塗料硬化工程において、着色塗料が塗布された樹脂基材201を60℃で10分間加熱し、着色塗料を乾燥、硬化させ、基材表面201Hに着色層203を形成する。
【0082】
次に、塗料塗布工程(第1塗料塗布工程)において、樹脂基材201に形成された着色層203上に光硬化性塗料を塗布する。具体的には、前述の光硬化性塗料を調合し、エアスプレーを用いて、塗膜が20μmになるように着色層203上に塗装する。このとき、光硬化性塗料の一部は、着色層203の内部にもしみ込む。
【0083】
その後、塗料硬化工程(第1塗料硬化工程)において、光硬化性塗料が塗布された樹脂基材201に光を照射し、光硬化性塗料を硬化させて、着色層203上にクリア塗料層205を形成する。具体的には、水銀ランプを用いて、樹脂基材201に積算光量300mj/cm2 の紫外線を照射し、光硬化性塗料を硬化させて、着色層203上にクリア塗料層205を形成する。その際、着色層203中にしみ込んだ光硬化性塗料も十分に硬化する。このようにして、上記塗装樹脂材200が完成する。
【0084】
(実施例17)
本発明を適用した実施例17として、上記の塗装樹脂材200を製造した。
一方、この実施例17と比較するための比較例17として、光硬化性塗料に含まれる光重合開始剤を変更した塗装樹脂材を製造した。具体的には、光硬化性塗料の光重合開始剤として、短波長領域に最大吸収波長を有する前述の光重合開始剤F(第2光重合開始剤)を用い、これを光硬化性塗料中に実施例17と同量配合した。この光重合開始剤Fは、前述のように、最大吸収波長が330nmの1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184(チバガイギ社製))である。
【0085】
次に、実施例17及び比較例17の塗装樹脂材200等について、それぞれ塗膜の密着試験を行った。この試験方法は、前述の実施例1〜17及び比較例1〜16で行った方法と同様である。また、実施例17及び比較例17の塗装樹脂材200等について、それぞれ耐温水試験を行った。この試験は、各サンプルを40℃の水道水に240時間浸漬した後に、上記の密着試験を行うものである。これらの結果を表3に示す。
【0086】
【表3】

【0087】
表3の結果から明らかなように、実施例17では、通常の密着試験においても耐温水試験においても塗膜が全く剥がれなかった。これに対し、比較例17では、塗膜の剥離が認められた。特に、耐温水試験では、塗膜の大部分が剥がれてしまった。このような結果から、基材として樹脂基材を用いた場合でも、本発明を適用すれば、塗膜の密着性を向上させることができると言える。その他、上記実施形態1と同様な部分は、同様な作用・効果を奏する。
【0088】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態1,2に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態1では、3層のクリア塗料層105,107,109をその都度硬化させて一層ずつ形成している。しかし、各々の光硬化性塗料を続けて塗布した後、全部まとめて硬化させることにより、3層のクリア塗料層105,107,109を同時に形成しても良い。このようにしてクリア塗料層105,107,109を形成しても、上述した実施形態1と同様な効果を得ることができる。
【0089】
また、上記実施形態1では、クリア塗料層を3層(クリア塗料層105,107,109)形成しているが、クリア塗料層の総数は特に限定されるものではない。例えば、クリア塗料層を1層としても良いし、あるいは2層としても良い。このようにクリア塗料層の総数を変更しても、上述した実施形態1と同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】実施形態1に係る塗装木質材の概略化した断面図を示す。
【図2】実施形態2に係る塗装樹脂材の概略化した断面図を示す。
【符号の説明】
【0091】
100 塗装木質材(塗装材)
101 木質基材(基材)
101H 基材表面
103 着色層
105 下塗クリア塗料層(クリア塗料層)
107 中塗クリア塗料層(クリア塗料層)
109 上塗クリア塗料層(クリア塗料層)
200 塗装樹脂材(塗装材)
201 樹脂基材(基材)
201H 基材表面
203 着色層
205 クリア塗料層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の基材表面に形成された着色層と、
前記着色層上に形成された1又は複数のクリア塗料層と、
を備える塗装材の製造方法であって、
前記基材表面に予め硬化された前記着色層を有する前記基材の前記着色層上に、350nm以上の最大吸収波長を有する第1光重合開始剤を含有する第1光硬化性塗料を塗布する第1塗料塗布工程と、
前記第1光硬化性塗料が塗布された前記基材に光を照射し、前記第1光硬化性塗料を硬化させて、前記着色層上に前記クリア塗料層を形成する第1塗料硬化工程と、
を備える塗装材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の塗装材の製造方法であって、
前記基材は、少なくとも前記基材表面が多孔質からなる
塗装材の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の塗装材の製造方法であって、
前記基材は、木質基材である
塗装材の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の塗装材の製造方法であって、
前記第1光硬化性塗料は、前記第1光重合開始剤と共に、前記第1光重合開始剤よりも最大吸収波長が短い第2光重合開始剤を含有する
塗装材の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の塗装材の製造方法であって、
前記第1光硬化性塗料は、前記第1光重合開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルエトキシホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドの少なくともいずれかを含む
塗装材の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の塗装材の製造方法であって、
前記塗装材は、前記クリア塗料層を複数層有し、
前記クリア塗料層のうち、前記着色層上に直接形成されたクリア塗料層以外のクリア塗料層は、前記第2光重合開始剤を含有し、かつ、前記第1光重合開始剤を含有しない第2光硬化性塗料を用いて形成する
塗装材の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の塗装材の製造方法であって、
前記基材の前記基材表面に、着色塗料を2.5g/(30cm)2 以上の割合で塗布する着色塗料塗布工程と、
前記基材に塗布された前記着色塗料を硬化させて、前記基材表面に前記着色層を形成する着色塗料硬化工程と、
を備える塗装材の製造方法。
【請求項8】
基材を塗装するためのクリア塗料であって、
350nm以上の最大吸収波長を有する第1光重合開始剤を含有する
クリア塗料。
【請求項9】
請求項8に記載のクリア塗料であって、
前記第1光重合開始剤と共に、前記第1光重合開始剤よりも最大吸収波長が短い第2光重合開始剤を含有する
クリア塗料。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載のクリア塗料であって、
前記第1光重合開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルエトキシホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドの少なくともいずれかを含む
クリア塗料。
【請求項11】
基材と、
前記基材の基材表面に形成された着色層と、
前記着色層上に形成された1又は複数のクリア塗料層と、
を備える塗装材であって、
前記クリア塗料層のうち、少なくとも前記着色層上に直接形成されたクリア塗料層は、光硬化性塗料から形成されてなり、
前記着色層の一部にも、硬化した前記光硬化性塗料が含まれている
塗装材。
【請求項12】
基材と、
前記基材の基材表面に形成された着色層と、
前記着色層上に形成された1又は複数のクリア塗料層と、
を備える塗装材であって、
前記クリア塗料層のうち、少なくとも前記着色層上に直接形成されたクリア塗料層は、350nm以上の最大吸収波長を有する第1光重合開始剤を含有する第1光硬化性塗料から形成されてなり、
前記着色層の一部にも、硬化した前記第1光硬化性塗料が含まれている
塗装材。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の塗装材であって、
前記基材は、少なくとも前記基材表面が多孔質からなる
塗装材。
【請求項14】
請求項11〜請求項13のいずれか一項に記載の塗装材であって、
前記基材は、木質基材である
塗装材。
【請求項15】
請求項12〜請求項14のいずれか一項に記載の塗装材であって、
前記第1光硬化性塗料には、前記第1光重合開始剤と共に、前記第1光重合開始剤よりも最大吸収波長が短い第2光重合開始剤が含まれている
塗装材。
【請求項16】
請求項12〜請求項15のいずれか一項に記載の塗装材であって、
前記第1光重合開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルエトキシホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドの少なくともいずれかが含まれている
塗装材。
【請求項17】
請求項12〜請求項16のいずれか一項に記載の塗装材であって、
前記クリア塗料層を複数層有し、
前記クリア塗料層のうち、前記着色層上に直接形成されたクリア塗料層以外のクリア塗料層は、前記第2光重合開始剤を含有し、かつ、前記第1光重合開始剤を含有しない第2光硬化性塗料から形成されてなる
塗装材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−7202(P2006−7202A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136286(P2005−136286)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(392007566)ナトコ株式会社 (42)
【Fターム(参考)】