説明

塗装用水性ジェル組成物

【課題】本発明の課題は、低VOCであり、貯蔵安定性と塗膜物性がともに優れた塗装用組成物を提供することである。
【解決手段】ジェル化された水性媒体(C)中に微粒子(A)を分散してなることを特徴とする塗装用水性ジェル組成物であり、ジェル化された水性媒体(C)のゲル強度は5〜5,000,000mg/cmであることが好ましく、ジェル化された水性媒体(C)は水溶性架橋体化合物(b1)によりジェル化されたものであるか、又は水不溶性化合物(b2)からなり粒子表面に相互作用の可能な官能基を有する樹脂微粒子によりジェル化されたものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗装用水性ジェル組成物、およびそれを塗装し焼き付けることにより得られる塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装用組成物としては、有機溶剤に樹脂を溶解させた溶液組成物(例えば特許文献1)、樹脂固形分を粉砕した粉体組成物(例えば特許文献2)、水に樹脂粉末を分散させた水分散組成物(例えば特許文献3)等が挙げられる。
溶液組成物は貯蔵安定性に優れ塗膜物性も良好であるが、有機溶剤を使用しているため低VOC(揮発性有機化学物質)化が困難である。一方、粉体組成物は、低VOC化は達成できるが、粉体の貯蔵安定性を良くするために溶融温度の高い樹脂を使用すると塗膜形成時の溶融性が悪化する、すなわち貯蔵安定性と塗膜形成時の溶融性の両立が困難であるという問題がある。また、水分散組成物では、樹脂粒子の分散安定性を良くしようとすると平滑性等の塗膜物性が低下する場合がある。
【特許文献1】特開2003−128989号公報
【特許文献2】特開2004−27214号公報
【特許文献3】特開2005−194520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、低VOCであり、貯蔵安定性と塗膜物性がともに優れた塗装用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、ジェル化された水性媒体(C)中に微粒子(A)を分散してなることを特徴とする塗装用水性ジェル組成物ならびに、該水性ジェル組成物から得られる塗膜である。
【0005】
従来の塗装用水性組成物は、貯蔵安定性を良くするために特定の樹脂組成を採用せざるを得なかった。しかし、本発明の塗装用水性ジェル組成物では、用途に応じて塗膜物性を最適にするために樹脂組成を選択しても、貯蔵安定性を良好に保持することができるという特徴を有している。
すなわち、従来の塗装用水性組成物に比べ、本発明の塗装用水性ジェル組成物は、水性媒体をジェル化することにより、水性媒体(C)中に分散してなる微粒子(A)が沈降、凝集、合一することがない。しかも塗膜形成時には、用途に応じた最適な樹脂組成を選択できるため、塗膜の平滑性、光沢等が良好である。
【0006】
本発明において、ジェル化とは水性媒体がゼリー状に固化して流動性がなくなった状態のことを示す。本発明の塗装用水性ジェル組成物は、貯蔵性と塗装性の両立の観点から、そのゲル強度(mg/cm)が5〜5,000,000であるものが好ましい。さらに好ましくは7〜1,000,000、特に好ましくは10〜500,000である。このゲル強度の範囲であれば、容易に塗装することができ、又、塗膜の平滑性を得ることができる。
本発明において、ゲル強度とは、本発明の塗装用水性ジェル組成物の表面に、1平方センチメートル当たり20秒間荷重を保持した際にゲルが破壊されない最大重量(mg)のことである。測定は、公知の測定方法(JIS K 6503「にかわ及びゼラチン」5.4 ゼリー強度)に準拠して、ジェル化された水性媒体を作製後20℃で15時間放置した後、表面積1平方センチメートルの円形試験片(アルミ製)により荷重し、20秒間試験片がゲル中に沈まない最大荷重をゲル強度(mg/cm)とする。なお、試験片の重量はあらかじめ測定しておく。
【0007】
本発明において、ジェル化された水性媒体(C)としては、水性媒体(C0)にジェル化剤(B)又はその前駆体を添加し、必要によりさらに化学反応、物理的操作等により変性させてジェル化させたものが好ましく、下記の形態が挙げられる。
(1)ジェル化剤(B)として水溶性架橋体化合物(b1)を用いてジェル化された水性媒体(C1)
(1−1)水性媒体(C0)中に溶解した化学架橋ゲル化剤(b11)により共有結合でジェル化された水性媒体(C11)
(1−2)水性媒体(C0)中に溶解した物理架橋ゲル化剤(b12)同士の疎水性相互作用によりジェル化された水性媒体(C12)
(2)ジェル化剤(B)として水不溶性化合物(b2)からなる微粒子を用い、水性媒体(C0)中に分散した水不溶性化合物(b2)からなる微粒子同士の相互作用によりジェル化された水性媒体(C2)
【0008】
(C11)の製造方法について説明する。
ジェル化剤の前駆体(b011)を水性媒体(C0)に添加、溶解させ、その後架橋剤(b02)を反応させることにより共有結合を形成させ化学架橋ゲル化剤(b11)を合成することにより、水性媒体をジェル化させることができる。
化学架橋ゲル化剤(b11)としては、架橋ポリアクリル酸ナトリウム、架橋デキストラン、架橋グラフト化デンプン等が挙げられる。
(b11)の前駆体(b011)としては、反応性官能基を有する水溶性化合物であれば特に制限はないが、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
反応性官能基としては、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、アミノ基、リン酸基、チオール基、カルボキシル基、ブロック化されていても良いイソシアネート基、エポキシ基等が挙げられる。これらのうち、反応性の観点から、アルコール性水酸基、カルボキシル基、ブロック化されていてもよいイソシアネート基、エポキシ基が好ましい。
架橋剤(b02)としては、(b011)が有する反応性官能基と反応する官能基を2個以上有していれば特に制限はなく、多価アルコール、多価フェノール類、アミン類、ポリカルボン酸、リン酸類、ポリチオール、ブロック化されていても良いイソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物、シリルエーテル基含有化合物、メラミン樹脂、(ヘミ)アセタール基含有化合物等が挙げられる。
【0009】
(b011)の官能基と(b02)の官能基のモル比〔(b011)/(b02)〕として、1/3以上3/1未満が好ましく、さらに好ましくは1/2以上2/1未満、特に好ましくは1/1.5以上1.5/1未満である。
(C0)と(b11)の重量比率は、(C0)の重量を基にして(b11)の重量%が0.1〜10が好ましく、さらに好ましくは0.3〜7であり、特に好ましくは0.5〜5である。
反応の温度(℃)は特に制限はないが、10〜90が好ましく、さらに好ましくは15〜80、特に好ましくは20〜70である。反応時間(時間)は特に制限はないが、0.01〜20が好ましく、さらに好ましくは0.1〜15、特に好ましくは、0.2〜10である。
【0010】
(C12)の製造方法について説明する。
物理架橋ゲル化剤(b12)を水性媒体(C0)に添加し、加熱により(b12)を溶解させ冷却することにより発現する(b12)同士の疎水性相互作用により、水性媒体をジェル化させることができる。
(b12)としては、ゼラチン、寒天、ポリエチレングリコールウレタン変性体、ドデカノイルアミノフェニル−β−D−グルコピラノシド等が挙げられる。
(C0)と(b12)の重量比率は、(C0)の重量を基にして(b12)の重量%が0.1〜10が好ましく、さらに好ましくは0.3〜7であり、特に好ましくは0.5〜5である。
溶解の温度(℃)は特に制限はないが、20〜90が好ましく、さらに好ましくは25〜80、特に好ましくは30〜70である。加熱時間(時間)は特に制限はないが、0.01〜20が好ましく、さらに好ましくは0.1〜15、特に好ましくは、0.2〜10である。
【0011】
(C2)の製造方法について説明する。
水不溶性化合物(b2)からなり、粒子表面に相互作用の可能な官能基を有する微粒子を水性媒体(C0)に添加、混合することにより水性媒体をジェル化させる。
(b2)としては、水不溶性有機化合物(b21)、水不溶性無機化合物(b22)が挙げられる。
(b21)としては、架橋アクリル樹脂、架橋ウレタン樹脂等が挙げられる。
(b22)としては、有機化ベントナイト[有機物で表面修飾された粘土化合物(酸化ケイ素と酸化アルミの複合化物)、モンモリロナイト、シリカ、酸化マグネシウム等が挙げられる。
粒子表面に相互作用の可能な官能基としては、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、アミノ基、リン酸基、チオール基、カルボキシル基、ブロック化されていても良いイソシアネート基、エポキシ基等が挙げられる。
微粒子の粒径(nm)としては、特に制限はないが、ジェル化の観点から1〜1000が好ましく、さらに好ましくは5〜700、特に好ましくは10〜500である。
(C0)と(b2)の重量比率は(C0)の重量を基にして(b2)の重量%が0.1〜30が好ましく、さらに好ましくは0.5〜20であり、特に好ましくは1.0〜10である。
混合の温度(℃)は特に制限はないが、20〜50が好ましく、さらに好ましくは25〜45、特に好ましくは30〜40である。この範囲であると、樹脂微粒子の凝集がない。
混合時間(時間)は特に制限はないが、0.01〜20が好ましく、さらに好ましくは0.1〜15、特に好ましくは、0.2〜10である。
【0012】
本発明において、ジェル化剤(B)は反応性官能基を有していることが好ましい。反応性官能基としては、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、アミノ基、リン酸基、チオール基、カルボキシル基、ブロック化されていても良いイソシアネート基、エポキシ基等が挙げられる。
これらのうち、反応性の観点から、アルコール性水酸基、カルボキシル基、ブロック化されていてもよいイソシアネート基、エポキシ基が好ましい。
【0013】
本発明において、水性媒体(C0)としては、水を必須構成成分とする液体であれば制限なく使用でき、水、並びに、水溶性有機溶剤(U)を含む水溶液等を用いることができる。
水としては、イオン交換水、精製水、蒸留水、水道水等が挙げられる。(U)を含有する場合、(U)の含有量(重量%)としては、(C0)の重量に対して0.01〜10が好ましく、さらに好ましくは0.05〜5、特に好ましくは0.1〜3である。
水溶性有機溶剤(U)としては、公知の溶剤(例えば、特開2002−284881号公報に記載の溶剤)等を用いることが出来るが、具体的には酢酸エチル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
水性媒体(C0)としては、低VOCの観点から水のみを使用することが好ましい。
本発明の塗装用水性ジェル組成物中のジェル化された水性媒体(C)の配合量は、40〜70重量%が好ましい。
【0014】
本発明において、微粒子(A)とは、樹脂(a)、樹脂(a)の前駆体(a0)、又は樹脂(a)と前駆体(a0)との混合物からなる微粒子を含むものが好ましい。微粒子(A)の形状は、固体であっても、液状であってもよいが、25℃で液状であるものが好ましい。
樹脂(a)としては、特に制限はなく、公知の樹脂(たとえば、特開2002−284881号、特開2003−189848号、特開昭57−195701号各公報)等が使用でき、熱可塑性樹脂、熱架橋性樹脂等が用いられる。
熱可塑性樹脂としては、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、シリコーン樹脂、アイオノマー樹脂、カーボネート樹脂等が含まれる。
熱架橋性樹脂としては、架橋ビニル樹脂、架橋ウレタン樹脂、架橋エポキシ樹脂、架橋エステル樹脂、架橋イミド樹脂、架橋シリコーン樹脂、架橋フェノール樹脂、架橋ユリア樹脂、架橋アイオノマー樹脂、架橋アニリン樹脂、架橋メラミン樹脂等が含まれる。
これらの樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。
塗膜の平滑性の観点から熱可塑性樹脂が好ましく、さらに好ましくはビニル樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂であり、特に好ましくはビニル樹脂である。
塗膜の耐水性の観点から、樹脂(a)は反応性官能基を有していることが好ましい。樹脂(a)が有する反応性官能基としては、上記ジェル化剤(B)が有する反応性官能基と同様のものが挙げられる。
【0015】
前駆体(a0)としては、反応により樹脂(a)となるものであれば特に制限されず、公知の前駆体{特開2002−284881号公報、特開2002−285017号公報、特開平09−031200号公報、高分子合成の化学(大津隆行著、1979年1月10日、化学同人社発行)等に記載}等が使用でき、たとえば、以下の前駆体(モノマー、プレポリマー等)挙げられる。
樹脂(a)がビニル樹脂又は架橋ビニル樹脂の場合、重合によりビニル樹脂又は架橋ビニル樹脂となるビニルモノマー(スチレン、ジビニルベンゼン、メタクリル酸、ジメチルアクリルアミド等)、
樹脂(a)がウレタン樹脂又は架橋ウレタン樹脂の場合、反応によりウレタン樹脂又は架橋ウレタン樹脂となる反応性プレポリマー{ポリオール(ポリエチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸等)及び/又はポリアミン(イソホロンジアミン、エチレンジアミン等)と、ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアヌレート等)との組み合わせからなるプレポリマー等}、
樹脂(a)がエステル樹脂又は架橋エステル樹脂の場合、反応によりエステル樹脂又は架橋エステル樹脂となる反応性プレポリマー{ポリオール(ポリエチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸等)とポリカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸等)との組合せからなるプレポリマー等}、
樹脂(a)がアミド樹脂の場合、反応によりアミド樹脂となるモノマー(ラクタム(ε−カプロラクタム、アゼチジノン、ピロリドン等)等);反応性プレポリマー{ポリカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸等)とポリアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン等)との組み合わせからなるプレポリマー等}、
樹脂(a)がイミド樹脂又は架橋イミド樹脂の場合、反応によりイミド樹脂又は架橋イミド樹脂となる反応性プレポリマー(ピロメリット酸無水物とポリアミン(イソホロンジアミン、エチレンジアミン等)との組み合わせからなるプレポリマー等)、
樹脂(a)がシリコーン樹脂又は架橋シリコーン樹脂の場合、反応によりシリコーン樹脂又は架橋シリコーン樹脂となるモノマー(クロロアルキルシラン(トリクロロメチルシラン、ジクロロメチルシラン等)等)、
樹脂(a)がカーボネート樹脂の場合、反応によりカーボネート樹脂となるモノマー(ジカルボン酸(ビスフェノールA等)等)、
樹脂(a)が架橋エポキシ樹脂の場合、反応により架橋エポキシ樹脂となる反応性プレポリマー(芳香族ポリカルボン酸のグリシジルエステル(フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル等)等)、
樹脂(a)が架橋フェノール樹脂の場合、反応により架橋フェノール樹脂となる反応性プレポリマー(フェノールとホルムアルデヒドの組み合わせからなるプレポリマー)等、
樹脂(a)が架橋ユリア樹脂の場合、反応により架橋ユリア樹脂となる反応性プレポリマー(尿素とホルムアルデヒドの組み合わせからなるプレポリマー)等、
樹脂(a)が架橋メラミン樹脂の場合、反応により架橋メラミン樹脂となる反応性プレポリマー(メラミンとホルムアルデヒドの組み合わせからなるプレポリマー)等)。
樹脂(a)は公知の方法(たとえば、特開2002−284881号、特開2003−189848号、特開昭57−195701号各公報)等により製造することができる。
【0016】
微粒子(A)のガラス転移温度(℃)は特に制限は無いが、塗膜の平滑性の観点から60以下が好ましく、−50〜60がより好ましく、さらに好ましくは−45〜40、特に好ましくは−40〜25である。この範囲であると、塗膜の平滑性が良好となる。本発明において、微粒子(A)のガラス転移温度は、JIS K 7121−1987の方法に基づき、DSCを使用し、昇温速度10℃/minで測定した値である。
微粒子(A)は有機溶剤(E)を含有していてもよく、(E)の含有量(重量%)としては(A)の重量に対して好ましくは0〜5であり、さらに好ましくは0.1〜3である。
有機溶剤(E)としては、公知の溶剤(例えば、特開2002−284881号公報に記載の芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族又は脂環式の炭化水素系溶剤、ハロゲン系溶剤、エステル系又はエステルエーテル系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、スルホキシド系溶剤及び複素環式化合物系溶剤)等を用いることが出来る。具体的には、酢酸エチル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等が好ましい。
【0017】
また、水性ジェル組成物中の微粒子(A)の平均粒径は、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは0.5〜20μm、さらに好ましくは1.0〜10μmである。微粒子(A)の粒子径が0.1〜50μmであるとき、塗膜の平滑性が良好となる。平均粒径の測定法は電子顕微鏡測定、沈降法、エレクトロゾーン法、動的光散乱法等があるが、測定粒度範囲の適合性より、動的光散乱法での測定が好ましい。
本発明の水性ジェル組成物において、微粒子(A)の粒子形状は不定形であっても球状であっても良いが、塗膜の平滑性、均一性の点で球状の方が好ましい。ここで球状というのは粒子の長径/短径の比率が1.0〜1.5の範囲にあるものを指す。(A)の長径/短径比率は、好ましくは1.0〜1.1である。長径/短径比率が1.0〜1.5の範囲にある時、平滑性、均一性に優れた塗膜を得ることができる。
長径/短径比率は光学顕微鏡を用いて粒子を観察し、Heywoodの定義により、粒子の平面図について輪郭に接する二つの平行線の最短距離を短径、それに直角方向の平行線の最大距離を長径とし、測定される値の長径と短径の比率を計算して求める。
本発明の塗装用水性ジェル組成物中の微粒子(A)の配合量は、30〜60重量%が好ましく、40〜55重量%がより好ましい。
【0018】
ジェル化された水性媒体(C)中に微粒子(A)を分散してなる本発明の塗装用水性ジェル組成物は、さらに硬化剤(D)を含有することが好ましい。
硬化剤(D)としては、微粒子(A)、好ましくは(A)を形成する樹脂(a)が有している反応性官能基と反応可能な官能基を2個以上の有していれば特に制限は無く、多価アルコール、多価フェノール類、アミン類、ポリカルボン酸、リン酸類、ポリチオール、ブロック化されていても良いイソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物、シリルエーテル基含有化合物、メラミン樹脂、(ヘミ)アセタール基含有化合物等が挙げられる。
【0019】
樹脂(a)及び/又は前駆体(a0)と硬化剤(D)との比率は特に制限はないが、(a)が反応性官能基を有さない場合、(a)及び/又は(a0)に対する(D)の含有量(重量%)は、0〜20が好ましく、さらに好ましくは0.5〜10、特に好ましくは2〜10である。
(a)が官能基を有する場合、(a)の官能基と(D)の官能基とのモル比〔(a)/(D)〕は、1/3以上3/1未満が好ましく、さらに好ましくは1/2以上2/1未満、特に好ましくは1/1.5以上1.5/1未満である。
【0020】
なお、本発明の塗装用水性ジェル組成物において、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により公知の乳化剤または界面活性剤(ノニオン性乳化剤および界面活性剤、アニオン乳化剤および界面活性剤、カチオン乳化剤および界面活性剤、ブロックイソシアネート基、カルボキシル基、エポキシ基、ビニル基、酸無水物等を導入した各種反応性乳化剤および界面活性剤)等を使用することができる。使用する場合の乳化剤および界面活性剤の使用量は、樹脂(a)及び/又はその前駆体(a0)に対して好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0021】
本発明の水性ジェル組成物には、目的とする用途に応じて必要により公知の添加剤(たとえば粘度調整剤、反応促進剤、充填剤、増粘剤、耐熱もしくは耐候安定剤、レベリング剤、消泡剤、防腐剤、着色料など)を任意に含有させることができる。
本発明の水性ジェル組成物中の固形分(重量%)は、特に制限はないが、塗装性の観点から、好ましくは20〜75、さらに好ましくは30〜70、特に好ましくは40〜67、最も好ましくは50〜65である。固形分が20〜75重量%であるとき、水性ジェル組成物の塗装性は良好となる。上記固形分は、JIS K 5400−1979(塗料一般試験方法)により測定される値である。
【0022】
本発明の水性ジェル組成物を製造する方法としては、下記の方法が例示できるが、これらに限定されない。
(1)あらかじめ作製した微粒子(A)を水性媒体(C0)中に分散させた後、ジェル化剤(B)を加え、ジェル化させる方法
(2)溶融した樹脂(a)を水性媒体(C0)中でディスパーサー等により微粒子化させて微粒子(A)を形成させた後、ジェル化剤(B)を加え、ジェル化させる方法
(3)有機溶剤(E)に溶解させた樹脂(a)を水性媒体(C0)中でディスパーサー等により微粒子化させて微粒子(A)を形成させた後、有機溶剤(E)を除去し、ジェル化剤(B)を加え、ジェル化させる方法
(4)樹脂(a)の前駆体(a0)を水性媒体(C0)中でディスパーサー等により微粒子化させて微粒子(A)を形成させた後、ジェル化剤(B)を加え、ジェル化させる方法
(5)溶融した樹脂(a)を、ジェル化剤の前駆体(b011)及び架橋剤(b02)を含む水性媒体(C0)中でディスパーサー等により微粒子化させて微粒子(A)を形成させた後、ジェル化剤の前駆体(b011)及び架橋剤(b02)を反応させることにより、ジェル化させる方法
(6)有機溶剤(E)に溶解させた樹脂(a)をジェル化剤の前駆体(b011)及び架橋剤(b02)を含む水性媒体(C0)中でディスパーサー等により微粒子化させて微粒子(A)を形成させた後、有機溶剤(E)を除去し、ジェル化剤の前駆体(b011)及び架橋剤(b02)を反応させることにより、ジェル化させる方法
(7)樹脂(a)の前駆体(a0)を、ジェル化剤の前駆体(b011)及び架橋剤(b02)を含む水性媒体(C0)中でディスパーサー等により微粒子化させた後、ジェル化剤の前駆体(b011)及び架橋剤(b02)を反応させることにより、ジェル化させる方法
(8)有機溶剤(E)に溶解させた樹脂(a)をジェル化剤(B)を含む水性媒体(C0)中でディスパーサー等により微粒子化させて微粒子(A)を形成させた後、有機溶剤(E)を除去し、ジェル化させる方法
(9)必要により有機溶剤(E)に溶解させた樹脂(a)の前駆体(a0)をジェル化剤(B)を含む水性媒体(C0)中でディスパーサー等により微粒子化させた後、反応させることにより、ジェル化させる方法
【0023】
上記の方法(1)について、さらに詳細に説明する。
あらかじめ作製した微粒子(A)をディスパーサー等により水性媒体(C0)中に分散させた後、ジェル化剤(B)を加え、ジェル化することにより、水性ジェル組成物を得ることができる。
【0024】
微粒子(A)を作製する方法としては特に制限はないが、下記の方法等が挙げられる。
(1−1)固体状の樹脂(a)を破砕又は粉砕する方法
(1−2)溶融させた樹脂(a)を、必要により界面活性剤(s)を含む水性媒体(C0)中で乳化分散させることにより微粒子化し、取り出す方法
(1−3)有機溶剤(E)に溶解させた樹脂(a)を、必要により界面活性剤(s)を含む水性媒体(C0)中で微粒子化し、脱溶剤後、取り出す方法
(1−4)樹脂(a)の前駆体(a0)を、必要により界面活性剤(s)を含む水性媒体(C0)中で微粒子化し、前駆体(a0)を反応させた後、樹脂(a)を取り出す方法
【0025】
上記の(1−1)の方法を説明する。
破砕又は粉砕に用いることができる破砕機としては、公知の破砕機{例えば、乳化分散の理論と実際(特殊機化社製、1997年4月17日発行)の80〜86頁}等が使用できる。
破砕又は粉砕の温度(℃)としては、−20〜150が好ましく、さらに好ましくは−10〜130、特に好ましくは−5〜80である。この範囲であると、樹脂微粒子をさらに容易に調整できる。
【0026】
上記の(1−2)の方法を説明する。
界面活性剤(s)としては、公知の界面活性剤(たとえば、特開2004−124059号公報に記載の界面活性剤)等を使用することができる。具体的には、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤(s)を使用する場合、この含有量(重量%)は、水性媒体(C0)の重量に基づいて、0〜10が好ましく、更に好ましくは0.001〜5、特に好ましくは0.01〜3である。この範囲であると、微粒子(A)をさらに容易に調整できる。
【0027】
水性媒体(C0)の使用量(重量%)としては、微粒子(A)及び水性媒体(C0)の合計重量に基づいて、30〜99が好ましく、さらに好ましくは35〜95、特に好ましくは40〜90である。
【0028】
乳化分散に用いられる分散装置としては、一般に乳化機、分散機として使用されているものであれば特に限定されず、公知の分散装置(例えば、特開2002−284881号公報に記載の分散装置)等を使用することができる。
【0029】
乳化分散方法としては、(1)水性媒体(C0)と溶融させた樹脂(a)を一括投入し、乳化分散する方法、(2)水性媒体(C0)中に溶融させた樹脂(a)を滴下投入しながら乳化分散する方法、(3)溶融させた樹脂(a)中に水性媒体(C0)を滴下投入しながら乳化分散し、転相させる方法等のいずれでもよいが、(1)の方法が好ましい。
【0030】
乳化分散時の温度(℃)としては制限がないが、0〜150℃(密閉下)が好ましく、さらに好ましくは5〜98、特に好ましくは10〜90、最も好ましくは15〜80である。
【0031】
微粒子(A)の取り出し方法としては、特に制限はないが、固液分離法(遠心分離器、スパクラフィルター、フィルタープレス等)により微粒子(A)を分離した後、水洗する方法等が適用できる。
【0032】
得られる微粒子(A)は、必要により乾燥することができる。乾燥としては、微粒子(A)の軟化温度未満で行うことが好ましく、必要により減圧下で行う。
乾燥機としては、公知の乾燥装置(例えば、流動層式乾燥機、減圧乾燥機、循風乾燥機等)が用いられる。
【0033】
上記の(1−3)の方法を説明する。
界面活性剤(s)の種類、その添加量、水性媒体(C0)の量、乳化分散の装置、その方法及びその温度、微粒子の取り出し方法、乾燥方法については、上記(1−2)の方法と同様である。
有機溶剤(E)としては、上述したものを用いることができる。
有機溶剤(E)と樹脂(a)の割合は、(E)と(a)の合計量に対する有機溶剤(E)の割合が5〜60重量%であることが好ましい。
脱溶剤する方法としては、減圧下でロータリーエバポレーター等の脱溶剤装置を利用することができる。
【0034】
上記の(1−4)の方法を説明する。
界面活性剤(s)の種類、その添加量、水性媒体(C0)の量、乳化分散の装置、その方法及びその温度、微粒子の取り出し方法、乾燥方法については、上記(1−2)の方法と同様である。
前駆体(a0)は、必要に応じて溶融させるか、有機溶剤(E)に溶解して液状のものを用いる。
前駆体(a0)から樹脂(a)とする反応について、反応温度(℃)としては特に制限はないが、0〜150(密閉下)が好ましく、さらに好ましくは5〜98、特に好ましくは10〜50である。反応時間(時間)としては特に制限はないが、0.01〜30が好ましく、更に好ましくは0.05〜20、特に好ましくは0.1〜10である。
【0035】
このようにして得られた微粒子(A)は、必要に応じて、風力分級器又はふるい等を用いて分級し、所望の平均粒径のものを得ることができる。
上記(1−1)〜(1−4)の方法で得られた微粒子(A)を水性媒体(C0)中に分散させた後、上述の(C1)、(C2)の方法でジェル化剤(B)を加えてジェル化することができる。
【0036】
上記の方法(2)について、さらに詳細に説明する。
溶融させることにより液状にした樹脂(a)を、水性媒体(C0)中でディスパーサー等により微粒子化させた後、ジェル化剤(B)を加え、ジェル化させる方法である。必要により、水性媒体(C0)に界面活性剤(s)を添加してもよい。
界面活性剤(s)の種類、その添加量、水性媒体(C0)の量、乳化分散の装置、その方法及びその温度については、上記(1−2)の方法と同様である。
ジェル化させる方法としては、上記(1)の方法と同様である。
【0037】
上記の方法(3)について、さらに詳細に説明する。
有機溶剤(E)に溶解させることにより液状にした樹脂(a)を、水性媒体(C0)中でディスパーサー等により微粒子化させた後、(E)を除去し、ジェル化剤(B)を加え、ジェル化させる方法である。必要により、水性媒体(C0)に界面活性剤(s)を添加してもよい。
界面活性剤(s)の種類、添加量、水性媒体(C0)の量、乳化分散の装置、方法、温度、については、上記(1−2)の方法と同様である。
有機溶剤(E)の種類、量、脱溶剤方法については、上記(1−3)の方法と同様である。
ジェル化させる方法としては、上記(1)の方法と同様である。
【0038】
上記の方法(4)について、さらに詳細に説明する。
樹脂(a)の前駆体(a0)を、水性媒体(C0)中でディスパーサー等により乳化分散した後、微粒子(A)を形成させ、ジェル化剤(B)を加え、ジェル化させる方法である。必要により、水性媒体(C0)に界面活性剤(s)を添加してもよく、前駆体(a0)を反応させて樹脂(a)としてもよい。
界面活性剤(s)の種類、その添加量、水性媒体(C0)の量、乳化分散の装置、その方法及びその温度、については、上記(1−2)の方法と同様である。
前駆体(a0)を反応させて樹脂(a)とする場合、その反応温度、時間については上記(1−4)の方法と同様である。
ジェル化させる方法としては、上記(1)の方法と同様である。
【0039】
上記の方法(5)について、さらに詳細に説明する。
溶融させることにより液状にした樹脂(a)をジェル化剤の前駆体(b011)及び架橋剤(b02)を含む水性媒体(C0)中でディスパーサー等により微粒子化させた後、ジェル化剤の前駆体(b011)及び架橋剤(b02)を反応させてジェル化させる方法である。必要により、水性媒体(C0)に界面活性剤(s)を添加してもよい。
界面活性剤(s)の種類、添加量、水性媒体(C0)の量、乳化分散の装置、方法、温度、については、上記(1−2)の方法と同様である。
ジェル化させる方法については上述の(C11)の方法と同様である。
【0040】
上記の方法(6)について、さらに詳細に説明する。
有機溶剤(E)に溶解させることにより液状にした樹脂(a)をジェル化剤の前駆体(b011)及び架橋剤(b02)を含む水性媒体(C0)中でディスパーサー等により微粒子化させた後、(E)を除去し、ジェル化剤の前駆体(b011)及び架橋剤(b02)を反応させてジェル化させる方法である。必要により、水性媒体(C0)に界面活性剤(s)を添加してもよい。
界面活性剤(s)の種類、その添加量、水性媒体(C0)の量、乳化分散の装置、その方法及びその温度については、上記(1−2)の方法と同様である。
有機溶剤(E)の種類、量、脱溶剤方法については、上記(1−3)の方法と同様である。
ジェル化させる方法については上述の(C11)の方法と同様である。
【0041】
上記の方法(7)について、さらに詳細に説明する。
樹脂(a)の前駆体(a0)をジェル化剤の前駆体(b011)及び架橋剤(b02)を含む水性媒体(C0)中でディスパーサー等により乳化分散して微粒子化した後、ジェル化剤の前駆体(b011)及び架橋剤(b02)を反応させることによりジェル化させる方法である。必要により、水性媒体(C0)に界面活性剤(s)を添加してもよく、前駆体(a0)を反応させて樹脂(a)としてもよい。
界面活性剤(s)の種類、その添加量、水性媒体(C0)の量、乳化分散の装置、その方法及びその温度については、上記(1−2)の方法と同様である。
前駆体(a0)を反応させて樹脂(a)とする場合、その反応温度、時間については上記(1−4)の方法と同様である。
ジェル化させる方法については上述の(C11)の方法と同様である。
【0042】
上記の方法(8)について、さらに詳細に説明する。
有機溶剤(E)に溶解させることにより液状にした樹脂(a)をジェル化剤(B)を含む水性媒体(C0)中でディスパーサー等により微粒子化させた後、ジェル化させる方法である。必要により、水性媒体(C0)に界面活性剤(s)を添加してもよい。
界面活性剤(s)の種類、その添加量、水性媒体(C0)の量、乳化分散の装置、その方法及び温度については、上記(1−2)の方法と同様である。
有機溶剤(E)の種類、量、脱溶剤方法については、上記(1−3)の方法と同様である。
ジェル化させる方法については上記(1)の方法と同様である。
【0043】
上記の方法(9)について、さらに詳細に説明する。
樹脂(a)の前駆体(a0)をジェル化剤(B)を含む水性媒体(C0)中でディスパーサー等により微粒子化させた後、ジェル化させる方法である。必要により、水性媒体(C0)に界面活性剤(s)を添加してもよく、前駆体(a0)を反応させて樹脂(a)としてもよい。
界面活性剤(s)の種類、その添加量、水性媒体(C0)の量、乳化分散の装置、その方法及びその温度については、上記(1−2)の方法と同様である。
有機溶剤(E)の種類、量、脱溶剤方法については、上記(1−3)の方法と同様である。
前駆体(a0)を反応させて樹脂(a)とする場合、その反応温度、時間については上記(1−4)の方法と同様である。
ジェル化させる方法については上記(1)の方法と同様である。
【0044】
ジェル組成物の製造しやすさの観点から、方法(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)が好ましく、さらに好ましくは(5)、(6)、(7)である。
【0045】
本発明のジェル組成物の塗膜形成方法は、被塗装物に対して、該ジェル組成物を、通常ウェット膜厚10以上200μm以下、好ましくは10μm以上50μm以下となるように塗布し、これを通常100℃以上200℃以下、好ましくは120℃以上180℃以下の温度で、通常5分以上60分以下、好ましくは5分以上30分以下、さらに好ましくは5分以上20分以下の時間加熱して焼き付けることで塗膜を形成することができる。
被塗装物としては特に限定されず、例えば、鋼板、木材、樹脂成型物等が挙げられる。
本発明のジェル組成物を塗布する方法としては特に限定されず、例えば、キャスト法、刷毛による塗装、スプレー塗装等が挙げられる。
本発明の塗料を塗布し、焼き付けることによって得られる塗膜の被塗装物の膜厚は、通常10μm以上150μm以下、好ましくは15μm以上50μm以下である。
【0046】
本発明の方法で得られるジェル組成物は、建築物や家電製品等、種々の製品の塗装に用いることができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明の塗装用水性ジェル組成物は、低VOCであり、貯蔵安定性と塗膜物性がともに優れた塗装用組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り「部」は重量部、「%」は重量%を意味する。
【0049】
<製造例1>
アクリル樹脂の調製
キシレン250部を反応器に入れ、加熱して100℃とし、ついで、スチレン23部、メチルメタクリレート23部、アクリル酸ブチル20部、アクリル酸ヒドロキシエチル33部、パーオキシD(日本油脂製、過酸化物)1部の混合物を約3時間滴下した。その間の反応は、窒素雰囲気下にて行った。この滴下終了後、2時間のあいだ、100℃に保持して、反応を続行した。
反応終了後、減圧蒸留によって有機溶剤および残存モノマーを除去し、その後、真空乾燥させることにより、水酸基当量420、数平均分子量8,000のアクリル樹脂(樹脂(a−1))を得た。
【0050】
<製造例2>
エステル樹脂の調製
反応器にネオペンチルグリコール200部、エチレングリコール93部、テレフタル酸355部を投入し、230℃に加熱し生成する水を留去しながら2時間反応を進めた。その後0.2部のジブチルチンオキサイドを添加し、酸価が0.5以下になるまで反応を続けることで、本発明の塗膜に用いる、両末端に水酸基を有する、数平均分子量7000、水酸基等量16.5のエステル樹脂(樹脂(a−2))を得た。
【0051】
<製造例3>
エポキシ樹脂の調整
反応器にキシレン1800部、及び高沸点溶剤としてソルベッソ150(エクソン社製炭化水素)8.0部を仕込み、窒素雰囲気下、135℃に昇温した。そこへ、スチレン900部、メチルメタクリレート390部、n−ブチルメタクリレート510部、グリシジルメタクリレート1050部、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート150部、tert−ブチルパーオキシオクトエート180部、ジtert−ブチルパーオキサイド15部、及びキシレン600部からなる混合物を6時間にわたって滴下した。滴下終了後、同温度にて5時間保持して重合反応をおこない、反応終了後、有機溶剤、残存モノマーを減圧蒸留し、エポキシ当量395(g/当量)、数平均分子量2,400のエポキシ樹脂(樹脂(a−3))を得た。
【0052】
<製造例4>
反応器に、有機溶剤(テトラヒドロフラン)300部、ヒドロキシル価が837のジメチロールプロピオン酸(2,2−ジヒドロキシメチル−1−プロピオン酸)200部(1.49モル)を投入し、続いてイソホロンジイソシアネート596部(2.69モル)を投入し、110℃で10時間反応を行い末端にイソシアナト基を有する前駆体(a0−1)を得た。
【0053】
<製造例5>
反応容器に、イソホロンジアミン50部とメチルエチルケトン34部を仕込み、50℃で5時間反応を行い前駆体(a0−2)(ケチミン化合物:N,N−ビス(1−メチルプロピリデン)イソホロンジアミン)を得た。
【0054】
<製造例6>
スチレン23部、メチルメタクリレート23部、アクリル酸ブチル20部、アクリル酸ヒドロキシエチル33部、パーオキシD(日本油脂製、過酸化物)1部の混合物を前駆体(a0−3)とした。
【0055】
<製造例7>
水300部、アクリル酸ナトリウム100部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、75℃で5時間反応させた。さらに1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してポリアクリル酸ナトリウム水溶液(ジェル化剤前駆体(b0−1))を得た。
【0056】
<製造例8>
水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)11部、スチレン139部、メタクリル酸138部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液(ジェル化剤(b−1))を得た。
【0057】
<製造例9>
水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)11部、スチレン139部、グリシジルメタクリレート70部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−グリシジルメタクリレート−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液(ジェル化剤(b−2))を得た。
【0058】
<製造例10>
水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)11部、スチレン139部、ヒドロキシエチルメタクリレート100部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−ヒドロキシメタクリレート−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液(ジェル化剤(b−3))を得た。
【0059】
<実施例1>
ビーカー内に、樹脂(a−1)59部、MEKオキシムブロックされたHDIトリマー(旭化成製、スミジュール)41部、およびテトラヒドロフラン100部、ウレタン化触媒TEDA0.1部(東ソー製)を混合しておき、これをラウリル酸ナトリウム3部、イオン交換水100部に添加した後、ウルトラディスパーサー(ヤマト科学製)を使用して、回転数9,000rpmで2分間混合し、平均粒径5μmとした。混合後、攪拌棒および温度計をセットした4つ口フラスコにこの混合液を投入し、常温、減圧下で10時間脱溶剤し、ガラス転移温度10℃の微粒子(A−1)が分散した水性媒体を得た。得られた微粒子分散水性媒体に寒天粉末(和光純薬製)0.5部を添加し、90℃で溶解させ、冷却し、本発明の塗装用水性ジェル組成物(1)を得た。
【0060】
<実施例2>
寒天粉末の添加量を0.4部にする以外は実施例1と同様にして、塗装用水性ジェル組成物(2)を得た。
【0061】
<実施例3>
寒天粉末の添加量を0.3部にする以外は実施例1と同様にして、塗装用水性ジェル組成物(3)を得た。
【0062】
<実施例4>
寒天粉末の添加量を1部にする以外は実施例1と同様にして、塗装用水性ジェル組成物(4)を得た。
【0063】
<実施例5>
寒天粉末の添加量を2部にする以外は実施例1と同様にして、塗装用水性ジェル組成物(5)を得た。
【0064】
<実施例6>
寒天粉末の添加量を3部にする以外は実施例1と同様にして、塗装用水性ジェル組成物(6)を得た。
【0065】
<実施例7>
寒天粉末の添加量を4部にする以外は実施例1と同様にして、塗装用水性ジェル組成物(7)を得た。
【0066】
<実施例8>
ビーカー内に、樹脂(a−2)59部、MEKオキシムブロックされたHDIトリマー(旭化成製、スミジュール)10部、およびテトラヒドロフラン100部、ウレタン化触媒TEDA0.1部(東ソー製)を混合しておき、これをラウリル酸ナトリウム3部、イオン交換水100部に添加した後、ウルトラディスパーサー(ヤマト科学製)を使用して、回転数9,000rpmで2分間混合し、平均粒径5μmとした。混合後、攪拌棒および温度計をセットした4つ口フラスコにこの混合液を投入し、常温、減圧下で10時間脱溶剤し、ガラス転移温度30℃の微粒子(A−2)が分散した水性媒体を得た。得られた微粒子分散水性媒体に寒天粉末(和光純薬製)0.5部を添加し、90℃で溶解させ、冷却し、塗装用水性ジェル組成物(8)を得た。
【0067】
<実施例9>
ビーカー内に、樹脂(a−3)59部、MEKオキシムブロックされたHDIトリマー(旭化成製、スミジュール)30部、およびテトラヒドロフラン100部、ウレタン化触媒TEDA0.1部(東ソー製)を混合しておき、これをラウリル酸ナトリウム3部、イオン交換水100部に添加した後、ウルトラディスパーサー(ヤマト科学製)を使用して、回転数9,000rpmで2分間混合し、平均粒径5μmとした。混合後、攪拌棒および温度計をセットした4つ口フラスコにこの混合液を投入し、常温、減圧下で10時間脱溶剤し、ガラス転移温度20℃の微粒子(A−3)が分散した水性媒体を得た。得られた微粒子分散水性媒体に寒天粉末(和光純薬製)0.5部を添加し、90℃で溶解させ、冷却し、塗装用水性ジェル組成物(9)を得た。
【0068】
<実施例10>
ビーカー内に、前駆体(a0−1)60部、前駆体(a0−2)35部、MEKオキシムブロックされたHDIトリマー(旭化成製、スミジュール)25部、およびテトラヒドロフラン100部、ウレタン化触媒TEDA0.1部(東ソー製)を混合しておき、これをラウリル酸ナトリウム3部、イオン交換水100部に添加した後、ウルトラディスパーサー(ヤマト科学製)を使用して、回転数9,000rpmで2分間混合し、平均粒径を5μmとした。混合後、攪拌棒および温度計をセットした4つ口フラスコにこの混合液を投入し、常温、減圧下で10時間脱溶剤し、ガラス転移温度30℃の微粒子(A−4)が分散した水性媒体を得た。得られた微粒子分散水性媒体に寒天粉末(和光純薬製)0.5部を添加し、90℃で溶解させ、冷却し、塗装用水性ジェル組成物(10)を得た。
【0069】
<実施例11>
ビーカー内に、前駆体(a0−3)60部、MEKオキシムブロックされたHDIトリマー(旭化成製、スミジュール)25部、ウレタン化触媒TEDA0.1部(東ソー製)を混合しておき、これをラウリル酸ナトリウム3部、イオン交換水100部に添加した後、ウルトラディスパーサー(ヤマト科学製)を使用して、回転数9,000rpmで2分間混合し、平均粒径を5μmとした。混合後、攪拌棒および温度計をセットした4つ口フラスコにこの混合液を投入し、75℃で5時間反応しガラス転移温度10℃の微粒子(A−5)が分散した水性媒体を得た。得られた微粒子分散水性媒体に寒天粉末(和光純薬製)0.5部を添加し、90℃で溶解させ、冷却し、塗装用水性ジェル組成物(11)を得た。
【0070】
<実施例12>
ビーカー内に、樹脂(a−1)59部、MEKオキシムブロックされたHDIトリマー(旭化成製、スミジュール)41部、およびテトラヒドロフラン100部、ウレタン化触媒TEDA0.1部(東ソー製)を混合しておき、これをラウリル酸ナトリウム3部、イオン交換水100部に添加した後、ウルトラディスパーサー(ヤマト科学製)を使用して、回転数9,000rpmで2分間混合し、平均粒径を5μmとした。混合後、攪拌棒および温度計をセットした4つ口フラスコにこの混合液を投入し、常温、減圧下で10時間脱溶剤し、ガラス転移温度10℃の微粒子(A−1)が分散した水性媒体を得た。得られた微粒子分散水性媒体にジェル化剤前駆体(b0−1)、エチレングリコールジグリシジルエーテルを添加し、90℃で30分反応させ、冷却し、塗装用水性ジェル組成物(12)を得た。
【0071】
<実施例13>
ビーカー内に、樹脂(a−1)59部、MEKオキシムブロックされたHDIトリマー(旭化成製、スミジュール)41部、およびテトラヒドロフラン100部、ウレタン化触媒TEDA0.1部(東ソー製)を混合しておき、これをラウリル酸ナトリウム3部、イオン交換水100部、ジェル化剤(b−1)5部に添加した後、ウルトラディスパーサー(ヤマト科学製)を使用して、回転数9,000rpmで2分間混合し、平均粒径を5μmとした。混合後、攪拌棒および温度計をセットした4つ口フラスコにこの混合液を投入し、常温、減圧下で10時間脱溶剤し、ガラス転移温度10℃の微粒子(A−1)が分散した塗装用水性ジェル組成物(13)を得た。
【0072】
<実施例14>
ジェル化剤(b−1)をジェル化剤(b−2)に代える以外は実施例13と同様にして、塗装用水性ジェル組成物(14)を得た。
【0073】
<実施例15>
ジェル化剤(b−1)をジェル化剤(b−3)に代える以外は実施例13と同様にして、塗装用水性ジェル組成物(15)を得た。
【0074】
<実施例16>
ビーカー内に、前駆体(a0−1)60部、前駆体(a0−2)25部、テトラヒドロフラン100部、ウレタン化触媒TEDA 0.1部(東ソー製)を混合しておき、これをラウリル酸ナトリウム3部、イオン交換水100部に添加した後、ウルトラディスパーサー(ヤマト科学製)を使用して、回転数9,000rpmで2分間混合し、平均粒径を5μmとした。混合後、攪拌棒及び温度計をセットした4つ口フラスコにこの混合液を投入し、常温、減圧下で10時間脱溶剤し、ガラス転移温度30℃の微粒子(A−6)が分散した水性媒体を得た。得られた微粒子分散水性媒体に寒天粉末(和光純薬製)0.5部を添加し、90℃で溶解させ、冷却し、塗装用水性ジェル組成物(16)を得た。
【0075】
<比較例1>
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、キシレン66.7部を仕込み、窒素をパージしながら還流温度まで加熱昇温した。このフラスコ内に、グリシジルメタクリレート40部、スチレン40部、メチルメタクリレート20部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10部を仕込み、100℃で5時間反応させた。得られた樹脂溶液から減圧下、80℃で5時間脱溶剤し、得られた樹脂50部に対してドデカン二酸25部、テトラブチルホスフォニウムブロマイド0.2部を加えヘンシェルミキサ−(三井鉱山社製)に一括投入し、室温下、3分間混合し、さらに、1軸押出し機(コペリオン社製)により、70℃で溶融混練した。その後、固化、粉砕、分級操作を実施し、粉体組成物を得た。
【0076】
<比較例2>
ビーカー内に、樹脂(a−1)59部、MEKオキシムブロックされたHDIトリマー(旭化成製、スミジュール)41部、およびテトラヒドロフラン100部、ウレタン化触媒TEDA0.1部(東ソー製)を混合しておき、これをラウリル酸ナトリウム3部、イオン交換水100部に添加した後、ウルトラディスパーサー(ヤマト科学製)を使用して、回転数9,000rpmで2分間混合し、平均粒径を5μmとした。混合後、攪拌棒および温度計をセットした4つ口フラスコにこの混合液を投入し、常温、減圧下で10時間脱溶剤し、水分散組成物を得た。
【0077】
<ゲル強度評価>
JIS K 6503に準拠して、ジェル組成物を20℃で15時間放置した後、表面積1平方センチメートルの円形試験片(アルミ製)により荷重し、20秒間試験片がゲル中に沈まない最大荷重を測定した。
結果を表1に示した。
【0078】
<分散安定性評価>
20℃で30日間放置した後、微粒子の偏りを目視で評価した。
○:沈降は見られない。
△:一部沈降している。
×:完全に沈降している。
結果を表1に示した。
【0079】
<塗膜平滑性評価>
実施例1〜16の塗装用水性ジェル組成物、及び比較例2の水分散組成物をキャスト法により塗装し、80℃で10分間プレヒートした後、160℃で20分硬化させ、膜厚50μmの塗膜を得た。得られた塗膜を使用し、ウエーブ−スキャン(BYK社製)にて、塗膜の平滑性を測定した。結果を表1に示した。表1において、LWが長波長で測定した結果を、SWが短波長で測定した結果を示す。
比較例1の粉体組成物を静電塗装により塗装し、80℃で10分間プレヒートした後、160℃で20分硬化させ、膜厚50μmの塗膜を得た。得られた塗膜を使用し、ウエーブ−スキャン(BYK社製)にて、塗膜の平滑性を測定した。結果を表1に示した。
【0080】
【表1】

【0081】
以上の結果から、本発明の塗装用水性ジェル組成物は比較例2に対して分散安定性に優れており、また、比較例1に対して重要な塗膜物性である平滑性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
上記効果を奏することから、本発明の塗装用水性ジェル組成物は、例えば、建築物、産業機械、自動車等の塗装用組成物として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェル化された水性媒体(C)中に微粒子(A)を分散してなることを特徴とする塗装用水性ジェル組成物。
【請求項2】
ゲル強度が5〜5,000,000mg/cmである請求項1記載の塗装用水性ジェル組成物。
【請求項3】
ジェル化された水性媒体(C)がジェル化剤(B)によりジェル化されたものである請求項1又は2に記載の塗装用水性ジェル組成物。
【請求項4】
ジェル化剤(B)が水溶性架橋体化合物(b1)である請求項3に記載の塗装用水性ジェル組成物。
【請求項5】
ジェル化剤(B)が水不溶性化合物(b2)からなり、粒子表面に相互作用の可能な官能基を有する微粒子である請求項3記載の塗装用水性ジェル組成物。
【請求項6】
ジェル化剤(B)が反応性官能基を有する化合物である請求項3〜5のいずれか1項に記載の塗装用水性ジェル組成物。
【請求項7】
微粒子(A)が樹脂(a)及び/又は樹脂(a)の前駆体(a0)からなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗装用水性ジェル組成物。
【請求項8】
樹脂(a)が反応性官能基を有する請求項7に記載の塗装用水性ジェル組成物。
【請求項9】
さらに硬化剤(D)を含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の塗装用水性ジェル組成物。
【請求項10】
微粒子(A)のガラス転移温度が60℃以下である請求項1〜9のいずれか1項に記載の塗装用水性ジェル組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の塗装用水性ジェル組成物を塗装し焼き付けることにより得られる塗膜。

【公開番号】特開2007−169566(P2007−169566A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372584(P2005−372584)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】