説明

塗装装置および塗装方法

【課題】周囲の側端面の柄模様毎に化粧シートが用意される必要がなく、その設計・製造コストが嵩んでしまうことのない塗装装置および塗装方法を提供する。
【解決手段】被塗材1の搬送装置と、インクジェットプリンタ2と、インク転写装置3とを備える。被塗材1の搬送装置により搬送される方向と直交する方向の側端面がインク4により塗装される被塗面11となり、インク転写装置3は、搬送装置により搬送される被塗材1の被塗面11に沿って移動する転写ベルト31と、転写ベルト31が掛け回されるプーリ32と、プーリ32を駆動する駆動源と、を備える。インクジェットプリンタ2が、転写ベルト31にインク4を噴射することで、被塗材1に塗装する塗装装置である。また、この塗装装置を用いて塗装される塗装方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装装置および前記塗装装置を用いる塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、化粧パネルは、合板やパーチクルボードやMDF(中密度繊維板)等の基材の周囲の側端面に、紙や樹脂フィルムからなる化粧シートが貼り付けられて形成されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−155914号公報
【特許文献2】特開平11−165301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の化粧パネルにあっては、周囲の側端面の柄模様毎に化粧シートが用意される必要があり、その設計・製造コストが嵩んでしまうものであった。
【0005】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、周囲の側端面の柄模様毎に化粧シートが用意される必要がなく、その設計・製造コストが嵩んでしまうのを抑制することができる塗装装置および塗装方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成とする。
【0007】
被塗材の搬送装置と、インクジェットプリンタと、インク転写装置とにより前記被塗材に塗装する塗装装置であって、前記被塗材の前記搬送装置により搬送される方向と直交する方向の側端面がインクにより塗装される被塗面となり、前記インク転写装置は、前記搬送装置により搬送される前記被塗材の前記被塗面に沿って移動する転写ベルトと、前記転写ベルトが掛け回されるプーリと、前記プーリを駆動する駆動源と、を備え、前記インクジェットプリンタは、前記転写ベルトにインクを噴射し、前記転写ベルトに噴射されたインクが前記搬送装置により搬送される前記被塗材の前記被塗面に転写されることを特徴とする。
【0008】
また、前記被塗材に転写されずに前記転写ベルト上に残ったインクを除去するインク除去装置を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記インクジェットプリンタにより前記転写ベルト上に噴射されたインクを所定の硬さまたは粘度となるように硬化させるインク硬化装置が設けられることを特徴とする。
【0010】
また、上記塗装装置により、前記被塗材の前記被塗面にインクが転写される塗装方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明にあっては、周囲の側端面の柄模様毎に化粧シートが用意される必要がなく、その設計・製造コストが嵩んでしまうことがないものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の塗装装置の一実施形態の概略構成図である。
【図2】同上における押さえローラによる転写ベルトの被塗材への押さえつけを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0014】
図1に、本発明の塗装装置の一実施形態の概略図を示す。本発明の塗装装置は、いわゆるインクジェットプリンタ2により被塗材1に塗装するもので、被塗材1の搬送装置と、インクジェットプリンタ2と、インク転写装置3と、を備えている。
【0015】
被塗材1は、搬送方向と直交する方向の長さ(すなわち幅)が所定の範囲の合板やパーチクルボードやMDF(中密度繊維板)等からなる板状をしたもので、その幅方向の側端面が、インク4による塗装が施される被塗面11となる。本実施形態では、被塗材1は正面視略矩形状をして、その長手方向が搬送方向となるが、搬送方向(長手方向)の長さと幅は特に限定されず、搬送方向の長さの方が幅よりも短くてもよい。この被塗材1は、搬送装置により搬送され、少なくとも一方の被塗面11が露出する状態で搬送される。
【0016】
搬送装置としては、例えば、図示しないが、プーリと、プーリに掛け回されるベルトと、駆動プーリを駆動するモータ等の駆動源と、を備えたベルトコンベア装置が挙げられる。また、他の搬送装置としては、例えば、図示しないが、搬送方向に並設されるローラと、ローラを駆動するモータ等の駆動源と、を備えたローラ装置が挙げられる。このように、搬送装置としては、既存の搬送装置が適宜使用可能であり、特に限定されない。
【0017】
インクジェットプリンタ2は、本実施形態では、インクノズル21を有するプリンタヘッド22と、インクタンク23と、インク流路24と、インク搬送手段(図示せず)と、マイクロコンピュータからなる制御部(図示せず)と、を備えている。インクジェットプリンタ2は、インク搬送手段として、インクタンク23内をエアーにより加圧する加圧手段(図示せず)を備えている。これにより、インクタンク23内のインク4がインク流路24を介してプリンタヘッド22へ搬送される。インク4は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4種類のインク4からなり、各種類毎にインクノズル21とインクタンク23とインク流路24とインク搬送手段とを備えている。インクジェットプリンタ2の動作は制御部により制御されるもので、詳細な説明は省略する。このようなインクジェットプリンタ2は様々なものが公知となっていて、これらが適宜使用可能であり、上記のものに限定されない。
【0018】
インク転写装置3は、プーリ32と、駆動源(図示せず)と、転写ベルト31と、インク硬化装置35と、押さえローラ33と、インク除去装置34と、マイクロコンピュータからなる制御部(図示せず)と、を備えている。
【0019】
プーリ32は、被塗材1の搬送方向に複数設けられるもので、本実施形態では搬送方向に二つ設けられており、このプーリ32に転写ベルト31が掛け回される。プーリ32のうち少なくとも一つは駆動プーリであり、駆動プーリはモータ等からなる駆動源により駆動される。
【0020】
転写ベルト31は、インク4が載置され被塗材1に接触する転写部分311が、搬送装置により搬送される被塗材1の露出する被塗面11に沿って移動するように設置される。転写ベルト31のインク4が載置される面には、インク4の剥離性を高めるための剥離促進層(図示せず)が形成されるのが好ましく、本実施形態では、いわゆるテフロン(登録商標)加工が施されて剥離促進層が形成されている。
【0021】
また、転写ベルト31の転写部分311の被塗材1が位置する側と反対側には、押さえローラ33が設置される。押さえローラ33は、本実施形態ではスポンジからなるが、弾性を有する材料であれば特にスポンジに限定されない。
【0022】
転写ベルト31のうち、転写部分311のインク4が転写された後の戻り部分は、被塗材1から離れた位置に設置される。そして、この戻り部分に、インクジェットプリンタ2のプリンタヘッド22が設置される。インクジェットプリンタ2により、転写ベルト31上に、被塗材1に転写される柄模様の反転された柄模様となるよう各色のインク4が噴射され、載置される。転写ベルト31上に噴射されたインク4は、インク硬化装置35により硬化される。
【0023】
インク硬化装置35は、インクジェットプリンタ2により転写ベルト31上に噴射されたインク4を完全に硬化させるのではなく、インク4を所定の硬さまたは粘度となるように硬化させる(半硬化という)ものである。本実施形態では、インク硬化装置35は紫外線照射装置からなり、紫外線のエネルギーによりインク4が変質して、所定の硬さまたは粘度となる。このインク硬化装置35によりインク4が半硬化されることで、インク4が被塗材1に転写可能な硬さ、粘度を維持しつつ、転写ベルト31に載置された位置からインク4が垂れたり移動したりせず柄模様を維持することができる。前記所定の硬さ、粘度は適宜設定されるもので、特に限定されない。
【0024】
また、転写ベルト31の戻り部分が位置する部分には、被塗材1に転写されずに転写ベルト31上に残ったインク4を除去するインク除去装置34が設置される。本実施形態では、戻り部分のプリンタヘッド22が位置する部分の上流側に、インク除去装置34として洗浄ローラが設置されており、転写ベルト31上に残ったインク4を洗浄ローラで洗浄して除去している。なお、インク除去装置34としては、洗浄ローラではなく、スキージ等によりインク4が掻き取られるものであってもよい。
【0025】
インク転写装置3の動作は制御部により制御されるものである。
【0026】
上記の塗装装置による被塗材1への塗装方法について説明する。被塗材1は、搬送装置により、被塗面11が搬送方向と直交する方向を向いて露出するように搬送される。被塗材1の側端面には、予め、樹脂または紙からなる白地のシートが貼着されているが、貼着されていなくてもよい。被塗材1の位置および速度は検知手段(図示せず)により検知される。被塗材1の位置および速度から、インクジェットプリンタ2の制御部とインク転写装置3の制御部は、被塗材1が転写部分311の位置を通過する時に転写が行われるように、転写ベルト31の駆動とインク4の噴出を制御する。なお、検知手段が被塗材1の位置のみを検知し、速度は設定から算出されるようになっていてもよいし、また、検知手段がなくてもよい。
【0027】
そして、被塗材1が転写部分311の位置を通過する時、転写部分311が被塗材1と同じ速度で移動して被塗材1に接触し、転写部分311に載置されているインク4が被塗材1の被塗面11に転写される。この時、押さえローラ33により転写ベルト31が被塗材1に押さえつけられる。本実施形態では、図2に示すように、被塗材1が転写ベルト31を介してスポンジからなる押さえローラ33に深さL(本実施形態では約2mm)めり込んで、被塗材1の側端面の面取り部12(いわゆるRを形成する場合も含む)にもインク4が確実に転写されるようになっている。
【0028】
転写ベルト31の戻り部分にはインク4が若干残っているが、洗浄ローラからなるインク除去装置34で洗浄されてインク4が除去される。
【0029】
被塗材1の板面に化粧が施された上、上記塗装装置により被塗面11に柄模様が塗装されることで、化粧パネルが製造される。
【0030】
上記塗装装置により被塗材1に塗装することで、周囲の側端面の柄模様毎に化粧シートが用意される必要がなく、その設計・製造コストが嵩んでしまうのが抑制される。また、柄模様の変更にあたって、その設計・製造コストが嵩んでしまうのが抑制され、新たな柄模様の化粧パネルの製造の着手が迅速に行われる。
【符号の説明】
【0031】
1 被塗材
11 被塗面
12 面取り部
2 インクジェットプリンタ
21 インクノズル
22 プリンタヘッド
23 インクタンク
24 インク流路
3 インク転写装置
31 転写ベルト
311 転写部分
32 プーリ
33 押さえローラ
34 インク除去装置
35 インク硬化装置
4 インク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗材の搬送装置と、インクジェットプリンタと、インク転写装置とにより前記被塗材に塗装する塗装装置であって、前記被塗材の前記搬送装置により搬送される方向と直交する方向の側端面がインクにより塗装される被塗面となり、前記インク転写装置は、前記搬送装置により搬送される前記被塗材の前記被塗面に沿って移動する転写ベルトと、前記転写ベルトが掛け回されるプーリと、前記プーリを駆動する駆動源と、を備え、前記インクジェットプリンタは、前記転写ベルトにインクを噴射し、前記転写ベルトに噴射されたインクが前記搬送装置により搬送される前記被塗材の前記被塗面に転写されることを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記被塗材に転写されずに前記転写ベルト上に残ったインクを除去するインク除去装置を備えることを特徴とする請求項1記載の塗装装置。
【請求項3】
前記インクジェットプリンタにより前記転写ベルト上に噴射されたインクを所定の硬さまたは粘度となるように硬化させるインク硬化装置が設けられることを特徴とする請求項1または2記載の塗装装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の塗装装置により、前記被塗材の前記被塗面にインクが転写されることを特徴とする塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−224006(P2012−224006A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94572(P2011−94572)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】