説明

塩タイル壁構造

【課題】乳白色半透明の塩タイル壁にその裏側から光を効果的に当てることができて、リラクゼーションルーム内に幻想的な空間を形成できるようにした塩タイル壁構造を提供する。
【解決手段】取付基枠2の内面側に金属製のスタッドボルト3が前後左右方向に夫々所要間隔おきに突設されると共に多数の発光素子7が配設され、各スタッドボルト3の先端部に透明プラスチック板からなるタイル基板受け4が螺着され、各タイル基板受け4に透明プラスチック板からなるタイル基板5が当接支持されて接着剤により固定され、タイル基板5に、精製塩又は天然塩の溶融成形物からなる乳白色半透明の多数の塩タイル6が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リラクゼーションルームや塩サウナ等の内壁に適用される塩タイル壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
温浴を利用するリラクゼーション施設として、サウナ、岩盤浴、温泉等が利用されているが、近年、塩のもつ遠赤外線効果や殺菌効果等に着目して、砂利状の岩塩を床に敷き詰めたり、塊状岩塩を積み上げて壁体を形成することが行われている。そして、本発明者は先に、塩サウナ等の内装材用として、精製塩や天然塩を加熱溶融して形成型内で冷却固化させた塩製パネル(塩タイル)を提案している(特許文献1)。
【0003】
上記特許文献1の塩製パネル、即ち塩タイルは、基礎構造体である側壁、床壁及び天井壁に対しコンクリート釘や接着剤によって直接に固定されるようになっている。
【特許文献1】特開2007−92514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように塩タイルは、基礎構造体である側壁、床壁及び天井壁に対し直接的に固定されるため、塩タイル壁の裏側から塩タイルに投光することができない。即ち、乳白色半透明の塩タイルに塩タイル壁の裏側から光を当てると、この乳白色半透明の塩タイルを通して、その光が、水彩画で描いたような滲んだ色合いとなって、リラクゼーションルーム内に幻想的な空間を形成することができる。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑み、乳白色半透明の塩タイル壁にその裏側から光を効果的に当てることができて、リラクゼーションルーム内に幻想的な空間を形成できるようにした塩タイル壁構造体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の塩タイル壁構造は、取付基枠2の内面側に金属製のスタッドボルト3が前後左右方向に夫々所要間隔おきに突設されると共に多数の発光素子7が配設され、各スタッドボルト3の先端部に透明プラスチック板からなるタイル基板受け4が螺着され、各タイル基板受け4に透明プラスチック板からなるタイル基板5が当接支持されて接着剤により固定され、このタイル基板5に、精製塩又は天然塩の溶融成形物からなる乳白色半透明の多数の塩タイル6が取り付けられてなることを特徴とする。
【0007】
請求項2は、請求項1に記載の塩タイル壁構造において、各タイル基板受け4は隣接する複数の四角形タイル基板5の境界部を跨ぐように配置されることを特徴とする。
【0008】
請求項3は、請求項1又は2に記載の塩タイル壁構造において、塩タイルは正六角形の厚板状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明によれば、塩タイル壁構造は、取付基枠2の内面側に金属製のスタッドボルト3を所要間隔おきに突設すると共に多数の発光素子7を配設し、各スタッドボルト3の先端部にタイル基板受け4を螺着し、各タイル基板受け4にタイル基板5を当接支持して接着剤により固定し、各タイル基板5に、精製塩又は天然塩の溶融成形物からなる乳白色半透明の多数の塩タイル6を取り付けてなるもので、スタッドボルト3により取付基枠2とタイル基板5の間に所要幅の空間部Sが形成されると共に、タイル基板5及びタイル基板受け4が透明プラスチック板からなるために、発光素子7を様々なパターン及び色合いで発光させることによって、その発光が空間部Sから乳白色半透明の塩タイル6…を有効に通過させてリラクゼーションルーム1内から淡い映像として効果的に視認できて、ルーム1内に幻想的な空間を形成でき、それによって入室者を視覚面からリラックスさせることができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、各タイル基板受け4は、隣接する複数の四角形タイル基板5の境界部を跨ぐように配置されるから、スタッドボルト3とともにタイル基板受け4の数を極力少なくして、構造の簡素化を図ることができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、塩タイル6が正六角形の厚板状に形成されているから、多数枚の塩タイル6…を同じ向きとして全体に偏りなく配列できると共に、120°の各角部が他の2枚の塩タイル6,6間の120°開いた間に入り込む形となって、淡い光の映像による高いリラクゼーション効果を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1は本発明に係る塩タイル壁構造を有するリラクゼーションルームの縦断面図、図2は床塩タイル壁、天井塩タイル壁及び側壁塩タイル壁の各塩タイル壁の一部を室内側から見た正面図、図3は床塩タイル壁構造体を示す縦断面図、図4は天井塩タイル壁構造体を示す縦断面図、図5は側壁塩タイル壁構造体を示す縦断面図である。図1に示すリラクゼーションルーム1は、鉄筋コンクリート建物の中に設置されたもので、ルーム本体Aと、これを覆うように設けられたルーム外殻体Bとからなる。
【0013】
ルーム本体Aは、床塩タイル壁構造体a1と、天井塩タイル壁構造体a2と、前後左右の側壁塩タイル壁構造体a3…とからなり、ルーム外殻体Bは、前後左右の側壁b1…と天井材b2とからなる。
【0014】
床塩タイル壁構造体a1では、図3に示すように、取付基枠2の内面(上面)側に、鋼製のスタッドボルト3が前後左右方向に夫々所要間隔おきに突設されると共に発光素子7…が多数個配設され、各スタッドボルト3の先端部に透明プラスチック板からなるタイル基板受け4が螺着され、各タイル基板受け4には透明プラスチック板からなるタイル基板5が当接支持されて接着剤により固定され、このタイル基板5に、精製塩の溶融成形物からなる乳白色半透明の多数の塩タイル6が取り付けられている。
【0015】
上記床塩タイル壁構造体a1につき図3を参照しながら更に詳しく説明すると、取付基枠2は、角型鋼管からなる多数の枠材8を縦横に格子状に枠組みして形成されたもので、スタッドボルト3の下端部が枠材8に挿通されてナット31,32により固定され、このスタッドボルト3の上端部に、透明プラスチック板、例えばポリカーボネートからなる正方形板状のタイル基板受け4の中央部が螺着され、それにより各タイル基板受け4が取付枠17の上面から所定高さに保持されて、取付基枠2とタイル基板受け4に支持されるタイル基板5との間に所要幅の空間部Sが形成される。尚、タイル基板受け4の下側には同じくポリカーボネートからなるワッシャー33が螺着されている。
【0016】
図2から分かるように、タイル基板5は、例えば30〜40枚の塩タイル6が貼り付けられるような大きさの正方形や長方形の四角形に形成されて、互いに端縁どうしを突き合わせるような状態で縦横複数列に配列され、しかしてこれらタイル基板5…が互いに十字状に交差する交差点部分(境界部分)を跨ぐように配置されて、互いに交差する4枚のタイル基板5…のコーナー部分がタイル基板受け4によって支持され、しかして各タイル基板5のコーナー部分は、タイル基板受け4の上面に塗布されたプラスチック用接着剤(図示せず)によってタイル基板受け4に接着固定される。そして塩タイル壁の周辺部では、2枚のタイル基板5,5の突き合わせ端縁(境界部分)を跨ぐように配置されて、互いに交差する2枚のタイル基板5,5の端縁部がタイル基板受け4によって支持され、しかして各タイル基板5の端縁部は、タイル基板受け4の上面に塗布された前記接着剤によってタイル基板受け4に接着固定される。
【0017】
図6及び図7に示すように、各塩タイル6は、表面6aがムラ状の凹凸をなす六角形の厚板状に形成されていて、互いに隣接する塩タイル6…との間に一定幅の目地部9を形成するように配置され、浅い凹面状をなす背面6b側で両面接着剤10を介してタイル基板5に接着固定されている。また図7に示すように、塩タイル6の周端面は室内側へ収束する緩傾斜のテーパに形成されている。そして、塩タイル6…の目地部9には、塩ペーストからなる目地材11が充填されて、乾燥固化されている。
【0018】
塩タイル6の溶融成形物は、精製塩又は天然塩の微粉末を融点(800.4℃)以上、好ましくは810〜830℃に加熱して溶融させ、この加熱溶融物を成形型内に流し込んで冷却固化させたものであり、乳白色半透明で岩塩のように硬い板体になっている。そして、この成形において、成形型の開放面側のタイル表面(使用時の背面2b)が冷却固定時の収縮に伴って浅い凹面状になる一方、成形型の底面側に接するタイル表面(使用時の表面6aには同収縮に伴ってムラ状の凹凸を生じる。尚、このムラ状の凹凸とは、不規則でなだらかな凹凸を意味する。
【0019】
また目地材11に使用する塩ペーストは、精製塩又は天然塩の微粉末に水を加えて混和したものであり、その水分比率によって粘度が異なるが、一般的には粉末/水の重量比3/7〜7/3の範囲、より好適には同重量比4/6〜6/4の範囲とするのがよい。このような塩ペーストは、乾燥固化した際にひび割れることなく強い塩層を形成すると共に、同じ塩材質である塩タイル6に対して高い親和性を示す。
【0020】
発光素子7は、赤色の発光素子と緑色の発光素子と青色の発光素子との3つの発光素子を束ねて構成したもので、図3に示すように、取付基枠2を構成する枠材8上に断熱材12を介して取り付けられた取付部材13に配設されている。
【0021】
上記のように、床塩タイル壁構造体a1は、取付基枠2の内面側に金属製のスタッドボルト3を前後左右方向に夫々所要間隔おきに突設すると共に多数の発光素子7を配設し、各スタッドボルト3の先端部にタイル基板受け4を螺着し、各タイル基板受け4にタイル基板5を当接支持して接着剤により固定し、このタイル基板5に、精製塩又は天然塩の溶融成形物からなる乳白色半透明の多数の塩タイル6を取り付けてなるもので、スタッドボルト3により取付基枠2とタイル基板5との間に所要幅の空間部Sが形成されると共に、タイル基板5及びタイル基板受け4が透明プラスチック板からなるために、発光素子7を様々なパターン及び色合いで発光させることにより、その発光が空間部Sから乳白色半透明の塩タイル6…を有効に通過してリラクゼーションルーム1内から淡い映像として効果的に視認できて、ルーム1内に幻想的な空間を形成でき、それにより入室者を視覚面からリラックスさせることができる。
【0022】
各タイル基板受け4は、図2から分かるように、隣接する複数の四角形タイル基板5の境界部を跨ぐように配置されるから、タイル基板受け4の数を極力少なくして、構造の簡素化を図ることができる。
【0023】
図4は天井塩タイル壁構造体a2を示すものであるが、この天井塩タイル壁構造体a2は、取付基枠2の内面(下面)側に、鋼製のスタッドボルト3を所要間隔おきに下向きに突設すると共に発光素子7…を多数個配設し、各スタッドボルト3の先端部に透明プラスチック板からなるタイル基板受け4を螺着し、各タイル基板受け4には透明プラスチック板からなるタイル基板5を当接支持させて接着剤により固定し、このタイル基板5に多数の塩タイル6を取り付けてなるもので、前述の床塩タイル壁構造体a1を上下逆にしただけで同じ構造であるから、同一部材には同一符号をそして説明を省略する。
【0024】
図5は側壁塩タイル壁構造体a3を示したもので、この側壁塩タイル壁構造体a3も、床塩タイル壁構造体a1及び天井塩タイル壁構造体a2と殆ど同じ構造であって、取付基枠2の内面側に、鋼製のスタッドボルト3を所要間隔おきに水平横向きに突設すると共に発光素子7…を多数個配設し、各スタッドボルト3の先端部に透明プラスチック板からなるタイル基板受け4を螺着し、各タイル基板受け4には透明プラスチック板からなるタイル基板5を当接支持させて接着剤により固定し、このタイル基板5に多数の塩タイル6を取り付けてなるもので、各スタッドボルト3の基端部は、角型鋼管からなる取付基枠2の枠材8を貫通して、ナット31,32で固定されているが、前記床塩タイル壁構造体a1及び天井塩タイル壁構造体a2と同様な構造である。
【0025】
また、図1に概略的に示すように、ルーム外殻体Bは、前後左右の側壁b1…を相互に一体的に組み付けて天井材b2を上から被せることにより箱状に形成したもので、天井材b2は、鉄筋コンクリート建物の天井側スラブ14から天井材吊持手段15によって吊持されている。また、ルーム本体Aは、床塩タイル壁構造体a1と天井塩タイル壁構造体a2と前後左右の側壁塩タイル壁構造体a3…とを相互に一体的に組み付けて形成したもので、天井塩タイル壁構造体a2の取付基枠2は、天井材吊持手段15に付設された複数の吊り具16…によって吊持されている。
【0026】
また、リラクゼーションルーム1のルーム本体Aとルーム外殻体Bとの間には伝熱空間17が形成され、この伝熱空間17に臨むルーム外殻体Bの前後左右側壁b1…及び天井材b2の夫々内側、ならびにルーム本体Aの床塩タイル壁構造体a1の下面側には夫々断熱材18が配設されており、そして前後左右側壁b1…側に配設された断熱材18の下部側から床塩タイル壁構造体a1側に設けられた断熱材18の上面側にわたる領域にパネルヒーター19が配設されている。図示は省略するが、このリラクゼーションルーム1の所要箇所には音響設備が設置されている。
【0027】
このリラクゼーションルーム1においては、ルーム本体Aが床塩タイル壁構造体a1と天井塩タイル壁構造体a2と側壁塩タイル壁構造体a3…とで構成されることから、発光素子7を様々なパターン及び色合い(3原色の混合による)で発光させることによって、その発光が乳白色半透明の塩タイル6を通してルーム内部から淡い映像として視認され、入室者を視覚面からリラックスさせる効果かがある。また、前記伝熱空間17内のパネルヒーター19を駆動した際、伝熱空間17内の空気を介してルーム本体Aに伝わる熱が塩タイル6及び目地部9を通して遠赤外線としてルーム内に放射され、入室者に心地よい温熱効果を与える。しかしてこのリラクゼーションルーム1では、温熱効果と映像効果に加え、音響設備の稼動による音響効果を組み合わせることによって、非常に高いリラクゼーション作用が得られる上に、ルーム本体Aの内壁面全体が塩のみで構成されているため、ルーム内は細菌、ウイルス等が繁殖するおそれのない完全な清潔空間となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る塩タイル壁構造体を有するリラクゼーションルームの縦断面図である。
【図2】床塩タイル壁、天井塩タイル壁及び側壁塩タイル壁の各塩タイル壁の一部を室内側から見た拡大正面図である。
【図3】床塩タイル壁構造体を示す拡大縦断面図である。
【図4】天井塩タイル壁構造体を示す拡大縦断面図である。
【図5】側壁塩タイル壁構造体を示す縦断面図である。
【図6】各塩タイル壁をの一部を更に拡大した拡大正面図である。
【図7】同塩タイル壁の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 リラクゼーションルーム
2 取付基枠
3 スタッドボルト
4 タイル基板受け
5 タイル基板
6 塩タイル
9 目地部
11 目地材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付基枠の内面側に金属製のスタッドボルトが前後左右方向に夫々所要間隔おきに突設されると共に多数の発光素子が配設され、各スタッドボルトの先端部に透明プラスチック板からなるタイル基板受けが螺着され、各タイル基板受けに透明プラスチック板からなるタイル基板が当接支持されて接着剤により固定され、このタイル基板に、精製塩又は天然塩の溶融成形物からなる乳白色半透明の多数の塩タイルが取り付けられてなる塩タイル壁構造。
【請求項2】
各タイル基板受けは隣接する複数の四角形タイル基板の境界部を跨ぐように配置される請求項1に記載の塩タイル壁構造。
【請求項3】
塩タイルは正六角形の厚板状に形成されている請求項1又は2に記載の塩タイル壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−7382(P2010−7382A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169201(P2008−169201)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(503314716)
【Fターム(参考)】