説明

塩化カルシウム抽出を使用する大豆タンパク質単離物の調製(「S703」)

タンパク質含有量が乾燥量基準で少なくとも約60wt%(N×6.25)である大豆タンパク質製品、好ましくは単離物は、塩化カルシウム水溶液を使用して低pH、一般に約1.5〜約5で大豆原料から大豆タンパク質を抽出し、得られる大豆タンパク質水溶液を残留大豆タンパク質源から分離する手順によって形成される。得られる透明な大豆タンパク質水溶液は、希釈し、1.5〜5.0の範囲内にpH調整することができる。溶液は、限外濾過によって濃縮し、透析濾過し、次いで乾燥させて、大豆タンパク質製品を得ることができる。大豆タンパク質製品は、酸性媒体に可溶性であり、透明で熱に安定な溶液を生じ、したがってソフトドリンクおよびスポーツドリンクのタンパク質強化に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35USC119(e)のもとで、2009年6月30日出願の米国仮特許出願第61/213,647号に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、大豆タンパク質製品の調製に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
その譲受人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に援用される、2008年10月21日出願の米国仮特許出願第61/107,112号(7865−373)、2008年12月2日出願の同第61/193,457号(7865−374)、2009年1月26日出願の同第61/202,070号(7865−376)、2009年3月12日出願の同第61/202,553号(7865−383)、2009年7月7日出願の同第61/213,717号(7865−389)、2009年9月3日出願の同第61/272,241号(7865−400)、および2009年10月21日出願の米国特許出願第12/603,087号(7865−415)(米国特許公開第2010-0098818号)において、完全に可溶性であり、低いpH値で透明かつ熱に安定な溶液となり得る大豆タンパク質製品、好ましくは大豆タンパク質単離物の調製が記載されている。この大豆タンパク質製品は、特にソフトドリンクおよびスポーツドリンク、ならびに他の酸性水系のタンパク質強化(protein fortification)に、タンパク質を沈殿させることなく使用することができる。大豆タンパク質製品は、塩化カルシウム水溶液を用いて自然pHで大豆タンパク質源を抽出し、得られる大豆タンパク質水溶液を任意選択により希釈し、大豆タンパク質水溶液のpHをpH約1.5〜約4.4、好ましくは約2.0〜約4.0に調整して、酸性化された透明な大豆タンパク質溶液を生成することにより製造され、大豆タンパク質溶液は、乾燥させる前に、任意選択により濃縮および/または透析濾過(diafiltered)してもよい。
【発明の概要】
【0004】
今回、意外なことに、塩化カルシウムを用いて低いpH値で大豆タンパク質源を抽出することを含む手順によって、タンパク質含有量が乾燥量基準で少なくとも約60wt%(N×6.25)である大豆タンパク質製品を生成できることがわかった。
【0005】
本発明の一態様では、塩化カルシウム水溶液を用いて低いpHで大豆タンパク質源材料を抽出し、得られる大豆タンパク質水溶液を任意選択により希釈し、任意選択により酸性範囲内のpHに調整し、次いで限外濾過および任意選択により透析濾過(diafiltration)を行い、濃縮および任意選択による透析濾過された(diafiltered)大豆タンパク質溶液を得て、これを乾燥させると、大豆タンパク質製品を得ることができる。
【0006】
タンパク質含有量が乾燥量基準で少なくとも約60wt%(N×6.25)である、本明細書で提供する大豆タンパク質製品は、酸性pH値で可溶性となって、透明で熱に安定なその水溶液をもたらす。大豆タンパク質製品は、特にソフトドリンクおよびスポーツドリンク、ならびに他の水系のタンパク質強化(protein fortification)に、タンパク質を沈殿させることなく使用することができる。大豆タンパク質製品は、タンパク質含有量が乾燥量基準で少なくとも約90wt%、好ましくは少なくとも約100wt%(N×6.25)である、単離物であることが好ましい。
【0007】
本発明の一態様によれば、大豆タンパク質含有量が乾燥重量基準で少なくとも約60wt%(N×6.25)である大豆タンパク質製品の製造方法が提供され、この方法は、
(a)カルシウム塩水溶液、一般に塩化カルシウム溶液を用いて低いpH、一般に約1.5〜約5.0で大豆タンパク質源を抽出して、タンパク質源から大豆タンパク質を可溶化させ、大豆タンパク質水溶液を生成するステップ、
(b)大豆タンパク質水溶液を残留大豆タンパク質源から分離するステップ、
(c)大豆タンパク質水溶液を任意選択により希釈するステップ、
(d)任意選択により、タンパク質水溶液のpHを約1.5〜約5.0、好ましくは約1.5〜約4.4、より好ましくは約2.0〜約4.0の範囲内、かつ抽出のpHとは異なる値に調整するステップ、
(e)任意選択により、選択的な膜技術を使用して、イオン強度を実質的に一定に保ちながら大豆タンパク質水溶液を濃縮するステップ、
(f)濃縮された大豆タンパク質溶液を任意選択により透析濾過する(diafiltering)ステップ、および
(g)濃縮および透析濾過(diafiltered)がなされた大豆タンパク質溶液を任意選択により乾燥させるステップを含む。
【0008】
大豆タンパク質製品は、タンパク質含有量が乾燥量基準で少なくとも約90wt%、好ましくは少なくとも約100wt%(N×6.25)である、単離物であることが好ましい。
【0009】
本明細書は、主に大豆タンパク質単離物の製造を言及しているが、本明細書に記載の濃縮および/または透析濾過(diafiltration)ステップを操作して、純度のより低い大豆タンパク質製品、たとえば、タンパク質含有量が少なくとも約60wt%であるが、単離物と実質的に同様の特性を有する大豆タンパク質濃縮物を製造することもできる。
【0010】
本発明の新規な大豆タンパク質製品は、それを水に溶解させることにより水性のソフトドリンクまたはスポーツドリンクが生成される粉末ドリンクとブレンドすることができる。そうしたブレンド品を粉末飲料とすることができる。
【0011】
本明細書で提供する大豆タンパク質製品は、酸性pH値で透明性が高く、そうしたpH値で熱に安定なその水溶液として提供することができる。
【0012】
本発明の別の態様では、低pHで熱に安定である、本明細書で提供する大豆製品の水溶液が提供される。水溶液は飲料とすることができ、その飲料は、大豆タンパク質製品が完全に可溶性で透明である透明な飲料でもよいし、または大豆タンパク質製品によって乳白度が増大しない不透明な飲料でもよい。大豆タンパク質製品は、pH約7で良好な溶解度も有する。pH約6〜約8などのほぼ中性のpHで調製した大豆タンパク質製品の水溶液を飲料とすることもできる。
【0013】
本明細書の方法に従って製造した大豆タンパク質製品は、大豆タンパク質単離物に特徴的な豆の風味を伴わず、酸性媒体のタンパク質強化(protein fortification)だけに適するのではなく、限定はしないが、加工食品および飲料のタンパク質強化(protein fortification)、油の乳化、焼いた食品中のボディー形成剤(body former)および気体を取り込む製品中の発泡剤としての用途を含めた、従来の広範なタンパク質単離物の用途において使用することができる。加えて、大豆タンパク質製品は、食肉類似品において有用なタンパク質繊維にすることができ、また卵白がつなぎとして使用される食品中に卵白代用品または増量剤として使用することができる。大豆タンパク質製品は、栄養補助食品中に使用することもできる。大豆タンパク質製品の他の使用例は、ペットフード、動物飼料、工業および化粧品への適用、ならびにパーソナルケア製品にある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の一般的な説明
大豆タンパク質製品を提供するプロセスの最初のステップは、大豆タンパク質源から大豆タンパク質を可溶化することを含む。大豆タンパク質源は、大豆、または大豆ミール、大豆フレーク、大豆グリッツ、および大豆粉を含めるがこれに限らない、大豆の加工処理から得られる任意の大豆製品もしくは大豆副産物でよい。大豆タンパク質源は、全脂形態、部分脱脂形態、または完全脱脂形態で使用することができる。大豆タンパク質源がかなりの量の脂肪を含有する場合、そのプロセスの間に油分除去ステップが必要となるのが一般的である。大豆タンパク質源から回収される大豆タンパク質は、大豆中に自然に存在するタンパク質でもよいし、またはそのタンパク質性材料(proteinaceous material)は、遺伝子操作によって改変されているが、自然のタンパク質に特徴的な疎水性もしくは極性の性質を有するタンパク質でもよい。
【0015】
大豆タンパク質源材料からのタンパク質の可溶化は、他のカルシウム塩の溶液を使用してもよいが、塩化カルシウム溶液を使用して実施するのが最も好都合である。加えて、マグネシウム塩などの他のアルカリ土類金属化合物を使用してもよい。さらに、大豆タンパク質源からの大豆タンパク質の抽出は、塩化ナトリウムなどの別の塩溶液と組み合わせたカルシウム塩溶液を使用して実施することができる。加えて、大豆タンパク質源からの大豆タンパク質の抽出を、水、または塩化ナトリウムなどの他の塩溶液を使用して実施し、抽出ステップで生成された大豆タンパク質水溶液に塩化カルシウムを引き続いて加えることもできる。次いで、塩化カルシウムが加えられて生成した沈殿を、後続の加工処理の前に除去する。
【0016】
カルシウム塩溶液の濃度が増大するにつれて、大豆タンパク質源からのタンパク質の可溶化の度合いは、最大値に到達するまで、最初のうちは増加する。その後塩濃度が増加しても、可溶化するタンパク質総量は増加しない。最大のタンパク質可溶化を引き起こすカルシウム塩溶液の濃度は、関係する塩に応じて変化する。約1.0M未満の濃度値、より好ましくは約0.10M〜約0.15Mの値を利用することが通常は好ましい。
【0017】
回分法では、タンパク質の可溶化は、約1℃〜約100℃、好ましくは約15°〜約35℃の温度で実施し、好ましくは撹拌を加えて可溶化時間を短縮し、通常は約1〜約60分となる。可溶化は、タンパク質が大豆タンパク質源から実質的に実現可能なだけ多く抽出されるように実施して、全体としての製品収率が高くなるようにすることが好ましい。
【0018】
連続法では、大豆タンパク質源からの大豆タンパク質の抽出を、大豆タンパク質源から大豆タンパク質を継続的に抽出することを可能にするようにして実施する。一実施形態では、大豆タンパク質源をカルシウム塩溶液と連続的に混合し、本明細書に記載のパラメータに従う所望の抽出を行うのに十分な長さのパイプもしくは導菅によって、十分な流量で、十分な滞留時間をかけて混合物を運搬する。このような連続的な手順では、可溶化ステップは、約10分までの時間で急速に実施し、タンパク質が大豆タンパク質源から実質的に実現可能なだけ多く抽出されるように可溶化を実施することが好ましい。連続的手順における可溶化は、約1℃と約100℃の間、好ましくは約15℃と約35℃の間の温度で実施する。
【0019】
抽出は一般に、pH約1.5〜約5.0で実施する。抽出系(大豆タンパク質源およびカルシウム塩溶液)のpHは、好都合な任意の食品グレードの酸、通常は塩酸またはリン酸を使用することにより、抽出ステップに所望される約1.5〜約5.0の範囲内の任意の値に調整することができる。
【0020】
可溶化ステップの際の、カルシウム塩溶液中の大豆タンパク質源の濃度は、広範囲に変化し得る。典型的な濃度値は、約5〜約15%w/vである。
【0021】
カルシウム塩水溶液を用いたタンパク質抽出ステップは、大豆タンパク質源中に存在し得る脂肪を可溶化する付加的な効果を有し、その結果、水相に脂肪が存在するようになる。
【0022】
抽出ステップから得られるタンパク質溶液は、一般に、約5〜約50g/L、好ましくは約10〜約50g/Lのタンパク質濃度を有する。
【0023】
カルシウム塩水溶液は、酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤は、亜硫酸ナトリウムやアスコルビン酸などの好都合な任意の酸化防止剤でよい。用いる酸化防止剤の量は、溶液の約0.01〜約1wt%で変化しても良く、約0.05wt%が好ましい。酸化防止剤は、タンパク質溶液中のフェノール類の酸化を抑えるのに役立つ。
【0024】
抽出ステップから得られる水相は、次いで、デカンター遠心分離に続いてディスク遠心分離および/または濾過を用いて残留大豆タンパク質源材料を除去するなどの好都合な任意の方法で、残留大豆タンパク質源から分離することができる。分離された残留大豆タンパク質源は、乾燥させて処分することができる。あるいは、分離された残留大豆タンパク質源を、従来の等電沈殿手順またはそうした残存タンパク質を回収する他の任意の従来手順などによって加工処理して、いくらかの残存タンパク質を回収してもよい。
【0025】
その譲受人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に援用される米国特許第5,844,086号および第6,005,076号に記載されているように、大豆タンパク質源がかなりの量の脂肪を含有する場合、分離した水性タンパク質に、そこに記載の脱脂ステップを行うことができる。あるいは、分離したタンパク質水溶液の脱脂は、他の任意の従来手順によって実現してもよい。
【0026】
大豆タンパク質水溶液は、粉末活性炭や粒状活性炭などの吸着剤で処理して、着色および/または臭気化合物を除去することができる。こうした吸着剤処理は、好都合な任意の条件下、一般には分離したタンパク質水溶液の周囲温度で実施することができる。粉末活性炭については、約0.025%〜約5%w/v、好ましくは約0.05%〜約2%w/vの量を用いる。吸着剤は、濾過などの好都合な任意の手段によって、大豆タンパク質溶液から除去することができる。
【0027】
得られる大豆タンパク質水溶液は、大豆タンパク質水溶液の導電率を一般に約90mSより低い値、好ましくは約4〜約31mSに下げるために、一般に約0.5〜約10倍容(volumes)、好ましくは約1〜約2倍容(volumes)の水で希釈することができる。
【0028】
大豆タンパク質溶液と混合する水は、温度が約2°〜約70℃、好ましくは約10°〜約50℃、より好ましくは約20°〜約30℃であるものでよい。
【0029】
任意選択により希釈された大豆タンパク質溶液は、適切な任意の食品グレードの酸、たとえば塩酸やリン酸、または食品グレードのアルカリ、通常は水酸化ナトリウムを必要に応じて加えることにより、抽出pHとは異なるが、なお約1.5〜約5.0、好ましくは約1.5〜約4.4、より好ましくは約2.0〜約4.0の範囲内の値にpHを調整することができる。
【0030】
希釈および任意選択によるpH調整がなされた大豆タンパク質溶液は、一般には約95mSより低い、好ましくは約4〜約36mSである導電率を有する。
【0031】
大豆タンパク質水溶液は、熱処理に供して、抽出ステップの際に大豆タンパク質源材料から抽出された結果としてこのような溶液中に存在する、トリプシン阻害剤などの熱に不安定な抗栄養因子(anti−nutritional factors)を不活性化することができる。このような加熱ステップは、微生物負荷(microbial load)を減らすという付加的な利益も、もたらす。一般に、タンパク質溶液を、約10秒〜約60分間、好ましくは約30秒〜約5分間、約70°〜約160℃、好ましくは約80°〜約120℃、より好ましくは約85℃〜約95℃の温度に加熱する。次いで、熱処理した酸性化大豆タンパク質溶液を、以下に記載の、その先の加工処理に向けて約2℃〜約60℃、好ましくは約20°〜約35℃の温度に冷却することができる。
【0032】
得られる大豆タンパク質水溶液をそのまま乾燥させると、大豆タンパク質製品を生成することができる。不純物含有量が減少し、塩含有量が低減されている大豆タンパク質単離物を提供するために、大豆タンパク質水溶液を乾燥前に加工処理することもできる。
【0033】
大豆タンパク質水溶液を濃縮して、そのイオン強度を実質的に一定に保ちながら、そのタンパク質濃度を増大させることもできる。そうした濃縮は、一般に、タンパク質濃度が約50〜約300g/L、好ましくは約100〜約200g/Lである、濃縮された大豆タンパク質溶液が得られるように実施する。
【0034】
濃縮ステップの前に、大豆タンパク質水溶液を最終精製(polishing)作業に供して、上述の分離ステップで除去されていない大豆原料の残留微粉(residual soy source material fines)を除去することができる。このような最終精製(polishing)ステップは、濾過など、好都合な任意の方法で行うことができる。
【0035】
濃縮ステップは、異なる膜材料および形状を考慮して、約3,000〜約1,000,000ダルトン、好ましくは約5,000〜約100,000ダルトンなどの適切な分画分子量(molecular weight−cutoff)を有する中空糸膜やスパイラル型膜(spiral−wound membranes)などの膜を使用する限外濾過や透析濾過(diafiltration)などの好都合な任意の選択的膜技術を用いるなど、回分作業または連続作業にかなう好都合な任意の方法で実施することができ、連続作業では、タンパク質水溶液が膜を通過しているときに、所望の程度の濃縮が可能な寸法にする(dimensioned)。
【0036】
よく知られているように、限外濾過および同様の選択的膜技術は、低分子量の種がそれを通過するのを可能にするが、高分子量の種が通過するのを妨げる。低分子量の種には、食品グレードの塩のイオン種だけでなく、炭水化物、色素、低分子量タンパク質、およびそれ自体は低分子量タンパク質であるトリプシン阻害剤などの抗栄養因子(anti−nutritional factors)といった、供給源材料から抽出された低分子量材料も含まれる。膜の分画分子量(molecular weight−cutoff)は、異なる膜材料および形状を考慮して、通常、異物の通過を可能にしながらも溶液中にかなりの割合のタンパク質が確実に保持されるように選択する。
【0037】
濃縮された大豆タンパク質溶液は、次いで、水または希食塩水を使用して、透析濾過(diafiltration)ステップに供することができる。透析濾過(diafiltration)溶液は、その自然pH、または透析濾過する(diafiltered)タンパク質溶液と等しいpH、またはその間の任意のpH値でよい。こうした透析濾過(diafiltration)は、約2〜約40倍容(volumes)の透析濾過(diafiltration)溶液、好ましくは約5〜約25倍容(volumes)の透析濾過(diafiltration)溶液を使用して行うことができる。透析濾過(diafiltration)作業では、透過液(permeate)と共に膜に通すことにより、大豆タンパク質水溶液からさらなる量の異物を除去する。これによって、タンパク質水溶液は精製され、またその粘度も低下する。透析濾過(diafiltration)操作は、透過液(permeate)中にかなりの更なる量の異物もしくは目に見える着色が存在しなくなるまで、または保持液(retentate)が十分に精製されて、乾燥したとき、大豆タンパク質単離物のタンパク質含有量が乾燥量基準で少なくとも約90wt%(N×6.25)になるまで、実施することができる。このような透析濾過(diafiltration)は、濃縮ステップと同じ膜を使用して実施することができる。しかし、所望であれば、異なる膜材料および形状を考慮して、透析濾過(diafiltration)ステップは、分画分子量(molecular weight−cutoff)が約3,000〜約1,000,000ダルトン、好ましくは約5,000〜約100,000ダルトンの範囲にある膜などの、分画分子量(molecular weight−cutoff)の異なる別の膜を使用して、実施することができる。
【0038】
あるいは、透析濾過(diafiltration)ステップは、濃縮する前にタンパク質水溶液に、または部分的に濃縮したタンパク質水溶液に適用することもできる。透析濾過(diafiltration)はまた、濃縮過程の間のいくつもの時点で適用することができる。透析濾過(diafiltration)を濃縮前に、または部分的に濃縮した溶液に適用するとき、得られる透析濾過された(diafiltered)溶液を、次いでさらに濃縮することができる。タンパク質溶液を濃縮しながら、何回も透析濾過する(diafiltering)ことにより実現される粘度の低下によって、完全に濃縮されたより高い最終タンパク質濃度の実現が可能になり得る。これにより、乾燥させる材料の体積が縮小する。
【0039】
本明細書では、濃縮ステップおよび透析濾過(diafiltration)ステップは、引き続いて回収される大豆タンパク質製品が乾燥量基準で約90wt%未満のタンパク質(N×6.25)、たとえば乾燥量基準で少なくとも約60wt%のタンパク質(N×6.25)を含有するようにして実施することができる。大豆タンパク質水溶液を部分的に濃縮および/または部分的に透析濾過(diafiltering)することにより、異物を部分的にだけ除去することが可能である。次いでこのタンパク質溶液を乾燥させて、純度が低めの大豆タンパク質製品を得ることができる。大豆タンパク質製品は、それでも酸性条件下で透明なタンパク質溶液とすることができる。
【0040】
透析濾過(diafiltration)ステップの少なくとも一部分の間、透析濾過(diafiltration)媒体中に酸化防止剤が存在してもよい。酸化防止剤は、亜硫酸ナトリウムやアスコルビン酸などの好都合な任意の酸化防止剤でよい。透析濾過(diafiltration)媒体中に用いる酸化防止剤の量は、用いる材料に応じて決まり、約0.01〜約1wt%で変化してもよく、約0.05wt%であることが好ましい。酸化防止剤は、濃縮された大豆タンパク質溶液中に存在するフェノール類の酸化を抑えるのに役立つ。
【0041】
濃縮ステップおよび任意選択による透析濾過(diafiltration)ステップは、好都合な任意の温度、一般には約2℃〜約60℃、好ましくは約20℃〜約35℃で、所望の程度の濃縮および透析濾過(diafiltration)がなされる期間実施することができる。使用する温度および他の条件は、ある程度、膜処理を行うのに使用する膜装置、溶液の所望のタンパク質濃度、および異物を透過液(permeate)へと除去する効率に応じて決まる。
【0042】
大豆には2種の主なトリプシン阻害剤、すなわち、分子量がおよそ21,000ダルトンの熱に不安定な分子であるクニッツ型阻害剤(Kunitz inhibitor)、および分子量が約8,000ダルトンの熱により安定な分子であるボーマンバーク型阻害剤(Bowman−Birk inhibitor)が存在する。最終大豆タンパク質製品中のトリプシン阻害活性のレベルは、種々の工程変数を操作することにより制御できる。
【0043】
上述のように、大豆タンパク質水溶液の熱処理を使用して、熱に不安定なトリプシン阻害剤を不活性化することができる。部分的に濃縮または完全に濃縮された大豆タンパク質溶液を熱処理しても、熱に不安定なトリプシン阻害剤を不活性化することができる。
【0044】
加えて、濃縮および/または透析濾過(diafiltration)ステップを、トリプシン阻害剤を他の異物と共に透過液(permeate)中に除去するのに有利な方法で実施することもできる。トリプシン阻害剤の除去は、孔径のより大きい(約30,000〜約1,000,000ダルトンなど)膜を使用し、膜を高めの温度(約30℃〜約60℃)で操作し、より多い体積の透析濾過(diafiltration)媒体(約20〜約40倍容(volumes))を用いることにより促進される。
【0045】
低いpH(1.5〜3.0)のタンパク質溶液を抽出および/または膜処理することにより、より高いpH(3.0〜5.0)の溶液を処理するのに比べて、トリプシン阻害活性を低下させることができる。タンパク質溶液をpH範囲の下限で濃縮および透析濾過(diafiltered)するとき、保持液(retentate)のpHを上げてから乾燥させることが望ましい場合もある。濃縮および透析濾過(diafiltered)タンパク質溶液のpHは、水酸化ナトリウムなどの好都合な任意の食品グレードのアルカリを加えることにより、所望の値、たとえばpH3に上げることができる。乾燥前に保持液(retentate)のpHを下げることが所望される場合、塩酸やリン酸などの好都合な任意の食品グレードの酸を加えてそれを行うことができる。
【0046】
さらに、大豆材料を、トリプシン阻害剤のジスルフィド結合を破壊または再配置(rearrange)させる還元剤にさらすことにより、トリプシン阻害活性の低減を実現することができる。適切な還元剤として、亜硫酸ナトリウム、システイン、およびN−アセチルシステインが挙げられる。
【0047】
こうした還元剤は、全過程の様々な段階で加えることができる。還元剤は、抽出ステップにおいて大豆タンパク質源材料と共に加えてもよいし、残留大豆タンパク質源材料を除去した後に、透明な大豆タンパク質水溶液に加えてもよいし、透析濾過(diafiltration)前もしくは後に、濃縮タンパク質溶液に加えてもよいし、または乾燥させた大豆タンパク質製品とドライブレンドしてもよい。還元剤の添加は、上述のような熱処理ステップおよび膜処理ステップと組み合わせることもできる。
【0048】
濃縮タンパク質溶液中に活性トリプシン阻害剤を保持することが所望される場合、それは、熱処理ステップを省くもしくはその強度を弱め、還元剤を利用せず、濃縮および透析濾過(diafiltration)ステップをpH範囲の上限(3.0〜5.0)で実施し、孔径のより小さい濃縮および透析濾過(diafiltration)膜を利用し、膜をより低い温度で操作し、より少ない体積の透析濾過(diafiltration)媒体を用いることにより実現できる。
【0049】
濃縮および任意選択により透析濾過された(diafiltered)タンパク質溶液は、必要であれば、米国特許第5,844,086号および第6,005,076号に記載されているように、さらなる脱脂作業に供することができる。あるいは、濃縮および任意選択により透析濾過された(diafiltered)タンパク質溶液の脱脂は、他の任意の従来手順によって実現することができる。
【0050】
濃縮および透析濾過された(diafiltered)タンパク質水溶液は、粉末活性炭や粒状活性炭などの吸着剤で処理して、着色および/または臭気化合物を除去することができる。このような吸着剤処理は、好都合な任意の条件下、一般には濃縮タンパク質溶液の周囲温度で実施することができる。粉末活性炭については、約0.025%〜約5%w/v、好ましくは約0.05%〜約2%w/vの量を用いる。吸着剤は、濾過などの好都合な任意の手段によって、大豆タンパク質溶液から除去することができる。
【0051】
濃縮および透析濾過された(diafiltered)大豆タンパク質水溶液は、噴霧乾燥や凍結乾燥などの好都合な任意の技術によって乾燥させることができる。乾燥前に大豆タンパク質溶液に対して低温殺菌ステップを実施して、微生物負荷(microbial load)を減らすことができる。そのような低温殺菌ステップは、望ましい任意の低温殺菌条件下で実施することができる。一般に、濃縮および任意選択による透析濾過された(diafiltered)大豆タンパク質溶液を、約30秒〜約60分間、好ましくは約10分〜約15分間、約55°〜約70℃、好ましくは約60°〜約65℃の温度に加熱する。次いで、低温殺菌し、濃縮および透析濾過した(diafiltered)大豆タンパク質溶液を、乾燥に備えて好ましくは約25°〜約40℃の温度に冷却する。
【0052】
乾燥大豆タンパク質製品は、タンパク質含有量が、乾燥量基準で約60wt%(N×6.25)を超えている。乾燥大豆タンパク質製品は、タンパク質が乾燥量基準で約90wt%を超えている、好ましくは少なくとも約100wt%である(N×6.25)高タンパク質含有量の単離物であることが好ましい。
【0053】
本明細書で製造される大豆タンパク質製品は、酸性の水性環境中で可溶性であるために、製品は、炭酸および非炭酸両方の飲料に混ぜて、そのタンパク質強化(protein fortification)を実現するのに理想的となる。そのような飲料は、約2.5〜約5の範囲の広範な酸性pH値を有する。本明細書で提供する大豆タンパク質製品は、そうした飲料に好都合な任意の量で、たとえば1杯あたり少なくとも約5gの大豆タンパク質を加えて、その飲料のタンパク質強化(protein fortification)を実現することができる。加えた大豆タンパク質製品は、飲料に溶解し、熱処理の後でさえ飲料の透明性を損なわない。大豆タンパク質製品は、水に溶解させて飲料を再形成する(reonstitution)前に、乾燥飲料とブレンドすることもできる。飲料中に存在する成分によって、組成物が飲料に溶解したままとなる能力に悪影響を及ぼす場合、飲料の通常の配合を、本発明の組成物が許容されるように変更することが必要となる場合がある。
【実施例】
【0054】

例1
この例では、塩化カルシウム溶液を用いた低pHでの抽出を利用する、透明で熱に安定なタンパク質溶液の調製を例示する。
【0055】
脱脂大豆フレーク(soy white flake)(10g)を0.15M塩化カルシウム溶液(100ml)と混合し、サンプルのpHをHClで直ちに4.8および1.5に調整した。磁気撹拌子を使用しながら、サンプルを室温で30分間、抽出した。30分の抽出の間、サンプルのpHをモニターし、2回調整した。10,200gで10分間の遠心分離によって、廃ミール(spent meal)から抽出物を分離し、25μm孔径の濾紙を使用する濾過によって、濃縮液(centrates)をさらに透明にした。透過モードで操作したHunterLab ColorQuest XEを使用し、濾液の透明性を測定して、ヘイズ百分率の読み値を得た。次いでサンプルを1倍容(volume)の逆浸透精製水で希釈し、再びヘイズレベルを測定した。次いで、必要に応じてHClまたはNaOHを使用して、希釈したサンプルのpHを3に調整した。次いで、pH調整したサンプルのヘイズレベルを分析した。次いで、サンプルを30秒間95℃に熱処理し、氷水中で直ちに室温に冷却し、ヘイズレベルを再分析した。
【0056】
様々なサンプルについて求めたヘイズ値を表1および2に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
表1および表2に示した結果からわかるように、最初の濾液はやや濁っていたが、しかし、より細かいフィルターを利用することにより、透明性が向上した。1体積(volume)の水で希釈すると、pH1.5のサンプルの透明性は向上したが、pH4.8のサンプルでは沈殿が生じた。希釈したサンプルのpHを3に調整することで、もともとpH4.8であったサンプルには良好な透明性が与えられた一方、もともとpH1.5であったサンプルは、ことによるとわずかな濁りを伴った。熱処理後、両方のサンプルは透明であるとみなされた。
【0060】
例2
この例では、本発明の一実施形態に従う大豆タンパク質単離物の調製を例示する。
【0061】
周囲温度の0.15M塩化カルシウム溶液200Lに、最小限の熱処理を施した脱脂大豆粉20kgを加え、30分間撹拌して、タンパク質水溶液を得た。粉が塩化カルシウム溶液に分散した直後に、希HClを加えて系のpHを3に調整した。30分の抽出過程の間、pHをモニターし、定期的に3に修正した。残留大豆粉を遠心分離によって除去して、タンパク質含有量が3.37重量%であるタンパク質溶液174Lを得た。次いで、タンパク質溶液を174Lの逆浸透精製水と混合して、pHを3に修正した。次いでこの溶液を濾過によって最終精製して(polished)、タンパク質含有量が1.21重量%である濾過されたタンパク質溶液385Lを得た。
【0062】
濾過されたタンパク質溶液を、分画分子量(molecular weight cutoff)が5,000ダルトンであるPVDF膜で濃縮して、体積を25Lに減らした。次いで、濃縮タンパク質溶液を、125Lの逆浸透精製水を用いて透析濾過した(diafiltered)。得られる透析濾過した(diafiltered)、濃縮タンパク質溶液は、タンパク質含有量が14.51重量%であり、濾過されたタンパク質溶液の81.3wt%の収率に相当した。次いで、透析濾過した(diafiltered)濃縮タンパク質溶液を乾燥させて、タンパク質含有量が乾燥量基準で99.18%(N×6.25)であることが判明した製品を得た。製品をS005−A13−09A S703と称した。
【0063】
S005−A13−09A S703の3.2wt%タンパク質溶液を水中に調製し、透過モードで操作したHunterLab Color Quest XE機器を使用して、色および透明性を評価した。溶液のpHをpH計で測定した。
【0064】
pH、色、および透明性の値を、以下の表3に記載する。
【0065】
【表3】

【0066】
表3からわかるように、S703の水溶液は、半透明であり、透明でない。このサンプルにおける濁りが比較的高いレベルであった結果、L値が予想よりも多少低くなった。
【0067】
乾燥粉末の色も、HunterLab Color Quest XE機器を用い、反射モードで評価した。色値を以下の表4に記載する。
【0068】
【表4】

【0069】
表4からわかるように、乾燥製品は、非常に淡い色であった。
【0070】
例3:
この例には、例2の方法によって作製した大豆タンパク質単離物(S703)の水中での熱安定性の評価を含む。
【0071】
S005−A13−09A S703の2%w/vタンパク質水溶液を作製し、pHを3に調整した。この溶液の透明性をHunterLab Color Quest XE機器によるヘイズ測定によって評価した。次いで、溶液を95℃に加熱し、30秒間この温度に保ち、次いで氷浴で直ちに室温に冷却した。次いで、熱処理した溶液の透明性を再び測定した。
【0072】
加熱前後のタンパク質溶液の透明性を、以下の表5に記載する。
【0073】
【表5】

【0074】
表5にある結果からわかるように、S005−A13−09A S703の最初の溶液は、かなり濁りがあったことが判明した。しかし、溶液は熱に安定であり、実際にヘイズレベルは熱処理によって多少低下した。
【0075】
例4
この例には、例2の方法によって作製した大豆タンパク質単離物(S703)の水への溶解度の評価を含む。溶解度は、タンパク質溶解度(タンパク質法と称する、Morrら、J. Food Sci. 50:1715-1718の手順の変更版)および総製品溶解度(ペレット法と称する)に基づき試験した。
【0076】
0.5gのタンパク質を供給するのに十分なタンパク質粉末をビーカーに量り入れ、次いで少量の逆浸透(RO)精製水を加え、滑らかなペーストが生じるまで混合物を撹拌した。次いで追加の水を加えて体積をおよそ45mlとした。次いで、磁気撹拌子を使用して、ビーカーの中身を60分間ゆっくりと撹拌した。タンパク質が分散した直後にpHを測定し、希NaOHまたはHClで適切なレベル(2、3、4、5、6または7)に調整した。自然pHでもサンプルを調整した。pH調整したサンプルについては、60分の撹拌の間にpHを測定し、2回修正した。60分撹拌した後、RO水を加えてサンプルの総体積を50mlとし、1%w/vのタンパク質分散液を得た。Leco FP528窒素測定装置を使用して、分散液のタンパク質含有量を測定した。次いで分散液のアリコート(20ml)を、100℃のオーブンで終夜乾燥させ、次いでデシケーター中で冷却した、予め秤量した遠心分離管に移し、管にふたをした。サンプルを7800gで10分間遠心分離し、これによって不溶性材料が沈降し、清澄な上清み液が得られた。上清み液のタンパク質含有量をLeco分析によって測定し、次いで上清み液および管のふたを廃棄し、ペレット材料を100℃にセットしたオーブンで終夜乾燥させた。翌朝、管をデシケーターに移し、冷ました。乾燥ペレット材料の重量を記録した。使用する粉末の重量に((100−粉末の水分含量(%))/100)を乗じることにより、最初のタンパク質粉末の乾燥重量を算出した。次いで、製品の溶解度を異なる2通りの方法で算出した。
1)溶解度(タンパク質法)(%)=(上清み液中のタンパク質%/最初の分散液中のタンパク質%)×100
2)溶解度(ペレット法)(%)=(1−(乾燥不溶性ペレット材料の重量/((分散液20mlの重量/分散液50mlの重量)×乾燥タンパク質粉末の初期重量)))×100
例1で作製したタンパク質単離物の水中(1%タンパク質)での自然pH値を表6に示す。
【0077】
【表6】

【0078】
得られた溶解度の結果を、以下の表7および表8に記載する。
【0079】
【表7】

【0080】
【表8】

【0081】
表7および表8の結果からわかるように、S703製品は、2、3および7のpH値、ならびに自然pHで高度に可溶性であった。pH4では溶解度がわずかに低めであった。
【0082】
例5
この例には、例2の方法によって作製した大豆タンパク質単離物(S703)の水中での透明性の評価を含む。
【0083】
例3に記載のとおりに調製した1%w/vのタンパク質溶液の透明性を、600nmでの吸光度を測定することにより評価したが、低い吸光度スコアほど、透明性が高いことを示す。サンプルをHunterLab ColorQuest XE機器において透過性モードで分析すると、透明性の別の尺度であるヘイズ百分率の読み値も得られた。
【0084】
透明性の結果を、以下の表9および表10に記載する。
【0085】
【表9】

【0086】
【表10】

【0087】
表9および表10の結果からわかるように、S703の溶液は、pH2〜3で透明〜わずかに濁ったものであった。わずかに濁った溶液は、pH7でも得られた。
【0088】
例6
この例には、例2の方法によって作製した大豆タンパク質単離物(S703)のソフトドリンク(Sprite)およびスポーツドリンク(Orange Gatorade)への溶解度の評価を含む。溶解度は、飲料にタンパク質を加えてpHを修正せずに求め、またタンパク質で強化した飲料のpHをもとの飲料のレベルに調整して再び求めた。
【0089】
pHを修正せずに溶解度を評価したとき、1gのタンパク質を供給するのに十分な量のタンパク質粉末をビーカーに量り入れ、少量の飲料を加え、滑らかなペーストが生じるまで撹拌した。追加の飲料を加えて体積を50mlとし、次いで溶液を磁気撹拌子で60分間ゆっくりと撹拌して、2%w/vのタンパク質分散液を得た。LECO FP528窒素測定装置を使用してサンプルのタンパク質含有量を分析し、次いでタンパク質含有飲料のアリコートを7800gで10分間遠心分離し、上清み液のタンパク質含有量を測定した。
溶解度(%)=(上清み液中のタンパク質%/最初の分散液中のタンパク質%)×100
pHを修正して溶解度を評価したとき、タンパク質を加えていないソフトドリンク(Sprite)(3.39)およびスポーツドリンク(Orange Gatorade)(3.19)のpHを測定した。1gのタンパク質を供給するのに十分な量のタンパク質粉末をビーカーに量り入れ、少量の飲料を加え、滑らかなペーストが生じるまで撹拌した。追加の飲料を加えて体積をおよそ45mlとし、次いで溶液を磁気撹拌子で60分間ゆっくりと撹拌した。タンパク質含有飲料のpHを測定し、次いで、必要に応じてHClまたはNaOHを用い、タンパク質なしのもとのpHに調整した。次いで、各溶液の総体積を追加の飲料で50mlとし、2%w/vのタンパク質分散液を得た。LECO FP528窒素測定装置を使用してサンプルのタンパク質含有量を分析し、次いでタンパク質含有飲料のアリコートを7800gで10分間遠心分離し、上清み液のタンパク質含有量を測定した。
溶解度(%)=(上清み液中のタンパク質%/最初の分散液中のタンパク質%)×100
得られた結果を以下の表11に記載する。
【0090】
【表11】

【0091】
表11の結果からわかるように、S703は、SpriteおよびOrange Gatoradeに高度に可溶性であった。S703は、酸性化された製品であるので、タンパク質を加えても、飲料pHにはほとんど影響が及ばなかった。
【0092】
例7
この例には、例2の方法によって作製した大豆タンパク質単離物(S703)のソフトドリンクおよびスポーツドリンク中での透明性の評価を含む。
【0093】
例6でソフトドリンク(Sprite)およびスポーツドリンク(Orange Gatorade)中に調整した2%w/vのタンパク質分散液の透明性を、例5に記載の方法を使用して評価した。測定を実施する前に、600nmでの吸光度測定値について、分光光度計で適切な飲料をブランク測定した(blanked)。
【0094】
得られる結果を以下の表12および表13に記載する。
【0095】
【表12】

【0096】
【表13】

【0097】
表12および表13の結果からわかるように、S703について得られたSpriteおよびOrange Gatoradeへの良好な溶解度の結果は、これらの飲料の透明性にはつながらなかった。実際、得られる溶液はかなり濁っていた。
【0098】
開示の概要
この開示を要約すると、本発明は、塩化カルシウム水溶液を使用して大豆タンパク質源材料を低pHで抽出することに基づく、酸性媒体に可溶性である大豆タンパク質単離物の製造方法を提供する。本発明の範囲内で変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆タンパク質含有量が乾燥重量基準で少なくとも約60wt%(N×6.25)である大豆タンパク質製品の製造方法であって、
(a)カルシウム塩水溶液を用いてpH約1.5〜約5で大豆タンパク質源を抽出して、大豆タンパク質源から大豆タンパク質を可溶化させ、大豆タンパク質水溶液を生成するステップと、
(b)残留大豆タンパク質源から大豆タンパク質水溶液を分離するステップと
を含む方法。
【請求項2】
濃度が約1.0M未満である塩化カルシウム水溶液を使用して前記抽出ステップを実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩化カルシウム水溶液が約0.10〜約0.15Mの濃度を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出ステップを約15°〜約35℃の温度で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記大豆タンパク質水溶液が約5〜約50g/Lのタンパク質濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記タンパク質濃度が約10〜約50g/Lである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記カルシウム塩水溶液が酸化防止剤を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記分離ステップに続き、前記大豆タンパク質水溶液を吸着剤で処理して、大豆タンパク質水溶液から着色および/または臭気化合物を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記分離ステップに続き、タンパク質水溶液のpHを約1.5〜約5.0の範囲内の異なる値に調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
pH値を約1.5〜約4.4に調整する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
pH値を約2.0〜4.0に調整する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記分離ステップに続き、前記大豆タンパク質水溶液を希釈して、導電率を約80mS未満とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記大豆タンパク質水溶液を約1〜約10倍容の水で希釈して、前記大豆タンパク質溶液の導電率を約4〜約29mSとする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記水が温度約2℃〜約70℃である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記温度が約10°〜約50℃である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記温度が約20°〜約30℃である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記希釈ステップに続き、タンパク質水溶液のpHを約1.5〜約5.0の範囲内の異なる値に調整する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
pHを約1.5〜約4.4に調整する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
pHを約2.0〜約4.0に調整する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記大豆タンパク質溶液が、希釈およびpH調整ステップの後、約85mS未満の導電率を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記導電率が約4〜約34mSである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記タンパク質水溶液を熱処理ステップに供して、熱に不安定な抗栄養因子を不活性化する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
抗栄養因子が、熱に不安定なトリプシン阻害剤である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
熱処理ステップによって大豆タンパク質水溶液の低温殺菌も行う、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記熱処理を温度約70°〜約160℃で約10秒〜約60分間実施する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記熱処理を温度約80°〜約120℃で約10秒〜約5分間実施する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記熱処理を温度約85℃〜約95℃で約30秒〜約5分間実施する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
熱処理された大豆タンパク質溶液を、その先の加工処理に向けて温度約2°〜約60℃に冷却する、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
熱処理された大豆タンパク質溶液を、その先の加工処理に向けて温度約20°〜約35℃に冷却する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記大豆タンパク質溶液を乾燥させて、大豆タンパク質含有量が乾燥量基準で少なくとも約60wt%(N×6.25)である大豆タンパク質製品を得る、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記大豆タンパク質溶液を、そのイオン強度を実質的に一定に保ちながら濃縮して、タンパク質濃度が約50〜約300g/Lである濃縮大豆タンパク質溶液を生成し、濃縮大豆タンパク質溶液を任意選択により透析濾過する、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記濃縮大豆タンパク質溶液が、約100〜約200g/Lのタンパク質濃度を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
分画分子量が約3,000〜約1,000,000ダルトンである膜を使用する限外濾過によって前記濃縮ステップを実施する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記膜が約5,000〜約100,000ダルトンの分画分子量を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
その部分的または完全な濃縮の前または後の大豆タンパク質溶液に対して、水、希食塩水、酸性水、または酸性希食塩水を使用して透析濾過ステップを実施する、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
約2〜約40倍容の透析濾過溶液を使用して前記透析濾過を実施する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
約5〜約25倍容の透析濾過溶液を使用して前記透析濾過を実施する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
透過液中に、更なるかなりの量の異物または目に見える着色が存在しなくなるまで、前記透析濾過を実施する、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
保持液が十分に精製されて、乾燥させたとき、大豆タンパク質単離物のタンパク質含有量が乾燥量基準で少なくとも約90wt%(N×6.25)になるまで、前記透析濾過を実施する、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
分画分子量が約3,000〜約1,000,000ダルトンである膜を使用して前記透析濾過を実施する、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記膜が約5,000〜約100,000ダルトンの分画分子量を有する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
透析濾過ステップの少なくとも一部分の間、酸化防止剤が透析濾過媒体中に存在する、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記濃縮ステップおよび任意選択の透析濾過ステップを温度約2°〜約60℃で実施する、請求項31に記載の方法。
【請求項44】
前記温度が約20°〜約35℃である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
濃縮および任意選択により透析濾過した大豆タンパク質溶液を熱処理ステップに供して、熱に不安定なトリプシンを含む、熱に不安定な抗栄養因子を不活性化する、請求項31に記載の方法。
【請求項46】
前記熱処理を、温度約70°〜約160℃で約10秒〜60分間、好ましくは温度約80°〜約120℃で約10秒〜約5分間、より好ましくは約88°〜約95℃で約30秒〜約5分間実施する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
熱処理した大豆タンパク質溶液を、その先の加工処理に向けて温度約2°〜約60℃、好ましくは約20°〜約35℃に冷却する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記大豆タンパク質溶液を濃縮および/または透析濾過して、濃縮および/または透析濾過された大豆タンパク質溶液を得て、その溶液は、乾燥したとき、タンパク質濃度が乾燥量基準で少なくとも約60wt%(N×6.25)である大豆タンパク質製品となる、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
前記濃縮および任意選択により透析濾過された大豆タンパク質溶液を吸着剤で処理して、着色および/または臭気化合物を除去する、請求項31に記載の方法。
【請求項50】
前記濃縮および任意選択により透析濾過された大豆タンパク質溶液を乾燥前に低温殺菌する、請求項31に記載の方法。
【請求項51】
前記低温殺菌ステップを温度約55°〜約70℃で約30秒〜約60分間実施する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記低温殺菌ステップを温度約60°〜約65℃で約10〜約15分間実施する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記濃縮および任意選択により透析濾過された大豆タンパク質溶液を乾燥させて、タンパク質含有量が乾燥量基準で少なくとも約90wt%(N×6.25)である大豆タンパク質単離物を得る、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記大豆タンパク質単離物が乾燥量基準で少なくとも約100wt%(N×6.25)のタンパク質含有量を有する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
濃縮および/または任意選択の透析濾過ステップを、トリプシン阻害剤の除去に好都合な方法で実施する、請求項31に記載の方法。
【請求項56】
抽出ステップの間に還元剤が存在して、トリプシン阻害剤のジスルフィド結合を破壊または再配置(rearrange)してトリプシン阻害活性の低減を実現する、請求項1に記載の方法。
【請求項57】
濃縮および/または任意選択による透析濾過ステップの間に還元剤が存在して、トリプシン阻害剤のジスルフィド結合を破壊または再配置(rearrange)してトリプシン阻害活性の低減を実現する、請求項31に記載の方法。
【請求項58】
乾燥前の濃縮および任意選択により透析濾過した大豆タンパク質溶液および/または乾燥した大豆タンパク質製品に還元剤を加えて、トリプシン阻害剤のジスルフィド結合を破壊または再配置(rearrange)してトリプシン阻害活性の低減を実現する、請求項48に記載の方法。
【請求項59】
請求項1に記載の方法によって製造された大豆タンパク質製品。
【請求項60】
請求項59に記載の大豆タンパク質製品がそこに溶解している酸性溶液。
【請求項61】
飲料である、請求項60に記載の水溶液。
【請求項62】
ブレンド品の水溶液を作製するために水溶性粉末材料とブレンドされる、請求項59に記載の大豆タンパク質製品。
【請求項63】
粉末飲料である、請求項62に記載のブレンド品。
【請求項64】
請求項59に記載の大豆製品がそこに溶解し、pHがほぼ中性、好ましくは約6〜約8のpH範囲にある水溶液。
【請求項65】
飲料である、請求項64に記載の水溶液。

【公表番号】特表2012−531215(P2012−531215A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517990(P2012−517990)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001017
【国際公開番号】WO2011/000098
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(503403869)バーコン ニュートラサイエンス (エムビー) コーポレイション (25)
【氏名又は名称原語表記】BURCON NUTRASCIENCE (MB) CORP.
【Fターム(参考)】