説明

塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材

【課題】塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材において、酢酸ビニルとの共重合体を主体とする塩化ビニル系樹脂を用いた場合に、取扱いにくいアルデヒド捕捉剤を加えることなく、アルデヒド類の発生を低減することができること。
【解決手段】塩化ビニル系樹脂と、可塑剤と、充填剤と、気泡防止剤と、ブロックウレタンプレポリマーとを含有する塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材において、ブロックウレタンプレポリマーとして、ポリプロピレングリコールとTDIを反応させて得られたウレタンプレポリマーに、ブロック剤として3,5−ジメチルピラゾールまたは1,2,3−トリアゾールを当量を上回る量を加えて、過剰量のブロック剤でブロックされたブロックウレタンプレポリマーA,Bを用いた結果、シーリング材を加熱硬化させた後の加熱試験(65℃)におけるアルデヒド類の揮発量が大きく減少した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル系樹脂を主成分としてなる水密・気密等のシール機能を有する塩化ビニルプラスチゾル系のシーリング材に関するものである。
ここで、本明細書・特許請求の範囲において、「塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材」とは塩化ビニル系樹脂を主成分としてなるプラスチゾル系シーリング材をいうものとする。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の接合部には、シール機能(水密・気密等)を持たせるために加熱硬化タイプのシーリング材が施工されており、このようなシーリング材としては、塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材やアクリルゾル系シーリング材等が用いられるが、コスト面や取扱いの容易性等の点から、塩化ビニルプラスチゾル系の加熱タイプのシーリング材が主流となっている。
一方、近年の自動車製造ラインにおける塗装工程では、環境問題への配慮と製造コストの削減の観点から加熱温度を下げる傾向にあり、これに伴ってシーリング材の低温硬化性が要求されることから、塩化ビニル系樹脂の中でも酢酸ビニルとの共重合体が多用化されてきており、酢酸ビニルの分解に起因するアルデヒド類の発生が多くなるという問題が生じている。
【0003】
そこで、塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材において、このような問題を解決することを目的としたものとして、例えば、特許文献1に記載されたアルデヒド低減プラスチゾル系塗料の発明がある。この特許文献1に記載された発明においては、可塑剤・付着性付与剤・フィラー等を含む一般的な塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材に、アジピン酸ヒドラジドまたはスルファミン酸グアニジンを添加したことを特徴としており、アジピン酸ヒドラジド等のアルデヒド捕捉剤によってアルデヒド類の発生を低減することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−131662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、アジピン酸ヒドラジド等のアルデヒド捕捉剤を余分な配合成分として加えなければならず、これらのヒドラジド類は水分との反応性及び加熱分解性が高いため、湿気の少ない涼しい場所に保管しなければならず、取扱いにも留意しなければならないという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであって、酢酸ビニルとの共重合体を主体とする塩化ビニル系樹脂を用いたプラスチゾル系シーリング材において、取扱いにくいアルデヒド捕捉剤を加えることなく、アルデヒド類の発生を低減することができる塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材は、塩化ビニル系樹脂と、可塑剤と、ブロックウレタンプレポリマーとを含有する塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材であって、前記ブロックウレタンプレポリマーのブロック剤はアルデヒド類と反応性を有するものである。
【0008】
ここで、「塩化ビニル系樹脂」としては、酢酸ビニルを含有するものであり、特に酢酸ビニルとの共重合体を主体とするものである。また、「可塑剤」としては、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸オクチルベンジル(OBzP)、等を用いることができる。
更に、「アルデヒド類」とは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドを始めとするアルデヒド化合物を意味するものであり、「アルデヒド類と反応性を有するブロック剤」としては、3,5−ジメチルピラゾールを始めとするピラゾール化合物や、1,2,3−トリアゾールを始めとするトリアゾール化合物等を用いることができる。
【0009】
請求項2の発明に係る塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材は、請求項1の構成において、前記ブロック剤はウレタンプレポリマーの活性基をブロックするのに必要な当量以上含有されているものである。
【0010】
請求項3の発明に係る塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材は、請求項1または請求項2の構成において、前記ブロック剤は、窒素含有複素環式化合物であるものである。ここで、「窒素含有複素環式化合物」とは、ベンゼン環に類似した6角形・5角形の環式化合物及びその誘導体のうち、環の中に窒素原子(N)を含むものをいう。具体的には、3,5−ジメチルピラゾールを始めとするピラゾール化合物や、1,2,3−トリアゾールを始めとするトリアゾール化合物、テトラゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、等が該当する。
【0011】
請求項4の発明に係る塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記ブロックウレタンプレポリマーの配合量は、前記塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材全体の3重量%〜7重量%の範囲内であるものである。
【0012】
請求項5の発明に係る塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの構成において、前記ブロックウレタンプレポリマーにおいて、前記ブロック剤は当量の2倍〜4倍の範囲内で配合されているものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明に係る塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材は、塩化ビニル系樹脂と、可塑剤と、ブロックウレタンプレポリマーとを含有する塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材であって、ブロックウレタンプレポリマーのブロック剤はアルデヒド類と反応性を有する。したがって、ペースト状のシーリング材として車体のシール箇所に塗布され加熱されて硬化する場合も、加熱されてエラストマー状になった後に車室内が高温になった場合も、ブロック剤が加熱分解によって生ずるアルデヒド類と反応して捕捉し、アルデヒド類の揮発拡散を抑えることができる。
【0014】
更に、ブロックウレタンプレポリマーは密着性付与剤としても機能することから、ペースト状のシーリング材として塗布された場合のシール部分への密着性が向上するという作用効果をも得ることができる。
【0015】
このようにして、酢酸ビニルとの共重合体を主体とする塩化ビニル系樹脂を用いたプラスチゾル系シーリング材において、取扱いにくいアジピン酸ヒドラジド等のアルデヒド捕捉剤を加えることなく、アルデヒド類の発生を低減することができる塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材となる。
【0016】
請求項2の発明に係る塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材においては、ブロック剤がウレタンプレポリマーの活性基をブロックするのに必要な当量以上含有されていることから、請求項1に係る発明の効果に加えて、ペースト状のシーリング材として車体のシール箇所に塗布され加熱されて硬化する場合も、加熱されてエラストマー状になった後に車室内が高温になった場合も、当量以上配合されたブロック剤が加熱分解によって生ずるアルデヒド類と反応して捕捉し、より効果的にアルデヒド類の揮発拡散を抑えることができる。
【0017】
請求項3の発明に係る塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材においては、ブロック剤が窒素含有複素環式化合物であることから、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加えて、アルデヒド類との反応性が高く、生ずるアルデヒド類を瞬時に捕捉するため、より確実にアルデヒド類の揮発拡散を抑えることができる。
【0018】
請求項4の発明に係る塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材においては、ブロックウレタンプレポリマーの配合量が塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材全体の3重量%〜7重量%の範囲内であることから、請求項1乃至請求項3に係る発明の効果に加えて、アルデヒド類の発生をより大きく低減することができる。
【0019】
本発明者らは、塩化ビニル系樹脂を主成分とする塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材において、アルデヒド類と反応性を有するブロック剤を配合したブロックウレタンプレポリマーの配合量について、鋭意実験研究を重ねた結果、シーリング材全体の3重量%〜7重量%の範囲内である場合に、アルデヒド類の発生をより大きく低減することができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
【0020】
すなわち、ブロックウレタンプレポリマーの配合量がシーリング材全体の3重量%未満であると、ブロック剤自体の絶対量が少なくなるため、アルデヒド類の発生を大きく低減することができず、一方、ブロックウレタンプレポリマーの配合量がシーリング材全体の7重量%を超えると、塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材の耐水性が低下してしまう。よって、ブロックウレタンプレポリマーの配合量は、シーリング材全体の3重量%〜7重量%の範囲内とすることが好ましい。
【0021】
請求項5の発明に係る塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材においては、ブロックウレタンプレポリマーにおいて、ブロック剤が当量の2倍〜4倍の範囲内で配合されていることから、請求項1乃至請求項4に係る発明の効果に加えて、アルデヒド類の発生をより大きく低減することができる。
【0022】
本発明者らは、塩化ビニル系樹脂を主成分とする塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材において、ブロックウレタンプレポリマーにおけるアルデヒド類と反応性を有するブロック剤の配合量について、鋭意実験研究を重ねた結果、ブロック剤が当量の2倍〜4倍の範囲内で配合されている場合に、アルデヒド類の発生をより大きく低減することができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
【0023】
すなわち、ブロックウレタンプレポリマーにおけるブロック剤の配合量が当量の2倍未満であると、過剰なブロック剤自体の絶対量が少なくなるため、アルデヒド類の発生を大きく低減することができず、一方、ブロック剤の配合量が当量の4倍を超えると、塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材の耐水性が低下してしまう。よって、ブロック剤の配合量は、当量の2倍〜4倍の範囲内とすることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するためには、塩化ビニル系樹脂として、塩化ビニルモノマーと酢酸ビニルモノマーとのコポリマー(共重合体)を含むものを用いる必要がある。上述したように、加熱温度の低減という要請に応えるためには、塩化ビニルモノマーと酢酸ビニルモノマーとのコポリマー(共重合体)を含む必要があり、また塩化ビニルモノマーの単独重合体のみを使用した場合には、アルデヒド類の発生という問題は生じないが加熱温度の低減は難しい。このように、低温加熱を可能にするためにシーリング材の塩化ビニル系樹脂は酢酸ビニルを含んでいるため、加熱によってアルデヒド類が発生する。
【0025】
ここで、本発明のシーリング材にはブロックウレタンプレポリマーが配されている。このブロックウレタンプレポリマーは通常は活性基がブロック剤でブロックされているが、使用時(加熱時)にはブロック剤が外れて活性が生じ反応が進行する。この外れたブロック剤は加熱によって酢酸ビニルから発生したアルデヒド類との反応性を有しているため、アルデヒド類と接触することで反応が進行する。つまり、酢酸ビニルから発生したアルデヒド類はブロック剤によって捕捉され、アルデヒド類の排出量が低減する。
【0026】
この際、アルデヒド類の発生量に対しブロック剤の量を適量に設定することで、アルデヒド類の排出量を制御することが可能となる。ブロック剤の量は、ブロックウレタンプレポリマーを作製するときに配されるブロック剤の量(結合量)及びシーリング材に配されるブロックウレタンプレポリマーの配合量によって決まる。つまり、シーリング材中のブロック剤の量は、『ウレタンプレポリマー中のブロック剤結合量×シーリング材中のウレタンプレポリマー配合量』で決定される。ここで、ウレタンプレポリマー中のブロック剤結合量はウレタンプレポリマーの活性基をブロックするのに必要な量(当量)以上が配されている。このようにブロックウレタンプレポリマーに当量以上のブロック剤を含有することで、効率良くアルデヒド類を捕捉して排出量を低減することができる。
【0027】
ブロックウレタンプレポリマーとしては、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とから得られるウレタンプレポリマーに、アルデヒド類と反応性を有するブロック剤を加えて、イソシアネート基をブロックしたものを用いる必要がある。アルデヒド類と反応性を有するブロック剤としては、ピラゾール化合物やトリアゾール化合物、テトラゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、等の窒素含有複素環式化合物を用いることが好ましい。
【0028】
ここで、ピラゾール化合物としては、3,5−ジメチルピラゾール、3,5−ジエチルピラゾールを用いることが好ましい。また、トリアゾール化合物としては、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾールを用いることが好ましい。
【0029】
また、シーリング材としての特性を向上させるために、可塑剤、充填剤、減粘剤、気泡防止剤を配合することが好ましい。塩化ビニル系樹脂の可塑剤としては、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸オクチルベンジル(OBzP)、等を用いることができる。また、充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、タルク、珪藻土、クレー、マイカ、等を用いることができる。
【0030】
更に、減粘剤として、具体的にはエクソンモービル(株)製のD−80等を用いることができる。また、気泡防止剤としては、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)等を用いることができ、具体的には井上石灰工業(株)製の酸化カルシウム(CaO)であるQC−X等を用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例について説明する。まず、本発明の実施例に係る塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材の配合成分と配合量について説明する。
【0032】
本実施例に係る塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材においては、「塩化ビニル系樹脂」として塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体であるカネカ(株)製のPCH−12を、「可塑剤」としてJプラス(株)製のフタル酸ジイソノニル(DINP)及びフタル酸オクチルベンジル(OBzP)を、「充填剤」として炭酸カルシウムを、「減粘剤」としてエクソンモービル(株)製のD−80を、「気泡防止剤」として酸化カルシウムである井上石灰工業(株)製のQC−Xを用いた。また、ポリアミドアミンとして、ADEKA(株)製のアデカハードナーEH4070Sを用いた。
【0033】
ここで、炭酸カルシウムは、微粒の炭酸カルシウムと粗粒の炭酸カルシウムとを混合して配合し、微粒の炭酸カルシウムとしては白石工業(株)製のビスコライトOSを、粗粒の炭酸カルシウムとしては竹原化学工業(株)製の重質炭酸カルシウムを、それぞれ用いた。また、ブロックウレタンプレポリマーとして、以下に述べるようにして製造した2種類のブロックウレタンプレポリマーA,Bを使用した。
【0034】
ブロックウレタンプレポリマーAの製造方法としては、攪拌機、温度計を付設したフラスコに、分子量2000のポリプロピレングリコール250重量部と、TDI(トリレンジイソシアネート)44重量部を仕込み、80℃で4時間反応させた。得られたウレタンプレポリマーに、ブロック剤として3,5−ジメチルピラゾールを30重量部加えて、当量を上回る(当量の3倍の)過剰量のブロック剤でブロックされたブロックウレタンプレポリマーAが得られた。
【0035】
ブロックウレタンプレポリマーBの製造方法は、ブロック剤として1,2,3−トリアゾールを用いた以外は、ブロックウレタンプレポリマーAの製造方法と同様である。
【0036】
これらの配合物を混合して、実施例1乃至実施例3までの3種類の塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材を作製した。実施例1乃至実施例3の塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材の成分と配合を表1の上段に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1の上段に示されるように、実施例1では、ブロックウレタンプレポリマーとしてブロック剤として3,5−ジメチルピラゾールを過剰量用いたブロックウレタンプレポリマーAを70重量部(シーリング材全体に対して5重量%)用いているのに対して、実施例2では、ブロック剤として1,2,3−トリアゾールを過剰量用いたブロックウレタンプレポリマーBを70重量部用いている。また、実施例3においては、実施例1と同様にブロックウレタンプレポリマーAを用いているが、配合量を10重量部(シーリング材全体に対して0.7重量%)と大きく減少させている。
【0039】
なお、表1の上段に示されるように、塩化ビニル系樹脂、可塑剤、減粘剤、炭酸カルシウム、ポリアミドアミン、気泡防止剤の配合量は、実施例1乃至実施例3までの塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材において、全て同一としている。
【0040】
このような配合組成を有する実施例1乃至実施例3の塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材について、アルデヒド類(ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒド)の発生量の測定実験を行った。
【0041】
まず、塩化ビニル系樹脂、可塑剤、減粘剤、炭酸カルシウム、ポリアミドアミン、気泡防止剤、ブロックウレタンプレポリマーを計量してディスパーにおいて十分混合し、これを真空脱泡混合機において30分間混合攪拌して、塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材を作製した。この塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材を、アセトンで脱脂したアルミニウム板(120mm×100mm×1mm)に、100mm×80mm×3mmの面積及び厚さになるように塗布した。
【0042】
このシーリング材塗布板を、140℃に調整した乾燥機に入れて18分間乾燥し、この加熱処理を二回行った。このようにして作製したテストパネルを、20℃で2週間放置した。その後、10リットルのテドラーバッグの中にテストパネルを入れ、窒素ガスを4リットル充填した後に、65℃で2時間加熱した。そして、テドラーバッグ内の気体を吸引して、高速液体クロマトグラフィーによってアルデヒド類の揮発量を測定した(2,4−DNPH誘導体化固相吸着/溶媒抽出)。その結果を、表1の下段に示す。
【0043】
表1の下段に示されるように、実施例1乃至実施例3の配合においては、いずれもアルデヒド類発生量(μg/80cm2 )が8未満に抑えられており、ブロック剤によるアルデヒド類捕捉効果が現れている。
【0044】
更に、実施例1,2については、アルデヒド類発生量(μg/80cm2 )がそれぞれ3、3.8と小さく、この結果、ブロックウレタンプレポリマーは、塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材の全体の3重量%〜7重量%の範囲内で配合することが、より好ましいことが明らかになった。また、実施例1に固有の効果として、乾燥炉で発生するヤニの量が従来よりも低減されることが分かった。この結果、ブロック剤としてピラゾール化合物を用いた場合には、加熱乾燥時に発生するヤニの量を低減することができるという作用効果が得られることが判明した。
【0045】
このように、本実施の形態に係る実施例1乃至実施例3の塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材においては、酢酸ビニルとの共重合体を主体とする塩化ビニル系樹脂を用いたプラスチゾル系シーリング材において、取扱いにくいアルデヒド捕捉剤を加えることなく、アルデヒド類の発生を低減することができる。
【0046】
上記各実施例においては、「可塑剤」としてフタル酸ジイソノニル(DINP)及びフタル酸オクチルベンジル(OBzP)を用いた場合について説明したが、これに限られるものではなく、他にもフタル酸ジオクチル(DOP)等を用いることができる。また、上記各実施例においては、「充填剤」として炭酸カルシウムを用いた場合について説明したが、これに限られるものではなく、他にも硫酸バリウム、硫酸カルシウム、タルク、珪藻土、クレー、マイカ、等を用いることができる。更に、本実施の形態においては、「気泡防止剤」として酸化カルシウム(CaO)を用いた場合について説明したが、他にも酸化マグネシウム(MgO)等を用いることができる。
【0047】
本発明を実施するに際しては、塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材のその他の部分の構成、組成、配合、成分、形状、数量、材質、大きさ、製造方法等についても、上記各実施例に限定されるものではない。なお、本発明の実施例で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は実施に好適な適正値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂と、可塑剤と、ブロックウレタンプレポリマーとを含有する塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材であって、
前記ブロックウレタンプレポリマーのブロック剤はアルデヒド類と反応性を有することを特徴とする塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材。
【請求項2】
前記ブロック剤はウレタンプレポリマーの活性基をブロックするのに必要な当量以上含有されていることを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材。
【請求項3】
前記ブロック剤は、窒素含有複素環式化合物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材。
【請求項4】
前記ブロックウレタンプレポリマーの配合量は、前記塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材全体の3重量%〜7重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材。
【請求項5】
前記ブロックウレタンプレポリマーにおいて、前記ブロック剤は当量の2倍〜4倍の範囲内で配合されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の塩化ビニルプラスチゾル系シーリング材。

【公開番号】特開2011−127060(P2011−127060A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288985(P2009−288985)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000100780)アイシン化工株式会社 (171)
【Fターム(参考)】