説明

塩素化ポリエチレン加硫用組成物

【課題】本発明は、従来よりも優れた耐熱老化性をもつ塩素化ポリエチレンの有機過酸化物加硫用組成物、およびその加硫用組成物を加硫してなる加硫物の提供を目的としたものである。本発明の塩素化ポリエチレン加硫物は耐熱老化性に優れ、例えば自動車用ゴムホース等の製品に利用され得る。
【解決手段】塩素化ポリエチレン100重量部に対して
(A)有機過酸化物 0.1〜8 重量部
(B)ヒドロキノン 0.05〜1重量部
を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機過酸化物加硫可能な塩素化ポリエチレン加硫用組成物及びその加硫物に関する。
【背景技術】
【0002】
塩素化ポリエチレンはその優れた耐熱性、耐油性、耐候性、耐オゾン性などを生かしてゴム製品の材料として広く用いられている。ゴム製品は架橋することにより種々の物性が向上するが、塩素化ポリエチレンはチアジアゾール系化合物、メルカプトトリアジン系化合物のほか有機過酸化物で加硫できることが知られている。また、これらの加硫剤の中では有機過酸化物が耐熱老化性において優秀なゴム製品を得られることが知られている。
また特開H6−157824号には、過酸化物で硬化できるエラストマーのためのスコーチ遅延剤組成物として、ヒドロキノンとスルフェンアミドを必須成分とする技術が開示されているが、耐熱老化性についての記載はない。
【特許文献1】特開H6−157824号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記のような実状から、従来よりも優れた耐熱老化性をもつ塩素化ポリエチレンの有機過酸化物加硫用組成物の提供を目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の課題を解決するため種々検討を重ねた結果、有機過酸化物加硫可能な塩素化ポリエチレン加硫用組成物にヒドロキノンを添加することにより耐熱老化性が著しく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明による塩素化ポリエチレン加硫用組成物は、
塩素化ポリエチレン100重量部に対して
(A)有機過酸化物 0.1〜8重量部
(B)ヒドロキノン 0.05〜1重量部
を配合することを特徴とするものである。
また、本発明は上記加硫用組成物を加硫してなる、塩素化ポリエチレン加硫物に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐熱老化性が優れた塩素化ポリエチレン加硫用組成物を得ることができ工業的にきわめて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で用いられる塩素化ポリエチレンの製法は特に限定されるものではないが、ポリエチレン粉末または粒子を水性懸濁液中もしくは有機溶媒中で塩素化することにより得られるものである。
原料となるポリエチレンはエチレン単独重合体、またはエチレンと共重合可能なコモノマーとの共重合体である。コモノマーの例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−ペンテン−1等のα−オレフィン類;ビニルアセテート、エチルアセテート等のアセテート類;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。ポリエチレンの重量平均分子量は好ましくは4万〜70万、より好ましくは5万〜30万である。原料となるポリエチレンは高密度ポリエチレンの他、これに低密度ポリエチレンをブレンドしたものでもよい。
【0008】
本発明で用いられる塩素化ポリエチレンの塩素含量は、加硫物を加硫ゴムとして用いる場合、好ましくは20〜50重量%、より好ましくは25〜45%である。塩素含有量が多すぎても少なすぎても、得られる組成物は硬度が高すぎることがある。非晶性もしくは実質的に非晶性の塩素化ポリエチレンが好ましい。
【0009】
また塩素化ポリエチレンは、単独で用いても良いが、塩素化ポリエチレンと相溶性のある他種ゴムを塩素化ポリエチレンより少ない量ブレンドしてもよい。塩素化ポリエチレンとブレンドする他のゴムとしては、エピクロロヒドリンゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴムなどが挙げられる。
【0010】
本発明で用いられる有機過酸化物としてはEPDM、シリコーンゴム、ジエン系ゴムなどを加硫する際に用いられる公知の有機過酸化物系加硫剤を使用でき、例えばケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、パーオキシジカーボーネート類があげられる。パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類は好ましい有機過酸化物である。パーオキシケタール類の具体例として、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシトなどが、ジアルキルパーオキサイド類の具体例としてジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α‘-ビス(t−ブチルパ−オキシ−m−イソプロピル)ベンゼンなどが挙げられる。加工性の面からは、有機過酸化物の半減期10時間を得るための温度が比較的高い方がよく、好ましくは90℃以上、より好ましくは110℃以上である。
【0011】
本発明で用いられるヒドロキノンの純度としては通常に購入できる程度であればよく、そのまま使用できる。材料の混練に際して分散不良の懸念があるので、配合中の可塑剤などの液体成分にあらかじめ添加して溶解しておくほうがよい。
ヒドロキノンの配合量としては塩素化ポリエチレン100重量部に対して0.05〜1重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部が良い。配合量が少ないと老化防止効果が少なく、多くなると加硫を妨害し、加硫時間を多くかけないと物性が発現しない。
【0012】
本発明では通常加硫剤と共に加硫を促進するために受酸剤が用いられる。受酸剤としては、加硫時に塩素化ポリエチレンから遊離する塩化水素を補足する金属化合物が使用される。受酸剤となる金属化合物としては酸化マグネシウム、酸化カルシウム等の金属酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、合成ハイドロタルサイト等のハイドロタルサイト、ゼオライト系化合物、鉛白、鉛丹、リサージ等が例示される。受酸剤の配合量は塩素化ポリエチレン100重量部に対して好ましくは0.5〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部である。
【0013】
ゼオライト系化合物としては、天然ゼオライトの外、A型、X型、Y型の合成ゼオライト、ソーダライト類、天然ないし合成モルデナイト、ZSM−5などの各種ゼオライト、およびこれらの金属置換体であり、これらは単独で用いても2以上併用してもよい。また金属置換体の金属はナトリウムであることが多い。ゼオライト系化合物としては受酸容能の大きいものが好ましい。ゼオライト系化合物として、活性化されたゼオライト系化合物を使うのが好ましい。活性化されたゼオライト系化合物とは、実質的に水分の少ない状態のものを言い、このように活性化する方法として、ゼオライト系化合物を100℃以上の温度で、乾燥空気、窒素気流下で加熱脱水する方法、もしくは、塩素含有重合体を他の成分と混練りする際に、ゼオライト系化合物を投入して140℃から200℃の混練り温度に晒すことにより活性化する方法等が挙げられる。これらの受酸剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0014】
本発明では通常加硫剤、受酸剤の他、カーボンブラック、無機質充填材が配合される。無機質充填材としてはとしては、含水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらの無機充填剤は、単独で用いても良いし、2種類以上併用しても良い。
【0015】
本発明組成物には、当該技術分野において通常用いられる各種の配合剤、例えば充填剤、補強剤、可塑剤、安定剤、老化防止剤、滑剤、粘性賦与剤、顔料、難燃剤、紫外線吸収剤、発泡剤、加硫調整剤等を添加することができる。また、強度、剛性の向上のため短繊維等を添加することもできる。
【0016】
上記塩素化ポリエチレン加硫用組成物を加硫することにより、良好な加硫物性を有する加硫物を得ることができる。
【0017】
本発明組成物の配合は、通常のミキシングロール、バンバリーミキサー、2軸混練押出機、各種ニーダー等を用いて、上記配合材料を混練りして行える。得られた混練物はオープンロール等でシート状のような所要形状にする。加硫成型は、プレス、押し出し機、射出成型機など公知任意の手段で行い、所要形状のゴム製品を得ることができる。加硫条件は100〜200℃で数分間〜2時間の範囲で適宜選ばれる
【実施例】
【0018】
本発明を実施するための具体的な形態を以下に実施例を挙げて説明する。但し本発明はその要旨を逸脱しない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお実施例及び比較例で用いた配合材料の詳細は以下の通りである。
【0019】
*1:塩素化ポリエチレン:ダイソー社製『ダイソラックC-130』塩素含量30%
*2:カーボンブラック:東海カーボン社製『シーストS』
*3:可塑剤:花王社製『トリメックスN−08』
*4:受酸剤:ハイドロタルサイト、協和化学工業社製『DHT−4A』
*5:加硫助剤:ジアリルフタレート、ダイソー社製『ダイソーダップモノマー』
*6:加硫剤:ジクミルパーオキサイド、日本油脂社製『パークミルD』
【0020】
(実施例1)
表1に示すように塩素化ポリエチレン100重量部にカーボンブラック80重量部、可塑剤25重量部、受酸剤10重量部、加硫助剤5重量部、ヒドロキノンを0.1重量部とし、この配合物をニーダーで130℃で6分間混練りした。次いでこの混練り物に、加硫剤としてパークミルD2.5重量部を加え、70〜80℃に加熱されたロールで更に混練りし、厚さ2〜3mmのシート状の加硫用ゴム組成物を作製した。このゴム組成物を、15×15cmの金型に入れてプレス機にて、160℃、100kg/cm2で30分間加熱して、加硫物を得た。
【0021】
(比較例1、2)
表1に示す配合材料を同表に示す割合で用いた点を除いて、実施例1と同様の操作を行って、シート状の加硫用ゴム組成物を得、さらにゴム加硫物を得た。
【0022】
(性能試験)
実施例および比較例において、得られた加硫用組成物について、JIS K6300(未加硫ゴム物理試験方法)、また得られた加硫物について、JIS K6251(加硫ゴムの引張試験方法)、JIS K6253(加硫ゴムの硬さ試験方法)、JIS K6257(加硫ゴムの老化試験方法)に規定する方法に従って物性試験を行った。得られた結果を表2に示す。
【0023】
上記表中、Vm:JIS K6300のムーニー・スコーチ試験に定める、最低ムーニー粘度
5:JIS K6300のムーニー・スコーチ試験に定める、ムーニー・スコーチ時間
M100:JIS K6251の引張試験に定める、100%伸び時の引張応力
M300:JIS K6251の引張試験に定める、300%伸び時の引張応力
Tb:JIS K6251の引張試験に定める、引張強さ
Eb:JIS K6251の引張試験に定める、切断時伸び
Hs:JIS K6253の硬さ試験に定める、硬さ
△Tb:JIS K6257の老化試験に定める、引張強さ変化率
△Eb:JIS K6257の老化試験に定める、切断時伸び変化率
△Hs:JIS K6257の老化試験に定める、硬さの変化
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
表2から明らかなように、比較例1、2に比べてヒドロキノンを使用した実施例1では、引張強さ変化、切断時伸び変化、いずれも変化率が減少しており、耐熱老化性が向上していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明により、耐熱性に優れた塩素化ポリエチレン加硫物が得られ、例えば自動車用ゴムホース等に利用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化ポリエチレン100重量部に対して
(A)有機過酸化物 0.1〜8重量部
(B)ヒドロキノン 0.05〜1重量部
を配合することを特徴とする塩素化ポリエチレン加硫用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の加硫用組成物を加硫してなる、塩素化ポリエチレン加硫物。

【公開番号】特開2006−219505(P2006−219505A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28508(P2005−28508)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】