説明

塵取り用具

【課題】床の掃き掃除において塵ゴミを塵取りに掃き込む際、箒による通常の掃き込み動作では最後の砂塵までをきれいに掃き取ることが難しく、床に砂塵が残り易かった。砂塵を容易に一掃することのできる塵取り用具を提供する。
【解決手段】塵の受け口をV字形をなす受口としこれを複数並列配置しそれによって掃き寄せて受口に衝突した塵群の分割と流動化を具現化して塵群を掃き取り易い状態に変化させ、掃き込み動作の進行に沿って塵群を受口の谷空間から奥の隘路へ集中させることで掃き取り効果の飛躍的向上を実現し、次に最後に残る僅少塵群に対しても箒の刷毛先が連続して集中作用することで課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【発明の属する産業分野】
【0001】
本発明は掃除用具に関するものであり、主に平滑な床上の掃き掃除で使用する塵取り用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より塵取りの受口を砂塵収容のための効果的な形状とするためには、塵取りが床上に置かれたとき受け口と床との段差を極力小とすることと、受口の床に対する上下角度を床に対して鋭角で当接することが考えられて来たものであるが、現在に至るもそれ以上の特段の進歩的技術開発は実現されていない状況であり、課題の解消には至っていない。
【0003】
つまり段差がより小なることを実現したとしても従来の塵取りをもって従来の箒を使って掃き込むことに変りはなく、取り切れない砂塵が常に残っていた。
【0004】
以下、図によって説明すると、図6に示す従来の塵取具の受け口では、床に接する受口前縁1は単純な一個の直線であり、矢印で示す如く塵が略直角に掃き寄せられこの前縁1に衝突しその時一部は前縁1を乗り越えて掃き取られるが、残りの砂塵は受口前縁1の段差に阻まれてその位置に留まる。
【0005】
留まった砂塵は同様の掃き動作を繰り返してもその多くが受口前縁1を越えることができず留まったまま一群の滞留砂塵となる。
【0006】
また、箒の刷毛先をより細毛化して砂塵や微塵を掃き取り易く改良したものは存在し、それも一定の効果は上がっていたが砂塵の取り残し解消までに至っていなかった。
【0007】
特許文献の特開2000−217762号においても床と塵取り先端縁の密着度向上を図ったもののようであり、ここで課題とする塵の一掃化を目的とするものではないと言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−217762号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来は床の掃き掃除において、塵取具に塵を掃き込んだ跡に取りきれない砂塵や微塵が塵取り具の受口に沿った線状の形になって床に残り易かった。
【0010】
これは最後まで残る塵は重く細やかな砂質的塵が中心の砂塵であるために、塵取り具受口の段差を越え難いものが残るために起こる現象である。
【0011】
従来はそこでさらに掃き取るために塵取具の位置を後退させておいて再度塵を掃き込む動作を数回程度繰り返すことが一般的になされているのであるが、それをもってしても取り残しがあった。つまり全てを掃き取れなかったものである。
【0012】
その結果行なわれる残り砂塵の処理方法は、濡れ雑巾で拭い取るという別手段によって完了させるのが一般的であった。
【0013】
このように日常的に行われる普通の掃き取り動作で塵の一掃をすることが出来ない状態は非常に不便であった。本発明はこの不便を解消することを目的としてなされたものである。
【0014】
ここで当願書全文において使用する特定の用語を定義する。
【0015】
塵取り用具とは塵取具と箒の組合せを言う。
【0016】
受口前縁とは、従来技術による塵取具の受口端部である。
【0017】
斜角前縁とは、本発明V字形受口端部である。
【0018】
受口奥部とは、前記V字形受口の最奥部である。
【0019】
斜角平面とは、本発明V字形受口を並列配置することで隣接部に現出する逆V字形を呈する最先端部と左右の辺部に囲まれた三角形状の平面部である。
【0020】
斜角先端とは、前記斜角平面の先端部を言う。
【0021】
山形とは、前記斜角平面部の一部または全部が一定の高さを有する山形をなすもので同部を立体形状化したものであり、山形突端は該山形の突端部を指すものである。
【0022】
受口平坦部とは、前記山形の山麓部に残る斜角平面の一部であるものの前記山形がその山麓を広げたものであるとの位置付けから、これを受口平坦部と称する。
【0023】
塵群とは、掃き集められて一群をなす砂塵が塊状をなす状態を指す。
【課題を解決するための手段】
【0024】
塵を掃き取る塵取具であって、床に接する塵受口端部が適当な大きさのV字形をなすV字形受口3としこれを当該塵取具の全幅に渡って複数並列配置したものであることを特徴とする塵取具である。
【0025】
塵を掃き取る塵取具であって、斜角平面4の一部または全部が一定の高さを有する山形7としたものであることを特徴とした塵取具である。
【0026】
塵を掃き取る塵取具であって、並置し独立する山形7の隣接するもの同士が接近して隘路11を構成しその隘路を塵の掃き取り通路とするものであることを特徴とした塵取具である。
【0027】
塵を掃き取る塵取具であって、塵取具本体部イと塵受口部ロとの連続部ハ及びその付近に外力により上下に折れ曲ることの可能な弾力を持たせ塵受口が床面に密着し易くしたものであることを特徴とした塵取具である。
【0028】
塵取り用具の箒であり、刷毛部を構成する繊維体Cを太さの異なる繊維を整列させた混合体により構成するものであることを特徴とした塵取り用具の箒である。
【発明の効果】
【0029】
本発明の実施により次の効果が生まれる。すなわち、従来の塵取具では取り残していた砂塵などの重く滞留化し易い最後の砂塵や微塵を、特段の操作をすることなく従来と同じ掃き取り動作で容易に凡そ全て掃き取れる塵取具を実現した。
【0030】
前記した、容易に凡そ全てを掃き取れる、ことの意味について定義するならば通常目視に拠ったとき砂塵や微塵が全て掃き取られたと認識なされる程度まで掃除がなされた状態を指しており、通常目視に拠ることなく床に接顔して見たり拡大鏡に拠って床を見た場合において微塵等の微量の存在があったとした場合、これらは微細なことであるから清掃済みの範疇とするものである。
【0031】
同じく前記した、容易にすべての塵を掃き取ることの実現とは、濡れ雑巾などの手段に変えることなく清掃作業を完了させることが出来ることを指し、本発明によって従来の不便を解消することが出来、目的を達成したものである。
【0032】
本発明による箒を使用することなく本発明塵取具のみを使用した場合においても相当の効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明塵取具の平面図である。
【図2】本発明塵取具の実施例を表した平面図である。
【図3】本発明塵取具のD−D′線の断面図であり、箒と塵の作用を表す。
【図4】本発明塵取具のE−E′線の断面図であり、箒と塵の作用を表す。
【図5】本発明塵取具の別の実施例を表す斜視図である。
【図6】従来の技術による塵取具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に掲げる実施例の説明においては、共通の部分的形状箇所が並列して全体を構成するものであるから各種異なる形状箇所毎に1個の符号を割当てて説明をしており、符号の表記がない図上で共通する形状箇所には共通の符号を当てることを前提として説明も共通させるものである。
【0035】
本発明では図1に示すように塵を斜角で受ける斜角前縁2の二辺からなる複数のV字形受口3を全幅に渡って並列配置した形状であり、このように全ての塵受口を斜角化したことが新規性の高い大きな特徴である。
【0036】
斜角前縁2の端部は塵が載り易くなる様可能な限り薄くなり傾斜している。
【0037】
並列するV字形受口3同士の隣接箇所は逆V字形となって、これに囲まれた平面部である斜角平面4が構成される。
【0038】
さらにV字形受口3の最奥部付近を受口奥部5と称し、重い砂塵などをここへ集中させる部分となる。
【0039】
斜角平面4の先端は前記逆V字形の先端部であり斜角先端6と称する。
【0040】
また箒については、本発明では箒を構成する刷毛の繊維体を比較的硬繊維と比較的軟繊維を整列させながら混合し束ね込んで箒体を構成し、前記した本発明塵取具の一部として構成することにより砂塵等微粒子の掃き取り機能の向上を実現した。
【0041】
上記のように構成した塵取りを概ね従来と同様に扱い使用する。
【作用1】
【0042】
図1についての上述した本発明の作用について説明するならば、掃き寄せられた塵は斜角前縁2に衝突すると同時に多くの比較的軽い塵がこれを乗り越えて掃き取られるが、一部の重い砂塵等は前縁を乗り越えることなく残り、箒の刷毛先の影響を受け続ける。
【0043】
砂塵は斜角前縁2の段差の抵抗に遭いながら刷毛先の影響を受け続けこの縁に沿って後方の受口奥部5の方向へと移動する。
【0044】
このとき箒の一部刷毛先も斜角前縁2の段差によって僅かな案内作用を受けて受口奥部5の方向へと塵を押しながら移動する。
【0045】
箒による押力を受けて斜角前縁2に沿って砂塵が移動するということは砂塵をいわゆる流動化をさせるものである。
【0046】
移動する砂塵の粒子は流動化により一部浮動状態にあり、これを押す箒の刷毛先が依然として掃き取り方向に押力が働いているために浮動しながら、あるいは浮動するゆえにその多くは斜角前縁2を容易に乗り越えて大多数が掃き取られるのである。
【0047】
ここまでに砂塵の多くは掃き取られるのであるが斜角前縁2を越えることが出来なかった僅少の残り砂塵は最後に受口奥部5付近に集中する。
【0048】
受口奥部5付近に集中した全ての砂塵13は概ね塊のようにV字の底に集積するため箒毛先の押力を集中的に受け易くなり、引き続き作用する箒毛先の押力によって一気に掃き取られるのである。
【0049】
このような砂塵の動きは従来の直角受口の塵取具ではあり得ない動きで、本発明V字型受口によって掃き取り易く喚起した新規な塵の動きである。
【0050】
上述の掃き取り動作による作用は、箒で掃き込む動作1回に対するものの詳細であるが、通常は塵取具を後退させながら掃き取り動作を2回3回と繰り返すことが一般的であるので、同様に本発明をもってすれば同様の労力で完全に近い集塵結果が得られることとなるのである。
【0051】
箒については一般的なものとして、一個の箒は一種類の繊維体で構成されるが特に太く硬く荒い繊維体の箒によると砂塵が取り難い傾向があり、本発明における箒は粒子の微小な砂塵までも掃き取ろうとするものであるから砂塵粒子に馴染み易い軟繊維体を含めて構成する。
【0052】
しかしながら軟繊維体はそれ自体が腰が弱く箒に使うには難点となるため、その弱点を後方から補助するために軟繊維に硬繊維を混合した箒の刷毛体を構成し砂塵粒子に軟繊維が直接作用し、同時に硬繊維が直接、間接に作用する様にしたものであり、図3,4に表す繊維体Cである。
【0053】
また、斜角前縁2自体にその材質による弾力性を持たせることで本発明塵取具を床に置いたとき軽く床に押し付けるようにすることで材質の持つ弾力が作用して塵取りの全前縁が隙間なく床に密着する状態を作り出すものとなる。
【0054】
上述した説明は本発明の平面的実施例の作用を説明したものである。
【実施例】
【0055】
図2に示す当実施例では前記実施例に高さを加えた立体的構成による実施例を示すものである。
【0056】
図2において、複数のV字形受口3b同士が隣接する箇所が斜角先端6bである。
【0057】
前述した斜角平面の中央部に一定の高さを有する山である山形7を設け、この山形7の先端が山形突端7bであり、先端部から後方へ暫時山形の高さを決定付ける稜線8を有する。
【0058】
この稜線8は前記山形7の山腹を左右に分け、ここへ至る箒の刷毛先を左右に分ける役割を持つものであり、頂点を持つ形状が望ましいものであるがR形状も実施可能である。
【0059】
高さを有する山形を設けたことで前記V字形受口3bは立体化され、ここに所定の深さを有する立体的谷空間10が構成される。
【0060】
前記山形7の裾野には該斜角平面4の一部が残り、前述したようにこれを受口平坦部9とする。
【0061】
この受口平坦部9は斜角前縁2bに続く平面部であり砂塵が乗り上げ易くなるよう図4に示す如く傾斜している。
【0062】
この受口平坦部9は斜角前縁2bと山形7に挟まれて砂塵が初めに乗り上げる個所で極めて重要な役割を担う。
【0063】
続いて谷空間10の最奥部の先には塵の受口としては最も幅の狭い箇所である隘路11を構成し、この箇所が砂塵とそれを押し掃く箒の刷毛先が集中通過する掃き取り通路である。
【作用2】
【0064】
当実施例における作用を図2、図3、図4で説明すると、先ず掃き寄せて一群となった砂塵は箒の押力によって並列する複数の斜角先端6bと山形突端7bに衝突することで左右に山毎に複数の塵群に分割されそれぞれ谷空間10へと進入するが一部の塵はすでに受口平坦部9に乗り上げて掃き取られる直前の塵確保の状態にある。
【0065】
このとき山形7とその稜線8の存在によって塵を押す箒の刷毛先12も塵群と同様に分割されて図3、図4に示すように各山形7を跨いだ状態で塵群を掃き押しながら塵とともに谷空間10へと進入する。
【0066】
谷空間10へ誘導された砂塵13と刷毛先12は左右を山形7に挟まれているため他へ逸れることはなく、刷毛先12の継続的押力によって分割された夫々全ての砂塵が各隘路11へと集中させられる。
【0067】
隘路付近に集積した砂塵13はそこに刷毛先12が箒の厚みの範囲で連続的に集中作用することにより極めて効率よく掃き取ることが可能な状態となるのである。
【0068】
隘路11の幅はV字形受口3bの間口の数分の1の幅に絞られており、逆に見て隘路幅の数倍量の刷毛先12を隘路11の許容密度一杯の密度で連続通過させるものであるから、それによって一度の掃き込み動作で受口奥部5bから隘路11にかけての溝底部は徹底的な清掃がなされ塵の粒子が残ることは無いこととなる。
【0069】
このように掃き取り初期段階ではV字形受口3bと山形7の効果的作用によって塵群の大多数を掃き取り又は掃き取りへ向けて確保し、続く確定段階において少量となった残り砂塵を隘路11において集中による高い密度の刷毛先の作用によって極めて効率良く掃き取れるものである。
【0070】
隘路11を砂塵13が通過した時点が砂塵を確定的に掃き取ったと言える時点である。
【0071】
箒については、前述した作用1で述べたものが当実施例においても共通するものである。
【0072】
図3はD−D′線における一部拡大横断面図であり、掃き込み時の刷毛先12と砂塵13が隘路11付近に至った状態を示すものである。
【0073】
図4はE−E′線の縦断面図であり砂塵が受口奥部から隘路付近に掃き寄せられた状態を示す。
【0074】
この後、砂塵13は箒刷毛先12の継続的押力によって塵取具奥部の塵溜り14へと掃除者の手加減によって掃き飛ばされ、掃き取りが完了するのである。
【0075】
上述した作用は掃き取りの箒を1回掃き込む動作によって起こる状況を分解詳述したものである。
【0076】
従って通常は同地点での掃き取り動作は2〜3回繰り返されるのが一般的であるから本発明塵取り具をもってすればほぼ完全に清掃がなるので、頭書の目的を達するものとなる。
【符号の説明】
【0077】
1: 受口前縁、 2,2b: 斜角前縁、 3,3b: V字形受口、
4: 斜角平面、 5,5b: 受口奥部、 6,6b: 斜角先端、
7: 山形、 7b: 山形突端、 8: 稜線、
9: 受口平坦部、 10: 谷空間、 11: 隘路、
12: 箒の刷毛先、 13: 砂塵、 14: 塵溜り、
15: 床面、
A: 塵取具、 B: 箒、 C: 箒の繊維体
イ: 塵取本体、 ロ: 塵受口部、 ハ: 前記イ,ロの連続部、である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵を掃き取る塵取具であって、床に接する塵受口端部がV字形をなすV字形受口(3)としこれを複数並列配置したものであることを特徴とする麈取具。
【請求項2】
塵を掃き取る塵取具であって、斜角平面(4)の一部または全部が一定の高さを有する山形(7)としたものであることを特徴とした特許請求項1に記載の塵取具。
【請求項3】
塵を掃き取る塵取具であって、並置し独立する山形(7)の隣接するもの同士が接近して隘路(11)を構成しその隘路を塵の掃き取り通路とするものであることを特徴とした特許請求項1および2に記載の塵取具。
【請求項4】
塵を掃き取る塵取具であって、塵取具体(イ)と塵受口部(ロ)との接点(ハ)及びその付近に外力により上下に折れ曲ることの可能な弾力を持たせたものであることを特徴とした特許請求項1〜3に記載の麈取具。
【請求項5】
塵取り用具の箒であり、刷毛部を構成する繊維体(C)を太さの異なる繊維を整列させた混合体により構成するものであることを特徴とした塵取り用具の箒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−139876(P2011−139876A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14751(P2010−14751)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(593162833)
【Fターム(参考)】