説明

塵芥収集車の安全スイッチ取付構造

【課題】 塵芥収容箱の後部に回動可能に設けた塵芥投入箱を、閉じ位置から開放位置まで回動できるようにした塵芥収集車において、塵芥投入箱の下降作動を防止する安全スイッチの操作をし易くした。
【解決手段】 塵芥収容箱1の後端開口の周囲を補強部材2により縁取り、この補強部材2の、塵芥収容箱1の底壁より下方に延びる延長部2eと、塵芥収容箱1の壁面1wとに跨がってブラケット7を溶接し、このブラケット7の外面に、上昇位置にある塵芥投入箱の下降操作を無効とする安全スイッチSsの入力部材Ssiを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フレームに塵芥収容箱を搭載し、その塵芥収容箱の後部に、内部に塵芥を投入可能な塵芥投入箱を設け、この塵芥投入箱の後部に塵芥収容箱を上下方向に回動可能に設けた塵芥収集車の安全スイッチ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
前記塵芥収集車では、塵芥収容箱内に収容塵芥が溜まると、積込位置にある塵芥投入箱を上方に回動して上昇位置(開放位置)に保持し、塵芥収容箱の後部排出口より収容塵芥を外部に排出するようにされるが、塵芥投入箱を長時間にわたり上昇位置に保持して、作業員が塵芥収容箱の下で、車両の整備、点検などのメンテナンスを行なうことがある。このとき、誤って塵芥投入箱の下降操作が行なわれると、重大な事故を引き起こすことがある。
【0003】
そこで、従来、作業員が操作できる位置に、自己保持スイッチ(安全スイッチ)を設け、作業員が上昇位置にある塵芥投入箱の下に進入する前に、そのスイッチを操作することにより、塵芥投入箱が作業中に下降操作されることがなく、前記事故の発生を未然に防止できるようにした安全装置は既に提案されている(後記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平5−12163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記特許文献1のものでは、自己保持スイッチは、塵芥収容箱の後部に設けられていて、そのスイッチの取付位置が特定されていないため、作業員によるスイッチの咄嗟の操作や、手さぐりによる操作がしにくいという問題がある。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたもので、従来の上記問題を解決することができる新規な塵芥収集車の安全スイッチ取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、車体フレームに塵芥収容箱を搭載し、この塵芥収容箱の後部に塵芥投入箱を設け、塵芥投入箱が塵芥収容箱の後端開口を閉じる閉じ位置から該後端開口を開放する開放位置まで回動して、塵芥収容箱内の収容塵芥を排出できるようにした、塵芥収集車において、
前記塵芥収容箱の後端開口の周囲を補強部材により縁取り、この補強部材の、塵芥収容箱の底壁より下方に延びる延長部と、塵芥収容箱の壁面とに跨がってブラケットを固定し、このブラケットの外面に、上昇位置にある塵芥投入箱の下降操作を無効とする安全スイッチの入力部材を設けたことを特徴としている。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項2の発明は、前記請求項1記載のものにおいて、前記安全スイッチの入力部材は、前記補強部材の延長部の外側面より内没した位置にあることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、安全スイッチの入力部材の取付位置が特定できるので、作業員による安全スイッチの咄嗟の操作がし易く、また塵芥収容箱の壁面強度を高めることができる。
【0010】
また、請求項2の発明によれば、安全スイッチの入力部材は、補強部材の延長部の外側面より内没した位置にあるので、その入力部材を外乱から保護することができ、また、外乱による誤操作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明安全装置を設けた塵芥収集車の全体縦断面図
【図2】塵芥排出行程から次回の積込行程に至る過程を説明する作用説明図
【図3】図1の3矢視仮想線囲い部分の拡大図
【図4】図3の4−4線に沿う断面図
【図5】安全スイッチおよびブラケットの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
【0013】
図1において、塵芥収集車Vの車体フレームF上には塵芥収容箱1が搭載されており、その塵芥収容箱1の底壁fは、後下がりの緩やかな傾斜面となっている。
【0014】
塵芥収容箱1の後面は、その上部から下部に向かって後方に傾斜しており、その全面にわたり後端開口1aが開口されており、その後端開口1aの周囲は、補強部材2により縁取り補強されており、この補強部材2は、塵芥収容箱1の底壁fよりも下方に延長される延長部2eを有する。
【0015】
塵芥収容箱1の後端開口1aには、塵芥を投入可能な塵芥投入口3aを後端に有する塵芥投入箱3が連設される。この塵芥投入箱3は、その上端部が塵芥収容箱1の後端上部に上下方向に回動可能に軸支4されている。塵芥収容箱1と塵芥投入箱3の上部間には、昇降シリンダC1がピン連結5,6されており、この昇降シリンダC1の伸縮作動により、塵芥投入箱3を軸支4部回りに上下方向に回動させることで、該塵芥投入箱3が、図2(A)実線で示すように塵芥収容箱1の後端開口1aを開放する排出位置(開放位置)と、図1、図2(B)(C)実線で示すように該後端開口1aを閉じる積込位置(閉じ位置)との間を随時に移動可能である。
【0016】
塵芥投入箱3内には、該投入箱3が前記積込位置にあるときに該投入箱3内の投入塵芥を塵芥収容箱1内に強制的に押込む積込行程を実行可能な塵芥積込装置Pが設けられる。この塵芥積込装置Pの構造は従来公知のもので、塵芥収容箱1の後端開口1aに臨む位置で塵芥投入箱3の左右両側壁に設けた案内フレーム11に沿って昇降可能に支持される昇降体10と、その昇降体10を強制昇降させる伸縮シリンダC2と、昇降体10の下部に回動可能に軸支13される圧縮板12と、この圧縮板12を強制回動させる押込シリンダC3とを備える。
【0017】
しかして、圧縮板12を後方位置に保持した状態で昇降体10を上昇位置から下降位置まで下降させることにより行なわれる一次圧縮作用と、昇降体10を下降位置に保持した状態で行なう圧縮板12の後方位置から前方位置への前方回動により行なわれる二次圧縮作用と、圧縮板12を前方位置に保持した状態で昇降体10を下降位置から上昇位置まで上昇させることにより行なわれる押込作用とで、塵芥投入箱3内の投入塵芥が塵芥収容箱1内に強制的に押し込まれる。
【0018】
また、塵芥収容箱1内には、積込位置にある塵芥投入箱3に対して進退可能な通称ディスチャージプレートと呼ばれる排出板Dが配設されており、塵芥投入箱3が前記排出位置にあるときに排出板Dを塵芥収容箱1内で後退させることで、塵芥収容箱1内の収容塵芥をその後端開口1aより強制的に排出可能となっている。
【0019】
排出板Dは、塵芥収容箱1の内部空間の横幅ほぼ一杯に亘る排出板本体Dmと、その本体背面に一体的に連結される支持枠Dsとで構成される。そして、排出板Dと塵芥収容箱1との間には、該排出板Dを起立姿勢で前後摺動可能に案内支持するガイド機構Gが設けられ、そのガイド機構Gは、支持枠Dsの左右両側下部に設けた転動輪又はスライダGaと、塵芥収容箱1の左右両内側面に設けた案内レールGbとで構成される。
【0020】
排出板Dの背面と塵芥収容箱1との間には、該排出板Dを塵芥投入箱3に対し進退駆動する一段の又は多段式(即ちテレスコピック型)の油圧式の排出シリンダC4が連結される。その排出シリンダC4は、塵芥収容箱1の底壁fにほぼ沿ってその前後方向に延びるように配置されている。
【0021】
しかして、排出シリンダC4の伸縮作動によれば、排出板Dを塵芥収容箱1内の最前進位置Df(図2の(B)実線位置)と、塵芥収容箱1の後端開口1aより後方に若干オーバハングした最後退位置Drr(図2の(A)実線位置)との間を往復動可能である。また積込行程の開始位置となる所定後退位置Dr(図2の(C)実線位置)が、前記最後退位置Drrよりも前側で、塵芥収容箱1の後端開口1a又はその近傍に設定される。
【0022】
塵芥収集車Vには、車載の昇降シリンダC1、伸縮シリンダC2、押込みシリンダC3および排出シリンダC4を作動させるための油圧回路(図示せず)が設けられ、その油圧回路に作動油を供給する油圧ポンプは、車載のエンジンに動力取出装置PTOを介して任意に断接可能に連結駆動できるようになっている。なお、油圧回路は従来公知のものであるので、その詳細な説明を省略する。
【0023】
さらに、塵芥収集車Vの適所、たとえば、その運転席Vcには、制御装置COを備えた操作盤8が設けられる。そして、この制御装置COは、昇降シリンダC1、伸縮シリンダC2、押込シリンダC3および排出シリンダC4の作動などを制御するものであり、この制御装置COには、後述する安全スイッチSsのほか、塵芥の作動に必要な、メインスイッチ、塵芥投入箱3の昇降スイッチ、積込スイッチ、投入箱昇降スイッチ、排出板進退スイッチなどの操作スイッチ群が接続されている。
【0024】
前記安全スイッチSsは、上昇位置にある塵芥投入箱3の、昇降スイッチによる下降操作を無効にして、その塵芥投入箱3の下降動作を直ちに停止させるものであり、塵芥収容箱1の後方に居る作業員が容易に操作できる位置に設けられる。
【0025】
以下、図1に、図3〜5を併せ参照して、この安全スイッチSsの取付構造について説明すると、前記補強部材2の下方に延びる延長部2eの左右両側の内面(塵芥投入箱2との取付面側)と、塵芥収容箱1の壁面1wの左右後端下縁には、それらに跨がってそれぞれブラケット7が溶接されている。これらのブラケット7は、補強部材2の延長部2eの前縁よりも前方、かつ塵芥収容箱1の底壁fよりも下方に延長されるスイッチ取付部7aを有し、このスイッチ取付部7aは、塵芥収容箱1の側面視で逆三角形状に形成されていて、その前縁は、下方に向かって延長部2e側に傾斜する傾斜面に形成されている。そして、前記スイッチ取付部7aに開口した取付孔9に前記安全スイッチSsが取付ネジをもって取り付けられ、その安全スイッチSsの入力部材Ssiは、スイッチ取付部7aの外面にあって補強部材2の外側面2oよりも内没した位置にある。
【0026】
しかして、安全スイッチSsの入力部材Ssiは、補強部材2の延長部2eの前方で、塵芥収容箱1の壁面1wの下方に位置する、ブラケット7の取付部7aの外面に設けられるので、入力部材Ssiの位置が特定され、塵芥投入箱1の後方に居る作業員が、安全スイッチSsの操作を素早く、的確に行なうことができる。また、入力部材Ssiは、補強部材2の外側面2oから内没した位置にあるので、障害物との接触が防止されて、外乱から保護することができる。さらに、安全スイッチSsを取り付けるブラケット7は、塵芥収容箱1の壁面1wを補強することができる。
【0027】
つぎに、図2を参照して、この実施例の作用について説明する。
〔積込行程〕
塵芥投入箱3内の投入塵芥の塵芥積込装置Pによる積込行程は、図2の(C)実線で示すように塵芥投入箱3を積込位置(閉じ位置)に、また排出板Dを塵芥収容箱1の後端近くの所定後退位置Drにそれぞれ保持した状態で開始される。
【0028】
その積込行程の実行により塵芥収容箱1内に押し込まれた塵芥は、排出板Dと塵芥積込装置2との間で適度に圧縮されつつ塵芥収容箱1内に収容される。この場合、排出板Dが収容塵芥より受ける圧縮反力を排出シリンダC4の背圧として検知可能な圧力センサを備えており、その圧力センサの検出圧力が所定値を超えると(即ち前記圧縮反力が上限値を超えると)、排出シリンダC4を収縮作動させて排出板Dを前進させ、それにより前記検出圧力が所定値以下になると排出シリンダC4の収縮作動を停止させ、このようにして塵芥収容箱1内の収容塵芥の増加に伴い排出板Dを徐々に小刻みに自動前進させる。
【0029】
そして、その排出板Dが図2の(C)鎖線で示す最前進位置Dfに達すると、塵芥収容箱1が収容塵芥で満杯となる。
[排出行程]
その後、塵芥収集車Vを塵芥処分場まで走行移動させ、図2(A)に実線で示すように昇降シリンダC1の伸長作動により塵芥投入箱3を排出位置まで上昇回動させて塵芥収容箱1の後端開口1aを開放した状態で、排出板Dを後退動作させて塵芥収容箱1内の収容塵芥を強制排出する。
【0030】
前記塵芥投入箱3の開放位置への回動による排出行程は、例えば排出板Dを、図2(A)の鎖線で示す最前進位置Dfから、積込行程開始の際の前記所定後退位置Drより更に後方位置(即ち塵芥収容箱1の後端開口1aより若干オーバハングした最後退位置Drr)まで後退動作させることで行われる(図2(A)実線位置)。
【0031】
そして、上記排出行程の終了後は、図2(B)〜(C)に実線で示すように、昇降シリンダC1の収縮作動により、塵芥投入箱3を積込位置(閉じ位置)まで復帰回動させると共に、排出板Dを前記所定後退位置Drに戻した状態で排出板Dを静止、待機させ、その後、この待機状態から、次回の塵芥積込装置Pによる積込行程を開始させる。
【0032】
ところで、塵芥収集車Vの整備、点検などのメンテナンス作業は、塵芥投入箱3を上昇位置に保持して、作業員が、その塵芥投入箱3の下方に進入して行なうことがあるが、その際に、左右の安全スイッチSsの入力部材Ssiのいずれか一方を落下防止側に操作すれば、塵芥投入箱3の昇降スイッチによる下降動作が無効とされる。このとき、入力部材Ssiは、前述したように、ブラケット7のスイッチ取付部7aの外面にあって、その位置が特定されているので、作業員は、その入力部材Ssiの操作を、緊急時にも素早く、的確に行なうことができる。また、入力部材Ssiは、補強部材2の外側面2oより内没した位置にあるので、これを外乱から保護することができる。さらに、ブラケット7のスイッチ取付部7aは、塵芥投入箱1の側面視で逆三角形状に形成されて、その前縁が下方に向かって延長部2e側に傾斜する傾斜面に形成されるので、ブラケット7を補強部材2の延長部2eと塵芥収容箱1の壁面1w間にコンパクトに収めることができ、これが障害物と干渉することがない。
【0033】
また、前記ブラケット7は、塵芥収容箱1の6壁面1wを補強するのに有効である。
【0034】
なお、前記メンテナンス作業の終了後は、入力部材Ssiを通常側に戻して塵芥投入箱3の下降操作を行なう。安全スイッチSsは、塵芥収集車の側面に配置されるので、塵芥投入箱3を下降させる際に、塵芥投入箱3の動作範囲外で安全スイッチSsを解除でき、安全である。
【0035】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はそれら実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。
【0036】
たとえば、前記実施例では、塵芥押込装置Pとして、昇降体10および圧縮板12の協働で塵芥押込作用を発揮するタイプのものを使用したが、本発明の塵芥積込装置としては、図示例の構造に代えて、塵芥投入箱内に、回転板及び押込板と、それらを回動駆動するアクチュエータとを備え、その両板の協働により塵芥投入箱内の投入塵芥を塵芥収容箱内に強制的に押し込めるようにしたタイプの塵芥押込装置を使用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 塵芥収容箱
1a 後端開口
1w 壁面
f 底面
2 補強部材
2e 延長部
2o 外側面
3 塵芥投入箱
7 ブラケット
F 車体フレーム
Ss 安全スイッチ
Ssi 入力部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(F)に塵芥収容箱(1)を搭載し、この塵芥収容箱(1)の後部に塵芥投入箱(3)を設け、塵芥投入箱(3)が塵芥収容箱(1)の後端開口(1a)を閉じる閉じ位置から該後端開口(1a)を開放する開放位置まで回動して、塵芥収容箱(1)内の収容塵芥を排出できるようにした、塵芥収集車において、
前記塵芥収容箱(1)の後端開口(1a)の周囲を補強部材(2)により縁取り、この補強部材(2)の、塵芥収容箱(1)の底壁(f)より下方に延びる延長部(2e)と、塵芥収容箱(1)の壁面(1w)とに跨がってブラケット(7)を固定し、このブラケット(7)の外面に、上昇位置にある塵芥投入箱(3)の下降操作を無効とする安全スイッチ(Ss)の入力部材(Ssi)を設けたことを特徴とする、塵芥収集車の安全スイッチ取付構造。
【請求項2】
前記安全スイッチ(Ss)の入力部材(Ssi)は、前記補強部材(2)の延長部(2e)の外側面(2o)より内没した位置にあることを特徴とする、前記請求項1記載の塵芥収集車の安全スイッチ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−126669(P2011−126669A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287293(P2009−287293)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000163095)極東開発工業株式会社 (215)
【Fターム(参考)】