説明

塵芥収集車の消火装置

【課題】塵芥収容箱内の全域に亘って、消火用ガスの濃度を可及的に迅速に消炎濃度に到達させることができ、かつ、その状態を一定時間維持することができる消火装置を提供することができる。
【解決手段】消火装置Aは、消火用ガスとしての二酸化炭素が高圧で封入された2本の第1高圧容器3A及び第2高圧ガス容器3Bと、第1及び第2高圧ガス容器3A、3Bにそれぞれ設けられた第1開放機構4A及び第2開放機構4Bと、第1及び第2開放機構4A、4Bにそれぞれ第1フィルタ5Aと第2フィルタ5Bを介して接続された第1流量調整弁6A及び第2流量調整弁6Bと、第1及び第2流量調整弁6A、6Bからの管路を合流させたノズル配管7と、ノズル配管7に接続されたガス放射ノズル8と、第1及び第2開放機構4A、4Bの作動を制御する制御盤9とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵芥収集車の塵芥収容箱内で発生した火災を消火又は抑制する消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
塵芥収集車は、車体と、車体に搭載された塵芥収容箱と、塵芥収容箱の後部開口に取り付けられた塵芥投入箱と、塵芥投入箱の内部に装備された塵芥積込装置を主体とし、塵芥投入箱に投入された塵芥を塵芥積込装置によって塵芥収容箱内に押込んで収容するように構成されている。公知のように、塵芥積込装置には、揺動自在な押込板と、この押込板の下方に位置する回転自在な回転板とを備えた回転式と、昇降自在なパッカープレートと、このパッカープレートの下端部に揺動自在に設けられたプレスプレートとを備えたプレス式とがある。
【0003】
塵芥収集車で収集する廃棄物には、紙やプラスチックなどの可燃物の他に、ライターや可燃性ガスボンベなどの引火性物が混入していることがあり、これら引火性物が塵芥積込時の圧縮や摩擦等の影響で発火して火災が発生する場合が多い。塵芥収容箱内での火災の消火及び拡大抑制の困難性の程度は、火災発生時における塵芥の積載状況によっても異なり、塵芥収容箱内に空き空間があり、充分な空気が存在する状況下で火災が発生すると、火災の拡大進行が早く、消火が困難である。特に回転式の積込装置が搭載された塵芥収集車では、塵芥収容箱への塵芥の積載率が100%未満であると、塵芥収容箱内の上部に空き空間ができるため、このような事態に陥り易い傾向がある。
【0004】
上記のような塵芥収集車の火災を消火又は抑制する手段として、下記の特許文献1には、塵芥収容箱内の後方(塵芥投入箱側)の天井部に配置したガス放出ノズルと、車体に搭載した2本の消火用圧力ガス容器とを接続パイプで接続し、特定の1本の消火用圧力ガス容器からの消火用ガス(二酸化炭素ガス等)をガス放出ノズルから塵芥収容箱内の後部に放射し、その特定の1本の消火用圧力ガス容器によるガス放射で間に合わない場合においては、あらかじめ設定しておいた一定の時間経過と同時に別の1本の消火用圧力ガス容器からの消火用ガスをガス放出ノズルから塵芥収容箱内の後部に継続して放射する消火燃焼抑制システムが記載されている。これにより、最小限の消火用ガス量により塵芥収容部内での火災拡大を抑制し、その間に塵芥収集車を安全な場所に移動させてから消防車あるいは消火栓使用などによる本格的で、十分な消火活動を実施して塵芥収集車自体の焼損を最低限に留めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−284194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガス系消火剤を用いて塵芥収容箱内の火災を消火又は抑制する場合、消火用ガスの濃度を塵芥収容箱内の全域に亘って所定の消炎濃度まで可及的に迅速に高め、かつ、その消炎濃度を一定時間維持することが重要である。しかしながら、特許文献1に記載された消火燃焼抑制システムでは、塵芥収容箱内の後方天井部に配置したガス放出ノズルから塵芥収容箱内に消火用ガスを放射する構成にしており、ガス供給位置(塵芥収容箱の後部)が塵芥投入箱に近く気密性が低いため、放射された消火用ガスの一部が塵芥投入箱の隙間から外部に流出して消炎に有効利用されないという問題がある。しかも、消火用ガスが塵芥収容箱内に一定流量で放射されるため、消火用ガスの濃度が塵芥収容箱内の全域に亘って消炎濃度に達するまでに時間がかかり、特に塵芥収容箱の前部で発生した火災の消火又は抑制効果が十分でないという問題点もある。
【0007】
上記に問題点に鑑み、本発明は、塵芥収容箱内の全域に亘って、消火用ガスの濃度を可及的に迅速に消炎濃度に到達させることができ、かつ、その状態を一定時間維持することができる消火装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、塵芥収容箱と、塵芥収容箱の後方開口部に取り付けられた塵芥投入箱と、塵芥投入箱の内部に装備された塵芥積込装置とを備えた塵芥収集車の消火装置において、消火用ガスが封入された高圧ガス容器と、高圧ガス容器に設けられた開放機構と、開放機構の下流側に接続された流量調整機構と、流量調整機構にノズル配管を介して接続され、塵芥収容箱内の前方上部に設置されたガス放射ノズルとを備え、流量調整機構は、開放機構の作動により開放された高圧ガス容器から放出される消火用ガスを、相対的に大流量で流通させる第1状態と、相対的に小流量で流通させる第2状態とを有し、開放機構の作動開始時から所定時間までは、流量調整機構の第1状態により、高圧ガス容器からの消火用ガスを大流量でガス放射ノズルに流通させて塵芥収容箱内に放射し、所定時間に達した以降は、流量調整機構の第2状態により、高圧ガス容器からの消火用ガスを小流量でガス放射ノズルに流通させて塵芥収容箱内に放射する構成を提供する。ここで、消火用ガスとして、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アルゴンガス等を用いることができるが、二酸化炭素ガスが好ましい。
【0009】
上記構成において、開放機構がそれぞれ設けられた2本の高圧ガス容器を備え、流量調整機構は、一方の高圧ガス容器の開放機構の下流側に接続され、一方の高圧ガス容器から放出される消火用ガスを相対的に大流量で流通させる第1流量調整弁と、他方の高圧ガス容器の開放機構の下流側に接続され、他方の高圧ガス容器から放出される消火用ガスを相対的に小流量で流通させる第2流量調整弁とを有し、2本の高圧ガス容器の開放機構を同時に作動させ、2本の高圧ガス容器からの消火用ガスを第1及び第2流量調整弁を介して大流量でガス放射ノズルに流通させ、一方の高圧ガス容器からの消火用ガスの放出が完了した後は、他方の高圧ガス容器からの消火用ガスを第2流量調整弁を介して小流量でガス放射ノズルに流通させる構成とすることができる。
【0010】
また、上記構成において、開放機構が設けられた1本の高圧ガス容器を備え、流量調整機構は、高圧ガス容器の開放機構の下流側に接続された切換弁と、切換弁に分岐接続され、高圧ガス容器から放出される消火用ガスを、相対的に大流量で流通させる第1流量調整弁と、相対的に小流量で流通させる第2流量調整弁とを有し、開放機構の作動開始時から所定時間までは、切換弁により、高圧ガス容器からの消火用ガスを第1流量調整弁を介して大流量でガス放射ノズルに流通させ、所定時間に達した時点で、切換弁の切換えにより、高圧ガス容器からの消火用ガスを第2流量調整弁を介して小流量で前記ガス放射ノズルに流通させる構成としても良い。
【0011】
また、上記構成において、開放機構が設けられた1本の高圧ガス容器を備え、流量調整機構は、高圧ガス容器の開放機構の下流側に接続され、高圧ガス容器から放出される消火用ガスを相対的に大流量で流通させる第1流量調整弁と、第1流量調整弁の下流側に接続された切換弁と、切換弁に分岐接続され、第1流量調整弁を介して流通する消火用ガスを、相対的に小流量で流通させる第2流量調整弁と、第1流量調整弁と同じ大流量で流通させる分岐配管部とを有し、開放機構の作動開始時から所定時間までは、切換弁により、第1流量調整弁を介して流通する消火用ガスを分岐配管部を介して大流量でガス放射ノズルに流通させ、所定時間に達した時点で、切換弁の切換えにより、高圧ガス容器から第1流量調整弁を介して流通する消火用ガスを第2流量調整弁を介して小流量でガス放射ノズルに流通させる構成としても良い。
【0012】
また、以上の構成において、切換時間設定器をさらに備え、開放機構の作動開始時からの経過時間が、切換時間設定器で設定した切換設定時間に達した時点で切換弁を切換える構成としても良い。
【0013】
本発明は、揺動自在な押込板と、押込板の下方に位置する回転自在な回転板とを備えた回転式塵芥積込装置を備えた塵芥収集車の消火装置に好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、塵芥収容箱内の全域に亘って、消火用ガスの濃度を可及的に迅速に消炎濃度に到達させることができ、かつ、その状態を一定時間維持することができる消火装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る塵芥収集車の塵芥収容箱とその後方開口部に開閉自在に取り付けられる塵芥投入箱を模式的に示す図である。
【図2】実施形態に係る消火装置の回路図である。
【図3】他の実施形態に係る消火装置の回路図である。
【図4】他の実施形態に係る消火装置の回路図である。
【図5】シミュレーション結果を示す図である。
【図6】シミュレーション結果を示す図である。
【図7】シミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、実施形態に係る塵芥収集車の塵芥収容箱1とその後方開口部に開閉自在に取り付けられる塵芥投入箱2を模式的に示している。塵芥収容箱1は図示されていない車体枠に配置され、塵芥収容箱1より前方に運転室が配設されている。塵芥投入箱2の内部には図示されていない塵芥積込装置が装備されており、この実施形態において、塵芥積込装置は、揺動自在な押込板と、この押込板の下方に位置する回転自在な回転板とを備えた回転式塵芥積込装置である。塵芥投入箱2に投入された塵芥Gは、塵芥積込装置によって塵芥収容箱1内に押込まれて収容される。また、塵芥収容箱1内の前方(運転室側)の上部(天井部)に、消火装置Aを構成する一又は複数のガス放射ノズル8設置されている。
【0018】
図2に示すように、この実施形態において、消火装置Aは、消火用ガスとしての二酸化炭素が高圧で封入された2本の第1高圧容器3A及び第2高圧ガス容器3Bと、第1及び第2高圧ガス容器3A、3Bにそれぞれ設けられた第1開放機構4A及び第2開放機構4Bと、第1及び第2開放機構4A、4Bにそれぞれ第1フィルタ5Aと第2フィルタ5Bを介して接続された第1流量調整弁6A及び第2流量調整弁6Bと、第1及び第2流量調整弁6A、6Bからの管路を合流させたノズル配管7と、ノズル配管7に接続されたガス放射ノズル8と、第1及び第2開放機構4A、4Bの作動を制御する制御盤9とを備えている。この実施形態では、第1流量調整弁6Aと第2流量調整弁6Bにより、流量調整機構6が構成される。
【0019】
第1及び第2開放機構4A、4Bは、制御盤9から起動信号が入力されると作動して、第1及び第2高圧ガス容器3A、3Bを開放し、第1及び第2高圧ガス容器3A、3Bから二酸化炭素ガスを放出させる。第1及び第2の流量調整弁6A、6Bは、流量の設定値が相互間で異なっており、第1流量調整弁6Aの流量設定値は相対的に大きく(大流量値設定)、第2流量調整弁6Bの流量設定値は相対的に小さい(小流量値設定)。例えば、第1流量調整弁6Aとして、オリフィス径が相対的に大きい流量絞り弁、第2流量調整弁6Bとして、オリフィス径が相対的に小さい流量絞り弁を用いることができる。
【0020】
例えば、作業者が塵芥収容箱1内での火災発生を感知し、制御盤9の起動ボタンを押すと、制御盤9から第1及び第2開放機構4A、4Bに起動信号が出力され、第1及び第2開放機構4A、4Bが同時に作動する。これにより、第1及び第2高圧ガス容器3A、3Bが同時に開放され、第1及び第2高圧ガス容器3A、3Bから二酸化炭素ガスが放出される。第1及び第2高圧ガス容器3A、3Bから放出された二酸化炭素ガスは、それぞれ、第1フィルタ5Aから第1流量調整弁6A、第2フィルタ5Bから第2流量調整弁6Bを介してノズル配管7に流入し、ノズル配管7を流通してガス放射ノズル8から塵芥収容箱1内の前方上部空間に下向きに放射される。一方、上述のように、第1及び第2流量調整弁6A、6Bは流量設定値が相互間で異なるため、第1及び第2開放機構4A、4Bの作動開始時からの経過時間が所定時間に達すると、第1流量調整弁6Aにより大流量値に設定された第1高圧ガス容器3A内の二酸化炭素ガスが先に放出し尽くされ、その後は、第2流量調整弁6Aにより小流量値に設定された第2高圧ガス容器3B内の二酸化炭素ガスのみがガス放射ノズル8から放射される。従って、消火装置Aの起動開始時(第1及び第2開放機構4A、4Bの作動開始時)から所定時間までは、第1及び第2高圧ガス容器3A、3Bの双方からガス放射ノズル8に二酸化炭素ガスが供給されて大流量で塵芥収容箱1内に放射され、所定時間経過後は、第2高圧ガス容器3Bのみからガス放射ノズル8に二酸化炭素ガスが供給されて小流量で塵芥収容箱1内に放射される。
【0021】
このように、ガス放射ノズル8から塵芥収容箱1内の前方上部空間に二酸化炭素ガス(消火用ガス)を放射する構成とすることにより、気密性の低い後方上部空間に放射する場合に比べて、二酸化炭素ガスの外部への流出が少なくなり、二酸化炭素ガスを消炎に有効利用できると共に、消火装置Aの起動開始から所定時間までは二酸化炭素ガスを比較的大流量で塵芥収容箱1内に放射することにより、二酸化炭素ガスの濃度を塵芥収容箱1内の全域に亘って迅速に消炎濃度に到達させることができ、かつ、消火装置Aの起動開始から所定時間経過後は二酸化炭素ガスを比較的小流量で塵芥収容箱1内に供給することにより、二酸化炭素ガスの消費量を抑制しつつ消炎濃度を一定時間維持することができる。これにより、比較的少ない二酸化炭素ガス量で塵芥収容箱内での火災を効果的に消火し、または、火災の拡大進行を効果的に抑制し、その間に本格的な消火活動を実施して塵芥収集車自体の焼損を最低限に留めることができる。
【0022】
図3は、他の実施形態に係る消火装置Bを示している。この実施形態の消火装置Bは、消火用ガスとしての二酸化炭素が高圧で封入された1本の高圧ガス容器3と、高圧ガス容器3に設けられた開放機構4と、開放機構4にフィルタ5を介して接続された切換弁(三方切換弁)、例えば電磁切換弁(電磁三方切換弁)6Cと、電磁切換弁6Cに分岐接続された第1流量調整弁6A及び第2流量調整弁6Bと、第1及び第2流量調整弁6A、6Bからの管路を合流させたノズル配管7と、ノズル配管7に接続されたガス放射ノズル8と、開放機構4の作動を制御する制御盤9と、切換時間設定器10とを備えている。
【0023】
開放機構4は、制御盤9から起動信号が入力されると作動して、高圧ガス容器3を開放し、高圧ガス容器3から二酸化炭素ガスを放出させる。高圧ガス容器3から放出された二酸化炭素ガスは、フィルタ5及び電磁切換弁6Cを介して第1流量調整弁6A又は第2流量調整弁6Bに流入する。第1及び第2の流量調整弁6A、6Bは、流量の設定値が相互間で異なっており、第1流量調整弁6Aの流量設定値は相対的に大きく(大流量値設定)、第2流量調整弁6Bの流量設定値は相対的に小さい(小流量値設定)。電磁切換弁6Cの切換えは、制御盤9から電磁切換弁6Cに切換信号を出力することによって行い、制御盤9から電磁切換弁6Cに切換信号を出力する時間は、切換時間設定器10によって設定することができる。例えば、消火装置Aの起動初期(制御盤9から切換信号が入力されていないとき)、電磁切換弁6Cは第1流量調整弁6Aと連通する位置に保持され、消火装置Aの起動開始時(開放機構4の作動開始時)からの経過時間が切換時間設定器10で設定した切換時間に達した時点で、制御盤9から電磁切換弁6Cに切換信号が入力されて、電磁切換弁6Cが第2流量調整弁6Bと連通する位置に切換る。この実施形態では、第1流量調整弁6A、第2流量調整弁6B及び電磁切換弁6Cにより、流量調整機構6が構成される。
【0024】
例えば、作業者は塵芥収容箱1内での火災発生を感知すると、運転室のモニター画面等に表示された塵芥の積載量と電磁切換弁6Cの切換時間との関係データに基づいて(塵芥の積載量に応じて電磁切換弁6Cの最適な切換時間を予め実験等により求めておき、その関係をグラフや表で表示する。)、切換時間設定器10で切換時間を設定してから、制御盤9の起動ボタンを押す。これにより、制御盤9から開放機構4に起動信号が出力され、開放機構4が作動し、高圧ガス容器3が開放されて、高圧ガス容器3から二酸化炭素ガスが放出される。同時に、切換時間設定器10が作動して、起動開始時からの経過時間が積算される。起動開始時から切換設定時間に達するまでの間、電磁切換弁6Cは第1流量調整弁6Aと連通する位置に保持されているので、高圧ガス容器3から放出された二酸化炭素ガスは、フィルタ5から電磁切換弁6C及び第1流量調整弁6Aを介してノズル配管7に流入し、ノズル配管7を流通してガス放射ノズル8から塵芥収容箱1内の前方上部空間に下向きに放射される。そして、起動開始時からの経過時間が切換時間設定器10に設定された切換設定時間に達すると、制御盤9から電磁切換弁6Cに切換信号が入力されて、電磁切換弁6Cが第2流量調整弁6Bと連通する位置に切換り、高圧ガス容器3から放出された二酸化炭素ガスは、フィルタ5から電磁切換弁6C及び第2流量調整弁6Bを介してノズル配管7に流入し、ノズル配管7を流通してガス放射ノズル8から塵芥収容箱1内の前方上部空間に放射される。
【0025】
この実施形態の消火装置Bは、上述した実施形態の消火装置Aと同様の効果を奏することに加え、高圧ガス容器3が1本であるので、消火装置Aに比べて、全体構造を軽量コンパクトにすることができ、また、消火用ガス(二酸化炭素ガス)の大流量放射と小流量放射との切換時間を塵芥の積載量等に応じて最適設定できるという利点がある。
【0026】
図4は、他の実施形態に係る消火装置Cを示している。この実施形態の消火装置Cは、消火用ガスとしての二酸化炭素が高圧で封入された1本の高圧ガス容器3と、高圧ガス容器3に設けられた開放機構4と、開放機構4にフィルタ5を介して接続された第1流量調整弁6Aと、第1流量調整弁6Aの下流側に接続された電磁切換弁6Cと、電磁切換弁6Cに分岐接続された分岐配管部6D及び第2流量調整弁6Bと、分岐配管部6Dと第2流量調整弁6Bからの管路とを合流させたノズル配管7と、ノズル配管7に接続されたガス放射ノズル8と、開放機構4の作動を制御する制御盤9と、切換時間設定器10とを備えている。
【0027】
開放機構4は、制御盤9から起動信号が入力されると作動して、高圧ガス容器3を開放し、高圧ガス容器3から二酸化炭素ガスを放出させる。高圧ガス容器3から放出された二酸化炭素ガスは、第1流量調整弁6Aを介して電磁切換弁6Cに流入し、電磁切換弁6Cを介して分岐配管部6D又は第2流量調整弁6Bに流入する。第1及び第2の流量調整弁6A、6Bは、流量の設定値が相互間で異なっており、第1流量調整弁6Aの流量設定値は相対的に大きく(大流量値設定)、第2流量調整弁6Bの流量設定値は相対的に小さい(小流量値設定)。電磁切換弁6Cの切換は、制御盤9から電磁切換弁6Cに切換信号を出力することによって行い、制御盤9から電磁切換弁6Cに切換信号を出力する時間は、切換時間設定器10によって設定することができる。例えば、消火装置Aの起動初期(制御盤9から切換信号が入力されていないとき)、電磁切換弁6Cは分岐配管部6Dと連通する位置に保持され、起動開始時からの経過時間が切換時間設定器10に設定された切換設定時間に達すると、制御盤9から電磁切換弁6Cに切換信号が入力され、電磁切換弁6Cが第2流量調整弁6Bと連通する位置に切換る。
【0028】
例えば、作業者は塵芥収容箱1内での火災発生を感知すると、運転室のモニター画面等に表示された塵芥の積載量と電磁切換弁6Cの切換時間との関係データに基づいて(塵芥の積載量に応じて電磁切換弁6Cの最適な切換時間を予め実験等により求めておき、その関係をグラフや表で表示する)、切換時間設定器10で切換時間を設定してから、制御盤9の起動ボタンを押す。これにより、制御盤9から開放機構4に起動信号が出力され、開放機構4が作動し、高圧ガス容器3が開放されて、高圧ガス容器3から二酸化炭素ガスが放出される。同時に、切換時間設定器10が作動して、起動開始時からの時間が積算される。起動開始時から切換設定時間に達するまでの間、電磁切換弁6Cは分岐配管部6Dと連通する位置に保持されているので、高圧ガス容器3から放出された二酸化炭素ガスは、フィルタ5から第1流量調整弁6A、電磁切換弁6C及び分岐配管部6Dを介してノズル配管7に流入し、ノズル配管7を流通してガス放射ノズル8から塵芥収容箱1内の前方上部空間に放射される。そして、起動開始時からの経過時間が切換時間設定器10に設定された切換設定時間に達すると、制御盤9から電磁切換弁6Cに切換信号が入力されて、電磁切換弁6Cが第2流量調整弁6Bと連通する位置に切換り、高圧ガス容器3から放出された二酸化炭素ガスは、フィルタ5から第1流量調整弁6A、電磁切換弁6C及び第2流量調整弁6Bを介してノズル配管7に流入し、ノズル配管7を流通してガス放射ノズル8から塵芥収容箱1内の前方上部空間に放射される。
【0029】
この実施形態の消火装置Cは、上述した実施形態の消火装置Bと同様の効果を奏するが、高圧ガス容器3から放出された二酸化炭素ガスが第1流量調整弁6Aを介して電磁切換弁6Cに流入する構成であるので、電磁切換弁6Cは消火装置Bの電磁切換弁6Cに比べて低圧で作動するタイプのものを使用することができ、これによりコストダウンを図ることができる。
【実施例1】
【0030】
実験によると、n−ヘプタンに対する二酸化炭素ガスの消炎濃度は22%であり、塵芥収容箱内で発生した火災を消火し又は抑制するためには、二酸化炭素ガスの濃度を塵芥収容箱内の全域に亘って消炎濃度22%まで可及的に迅速に高め、かつ、消炎濃度22%以上の濃度を一定時間維持することが重要である。
【0031】
図5〜図7は、ガス放射ノズルの設置位置と二酸化炭素ガスの放射態様によって、ガス放射開始時から所定時間経過後における塵芥収容箱内の二酸化炭素ガス濃度分布がどのようになるかをシミュレーションした結果を示している。シミュレーション結果は、塵芥収容箱内を5つの領域に分割し、各領域の二酸化炭素濃度を数値で示すと共に、濃度に応じた濃淡で表示している。実際には、濃淡は色彩の濃淡で表示されるが、図5〜図7では、便宜上、濃淡を黒点の密度で表示している。
【0032】
図7は、ガス放射ノズルを塵芥収容箱内に後方上部に設置し、ガス放射ノズルから流量一定で下向きに二酸化炭素ガスを放射する場合のシミュレーション結果であり、ガス放射ノズルの設置位置と二酸化炭素ガスの放射態様は、上述した特許文献1と同様である。同図に示すように、放射開始から600秒経過しても、塵芥収容箱内の前方領域の二酸化炭素濃度は未だ消炎濃度22%に到達せず、前方領域での火災に対する消火又は抑制効果が小さいことが分かる。
【0033】
図6は、ガス放射ノズルを塵芥収容箱内に前方上部に設置し、ガス放射ノズルから流量一定で下向きに二酸化炭素ガスを放射する場合のシミュレーション結果である。同図に示すように、塵芥収容箱内の全域の二酸化炭素濃度が消炎濃度22%に到達した時間が放射開始から230秒であり、図7の構成に比べるとかなり改善されたものの、消炎濃度22%に到達する時間が、ガス系消火装置の目安である消炎濃度到達1分以内に比較して未だかなり長い。
【0034】
図5は、ガス放射ノズルを塵芥収容箱内に前方上部に設置し、ガス放射ノズルから大流量と小流量の2段階切換えで下向きに二酸化炭素ガスを放射する場合のシミュレーション結果である。すなわち、1本の高圧ガス容器に貯蔵された二酸化炭素量に対し、その50%を1分間で放射し、残りの50%をその後の9分間に亘って均一に放射する。同図に示すように、塵芥収容箱内の全域の二酸化炭素濃度が消炎濃度22%に到達した時間が放射開始から約40秒であり、図6の構成に比べても大幅に改善され、消炎濃度22%に到達する時間が、ガス系消火装置の目安である消炎濃度到達1分以内を十分に達成できる。また、二酸化炭素ガスの濃度が消炎濃度22%に到達した後も、消炎濃度22%以上の濃度を放射終了時まで維持することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 塵芥収容箱
2 塵芥投入箱
3 高圧ガス容器
3A 第1高圧ガス容器
3B 第2高圧ガス容器
4 開放機構
4A 第1開放機構
4B 第2開放機構
6 流量調整機構
6A 第1流量調整弁
6B 第2流量調整弁
6C 電磁切換弁
6D 分岐配管部
7 ノズル配管
8 ガス放出ノズル
9 制御盤
10 切換時間設定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵芥収容箱と、該塵芥収容箱の後方開口部に取り付けられた塵芥投入箱と、該塵芥投入箱の内部に装備された塵芥積込装置とを備えた塵芥収集車の消火装置において、
消火用ガスが封入された高圧ガス容器と、該高圧ガス容器に設けられた開放機構と、該開放機構の下流側に接続された流量調整機構と、該流量調整機構にノズル配管を介して接続され、前記塵芥収容箱内の前方上部に設置されたガス放射ノズルとを備え、
前記流量調整機構は、前記開放機構の作動により開放された前記高圧ガス容器から放出される消火用ガスを、相対的に大流量で流通させる第1状態と、相対的に小流量で流通させる第2状態とを有し、
前記開放機構の作動開始時から所定時間までは、前記流量調整機構の第1状態により、前記高圧ガス容器からの消火用ガスを大流量で前記ガス放射ノズルに流通させて前記塵芥収容箱内に放射し、
前記所定時間に達した以降は、前記流量調整機構の第2状態により、前記高圧ガス容器からの消火用ガスを小流量で前記ガス放射ノズルに流通させて前記塵芥収容箱内に放射することを特徴とする塵芥収集車の消火装置。
【請求項2】
前記開放機構がそれぞれ設けられた2本の前記高圧ガス容器を備え、
前記流量調整機構は、一方の前記高圧ガス容器の開放機構の下流側に接続され、該一方の高圧ガス容器から放出される消火用ガスを相対的に大流量で流通させる第1流量調整弁と、他方の前記高圧ガス容器の開放機構の下流側に接続され、該他方の高圧ガス容器から放出される消火用ガスを相対的に小流量で流通させる第2流量調整弁とを有し、
2本の前記高圧ガス容器の開放機構を同時に作動させ、2本の前記高圧ガス容器からの消火用ガスを前記第1及び第2流量調整弁を介して大流量で前記ガス放射ノズルに流通させ、
前記一方の高圧ガス容器からの消火用ガスの放出が完了した後は、前記他方の高圧ガス容器からの消火用ガスを前記第2流量調整弁を介して小流量で前記ガス放射ノズルに流通させることを特徴とする請求項1に記載の塵芥収集車の消火装置。
【請求項3】
前記開放機構が設けられた1本の前記高圧ガス容器を備え、
前記流量調整機構は、前記高圧ガス容器の開放機構の下流側に接続された切換弁と、該切換弁に分岐接続され、前記高圧ガス容器から放出される消火用ガスを、相対的に大流量で流通させる第1流量調整弁と、相対的に小流量で流通させる第2流量調整弁とを有し、
前記開放機構の作動開始時から所定時間までは、前記切換弁により、前記高圧ガス容器からの消火用ガスを前記第1流量調整弁を介して大流量で前記ガス放射ノズルに流通させ、
前記所定時間に達した時点で、前記切換弁の切換えにより、前記高圧ガス容器からの消火用ガスを前記第2流量調整弁を介して小流量で前記ガス放射ノズルに流通させることを特徴とする請求項1に記載の塵芥収集車の消火装置。
【請求項4】
前記開放機構が設けられた1本の前記高圧ガス容器を備え、
前記流量調整機構は、前記高圧ガス容器の開放機構の下流側に接続され、前記高圧ガス容器から放出される消火用ガスを相対的に大流量で流通させる第1流量調整弁と、該第1流量調整弁の下流側に接続された切換弁と、該切換弁に分岐接続され、前記第1流量調整弁を介して流通する消火用ガスを、相対的に小流量で流通させる第2流量調整弁と、前記第1流量調整弁と同じ大流量で流通させる分岐配管部とを有し、
前記開放機構の作動開始時から所定時間までは、前記切換弁により、前記第1流量調整弁を介して流通する消火用ガスを前記分岐配管部を介して大流量で前記ガス放射ノズルに流通させ、
前記所定時間に達した時点で、前記切換弁の切換えにより、前記高圧ガス容器から前記第1流量調整弁を介して流通する消火用ガスを前記第2流量調整弁を介して小流量で前記ガス放射ノズルに流通させることを特徴とする請求項1に記載の塵芥収集車の消火装置。
【請求項5】
切換時間設定器をさらに備え、前記開放機構の作動開始時からの経過時間が、前記切換時間設定器で設定した切換設定時間に達した時点で前記切換弁を切換えることを特徴とする請求項3又は4に記載の塵芥収集車の消火装置。
【請求項6】
前記塵芥積込装置は、揺動自在な押込板と、該押込板の下方に位置する回転自在な回転板とを備えた回転式塵芥積込装置であることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の塵芥収集車の消火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−201664(P2011−201664A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71297(P2010−71297)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000192073)株式会社モリタホールディングス (80)
【Fターム(参考)】