説明

塵芥収集車

【課題】シリンダロッドに付着あるいは溶着した塵芥が摺動シリンダ内に混入するのを防いで、摺動シリンダからの油漏れや油圧ポンプのキャビテーションなど油圧機器の故障を防止する。
【解決手段】摺動シリンダ13を塵芥投入箱6の左右側壁の外方にそれぞれ配置する。摺動板10を左右の摺動シリンダ13のシリンダロッド13a先端と摺動板支持軸12によって結合する。塵芥投入箱6の左右側壁に摺動板支持軸12が移動するための摺動用開口31を形成する。摺動シリンダ13のシリンダチューブ13b先端にシリンダロッド13aに付着あるいは溶着した塵芥を掻き取る塵芥掻取手段32を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体上に搭載された塵芥収容箱と、この塵芥収容箱の後方開口部に連設され、内部に塵芥積込装置を装備した塵芥投入箱とを備えた塵芥収集車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体上に搭載された塵芥収容箱と、この塵芥収容箱の後方開口部に連設され、内部に塵芥積込装置を装備した塵芥投入箱とを備え、塵芥積込装置は、上記塵芥投入箱内において摺動シリンダの伸縮動作により上下方向に摺動自在な摺動板と、該摺動板の下端部に揺動シリンダの伸縮動作により前後方向に揺動自在な圧縮板とを備え、上記摺動シリンダ及び揺動シリンダの伸縮動作により摺動板と圧縮板とが反転、下降、圧縮、上昇を1サイクルとして作動することで、投入口を通じて塵芥投入箱に投入された塵芥を塵芥収容箱に積込むように構成され塵芥収集車は知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−244190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の塵芥収集車では、摺動シリンダは、塵芥投入箱の左右側壁の外方にそれぞれ配置され、摺動板は、左右の摺動シリンダのシリンダロッド先端と摺動板支持軸によって結合されているので、摺動板支持軸が上下に移動するために、塵芥投入箱の左右側壁には、摺動板の摺動方向に沿って伸びる摺動用開口が形成されている。
【0004】
このため、塵芥投入箱内の塵芥、例えば、発泡スチロール、ビニール袋等の樹脂製塵芥が摺動用開口から漏れだし、摺動シリンダに付着する場合がある。摺動シリンダには、通常ダストシールが設けられ、シリンダロッドに付着した塵芥がシリンダ内に入らないように構成されている。しかし、樹脂製塵芥が、シリンダロッドに付着したときに、繰り返し伸縮された摺動シリンダの持つ熱により溶ける場合があり、これら溶着した塵芥により、シリンダのシールが破損し、摺動シリンダから油が漏れるという問題があった。
【0005】
さらに、溶着した塵芥が摺動シリンダのシールを通り過ぎ、シリンダの作業油に混入する場合もあり、そのときには、油圧回路に設けたフィルタにこれら塵芥が付着し、油圧ポンプのキャビテーションなど油圧機器に各種の問題を引き起こしていた。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シリンダロッドに付着した塵芥が摺動シリンダ内に混入するのを防いで、摺動シリンダからの油漏れや油圧ポンプのキャビテーションなど油圧機器の故障を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、塵芥掻取手段により、摺動シリンダのシリンダロッドに付着した塵芥を掻き取るようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明では、車体上に搭載された塵芥収容箱と、該塵芥収容箱の後方開口部に連設され、内部に塵芥積込装置を装備した塵芥投入箱とを備えた塵芥収集車を対象とする。
【0009】
そして、上記塵芥積込装置は、上記塵芥投入箱内において摺動シリンダの伸縮動作により上下方向に摺動自在な摺動板と、該摺動板の下端部に揺動シリンダの伸縮動作により前後方向に揺動自在な圧縮板とを備え、
上記摺動シリンダ及び揺動シリンダの伸縮動作により摺動板と圧縮板とが反転、下降、圧縮及び上昇を1サイクルとして作動することで、投入口を通じて塵芥投入箱に投入された塵芥を塵芥収容箱に積込むように構成され、
上記摺動シリンダは、上記塵芥投入箱の左右側壁の外方にそれぞれ配置され、
上記摺動板は、上記左右の摺動シリンダのシリンダロッド先端と摺動板支持軸によって結合され、
上記塵芥投入箱の左右側壁には、上記摺動板支持軸が移動するための摺動用開口が形成され、
上記摺動シリンダのシリンダチューブ先端には、上記シリンダロッドに付着した塵芥を掻き取る塵芥掻取手段が設けられている。
【0010】
すなわち、塵芥投入箱の左右側壁に設けた摺動用開口は、摺動板支持軸が移動するために必須なものであるが、この摺動用開口から塵芥投入箱内の塵芥が漏れ出す場合がある。漏れ出した樹脂製塵芥が、シリンダロッドに付着したときに、繰り返し伸縮された摺動シリンダの持つ熱により溶けて溶着する場合がある。しかし、上記の構成によると、摺動シリンダのシリンダチューブ先端に設けた塵芥掻取手段により、シリンダロッドを縮退させる際にシリンダロッドに付着あるいは溶着した樹脂製塵芥等を掻き取るので、摺動シリンダのシールが破損したり、塵芥が摺動シリンダのシールを通り過ぎてシリンダの作業油に混入して油圧回路に設けたフィルタにこれら塵芥が付着したりすることはない。
【0011】
第2の発明では、上記塵芥掻取手段は、上記シリンダロッドの外径よりも若干大きい内径を有して該シリンダロッド外周の少なくとも一部を覆うように、シリンダチューブ先端に支持される掻取部材を備えている。
【0012】
上記の構成によると、シリンダロッドを縮退させる際にシリンダチューブ先端に支持された掻取部材の内面でシリンダロッド外周の少なくとも一部に付着した塵芥を確実に掻き取るので、塵芥がシリンダロッドに溶着することなく、摺動シリンダのシールが破損したり、塵芥が摺動シリンダのシールを通り過ぎてシリンダの作業油に混入して油圧回路に設けたフィルタにこれら塵芥が付着したりすることはない。掻取部材は、シリンダロッド外周の全体を覆ってもよく、例えば、摺動用開口側のみを覆ってもよい。
【0013】
第3の発明では、上記掻取部材は、布入りゴムよりなる構成とする。
【0014】
上記の構成によると、布入りゴムは、耐摩耗性に優れ、繰り返し摺動シリンダが伸縮してシリンダロッド外周に溶着した塵芥を掻き取っても、摩耗しがたい。このため、頻繁に交換する必要はないので、メンテナンスの手間が省かれる。
【0015】
第4の発明では、上記塵芥掻取手段は、シリンダロッド外周に接しながらその少なくとも一部を覆うように、シリンダチューブ先端に支持される掻取部材を備えている。
【0016】
上記の構成によると、シリンダロッドを縮退させる際にシリンダチューブ先端に支持された掻取部材の内面でこすりながらシリンダロッド外周の少なくとも一部に付着した塵芥を確実に掻き取るので、塵芥がシリンダロッドに溶着することなく、摺動シリンダのシールが破損したり、塵芥が摺動シリンダのシールを通り過ぎてシリンダの作業油に混入して油圧回路に設けたフィルタにこれら塵芥が付着したりすることはない。掻取部材は、シリンダロッド外周の全体を覆ってもよく、例えば、摺動用開口側のみを覆ってもよい。
【0017】
第5の発明では、上記掻取部材は、耐熱性ゴムよりなる構成とする。
【0018】
上記の構成によると、掻取部材をシリンダロッド外周に当接させてこすりながらシリンダロッド外周に溶着した塵芥を掻き取ることにより耐熱性ゴムの温度が上昇しても、耐熱性ゴムは熱に強いため損傷しがたい。このため、隙間をなくしてこすりながら塵芥を掻き取ることもできるので、確実に溶着した塵芥が掻き取られると共に、頻繁に交換する必要はないので、メンテナンスの手間が省かれる。
【0019】
第6の発明では、上記掻取部材は、上記シリンダロッドの外周全体を覆うと共に、該シリンダロッドを覆うように取り付けられる際に開くスリットを備えている。
【0020】
上記の構成によると、掻取部材にスリットを設けることで、掻取部材をシリンダロッド外周に嵌め込む際に、スリットが開いて嵌め込みやすいので、取付作業や交換作業が容易である。また、全体を覆うことで、確実にシリンダロッド外周に溶着した塵芥が掻き取られる。
【0021】
第7の発明では、上記掻取部材は、上記シリンダロッドの外周全体を覆うと共に、2分割可能に構成されている。
【0022】
上記の構成によると、2分割可能なため、分割したそれぞれを合わせることにより、シリンダロッドの外周全体が覆われるので、嵌め込みやすく、取付作業や交換作業が容易である。また、全体を覆うことで、確実にシリンダロッド外周に溶着した塵芥が掻き取られる。
【0023】
第8の発明では、上記掻取部材は、Uボルトによって上記シリンダチューブ先端に取り付けられた支持用ブラケットに着脱自在に支持されている。
【0024】
上記の構成によると、支持用ブラケットは、Uボルトによって簡単に取り付け可能であるので、取付作業が容易であると共に、既存の塵芥収集車に取り付けることも可能になる。また、掻取部材が摩耗すれば、支持用ブラケットから取り外して交換される。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、摺動シリンダのシリンダチューブ先端にシリンダロッドに付着あるいは溶着した塵芥を掻き取る塵芥掻取手段を設けている。このため、シリンダロッドに塵芥が付着あるいは溶着しても、シリンダロッドを縮退させる際にそれを塵芥掻取手段によって確実に掻き取ることにより、シールの破損を防いで摺動シリンダからの油漏れを防ぐことができる。また、シリンダロッドの熱により溶着した塵芥が摺動シリンダのシールを通り過ぎてシリンダの作業油に混入することはないので、油圧回路に設けたフィルタにこれら塵芥が付着して油圧ポンプのキャビテーションなど油圧機器に各種の問題を引き起こすのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態にかかる塵芥収集車の概略構成を示している。図1において、塵芥収集車1の車体2上に塵芥収容箱3が搭載されている。この塵芥収容箱3の後方開口部4には、その上方で投入箱支持ピン5により軸支された塵芥投入箱6が設けられている。この塵芥投入箱6は、塵芥収容箱3と塵芥投入箱6との間に設けられた図示しない回動シリンダにより、投入箱支持ピン5を中心に回動自在に構成されている。
【0028】
塵芥投入箱6の後部には投入口7が開口され、その内部には塵芥積込装置30が装備されている。塵芥積込装置30は、塵芥投入箱6内に投入口7を通じて投入された塵芥を圧縮して塵芥収容箱3内に積込むためのものである。
【0029】
図2にも示すように、塵芥投入箱6の両側壁には溝型鋼で形成された案内溝部材8が補強枠を兼ねて前方上部より後方下部に向かって敷設されている。塵芥投入箱6内にはその横幅一杯に広がる摺動板10が収容されている。この摺動板10の両側縁の上下には、案内ローラ11が回転可能に設けられている。これらの案内ローラ11は、上記案内溝部材8の内壁に沿って摺動自在に嵌入されている。
【0030】
上記摺動板10の背面上部の左右端部に設けたボス部20には、摺動板支持軸12が挿通されている。この摺動板支持軸12が摺動板10の摺動距離に合致して塵芥投入箱6の側壁に形成された摺動用開口31を越えて塵芥投入箱6の内側より外側に突出するように配置されている。
【0031】
図3及び図4に拡大して示すように、塵芥投入箱6の側壁から外側に突出した摺動板支持軸12と塵芥投入箱6の下部間には、塵芥投入箱6の外側で案内溝部材8の傾斜方向に沿って設けられた摺動シリンダ13が連結されている。摺動シリンダ13は、棒状のシリンダロッド13aと、塵芥投入箱6の側壁に取り付けられた円筒状のシリンダチューブ13bとを備えている。シリンダチューブ13bには、油圧配管をつなぐための円筒状の配管用ポート13cが突出して形成されている。この摺動シリンダ13の伸縮作動によって摺動板10を案内溝部材8に沿って上下に往復移動させるようにしている。
【0032】
図1に示すように、上記摺動板10の下端には、塵芥投入箱6の横幅一杯に広がる圧縮板15が前後に揺動自在に支持されている。この圧縮板15の先端は前方に向かって若干屈折形成されている。上記圧縮板15の背面に突設した接続部15aと上記摺動板10の背面上部に設けられた摺動板支持軸12との間には、揺動シリンダ14が連結され、この揺動シリンダ14の伸縮作動によって上記圧縮板15を前後に揺動させるようにしている。
【0033】
上記塵芥収容箱3内には排出板17が前後方向に摺動自在に配設されている。排出板17は、塵芥収容箱3の横幅及び上下高さと略同じ大きさに形成された板状体であり、図示しない排出シリンダの伸縮動作により塵芥収容箱3内を前後に摺動するようになされている。
【0034】
そして、本発明の特徴として、図3及び図4に拡大して示すように、上記摺動シリンダ13のシリンダチューブ13b先端には、シリンダロッド13aに付着した塵芥を掻き取る塵芥掻取手段32が設けられている。
【0035】
図5に拡大して示すように、上記塵芥掻取手段32は、シリンダチューブ13b先端に支持される掻取部材33を備えている。掻取部材33は、2つの角部に面取り33aが形成された矩形板状の布入りゴムよりなり、例えば、剛性の高い布入りコンベアベルトを切断して形成されている。その中心には、シリンダロッド13aの外径よりも若干大きい内径を有するロッド挿入孔33bが形成されている。例えば、ロッド挿入孔33bの内径は、シリンダロッド13aの外径よりも約6.0mm程度大きく設定されている。このように、掻取部材33は、隙間t(=3.0mm)をあけてシリンダロッド13aの外周全体を覆っている。このように隙間を設け、この隙間に引っ掛かったビニール袋などの塵芥を毎日の点検で取り除くようにしている。
【0036】
掻取部材33は、面取り33aと反対側にロッド挿入孔33bに至るスリット33cを備えている。このスリット33cを開くことにより、シリンダロッド13aを覆うように取り付けることができるようになっている。このため、取付作業や交換作業が容易となっている。掻取部材33のスリット33c側には、該スリット33cを挟むように2つのボルト挿通孔33dが形成されている。
【0037】
上記シリンダチューブ13b先端には、支持用ブラケット35が取り付けられている。図6に示すように、この支持用ブラケット35は、薄い鋼板をL字状に折り曲げたもので、平面部35aと、折曲部35bとを有している。
【0038】
図3に示すように、平面部35aには、シリンダチューブ13bの配管用ポート13cを通すためのポート用開口36が形成されている。このポート用開口36を挟むように後述するUボルト42を挿通するための一対のUボルト挿通孔37が形成されている。平面部35aの折曲部35b側には、略矩形状の開口38が形成されている。開口38は、掻き取り部材33に付着した塵芥を点検及び清掃するために設けたものである。
【0039】
図6に示すように、折曲部35bには、シリンダロッド13aの外側外周を覆う半円状のロッド挿通用開口39が形成されている。折曲部35bの内面には、2つのウェルドナット40が溶接されている。なお、平面部35aには、シリンダロッド13aを避けるように円弧状に切り欠かれた二枚の補強用リブ41等により補強されている。
【0040】
支持用ブラケット35は、図7に示すUボルト42によってシリンダチューブ13b先端に取り付けられるようになっている。Uボルト42は、U字状に折り曲げられたバンド部42aの両端にネジ部42bがそれぞれ溶接されたものである。図4に示すように、このUボルト42のバンド部42aでシリンダチューブ13b先端を挟み込んで、ネジ部42bを支持用ブラケット35のUボルト挿通孔37に挿通して締付ナット43で締め付けることで、支持用ブラケット35がシリンダチューブ13b先端に着脱自在に取り付けられている。
【0041】
上記掻取部材33は、上記折曲部35bと略長方形の保持プレート44との間に挟まれた状態で着脱自在に支持用ブラケット35に支持されている。すなわち、掻取部材33のスリット33cを開いてシリンダロッド13aを覆うように取り付けた後、保持プレート44のボルト挿通孔(図示せず)と、掻取部材33のボルト挿通孔33dに取付ボルト45を挿通してウェルドナット40に締め付けることで、掻取部材33が支持用ブラケット35に取り付けられている。
【0042】
−塵芥積込装置の運転動作−
このように構成された塵芥積込装置30は、図8に示すように、摺動シリンダ13、揺動シリンダ14がいずれも伸長して摺動板10が上昇終了位置(最上位置)にある状態で、投入口7を通して塵芥55を塵芥投入箱6内に投入し、図示しない始動スイッチをON操作することで、積込動作を開始する。なお、図8乃至図11において、簡略化のために摺動シリンダ13は、省略している。
【0043】
まず、図8に示す状態で揺動シリンダ14が縮退作動して圧縮板15が反転作動し、反転終了位置(図9参照)に達する(反転工程)。この後、摺動シリンダ13が縮退作動して摺動板10が下降し、これに伴って圧縮板15が下降工程に移行する。
【0044】
次に、圧縮板15が下降終了位置(図10参照)に達すると、揺動シリンダ14を伸長させて圧縮板15を前方に揺動させ圧縮工程に移行する。
【0045】
そして、圧縮板15が最前方位置(図11参照)まで揺動すると、摺動シリンダ13を伸長させて圧縮板15を上昇させることによって上昇工程に移行し、この圧縮板15が上昇終了位置に達すると(図8参照)、一連の積込動作を終了する。
【0046】
これにより反転、下降、圧縮、上昇の各工程を1サイクルとした塵芥積込動作を繰り返して行うことができる。
【0047】
また、塵芥収容箱3に塵芥55を積込む際において、塵芥収容箱3内の排出板17は、最後方位置に配置されており、上記塵芥積込装置30により積込まれる塵芥55が排出板17を押圧する力が所定以上に達した際に、排出シリンダが縮退することで徐々に前方に移動する。このような排出板17の移動動作によって塵芥55を圧縮しながら積込むことができる。
【0048】
そして、このように塵芥55を積込んで塵芥収容箱3が満杯状態になると、塵芥55の排出作業に移る。すなわち、塵芥収集車1を塵芥処理場等へ移動させた後、回動シリンダを伸長させ、塵芥投入箱6を投入箱支持ピン5を中心にして上方に回動させて塵芥収容箱3の後部を開放状態にした後、排出シリンダを伸長させ、塵芥収容箱3の前部に位置する排出板17を後方に移動させることで、この塵芥収容箱3内に収容された塵芥55を排出する。
【0049】
−塵芥掻取手段の作用−
次に、本実施形態にかかる塵芥掻取手段の作用について説明する。
【0050】
上述した塵芥積込動作終了後は、摺動板10は上昇終了位置で待機状態となる。塵芥積込動作を行っていると、摺動板10には、発泡スチロール、ビニール袋等の塵芥55が付着する。このため、上昇終了位置において、従来の塵芥収集車1が走行等を行うと、摺動板10の上端等に付着した塵芥55が、摺動用開口31から塵芥投入箱6外に漏れだし、摺動シリンダ13のシリンダロッド13aに付着することがある。特にこの塵芥55が、樹脂製発泡スチロール、ビニール袋等である場合、繰り返し伸縮されることによりシリンダロッド13aが熱を帯びている場合、シリンダロッド13aの表面に溶着してしまうことがある。このため、シリンダロッド13aに付着した塵芥55により、摺動シリンダ13のダストシールなどのシール(図示せず)が破損し、摺動シリンダ13から油が漏れるという問題があった。
【0051】
また、溶着した塵芥55が摺動シリンダ13のシールを通り過ぎ、摺動シリンダ13の作業油に混入する場合もあり、そのときには、油圧回路に設けたフィルタ(図示せず)にこれら塵芥55が付着し、油圧ポンプ(図示せず)のキャビテーションなど油圧機器に各種の問題を引き起こしていた。
【0052】
しかし、本実施形態では、摺動シリンダ13のシリンダチューブ13b先端に塵芥掻取手段32設けているので、シリンダロッド13aを縮退させる際に、この塵芥掻取手段32がシリンダロッド13aに付着した樹脂製塵芥等を取り除くことができる。
【0053】
すなわち、シリンダロッド13aを縮退させる際にシリンダチューブ13b先端に支持された掻取部材33のロッド挿入孔33bの内面でシリンダロッド13a外周に付着した塵芥を引っ掛けるなどにより掻き取る。掻取部材33は、シリンダロッド13a外周全体を覆っているので、確実にシリンダロッド13a外周に付着したビニール袋などの塵芥を引っ掛けることができる。
【0054】
掻取部材33を布入りゴムで構成しているので、耐摩耗性に優れ、繰り返し摺動シリンダ13が伸縮してシリンダロッド13a外周に溶着した塵芥を掻き取っても、摩耗しがたい。このため、頻繁に交換する必要はないので、メンテナンスの手間が省ける。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、シリンダロッド13aに塵芥が付着しても、シリンダロッド13aを縮退させる際に、それを塵芥掻取手段32によって掻き取ることにより、シールの破損を防いで摺動シリンダ13からの油漏れを防ぐことができる。また、シリンダロッド13aの熱により溶着した塵芥が摺動シリンダ13のシールを通り過ぎて摺動シリンダ13の作業油に混入することはないので、油圧回路に設けたフィルタにこれら塵芥が付着して油圧ポンプのキャビテーションなど油圧機器に各種の問題を引き起こすのを防ぐことができる。
【0056】
また、支持用ブラケット35は、Uボルト42によって容易に取り付け可能であるので、取付作業が容易であると共に、既存の塵芥収集車1に取り付けることも可能になる。また、掻取部材33が摩耗すれば、支持用ブラケット35から取り外して容易に交換することができる。
【0057】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0058】
すなわち、上記実施形態では、掻取部材33は、布入りゴム製としているが、耐熱性ゴムとしてもよい。この場合には、熱に強いため、隙間tを3mmよりも小さくしてほとんど隙間をなくし、又はマイナス交差で圧入し、シリンダロッド13a外周に溶着した塵芥をこすりながら掻き取るようにしてもよい。その形状は、シリンダロッド13a外周の少なくとも一部を覆うものであればよい。このため、隙間をなくしてこすりながら塵芥を掻き取ることもできるので、確実に溶着した塵芥を掻き取ることができると共に、頻繁に交換する必要はないので、メンテナンスの手間を省くことができる。また、金属製や樹脂製であってもよい。
【0059】
上記実施形態では、掻取部材33にスリット33cを設けたが、2分割可能に構成し、分割したそれぞれを合わせることにより、シリンダロッド13aの外周全体を覆うようにしてもよい。具体的には、分割した両者をボルト等で締結してもよいし、接着剤等で接着してもよい。このため、嵌め込みやすく、取付作業や交換作業が容易である。また、全体を覆うことで、確実にシリンダロッド13a外周に付着あるいは溶着した塵芥を掻き取ることができる。
【0060】
掻取部材33は、シリンダロッド13a外周の少なくとも一部を覆うようにしてもよい。すなわち、掻取部材33は、シリンダロッド13a外周の全体を覆ってもよく、摺動用開口31側のみを覆ってもよい。
【0061】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明は、塵芥投入箱内において摺動シリンダの伸縮動作により上下方向に摺動自在な摺動板を備えた塵芥収集車について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】塵芥収集車の後部を示す側面から見た側断面図である。
【図2】塵芥投入箱における摺動用開口及びその周辺を拡大して示す側面図である。
【図3】塵芥掻取手段及びその周辺を拡大して示す側面図である。
【図4】図3をIV方向から見た矢視図である。
【図5】掻取部材の平面図である。
【図6】支持用ブラケットを示し、(a)が正面図で、(b)が側面図である。
【図7】Uボルトの平面図である。
【図8】塵芥積込装置の上昇終了位置を説明する概略図である。
【図9】塵芥積込装置の反転終了位置を説明する概略図である。
【図10】塵芥積込装置の下降終了位置を説明する概略図である。
【図11】塵芥積込装置の最前方位置の状態を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0064】
1 塵芥収集車
3 塵芥収容箱
4 後方開口部
7 投入口
10 摺動板
12 摺動板支持軸
13 摺動シリンダ
13a シリンダロッド
13b シリンダチューブ
14 揺動シリンダ
15 圧縮板
30 塵芥積込装置
31 摺動用開口
32 塵芥掻取手段
33 掻取部材
33c スリット
35 支持用ブラケット
42 Uボルト
55 塵芥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体上に搭載された塵芥収容箱と、該塵芥収容箱の後方開口部に連設され、内部に塵芥積込装置を装備した塵芥投入箱とを備えた塵芥収集車であって、
上記塵芥積込装置は、上記塵芥投入箱内において摺動シリンダの伸縮動作により上下方向に摺動自在な摺動板と、該摺動板の下端部に揺動シリンダの伸縮動作により前後方向に揺動自在な圧縮板とを備え、
上記摺動シリンダ及び揺動シリンダの伸縮動作により摺動板と圧縮板とが反転、下降、圧縮及び上昇を1サイクルとして作動することで、投入口を通じて塵芥投入箱に投入された塵芥を塵芥収容箱に積込むように構成され、
上記摺動シリンダは、上記塵芥投入箱の左右側壁の外方にそれぞれ配置され、
上記摺動板は、上記左右の摺動シリンダのシリンダロッド先端と摺動板支持軸によって結合され、
上記塵芥投入箱の左右側壁には、上記摺動板支持軸が移動するための摺動用開口が形成され、
上記摺動シリンダのシリンダチューブ先端には、上記シリンダロッドに付着した塵芥を掻き取る塵芥掻取手段が設けられている
ことを特徴とする塵芥収集車。
【請求項2】
請求項1に記載の塵芥収集車において、
上記塵芥掻取手段は、上記シリンダロッドの外径よりも若干大きい内径を有して該シリンダロッド外周の少なくとも一部を覆うように、シリンダチューブ先端に支持される掻取部材を備えている
ことを特徴とする塵芥収集車。
【請求項3】
請求項2に記載の塵芥収集車において、
上記掻取部材は、布入りゴムよりなる
ことを特徴とする塵芥収集車。
【請求項4】
請求項1に記載の塵芥収集車において、
上記塵芥掻取手段は、シリンダロッド外周に接しながらその少なくとも一部を覆うように、シリンダチューブ先端に支持される掻取部材を備えている
ことを特徴とする塵芥収集車。
【請求項5】
請求項4に記載の塵芥収集車において、
上記掻取部材は、耐熱性ゴムよりなる
ことを特徴とする塵芥収集車。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1つに記載の塵芥収集車において、
上記掻取部材は、上記シリンダロッドの外周全体を覆うと共に、該シリンダロッドを覆うように取り付けられる際に開くスリットを備えている
ことを特徴とする塵芥収集車。
【請求項7】
請求項2乃至5のいずれか1つに記載の塵芥収集車において、
上記掻取部材は、上記シリンダロッドの外周全体を覆うと共に、2分割可能に構成されている
ことを特徴とする塵芥収集車。
【請求項8】
請求項2乃至7のいずれか1つに記載の塵芥収集車において、
上記掻取部材は、Uボルトによって上記シリンダチューブ先端に取り付けた支持用ブラケットに着脱自在に支持されている
ことを特徴とする塵芥収集車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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