説明

増強された結合特性を有する診断および治療のための多成分集合体

【課題】診断および/または治療目的への有用性を増強するために、任意の弱く結合する標的化分子の親和性を増強する簡単な方法を提供すること。
【解決手段】標的に弱く結合する化合物の結合を増強するための、組織化可動多成分コンジュゲート(OMMC)およびその使用方法。少なくとも2つの結合化合物を含有する層状構造は、結合化合物が層状構造中または上で自己調節する条件下で集合し、増強された親和性で標的上の相補的親和部位に結合する能力のある協同的集団を形成する。各結合化合物は、層状の表面に結合し、リンカーで連結され得る。OMMCは、エフェクター分子を使用して診断または処置される患者に投与されるように、診断または治療剤などのエフェクター分子を含有し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、標的組織および器官へ診断および治療剤を選択的に送達するための標的化結合が増強される方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
非共有結合性分子間力(例えば、静電気、水素結合およびファンデルワールス相互作用)は、多くの生物学的過程において重大な役割を果たす。かかる過程の例には、酵素触媒、薬物−受容体相互作用、抗原−抗体相互作用、ビオチン−アビジン相互作用、DNA二重らせん形成、貪食、植物および動物の色素形成、細胞の輸送が含まれる。
【0003】
医学的に有用な分子の標的化送達は周知であり、診断および治療適用に成功裏に適用されてきた。従来のバイオコンジュゲート(bioconjugate)化学では、ほぼ全てのコンジュゲートが、薬物、染料、ホルモン、磁気共鳴イメージング剤、音響発生剤(echogenic agent)、放射性医薬、または化学療法剤などの様々なエフェクター分子の、抗体、ペプチドおよびペプチド模倣物(peptidomimetic)、炭水化物、または低分子受容体アゴニストおよびアンタゴニストなどの生体活性担体への共有結合的付着により調製される。例えば、診断医学では、様々な放射性核種および放射性核種キレート化合物が、抗体、ホルモン、ペプチド、ペプチド模倣物などに共有結合的に付着させられ、腫瘍、炎症、虚血、血栓などの病変の検出に使用されてきた(Tenenbaum et al.,Radiolabeled somatostatin analog scintigraphy in differentiated thyroid carcinoma, J.Nucl.Med.,1995,36,807-810;Haldemann et al.,Somatostatin receptor scintigraphy in central nervous system tumors:Role of blood-brain barrier permeability.J.Nucl.Med.,1995,36,403-410;Babich et al.,Technetium-99m-labeled chemotactic peptides:Comparison with indium-111-labeled white blood cells for localizing acute bacterial infection in the rabbit.J.Nucl.Med.,1993,34,2176-2181;Knight et al.,Thrombus imaging with technetium-99m-labeled synthetic peptides based upon the binding domain of a monoclonal antibody to activated platelets.J.Nucl.Med.,1994,35,282-288)。従って、標的部位は、腫瘍細胞、血小板、赤血球、白血球、マクロファージ、血管内皮細胞、心筋細胞、肝細胞などの細胞、またはこれらの細胞の周囲の細胞外マトリックスであり得る。
【0004】
生物学的活性化合物を体内に直接投与することに加えて、このような分子は、リポソーム、ベシクルまたは他の多層構造などの組織立った両親媒性凝集体にカプセル封入される。凝集体は、対象である特定の器官または組織に送達される(米国特許番号:5,985,852;5,785,969;および5,542,935)。
【0005】
標的化送達の必要条件は、複合体(例えば、リガンド受容体複合体)の形成における、結合化合物または標的化部分(例えば、リガンド)と標的または付着部位(例えば、受容体)との間の強い相互作用である。複合体の解離定数(K)の値は、典型的にナノモーラーの範囲にある。約100nM以上のK値を示す化合物は、弱く結合する化合物とみなされ、標的化イメージングおよび治療的適用に有用であると一般的に考えられない。しかしながら、多数の弱く結合する相互作用を使用して作動するインビボの生物学的過程が数多くある。これには、例えば、マイクロモーラーの結合範囲で作動する酵素−基質複合体および細胞接着分子が含まれる。E、PおよびLセレクチンなどの細胞接着分子は、炎症および血栓溶解過程に関与する重要な生物学的調節因子である(McEver,Selectin-carbohydrate interactions during inflammation and metastasis,Glycoconj.J.,1997,14(5),585-91;McEver et al.,Leukocyte trafficking mediated by selectin-carbo水和物 interactions,J.Biol.Chem.,1995,270(19),11025-8;Bischoff,Cell adhesion and angiogenesis.J.Clin.Invest.,1997,100(11 Suppl),S37-39;Lesley et al.,CD44 in inflammation and metastasis,Glycoconj.J.,1997,14(5),611-22;Siegelman et al.,Activation and interaction of CD44 and hyaluronin in immunological systems.J.Leukoc.Biol.,1999,66(2),315-21)。
【0006】
この分野における以前の仕事は、高結合リガンドの使用を含む(Torchilin et al.,Preservation of antimyosin antibody activity after covalent coupling to liposomes,Biochem.Biophys.Res.Commun.,1979,89(4),1114-9;Allen et al.,A new strategy for attachment of antibodies to sterically stabilized liposomes resulting in efficient targeting to cancer cells.Biochim.Biophys.Acta,1995,1237,99-108;Zalipsky et al.,Peptide attachment to extremities of liposomal surface grafted PEG chains:preparation of the long-circulating form of laminin pentapeptide,YIGSR.Bioconjug.Chem.,1995,6(6),705-8)。このシステムでは高まった結合が観察されたものの、リガンドが既に標的化のための十分な親和性を付与されていたので、協同的効果は必要とされなかった。対照的に、弱く結合するリガンドは、手強い難題を提起した。
【0007】
比較的弱く結合するセレクチンおよびセレクチン模倣体の結合親和性を改善するために、そしてそれらをイメージングおよび治療の目的でエフェクター分子に共有結合的に付着させるために、相当な努力がある(Fukuda et al.,Peptide mimic of E-selectin ligand inhibits sialyl Lewis X-dependent lung colonization of tumor cells,Cancer Research,2000,60,450-456)。しかしながら、かかる努力は、通常、実質的に改善された結合特性を示すものを発見するために、多数の新規化学物質の合成およびスクリーニングを伴う。さらに、既に弱く結合している担体にエフェクター分子を単純に共役させることは、その生体活性が大幅に低減または全く除去されたバイオコンジュゲートをもたらすと予想される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、診断および/または治療目的への有用性を増強するために、任意の弱く結合する標的化分子の親和性を増強する簡単な方法に対する要請がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明は、化合物、特に弱く結合する化合物の、患者内の標的部位に対する結合を増強する組成物および方法を対象とする。
組織化可動多機能コンジュゲート(OMMC)集合体を調製し、患者に与える。OMMC集合体は、層状構造に少なくとも2つの結合化合物を固定することにより調製する。ある実施態様では、一方の結合化合物は陰イオン性化合物であり、他方の結合化合物は糖であり、層状構造はリポソーム、ミクロスフェア、ミセルなどである。層状構造に組込まれる結合化合物は、可動であり、相互に関して自己適合し、OMMC集団を形成する。OMMC集団は、結合化合物に対する少なくとも2つの相補的親和部位を含有する標的に結合する。OMMCを投与される患者に標的化診断および/または治療剤を与えるために、エフェクター分子とも呼ばれる剤は、層状構造に付着し、かつ/またはその中に含有され得る。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
患者中の標的部位への結合化合物の結合を増強する方法であって、
空隙を規定する層状構造を含み、該標的部位中の少なくとも第1および第2の親和部位に結合する能力のある少なくとも第1および第2の結合化合物を組込んで有し、該第1および第2の結合化合物の位置が相対的に自己適合してOMMC集団を形成し、それにより該結合化合物の該親和部位への結合の増強に至る、生理的に許容し得る組織化可動多成分コンジュゲート(OMMC)集合体の有効量を該患者に与えることを含む方法。
(項目2)
該集合体がさらに剤を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
該剤が、診断剤および治療剤からなる群から選択される、項目2に記載の方法。
(項目4)
該剤が集合体に付着している、項目2に記載の方法。
(項目5)
該剤が集合体内に含有される、項目2に記載の方法。
(項目6)
該標的部位が、腫瘍細胞、マクロファージ、内皮細胞、心筋細胞、肝細胞、白血球、血小板およびこれらの組合せからなる群から選択される細胞である、項目1に記載の方法。
(項目7)
その後該患者に手法を実施することをさらに含む、項目3に記載の方法。
(項目8)
該結合化合物がリガンドである、項目1に記載の方法。
(項目9)
リガンドが、セレクチン、セレクチン模倣物、グリカン結合タンパク質およびこれらの組合せからなる群から選択される、項目8に記載の方法。
(項目10)
該第1および第2の結合化合物が相違する、項目1に記載の方法。
(項目11)
組織化可動多成分コンジュゲート(OMMC)集合体および生理的に許容し得る担体または賦形剤を含む生理的に許容し得る標的結合組成物であって、該集合体が、空隙を規定する層状構造を含み、標的上の親和部位に相補的な少なくとも第1可動および第2可動結合化合物を有し、該第1および第2結合化合物が、該層状構造に第1および第2構造結合部位で結合し、該第1および第2構造結合部位が、該層状構造内で相対的に適合可能である、組成物。
(項目12)
該第1構造結合部位と第1結合化合物、および該第2構造結合部位と該第2結合化合物の間にリンカーをさらに含む、項目11に記載の組成物。
(項目13)
さらに剤を含む、項目11に記載の組成物。
(項目14)
該剤が、治療剤および診断剤からなる群から選択される、項目13に記載の組成物。
(項目15)
該結合化合物が、陰イオン性化合物、糖、およびそれらの組合せからなる群から選択される、項目11に記載の組成物。
(項目16)
該リンカーがポリヒドロキシル化化合物である、項目12に記載の組成物。
(項目17)
5ミクロンより小さいサイズを有する、項目11に記載の組成物。
(項目18)
結合化合物の患者中の標的部位への親和性を増強する方法であって、
空隙を規定する層状構造を含み、リンカーLおよびLを介して領域AおよびAで該構造に結合する少なくとも2つの結合化合物BおよびBを組込んで有し、BおよびBは該標的部位中の少なくとも第1および第2の親和部位に結合する能力があり、BおよびBの位置が相対的に自己適合してOMMC集団を形成し、それによりBおよびBの該親和部位への結合の増強に至る、生理的に許容し得る組織化可動多成分コンジュゲート(OMMC)集合体の有効量を該患者に与えることを含む方法。
(項目19)
該標的が、腫瘍細胞、血栓、単球、マクロファージ、好酸球、好中球、リンパ球、血管内皮、心筋細胞、肝細胞およびこれらの細胞のいずれかを包囲する細胞外マトリックスからなる群から選択される、項目18に記載の方法。
(項目20)
およびAが、同一かまたは異なってもよく、CH(CH−W、CH(CH−O−(CH−W、CH(CH−S−(CH−WおよびRCCH(CW)COからなる群から選択され、aおよびbが16ないし24の範囲で変動し、Wが−O−、−OC−、−CO−および−NHCO−である、項目18に記載の方法。
(項目21)
およびBが、同一かまたは異なってもよく、グルコース、ガラクトース、フコース、シアル酸およびカルミン酸からなる群から選択される、項目18に記載の方法。
(項目22)
およびLが、同一かまたは異なってもよく、1,000ないし4,000の範囲に分子量を有するポリエチレングリコールからなる群から選択される、項目18に記載の方法。
(項目23)
層状構造が、CH−(CH−X、CH−(CHCONH(CH−X、CH−(CHNHCONH(CH−X、CH−(CHOCONH(CH−X、CH−(CHNH(CH−X、RCCH(CY)COおよびRCCHCH(CY)COからなる群から選択され、Xが、カルボン酸塩、硫酸塩またはリン酸塩からなる群から選択され;Yが、−(CH−X、−NHCO(CH−XおよびCHOCO(CH−COからなる群から選択され;Rが炭素数16ないし24の通常のアルキル基であり、e、f、gおよびkが1ないし5の範囲で変動する、項目18に記載の方法。
(項目24)
結合化合物が、標的に対して約100nMに等しいか、またはそれより小さい親和性を有する、項目18に記載の方法。
(項目25)
およびAが、同一かまたは異なってもよく、CH(CH−W、CF(CH−W、CF(CF−W、CF(CFCHCH−W、CH(CH−O−(CH−W、CF(CF−O−(CH−W、CH(CH−S−(CH−W、CH(CH−S−S−(CH−WおよびRCCH(CW)COからなる群から選択され、aおよびbは16ないし32の範囲で変動し;Wが、−O−、−CO−、−CO−、−OC−、−OCO−、−NHCO−、−S−、−SO−、−SO−、−OSO−、−OSO−、−NHSO−、−PO−および−OPO−からなる群から選択されるコネクターユニットであり;そしてRが炭素数16ないし24の通常のアルキル基である、項目18に記載の方法。
(項目26)
およびBが、同一かまたは異なってもよく、アミノ酸;1ないし20アミノ酸残基を含有するペプチド;フラボノイド類;イソフラボン類;グルコース、マンノース、フコース、ガラクトース、グルコサミン、マンノサミン、ガラクトサミンおよびシアル酸からなる群から選択されるC−またはO−単糖およびグリコシド;1ないし10個のフラノースまたはピラノースユニットを含有するオリゴ糖;ルチン、ネオヘスペリジンジヒドロケイロン、フロリジン、ヘスペリジン、ヘスペリジンメチルカルコン、ナリンゲニンおよびエスクリンからなる群から選択されるC−またはO−グルコシド;並びにカルミンおよび18b−グリシルレチン酸からなる群から選択されるカルミン酸からなる群から選択される、項目18に記載の方法。
(項目27)
およびLが、ポリエチレングリコール、ポリソルベート、ポリグリセロール、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸塩およびポリ乳酸塩からなる群から選択される、1,000ないし10,000ダルトンの範囲に分子量を有する、同一かまたは異なる中性ポリマーまたはコポリマーであり得る、項目18に記載の方法。
(項目28)
層状構造が、CH−(CH−X、CH−(CF−X、CF−(CF−X、CF−(CF−O−(CH−X、CH−(CH−S−(CH−X、CH−(CH−S−S−(CH−X、CH−(CHCO(CH−X、CH−(CHCONH(CH−X、CH−(CHNHCONH(CH−X、CH−(CHOCONH(CH−X、CH−(CHNH(CH−X、CH−(CHN[(CH−X、CH−(CHSO(CH−X、CH−(CHSO(CH−X、CH−(CHNH(CHCO(CH−X、CH−[(CHN(CHCONH(CH−X、RCCH(CY)CO、RCCHCH(CY)COからなる群から選択され、Xが、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩およびホスホン酸塩からなる群から選択され;Yが−(CH−X、−NHCO(CH−X、−OCO(CH−X、−CHOCO(CH−COであり;e=16ないし32;f、g、h=1ないし15;Rが炭素数16ないし24の通常のアルキル基であり;そしてk=1−6の、項目18に記載の方法。
(項目29)
標的結合組成物を使用して患者に診断または治療手法を実施する方法であって、
空隙を規定する層状構造を含み、リンカーLおよびLを介して固定領域AおよびAにより該構造に結合する少なくとも2つの結合化合物BおよびB、並びにエフェクター分子を組込んで有し、該BおよびBは該標的部位中の少なくとも第1および第2の親和部位に結合する能力があり、BおよびBの位置が相対的に自己適合してOMMC集団を形成し、それによりBおよびBの該親和部位への結合の増強に至る、組織化可動多成分コンジュゲート(OMMC)集合体を含む生理的に許容し得る組成物の有効量を、該患者に与えること、および
該患者に該診断または該治療手法を実施すること、
を含む方法。
(項目30)
およびAが、同一かまたは異なってもよく、CH(CH−W、CF(CH−W、CF(CF−W、CF(CFCHCH−W、CH(CH−O−(CH−W、CF(CF−O−(CH−W、CH(CH−S−(CH−WまたはCH(CH−S−S−(CH−Wからなる群から選択され、aおよびbは16ないし32の範囲で変動し;Wが、−O−、−CO−、−OC−、−OCO−、−CO−、−NHCO−、−S−、−SO−、−SO、−OSO−、−OSO−、−NHSO−、−PO−および−OPO−からなる群から選択されるコネクターユニットである、項目29に記載の方法。
(項目31)
およびBが、同一かまたは異なる、グルコース、マンノース、フコース、ガラクトース、グルコサミン、マンノサミン、ガラクトサミンおよびシアル酸からなる群から選択されるC−またはO−単糖およびグリコシド、1ないし10個のフラノースまたはピラノースユニットを含有するオリゴ糖、アミノ酸、1ないし20アミノ酸残基を含有するペプチド、フラボノイド類、イソフラボン類、ルチン、ネオヘスペリジンジヒドロケイロン、フロリジン、ヘスペリジン、ヘスペリジンメチルカルコン、ナリンゲニンおよびエスクリンからなる群から選択されるC−またはO−グルコシド、カルミンおよび18b−グリシルレチン酸からなる群から選択されるカルミン酸であり得る、項目29に記載の方法。
(項目32)
およびLが、同一かまたは異なる、ポリエチレングリコール、ポリソルベート、ポリグリセロール、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸塩およびポリ乳酸塩からなる群から選択される中性ポリマーまたはコポリマーであり得、該ポリマーまたはコポリマーの分子量が1,000ないし10,000の範囲で変動する、項目29に記載の方法。
(項目33)
該層状構造が、CH−(CH−X、CH−(CF−X、CF−(CF−X、CF−(CF−O−(CH−X、CH−(CH−S−(CH−X、CH−(CH−S−S−(CH−X、CH−(CHCO(CH−X、CH−(CHCONH(CH−X、CH−(CHNHCONH(CH−X、CH−(CHOCONH(CH−X、CH−(CHNH(CH−X、CH−(CHN[(CH−X、CH−(CHSO(CH−X、CH−(CHSO(CH−X、CH−(CHN[CH−X、CH−(CHNH(CHCO(CH−X、CH−((CHN(CHCONH(CH−、ROCCH(CY)CORからなる群から選択され、f、gおよびhが1ないし5の範囲で変動し;Xが、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩およびホスホン酸塩からなる群から選択され;Yが−(CH−X、−NHCO(CH−X、−OCO(CH−X、−CHOCO(CH−COからなる群から選択され;Rが炭素数16ないし24の通常のアルキル基であり;そしてkが2ないし6で変動する、項目29に記載の方法。
(項目34)
およびAが、同一かまたは異なってもよく、CH(CH−W、CH(CH−O−(CH−W、CH(CH−S−(CH−WおよびRCCCH(CW)COからなる群から選択され、aおよびbが16ないし24の範囲で変動し、Wが、−O−、−OC−、−CO−および−NHCO−である、項目29に記載の方法。
(項目35)
およびBが、同一かまたは異なってもよく、グルコース、ガラクトース、フコース、シアル酸およびカルミン酸からなる群から選択される、項目29に記載の方法。
(項目36)
およびLが、同一かまたは異なってもよく、1,000ないし4,000の範囲に分子量を有するポリエチレングリコールである、項目29に記載の方法。
(項目37)
該層状構造が、CH−(Ch−X、CH−(CHCONH(CH−X、CH−(CHNHCONH(CH−X、CH−(CHOCONH(CH−、CH−(CHNH(CH−、RCCH(CY)COおよびRCCHCH(CY)COからなる群から選択される化合物であり、Rが炭素数16ないし24の通常のアルキル基であり;Xが、カルボン酸塩、硫酸塩またはリン酸塩からなる群から選択され;Yが、−(CH−X、−NHCO(CH−XおよびCHOCO(CH−COからなる群から選択され;eが16ないし32の範囲で変動し、f、gおよびkが1ないし5の範囲で変動する、項目29に記載の方法。
(項目38)
該エフェクター分子が、音響発生剤、放射性核種、常磁性剤、光学的剤および細胞毒性剤からなる群から選択される、項目29に記載の方法。
(項目39)
該エフェクター分子が、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、六フッ化硫黄、テトラフルオロメタン、ヘキサフルオロエタン、オクタフルオロプロパン、デカフルオロブタン、ドデカフルオロペンタンおよびペルフルオロヘキサンからなる群から選択される音響発生剤である、項目38に記載の方法。
(項目40)
該エフェクター分子が、I−123、I−131、Tc−99m、Re−186、Re−188、SM−152、Ho−155、Bi−202およびLu−157からなる群から選択される放射性核種である、項目38に記載の方法。
(項目41)
該エフェクター分子が、Gd−DTPA、Gd−DOTA、Gd−DTPA−ビス(メトキシエチル)アミドおよびMn−EDTAからなる群から選択される常磁性剤である、項目38に記載の方法。
(項目42)
該エフェクター分子が、300ないし1200nmの範囲の光を吸収する発蛍光団、および300ないし1200nmの範囲の光を吸収する発色団からなる群から選択される光学的剤である、項目38に記載の方法。
(項目43)
該エフェクター分子が、フルオロウラシル、フルオロウリジン、スルフイソキサゾール、N'−(w−チアゾリル)スルファニルアミド、スルファメトキサゾールおよびスルフイソミジンからなる群から選択される細胞毒性剤である、項目38に記載の方法。
(項目44)
該エフェクター分子が、フルオレセインおよびインドシアニングリーンからなる群から選択される光学的剤である、項目38に記載の方法。
(項目45)
該エフェクター分子がペルフルオロブタンである、項目38に記載の方法。
(項目46)
該エフェクター分子がI−131またはTc−99mである、項目38に記載の方法。
(項目47)
該標的が、腫瘍細胞、血栓、単球、マクロファージ、好酸球、好中球、リンパ球、血管内皮、心筋細胞、肝細胞およびこれらの細胞のいずれかを包囲する細胞外マトリックスからなる群から選択される、項目38に記載の方法。
【0010】
本発明化合物のこれらおよびその他の利点は、以下の図面、説明および実施例に照らして明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、組織化可動多機能コンジュゲート(OMMC)集合体の一般構造の概略図である。
【図2】図2は、OMMC集団の形成と標的への結合の段階の概略図である。
【図3】図3は、標的に結合するOMMC集団の2次元概略図である。
【図4】図4は、ヒト内皮細胞に結合する混成的OMMC集合の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
非共有結合的相互作用は、ユニット当たりの会合の自由エネルギーは非常に小さい(約40kJ/相互作用より小さい)が、2表面に沿う多数の相互作用点の累積効果は堅固であり得る。このことは、結合成分間の強い特異的結合を導くことができる。2つの相互作用ユニット間での多数の結合ドメインの協同的効果による結合の増強は、生化学で周知である。例えば、殆どの抗原の多価性により、抗体による2つの抗原分子の結合が、個々の抗原抗体連結の合計よりも大きいような協同的効果が導かれる(J.Kuby,Immunology,2nd Edition,1994,W.H.Freeman & Co.,New York,pp.138-139)。
【0013】
本発明では、多成分集合体を使用して、標的に弱く結合する(即ち、約100nM以上のKd)結合化合物の結合の増強を達成する。特に、組織化可動多機能コンジュゲート(OMMC)集合体は、少なくとも2つの結合化合物を層状構造に固定することにより調製する。ある実施態様では、結合化合物は、陰イオン性化合物および糖であり、層状構造は、リポソーム、ミクロスフェア、ミセルなどである。OMMC集合体は、患者に与えられる。層状構造に組込まれる結合化合物は、可動かつ相互に自己適合性であり、OMMC集団を形成し、それは、結合化合物に対する少なくとも2つの相補的親和部位を含有する標的に結合する。
【0014】
「組織化」は、特定の相互作用部位で結合するために集合体表面上で最適な配置に近づく能力がある集合体を表す。「可動」は、相補的結合化合物または成分が層状構造内で相互に関して独立して動いて最適配置をとることを可能にする、集合体内の自由度を表す。「多機能コンジュゲート」は、各々が標的の相補的親和部位に対する結合化合物を含有する2つまたはそれ以上の両親媒性成分を表す。集団の結合化合物は、単一の分子内に含有される特異的結合領域がなくとも、増強された結合親和性で協同的に標的へ結合する。さらに、本発明の集団における結合化合物は、集団の外側を占める空間の容積に渡って表出するように構築され、この空間内で動いて各自の結合相補体を見つけ出すまで空間を詮索する。
【0015】
剤または標的分子、例えば造影剤は、層状構造に付着し、かつ/またはその内に含有され得、OMMC集合体を投与された患者において剤の標的化送達をもたらし得る。これらの結合化合物の増強された結合は、診断および治療目的で活用され得る。
【0016】
本発明は、新規OMMC集合体を使用することにより、弱く結合する化合物が提起する問題を克服する。これらの動的自己適合OMMC集合体は、特に個々の活性結合成分の凝集体と比較して、標的中の親和部位に対する結合化合物の標的特異性と親和性の上昇を可能にする。
【0017】
本発明はまた、診断および/または治療目的で標的組織または器官へエフェクター分子を送達するための、記載したOMMC集合体の使用に関する。層状構造に付着した、それに組込まれた、またはそれに含有される診断および/または治療剤またはエフェクター分子を含有する、適するOMMC集合体を調製する。2つまたはそれ以上の結合化合物をOMMC集合体の表面上または表面中に組込む。OMMC集合体は、有効量で患者に投与され、結合化合物は表面中または表面上で運動し、それらの集合体中または集合体上の相対的位置および配置を自己適合させ、標的の親和部位に結合する。その後、診断または治療手法を患者に実施する。手法は、例えば、X線、コンピュータ断層撮影(CT)、陽電子放出断層撮影(PET)、磁気共鳴(MR)、超音波、光学またはラジオグラフィーなどのイメージング技法を使用し得る。手法はまた、当分野で公知の方法を使用する、インビトロ診断手法、または、化学、光もしくは放射線治療手法であり得る。
【0018】
本発明の1つの利点は、協同的効果を達成するのに高結合分子を必要としないことである。
【0019】
OMMC 集合体10の一般構造を図1に示す。層状構造13は、その外表面がある種の包囲殻11を形成し、結合化合物16a、16bを含有する。結合化合物16a、16bは、リガンド、抗体、ペプチド、ペプチド模倣物、炭水化物または低分子受容体アゴニストまたはアンタゴニストリガンドであり得る。層状構造13には、集合体10の上または中に結合化合物16a、16bを組込む領域12a、12bがある。結合化合物16a、16bは、結合領域またはエピトープ14a、14bを含有する。これらのエピトープ14a、14bは、個別に弱い結合を有し得、協同的効果を介してのみ標的に結合する。可撓性リンカー18a、18bは、結合領域14a、14bを固定領域12a、12bへ連結または束縛する。
【0020】
固定領域12a、12bは、疎水性であり、自己集合して水相への面を最小にする。固定領域12a、12bは、同一か、または異なってもよく、CH(CH−W、CF(CH−W、CF(CF−W、CF(CFCHCH−W、CH(CH−O−(CH−W、CF(CF−O−(CH−W、CH(CH−S−(CH−WまたはCH(CH−S−S−(CH−WおよびRCCH(CW)COの1つまたはそれ以上であり得、式中、aおよびbは、16ないし32の範囲で変動し、Wは、−O−、−CO−、−CO−、−OCO−、OCO−、−S−、−SO−、−SO−、−OSO−、−OSO−、−NH−、−NHCO−、−NHCS、−NHSO−、−PO−、−OPO−、−POH−または−OPOH−のコネクターユニットであり、Rは炭素数16ないし24の通常のアルキル基である。他の疎水性物質も、固定領域12a、12b内に含有され得る。
【0021】
結合領域14a、14bは、親水性であり、水相と溶媒和する。結合領域14a、14bは、同一かまたは異なってもよく、アミノ酸、ペプチド、ペプチド模倣物;CまたはO単糖およびグリコシド、CまたはOグルコシド、グルコース、ガラクトース、フコース、糖模倣物および糖ペプチドなどの単糖、二糖およびオリゴ糖;シアル酸、カルミン酸、または−(CH−CO、−(CH−SO、−(CH−OSO、−(CH−PO、−(CH−OPO、−Ar−SO、DTPA、EDTA、DOTAまたはEGTA(dは1ないし10の範囲で変動する)の陰イオン性化合物であり得る。
【0022】
リンカー18a、18bは、同一かまたは異なってもよく、ポリソルベート、ポリグリセロール、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ポリサッカライド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、1,000ないし4,000の範囲に分子量を有するポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール、ポリグリコール酸塩、ポリ乳酸塩または上記の群のいずれかから誘導されるコポリマーであり得る。
【0023】
層状構造13は、CH−(CH−X、CH−(CF−X、CF−(CF−X、CF−(CF−O−(CH−X、CH−(CH−S−(CH−X、CH−(CH−S−S−(CH−X、CH−(CHCO(CH−X、CH−(CHCONH(CH−X、CH−(CHNHCONH(CH−X、CH−(CHOCONH(CH−X、CH−(CHNH(CH−X、CH−(CHN[(CH−X、CH−(CHSO(CH−X、CH−(CHSO(CH−X、CH−(CHNH(CHCO(CH−X、CH−[(CHN(CHCONH(CH−X、RCCH(CY)COおよび/またはRCCHCH(CY)COであり;Rは、炭素数16ないし24の通常のアルキル基であり、eは16ないし32の範囲で変動し、f、gおよびhは、1ないし15の範囲で変動し、Xは、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩またはホスホン酸塩であり、Yは、−(CH−X、−OCO(CH−X、−NHCO(CH−Xまたは−CHOCO(CH−COであり、kは2ないし6である。層状構造13はまた、ドコサン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸、およびトリアコンタン酸の塩でもあり得る。
【0024】
固定領域、結合領域、リンカーおよび層状構造の様々な化学組成物を以下の表に列挙する。
【表1】

【0025】
【表2−1】

【0026】
【表2−2】

【0027】
【表3】

【0028】
【表4】

【0029】
本発明のある実施態様では、OMMC集合体10は、図1に示す一般構造を有する。構造中、固定12a、12bは、同一かまたは異なってもよく、CH(CH−W(式中、aは16ないし24の範囲で変動し、Wは、−O−、−CO−、−CO−、−OCO−、−S−、−SO−、−SO−、−OSO−、−NH−、−NHCO−、−NHCS−、−NHSO−、−POH−または−OPOH−からなる群から選択されるコネクターユニットである)からなる群から選択される。結合領域14a、14bは、同一かまたは異なってもよく、CまたはO単糖およびグリコシド、1ないし10個のフラノースまたはピラノースユニットを含有するオリゴ糖、アミノ酸または1ないし20アミノ酸残基を含有するペプチド、フラボノイド類およびイソフラボン類、C−またはO−グルコシド(ルチン、ネオヘスペリジンジヒドロケイロン、フロリジン、ヘスペリジン、ヘスペリジンメチルカルコン、ナリンゲニン、エスクリン);カルミン、18b−グリシルレチン酸および塩を含むが、これらに限定されるわけではないカルミン酸ファミリーのメンバーからなる群から選択される。リンカー18a、18bは、同一かまたは異なってもよく、ポリエチレングリコール、ポリグリコール酸塩およびポリ乳酸塩からなる群から選択される。層状構造13は、CH−(CH−X(eは16ないし32の範囲で変動し、Xは、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩およびホスホン酸塩からなる群から選択される)からなる群から選択される。
【0030】
本発明の他の実施態様では、OMMC集合体10は図1に示す一般構造を有する。構造中、結合領域14aは、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸塩およびデルマタンを含むがこれらに限定されるわけではない炭水化物のグリカンファミリーから誘導されるオリゴ糖、または、ガラクトース、フコース、グルコース、マンノースまたはヒアルロン酸を含むがこれらに限定されるわけではない単糖または二糖である。この実施態様では、結合領域14bは、−O(CH1または2CO;−O(CH1または2SO;−O(CH1または2SO;−O(CH1または2POからなる群から選択される。リンカー18a、18bは、ポリ(エチレングリコール)p(pは40ないし150ユニット)からなる群から選択される。層状構造13は、ドコサン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸およびトリアコンタン酸の塩からなる群から選択される。
【0031】
弱く結合する化合物16a、16bの親和性の増強は、図2および3に概略図を示すように、以下の方法に従って達成される。弱く結合する化合物などの2つまたはそれ以上の結合化合物16a、16bを、層状構造13に添加し、OMMC集合体10aを形成する。結合化合物16a、16bは、当初は層状構造13中にランダムに分散する。
【0032】
集合体10上の結合化合物16a、16bは、標的17上の相補的親和部位15a、15bの存在下で、表面中または表面上で層状構造中を運動し、差異的運動によりそれらの相対的位置および配置を自己適合し、最適集団構造30を産生し、受容体などの相補的親和部位15a、15bに結合する。OMMC集合体10a中および上の結合化合物16a、16bの運動性は、細胞膜表面内の両親媒性物質の差異的運動に類似する。最適な結合は、平衡過程への接近により起こる。OMMC集合体10の全成分は、上下左右への動的な運動をする。加えて、リンカー18a、18bは、束縛として作用し、水相中で集合体10の表面にわたる所定の容積の空間内で「浮動」することもできる。多数の親和部位15a、15bを有する標的17の表出領域が出会うと、多数の結合が起こり始め、動的平衡が確立される:結合化合物16a、16bの一組が離れると、結合化合物16a、16bに隣接する他の結合化合物16c、16d(示さず)の組が、付着する空間的距離内にある。ある点で、標的17への付着数は、集合体10の運動を止めるのに十分であり、本質的にそれを標的17上に固着させる。最適化集合体10中の結合化合物(例えば、リガンド)16a、16bは、それらの結合領域14a、14bを介して、協同的な様式で、標的17の受容体15a、15b中の各々のエピトープに結合する。従って、個別に所定の標的表面と弱い相互作用を有し得る結合ドメイン14a、14bは、自己最適化組成物を形成し、非常に増大した結合と標的効力をもたらす。
【0033】
先に述べたように、OMMC集合体10は、様々なエフェクター分子30に適応できる。エフェクター分子30には、例えば、超音波手法に有用な流体(例えば、気体または液体過フッ化炭化水素または加熱流体)、生体医学光学手法に有用な蛍光化合物、磁気共鳴イメージング手法に有用な常磁性剤、核医学適用のためのI−123、I−131、Tc−99m、Re−186、Re−188、SM−152、Ho−155、Bi−202およびLu−157などの放射性核種、X線またはコンピュータ断層撮影手法用のX線乳白剤が含まれる。これら各々のエフェクター分子の例およびそれらの有効量および用途は、例えばFritzsch et al.,Eur.Radiol.2,2-13(1992);Rubaltelli,Photodiagnostic and Phototherapeutic Techniques in Medicine,in Documento Editoriale,G.Jori and C.Perria(Eds.),Milano,1995,101-107;Andreoni et al.,Tumour Photosensitization by Chemotherapeutic Drugs,Biologia,1993,No.3,43-6;Knoefel,I.E.P.T.Section 76,Vol.1,Pergamon Press,Oxford and New York,1971,Chapter 2:Organic I Compounds as X-ray Contrast Media;Rumack et al.,Diagnostic Ultrasound,Vol.1,Mosby Year Book,St.Louis,Chapter 3,Contrast Agents in Diagnostic Ultrasound,30-42(1992);Forsberg et al.,Ultrasonics 1998,Clinical Applications of Ultrasound Contrast Agents,February,36(1-5):695-701;Goldberg et al.,Ultrasound Med.Biol.1994,20(4):319-33,Ultrasound Contrast Agents:A Review;deJong and Ten Cate,Ultrasonics 1996 Jun,34(2-5):587-90,New Ultrasound Contrast Agents and Technological Innovations;Goldberg,Clin.Diag.Ultrasound 1993,28:35-45,Ultrasound Contrast Agents;Dalla Palma and Bertolotto,Eur.Radiol.,1999,Suppl 3:S338-42,Introduction to Ultrasound Contrast Agents:Physics Overview;Ophir and Parker,Ultrasound Med.Biol.1989,15(4):319-33,Contrast Agents in Diagnostic Ultrasound;Klibanov et al.,MAGMA 1999 Aug.,8(3):177-184,Targeting and Ultrasound Imaging of Microbubble-Based Contrast Agents;Makdisi and Versland,Targeted Diag.Ther.1991,4:151-162,Asialoglycoproteins as Radiodiagnostic Agents for Detection of Hepatic Masses and Evaluation of Liver Function;WO 9004943;U.S.Patent No.5,312,617;Tilcock et al.,Radiology 1989,171:77-80,Liposomal Gd-DTPA:Preparation and Characterization of Relaxivity(出典明示により各々全体を本明細書の一部とする)に記載のように、当業者に周知である。
【0034】
エフェクター分子の用量は、実施するイメージングまたは治療(核、光学、磁気共鳴、超音波、光学音響またはX線造影)に依存する。一般に、これらの手法に必要な用量は異なる。例えば、核イメージングには、放射のタイプによるが、ほんの数マイクログラムが必要なだけである。光学イメージング剤は、ヒトの用量に数十ないし数百マイクログラムを要する。超音波イメージングは、約0.2ないし10x10微小気泡/mL、典型的には記載された製剤の約1mL(数ミリグラムの複合物で安定化)の用量を要する;ある実施態様では、250μLを使用した。磁気共鳴イメージングは、金属キレート化合物溶液中で50ないし1000ミリグラムの用量を典型的に要する。X線造影イメージングは、乳白化のために溶液中の数グラムの物質を要する。ある実施態様では、肝臓の標的化X線造影イメージングを実施し、エフェクター分子は肝細胞により取込まれる。
【0035】
エフェクター分子30は、直接的または間接的に、集合体10に付着するか、または集合体10内に含有されることができる。例えば、音響発生剤および/またはMRI剤は、集合体10の空隙内に含有される流体であり得る。放射性核種、光学および/または細胞毒性剤は、集合体10のどこにでも(空隙内または結合化合物16a、16b上)あり得る。米国特許番号5,770,222および5,733,572並びにWO684386(出典明示により各々全体を本明細書の一部とする)に記載のように、集合体10中の化学療法剤は、超音波により放出されて治療を引き起こす。常磁性剤は、水性環境と接触しているように、リンカー18a、18bまたはエピトープ14a、14bの領域で集合体10中にあり得る。エフェクター分子30は、1種またはそれ以上の流体を含有する微小気泡などの音響発生剤、約300−1200nmの範囲で電磁放射を放出または吸収できる発蛍光団または発色団、アルファ、ベータまたはガンマ放射線を放出できる放射活性分子、常磁性剤、X線乳白剤および/または化学療法剤であり得る。
【0036】
ある実施態様では、剤30は音響発生剤、300ないし1200nmの範囲の光を放出または吸収できる発蛍光団または発色団、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)または1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N',N'',N'''−テトラ酢酸(DOTA)などの放射性医薬剤、Lu、Sm、In、Ru、Tcなどのベータおよびガンマ放出同位体のキレート化合物;フルオロウラシル、フルオロウリジンなどを含むがこれらに限定されるわけではない細胞毒性剤、および/またはN'−(w−チアゾリル)スルファニルアミド、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾールおよびスルフイソミジンを含むがこれらに限定されるわけではないサルファ抗生物質である。
【0037】
他の実施態様では、剤30は、音響発生性非水溶性ペルフルオロプロパンまたはペルフルオロブタンガスであるか、または六フッ化硫黄、テトラフルオロメタン、ヘキサフルオロエタン、オクタフルオロプロパン、デカフルオロブタン、ドデカフルオロペンタンおよびペルフルオロヘキサンの1つまたはそれ以上である。音響発生剤は、これらの気体と、窒素、酸素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノンおよび二酸化炭素などの一般的な気体または気体の混合物との混合物を含み得る。フルオロカーボンおよびペルフルオロカーボンの過熱流体または共沸混合物を使用し得る。剤30は、フルオレセイン化合物、ローダミン化合物、シアニン化合物、インドシアニン化合物(例えば、インドシアニングリーン)、スクアレイン(squaraines)化合物、フェノチアジン化合物、ポルフィリン化合物およびアゾ化合物などの光学トレーサーであり得る。
【0038】
なお他の実施態様では、剤30は、E、PおよびLセレクチン、セレクチン模倣物、ヒアルロン酸、ヘパリン、CD44、ICAM1などの生体活性分子であり得る。この場合、標的17中の親和結合部位15a、15bは、一般的に、血管内皮細胞、白血球または血小板などに見出される炭水化物受容体のクラスに属する。
【0039】
OMMC集合体10の構造13は、ミセル、リポソーム、エマルジョン、微小粒子、微小気泡、単層または多層膜に結合したベシクル、ナノ−およびマイクロ−粒子、ナノ−およびマイクロ−凝集体、ナノ−およびマイクロ−包膜および生きている細胞を含むがこれらに限定されるわけではない、当業者に周知の方法で構築し得る。ある実施態様では、単層状構造は、気体/液体エマルジョン(気泡)などの流体で満たされたコアを包囲する。他の実施態様では、層状構造13は、いくらかの量の蝋状物質またはポリマーを含有する混成物であり、それは結合化合物16a、16bと混和されて固定領域12a、12bを形成する。形成方法には、米国特許番号5,510,118;5,543,133;および5,552,133(出典明示により各々全体を本明細書の一部とする)に記載のように、超音波微小流体化機の使用、コロイドミルの使用、超混合などが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0040】
集合体10の大きさは、企図する適用のタイプによって異なる。集合体10の大きさは、ある実施態様では、5ミクロンより小さい。他の実施態様では、集合体の大きさは1nmないし10nmの範囲で変動し得、米国特許番号6,001,335(出典明示により全体を本明細書の一部とする)に記載のような公知方法により制御できる。
【0041】
本発明の組成物は、広範な臨床有用性を有する。用途には、腫瘍、炎症(非感染性と感染性の両方)、損傷された血管構造の診断イメージング;病変部位のレーザー誘導内視鏡検査;超音波、磁気共鳴、ラジオグラフィーおよび光学イメージング手法を使用する診断イメージング、並びに腫瘍および感染の光線力学療法および化学療法が含まれるが、これらに限定されるわけではない。標的化特異的結合の潜在的な、しかし限定的ではない他の用途は、内皮の血管イメージング、血管新生および炎症組織のイメージング、壊死組織内または周囲の循環の変化のイメージング、標的分子の不均一な発現による転移の検出、および狭窄除去後の梗塞組織の血管新生の後の血管形成炎症の緩和である。
【0042】
OMMC集合体10は、経腸、非経腸または経口投与のための診断または治療組成物に製剤できる。これらの生理的に許容し得る組成物は、企図する投与タイプに適する常套の生理的担体および/または賦形剤と共にOMMC集合体10の有効量を含有する。一例として、非経腸投与は、約0.1μMないし約10mM(約10ないし約1010粒子/mL)の範囲の濃度で集合体10の滅菌水性溶液または懸濁液を含有するのが有利である。非経腸製剤は、約100μMないし約2mMの集合体10の濃度を有し得る。かかる溶液は、医薬的に許容し得る緩衝剤、乳化剤、界面活性剤、および、場合により塩化ナトリウムなどの電解質も含有し得る。他の例として、経腸投与は、当分野で周知のように幅広く変動し得る。一般に、かかる製剤は、水性溶液または懸濁液中にOMMC集合体10の有効量を包含する液剤である。経腸組成物は、場合により緩衝剤、界面活性剤、乳化剤、チキソトロープ剤などを包含し得る。経口投与用組成物はまた、感覚的品質を高めるために、着香料および他の成分も含有し得る。
【0043】
組成物は、所望の診断および/または治療目的を達成するのに十分な用量で投与する。かかる用量は、採用する特定のOMMC集合体10、検査する器官または組織、臨床手法で採用される設備などによって幅広く変動し得る。必要な設備のタイプも、企図するイメージング様式によって幅広く変動し得る。
以下の実施例は、本発明のいくつかの態様を例示説明するのに役立つ。
【実施例】
【0044】
実施例1
1つの結合ドメインおよび末端カルボン酸塩結合領域を有し、気体を含有するOMMC集合体の調製(ドコサン酸(C21CO−);オクタコサン酸(C27CO−);およびスクシニル化PEG[100]ステアリン酸塩、n−ペルフルオロブタンで処方)
8ドラム(29.6mL)の容器に、Mettler(登録商標)化学天秤で計量したドコサン酸(10.0mg、Sigma、〜99%);オクタコサン酸(10mg、Aldrich、〜98%)および22mgのスクシニル化PEG[100]ステアリン酸塩を入れた。穏やかに加熱して、混合物を約1mLのジクロロメタン(蒸留したMallinckrodt Ultimar(登録商標))に溶解した。窒素(Air Products,High Purity Grade)流下で加熱することによりジクロロメタンを完全に除去した。過剰の炭酸水素ナトリウム(約100mg、Aldrich、〜99.7%)を、洗浄に使用する10mLの0.9%塩化ナトリウム溶液(Baxter,USP)と共にフラスコに入れた。
【0045】
共鳴箱中の超音波照射プローブ(Heat Systems Sonicator(登録商標)Ultrasonic Processor XL(Heat Systems,Inc.,Farmingdale,NY) Model XL2020)の先端を、小型ラボジャッキを使用して容器の液体の中ほどに設置した。強度レベル5を2分間と30秒間適用した。約70℃でサンプルを共鳴箱から取出し、K熱電対で合わせたFLUKE(登録商標)52K/J温度計で測定される温度が約50℃以下になるまで、容器の中身を水道水流下で冷却した。超音波照射ホーンの先端を液体の表面直下に再設置した。微小チューブ(PVDFまたは等価物)を使用して、レクチャーボトルから容器の底へ気流(30ないし50mL/分)を出力設定5で45秒間確立させ、次いで出力設定7で10秒間に上げた。濃厚な白色の気体懸濁液を含有する容器に栓をし、室温の水槽中で冷却した。
【0046】
1,000xg(2,000rpm)で1分間遠心分離した後、過剰のマトリックス物質を含有する液相(下部)を、デカフルオロブタン飽和0.9%塩化ナトリウム溶液で完全に置換した。再懸濁手法に続く遠心分離を、さらに2回繰り返した。二口バルブに合わせた30mLのプラスチックシリンジの筒をデカフルオロブタン(97%、Pfalz & Bauer,Inc.)で満たした。サンプルを入念に懸濁し、シリンジ筒に注いだ。ストッパーをシリンジ筒の上部に合わせた。サンプルを10分間静置した。デカフルオロブタンを満たした10mLのシリンジ容器に下部の5mLを引込み、封をした。サンプルをCoulter(登録商標)分析のために取り、できるだけ冷蔵した。
【0047】
実施例2
1つの結合ドメインおよび末端ガラクトサミド結合領域を有し、気体を含有するOMMC集合体の調製(ドコサン酸(C21CO−);オクタコサン酸(C27CO−);およびオクタヘキサデカノイル[ポリ(エチレングリコール)5,000]スクシンアミド−ガラクトシルアミド、n−ペルフルオロブタンで処方)
8ドラム(29.6mL)の容器に、Mettler(登録商標)化学天秤で計量したドコサン酸(10.0mg、Sigma、〜99%);オクタコサン酸(10mg、Aldrich、〜98%)および22mgのオクタヘキサデカノイル[ポリ(エチレングリコール)5,000]スクシンアミド−ガラクトシルアミド(スクシニル化PEG[100]ステアリン酸塩、DCCおよびD−ガラクトサミン(Aldrich)の反応により調製)を入れた。穏やかに加熱して、混合物を約1mLのジクロロメタン(蒸留したMallinckrodt Ultimar(登録商標))に溶解した。窒素(Air Products,High Purity Grade)流下の加熱によりジクロロメタンを完全に除去した。過剰の炭酸水素ナトリウム(〜100mg、Aldrich(登録商標)、〜99.7%)を、洗浄に使用する10mLの0.9%塩化ナトリウム溶液(Baxter,USP)と共にフラスコに入れた。
【0048】
共鳴箱中の超音波照射プローブ(Heat Systems Sonicator(登録商標)Ultrasonic Processor XL(Heat Systems,Inc.,Farmingdale,NY) Model XL2020)の先端を、小型ラボジャッキを使用して容器の液体の中ほどに設置した。強度レベル5を2分間と30秒間適用した。約70℃でサンプルを共鳴箱から取出し、K熱電対で合わせたFLUKE(登録商標)52K/J温度計で測定される温度が約50℃以下になるまで、容器の中身を水道水流下で冷却した。超音波照射ホーンの先端を液体の表面直下に再設置した。微小チューブ(PVDFまたは等価物)を使用して、レクチャーボトルから容器の底へ気流(30ないし50mL/分)を出力設定5で45秒間確立させ、次いで出力設定7で10秒間に上げた。濃厚な白色の気体マイクロ包膜懸濁液の容器に栓をし、室温の水槽中で冷却した。
【0049】
1,000xg(2,000rpm)で1分間遠心分離した後、過剰のマトリックス物質を含有する液相(下部)を、デカフルオロブタン飽和0.9%塩化ナトリウム溶液で完全に置換した。再懸濁手法に続く遠心分離を、さらに2回繰り返した。二口バルブに合わせた30ccのプラスチックシリンジの筒をデカフルオロブタン(97%、Pfalz & Bauer,Inc.)で満たした。サンプルを入念に懸濁し、シリンジ筒に注いだ。ストッパーをシリンジ筒の上部に合わせた。サンプルを10分間静置した。デカフルオロブタンを満たした10mLのシリンジ容器に下部の5mLを引込み、封をした。サンプルをCoulter(登録商標)分析のために取り、できるだけ冷蔵した。
【0050】
実施例3
2つの結合ドメイン(末端カルボン酸塩、末端ガラクトサミド)を有し、気体を含有するOMMC集合体の調製(ドコサン酸(C21CO−);オクタコサン酸(C27CO−);スクシニル化PEG[100]ステアリン酸塩およびオクタヘキサデカノイル[ポリ(エチレングリコール)5,000]スクシンアミド−ガラクトシルアミド、n−ペルフルオロブタンで処方)
8ドラム(29.6mL)の容器に、Mettler(登録商標)化学天秤で計量したドコサン酸(10.0mg、Sigma、〜99%);オクタコサン酸(10mg、Aldrich、〜98%)および11mgのオクタヘキサデカノイル[ポリ(エチレングリコール)5,000]スクシンアミド−ガラクトシルアミド(スクシニル化PEG[100]ステアリン酸塩、DCCおよびD−ガラクトサミン(Aldrich)の反応により調製)および11mgのスクシニル化PEG[100]ステアリン酸塩を入れた。穏やかに加熱して、混合物を約1mLのジクロロメタン(蒸留したMallinckrodt Ultimar(登録商標))に溶解した。窒素(Air Products,High Purity Grade)流下の加熱を適用することにより、ジクロロメタンを完全に除去した。過剰の炭酸水素ナトリウム(〜100mg、Aldrich、〜99.7%)を、洗浄に使用する10mLの0.9%塩化ナトリウム溶液(Baxter,USP)と共にフラスコに入れた。共鳴箱中の超音波照射プローブ(Heat Systems Sonicator(登録商標)Ultrasonic Processor XL(Heat Systems,Inc.,Farmingdale,NY) Model XL2020)の先端を、小型ラボジャッキを使用して容器の液体の中ほどに設置した。強度レベル5を2分間と30秒間適用した。約70℃でサンプルを共鳴箱から取出し、K熱電対で合わせたFLUKE(登録商標)52K/J温度計で測定される温度が約50℃以下になるまで、容器の中身を水道水流下で冷却した。
【0051】
超音波照射ホーンの先端を液体の表面直下に再設置した。微小チューブ(PVDFまたは等価物)を使用して、レクチャーボトルから容器の底へ気流(30ないし50mL/分)を出力設定5で45秒間確立させ、次いで出力設定7で10秒間に上げた。濃厚な白色の気体マイクロ包膜懸濁液の容器に栓をし、室温の水槽中で冷却した。過剰のマトリックス物質を含有する液相(下部)を、洗浄に使用するデカフルオロブタン飽和0.9%塩化ナトリウム溶液(Baxter,USP)で完全に置換した。共鳴箱中の超音波照射プローブ(Heat Systems Sonicator(登録商標)Ultrasonic Processor XL(Heat Systems,Inc.,Farmingdale,NY) Model XL2020)の先端を、小型ラボジャッキを使用して容器の液体の中ほどに設置した。強度レベル5を2分間と30秒間適用した。約70℃でサンプルを共鳴箱から取出し、K熱電対で合わせたFLUKE(登録商標)52K/J温度計で測定される温度が約50℃以下になるまで、容器の中身を水道水流下で冷却した。微小チューブ(PVDFまたは等価物)を使用して、レクチャーボトルから容器の底へ気流(30ないし50mL/分)を出力設定5で45秒間確立させ、次いで出力設定7で10秒間に上げた。濃厚な白色の気体マイクロ包膜懸濁液の容器に栓をし、室温の水槽中で冷却した。1,000xg(2,000rpm)で1分間遠心分離した後、過剰のマトリックス物質を含有する液相(下部)を、デカフルオロブタン飽和0.9%塩化ナトリウム溶液で完全に置換した。再懸濁手順に続く遠心分離を、さらに2回繰り返した。
【0052】
二口バルブに合わせた30mLのプラスチックシリンジの筒をデカフルオロブタン(97%、Pfalz & Bauer,Inc.)で満たした。サンプルを入念に懸濁し、シリンジ筒に注いだ。ストッパーをシリンジ筒の上部に合わせた。サンプルを10分間静置した。デカフルオロブタンを満たした10mLのシリンジ容器に下部の5mLを引込み、封をした。サンプルをCoulter(登録商標)分析のために取り、できるだけ冷蔵した。
【0053】
実施例4
OMMC集合体の結合
実施例1、2および3で調製した集合体を、準コンフルエントのヒト臍帯内皮細胞(HUVEC)、(ATCCCRL−1730)単層の存在下で、30分間にわたり攪拌しながらインキュベートした。ヘパリンが存在するか、またはしない培地の存在下で、細胞を隣接するウェルに入れた。培地を除去し、細胞を洗浄した。
【0054】
30分間のインキュベーションの後、位相差顕微鏡(200X)で、集合体の結合について細胞を調べた。荷電(硫酸陰イオン単独)カルボン酸塩の結合ドメインを1つだけ含有する集合体では、結合は殆ど見られなかった(データは示さない)。表面N−アシル−マンノシドまたはガラクトシド末端のマイクロ包膜を含有する集合体では、いくらかの結合が起こった(データは示さない)。図4に示すように、硫酸塩およびN−アシル−マンノシドまたはN−アシル−ガラクトシド混成マイクロ包膜の組合せを含有する集合体では、結合は非常に増加し、活性化細胞の表面被度は非常に良好であった。
【0055】
全件で、ヘパリンまたはヒアルロン酸オリゴ糖の存在により、結合は実質的に阻止された。これは、おそらく、自由溶液中のヘパリンまたはヒアルロン酸オリゴ糖が、細胞膜または細胞外マトリックス上の相補的親和部位について競合することにより、集合体の結合を阻止するためである。
【0056】
実施例5
n−ペルフルオロブタンで処方した、ドコサン酸(C21CO−);オクタコサン酸(C27CO−);オクタヘキサデカノイル[ポリ(エチレングリコール)5,000]スクシンアミド−ガラクトシルアミドおよび硫酸化PEG[100]ステアリン酸塩を含む気体充満マイクロ包膜の調製
8ドラム(29.6mL)の容器に、Mettler(登録商標)化学天秤で計量したドコサン酸(10.0mg、Sigma、〜99%);オクタコサン酸(10mg、Aldrich、〜98%)並びに各々10mgのオクタヘキサデカノイル[ポリ(エチレングリコール)5,000]スクシンアミド−ガラクトシルアミド(スクシニル化PEG[100]ステアリン酸塩、DCCおよびD−ガラクトサミン(Aldrich)の反応により調製)および硫酸化PEG[100]ステアリン酸塩(PEG[100]ステアリン酸塩、DCCおよび硫酸の反応により調製)を入れた。穏やかに加熱して、混合物を約1mLのアセトン(蒸留したMallinckrodt Ultimar(登録商標))に溶解した。窒素(Air Products,High Purity Grade)流下の加熱により、アセトンを完全に除去した。過剰の炭酸水素ナトリウム(〜100mg、Aldrich、〜99.7%)を、洗浄に使用する10mLの0.9%塩化ナトリウム溶液(Baxter,USP)と共にフラスコに入れた。共鳴箱中の超音波照射プローブ(Heat Systems Sonicator(登録商標) Ultrasonic Processor XL(Heat Systems,Inc.,Farmingdale,NY) Model XL2020)の先端を、小型ラボジャッキを使用して容器の液体の中ほどに設置した。強度レベル5を2分間と30秒間適用した。約70℃でサンプルを共鳴箱から取出し、K熱電対で合わせたFLUKE(登録商標)52K/J温度計で測定される温度が約50℃以下になるまで、容器の中身を水道水流下で冷却した。超音波照射ホーンの先端を液体の表面直下に再設置した。微小チューブ(PVDFまたは等価物)を使用して、レクチャーボトルから容器の底へ気流(30ないし50mL/分)を出力設定5で45秒間確立させ、次いで出力設定7で10秒間に上げた。濃厚な白色の気体マイクロ包膜懸濁液の容器に栓をし、室温の水槽中で冷却した。
【0057】
1,000xg(2,000rpm)で1分間遠心分離した後、過剰のマトリックス物質を含有する液相(下部)を、デカフルオロブタン飽和0.9%塩化ナトリウム溶液で完全に置換した。二口バルブに合わせた30ccのプラスチックシリンジの筒をデカフルオロブタン(97%、Pfalz & Bauer,Inc.)で満たした。サンプルを入念に懸濁し、シリンジ筒に注いだ。ストッパーをシリンジ筒の上部に合わせた。サンプルを20分間静置した。デカフルオロブタンを満たした10mLのシリンジ容器に下部の5mLを引込み、封をした。サンプルをできるだけ冷蔵した。
【0058】
実施例6
n−ペルフルオロブタンで処方した、ドコサン酸(C21CO−);オクタコサン酸(C27CO−);オクタヘキサデカノイル[ポリ(エチレングリコール)5,000]スクシンアミド−マンノシルアミドを含む気体充満マイクロ包膜の調製
8ドラム(29.6mL)の容器に、Mettler(登録商標)化学天秤で計量したドコサン酸(10.0mg、Sigma、〜99%);オクタコサン酸(10mg、Aldrich、〜98%)および20mgのオクタヘキサデカノイル[ポリ(エチレングリコール)5,000]スクシンアミドマンノシルアミドを入れた。実施例5に記載した手順を続けた。生じたサンプルを、できるだけ冷蔵した。
【0059】
実施例7
n−ペルフルオロブタンで処方した、ドコサン酸(C21CO−);オクタコサン酸(C27CO−);オクタヘキサデカノイル[ポリ(エチレングリコール)5,000]スクシンアミド−マンノシルアミドおよび硫酸化PEG[100]ステアリン酸塩を含む気体充満マイクロ包膜の調製
8ドラム(29.6mL)の容器に、Mettler(登録商標)化学天秤で計量したドコサン酸(10.0mg、Sigma、〜99%);オクタコサン酸(10mg、Aldrich、〜98%)並びに各々10mgのオクタヘキサデカノイル[ポリ(エチレングリコール)5,000]スクシンアミドマンノシルアミド(スクシニル化PEG[100]ステアリン酸塩、DCCおよびD−マンノサミン(Aldrich)の反応により調製)および硫酸化PEG[100]ステアリン酸塩(PEG[100]ステアリン酸塩、DCCおよび硫酸の反応により調製)を入れた。実施例5に記載した手順を続けた。生じたサンプルを、できるだけ冷蔵した。
【0060】
実施例8
n−ペルフルオロブタンで処方した、ドコサン酸(C21CO−);オクタコサン酸(C27CO−);および硫酸化PEG[100]ステアリン酸塩を含む気体充満マイクロ包膜の調製
8ドラム(29.6mL)の容器に、Mettler(登録商標)化学天秤で計量したドコサン酸(10.0mg、Sigma、〜99%);オクタコサン酸(10mg、Aldrich、〜98%)および20mgの硫酸化PEG[100]ステアリン酸塩を入れた。実施例5に記載した手順を続けた。生じたサンプルを、できるだけ冷蔵した。
【0061】
実施例9
気体充満マイクロ包膜の活性化内皮細胞(HUVEC)への結合
実施例5、6、7および8で調製したマイクロ包膜(気泡)を、ヒト内皮細胞(HUVEC、ヒト臍帯内皮細胞、ATCCCRL−1730)単層の存在下で、30分間にわたり攪拌しながらインキュベートした。実施例5−8に記載のように生成された3つのサンプルを、ヘパリンが存在するか、またはしない培地の存在下で、隣接するウェルでインキュベートした。
【0062】
培地を除去し、洗浄し、位相差顕微鏡(400X)で調べた後、荷電(硫酸陰イオン単独)マイクロ包膜では、結合は殆ど見られなかった。表面のN−アシル−マンノシドまたはガラクトシド末端マイクロ包膜では、いくらかの結合が起こった。硫酸化およびN−アシル−マンノシドまたは−ガラクトシドの組合せの混成マイクロ包膜では、活性化細胞に結合した気泡の、大幅に増加した、非常に良好な表面被度が観察された。全件で、ヘパリンの存在により、結合は完全に阻止された。
【0063】
発明の好ましい実施態様の詳細を参照して発明を開示したが、発明の精神および添付の特許請求の範囲の内で当業者にとって改変が容易であると企図されているように、開示は限定的意味よりもむしろ例示説明の意味に意図されていることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−280625(P2009−280625A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205352(P2009−205352)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【分割の表示】特願2003−520371(P2003−520371)の分割
【原出願日】平成14年8月13日(2002.8.13)
【出願人】(595181003)マリンクロッド・インコーポレイテッド (203)
【氏名又は名称原語表記】Mallinckrodt INC.
【Fターム(参考)】