説明

増殖因子組成物

哺乳動物被験体に導入されると硬組織を産生し得る組成物が提供され、そしてこの組成物は、a)i)キトサン並びにii)ヘパリン、ヘパラン硫酸及びデキストラン硫酸からなる群より選択される負電荷の多糖、のイオン性複合体、並びにb)硬組織を産生する増殖因子を包含し、このイオン性複合体は、この硬組織を産生する増殖因子のキャリアである。また、この組成物を用いた骨移植片代替物をインビトロ調製する方法、この方法を実施するキット、並びに硬組織の産生を必要とする哺乳動物被験体中で硬組織を産生させるための医療装置の調製におけるこの組成物の使用、及び硬組織の産生を必要とする哺乳動物被験体に所望の部位で硬組織を産生させる方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増殖因子組成物の分野、及び特に好適なキャリア中の硬組織を産生する増殖因子の提供に関する。本発明はさらに、硬組織再構成の分野、及び移植片、例えば骨移植片代替物の作製に関する。
【背景技術】
【0002】
増殖因子
増殖因子は、細胞表面上の糖衣の受容体に結合するタンパク質であり、主に細胞増殖及び/又は分化の活性化をもたらす。多くの増殖因子はかなり万能で、多くの異なる細胞型において細胞分裂を刺激するが、一方他の増殖因子は、特定の細胞型に特異的である。ヘパラン硫酸は、最も周知かつ十分に研究された増殖因子の受容体である。ヘパラン硫酸は、ほとんどすべての哺乳動物細胞の表面上に存在する(例えば、シンデカン、パールカン、グリピカン)。これらのヘパラン硫酸の炭水化物部分は、高度に荷電した(硫酸化)異種多糖である。この多糖(グリコサミノグリカン又はGAG)は、複合糖質の特異的な生物学的活性を担い、そしてとりわけ結合の際に増殖因子に利用される。
【0003】
増殖因子の例としては、骨形成タンパク質(BMP)が挙げられる。BMPは、TGF−βスーパーファミリーに属する分泌タンパク質である。BMPは、本来無機質が脱落した骨から同定及び精製され、そして筋肉の異所性部位に骨形成を誘導する能力によって特徴付けられた。BMP−2及びBMP−4の分子クローニングは、これらの分子の骨誘導性能力を確認した。大半のBMPは骨に見出され、そして骨形成原細胞の拘束及び分化に不可欠な媒介物である。いくつかのインビトロモデルにおいて、BMPは、骨形成系統への間葉細胞の分化を開始させ、そして2つの骨関連マーカーであるオステオカルシン及びアルカリホスファターゼの発現を誘導することを示している。いくつかのインビトロ及びインビボ研究は、組換えヒト(rh)BMP−2、BMP−4、BMP−6、BMP−7、BMP−9及びBMP−14の骨誘導性能力を実証している。
【0004】
硬組織を産生する増殖因子のキャリア
多くの増殖因子の効果と同様に、異なるBMPの骨誘導効果は、送達媒体に非常に左右される。BMPは、体液に容易に拡散する水溶性の二量体タンパク質である。キャリアを伴わずにインビボで局所的に投与されると、このBMPは、置かれた部位に数分を超えて耐えられない。BMPの臨床使用の可能性が確認され、そして種々のキャリアが、実験的及び臨床的の両方で研究されているため(例えば、「Polymeric growth factor delivery strategies for tissue engineering」、Chen RR及びMooney DJ、Pharm Res 20(8):1103−12(2003)に概説される)、キャリアの必要性が認識されている。BMPキャリアは、無機塩、天然に存在する高分子物質、合成高分子並びに合成高分子及び天然に存在する高分子の複合体に大まかに分類され得る。理想的なキャリアは、炎症応答も誘導せず、免疫反応も引き起こすべきではない。キャリアの分解は、毒性の残留物をもたらすべきでない。理想的には、キャリアは、骨の治癒と同時に吸収され、残留物を残すべきではない。現在コラーゲンは、最も一般的に使用されるBMPのキャリアであり、そして1型コラーゲンが好ましい。1型コラーゲンは、皮膚、骨、腱及び靭帯から得られ得る。ウシコラーゲンは、臨床背景において多くの増殖因子のキャリアとして現在使用されており、そしてFDAによってヒトへの使用が承認されている。BMPは、軸方向荷重により、そして圧力下でコラーゲンから容易に押し出され得るので、椎体間融合のためのケージに収容されなければならない。骨形成タンパク質−1(OP−1、またBMP−7ともいわれる)を含む製品は、キャリアとして骨由来のコラーゲンを利用する。このコラーゲンは、おそらく水素結合を通じてBMPに強力に結合する。BMPのキャリアとしての無機質が脱落した骨基質は、免疫原性の危険性及び疾患伝染の危険性が理由で支持を得ていない。増殖因子のキャリアと考えられている他の天然の高分子は、ヒアルロン酸、フィブリン、キトサン、アルギン酸塩及び他の動物由来又は植物由来の多糖である。これらのうちのどれも、ヒトへの使用に対する承認をまだ得ていない。増殖因子のキャリア物質として提案される別のカテゴリーの合成高分子は、供給が無制限であること、抗原性が低いか又はないこと、分解生成物が予測可能であること、そして疾患伝染の危険性がないという利点を有する。ポリグリコール酸誘導体及びポリ乳酸誘導体のような合成高分子が研究されているが、それらの分解生成物は、巨細胞反応を生じ得、そしてこれらの合成高分子へのBMPの結合親和性は良好ではない。
【0005】
増殖因子の安定化及び増強
ヘパラン硫酸に構造的に関連するグリコサミノグリカンであるヘパリンは、BMPを含む多数の増殖因子の機能的活性を安定化及び増強することが公知である。これは上述したように、これらの増殖因子が受容体としてヘパリン硫酸を利用するという事実におそらく起因している。ヘパリン及びヘパラン硫酸へのタンパク質の結合は、極めて特異的であり、そして両方の多糖に存在する独特の配列の単糖単位を必要とする。
【0006】
ヘパリンをBMPの安定剤及び活性化剤として使用する可能性が研究されているが、この試みは、一応の成功しか得ていない。一応の成功という理由は、出血合併症が現れることと、インビボでのヘパリンの耐久性が短いことである。平均してヘパリンは、血中及び他の組織中で90分未満の半減期を有する。
【0007】
ヘパリン
ヘパリンは市販される多糖であり、哺乳動物組織(ブタ粘膜又はウシ肺)から単離される。1916年にJay McLeanによって発見されて以来、ヘパリンは、抗凝血性質が認められている。ヘパリンは、抗凝血剤及び抗血栓剤として50年以上も臨床的に使用されている。ヘパラン硫酸と対照的に、ヘパリンは、マスト細胞の好塩基顆粒にしか存在しない。今日ヘパリンは、抗凝血剤及び/又は抗炎症剤としてクリニックで広範に使用されている。
【0008】
ヘパリン及びヘパラン硫酸といったグリコサミノグリカンは、D−グルコサミン並びにウロン酸残基(L−イズロン酸及びD−グルクロン酸)の交互の繰り返しから形成される。これらは、高度に荷電した(硫酸化)異種多糖である。
【0009】
キトサン
多糖であるキチンは、まさにセルロースの次に最も豊富な有機化合物である。商業的には、キチンは、カニ及びエビの殻から主に得られる。キチンは、規則的な構造を有し、そしてβ−1,4−結合したN−アセチル−D−グルコサミン残基から構成される。キトサンは正に荷電しており、そして例えば強塩基でのキチンの処理を介して、キチンの部分的なN−脱アセチル化によって得られる。
【0010】
インビボでキトサンは、リゾチーム及び他のグリコサミノダーゼ(glycosaminodase)によってモノマー及びオリゴマーに分解される。N−アセチル−D−グルコサミン残基が豊富なキトサンは、D−グルコサミン残基を高い割合で有するキトサンよりも、インビトロ、そしておそらくまたインビトロでより速く分解される。
【0011】
キトサンは、増殖因子の送達媒体として提唱されている(例えば、以下で議論される米国特許第6124273号を参照のこと)。しかし、キトサンは血液凝固を引き起こすことが示されているので、懸念が存在する。キトサンは、外傷の出血を減少させるための応急的な包帯として米国FDAに承認されている。従って、増殖因子の媒体としてキトサンを単独で使用することは制限され得る。なぜなら、キトサンは潜在的に、移植部位の血栓形成及び壊死性細胞死を誘導し得るからである。
【0012】
従来技術
米国特許第5894070号は、硬組織の再生を刺激するために、硬組織に不動化されたキトサン及び多糖を含む物質を使用することを記載している。この多糖は、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸及びデキストラン硫酸から選択される。この文書に記載される実験は、骨再生の刺激に関して、任意のさらなる成分を欠くキトサン−ヘパリン組成物の使用を可能にする。
米国特許第6124273号は、例えば、増殖因子の送達キャリアとしてヒドロゲル形態のキトサンを用いて、インビボで活性物質を徐放する系を記載している。
【0013】
韓国公開KR2003011407のWPI要約書第2003−753295は、ゲル形成剤、例えばキトサン;骨形成タンパク質;抗生物質;及び疼痛軽減剤を含む組成物を記載している。この組成物は、ぞうげ質形成剤としての使用が意図される。
【0014】
米国特許出願公開2003/0158302は、液体成分及び固体成分を含む自己形成性の無機質−高分子ハイブリッド組成物を開示している。この液体成分は、副成分としてキトサンを含み得る。この組成物は、増殖因子、例えば骨形成タンパク質をさらに含み得る。
【0015】
米国特許第6773723号及び同第6936276号は、組織再生に有用な2つの高分子層を含む生分解性マトリックスを記載している。薬物、増殖因子、ポリペプチド、タンパク質、cDNA、遺伝子構築物及び他の生理活性治療物質が、このマトリックスに包含され得る。この二重層のマトリックスは、少なくとも2つの多孔性高分子層を含み、これらの層は、組成、密度及び多孔率が異なり、その結果、成長中の組織環境内で異なる性質を有する。この2つの高分子層は、互いに別々に調製される。別個の層の形成に使用する高分子の例として、多くの異なる高分子、例えばキトサン及びヘパリンについて言及されている。キトサン及びヘパリンのイオン性複合体については言及されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、例えば硬組織の産生を目的として、硬組織の産生を必要とする被験体に硬組織を産生する増殖因子を送達するための新規かつ効率的な技術の提供を主要な目的として有する。
本発明の第二の目的は、硬組織を産生する増殖因子の送達のための処方物を提供することであり、この処方物は、この硬組織を産生する増殖因子を安定化させ、そして臨床的局面でその効果を促進するか、又はそうでなければ、例えば新しい骨組織を再生する効果を促進するように作用する。
本発明の第三の目的は、硬組織を産生する増殖因子を含む処方物を提供することであり、これは、投与時に処置部位に実質的に残留するように設計され得る。
本発明の第四の目的は、硬組織を産生する増殖因子の処方物を作製することであり、これは、投与領域の再生されるべき硬組織の形状を擬態するように成形され得る。
本発明の第五の目的は、硬組織、例えば骨又は軟骨をインビボ及びインビトロで再生する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これらの目的及び他の目的について、本発明は、第一の局面において、哺乳動物被験体に導入されると硬組織を産生し得る組成物を提供し、この組成物は、以下:
a)i)キトサン並びにii)ヘパリン、ヘパラン硫酸及びデキストラン硫酸 からなる群より選択される負電荷の多糖、のイオン性複合体、並びに
b)硬組織を産生する増殖因子
を包含し、このイオン性複合体は、この硬組織を産生する増殖因子のキャリアである。
【0018】
従って、キトサン及び負電荷の多糖のイオン性複合体が、増殖因子のキャリアとして有利に使用され得ることが本発明者らによって見出されている。負電荷の多糖及びキトサンの溶液が混合されると、イオン性複合体が直ちに形成され、そして沈殿する。驚くべきことに、キトサンは、負電荷の多糖をインビボでの酵素的分解から保護し、そしてそれによって負電荷の多糖の半減期が著しく延びることが見出された。予想外に、増殖因子は、キトサン及び負電荷の多糖のイオン性複合体に包含されると、より長い期間にわたって安定化される。
【0019】
背景の節で言及されるように、この負電荷の多糖であるヘパリンは、ヘパリン自身だけで哺乳動物組織に導入されると、あまり大きくない濃度でさえ出血合併症を引き起こし得る。キトサンを含むイオン性複合体において、ヘパリンは、イオン結合によってキトサンに固く結合しており、これは、出血合併症の危険性が相当減少することを意味する。言及されるように、キトサンは、移植されると血栓形成及び壊死性細胞死を誘導し得る。しかし、負電荷の多糖及びキトサンの組み合わせは、血小板の接着及び活性化を阻害することが実証された。従って、キトサン及び負電荷の多糖のイオン性複合体は、移植可能又は注入可能なキャリア若しくはマトリックスとして有利であることが見出され、これは、血栓形成の危険性を減少させる。
【0020】
要約すると、増殖因子のキャリアとしてのキトサン及び負電荷の多糖の本発明のイオン性複合体の利点のいくつかは、以下の通りである:
−この負電荷の多糖は、このイオン性複合体中ののキトサンによって安定化され、そしてその酵素的分解は相当に遅れる;
−この負電荷の多糖は、キトサンの血液凝固作用の危険性を減少又は排除する;
−キトサンは、この負電荷の多糖の抗凝血性質を不活性化するので、出血合併症の危険性を減少又は排除する。
【0021】
本発明のこの局面の組成物の好ましい実施態様において、このイオン性複合体において、このキトサンによって寄与される正電荷数は、この負電荷の多糖によって寄与される負電荷数よりも多い。負電荷の多糖に比べて荷電に関して過剰にキトサンを有する本発明の組成物のこの実施態様の投与の際に、この組成物は処置部位に不動化される。なぜならこれは、一般にすべての細胞は負電荷だからである。処置されるべき部位でのこの組成物の不動化は、増殖因子の徐放及び局所放出をもたらし、そして負電荷の多糖を獲得する。
【0022】
本発明の組成物中の硬組織を産生する増殖因子の非限定的な例は、BMP−2、BMP−4、BMP−6、BMP−7、BMP−9及びBMP−14からなる群より選択される。これらの中で、好ましい増殖因子はBMP−2である。
【0023】
本発明の組成物の好ましい実施態様において、この負電荷の多糖は、ヘパリンである。従ってこの実施態様において、本発明の組成物は、増殖因子を保有するキトサン−ヘパリンのイオン性複合体からなる。このようなイオン性複合体において、キトサン:ヘパリンの質量比は、およそ1:2〜10:1、例えばおよそ1:1〜およそ5:1、例えばおよそ2:1〜およそ5:1であり得る。より特定の間隔の例は、およそ3:1〜およそ4:1、及びおよそ2:1〜およそ3:1である。このイオン性複合体中のキトサン:ヘパリンの質量比は、この複合体の物理的特性、特にレオロジー的性質、及び接着力に影響を及ぼす。さらに、キトサンの量よりも2倍を超えて過剰なヘパリンを有することは、ヘパリンに起因した望まれない抗凝血作用という本質的な危険性を引き起こす。上記で与えられる範囲は、当業者がこの組成物が使用される特定の状況に基づいて最適比を見出すためのガイドラインとみなされるべきである。
【0024】
本発明の組成物の実施態様において、このイオン性複合体キャリア中のキトサンは、およそ50%〜およそ98%、例えばおよそ50%〜およそ95%、例えばおよそ80%〜およそ90%の脱アセチル化度を有し得る。この脱アセチル化度は、キトサンの溶解度及びその分解速度に影響を及ぼす。上記の好ましい範囲は、当業者がこの組成物が使用される特定の状況に基づいて最適な脱アセチル化度を見出すためのガイドラインである。
【0025】
本発明の組成物に使用する増殖因子の濃度は、広い範囲内で変化し得る。例えば、この硬組織を産生する増殖因子の含量は、このイオン性複合体及び硬組織を産生する増殖因子の総重量に基づいて、およそ0.1質量%〜およそ10質量%、好ましくはおよそ0.5質量%〜およそ5質量%であり得る。
【0026】
キトサン及び負電荷の多糖のイオン性複合体は、任意の物理的形態に処方され得る。好ましい実施態様において、この複合体はゲル形態である。ゲル形態の複合体の場合、この増殖因子は、ゲル1ml当たりおよそ5μg〜およそ500μgの濃度、好ましくはゲル1ml当たりおよそ1μg〜およそ100μgの濃度で存在し得る。
【0027】
なおより好ましい実施態様において、この複合体は凍結乾燥体形態である。凍結乾燥体形態の複合体の場合、この硬組織を産生する増殖因子は、凍結乾燥体1mg当たりおよそ1μg〜およそ50μgの濃度、好ましくは凍結乾燥体1mg当たりおよそ2μg〜およそ25μgの濃度で存在し得る。凍結乾燥形態のキトサン及び負電荷の多糖のイオン性複合体は、乾燥した海綿様の外観を有する。凍結乾燥前に増殖因子を含むか又は含まない複合体を成形することにより、任意の所望の形状のこのような海綿様の凍結乾燥体を調製し得る。前もって添加されない場合、硬組織を産生する増殖因子の溶液がこの凍結乾燥体上に吸着されて、本発明の組成物を提供し得る。
【0028】
驚くべきことに、本発明のこの実施態様の組成物、すなわち例えば海綿様構造の形態で、凍結乾燥体キャリア中に増殖因子を含む組成物は、本発明の組成物の他の物理的形態の効果よりも有利な効果を示す。増殖因子の効果に対するこの物理的形態の驚くべき影響は、以下の実施例において増殖因子BMP−2について実証される。凍結乾燥形態のイオン性複合体を使用する利点は、硬組織形成が、大きさ及び形態に関して移植された「海綿」によって定められるという事実に起因すると考えられる。このタイプのキャリアを使用することにより、骨形成の無制御な拡散が回避され、これは、多くの適用において決定的に重要である(例えば、Poynton AR及びLane JM、Spine 15;27(16 補遺1):S40−8(2002)を参照のこと)。
【0029】
本発明のさらなる局面において、本発明の第一の局面の組成物の有利な性質は、骨再構成の分野に応用される。
従って、本発明の第二の局面は、骨移植片代替物をインビトロ調製する方法を提供し、この方法は、以下:
a)i)キトサン並びにii)ヘパリン、ヘパラン硫酸及びデキストラン硫酸からなる群より選択される負電荷の多糖、のイオン性複合体を提供し、
b)このイオン性複合体を、所望の形状の骨移植片代替物に成形し、そして
c)このイオン性複合体を、この所望の形状を有する固体又は半固体の骨移植片代替物構造に固める工程を包含し、
この方法はまた、硬組織を産生する増殖因子をこのイオン性複合体に添加する工程を包含する。
【0030】
この硬組織を産生する増殖因子は、この方法の任意の段階でこの複合体に添加され得る。例えばこの硬組織を産生する増殖因子は、工程a)の後に直接、すなわちキトサン及び負電荷の多糖の混合後に直接この複合体に添加され得る。この場合、キャリア及び硬組織を産生する増殖因子の混合物は、この組成物を固体又は半固体の骨移植片代替物構造に成形する前に完成する。あるいはこの硬組織を産生する増殖因子は、固体又は半固体の骨移植片代替物構造を固める間又は後に、例えば工程b)の直後の工程において、工程c)の間、又は工程c)の後に添加され得る。この組成物の成分の貯蔵安定性の理由のために、硬組織を産生する増殖因子を添加せずにこの固体又は半固体の骨移植片代替物構造を第一に調製し、そして引き続いて骨移植片代替物を臨床使用する直前に、硬組織を産生する増殖因子を添加することが有利であり得る。
【0031】
この操作は、イオン性複合体が凍結乾燥体に凍結乾燥される本発明のこの局面の実施態様により例示される。この凍結乾燥体は、乾燥した海綿様固体の形態を採用し得る。この骨移植片代替物の成形は、凍結乾燥の前又は後、及び硬組織を産生する増殖因子を添加する前又は後に行われ得る。本発明のこの局面の方法において、本発明の組成物の凍結乾燥体、例えば海綿様構造の形態でのこのような使用は、イオン性複合体及び硬組織を産生する増殖因子の組成物を凍結乾燥体という物理的形態で有する驚くべき有利な効果を利用するさらなる利点を有する。
【0032】
本発明の方法の工程b)及び工程c)は、鋳型中で有利に行われ得る。
本発明の第三の局面において、以下:
−i)キトサン並びにii)ヘパリン、ヘパラン硫酸及びデキストラン硫酸からなる群より選択される負電荷の多糖、のイオン性複合体を含む第一の容器;
−硬組織を産生する増殖因子を含む第二の容器;並びに
−本発明の第二の局面の方法を実施するための指示書
を包含するキットが提供される。
【0033】
本発明のこの局面のキットは、骨移植片代替物を調製する本発明の方法の実施に好適である。
この方法及び/又はキットのさらなる特徴の異なる実施態様、例えば硬組織を産生する増殖因子、負電荷の多糖の個々の選択、キトサンの性質などは、本発明の組成物の局面に関して上に記載される通りである。
【0034】
第四の局面において、本発明は、硬組織の産生を必要とする哺乳動物被験体中で硬組織を産生させるための医療装置の調製における本発明の第一の局面の組成物の使用を提供する。
【0035】
また、本発明の第五の局面において、硬組織の産生を必要とする哺乳動物被験体に所望の部位で硬組織を産生させる方法が提供され、この方法は、この組成物がその生物学的機能を発揮できるような条件下で有効量の本発明の第一の局面の組成物をこの部位に投与して、硬組織をこの部位で産生させることを包含する。
【0036】
本発明のこれらの局面の実施態様において、この被験体は、脊椎円板変性(脊椎固定を必然的に伴う)、非治癒性の長骨骨折(例えば脛骨骨折)、手術(例えば、神経外科手術後の骨弁壊死;骨腫瘍切除)又は外傷(例えば、骨格の挫傷を伴う交通事故)に起因した骨の損失及び先天性の骨欠損(例えば、槽裂又は他の脳顔面頭蓋奇形)から選択される状態を患い得る。
【0037】
他の実施態様において、この被験体は、移植、例えば歯科インプラント及び股関節部、膝又は他の解剖学的領域の整形プロテーゼに関連して、骨形成の増強を必要とし得る。
他の実施態様において、この被験体は、骨再構成を必要とし得る。これらの場合、本発明の組成物は、例えば筋肉又は脂肪中での骨の事前加工の目的で使用され得る。この事前加工された骨は、引き続いて骨再構成方法に使用され得る。
【0038】
本発明のすべての局面のすべての実施態様のすべての特徴は、当業者が過度に実験を行わずに確認するとき、このような化合物が明らかに実行不可能ではないという条件で、その任意の可能な組み合わせに使用され得る。
【0039】
本明細書中で使用される用語「硬組織」は、硬い細胞間物質を有する組織、及び/又は鉱化した組織を包含することが意図される。硬組織の例は、骨及び軟骨である。
本発明の文脈において、用語「骨移植片代替物」は、哺乳動物体に導入されるかそして/又は哺乳動物組織と接触させるときに、骨組織の再生に使用され得るすべての構造を包含することが意図される。骨移植片代替物はまた、「骨組織構造」と互換的に示され得る。
本明細書中で使用される用語「哺乳動物」、「哺乳類」などは、別段の通知がない限りヒトを包含する。
【実施例】
【0040】
本発明のさらなる理解のために、以下の非限定的な実施例が与えられる。
実施例1:異なるBMP−2キャリアの比較
A.コラーゲン/BMP−2組成物の調製
ウシI型コラーゲン(Vitrogen 100、Cohesion、Palo Alto、CA)を、製造業者が記載する通りに調製した。手短に言えば、冷蔵Vitrogenコラーゲン8mlを、10×リン酸緩衝化生理食塩水溶液1ml及び0.1M NaOH 1mlと混合した。この混合物のpHを、pH紙によって測定し、そして0.1M HCl又は0.1M NaOHを数滴添加することによって7.4に調整した。この中和したコラーゲン溶液を、4℃で貯蔵した。30分間以内に、組換えヒトBMP−2(InductOs、Wyeth Lederle)を、コラーゲンゲル1ml当たりBMP−2 50μg又はコラーゲンゲル1ml当たりBMP−2 250μgの最終濃度まで撹拌によって添加した。このBMP/コラーゲンゲルを、1mlシリンジに移し、そして室温でおよそ10〜15分間維持した。その後、サンプル0.2mlを、下記の通りに動物に注入した。
【0041】
B.ヘパリン/コラーゲン/BMP−2組成物の調製
BMP−2を、コラーゲンゲルを添加する前にヘパリン(ヘパリンナトリウム、Pharmacia)1000IUと混合すること以外は、Aに記載される方法を反復した。
【0042】
C.キトサン/BMP−2組成物の調製
脱アセチル化度84%のキトサン(4.5g)(ChitoClear(登録商標)、Primex ehf、Norway)を、水125gに添加した。HCl(4M)を、この撹拌混合物に室温で一滴ずつ添加した。pH4.7の透明な溶液が得られると、この反応を終結させた。この溶液を、密閉容器中に一晩維持した。この容量を150mlに調整し、そしてpH値を5.0に調整した。
このキトサン溶液に、ゲル1ml当たりBMP−2 50μg又はゲル1ml当たりBMP−2 250μgの最終濃度まで撹拌によって組換えヒトBMP−2(InductOs、Wyeth Lederle)を添加した。このBMP−キトサンゲルを、1mlシリンジに移し、そしてサンプル0.2mlを、下記の通りに動物に注入した。
【0043】
D.キトサン/ヘパリン/BMP−2組成物の調製
脱アセチル化度84%のキトサン(4.5g)(ChitoClear(登録商標)、Primex ehf、Norway)を、水125gに添加した。HCl(4M)を、この撹拌混合物に室温で一滴ずつ添加した。pH4.7の透明な溶液が得られると、この反応を終結させた。ヘパリン(1.8g)(ヘパリンナトリウム、Pharmacia)を、水25gに溶解した。この溶液を、密閉容器中に一晩維持した。このヘパリン溶液を、撹拌のもとキトサン溶液に添加した。最終調製物中のキトサン:ヘパリンの質量比は5:2であり、そして形成されるゲルのpHは5.7であった。4M HClでpH値を4.9に調整した後、調製物の最終質量が150gになるように水を添加した。得られるゲルの試験により、相分離がなく巨視的に均一系であることが示された。安定性は良好であった。
【0044】
このキトサン/ヘパリンゲルに、組換えヒトBMP−2(InductOs、Wyeth Lederle)を、ゲル1ml当たりBMP−2 50μg又はゲル1ml当たりBMP−2 250μgの最終濃度まで撹拌によって添加した。このキトサン/ヘパリン/BMP−2ゲルを、1mlシリンジに移し、そしてサンプル0.2mlを、下記の通りに動物に注入した。各々の注入物は、BMP−2とともにキトサン6.0mg及びヘパリン2.40mgを含んだ。
【0045】
E.骨形成に対する異なるBMP−2組成物の効果
体重250〜300グラムの青年期の雄性Sprague Dawleyラット60匹を、Temgesic(登録商標)(体重1kg当たり0.16ml)で麻酔した。各々のラットに、上記の通りに調製した4つの異なるBMP−2ゲルのうちの1つを、22G針を用いて四頭筋に0.2ml注入した。このラットを、各群5匹ずつ12の群に分けた。各々のラットに、4つの異なるキャリア、コラーゲン、ヘパリン/コラーゲン、キトサン及びヘパリン/キトサンのうちの1つにおけるBMP−2 0μg、BMP−2 10μg又はBMP−2 50μgを与えた。このラットを、この処置の後自由に行動させた。このラットを、注入から4週間後にCO2によって安楽死させた。
【0046】
F.X線撮影及びCTスキャン
注入から4週間後、安楽死させたラットの後脚を切断し、そしてX線撮影を行った。このラットのCTスキャンを同じ後脚に対して行って、誘導された異所性の骨量及び骨無機質密度を算出した。
【0047】
G.結果及び議論
新しく形成された骨組織の量及び密度の両方に関する結果を、表1並びに図1及び図2に示す。
【表1】

【0048】
コラーゲン単独又はキトサン及びヘパリンの組み合わせを含む実験において、出血合併症も血栓形成も観察されなかった。
BMP−2を含まないコラーゲン及びコラーゲン/ヘパリンは、いかなる骨形成も誘導せず、一方キトサン/ヘパリン複合体単独は、5つの標本のうちの1つにおいて、少量の異所性の骨を誘導した。BMP−2 10μgと混合したとき、コラーゲンもコラーゲン/ヘパリンも、異所性の骨形成を誘導しなかった。BMP−2 10μgを含むキトサン/ヘパリンによって、一応の骨形成が誘導された。BMP−2量が50μgに増大すると、このコラーゲン/ヘパリンキャリアは、1つの標本において骨形成を誘導した。キトサン単独を、BMP−2 50μgとともに送達媒体として使用したとき、異所性の骨形成量は、すべての標本において劇的に増大した。キトサン/ヘパリンをBMP−2キャリアとして使用したとき、誘導された骨量に対する効果は一層高かった(表1、図1)。骨無機質密度の有意な差異は、群間で算出されなかった(図2)。
BMP−2 50μgを用いた実験を反復し、ほぼ同一の結果を得た。
【0049】
実施例2:凍結乾燥したBMP−2キャリア
A.凍結乾燥したキトサン/ヘパリン複合体の調製
キトサン(9.0g)(ChitoClear(登録商標)、Primex ehf、Norway)を、撹拌のもと純水およそ200gに添加した。HCl(4M、水性)を、撹拌のもと一滴ずつ添加した。キトサンが完全に溶解したら、pHを4.7±0.2に調整した。この溶液を、室温に1時間置き、そして最終容量が246.4mlになるように水を添加した。ヘパリン水溶液(50ml中3.6g)(ヘパリンナトリウム、Pharmacia)を、撹拌のもと5分間キトサン溶液に添加した。得られるゲルのpH値は5.0であった。
【0050】
このように形成されたヘパリン/キトサン複合体ゲルを、直径9cmのペトリ皿に、1皿当たり複合体ゲルを40gの量で注いだ。この複合体が完全に凍結するまで、この皿をおよそ−10℃のフリーザーに置いた。このペトリ皿を凍結乾燥器に移し、そして完全に乾燥するまで乾燥させ、これにより、白色の海綿様固体物質の複合体を得た。
【0051】
B.凍結乾燥したキャリア/BMP−2組成物の調製及び移植
上記のヘパリン/キトサン海綿及びI型コラーゲン海綿(InductOs、Wyeth Lederle)を、4×6mm片に切断した。水溶液中のBMP−2 50μg(InductOs、Wyeth Lederle)を、各群の海綿に添加した。この4×6mmのヘパリン/キトサン海綿は、各々キトサン6.1mg及びヘパリン2.42mgを含んだ。この吸着したBMP−2を含む海綿を、少なくとも15分間室温に維持し、次いで青年期の雄性Sprague Dawleyラットの四頭筋に15mmの皮膚切開を通じて移植した。2つの異なる物質の各々に対して、6つの移植を行った。このラットを、処置後自由に行動させた。
【0052】
C.結果及び議論
異所性の骨形成を、移植から4週間後にX線によって研究した。豊富な骨形成が、キトサン/ヘパリン/BMP群において6匹のラットのうち5匹に観察され、一方コラーゲン/BMP群においては、骨形成は観察されなかった。
凍結した「ヘパリン/キトサン海綿」をBMP−2送達媒体として使用する場合の誘導された骨に対する効果は、骨形成が、凍結乾燥体移植によって限定された明らかに区切られた部位に制限された点において、ヘパリン及びキトサンのイオン性複合体をゲル形態で用いた実施例1で観察された効果よりも優れていた。
【0053】
実施例3:異なるBMP−4キャリアの比較
BMP−2の代わりにBMP−4を用いた以外は、実施例1及び実施例2を反復した。
骨形成に関する類似の結果が予期された。
【0054】
実施例4:ケーススタディ
背景
広範に頭蓋骨を欠損した42歳の女性を、クリニックへ回した。4年前にこの女性は、手術及び術後照射により脳腫瘍を処置されていた。この女性の右前頭頭頂領域の7×9cmの大きさの骨弁が、手術後の感染により失われた。皮膚を通じた移植片の感染及び貫入のために、異なる移植片を用いた4を超える頭蓋再構成の試みが失敗している。
【0055】
方法
患者の頭蓋欠損の手術前写真は、この欠損が頭蓋の右前頭頭頂部位に位置することを明らかにした。
BMP−2(WyethからのInductOsキットに提供される;組換えヒトBMP−2、サッカロース、グリシン、グルタミン酸、NaCl、ポリソルベート(polysorbat)80及びNaOHを含む粉末)12mgを、滅菌水(InductOsキット、Wyeth)8mlに溶解した。このBMP溶液を、実施例2に記載される通りに調製したキトサン−ヘパリン凍結乾燥体の滅菌海綿(7×9×0.5cm)の2つのサンプル上に分散させた。
この欠損を外科的に露出させ、そしてこの海綿のうちの1つを硬膜上に直接接触させ、その後、足場として役立つ頭蓋チタンメッシュ(Walter Lorenz Surgical Inc.、Jacksonville、Florida、USA)を接触させた。このチタンメッシュを、第二のキトサン−ヘパリン海綿で覆い、頭蓋輪郭を再構築した。
最後にこの移植片を、皮膚を閉じる前に局部の骨膜弁で覆った。
【0056】
結果
手術前の細菌試験により、キトサン−ヘパリン海綿が無菌であることが実証された。
術後のCT−スキャンにより、移植部位に石灰化硬膜が示された。
出血合併症は観察されず、そしてAPTTレベルは、処置及びその後を通して正常であった。6〜8週後に移植部位の毛がなくなり、これは、BMP−2を用いた処置に関連した周知の副作用である。毛は、およそ16〜20週後に再成長した。
チタンメッシュの感染及び貫入は、再構成の一般的な合併症であり、そして患者を処置するこれまでのすべての試みの際に生じたという事実にもかかわらず、8ヶ月後この患者には、このチタンメッシュの感染も貫入も生じなかった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】示されるキャリアにおいてBMP−2を与えられるラットの新しく形成された骨組織量を示す図である。
【図2】示されるキャリアにおいてBMP−2を与えられるラットの新しく形成された骨組織密度を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物被験体に導入されると硬組織を産生し得る組成物であって、この組成物は、以下:
a)i)キトサン;並びにii)ヘパリン、ヘパラン硫酸及びデキストラン硫酸からなる群より選択される負電荷の多糖;のイオン性複合体、並びに
b)硬組織を産生する増殖因子
を包含し、該イオン性複合体が、該硬組織を産生する増殖因子のキャリアである、上記組成物。
【請求項2】
イオン性複合体において、キトサンによって寄与される正電荷数が、負電荷の多糖によって寄与される負電荷数よりも多い、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
硬組織を産生する増殖因子が、BMP−2、BMP−4、BMP−6、BMP−7、BMP−9及びBMP−14からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
硬組織を産生する増殖因子がBMP−2である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
負電荷の多糖がヘパリンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
キトサン:ヘパリンの質量比が、およそ1:2〜およそ10:1である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
キトサン:ヘパリンの質量比が、およそ1:1〜およそ5:1である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
キトサン:ヘパリンの質量比が、およそ2:1〜およそ5:1である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
キトサン:ヘパリンの質量比が、およそ3:1〜およそ4:1である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
キトサン:ヘパリンの質量比が、およそ2:1〜およそ3:1である、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
キトサンが、およそ50%〜およそ98%の脱アセチル化度を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
キトサンが、およそ80%〜およそ90%の脱アセチル化度を有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
硬組織を産生する増殖因子の含量が、イオン性複合体及び硬組織を産生する増殖因子の総重量に基づいて、およそ0.1質量%〜およそ10質量%、好ましくはおよそ0.5質量%〜およそ5質量%である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
イオン性複合体がゲルの形態である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
硬組織を産生する増殖因子が、ゲル1ml当たりおよそ5μg〜およそ500μgの濃度、好ましくはゲル1ml当たりおよそ1μg〜およそ100μgの濃度で存在する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
イオン性複合体が凍結乾燥体形態である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
硬組織を産生する増殖因子が、凍結乾燥体1mg当たりおよそ1μg〜およそ50μgの濃度、好ましくは凍結乾燥体1mg当たりおよそ2μg〜およそ25μgの濃度で存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
骨移植片代替物をインビトロ調製する方法であって、この方法は、
a)i)キトサン;並びにii)ヘパリン、ヘパラン硫酸及びデキストラン硫酸からなる群より選択される負電荷の多糖;のイオン性複合体を提供する工程、
b)該イオン性複合体を、所望の形状の骨移植片代替物に成形する工程、そして
c)該イオン性複合体を、該所望の形状を有する固体又は半固体の骨移植片代替物構造にする工程
を包含し、
この方法はまた、硬組織を産生する増殖因子をこのイオン性複合体に添加する工程を包含する、
上記方法。
【請求項19】
工程b)及び工程c)が鋳型中で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
イオン性複合体を凍結乾燥体に凍結乾燥することをさらに包含する、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
硬組織を産生する増殖因子を添加する工程が、凍結乾燥体上へこの増殖因子溶液を吸着させることを包含する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
硬組織を産生する増殖因子が、請求項3、4及び13のいずれか1項に定義される通りである、請求項18〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
負電荷の多糖が請求項5に定義される通りである、請求項18〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
キトサンが請求項11又は12に定義される通りである、請求項18〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
イオン性複合体が請求項2、6〜10及び14〜17のいずれか1項に定義される通りである、請求項18〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
−i)キトサン;並びにii)ヘパリン、ヘパラン硫酸及びデキストラン硫酸からなる群より選択される負電荷の多糖;のイオン性複合体を含む第一の容器、
−硬組織を産生する増殖因子を含む第二の容器、並びに
−請求項18〜21のいずれか1項に記載の方法を実施するための指示書
を包含するキット。
【請求項27】
硬組織を産生する増殖因子が、請求項3、4及び13のいずれか1項に定義される通りである、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
負電荷の多糖が請求項5に定義される通りである、請求項26又は27に記載のキット。
【請求項29】
キトサンが請求項11又は12に定義される通りである、請求項26〜28のいずれか1項に記載のキット。
【請求項30】
イオン性複合体が請求項2、6〜10及び14〜17のいずれか1項に定義される通りである、請求項26〜29のいずれか1項に記載のキット。
【請求項31】
硬組織の産生を必要とする哺乳動物被験体中で硬組織を産生させるための医療装置の調製における、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項32】
硬組織が骨組織である、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
被験体が脊椎円板変性、非治癒性の長骨骨折、手術又は外傷に起因した骨の損失及び先天性の骨欠損から選択される状態を患う、請求項31又は32に記載の使用。
【請求項34】
被験体が移植に関連して骨形成の増強を必要とする、請求項31又は32に記載の使用。
【請求項35】
被験体が骨再構成を必要とする、請求項31又は32に記載の使用。
【請求項36】
硬組織の産生を必要とする哺乳動物被験体に所望の部位で硬組織を産生させる方法であって、請求項1〜17のいずれか1項に記載の有効量の組成物を、この組成物がその生物学的機能を発揮できるような条件下で、該部位に投与して、硬組織を該部位で産生させることを包含する、上記方法。
【請求項37】
硬組織が骨組織である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
被験体が、脊椎円板変性、非治癒性の長骨骨折、手術又は外傷に起因した骨の損失及び先天性の骨欠損から選択される状態を患う、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
被験体が移植に関連して骨形成の増強を必要とする、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項40】
被験体が骨再構成を必要とする、請求項36又は37に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−527033(P2008−527033A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552090(P2007−552090)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際出願番号】PCT/SE2006/000077
【国際公開番号】WO2006/078211
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(507242318)ボンオス・メディカル・アー・ベー (1)
【Fターム(参考)】