説明

墜落防止梯子

【課題】 梯子のコンパクト化を図るとともに、建物を損傷させることなく梯子を建物に確実に固定させることが可能な墜落防止梯子を提供する。
【解決手段】 地上Gから少なくとも建物100の屋根101の下端部まで延びる長さを有する運搬可能な梯子本体10と、建物100に沿って立掛けられた状態の梯子本体10に昇降自在に設けられ、建物100の雨樋104を支持するための雨樋受け具103が固定される垂木102に当接した状態で梯子本体10と雨樋104との間に隙間S1を生じさせる可動固定具20と、垂木102に当接した可動固定具20を雨樋受け具103に連結する連結手段30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屋根作業を行う作業者の屋根からの墜落を防止することが可能な墜落防止梯子に関する。
【背景技術】
【0002】
瓦屋根など傾斜のある屋根の上での高所作業においては、作業者が地上側から屋根に上る際には、梯子を建物の屋根の下端部に立て掛ける必要があり、この場合、屋根の下端部に位置する雨樋が梯子に押し潰され損傷するという問題が生じていた。そこで、従来から雨樋との干渉を回避する種々の梯子が提案されている(例えば特許文献1〜3参照。)。
【0003】
特許文献1の梯子は、梯子本体を構成する両側の柱材から建物の外壁に向かって支持材が延びており、支持材の先端部を建物の外壁にビス等で固定するようにしている。特許文献2の梯子補助具は、梯子本体を建物の外壁を利用して支持するとともに、梯子本体の上端側から建物の屋根を押付けることにより、梯子本体を建物に対して固定するようにしている。特許文献3の技術は、梯子本体に建物の外壁側に突出するアタッチメントを装着することにより、アタッチメントを介して梯子本体を建物の外壁に支持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−45666号公報
【特許文献2】実用新案登録第3075963号公報
【特許文献3】特許第2779909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1〜3の梯子は、いずれも建物の外壁を利用して梯子を支持する構造のため、梯子本体から支持部材が大きく突出することになり、梯子の外形が大になるとともに梯子の重量が増加し、梯子の運搬に支障がでるという問題がある。また、特許文献2、3の梯子は、梯子本体に横方向の外力が作用した場合は、梯子本体が横方向に傾くことになり、安全性を維持することが難しい。特許文献1の梯子は、梯子本体を支持するための支持材をビスなどで建物の外壁に固定する構造を採用しているので、ネジ止め作業が必要になるとともに、建物の外壁を損傷させるという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、梯子のコンパクト化を図るとともに、建物を損傷させることなく梯子を建物に確実に固定させることが可能な墜落防止梯子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、地上から少なくとも建物の屋根の下端部まで延びる長さを有する運搬可能な梯子本体と、前記建物に沿って立掛けられた状態の前記梯子本体に昇降自在に設けられ、前記建物の雨樋を支持するための雨樋受け具が固定される屋根部材に当接した状態で前記梯子本体と前記雨樋との間に隙間を生じさせる可動固定具と、前記屋根部材に当接した前記可動固定具を前記雨樋受け具に連結する連結手段と、を備えたことを特徴とする墜落防止梯子である。
【0008】
この発明によれば、可動固定具が屋根部材に当接した状態では、梯子本体と雨樋との間に隙間が生じ、梯子本体と雨樋との干渉が回避される。また、屋根部材に当接した可動固定具は、連結手段によって雨樋受け具に連結されるため、梯子本体は可動固定具を介して建物に確実に固定される。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の墜落防止梯子において、前記梯子本体には、前記建物の屋根の傾斜面に沿って配置可能な棒状の墜落防止ロッドが連結されていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の墜落防止梯子において、前記可動固定具には、前記雨樋受け具と水平方向に係合可能な保持溝が形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の墜落防止梯子において、前記連結手段は、前記雨樋受け具に巻き付け可能な連結紐を有しており、前記連結紐の両端部には前記可動固定具に引っ掛け可能な連結具が設けられている特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、可動固定具は、雨樋受け具が固定される屋根部材に当接した状態で梯子本体と雨樋との間に隙間を生じさせるので、雨樋と梯子本体との干渉を回避でき、雨樋の損傷を防止することができる。また、屋根部材に可動固定具を当接させているので、梯子本体から支持位置である屋根部材までの長さを短くすることができ、従来技術のように、梯子本体から可動固定具を大きく突出させる必要がなく、コンパクト化が図れる。したがって、重量も増加も抑制でき、梯子の運搬性を高めることができる。さらに、可動固定具は、雨樋受け具に連結手段を介して連結されるので、ビスなどを用いた従来技術と異なり、建物の損傷を回避することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、梯子本体に、建物の屋根の傾斜面に沿って配置可能な棒状の墜落防止ロッドを連結させているので、屋根の上での作業の際には、墜落防止ロッドを利用することができ、屋根の上での作業の安全性を高めることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、可動固定具に、雨樋受け具と水平方向に係合可能な保持溝を形成しているので、連結手段を介して可動固定具を雨樋受け具に固定する作業以前にも、梯子本体が横方向のずれるのを阻止することができ、連結手段を使用する前の作業における安全性を高めることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、連結手段は、雨樋受け具に巻き付け可能な連結紐を有しており、連結紐の両端部には可動固定具に引っ掛け可能な連結具が設けられているので、雨樋受け具の形状が異なる場合でも、可動固定具の雨樋受け具との連結が容易となり、可動固定具を雨樋受け具に固定するための作業を迅速かつ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係わる墜落防止梯子の正面図である。
【図2】図1の墜落防止梯子の斜視図である。
【図3】図1の墜落防止梯子を建物の垂木を使用して立て掛けた状態を示す側面図である。
【図4】図1の墜落防止梯子の可動固定具の固定状態を示す正面図である。
【図5】図4における可動固定具の斜視図である。
【図6】図1の墜落防止梯子における梯子本体と可動固定具との取付け関係を示す平面図である。
【図7】図1の墜落防止梯子における上部支持具の斜視図である。
【図8】図1の墜落防止梯子における中間支持具の斜視図である。
【図9】図1の墜落防止梯子における下部支持具の斜視図である。
【図10】図1の墜落防止梯子における連結手段の斜視図である。
【図11】図1の墜落防止梯子における墜落防止ロッドの使用状態を示す斜視図である。
【図12】図1の墜落防止梯子を建物の破風を使用して立て掛けた状態を示す側面図である。
【図13】図12における可動固定具の正面図である。
【図14】図1の墜落防止梯子を使用した屋根の上の作業手順を示す工程図である。
【図15】本発明の実施の形態2に係わる墜落防止梯子の正面図である。
【図16】図15の墜落防止梯子を使用した屋根の上の作業手順を示す工程図である。
【図17】図16の作業工程に続く作業の手順を示す工程図である。
【図18】図17の作業工程に続く作業の手順を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1ないし図14は、本発明の実施の形態1に係わる墜落防止梯子1を示している。墜落防止梯子1は、例えば建物100の屋根101の上での電気工事などを行う場合に使用される。建物100は、屋根瓦を並べた屋根101を有しており、屋根101は上方から下方に向けて下りとなる傾斜面に形成されている。屋根101の下端部は、建築様式によって構造が異なっており、図3に示す垂木102を用いた和風建築と、図12に示す破風106を用いた洋風建築とでは、雨樋を支持する構造が異なっている。図3に示すように、垂木102を用いた和風建築では、垂木102に固定された雨樋受け具103を介して雨樋104が取付けられている。図12に示すように、破風106を用いた洋風建築では、破風106に固定された雨樋受け具107を介して雨樋108が取付けられている。墜落防止梯子1は、いずれの建築様式にも使用可能となっている。
【0019】
雨樋受け具103は、例えば釘を用いて垂木102に固定されている。雨樋受け具107は、同様に釘を用いて破風106に固定されている。雨樋受け具103および雨樋受け具107は、金属部材から構成されている。この実施の形態1においては、図4に示すように、雨樋受け具103はすべての垂木102に固定されておらず、一つおきの垂木102に固定されている。雨樋受け具107は、図13に示すように、破風106に対して水平方向に所定の間隔をもって固定されている。
【0020】
図1および図2に示すように、墜落防止梯子1は、梯子本体10と、可動固定具20と、連結手段30と、墜落防止ロッド40と、保持リング50とを備えている。梯子本体1は、軽量化を図るために例えばアルミニウム合金から構成されている。梯子本体1は、長手方向に延びる2つの柱材11と複数の踏材12とを有している。2つの柱材11は、左右方向に所定の間隔をもって配置されている。各柱材11は、図6に示すように断面形状がコの字形に形成されており、複数の踏材12を介して連結されている。梯子本体1は、柱材11の一端部11aが地上G側に固定され、他端部11bが建物100の屋根101の下端部よりも上方に突出させた状態で使用される。実施の形態1においては、梯子本体1を単体からなる1段タイプの構造としているが、複数の梯子本体1を長手方向にスライド可能に連結し、高い建物100に対応可能な多段構造タイプの梯子本体を採用する構成としてもよい。
【0021】
可動固定具20は、梯子本体10に設けられており、各柱材11に対して昇降自在となっている。可動固定具20は、アルミニウム合金または強度の高い合成樹脂などから構成されている。図5に示すように、可動固定具20は、保持部21と、固定用アーム22と、保持溝23と、連結部24とを有している。保持部21は、四角形の筒状に形成されており、内面21aが梯子本体10の柱材11と摺動可能となっている。可動固定具20の保持部21の上部には、ロープ固定具21bが設けられている。ロープ固定具21bには、可動固定具20を昇降させるためのロープ26が連結されている。梯子本体10における可動固定具20の上方に位置する踏材12には、滑車13が取付けられている。可動固定具20は、滑車13に支持されたロープ26を介して吊り下げられており、地上G側からロープ26を上下に操作することにより、可動固定具20を昇降させることが可能となっている。
【0022】
可動固定具20の固定アーム22は、略L字状に形成されており、保持部21から外方に延びている。詳しくは、固定用アーム22は、保持部21と連なる付け根部22aが水平方向に延びており、付け根部22aに連なる中間部22bが上方に向かって延びている。中間部22bの外側は、図12に示すように、屋根部材としての破風106の外面と密着可能な垂直面状に形成されている。そして、固定用アーム22の先端部22cは、図3に示すように、屋根部材としての垂木102の端面と密着可能な傾斜面状に形成されている。
【0023】
固定用アーム22には、所定の間隔をもって2つの保持溝23が設けられている。保持溝23は、溝幅が雨樋受け具103、107が進入可能な大きさに形成されており、中間部22bを基端として先端部22cまで延びている。保持溝23は、雨樋受け具103および雨樋受け具107のいずれに対しても水平方向に係合可能となっている。固定用アーム22の幅方向の端部には、可動固定具20を雨樋受け具103または雨樋受け具107に連結するための連結部24がそれぞれ形成されている。
【0024】
図10は、屋根部材に当接した可動固定具20を雨樋受け具103または雨樋受け具107に連結する連結手段30を示している。連結手段30は、雨樋受け具103または雨樋受け具107に巻き付け可能な連結紐31を有している。連結紐31の一端部には、可動固定具20の一方の連結部24に引っ掛け可能な連結具32が設けられている。連結紐31の他端部には、可動固定具20の他方の連結部24に引っ掛け可能な連結具33が設けられている。連結紐31は、柔軟でかつ引張り強度の高い部材から構成されている。各連結具32、33は、連結部24に対して着脱可能なフックを有している。
【0025】
梯子本体10には、建物100の屋根101の傾斜面に沿って配置可能な棒状の墜落防止ロッド40が連結されている。墜落防止ロッド40は、軽量でかつ曲げ剛性の高い部材、例えばアルミニウム合金などから構成されている。墜落防止ロッド40は、梯子本体10の柱材11に沿って延びており、一方は柱材11の一端部11aの近傍に位置しており、他方は柱材11の他端部11bの近傍に位置している。墜落防止ロッド40には、複数の可動突起41が設けられている。可動突起41は、墜落防止ロッド40の軸方向に所定の間隔をもって配置されている。図11に示すように、可動突起41は、墜落防止ロッド40に対して出没可能となっており、バネ(図示略)によって墜落防止ロッド40の外面から突出する方向に付勢されている。墜落防止ロッド40の上端部には、屋根101の損傷を防止するための弾性部材からなる保護キャップ42が取付けられている。
【0026】
墜落防止ロッド40は、図1および図2に示すように、屋根101上での作業以外は、上部支持具15、中間支持具16、下部支持具17によって支持されている。墜落防止ロッド40は、屋根101上での作業の際は、中間支持具16および下部支持具17に対して離脱可能となっている。
【0027】
図7は、上部支持具15の詳細を示している。上部支持具15は、上部支持筒15a、ロック穴15b、上部支持枠15c、上部支持体15dを有している。上部支持筒15aは、墜落防止ロッド40を軸方向に移動可能に支持する円筒状の部材であり、軸方向の中央部には外面と内面とを貫通するロック穴15bが形成されている。ロック穴15bは、墜落防止ロッド40の可動突起41が進入可能となっており、墜落防止ロッド40の軸方向の動きをロックする機能を有している。上部支持筒15aを支持する上部支持枠15cは、梯子本体10の柱材11に固定される上部支持体15dに対して軸心P回りに回動可能となっている。上部支持具15は、墜落防止ロッド40が中間支持具16と下部支持具17から離脱した状態では、墜落防止ロッド40を建物100の屋根101側に回動させる機能を有している。
【0028】
図8は、中間支持具16の詳細を示している。中間支持具16は、中間支持筒15a、逃がし溝16b、中間支持枠16cを有している。中間支持筒16aは、墜落防止ロッド40を軸方向に移動可能に支持する円筒状の部材であり、外面と内面とを貫通する逃がし溝16bが形成されている。逃がし溝16bは、墜落防止ロッド40の可動突起41が通過可能となっており、墜落防止ロッド40の軸方向の動きを許容する機能を有している。中間支持筒16aを支持する中間支持枠16cは、梯子本体10の柱材11に固定されている。
【0029】
図9は、下部支持具17の詳細を示している。下部支持具17は、下部支持筒17a、底板17b、下部支持枠17cを有している。下部支持筒17aは、墜落防止ロッド40を軸方向に移動可能に支持する円筒状の部材であり、下部には墜落防止ロッド40の下端面を受け止める底板17bが形成されている。下部支持筒17aを支持する下部支持枠17cは、梯子本体10の柱材11に固定されている。
【0030】
図11は、墜落防止ロッド40には、保持リング50が移動可能に取付けられている。保持リング50は、8の字形に形成された高強度部材から構成されており、一方の摺動リング部50aには墜落防止ロッド40が挿入されており、他方の連結リング部50bには補助ロープ60が連結可能となっている。摺動リング部50aは、内径が墜落防止ロッド40の外径よりも若干大に形成されており、墜落防止ロッド40の外面から外方に突出した可動突起41と係合可能となっている。摺動リング部50aは、可動突起41を墜落防止ロッド40内に押し込んだ状態では、可動突起41と係合することなく墜落防止ロッド40の軸方向に移動可能となっている。
【0031】
図11に示すように、補助ロープ60は、ロープ本体61、固定具62、連結フック63から構成されている。固定具62は、ロープ本体61の一端部に取付けられている。連結フック63は、ロープ本体61の他端部に取付けられている。補助ロープ60の固定具62と連結フック63は、作業者Mが作業時に腰部に装着する柱上安全帯のD環(図示略)と呼ばれる金具に引っ掛けられている。屋根101の上で作業を行う際には、固定具62をD環に連結した状態で連結フック63のみをD環から取外し、この取外した連結フック63を保持リング50の連結リング部50bに連結するようにしている。
【0032】
つぎに、墜落防止梯子1を用いた建物100の屋根101の上での作業について、説明する。電力供給事業者においては、引込線の新設および張替、または電線の被覆の補修などで、需要家の建物100の屋根101の上での作業が必要な場合がある。屋根101の上での作業では、作業者Mは地上G側から建物100の屋根101側に移動する必要があり、この場合に墜落防止梯子1が用いられる。
【0033】
図3は、墜落防止梯子1が垂木102を有する和風の建物100に沿って立掛けられた状態を示している。この状態では、梯子本体10の柱材11の一端部11aが地上Gに着地しており、柱材11の他端部11bは建物100の屋根101の下端部よりも上方に突出している。この状態では、図16(a)に示すように、ロープ26を地上G側で下方に引張ることにより、可動固定具20を屋根部材としての垂木102の近傍まで上昇させる。そして、可動固定具20の保持溝23に垂木102に固定された雨樋受け具103が進入するように、梯子本体10の水平方向の位置調整を行う。
【0034】
つぎに、図3に示すように、可動固定具20の固定用アーム22の先端部22cを屋根部材としての垂木102の端面に当接させる。この状態では、可動固定具20は雨樋受け具103と水平方向に係合しているので、梯子本体10の上部が水平方向にずれることが防止される。その後、作業者Mが梯子本体10を上り、連結手段30を用いて可動固定具20と雨樋受け具103との連結を行う。
【0035】
図4は、連結手段30を用いた可動固定具20と雨樋受け具103との連結状態を示しており、連結手段30の連結紐31は、一方の垂木102に固定された雨樋受け具103に巻きつけられるとともに、一方の垂木102に固定された雨樋受け具103に巻きつけられる。そして、連結紐31に取付けられた一方の連結具32は、可動固定具20の一方の連結部24に引っ掛けられ、連結紐31に取付けられた他方の連結具32は、可動固定具20の他方の連結部24に引っ掛けられる。可動固定具20が連結手段30を介して屋根部材としての雨樋受け具103に連結された状態は、梯子本体10が屋根101に固定されたことになり、梯子本体10の上部が屋根101に対して横方向に位置ずれすることが防止される。
【0036】
つぎに、図14(b)に示すように、作業者Mが梯子本体10の上部において、墜落防止ロッド40を上方に引き上げ、屋根101に向けて墜落防止ロッド40を回動させる。これにより、墜落防止ロッド40は屋根101の傾斜面に沿って配置される。その後、墜落防止ロッド40に移動可能に取付けられた保持リング50の連結リング部50bに、補助ロープ60の連結フック63が連結される。この状態では、作業者Mは、補助ロープ60および保持リング50を介して墜落防止ロッド40に対して移動可能に連結されることになる。この状態では、作業者Mは屋根101の上方に移動するには、保持リング50の摺動リング部50aが墜落防止ロッド40の軸方向に移動できるように、墜落防止ロッド40に設けられた複数の可動突起41を順序よく押し込む必要がある。
【0037】
図14(c)は、作業者Mが建物100の屋根101の所定の位置に到達した状態を示している。ここでは、屋根101の傾斜面を作業足場として、例えば引込線の新設または張替に伴う作業が行われる。そして、作業中に作業者Mが誤って足を滑らした場合は、作業者Mは屋根101の傾斜面に沿って滑り落ちようとするが、保持リング50の摺動リング部50aが墜落防止ロッド40の可動突起41と係合するので、保持リング50の移動が阻止され、作業者Mが屋根101から滑り落ちるのが防止される。
【0038】
このように、可動固定具20は、雨樋受け具103が固定される屋根部材としての垂木102に当接した状態で梯子本体10と雨樋104との間に隙間S1を生じさせるので、雨樋104と梯子本体10との干渉を回避でき、雨樋104の損傷を防止することができる。また、垂木102に可動固定具20を当接させているので、梯子本体10から支持位置である垂木102の端面までの長さを短くすることができ、従来技術のように、梯子本体10から可動固定具20を大きく突出させる必要がない。これにより、梯子のコンパクト化が図れ、重量も増加も抑制でき、墜落防止梯子1の運搬性を高めることができる。さらに、可動固定具20は、雨樋受け具103に連結手段30を介して連結されるので、特許文献1に示すビスなどを用いる従来技術と異なり、建物の損傷を防止することができる。
【0039】
また、可動固定具20に、雨樋受け具103と水平方向に係合可能な保持溝23を形成しているので、連結手段30によって可動固定具20を雨樋受け具103に固定する以前にも、梯子本体10の横方向の移動を阻止することができ、作業者Mが連結手段30を使用する前の作業における安全性を高めることができる。さらに、連結手段30は、雨樋受け具103に巻き付け可能な連結紐31を有しており、連結紐31の両端部には可動固定具20の連結部24に引っ掛け可能な連結具32、33が設けられているので、雨樋受け具103の形状が異なる場合でも、可動固定具20の雨樋受け具103との連結が容易となり、可動固定具20を雨樋受け具103に固定するための作業が迅速かつ容易に行うことができる。
【0040】
上記の説明は、墜落防止梯子1が垂木102を有する和風の建物100に沿って立掛けられた場合の作業を説明したが、図12に示すように、墜落防止梯子1が破風106を有する洋風の建物100に沿って立掛けられた場合の作業も上述に準じて行われる。すなわち、図12に示すように、可動固定具20は、雨樋受け具107が固定される破風106に当接した状態では、梯子本体10と雨樋108との間に隙間S2を生じさせるので、雨樋108と梯子本体10との干渉を回避でき、雨樋108の損傷を防止することができる。
【0041】
(実施の形態2)
図15ないし図18は、本発明の実施の形態2を示している。実施の形態2が実施の形態1と異なるところは、延長墜落防止ロッドの有無であり、その他の部分は実施の形態1に準じるので、準じる部分に実施の形態1と同一の符号を付すことにより、順ずる部分の説明を省略する。
【0042】
図15に示すように、墜落防止ロッド40には、延長墜落防止ロッド45が連結可能となっている。延長墜落防止ロッド45は、墜落防止ロッド40と同様に軽量でかつ曲げ剛性の高い部材、例えばアルミニウム合金などから構成されている。延長墜落防止ロッド45の下端部には、墜落防止ロッド40の上端部に形成された雄ネジ40aと螺合可能な雌ネジ45aが形成されている。墜落防止ロッド40の雄ネジ40aは、保持紐42aを介して梯子本体10側に連結された保護キャップ42によって保護されている。延長墜落防止ロッド45の上端部には、屋根101の損傷を防止するための弾性部材からなる別の保護キャップ46が設けられている。
【0043】
延長墜落防止ロッド45は、全長にわたってパイプ状に形成されており、内部には延長ロープ47が挿入されている。延長ロープ47の一方は、保護キャップ46の先端から突出しており、延長ロープ47の一端には砂袋からなる錘48が取付けられている。延長ロープ46の他方は、延長墜落防止ロッド45の側面に形成された開口部45bを介して外部に突出している。延長ロープ47の先端部に設けられた錘48は、延長墜落防止ロッド45を釣竿のように操作することにより、屋根101を超えて遠くまで飛ぶようになっている。
【0044】
このように構成された実施の形態2においては、図16(a)から(c)に示すように、梯子本体10を使用して地上側から屋根101の下端部まで上った作業者Mによって、延長墜落防止ロッド45を振り投げることにより、延長ロープ47の先端部に設けられた錘48が建物100の屋根101を超えて、遠くまで飛ぶことになる。そして、錘48が遠くまで飛んだ後に、延長墜落防止ロッド45の開口部45bから突出した延長ロープ47に、延長墜落防止ロッド45の開口部45bと干渉する大きさの結び目を作る。
【0045】
つぎに、図17(a)から(c)に示すように、作業者Mは梯子本体10の上で墜落防止ロッド40を引き上げ、墜落防止ロッド40と延長墜落防止ロッド45とを連結し、連結された墜落防止ロッド40と延長墜落防止ロッド45とを屋根101の傾斜面に沿って配置する。その後、作業者Mは、一旦、梯子本体10を介して地上G側に降り、延長ロープ47の先端部に設けられた錘48が取付けられた延長ロープ47の先端側を建物100の近くにある樹木Kなどの固定物に縛り付ける。この状態では、延長ロープ47は十分に長手方向に引張られ、延長ロープ47に緩みはほとんど生じない。
【0046】
その後、図18(a)から(c)に示すように、作業者Mは再び地上G側から屋根101の下端部まで上り、補助ロープ60と保持リング50とを利用して、屋根101の傾斜面に沿って上方に移動する。この場合は、延長ロープ47は、十分に張った状態に維持されるので、墜落防止ロッド40と延長墜落防止ロッド45のふらつきが抑制される。ここでは、屋根101の傾斜面を作業足場として、例えば引込線の新設または張替に伴う作業が行われる。
【0047】
そして、作業中に作業者Mが誤って足を滑らした場合は、作業者Mは屋根101の傾斜面に沿って滑り落ちようとするが、保持リング50の摺動リング部50aが墜落防止ロッド40の可動突起41と係合するので、保持リング50の移動が阻止され、作業者Mが屋根101から滑り落ちるのが防止される。実施の形態1では、墜落防止ロッド40は梯子本体10に対して片持ち支持構造となっていたが、実施の形態2においては、墜落防止ロッド40および延長墜落防止ロッド45は、梯子本体10と延長ロープ47との連結によって両端支持構造となるので、支持強度が著しく高められ、屋根101の傾斜に沿って作業者Mが落下すること、および屋根101から作業者Mが下方へ落下するのを確実に防止することができる。
【0048】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施の形態1、2に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、実施の形態1、2では、連結紐31を用いた連結手段30としているが、連結紐31に限定されることはなく、雨樋受け具103、107に巻き付け可能な部材であれば、鎖など用いた連結手段としてもよい。また、墜落防止ロッド40は、梯子本体10の片側のみに設ける構成としたが、墜落防止ロッド40の剛性を高めるために、図1の2点鎖線で示すように、新たに墜落防止ロッド40を追加し、双方の墜落防止ロッド40の上端部を連結する構成としてもよい。
【0049】
さらに、実施の形態2においては、延長ロープ47を投げ釣りのように使用しているが、墜落防止ロッド40を繰り出すのに応じて延長ロープ47を繰り出すようにし、屋根101の頂部を超えたところで、延長ロープ47を繰り出し続け、錘48を反対側の屋根101に転がす構成としてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 墜落防止梯子
10 梯子本体
20 可動固定具
30 連結手段
40 墜落防止ロッド
45 延長墜落防止ロッド
47 延長ロープ
50 保持リング
60 補助ロープ
100 建物
101 屋根
102 垂木(屋根部材)
103 雨樋受け具
104 雨樋
106 破風(屋根部材)
107 雨樋受け具
108 雨樋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上から少なくとも建物の屋根の下端部まで延びる長さを有する運搬可能な梯子本体と、
前記建物に沿って立掛けられた状態の前記梯子本体に昇降自在に設けられ、前記建物の雨樋を支持するための雨樋受け具が固定される屋根部材に当接した状態で前記梯子本体と前記雨樋との間に隙間を生じさせる可動固定具と、
前記屋根部材に当接した前記可動固定具を前記雨樋受け具に連結する連結手段と、
を備えたことを特徴とする墜落防止梯子。
【請求項2】
前記梯子本体には、前記建物の屋根の傾斜面に沿って配置可能な棒状の墜落防止ロッドが連結されていることを特徴とする請求項1に記載の墜落防止梯子。
【請求項3】
前記可動固定具には、前記雨樋受け具と水平方向に係合可能な保持溝が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の墜落防止梯子。
【請求項4】
前記連結手段は、前記雨樋受け具に巻き付け可能な連結紐を有しており、前記連結紐の両端部には前記可動固定具に引っ掛け可能な連結具が設けられている特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の墜落防止梯子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−140811(P2012−140811A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−330(P2011−330)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】