説明

壁の耐火構造

【課題】屋内側からの加熱に対して、柱を効果的に守れ、内装ボードの脱落を防げ、内装ボードの取付けも容易に行え、しかも、それらを現場施工容易に実現できる壁の耐火構造を提供する。
【解決手段】例えば、鋼製柱1を挟む両側に外壁パネル2,2が配置されると共に、各外壁パネル2は、その屋内側で柱1の両側に位置して上下方向に延びる耐火板取付け下地桟2aをそれぞれ備えたものからなり、これら両下地桟2a,2aの屋内側の面部を取付け面とし、上下方向に延びる帯状の耐火板3が、これら下地桟2a,2aにわたされて背後に柱1が位置するようにビス16等で取り付けられ、該耐火板3を下地として内装ボード4がビス17等で取り付けられている。耐火板3は、例えばマグネシウムセメント材からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁の耐火構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図3(イ)に示すような、鋼製柱51を挟む両側に外壁パネル52,52が配置されて構成された建物外壁構造において、石こうボード等の内装ボード53の取付けは、従来、図4に示すように、各外壁パネル52,52に、予め、屋内側において柱51の両側に位置するように、木製の内装下地桟52a,52aを取り付けておき、これら各外壁パネル52,52の建方を行った後、図3(ロ)に示すように、上記の各下地桟52a,52aの屋内側の面部を取付け面として内装ボード53をビス54…で取り付けるというようにして行われている。
【特許文献1】特開2004−353336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような構造では、耐火性能に関し、屋内側から加熱されると、加熱が進むに連れて内装下地桟52a,52aが燃えだし、1時間経たないうちに、ビス54…が保持力を失って内装ボード53が脱落してしまうと共に、柱51の荷重支持力も劣化してしまうおそれがあるという問題がある。
【0004】
また、上記の外壁構造では、各下地桟52aが予め各外壁パネル52に備えられており、そのため、建方との関係で、下地桟52a,52a間には、柱の幅寸法ないしはそれを越える寸法の間隔がおかれてしまい、また、各下地桟52a,52aの幅寸法もそれぞれ例えば24mm程度と小さく、そのため、内装ボード53の取付けのためのビス打ち54…を行いにくいという問題もある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、屋内側からの加熱に対して、柱を効果的に守ることができると共に、内装ボードの脱落を防ぐことができ、また、内装ボードの取付けも容易に行うことができ、しかも、それらを現場施工容易に実現することができる壁の耐火構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、柱を挟む両側に壁パネルが配置されると共に、各壁パネルは、その屋内側で柱の両側に位置して上下方向に延びる耐火板取付け下地をそれぞれ備えたものからなり、これら両下地の屋内側の面部を取付け面とし、上下方向に延びる帯状の耐火板が、これら下地にわたされて背後に前記柱が位置するようにビス又は釘で取り付けられ、該耐火板を下地として内装ボードがビス又は釘で取り付けられていることを特徴とする壁の耐火構造によって解決される(第1発明)。
【0007】
この構造では、柱の屋内側が帯状の耐火板でカバーされているので、屋内側からの加熱に対して、耐火性能上、柱を効果的に守ることができるのみならず、
上記の耐火板を下地として内装ボードがビス又は釘で取り付けられているので、屋内側からの加熱によって耐火板が燃え出してしまうこともなく、ビス又は釘が内装ボードをしっかりと保持して、内装ボードの脱落を防ぐことができ、
また、耐火板は、柱の屋内側をカバーすることができる大きな幅寸法を備えているので、ビス又は釘による内装ボードの取付けも施工容易に行っていくことができ、
しかも、各壁パネルは、その屋内側で柱の両側に位置して上下方向に延びる耐火板取付け下地をそれぞれ備えたものからなり、耐火板は、これら両下地にわたすように配置して各下地にビス又は釘で取り付られた構造となっているので、現場での耐火板の取付けを施工容易に行うことができる。
【0008】
第1発明において、前記耐火板がマグネシウムセメント材からなっているとよい(第2発明)。マグネシウムセメント材は、耐火性能に優れ、しかも、ビス又は釘を打ち込むことができると共に、打ち込まれたビス又は釘をしっかりと保持することができて、第1発明における耐火板として最適な耐火板である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上のとおりのものであるから、屋内側からの加熱に対して、柱を効果的に守ることができると共に、内装ボードの脱落を防ぐことができ、また、内装ボードの取付けも容易に行うことができ、しかも、それらを現場施工容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1(イ)に示す壁の耐火構造は、外壁に適用した場合のもので、1は柱、2,2は外壁パネル、3は耐火板、4は石こうボード等からなる内装ボードである。
【0012】
柱1は、鋼製柱からなり、図2に示すように、その屋外側の面部には、ロックウールボードなどからなる屋外側耐火板5が取り付けられると共に、該耐火板5の屋外側の面部には二次止水材6が取り付けられている。
【0013】
外壁パネル2は、図2に示すように、鋼製のパネルフレーム7の屋外側にグラスウールボード等からなる外張り断熱材8が設けられると共に、耐火性のスペーサー9を介して珪酸カルシウム板等からなる外壁面材10が設けられ、外壁面材10と外張り断熱材8との間の通気層11が形成されたもので、外壁面材10は、ビス12で、スペーサー9と外張り断熱材8とを貫通してパネルフレーム7に取り付けられている。
【0014】
また、各外壁パネル2において、パネルフレーム7において、柱1と隣り合うように配置される側枠7aの屋内側の面部には、上下方向に延びる耐火板取付け下地桟2aが、パネルフレーム7の側枠7aから柱1側に突出しないように配置されて、焼入れ釘13により取り付けられている。各外壁パネル2の下地桟2aは、耐火材、具体的には本実施形態ではマグネシウムセメント材からなっている。なお、14は一次止水材、15,15はロックウール等からなる断熱材、20は防湿シート、21は透湿防水シートである。
【0015】
耐火板3は、幅寸法が例えば120mm程度の上下方向に延びる帯状のもので、本実施形態ではマグネシウムセメント材からなっている。
【0016】
施工は、上記の各外壁パネル2,2を、パネルフレーム7の側枠7aが柱1を両側から挟むように配置し、パネルフレーム7と柱1とをボルト等により結合して外壁パネル2,2の建方を終えた後、図1(ロ)に示すように、屋内側において、上下方向に延びる帯状の耐火板3を、各外壁パネル2,2の下地桟2a,2aの屋内側の面部を取付け面として、これら下地桟2a,2aにわたして背後に柱1が位置するようにビス16で取り付け、しかる後、該耐火板3を下地として内装ボード4をビス17で取り付けるというようにして行われる。
【0017】
上記の耐火外壁構造では、柱1の屋内側が帯状の耐火板3でカバーされているので、屋内側からの加熱に対して、耐火性能上、柱1を効果的に守ることができる。
【0018】
のみならず、上記の耐火板3を下地として内装ボード4がビス17で取り付けられているので、屋内側からの加熱によって耐火板3が燃え出してしまうこともなく、ビス17が内装ボード4をしっかりと保持して、内装ボード4の脱落を防ぐことができる。特に、本実施形態では、下地桟2a,2aも耐火材で構成されているので、ビス16が耐火板3をしっかりと保持することができる。
【0019】
また、耐火板3は、柱1の屋内側をカバーすることができる上記のような例えば120mmもの大きな幅寸法を備えているので、ビス17による内装ボード4の取付けも施工容易に行っていくことができる。
【0020】
そして、各外壁パネル2は、その屋内側で柱1の両側に位置して上下方向に延びる下地桟2aを備えたものからなり、耐火板3は、これら両下地桟2a,2aにわたすように配置して各下地桟2a,2aにビス16で取り付られた構造となっているので、現場での耐火板3の取付けを施工容易に行うことができる。
【0021】
とりわけ、本実施形態では、耐火板3や下地桟2a,2aがマグネシウムセメント材からなっているので、1時間を越えて耐える高い耐火性能を発揮でき、柱1をしっかりと守ることができると共に、打ち込まれたビス16,17をしっかりと保持して、内装ボード4や耐火板3の脱落を効果的に防ぐことができる。
【0022】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、柱1が鋼製柱からなり、外壁パネル2,2のパネルフレームも鋼製のものからなっている鉄骨造ないしは軽量鉄骨造の外壁に適用した場合を示したが、本発明は、柱などを木等とした木造等の外壁に適用することも可能であるし、また、外壁に限らず、両面がいずれも屋内に面する屋内の壁に適用することも可能である。
【0023】
また、上記の実施形態では、耐火板3や下地桟2aとして、マグネシウムセメント材を用いた場合を示したが、硬質木片セメント材などのその他の耐火材が用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態の壁の耐火構造を示すもので、図(イ)は断面平面図、図(ロ)は壁から耐火板と内装ボードとを分離させた断面平面図である。
【図2】同耐火構造を示すもので、柱と外壁パネルとを分離状態にした断面平面図である。
【図3】先行技術にかかる壁の構造を示すもので、図(イ)は断面平面図、図(ロ)は壁から耐火板と内装ボードとを分離させた断面平面図である。
【図4】同壁の構造を示すもので、柱と外壁パネルとを分離状態にした断面平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1…柱
2…外壁パネル(壁パネル)
2a…下地桟(下地)
3…耐火板
4…内装ボード
16…ビス
17…ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱を挟む両側に壁パネルが配置されると共に、各壁パネルは、その屋内側で柱の両側に位置して上下方向に延びる耐火板取付け下地をそれぞれ備えたものからなり、これら両下地の屋内側の面部を取付け面とし、上下方向に延びる帯状の耐火板が、これら下地にわたされて背後に前記柱が位置するようにビス又は釘で取り付けられ、該耐火板を下地として内装ボードがビス又は釘で取り付けられていることを特徴とする壁の耐火構造。
【請求項2】
前記耐火板がマグネシウムセメント材からなっている請求項1に記載の壁の耐火構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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