壁状構造物
【課題】底版部に立設する壁体部にひび割れを生じ難い構造でありながら、低コストで施工できる壁状構造物を提供すること。
【解決手段】底版部の上に壁体部を立設してなるコンクリート製の壁状構造物であって、壁体部に相当する厚さで上部に突き出た突条部分2を有する底版部1を形成し、その突条部分2の上にコンクリート打ちして上部壁体部分3を形成することにより、突条部分2と上部壁体部分3とで壁体部を構成する。底版部の上に直接コンクリート打ちして壁体部を立設するのに比べると、底版部からの拘束が弱まり、発生する温度応力が小さくなるため、ひび割れが抑制される。そして、突条部分を有する底版部を形成するだけでよいので、低コストで施工することができる。
【解決手段】底版部の上に壁体部を立設してなるコンクリート製の壁状構造物であって、壁体部に相当する厚さで上部に突き出た突条部分2を有する底版部1を形成し、その突条部分2の上にコンクリート打ちして上部壁体部分3を形成することにより、突条部分2と上部壁体部分3とで壁体部を構成する。底版部の上に直接コンクリート打ちして壁体部を立設するのに比べると、底版部からの拘束が弱まり、発生する温度応力が小さくなるため、ひび割れが抑制される。そして、突条部分を有する底版部を形成するだけでよいので、低コストで施工することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般の壁体やボックスカルバート壁体などに見られるコンクリート製の壁状構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のコンクリート製の壁状構造物は、底盤や床板などの既設コンクリートからなる底版部の上に壁体部となるコンクリートが打ち込まれることで構築されている。このようにして構築された壁状構造物にあっては、底版部に立設した壁体部にひび割れが発生しやすい。その原因は、セメントの水和熱によるコンクリートの体積変化が既設コンクリートからなる底版部に拘束されるためであると考えられている。このような壁体部に生ずるひび割れは、底版部の付近から上方に延びることが多い。また、一旦発生するとその幅が大きくなるため、外観上からも問題とされるケースが多くなってきている。
【0003】
このようなひび割れに対して従来から採られている一般的な対策としては、次のようなものが挙げられる。例えば、温度応力を低減するために低発熱セメントや膨張材を使用する等の材料的な取組がなされたり、壁体部にひび割れ誘発目地を配置してその目地にひび割れを集中させる方法が採られたりしている。
【0004】
【特許文献1】特開平06−048790号公報
【特許文献2】特開2001−220833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した対策のうち、材料的な取組として低発熱セメントを使用する方法は、専用のサイロを生コンプラントに設置する必要があり、通常の施設で運営している工場では採用が無理となる。また、膨張材は1m3 あたり2,000〜3,500円ほどのコスト増につながり、一般の工事では採用しづらいという事情がある。そのため、最近では、ひび割れ誘発目地を採用する事例が増えてきているが、施工に際して目地は壁体部の基部から上端まで入れなければならず、大型構造物では手間が掛かる上にコストの負担が大きいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、底版部に立設する壁体部にひび割れを生じ難い構造でありながら、低コストで施工できる壁状構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明である壁状構造物は、底版部の上に壁体部を立設してなるコンクリート製の壁状構造物であって、壁体部に相当する厚さで上部に突き出た突条部分を有する底版部を形成し、その突条部分の上にコンクリート打ちして上部壁体部分を形成することにより、突条部分と上部壁体部分とで壁体部を構成したことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明である壁状構造物は、請求項1に記載の壁状構造物において、底版部が現場打ちしたコンクリートからなり、突条部分は底版部と共にコンクリート打ちして形成したものであることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明である壁状構造物は、請求項1に記載の壁状構造物において、底版部が現場打ちしたコンクリートからなり、突条部分は底版部のコンクリートが硬化した後に別途コンクリート打ちして形成したものであることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明である壁状構造物は、請求項1に記載の壁状構造物において、底版部がプレキャストコンクリート製の連続した複数の底版パネル体からなり、突条部分は底版部から突出する状態で底版パネル体に一体形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明である壁状構造物は、請求項1に記載の壁状構造物において、底版部がプレキャストコンクリート製の連続した複数のブロック体と現場打ちしたコンクリート部分の組合せからなり、突条部分はブロック体の上部で形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の壁状構造物は、壁体部に相当する厚さで上部に突き出た突条部分を有する底版部を形成し、その突条部分の上にコンクリート打ちして上部壁体部分を形成することにより、突条部分と上部壁体部分とで壁体部を構成したので、底版部の上に直接コンクリート打ちして壁体部を立設するのに比べると、底版部からの拘束が弱まり、発生する温度応力が小さくなるため、ひび割れが抑制される。そして、突条部分を有する底版部を形成するだけでよいので、低コストで施工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明に係る壁状構造物の一例を示す斜視図である。この壁状構造物は対象とする構造物がボックスカルバートである。すなわち、ボックスカルバートの底版と側壁とが壁状構造物を構成している。なお、図中aはコンクリートに埋設された鉄筋を概略的に図示したもので、以下の図面においても同様である。
【0014】
この図1に示すボックスカルバートを形成するに際しては、まず底版部1を現場でコンクリート打ちして形成するが、その際、底版部1の上に側壁の厚さで突条部分2を同時に形成する。この突条部分2の高さは通常20〜80cm程度であるが、寸法や材料に応じて適宜設計すればよい。次いで、その突条部分2の上にコンクリート打ちして上部壁体部分3と頂版部4を形成する。したがって、ボックスカルバートの側壁は、突条部分2の上に上部壁体部分3が重なった壁体部となる。そして、上部壁体部分3は、突条部分2を介して底版部1から立設しているため、底版部1からの拘束が弱くなり、発生する温度応力が小さくなる。
【0015】
図2は本発明に係る壁状構造物の他の例を示す斜視図である。この壁状構造物は対象とする構造物が図1と同様のボックスカルバートである。すなわち、ボックスカルバートの底版と側壁とが壁状構造物を構成している。
【0016】
この図2に示すボックスカルバートを形成するに際しては、まず底版部1を現場でコンクリート打ちして形成する。そして、底版部1のコンクリートが硬化した後、別途コンクリート打ちして突条部分2を形成する。このタイプの突条部分2は図1の場合に比べて高い方が好ましいが、前述したのと同様、高さは寸法や材料に応じて適宜設計すればよい。次いで、その突条部分2の上にコンクリート打ちして上部壁体部分3と頂版部4を形成する。このボックスカルバートの場合も、側壁は突条部分2の上に上部壁体部分3が重なった壁体部となる。そして、上部壁体部分3は、突条部分2を介して底版部1から立設しているため、底版部1からの拘束が弱くなり、発生する温度応力が小さくなる。
【0017】
このような底版部と壁体部から構成される壁状構造物は、底版部と壁体部の境界部分が設計上大きな断面力を受けることが多い。そのため、図1に示すように、この境界部分を打継目とせず、打継目を底版部から離すことが望ましい。ただ、図2に示すような底版部1と壁体部の境界に打継目のある壁状構造物でも、突条部分2が存在することにより、底版部1からの拘束が弱くなるので、発生する温度応力が小さくなり、ひび割れの抑制に効果がある。
【0018】
図3,図4はそれぞれ図1,図2に示す壁状構造物の変形例を示す斜視図であり、いずれも突条部分2の側面に縦方向のひび割れ誘発目地5を複数並べて設けている。このように、突条部分2にひび割れ誘発目地5を設けて、その性能を確実に発揮させることができれば、上部壁体部分3に対する拘束を大幅に弱めることができる。その結果、温度応力を小さくし、ひび割れを抑制することができる。
【0019】
突条部分2へのひび割れの誘発は次のようにして起こる。すなわち、突条部分2が底版部1と同時に施工された図3に示す壁状構造物の場合は、コンクリートが打ち込まれた後の初期の材齢の時に、そして上部壁体部分3が打ち込まれた後でセメントの水和熱で膨張する時に、突条部分2に引張力が作用し、これによってひび割れが誘発される。また、突条部分2が底版部1とは別に施工された図4に示す壁状構造物の場合は、突条部分2の温度降下時と上部壁体部分3の構築後に引張力が作用するため、この時にひび割れが誘発される。
【0020】
図5,図6はそれぞれ図1,図2に示す壁状構造物のさらに別の変形例を示す斜視図であり、いずれも突条部分2の中に縦方向のひび割れ誘発目地5を並べて設け、上部壁体部分3にもひび割れ誘発目地6を設けている。
【0021】
温度応力が大きい場合、突条部分2のひび割れ誘発目地5のみでは上部壁体部分3のひび割れを抑制できないことがある。このような場合には、図5,図6に示すように、上部壁体部分3にもひび割れ誘発目地6を設ける。ただし、突条部分2にひび割れ誘発目地5を設けてあると、上部壁体部分3の拘束度が小さくなっているため、上部壁体部分3に設けるひび割れ誘発目地6の間隔を大きくすることができる。したがって、壁体部の全体に渡ってひび割れ誘発目地を設ける場合と比べ、施工の合理化及びコストの低減を図ることができる。
【0022】
図7は本発明に係る壁状構造物の他の例を示す斜視図である。この壁状構造物も対象とする構造物がボックスカルバートである。すなわち、ボックスカルバートの底版と側壁とが壁状構造物を構成している。なお、図中aはコンクリートに埋設された鉄筋を概略的に図示したものである。
【0023】
この図7に示すボックスカルバートを形成するに際しては、まず図8に示すプレキャストコンクリート製の底版パネル体7を必要な個数だけ準備する。ここで使用される底版パネル体7は底版部7aの両サイドに突出する突条部分7bを有し、その突条部分7bの上部に鉄筋aが突き出た形状をしている。このように複数個の底版パネル体7を突条部分7bが連続するように並べて設置した後、その突条部分7bの上にコンクリート打ちして上部壁体部分3と頂版部4を形成する。
【0024】
このボックスカルバートの場合、側壁は突条部分7bの上に上部壁体部分3が重なった壁体部となる。そして、上部壁体部分3は、突条部分7bを介して底版部7aから立設している状態となるため、底版部7aからの拘束が弱くなり、発生する温度応力が小さくなる。
【0025】
この図7に示すボックスカルバートは、プレキャストコンクリート製の底版パネル体7を並べて設置してあるため、隣接する底版パネル体7との間につなぎ目が存在し、突条部分7bのつなぎ目bが図3に示すひび割れ誘発目地と同様な作用効果を発揮する。ただ、温度応力が大きくて、このつなぎ目bのみで上部壁体部分3のひび割れを抑制できないような場合には、必要に応じて図5に示すのと同じように上部壁体部分3にひび割れ誘発目地を設けた形態を採ればよい。
【0026】
図9は図7に示す壁状構造物の変形例を示す斜視図である。この壁状構造物は、底版部がプレキャストコンクリート製の連続した複数のブロック体8と現場打ちしたコンクリート部分9の組合せからなる。ここで使用されるブロック体8は直方体形状で、その上部が突条部分8aを形成している。
【0027】
ブロック体8は、図10(a),(b)に示す何れかの形態で施工現場に供給される。図10(a)の場合は、下方側部と突状部分8aの上部にそれぞれ鉄筋aが突き出た形状のブロック体8を使用する。また、図10(b)のは、下方側部から突き出る鉄筋aにより2つのブロック体8が所定間隔で連結されたものを使用する。
【0028】
この図9に示すボックスカルバートを形成するに際しては、まずプレキャストコンクリート製のブロック体8を必要な個数だけ準備する。次いで、図10(a)のブロック体8を使用する場合は、複数個のブロック体8を突条部分8aが上向きになるようにして2列に並べて設置した後、その2列に設置したブロック体8の間にコンクリート打ちする。また、図10(b)のブロック体8を使用する場合は、2個がペアになったブロック体8を突条部分8aが上向きになるようにして並べて設置した後、その設置したブロック体8の間にコンクリート打ちする。これにより、連続した複数のブロック体8と現場打ちしたコンクリート部分9により底版部が形成され、その底版部の両サイドにブロック体8の突条部分8aが突出した状態となる。このように底版部を形成した後、ブロック体8の突条部分8aの上にコンクリート打ちして上部壁体部分3と頂版部4を形成する。
【0029】
このボックスカルバートの場合、側壁はブロック体8の突条部分8aの上に上部壁体部分3が重なった壁体部となる。そして、上部壁体部分3は、突条部分8aを介して底版部から立設している状態となるため、底版部からの拘束が弱くなり、発生する温度応力が小さくなる。
【0030】
図11は図7に示す壁状構造物の別の変形例を示す斜視図である。この壁状構造物も図9の壁状構造物と同様、底版部がプレキャストコンクリート製の連続した複数のブロック体10と現場打ちしたコンクリート部分11の組合せからなる。ここで使用されるブロック体10は水平部分10aから突条部分10bが突き出た断面L字型形状である。
【0031】
ブロック体10は図12(a),(b)に示す何れかの形態で施工現場に供給される。図12(a)の場合は、突条部分10aの上部と水平部分10の側部にそれぞれ鉄筋aが突き出た形状のブロック体10を使用する。また、図12(b)の場合は、水平部分10aの側部から突き出る鉄筋aにより2つのブロック体10が所定間隔で連結されたものを使用する。
【0032】
この図11に示すボックスカルバートを形成するに際しては、まずプレキャストコンクリート製のブロック体10を必要な個数だけ準備する。次いで、図12(a)のブロック体10を使用する場合は、複数個のブロック体10を突条部分10bが上向きで外側になるようにして2列に並べて設置した後、その2列に設置したブロック体10の間にコンクリート打ちする。また、図12(b)のブロック体10を使用する場合は、2個がペアになったブロック体10を突条部分10aが上向きになるようにして並べて設置した後、その設置したブロック体10の間にコンクリート打ちする。これにより、連続した複数のブロック体10と現場打ちしたコンクリート部分11により底版部が形成され、その底版部の両サイドにブロック体10の突条部分10bが突出した状態となる。このように底版部を形成した後、ブロック体10の突条部分10bの上にコンクリート打ちして上部壁体部分3と頂版部4を形成する。
【0033】
このボックスカルバートの場合、側壁はブロック体10の突条部分10bの上に上部壁体部分3が重なった壁体部となる。そして、上部壁体部分3は、突条部分10bを介して底版部から立設している状態となるため、底版部からの拘束が弱くなり、発生する温度応力が小さくなる。
【0034】
これらの図9,11に示すボックスカルバートは、プレキャストコンクリート製のブロック8,10を並べて設置してあるため、突条部分8a,10bにつなぎ目bが存在し、そのつなぎ目bが図3に示すひび割れ誘発目地と同様な作用効果を発揮する。ただ、温度応力が大きくて、このつなぎ目bのみで上部壁体部分3のひび割れを抑制できないような場合には、必要に応じて図5に示すのと同じように上部壁体部分3にひび割れ誘発目地を設けた形態を採ればよい。
【0035】
また、図7〜12で示したプレキャストコンクリート製の底版パネル体7やブロック体8,10を使用すると、ひび割れの防止だけでなく、ボックスカルバート及び壁体構造物の施工に際し、省人化と工期の短縮が図れ、工事の合理化を推進することができる。
【0036】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明による壁状構造物は、上記のようなボックスカルバートに限るものではなく、例えば図13に示すような一般の壁状構造物をはじめとして、その他の種々の壁状構造物に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る壁状構造物の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る壁状構造物の他の例を示す斜視図である。
【図3】図1に示す壁状構造物の変形例を示す斜視図である。
【図4】図2に示す壁状構造物の変形例を示す斜視図である。
【図5】図1に示す壁状構造物のさらに別の変形例を示す斜視図である。
【図6】図2に示す壁状構造物のさらに別の変形例を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る壁状構造物の他の例を示す斜視図である。
【図8】図7に示す壁状構造物に使用する底版パネル体の斜視図である。
【図9】図7に示す壁状構造物の変形例を示す斜視図である。
【図10】図9に示す壁状構造物に使用するブロック体の斜視図である。
【図11】図7に示す壁状構造物の別の変形例を示す斜視図である。
【図12】図11に示す壁状構造物に使用するブロック体の斜視図である。
【図13】一般の壁状構造物に適用した例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 底版部
2 突条部分
3 上部壁体部分
4 頂版部
5,6 ひび割れ誘発目地
7 底版パネル体
7a 底版部
7b 突条部分
8 ブロック体
8a 突条部分
9 コンクリート部分
10 ブロック体
10a 水平部分
10b 突条部分
11 コンクリート部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般の壁体やボックスカルバート壁体などに見られるコンクリート製の壁状構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のコンクリート製の壁状構造物は、底盤や床板などの既設コンクリートからなる底版部の上に壁体部となるコンクリートが打ち込まれることで構築されている。このようにして構築された壁状構造物にあっては、底版部に立設した壁体部にひび割れが発生しやすい。その原因は、セメントの水和熱によるコンクリートの体積変化が既設コンクリートからなる底版部に拘束されるためであると考えられている。このような壁体部に生ずるひび割れは、底版部の付近から上方に延びることが多い。また、一旦発生するとその幅が大きくなるため、外観上からも問題とされるケースが多くなってきている。
【0003】
このようなひび割れに対して従来から採られている一般的な対策としては、次のようなものが挙げられる。例えば、温度応力を低減するために低発熱セメントや膨張材を使用する等の材料的な取組がなされたり、壁体部にひび割れ誘発目地を配置してその目地にひび割れを集中させる方法が採られたりしている。
【0004】
【特許文献1】特開平06−048790号公報
【特許文献2】特開2001−220833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した対策のうち、材料的な取組として低発熱セメントを使用する方法は、専用のサイロを生コンプラントに設置する必要があり、通常の施設で運営している工場では採用が無理となる。また、膨張材は1m3 あたり2,000〜3,500円ほどのコスト増につながり、一般の工事では採用しづらいという事情がある。そのため、最近では、ひび割れ誘発目地を採用する事例が増えてきているが、施工に際して目地は壁体部の基部から上端まで入れなければならず、大型構造物では手間が掛かる上にコストの負担が大きいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、底版部に立設する壁体部にひび割れを生じ難い構造でありながら、低コストで施工できる壁状構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明である壁状構造物は、底版部の上に壁体部を立設してなるコンクリート製の壁状構造物であって、壁体部に相当する厚さで上部に突き出た突条部分を有する底版部を形成し、その突条部分の上にコンクリート打ちして上部壁体部分を形成することにより、突条部分と上部壁体部分とで壁体部を構成したことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明である壁状構造物は、請求項1に記載の壁状構造物において、底版部が現場打ちしたコンクリートからなり、突条部分は底版部と共にコンクリート打ちして形成したものであることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明である壁状構造物は、請求項1に記載の壁状構造物において、底版部が現場打ちしたコンクリートからなり、突条部分は底版部のコンクリートが硬化した後に別途コンクリート打ちして形成したものであることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明である壁状構造物は、請求項1に記載の壁状構造物において、底版部がプレキャストコンクリート製の連続した複数の底版パネル体からなり、突条部分は底版部から突出する状態で底版パネル体に一体形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明である壁状構造物は、請求項1に記載の壁状構造物において、底版部がプレキャストコンクリート製の連続した複数のブロック体と現場打ちしたコンクリート部分の組合せからなり、突条部分はブロック体の上部で形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の壁状構造物は、壁体部に相当する厚さで上部に突き出た突条部分を有する底版部を形成し、その突条部分の上にコンクリート打ちして上部壁体部分を形成することにより、突条部分と上部壁体部分とで壁体部を構成したので、底版部の上に直接コンクリート打ちして壁体部を立設するのに比べると、底版部からの拘束が弱まり、発生する温度応力が小さくなるため、ひび割れが抑制される。そして、突条部分を有する底版部を形成するだけでよいので、低コストで施工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明に係る壁状構造物の一例を示す斜視図である。この壁状構造物は対象とする構造物がボックスカルバートである。すなわち、ボックスカルバートの底版と側壁とが壁状構造物を構成している。なお、図中aはコンクリートに埋設された鉄筋を概略的に図示したもので、以下の図面においても同様である。
【0014】
この図1に示すボックスカルバートを形成するに際しては、まず底版部1を現場でコンクリート打ちして形成するが、その際、底版部1の上に側壁の厚さで突条部分2を同時に形成する。この突条部分2の高さは通常20〜80cm程度であるが、寸法や材料に応じて適宜設計すればよい。次いで、その突条部分2の上にコンクリート打ちして上部壁体部分3と頂版部4を形成する。したがって、ボックスカルバートの側壁は、突条部分2の上に上部壁体部分3が重なった壁体部となる。そして、上部壁体部分3は、突条部分2を介して底版部1から立設しているため、底版部1からの拘束が弱くなり、発生する温度応力が小さくなる。
【0015】
図2は本発明に係る壁状構造物の他の例を示す斜視図である。この壁状構造物は対象とする構造物が図1と同様のボックスカルバートである。すなわち、ボックスカルバートの底版と側壁とが壁状構造物を構成している。
【0016】
この図2に示すボックスカルバートを形成するに際しては、まず底版部1を現場でコンクリート打ちして形成する。そして、底版部1のコンクリートが硬化した後、別途コンクリート打ちして突条部分2を形成する。このタイプの突条部分2は図1の場合に比べて高い方が好ましいが、前述したのと同様、高さは寸法や材料に応じて適宜設計すればよい。次いで、その突条部分2の上にコンクリート打ちして上部壁体部分3と頂版部4を形成する。このボックスカルバートの場合も、側壁は突条部分2の上に上部壁体部分3が重なった壁体部となる。そして、上部壁体部分3は、突条部分2を介して底版部1から立設しているため、底版部1からの拘束が弱くなり、発生する温度応力が小さくなる。
【0017】
このような底版部と壁体部から構成される壁状構造物は、底版部と壁体部の境界部分が設計上大きな断面力を受けることが多い。そのため、図1に示すように、この境界部分を打継目とせず、打継目を底版部から離すことが望ましい。ただ、図2に示すような底版部1と壁体部の境界に打継目のある壁状構造物でも、突条部分2が存在することにより、底版部1からの拘束が弱くなるので、発生する温度応力が小さくなり、ひび割れの抑制に効果がある。
【0018】
図3,図4はそれぞれ図1,図2に示す壁状構造物の変形例を示す斜視図であり、いずれも突条部分2の側面に縦方向のひび割れ誘発目地5を複数並べて設けている。このように、突条部分2にひび割れ誘発目地5を設けて、その性能を確実に発揮させることができれば、上部壁体部分3に対する拘束を大幅に弱めることができる。その結果、温度応力を小さくし、ひび割れを抑制することができる。
【0019】
突条部分2へのひび割れの誘発は次のようにして起こる。すなわち、突条部分2が底版部1と同時に施工された図3に示す壁状構造物の場合は、コンクリートが打ち込まれた後の初期の材齢の時に、そして上部壁体部分3が打ち込まれた後でセメントの水和熱で膨張する時に、突条部分2に引張力が作用し、これによってひび割れが誘発される。また、突条部分2が底版部1とは別に施工された図4に示す壁状構造物の場合は、突条部分2の温度降下時と上部壁体部分3の構築後に引張力が作用するため、この時にひび割れが誘発される。
【0020】
図5,図6はそれぞれ図1,図2に示す壁状構造物のさらに別の変形例を示す斜視図であり、いずれも突条部分2の中に縦方向のひび割れ誘発目地5を並べて設け、上部壁体部分3にもひび割れ誘発目地6を設けている。
【0021】
温度応力が大きい場合、突条部分2のひび割れ誘発目地5のみでは上部壁体部分3のひび割れを抑制できないことがある。このような場合には、図5,図6に示すように、上部壁体部分3にもひび割れ誘発目地6を設ける。ただし、突条部分2にひび割れ誘発目地5を設けてあると、上部壁体部分3の拘束度が小さくなっているため、上部壁体部分3に設けるひび割れ誘発目地6の間隔を大きくすることができる。したがって、壁体部の全体に渡ってひび割れ誘発目地を設ける場合と比べ、施工の合理化及びコストの低減を図ることができる。
【0022】
図7は本発明に係る壁状構造物の他の例を示す斜視図である。この壁状構造物も対象とする構造物がボックスカルバートである。すなわち、ボックスカルバートの底版と側壁とが壁状構造物を構成している。なお、図中aはコンクリートに埋設された鉄筋を概略的に図示したものである。
【0023】
この図7に示すボックスカルバートを形成するに際しては、まず図8に示すプレキャストコンクリート製の底版パネル体7を必要な個数だけ準備する。ここで使用される底版パネル体7は底版部7aの両サイドに突出する突条部分7bを有し、その突条部分7bの上部に鉄筋aが突き出た形状をしている。このように複数個の底版パネル体7を突条部分7bが連続するように並べて設置した後、その突条部分7bの上にコンクリート打ちして上部壁体部分3と頂版部4を形成する。
【0024】
このボックスカルバートの場合、側壁は突条部分7bの上に上部壁体部分3が重なった壁体部となる。そして、上部壁体部分3は、突条部分7bを介して底版部7aから立設している状態となるため、底版部7aからの拘束が弱くなり、発生する温度応力が小さくなる。
【0025】
この図7に示すボックスカルバートは、プレキャストコンクリート製の底版パネル体7を並べて設置してあるため、隣接する底版パネル体7との間につなぎ目が存在し、突条部分7bのつなぎ目bが図3に示すひび割れ誘発目地と同様な作用効果を発揮する。ただ、温度応力が大きくて、このつなぎ目bのみで上部壁体部分3のひび割れを抑制できないような場合には、必要に応じて図5に示すのと同じように上部壁体部分3にひび割れ誘発目地を設けた形態を採ればよい。
【0026】
図9は図7に示す壁状構造物の変形例を示す斜視図である。この壁状構造物は、底版部がプレキャストコンクリート製の連続した複数のブロック体8と現場打ちしたコンクリート部分9の組合せからなる。ここで使用されるブロック体8は直方体形状で、その上部が突条部分8aを形成している。
【0027】
ブロック体8は、図10(a),(b)に示す何れかの形態で施工現場に供給される。図10(a)の場合は、下方側部と突状部分8aの上部にそれぞれ鉄筋aが突き出た形状のブロック体8を使用する。また、図10(b)のは、下方側部から突き出る鉄筋aにより2つのブロック体8が所定間隔で連結されたものを使用する。
【0028】
この図9に示すボックスカルバートを形成するに際しては、まずプレキャストコンクリート製のブロック体8を必要な個数だけ準備する。次いで、図10(a)のブロック体8を使用する場合は、複数個のブロック体8を突条部分8aが上向きになるようにして2列に並べて設置した後、その2列に設置したブロック体8の間にコンクリート打ちする。また、図10(b)のブロック体8を使用する場合は、2個がペアになったブロック体8を突条部分8aが上向きになるようにして並べて設置した後、その設置したブロック体8の間にコンクリート打ちする。これにより、連続した複数のブロック体8と現場打ちしたコンクリート部分9により底版部が形成され、その底版部の両サイドにブロック体8の突条部分8aが突出した状態となる。このように底版部を形成した後、ブロック体8の突条部分8aの上にコンクリート打ちして上部壁体部分3と頂版部4を形成する。
【0029】
このボックスカルバートの場合、側壁はブロック体8の突条部分8aの上に上部壁体部分3が重なった壁体部となる。そして、上部壁体部分3は、突条部分8aを介して底版部から立設している状態となるため、底版部からの拘束が弱くなり、発生する温度応力が小さくなる。
【0030】
図11は図7に示す壁状構造物の別の変形例を示す斜視図である。この壁状構造物も図9の壁状構造物と同様、底版部がプレキャストコンクリート製の連続した複数のブロック体10と現場打ちしたコンクリート部分11の組合せからなる。ここで使用されるブロック体10は水平部分10aから突条部分10bが突き出た断面L字型形状である。
【0031】
ブロック体10は図12(a),(b)に示す何れかの形態で施工現場に供給される。図12(a)の場合は、突条部分10aの上部と水平部分10の側部にそれぞれ鉄筋aが突き出た形状のブロック体10を使用する。また、図12(b)の場合は、水平部分10aの側部から突き出る鉄筋aにより2つのブロック体10が所定間隔で連結されたものを使用する。
【0032】
この図11に示すボックスカルバートを形成するに際しては、まずプレキャストコンクリート製のブロック体10を必要な個数だけ準備する。次いで、図12(a)のブロック体10を使用する場合は、複数個のブロック体10を突条部分10bが上向きで外側になるようにして2列に並べて設置した後、その2列に設置したブロック体10の間にコンクリート打ちする。また、図12(b)のブロック体10を使用する場合は、2個がペアになったブロック体10を突条部分10aが上向きになるようにして並べて設置した後、その設置したブロック体10の間にコンクリート打ちする。これにより、連続した複数のブロック体10と現場打ちしたコンクリート部分11により底版部が形成され、その底版部の両サイドにブロック体10の突条部分10bが突出した状態となる。このように底版部を形成した後、ブロック体10の突条部分10bの上にコンクリート打ちして上部壁体部分3と頂版部4を形成する。
【0033】
このボックスカルバートの場合、側壁はブロック体10の突条部分10bの上に上部壁体部分3が重なった壁体部となる。そして、上部壁体部分3は、突条部分10bを介して底版部から立設している状態となるため、底版部からの拘束が弱くなり、発生する温度応力が小さくなる。
【0034】
これらの図9,11に示すボックスカルバートは、プレキャストコンクリート製のブロック8,10を並べて設置してあるため、突条部分8a,10bにつなぎ目bが存在し、そのつなぎ目bが図3に示すひび割れ誘発目地と同様な作用効果を発揮する。ただ、温度応力が大きくて、このつなぎ目bのみで上部壁体部分3のひび割れを抑制できないような場合には、必要に応じて図5に示すのと同じように上部壁体部分3にひび割れ誘発目地を設けた形態を採ればよい。
【0035】
また、図7〜12で示したプレキャストコンクリート製の底版パネル体7やブロック体8,10を使用すると、ひび割れの防止だけでなく、ボックスカルバート及び壁体構造物の施工に際し、省人化と工期の短縮が図れ、工事の合理化を推進することができる。
【0036】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明による壁状構造物は、上記のようなボックスカルバートに限るものではなく、例えば図13に示すような一般の壁状構造物をはじめとして、その他の種々の壁状構造物に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る壁状構造物の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る壁状構造物の他の例を示す斜視図である。
【図3】図1に示す壁状構造物の変形例を示す斜視図である。
【図4】図2に示す壁状構造物の変形例を示す斜視図である。
【図5】図1に示す壁状構造物のさらに別の変形例を示す斜視図である。
【図6】図2に示す壁状構造物のさらに別の変形例を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る壁状構造物の他の例を示す斜視図である。
【図8】図7に示す壁状構造物に使用する底版パネル体の斜視図である。
【図9】図7に示す壁状構造物の変形例を示す斜視図である。
【図10】図9に示す壁状構造物に使用するブロック体の斜視図である。
【図11】図7に示す壁状構造物の別の変形例を示す斜視図である。
【図12】図11に示す壁状構造物に使用するブロック体の斜視図である。
【図13】一般の壁状構造物に適用した例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 底版部
2 突条部分
3 上部壁体部分
4 頂版部
5,6 ひび割れ誘発目地
7 底版パネル体
7a 底版部
7b 突条部分
8 ブロック体
8a 突条部分
9 コンクリート部分
10 ブロック体
10a 水平部分
10b 突条部分
11 コンクリート部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底版部の上に壁体部を立設してなるコンクリート製の壁状構造物であって、壁体部に相当する厚さで上部に突き出た突条部分を有する底版部を形成し、その突条部分の上にコンクリート打ちして上部壁体部分を形成することにより、突条部分と上部壁体部分とで壁体部を構成したことを特徴とする壁状構造物。
【請求項2】
底版部が現場打ちしたコンクリートからなり、突条部分は底版部と共にコンクリート打ちして形成したものであること特徴とする請求項1に記載の壁状構造物。
【請求項3】
底版部が現場打ちしたコンクリートからなり、突条部分は底版部のコンクリートが硬化した後に別途コンクリート打ちして形成したものであることを特徴とする請求項1に記載の壁状構造物。
【請求項4】
底版部がプレキャストコンクリート製の連続した複数の底版パネル体からなり、突条部分は底版部から突出する状態で底版パネル体に一体形成されていることを特徴とする請求項1に記載の壁状構造物。
【請求項5】
底版部がプレキャストコンクリート製の連続した複数のブロック体と現場打ちしたコンクリート部分の組合せからなり、突条部分はブロック体の上部で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の壁状造物。
【請求項1】
底版部の上に壁体部を立設してなるコンクリート製の壁状構造物であって、壁体部に相当する厚さで上部に突き出た突条部分を有する底版部を形成し、その突条部分の上にコンクリート打ちして上部壁体部分を形成することにより、突条部分と上部壁体部分とで壁体部を構成したことを特徴とする壁状構造物。
【請求項2】
底版部が現場打ちしたコンクリートからなり、突条部分は底版部と共にコンクリート打ちして形成したものであること特徴とする請求項1に記載の壁状構造物。
【請求項3】
底版部が現場打ちしたコンクリートからなり、突条部分は底版部のコンクリートが硬化した後に別途コンクリート打ちして形成したものであることを特徴とする請求項1に記載の壁状構造物。
【請求項4】
底版部がプレキャストコンクリート製の連続した複数の底版パネル体からなり、突条部分は底版部から突出する状態で底版パネル体に一体形成されていることを特徴とする請求項1に記載の壁状構造物。
【請求項5】
底版部がプレキャストコンクリート製の連続した複数のブロック体と現場打ちしたコンクリート部分の組合せからなり、突条部分はブロック体の上部で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の壁状造物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−291494(P2008−291494A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137535(P2007−137535)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(504167436)日本コンクリート技術株式会社 (7)
【出願人】(599161111)会津土建株式会社 (1)
【出願人】(507170686)北沢建設株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(504167436)日本コンクリート技術株式会社 (7)
【出願人】(599161111)会津土建株式会社 (1)
【出願人】(507170686)北沢建設株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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