説明

壁紙用裏打ち紙

【課題】 エンボス加工時にバックロールに熱可塑性合成繊維の一部が融着して異物として付着する(いわゆる繊維取られ)ことがない壁紙裏打ち紙を提供する。
【解決手段】 木材パルプと熱可塑性合成繊維と融点が50℃以上110℃未満のワックスとを含むスラリーを抄紙して得られる基紙からなる。ワックスを壁紙用裏打ち紙中に0.005質量%以上0.2質量%未満の範囲で含有され、パラフィン系ワックスおよびポリエチレン系ワックスであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル壁紙等に使用される壁紙用裏打ち紙に関する。
【背景技術】
【0002】
壁紙は、一般住宅、ホテル、病院等における室内のインテリアのために、長期間壁に貼付して使用される。壁紙には塩化ビニル壁紙(以下、ビニル壁紙と称す)、オレフィン壁紙、織物壁紙、紙壁紙、無機質壁紙等があるが、これらの壁紙は、塩化ビニル樹脂層、オレフィン樹脂層、織物層、紙層、無機質層等の化粧層と、該化粧層を保持するための裏打ち紙により構成されている。
【0003】
これらの壁紙は施工時、澱粉や酢酸ビニル樹脂系の水系の糊によって壁に貼合されるが、糊付け工程で裏打ち紙が糊中の水分を吸収するため、壁紙が柔らかくなったり、裏打ち紙が水分増加により伸びたりすることがある。これらが原因となって、壁紙がカールし、壁への貼付作業が困難になったり、貼付後捲れが発生し易くなったりする等の問題が生じた。更に、糊が乾燥すると裏打ち紙が収縮するために、隣接して貼り合せた壁紙同士の繋ぎ目部分に隙間(目開き)が生じ、施工後の意匠性を損なうなどの問題があった。
【0004】
裏打ち紙の寸法安定性の改善として、水分による伸縮の少ないガラス繊維等の無機系繊維を配合した裏打ち紙(特許文献1、2、3)、ポリオレフィン、ポリエステル等の熱可塑性合成繊維を配合した裏打ち紙(特許文献4、5)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−214496号公報
【特許文献2】特開平8−100394号公報
【特許文献3】特開平8−325997号公報
【特許文献4】特開平5−59699号公報
【特許文献5】特開2007−077526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ガラス繊維等の無機繊維は自己接着性が無いため、繊維がシートから脱落しやすく作業性が劣る上、抄造時、壁紙加工時、及び壁紙施工時に、繊維の毛羽立ちが生じる。また、ガラス繊維が剛直であることから、皮膚に接触するとチクチクするような刺激が生じ、人に不快感を与えたりするので、無機繊維を配合した裏打ち紙はあまり普及していない。
また、熱可塑性合成繊維を配合した場合、化粧層である塩化ビニル層をエンボス加工する工程で、加熱によって熱可塑性繊維が溶融し、例えば、エンボスのバックロール(ゴムロール)に熱可塑性合成繊維の一部が融着して異物として付着する、いわゆる繊維取られという問題があった。
従って、本発明の目的は、エンボス加工時にバックロールに熱可塑性合成繊維の一部が融着して異物として付着する(いわゆる繊維取られ)ことがない壁紙裏打ち紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題について鋭意検討した結果、熱可塑性合成繊維を含有する壁紙用裏打ち紙に、特定の融点を有するワックスを紙中に内添させることにより、エンボス加工時に発生する繊維取られ(以下バックロール取られという)を改善できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
即ち本発明は、木材パルプと熱可塑性合成繊維と融点が50℃以上110℃未満のワックスとを含むスラリーを抄紙して得られる基紙からなる壁紙用裏打ち紙である。なお、前記ワックスの裏打ち紙中の含有率は0.005質量%以上0.2質量%未満の範囲であることが好ましい。また、前記ワックスがパラフィン系ワックスおよびポリエチレン系ワックスであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の壁紙用裏打ち紙は、高価な材料を使用しないにもかかわらずエンボス加工時に使用する、バックロール(ゴムロール)に繊維などの異物が付着すること防止することができる。また、前記ワックスを配合することで、ビニルペースト塗工時に、表面繊維が起き上がらないので毛羽立ちの発生が少なくなる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の壁紙用裏打ち紙は、少なくとも木材パルプと熱可塑性合成繊維と融点が50℃以上110℃未満のワックスとを含むスラリーを抄紙した基紙からなる。これにより、エンボス加工においてバックロールへ接触した後の剥離が容易となるため、毛羽立ちを減らすことが可能であると共にバックロールへ付着する紙粉も減らすことができ、操業性を改善することも可能となる。
【0011】
<ワックス>
本発明において、ワックスとは常温で個体、加熱すると液体になる有機物であり、具体的には、蜜蝋、鯨蝋、木蝋、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックス等の天然ワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレン系ワックス、油脂系合成ワックス(脂肪酸エステル系、脂肪酸アミド、ケトン・アミン類)、水素硬化油等の合成ワックス等を挙げることができる。本発明においては、比較的安価に入手できるという点で、パラフィン系またはポリエチレン系のワックスを用いることが好ましい。
【0012】
また、本発明においては、前記ワックスの中でも、融点が50℃以上110℃未満のワックスを用いる。通常エンボス加工時におけるバックロールの表面温度が110℃程度であるので、前記ワックスの融点が110℃以上の場合には紙中に存在するワックスがバックロール表面の熱で融解しないため、バックロールから紙の剥離性が不十分となり、バックロール取られを減らすことができない。一方、融点が50℃未満の場合には、倉庫等で保管中に前記ワックスの融解や流動が発生して、裏打ち紙の品質が変化するため好ましくない。なお、バックロール取られ抑制効果が大きいという点で、特に好ましい融点の範囲は55℃〜100℃である。
【0013】
本発明においては、前記ワックスを裏打ち紙中に0.005質量%以上0.2質量%未満の範囲で含有することが好ましい。前記ワックスの紙中含有率が0.005質量%未満の場合は、エンボス時のバックロール剥離性が不十分であり、バックロール取られが防止できない。なお、安定して製造するためにはワックスは0.01質量%を超えて含有されることが好ましい。
一方、前記ワックスの紙中含有率を0.2質量%以上とすると、化粧層と基紙の密着性が低下する傾向にある。更に、ワックスの含有率が多いと抄造時に原料スラリーがワイヤー上に押し出される際に泡が発生しやすくなり、泡によるシート欠陥が発生する傾向にある。また、ヤンキードライヤーで乾燥する場合は紙が乾燥途中でヤンキードライヤーから剥離して浮いてしまうため、乾燥効率が悪化する。ワックスの紙中含有率は0.15質量%以下が好ましい。
【0014】
本発明においては、後述する木材パルプ,熱可塑性合成繊維を含有するパルプのスラリーにワックスを混合分散しこれを抄紙する。このため、前記ワックスは乳化(エマルジョン化)されていることが望ましく、特にカチオン性エマルジョンであることが好ましい。カチオン性であることにより、酸性抄きの場合、パルプスラリー中で安定的に均一に分散し、アニオン性の木材パルプ表面に容易に吸着することが可能となり、ワックスの歩留まりが向上する。中性抄きの場合も、同様にアニオン性の木材パルプ表面に吸着することが可能であり、歩留まりが高い。
【0015】
一方、前記ワックスエマルジョンが非イオン性の場合、歩留まりが低く効果が小さくなる傾向にある。また、前記ワックスエマルジョンがアニオン性の場合、酸性抄きの場合、原料スラリー中では不安定でワックス粒子が凝集するために分布が不均一となるため、ドライヤーから紙の剥離性向上効果が小さくなる傾向にある。更に、凝集したワックス粒子が抄紙機の配管に付着して汚れが発生する傾向にある。ただし、中性抄きの場合、パルプスラリー中に硫酸バンド等のカチオン性の薬品を添加することにより、アニオン性の木材パルプ表面にアニオン性のワックスエマルジョンを吸着させることが可能である。
【0016】
<パルプ>
本発明の壁紙用裏打ち紙に使用する基紙は、後述する木材パルプと熱可塑性合成繊維等を抄紙して得られる。木材パルプとしては針葉樹の晒しクラフトパルプ(NBKP)、広葉樹の晒しクラフトパルプ(LBKP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の各種木材パルプを、単独または任意の配合率で混合して使用できる。脱墨パルプ(DIP)を用いることも可能であるが、寸法安定性が悪くなるため配合しない方が好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、非木材パルプ(ケナフ、竹等)を含有することも可能である。
【0017】
本発明において使用する木材パルプは、カナダ標準濾水度(CSF)を450ml〜550mlに調整することが好ましい。パルプのCSFは、前記した少なくとも1種のパルプを叩解して上記範囲に調整すれば良い。2種類以上のパルプを使用する場合には、別々に叩解したパルプを混合して上記範囲にしても、予め混合したパルプを叩解して上記範囲に調整してもよい。パルプのCSFが450mlより小さいと、水性の糊を用いて施工する際に、壁紙の伸びが大きくなるだけでなく乾燥時の収縮も大きくなり、隣同士に貼った壁紙の目開き(隙間)が大きくなるので好ましくない。更に、繊維間結合が強化されるため、層間強度が高くなり、壁面から壁紙を剥離する際のピール適性が悪化する。パルプのCSFが550mlより大きいと紙力が不十分になるため、ビニルペースト等の塗工時に断紙が発生し易くなる上、原紙に毛羽立ちが発生し易くなるので好ましくない。
【0018】
<熱可塑性合成繊維>
本発明で使用する熱可塑性合成繊維とは、有機低分子を重合して得られた合成樹脂を原料とする化学繊維であり、熱可塑性合成樹脂を含有する。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂繊維、ナイロン等のポリアミド系樹脂繊維、ポリアクリルニトリル等のアクリル系樹脂繊維、ポリウレタン系樹脂繊維、ポリ塩化ビニル等の含ハロゲン系樹脂繊維が挙げられる。また、上記合成樹脂が共重合樹脂である合成繊維、又は芯鞘構造、海島構造等を有する、2種以上の異なった合成樹脂を一本の繊維中に含有する複合繊維等も使用することができる。これらの合成繊維は単独で使用しても、複数種類混合して使用してもよい。
【0019】
本発明の壁紙用裏打ち紙は、基紙を構成する繊維分中に、熱可塑性合成繊維を5質量%以上25質量%以下の範囲で含有することが好ましい。水分による伸縮の起こり難い合成繊維を使用することにより、吸水による壁紙のカール及び乾燥後の目開きの発生を防止することができる。合成繊維が5質量%未満であると寸法安定性が劣り、目開きが発生し易畏敬公にある。また、熱可塑性合成繊維の含有率が25質量%を超えると毛羽立ちや繊維取られの発生量が多くなる傾向にある。より好ましくは15質量%以下である。
【0020】
<その他>
本発明の壁紙用裏打ち紙には、不透明度を向上させるために、填料を1〜30質量%含有させることが好ましい。上記填料としては、一般の抄紙において使用される填料の中から適宜選択した、少なくとも1種を使用することができる。このような填料としては例えば、カオリン、焼成カオリン、デラミネーティッドカオリン、クレー、焼成クレー、デラミネーティッドクレー、イライト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などの無機填料、及び、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂等の有機填料などが挙げられ、前述したパルプスラリーに混合して抄紙する。本発明においては、上記の填料の中でも、ビニルペースト塗工時のブリスター(裏打ち紙と塩化ビニル層との間の膨れ)の発生を抑制することが可能である、焼成クレーを使用することが好ましい。
【0021】
本発明の壁紙用裏打ち紙においては、表面強度を高めるために水溶性高分子及び/または水分散性高分子(バインダー)を含有する塗工液を、少なくとも化粧層を設ける側の表面に塗工することが好ましい。例えば、ビニル壁紙の場合には、壁紙用裏打ち紙の表面に塩化ビニルペーストを塗工し、加熱してゲル化させた後、印刷工程に付されて塩化ビニル層が化粧層となるが、このとき壁紙用裏打ち紙の表面強度が低いと、化粧層の塗工時に紙表面の繊維が毛羽立ち、ゲル化後に該毛羽立ち部が壁紙表面で突起状となり、印刷不良の原因となる。
【0022】
水溶性高分子として、酸化澱粉、酵素変性澱粉等の各種変性澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、カゼイン等を、また、水分散性高分子として、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタアクリレート・ブタジエン共重合体ラテックス、アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン等を適宜単独又は併用して使用することができる。
【0023】
特に、ポリビニルアルコールは、壁紙用裏打ち紙の表面の繊維の毛羽立ちを抑制する効果が大きくなるために特に好ましい。さらに、ポリビニルアルコールのケン化度は高い方が毛羽立ち抑制効果が大きい。このため、本発明においてはケン化度90以上のポリビニルアルコールを用いることが好ましい。また、ポリビニルアルコールの重合度は、低いと毛羽立ち抑制効果が小さく、高いと、塗工液粘度があがり、塗工性が悪くなる傾向にある。このため、本発明においてはポリビニルアルコールの重合度は1000〜2000であることが好ましい。
【0024】
本発明においては、壁紙用裏打ち紙に難燃性を付与することもできる。難燃性を付与するためには、前述した塗工液に難燃剤を含有するして塗布または含浸させるか、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を、填料として更に裏打ち紙中に配合することが好ましい。前記難燃剤としては、スルファミン酸グアニジン、スルファミン酸グアニジンメチロール化物、リン酸グアニジン、スルファミン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等を単独または混合して使用することができる。
【0025】
本発明の壁紙用裏打ち紙には、通常の紙と同様にサイズ剤が内添及び/又は外添されていてもよい。サイズ剤としては、酸性抄きの場合、ロジン系サイズ剤、ロジンエマルジョン系サイズ剤、α−カルボキシルメチル飽和脂肪酸等を使用することができる。また、中性抄きの場合には、中性抄紙用ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、カチオンポリマー系サイズ剤を使用することができる。サイズ剤の添加量は特に限定されるものではないが、ステキヒトサイズ度で10秒以上となるように使用することが好ましい。また、サイズプレス等を用いた外添においても、ロジン系、合成樹脂系等の表面サイズ剤を使用することが可能である。
【0026】
また、本発明の壁紙用裏打ち紙においては、品質に影響のない範囲で、定着剤、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、硫酸バンド、歩留り向上剤、染料を内添薬品として使用することができる。更にサイズプレス等を用いて塗工又は含浸させる外添薬品として、表面紙力剤、染料、顔料(クレー、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、シリカ等)等を使用することができる。
【0027】
本発明の壁紙用裏打ち紙の坪量は、40g/m以上120g/m以下であることが好ましい。坪量が40g/m未満であると強度が低く、加工時に断紙が発生し易くなる。また、坪量が120g/mを超えると壁紙に加工した時に硬くなりすぎ、施工が困難となるという欠点が生じる。
本発明の壁紙用裏打ち紙は公知の抄紙機によって適宜製造することができ、その抄紙条件は特に限定されるものではない。抄紙機としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機等を使用することができる。なお多層の場合、傾斜抄紙機などを使用することが出来る。
【0028】
尚、バックロール取られの評価は、壁紙裏打ち紙と特定のゴム素材をヒートシールテスターにて一定時間加熱圧着させ、その後、壁紙裏打ち紙を剥離し、ゴム素材に繊維などの付着物が発生,残存していないかを評価する。
【0029】
本発明の壁紙用裏打ち紙は、上層に化粧層を設けて壁紙となる。例えば、化粧層としてビニル層を設けたビニル壁紙、オレフィン層を設けたオレフィン壁紙、織物層を設けた織物壁紙、紙層を設けた紙壁紙、無機質層を設けた無機質壁紙等の壁紙製品が挙げられる。何れの場合にも、化粧層となる層を設けた後に、必要に応じて印刷したり、発泡処理やエンボス処理を行ったりして化粧層とする。本発明はビニル壁紙用の裏打ち紙として好適に使用することができるが、それ以外の壁紙の裏打ち紙としても利用することができる。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で作製したビニル壁紙用裏打ち紙については、下記に示した方法によってワックスの紙中含有率の測定、バックロール取られの評価を行った。
【0031】
<ワックスの紙中含有率の測定>
1.ワックスを含有しない原紙に、濃度を変更したワックスを原紙に均一に含浸後乾燥させ、前記ワックスの含有率を変更したサンプルを作製する。前記ワックスの紙中含有率(%)は以下の式にて算出する。原紙に均一に含浸させるために、減圧容器内に前記ワックスと原紙を投入して、原紙から泡が発生しなくなるまで減圧処理を行う。
【0032】
【数1】

【0033】
2.前記サンプルと含浸前の原紙についてGC−MS分析を行い、前記ワックスの紙中含有率(%)と全ピーク面積の関係式を求める。
3.実施例および比較例で作製したサンプルについてGC−MS分析を行い、2の関係式より裏打ち紙に含有されるワックスの紙中含有率を算出する。
【0034】
<バックロール取られの評価>
壁紙用裏打ち紙を23℃、50RH%の環境下で24時間調湿した後、15cm(MD方向)×3cm(CD方向)となるように断裁した。なお、サンプリングに際しては、紙面を擦らないように十分注意した。
ヒートシールテスターを用い、上側/下側の温度を175/130℃にし、上側から、壁紙用裏打ち紙(W面)/ニトリルゴム/アルミホイルの構成で圧着した。圧着時間は7分間とし、圧力は2.5kgf/cmとした。7分後サンプルをすぐに出し、壁紙裏打ち紙を180°剥離し、ニトリルゴム状に繊維がどの程度接着しているか評価した。△以上であれば実用上問題なく使用できる。
◎:まったく繊維が残っていない。
○:若干残っているがほぼ問題ない。
△:繊維が残っている。
×:繊維が多く残り、所々ダマ状になっている。
【0035】
<毛羽立ちの評価>
壁紙用裏打ち紙を23℃、50RH%の環境下で24時間調湿した後、70cm(MD方向)×30cm(CD方向)となるように断裁した。なお、サンプリングに際しては、紙面を擦らないように十分注意した。ガラス板上に坪量150g/mの上質紙を2枚敷きクリップにて固定した。次に、塩化ビニル塗工面となるF面が上になるように、壁紙用裏打ち紙のサンプルをのせ、塗工厚が150μmとなるようにナイフコーターにて塗工速度2m/分で塩化ビニルペーストを塗工した後、145℃の乾燥機中に1分間入れ、塩化ビニルペーストをゲル化させた。ゲル化した塩化ビニル層表面の中央部の、CD方向に30cm×MD方向に60cmの面積中に発生した突起物(欠陥)の数を計測した。同様にして作製したサンプル4枚の計測値を合計して、1サンプル当りの突起物の数(0.72m当りの個数)とした。○以上であれば実用上問題なく使用できる。
○:計測した突起物の数が5個以下である
△:5〜10個である
×:11個以上である
【0036】
<実施例1>
広葉樹晒クラフトパルプ(CSF:500ml)を89質量部配合したパルプスラリー中に、熱可塑性樹脂繊維11質量部(芯ポリエステル繊維(融点256℃)、鞘:ポリエチレン繊維(融点125℃)をパルプスラリー中に添加し、抄紙pHが4.5になるように硫酸バンドを添加した。
サイズ剤としてアルファカルボキシメチル飽和脂肪酸塩(商品名:NSP−S、星光PMC(株)製)を0.15質量%添加した。更に湿潤紙力剤としてポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂(商品名:WS−547、星光PMC(株)製)を0.2質量%添加し、次に内添紙力剤ポリアクリルアミド系樹脂(商品名:ポリストロン117、荒川化学(株)製)を0.3質量%:変更しました。と填料として焼成クレーを灰分7%となるように添加した。さらに内添離型剤としてポリエチレンワックス(商品名:メイカテックスPEC−17;明星化学工業製、融点100℃)を紙中含有率が0.01質量%になるように添加し壁紙裏打ち紙を製造した。このときの坪量が65g/mであった。
【0037】
<実施例2>
内添離型剤であるポリエチレンワックスを紙中含有率が0.05質量%となるように添加した以外は実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作成した。
【0038】
<実施例3>
内添離型剤であるポリエチレンワックスを紙中含有率が0.15質量%となるように添加し、合成繊維の繊維長を5mmとした以外は実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を作成した。
【0039】
<実施例4>
ポリエチレンワックスに代えて、パラフィンワックス(商品名:パラジットASZ−5、融点55℃、カチオン性、明成化学工業(株)製)を紙中含有率が0.05質量%となるよう添加して抄紙した以外は実施例1と同様にして壁紙用裏打ち紙を製造した。
【0040】
<比較例1>
ポリエチレンワックスを添加しない以外は実施例1と同様にして壁紙裏打ち紙を製造した。
【0041】
<比較例2>
ポリエチレンワックスを添加せず、合成繊維の繊維長を5mmとした以外は実施例1と同様にして壁紙裏打ち紙を製造した。
【0042】
実施例、比較例において得られた壁紙用裏打ち紙について評価した結果を、表1にまとめる。
【0043】
【表1】

【0044】
本発明の壁紙用裏打ち紙に相当する実施例1〜4においては、バックロール取られ、毛羽立ち共に問題ない壁紙用裏打ち紙を得ることができた。一方、基紙中に内添離型剤が含まれない比較例1、2においては、問題となるレベルのバックロール取られが発生した。特に繊維長が5mmの合成繊維を含有する比較例5においては、毛羽立ちも劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材パルプと熱可塑性合成繊維と融点が50℃以上110℃未満のワックスとを含むスラリーを抄紙して得られる基紙からなる壁紙用裏打ち紙。
【請求項2】
前記ワックスを壁紙用裏打ち紙中に0.005質量%以上0.2質量%未満の範囲で含有する請求項1に記載された壁紙用裏打ち紙。
【請求項3】
前記ワックスがパラフィン系ワックスおよびポリエチレン系ワックスである請求項1または2に記載された壁紙用裏打ち紙。

【公開番号】特開2011−202325(P2011−202325A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72661(P2010−72661)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】