説明

壁装用積層樹脂シートおよびこれを用いてなる壁紙

【課題】 発泡塩ビゾルシートとの密着性が良好で、シボ転写性、製膜加工性、壁紙施工性に優れる壁装用積層樹脂シートを提供すること。
【解決手段】 特定の(A)ポリエステル系樹脂および(B)ゴム粒子を含む上層と(C)非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる下層が積層されてなる壁装用積層樹脂シートであって、積層樹脂シートの厚さが、8〜30μmであり、上層の樹脂成分が、(A)50〜99質量%および(B)1〜50質量%からなり、上層と下層が多層押出機を用いて押出されて積層され、かつ上層と下層の厚さの比が、上層:下層=9.5:0.5〜5:5である壁装用積層樹脂シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁装用積層樹脂シートおよびこれを用いてなる壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁紙は、壁装用原紙に発泡塩化ビニル樹脂層を設け、さらにその上に汚染防止フィルムとして、エチレン−ビニルアルコール共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体のけん化物)フィルムをラミネート加工したものが多用されていた。しかしながら、この場合、該エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムを発泡塩化ビニル樹脂層上にラミネート加工するのにホットメルト剤を必要とし、壁紙製造における作業性が悪いという問題があった。
【0003】
壁装用としてふさわしい艶消し外観を有し、加熱ラミネート加工してもその外観を保持することができる壁装用積層樹脂シートとして、完全非晶性ポリエステル樹脂に艶消し剤として、共役ジエン系ゴム粒子に(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリル酸エステル芳香族ビニル系化合物をグラフト重合して得られた重合体、及び/又はアクリル系ゴム粒子を配合してなる樹脂組成物を成形して得られた壁装用積層樹脂シートが開示されている(例えば、特許文献1:特開2001−247753号公報参照)。
しかしながら、高い艶消し外観を得ようとして、艶消し剤を高添加すると、製膜時にシートが破断することがあり、また耐候性試験において黄変現象がみられ、さらにシートを厚くしてもシボ(エンボス)転写性が不充分になるなどの問題を生じ、必ずしも十分に満足し得るものであるとはいえなかった。
【0004】
また、良好な艶消し外観を有すると共に、艶消し剤を高添加しても、破断がなく、製膜が可能であり、かつ耐候性試験においても黄変現象がなく、さらに厚さが比較的厚くてもシボ転写性が優れる壁装用積層樹脂シートとして、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、及び/又はシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂に艶消し剤として、アクリル系グラフト共重合体ゴム粒子、及び/又はアクリルシリコーン系グラフト共重合体ゴム粒子を配合してなる樹脂組成物を成形して得られた壁装用積層樹脂シートが開示されている(例えば、特許文献2:特開2005−146049号公報参照)。
しかしながら、該特許文献の壁装用積層樹脂シートは、発泡塩ビゾルシートとの密着性が悪く、十分満足するものではないという問題がある。また、シボ転写性、製膜加工性、壁紙施工性にも改善の余地があった。
【特許文献1】特開2001−247753号公報
【特許文献2】特開2005−146049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、発泡塩ビゾルシートとの密着性が良好で、シボ転写性、製膜加工性、壁紙施工性に優れる壁装用積層樹脂シートおよびこれを用いた壁紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.ポリエステル系樹脂の上層とポリエステル系樹脂の下層が積層されてなる壁装用積層樹脂シートであって、
前記積層樹脂シートの厚さが、8〜30μmであり、
前記上層の樹脂成分が、下記(A)50〜99質量%および下記(B)1〜50質量%からなり、
前記下層の樹脂成分が、(C)非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂であり、前記上層と前記下層が多層押出機を用いて押出されて積層され、かつ前記上層と前記下層の厚さの比が、上層:下層=9.5:0.5〜5:5であることを特徴とする壁装用積層樹脂シート。
(A):(a−1)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び/又は(a−2)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール10モル%以上60モル%未満と1,4−シクロヘキサンジメタノール40モル%以上90モル%未満であるシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂。
(B):(b−1)アクリル系ゴム粒子に、(メタ)アクリル酸エステル、又は、(メタ)アクリル酸エステルとシアン化ビニル系化合物をグラフト重合して得られるアクリル系グラフト共重合体ゴム粒子、及び/又は、(b−2)アクリル系樹脂とオルガノポリシロキサンとからなる複合ゴム粒子にシアン化ビニル系化合物と芳香族ビニル系化合物、又は、(メタ)アクリル酸エステルがグラフト重合して得られるアクリルシリコーン系グラフト共重合体ゴム粒子。
【0007】
2.ポリエステル系樹脂の上層とポリエステル系樹脂の下層が積層されてなる壁装用積層樹脂シートであって、
前記積層樹脂シートの厚さが、8〜30μmであり、
前記上層の樹脂成分が、下記(X)50〜99質量%および下記(B)1〜50質量%からなり、
前記下層の樹脂成分が、(C)非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂であり、前記上層と前記下層が多層押出機を用いて押出されて積層され、かつ前記上層と前記下層の厚さの比が、上層:下層=9.5:0.5〜5:5であることを特徴とする壁装用積層樹脂シート。
(X):(a−1)ポリブチレンテレフタレート系樹脂61〜99質量%及び(a−3)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール60モル%以上90モル%未満と1,4−シクロヘキサンジメタノール10モル%以上40モル%未満であるシクロヘキサンジメタノール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂1〜39質量%からなる樹脂。
(B):(b−1)アクリル系ゴム粒子に、(メタ)アクリル酸エステル、又は、(メタ)アクリル酸エステルとシアン化ビニル系化合物をグラフト重合して得られるアクリル系グラフト共重合体ゴム粒子、及び/又は、(b−2)アクリル系樹脂とオルガノポリシロキサンとからなる複合ゴム粒子にシアン化ビニル系化合物と芳香族ビニル系化合物、又は、(メタ)アクリル酸エステルがグラフト重合して得られるアクリルシリコーン系グラフト共重合体ゴム粒子。
【0008】
3.ポリエステル系樹脂の上層とポリエステル系樹脂の下層が積層されてなる壁装用積層樹脂シートであって、
前記積層樹脂シートの厚さが、8〜30μmであり、
前記上層の樹脂成分が、下記(Y)50〜99質量%および下記(B)1〜50質量%からなり、
前記下層の樹脂成分が、(C)非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂であり、前記上層と前記下層が多層押出機を用いて押出されて積層され、かつ前記上層と前記下層の厚さの比が、上層:下層=9.5:0.5〜5:5であることを特徴とする壁装用積層樹脂シート。
(Y):(a−1)ポリブチレンテレフタレート系樹脂61〜98質量%、(a−2)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール10モル%以上60モル%未満と1,4−シクロヘキサンジメタノール40モル%以上90モル%未満であるシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂1〜38質量%及び(a−3)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール60モル%以上90モル%未満と1,4−シクロヘキサンジメタノール10モル%以上40モル%未満であるシクロヘキサンジメタノール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂1〜38質量%からなる樹脂(ただし、前記(a−1)、(a−2)および(a−3)の合計は100質量%である)。
(B):(b−1)アクリル系ゴム粒子に、(メタ)アクリル酸エステル、又は、(メタ)アクリル酸エステルとシアン化ビニル系化合物をグラフト重合して得られるアクリル系グラフト共重合体ゴム粒子、及び/又は、(b−2)アクリル系樹脂とオルガノポリシロキサンとからなる複合ゴム粒子にシアン化ビニル系化合物と芳香族ビニル系化合物、又は、(メタ)アクリル酸エステルがグラフト重合して得られるアクリルシリコーン系グラフト共重合体ゴム粒子。
【0009】
4.前記(a−1)ポリブチレンテレフタレート系樹脂が、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂である前記1〜3のいずれかに記載の壁装用積層樹脂シート。
【0010】
5.(C)非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂が、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール60モル%以上90モル%未満と1,4−シクロヘキサンジメタノール10モル%以上40モル%未満であるシクロヘキサンジメタノール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂である前記1〜3のいずれかに記載の壁装用積層樹脂シート。
6.紙製の下地に発泡性塩化ビニルペーストを塗布したもの、又は紙製の下地に発泡性塩化ビニルペーストを塗布し、さらにその上に印刷を施したものの表面に前記1〜5のいずれかに記載の壁装用積層樹脂シートを、加熱ラミネート加工により積層してなることを特徴とする壁紙。
7.プラスチックフィルムの一方の面に印刷層を設け、前記印刷層上に前記1〜5のいずれかに記載の壁装用積層樹脂シートを加熱ラミネート加工により積層し、前記プラスチックフィルムの他方の面に粘着剤層を設けてなることを特徴とする壁紙。
【発明の効果】
【0011】
本発明の壁装用積層樹脂シートは、以下の要件(1)〜(6)をすべて満たしていることを特徴としているので、発泡塩ビゾルシートとの密着性が良好で、シボ転写性、製膜加工性、壁紙施工性に優れる壁装用積層樹脂シートおよび壁紙を提供することができる。
(1)ポリエステル系樹脂からなる上層および下層の層を有すること。
(2)上層および下層の合計の厚さが特定範囲にあること。
(3)上層および下層の厚さの割合が特定範囲にあること。
(4)上層が特定の樹脂成分を有すること。
(5)下層が非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂であること。
(6)上層および下層が多層押出機を用いて押出されて積層されていること。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
まず、本発明の壁装用積層樹脂シートにおける上層について説明する。
該上層は、特定の樹脂組成物からなるものであって、該樹脂組成物の種類によって、下記I、II及びIIIの3種の態様がある。
すなわち、上層Iにおいては、(A)(a−1)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び/又は(a−2)シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂と、(B)特定の艶消し材を必須成分として含むものであり、上層IIにおいては、(X)(a−1)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(a−3)シクロヘキサンジメタノール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂と、(B)特定の艶消し材を必須成分として含むものであり、上層IIIにおいては、(Y)(a−1)ポリブチレンテレフタレート系樹脂、(a−2)シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂及び(a−3)シクロヘキサンジメタノール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂と、(B)特定の艶消し材を必須成分として含むものである。
【0013】
次に、前記各成分について説明する。
前記(a−1)成分のポリブチレンテレフタレート系樹脂としては、特に制限はなく、(1)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分が1,4−ブタンジオールであるポリブチレンテレフタレート樹脂、(2)ジカルボン酸成分がテレフタル酸とイソフタル酸との混合物、例えばテレフタル酸60〜95モル%とイソフタル酸40〜5モル%との混合物であり、グリコール成分が1,4−ブタンジオールであるイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂、(3)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分が1,4−ブタンジオールとポリテトラメチレングリコールとの混合物、例えば1,4−ブタンジオール70〜90質量%とポリテトラメチレングリコール30〜10質量%との混合物であるポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂などを用いることができる。これらの中で、シボ密着性やシボ転写性などの面から、前記(2)のイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂が好適である。
この(a−1)成分のポリブチレンテレフタレート系樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
前記(a−2)成分のシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール10モル%以上60モル%未満と1,4−シクロヘキサンジメタノール40モル%以上90モル%未満との混合物である。
この(a−2)成分のシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート樹脂における1,4−シクロヘキサンジメタノール成分の一部をエチレングリコールで置き換えてなるエチレングリコール変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂である。このようにポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂を変性することにより、該ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂の非晶性化や軟質化、あるいは特定の物性の向上などを図ることができる。
当該(a−2)成分のシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂においては、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸以外の成分を、5モル%以下程度の割合で用いることができる。前記テレフタル酸以外の成分としては、例えばアジピン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、ジブロモテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸等を挙げることができる。
【0015】
また、ジオール成分として、エチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノール以外の成分を、5モル%以下程度の割合で用いることができる。前記エチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノール以外の成分としては、例えばネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどの脂肪族ジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、ノルボルネンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環式ジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキシド付加物、4,4'−スルホニルビスフェノールのエチレンオキシド付加物、1,4−ジヒドロキシベンゼンのエチレンオキシド付加物などの芳香族ジオール等を挙げることができる。
当該(a−2)成分のシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂としては、例えばジカルボン酸単位としてテレフタル酸単位を、ジオール単位として、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位とエチレングリコール単位とを有するグリコール変性ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート樹脂(略称PCTG)などを好ましく挙げることができる。
この(a−2)成分のシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
前記(a−3)成分のシクロヘキサンジメタノール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール60モル%以上90モル%未満と1,4−シクロヘキサンジメタノール10モル%以上40モル%未満との混合物である。
この(a−3)成分のシクロヘキサンジメタノール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂におけるエチレングリコール成分の一部を1,4−シクロヘキサンジメタノールで置き換えてなる1,4−シクロヘキサンジメタノール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂である。このようにポリエチレンテレフタレート樹脂を変性することにより、該ポリエチレンテレフタレート樹脂の非晶性化や軟質化、あるいは特定の物性の向上などを図ることができる。
当該(a−3)成分のシクロヘキサンジメタノール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂においては、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸以外の成分を、5モル%以下程度の割合で用いることができる。前記テレフタル酸以外の成分としては、前述の(a−2)成分の樹脂の説明において、テレフタル酸以外の成分として例示した成分と同じものを挙げることができる。また、ジオール成分として、エチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノール以外の成分を、5モル%以下程度の割合で用いることができる。前記エチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノール以外の成分としては、前述の(a−2)成分の樹脂の説明において、エチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノール以外の成分として例示した成分と同じものを挙げることができる。
【0017】
当該(a−3)成分の樹脂としては、完全非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂を好ましく用いることができる。この完全非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、加熱処理を行っても結晶化による物性の変化を起こすことがなく、結晶性を全く有しないポリエチレンテレフタレート系樹脂である。ポリエチレンテレフタレート系樹脂が結晶性を有しないことは、示差走査熱量計を用いる熱分析において、結晶化にもとづく発熱ピークを示さないこと、及び、加熱しても外観的に白濁ないし白化を生じないことによって確認することができる。このような完全非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂としては、例えば、ジカルボン酸単位としてテレフタル酸単位を、ジオール単位としてエチレングリコール単位と、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位とを有するグリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(略称PETG)などが知られている。
この(a−3)成分のシクロヘキサンジメタノール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、前記の(a−1)成分、(a−2)成分及び(a−3)成分のポリエステル樹脂は、公知のポリエステル樹脂の製造方法、すなわち、ジカルボン酸成分とジオール成分とを直接重縮合させる方法、あるいは、ジカルボン酸低級アルキルエステルとジオールとをエステル交換させる方法などによって製造することができる。
【0018】
(B)成分の艶消し材としては、(b−1)アクリル系グラフト共重合体ゴム粒子及び/又は(b−2)アクリルシリコーン系グラフト共重合体ゴム粒子が用いられる。
【0019】
前記(b−1)成分のアクリル系グラフト共重合体ゴム粒子は、アクリル系ゴム粒子に(メタ)アクリル酸エステル、又は、(メタ)アクリル酸エステルとシアン化ビニル系化合物をグラフト重合して得られるグラフト共重合体ゴム粒子である。該アクリル系ゴム粒子としては、例えば炭素数2〜8のアルキル基又はシクロアルキル基を有するアクリル酸エステル、及び所望により用いられる共重合可能な単量体や架橋性単量体を重合させて得られた粒子を挙げることができる。
前記のアクリル系ゴム粒子の原料として用いられる炭素数2〜8のアルキル基又はシクロアルキル基を有するアクリル酸エステルの例としては、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、原料として所望により用いられる共重合可能な単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、ビニルトルエン、イソプロペニルトルエン、クロロスチレン、芳香族ビニリデン類などの芳香族ビニル系化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどのシアン化ビニル系化合物などが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
さらに、原料として所望により用いられる共重合可能な架橋性単量体の例としては、2個以上の反応性の等しい二重結合を有する単量体、具体的にはジビニルベンゼンなどの芳香族ジビニル単量体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレートなどを、さらには2−クロロエチルビニルエーテルなどの含ハロゲンビニル系化合物、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジルビニル系化合物、エチリデンノルボルネンなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記アクリル系ゴム粒子は、アクリル酸エステル単位55〜100質量%、芳香族ビニル系化合物単位0〜45質量%及び他の共重合可能な単量体単位0〜45質量%を有する共重合体であることが好ましい。なお、架橋性単量体は、必要に応じて適宜選択することができ、その使用量は通常は少量である。このアクリル系ゴム粒子の製造は、公知の重合方法により行うことができる。このアクリル系ゴム粒子の平均粒径は0.05〜1.0μmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5μmの範囲である。
【0021】
本発明において、(b−1)成分として用いられるアクリル系グラフト共重合体ゴム粒子は、前記のようにして得られたアクリル系ゴム粒子に(メタ)アクリル酸エステル、又は、(メタ)アクリル酸エステルとシアン化ビニル系化合物をグラフト重合することにより、得ることができる。ここで、アクリル系ゴム粒子にグラフト重合させる(メタ)アクリル酸エステルについては特に制限はないが、炭素数が1〜8のアルキル基又はシクロアルキル基を有するエステルが好適であり、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどを挙げることができる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、メタクリル酸メチルを特に好適に用いることができる。
また、該アクリル系ゴム粒子に、前記(メタ)アクリル酸エステルと共にグラフト重合させるシアン化ビニル系化合物については特に制限はなく、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、特にアクリロニトリルが好適である。また、本発明においては、該アクリル系ゴム粒子に、さらに他の単量体をグラフト重合することができる。また、グラフト重合に際して、少量の架橋性単量体を用いることもできる。
【0022】
本発明において、該アクリル系ゴム粒子にグラフト重合させる単量体は、その50質量%以上が(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。該アクリル系ゴム粒子に(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸エステルとシアン化ビニル系化合物をグラフト重合させる方法については特に制限はなく、例えば、シード乳化重合法などの公知の方法を用いてグラフト重合することができる。本発明においては、このようにして得られたアクリル系グラフト共重合体ゴム粒子中のアクリル系ゴム粒子の割合は、40〜90質量%であることが好ましい。このグラフト共重合体ゴム粒子のグラフト成分のガラス転移温度は、40℃以上であることが好ましい。
本発明においては、この(b−1)成分のアクリル系グラフト共重合体ゴム粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
一方、(b−2)成分のアクリルシリコーン系グラフト共重合体ゴム粒子は、アクリル系樹脂とオルガノポリシロキサンとからなる複合ゴム粒子にシアン化ビニル系化合物と芳香族ビニル系化合物、又は、(メタ)アクリル酸エステルをグラフト重合して得られるグラフト共重合体ゴム粒子である。前記アクリル系樹脂とオリガノポリシロキサンとからなる複合ゴム粒子としては、例えば炭素数1〜8のアルキル基又はシクロアルキル基を有するアクリル酸エステル及び所望により用いられる他の単量体や架橋性単量体を、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなどのオルガノポリシロキサンの存在下に重合させて得られたグラフト共重合体粒子又はブロック共重合体粒子を挙げることができる。
前記複合ゴム粒子の原料として用いられる炭素数1〜8のアルキル基又はシクロアルキル基を有するアクリル酸エステルの例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、原料として所望により用いられる他の単量体や架橋性単量体としては、前述の(b−1)成分におけるアクリル系ゴム粒子の説明において例示した化合物と同じものを挙げることができる。
この複合ゴム粒子の平均粒径は0.05〜1.0μmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5μmの範囲である。
【0024】
本発明において、(b−2)成分として用いられるアクリルシリコーン系グラフト共重合体ゴム粒子は、前記のようにして得られた複合ゴム粒子にシアン化ビニル系化合物と芳香族ビニル系化合物、又は、(メタ)アクリル酸エステルをグラフト重合することにより、得ることができる。ここで、複合ゴム粒子にグラフト重合させるシアン化ビニル系化合物については、前述の(b−1)成分であるアクリル系グラフト共重合体ゴム粒子の説明において例示したものと同じものを用いることができる。芳香族ビニル系化合物としては、特に制限はなく、例えばスチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレンなど、あるいは、これらの核置換誘導体、例えば、ビニルトルエン、イソプロペニルトルエン、クロロスチレン、芳香族ビニリデン類などを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、特にスチレンが好適である。
一方(メタ)アクリル酸エステルについては、前述の(b−1)成分のアクリル系グラフト共重合体ゴム粒子の説明において例示したものと同じものを用いることができる。
本発明においては、このグラフト重合に際して、少量の架橋性単量体を用いることができる。また、複合ゴム粒子にシアン化ビニル系化合物と芳香族ビニル系化合物、又は(メタ)アクリル酸エステルをグラフト重合させる方法については、特に制限はなく、例えば、シート乳化重合法など公知の方法を用いてグラフト重合させることができる。本発明においては、このようにして得られたアクリルシリコーン系グラフト共重合体ゴム粒子中の複合ゴム粒子の割合は、40〜90質量%であることが好ましい。このグラフト共重合体ゴム粒子のグラフト成分のガラス転移温度は、40℃以上であることが好ましい。
【0025】
本発明においては、この(b−2)成分のアクリルシリコーン系グラフト共重合体ゴム粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、(B)成分の艶消し材として、前記(b−1)成分のアクリル系グラフト共重合体ゴム粒子を用いてもよいし、(b−2)成分のアクリルシリコーン系グラフト共重合体ゴム粒子を用いてもよく、あるいはその両方を併用してもよい。上記(b−1)成分のアクリル系グラフト共重合体ゴム粒子及び(b−2)成分のアクリルシリコーン系グラフト共重合体ゴム粒子は、適度の柔軟性を有すると共に、耐候性に優れ、艶消し材として好適な性能を有している。
【0026】
次に、上層における各成分の配合割合について説明する。
上層Iにおいては、(A)樹脂成分として(a−1)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び/又は(a−2)シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂が用いられる。また、上層IIにおいては、(X)樹脂成分として(a−1)ポリブチレンテレフタレート系樹脂61〜99質量%及び、(a−3)シクロヘキサンジメタノール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂1〜39質量%からなる混合樹脂が用いられる。(a−1)成分のポリブチレンテレフタレート系樹脂と(a−3)成分のシクロヘキサンジメタノール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂の割合を上記範囲とすることで、製膜性、シボ転写性、シボ密着性などの良好な壁装用積層樹脂シートが得られる。
(a−1)成分と(a−3)成分の好ましい割合は、(a−1)成分70〜90質量%で、(a−3)成分10〜30質量%である。
なお、上層Iにおいて、(a−1)成分と(a−2)成分を併用する場合、両者の好ましい割合は、(a−1)成分15〜85質量%で、(a−2)成分85〜15質量%である。
【0027】
さらに、上層IIIにおいては、(Y)樹脂成分として、(a−1)ポリブチレンテレフタレート系樹脂61〜98質量%、(a−2)シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂1〜38質量%及び(a−3)シクロヘキサンジメタノール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂1〜38質量%からなる混合樹脂が用いられる。ただし、前記(a−1)、(a−2)および(a−3)の合計は100質量%である。(a−1)成分のポリブチレンテレフタレート系樹脂と(a−2)成分のシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂と(a−3)成分のシクロヘキサンジメタノール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂の割合を上記範囲とすることで、製膜性、シボ転写性、シボ密着性などの良好な壁装用積層樹脂シートが得られる。(a−1)成分と(a−2)成分と(a−3)成分の好ましい割合は、(a−1)成分68〜94質量%、(a−2)成分3〜29質量%、(a−3)成分3〜29質量%である。
【0028】
上層I、II及びIIIにおいては、それぞれ前記(A)樹脂成分、(X)樹脂成分及び(Y)樹脂成分50〜99質量%と、(B)成分の艶消し材1〜50質量%とからなる。各樹脂成分と(B)成分の艶消し材の割合を上記の範囲にすることで、艶消し効果に優れると共に、所望の他の物性が維持された壁装用積層樹脂シートが得られる。樹脂成分と(B)成分の艶消し材の好ましい割合は、樹脂成分60〜95質量%で、(B)成分5〜40質量%であり、より好ましくは樹脂成分65〜90質量%で、(B)成分10〜35質量%である。
【0029】
次に、下層について説明する。下層の樹脂成分は、(C)非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂である。この(C)非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、前記上層で説明した(a−3)成分が挙げられ、好ましい範囲も、前記(a−3)成分と同様である。
【0030】
上層および下層を形成するための上記樹脂組成物には、所望により、本発明の目的が損なわれない範囲で、各種添加剤を含有させることができる。含有させる添加剤としては、例えば、難燃剤、離型剤、耐候性安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、着色剤、界面活性剤、補強剤、充填剤などを挙げることができる。滑剤を含有させることにより、加工性を向上することができる。滑剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、パラフィンなどの炭化水素系滑剤、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、複合型ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸系滑剤、脂肪族アルコール系滑剤、ステアロアミド、オキシステアロアミド、オレイルアミド、エルシルアミド、リシノールアミド、ベヘンアミド、メチロールアミド、メチレンビスステアロアミド、メチレンビスステアロベヘンアミド、高級脂肪酸のビスアミド酸、ステアロアミド、複合型アミドなどの脂肪族アマイド系滑剤、ステアリン酸n−ブチル、ヒドロキシステアリン酸メチル、多価アルコール脂肪酸エステル、飽和脂肪酸エステル、エステル系ワックスなどの脂肪族エステル系滑剤、脂肪酸金属石鹸系族滑剤などを挙げることができる。これらの中で、炭化水素系及び脂肪族エステル系滑剤を好適に用いることができ、脂肪族エステル系滑剤を特に好適に用いることができる。
【0031】
前記上層と前記下層は、多層押出機を用いて押出されて積層され、本発明の壁装用積層樹脂シートが形成される。多層押出方法は、公知の手段に準じて行なえばよく、とくに制限されないが、例えば市販の押出機を2台用意し、2つの樹脂流路を有するフィードブロクにそれぞれの押出機を連結するとともに、上層および下層用の樹脂組成物を上記押出機にそれぞれ供給し、溶融した樹脂組成物をフィードブロック内で合流させて積層し、押出す方法が挙げられる。
【0032】
本発明の壁装用積層樹脂シートの厚さは、8〜30μmの範囲であることが必要である。厚さが30μmを超えると、シボ転写性が悪化する。また、8μm未満であると、発泡塩ビゾルシートとの密着性、シボ転写性および製膜加工性が悪化し、また、製膜時のフィルムの切れや穴あきが発生することもある。
さらに好ましい厚さは、10〜20μmである。
【0033】
また、本発明の壁装用積層樹脂シートにおいて、前記上層と前記下層の厚さの比は、上層:下層=9.5:0.5〜5:5である必要がある。上層の前記比が9.5より大きくなると、発泡塩ビゾルシートとの密着性および製膜加工性が悪化する。逆に、上層の前記比が5より小さくなると、シボ転写性および壁紙施工性が悪化する。
さらに好ましい前記上層と前記下層の厚さの比は、上層:下層=9:1〜6:4である。
【0034】
次に本発明の壁紙について説明する。
本発明の壁紙の第1の態様は、紙製の下地に、発泡性塩化ビニルペーストを塗布したもの、又は紙製の下地に発泡性塩化ビニルペーストを塗布し、さらにその上に印刷を施したものの表面に、本発明の壁装用積層樹脂シートを、加熱ラミネート加工により積層したものである。この場合、該壁装用積層樹脂シートの一方の面に印刷層を設けることができる。図1は、本発明の壁紙の一態様の模式的断面図である。紙製の下地1に発泡性塩化ビニルペースト2が塗布され、その表面に壁装用積層樹脂シート3が加熱ラミネート加工により積層されている。
本発明の壁紙の第2の態様は、プラスチックフィルムの一方の面に印刷層を設け、前記印刷層上に本発明の壁装用積層樹脂シートを加熱ラミネート加工により積層し、プラスチックフィルムの他方の面に粘着剤層を設けたものである。図2は、本発明の壁紙の他の態様の模式的断面図である。プラスチックフィルム4の一方の面に印刷層5が設けられ、壁装用積層樹脂シート3が加熱ラミネート加工により積層され、プラスチックフィルムの他方の面に粘着剤層6が設けられている。粘着剤層は、さらに離型紙などにより覆うことが好ましい。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により、なんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において用いた各原料は、以下の通りである。
【0036】
recPBT:ポリプラスチック社製、「ジュラネックス500LP」、ジカルボン酸成分がテレフタル酸70モル%とイソフタル酸30モル%であり、グリコール成分が1,4−ブタンジオールであるイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂。
coPBT:三菱エンジニアリングプラスチックス社製、「ノバデュール5505S」、ポリブチレンテレフタレートと、数平均分子量1000のポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルポリエーテルブロック共重合体であって、該ポリテトラメチレングリコールの含有量が10重量%のポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂。
PBT:東レ製、「トレコン1200S」、ポリブチレンテレフタレート樹脂。
【0037】
PCTG:イーストマン・ケミカル社製、「EASTAR 5445」、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール40モル%と1,4−シクロヘキサンジメタノール60モル%であるシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂。
PETG:イーストマン・ケミカル社製、「EASTAR 6763」、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール70モル%と1,4−シクロヘキサンジメタノール30モル%であるシクロヘキサンジメタノール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂。
ネオペンチルPET:東洋紡績(株)製、「SR173CA」、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール70モル%とネオペンチルグリコール30モル%であるネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂。
chPET:イーストマン・ケミカル社製、「PET 9921W」、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール92モル%と1,4−シクロヘキサンジメタノール8モル%であるシクロヘキサンジメタノール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂。
【0038】
カネエースFM−21:鐘淵化学工業製、アクリル酸ブチル重合体粒子にメタクリル酸メチルをグラフト重合させたアクリル系グラフト共重合体ゴム粒子、平均粒子径0.05〜0.3μm。
カネエースFM:鐘淵化学工業製:アクリル酸ブチル重合体粒子にメタクリル酸メチルとアクリロニトリルをグラフト重合させたアクリル系グラフト共重合体ゴム粒子、平均粒子径0.05〜0.1μm。
メタブレンSX006:三菱レイヨン社製、アクリル酸ブチル重合体とオルガノポリシロキサンとからなる複合ゴム粒子にアクリロニトリルとスチレンをグラフト重合させたアクリルシリコーン系グラフト共重合体ゴム粒子、平均粒子径0.05〜0.2μm。
メタブレンS−2001:三菱レイヨン社製、アクリル酸ブチル重合体とオルガノポリシロキサンとからなる複合ゴム粒子にメタクリル酸メチルをグラフト重合させたアクリルシリコーン系グラフト共重合体ゴム粒子、平均粒子径0.05〜0.5μm。
【0039】
カネエースB−31:鐘淵化学工業社製、MBS樹脂粒子、スチレン−ブタジエンゴム粒子に、メタクリル酸メチルとスチレンをグラフト重合したグラフト重合体粒子、平均粒子径0.05〜0.5μm。
メタブレンW300A:三菱レイヨン社製、アクリル酸ブチル重合体粒子にメタクリル酸メチルとスチレンをグラフト重合させたアクリル系グラフト共重合体ゴム粒子、平均粒子径0.05〜0.5μm。
【0040】
また、実施例及び比較例において、壁装用積層樹脂シートの特性は、下記の方法により測定した。
(1)シートの厚さ
JIS K 7130にしたがって測定する。
(2)表面光沢値
JIS K 7105に準じ、60度光沢計を用いて、表面光沢値を測定する。
(3)製膜加工性
下記の各表に示す上層用の樹脂組成物と、下層用の樹脂とを、それぞれの厚さが下記の各表に示す値となるように、多層押出機[(株)池貝製、40mm押出機(主層用)にTダイ方式のフィードブロックを装着し、サイドに30mm押出機(副層用)2台を取り付けた多層押出機]を用いて積層し、壁装用積層樹脂シートを製膜した。上層と下層の厚さの比は各表に示すように調整した。
温度条件は、主層用シリンダー温度220〜240℃、副層用シリンダー温度220〜240℃、フィードブロック温度240℃とし、製膜速度は25m/minとした。
上記多層押出機のダイスから出た溶融樹脂は、ゴムロールと金属ロールに挟まれ冷却されるが、その際に、ゴムロールの引っ張りとダイスから出た樹脂の溶融張力等の関係で長さ方向に厚さムラ(サージング)が生ずることがある。長さ500mmについて厚さムラを測定し、下記の基準により判定する。
○:厚さムラが、4μm未満(良好)
△:厚さムラが、4μm以上6μm未満(やや不良)
×:厚さムラが、6μm以上(不良)
(4)製膜時のフィルム切れ
上記(3)の条件にて壁装用積層樹脂シートを製膜し、巾30cmにスリットして巻き取った。巻き取り機のターレット旋回時のフィルムの切れやすさを下記の基準にて評価した。
○:ターレット旋回時にフィルムが全く切れない。
△:ターレット旋回時にわずかにフィルムの切れがある。
×:ターレット旋回時にフィルムの切れが大きい。
(5)製膜時のフィルムの穴あき
上記製膜時のフィルムの穴あきを下記の基準にて評価した。
○:フィルムの穴あきが全くない。
△:フィルムの穴あきがわずかにある。
×:フィルムの穴あきが大きい。
(6)発泡塩ビゾルシートとの密着性
2mm厚の発泡塩ビゾルシートと本発明の壁装用積層樹脂シートを、発泡塩ビゾルシートと下層とが接するように配置し、熱傾斜試験機(東洋精機(株)製、 HG−100TYPE)でプレス圧5kg/cm2、プレス時間5秒の条件下で、温度120℃で熱プレスしたものを剥離させることにより評価した。評価基準を以下に示す。
○: 材破になり、完全に密着している。
△: 一部に剥離が見られ、部分的に密着している。
×: 完全に剥離し、密着していない。
(7)シボ転写性
ダブリング装置[(株)川上鉄鋼所]において、温度150℃の加熱ドラムと冷却ドラムの中間に、温度80℃の金属製彫刻ロールと半硬質ゴムで被覆した圧ロールからなるエンボスロールを設置する。上記(3)で得られた壁装用積層樹脂シートを上地として、下地150μm厚の塩ビゾルシートとの皮シボ模様のエンボス加工をエンボス圧力0.3kg、ライン速度5m/minの条件で行う。エンボス加工によって得られた積層樹脂シートについて、エンボス転写性を目視により観察し、下記の基準により判定する。
○:エンボスの転写が良好である。
△:エンボスの転写性が十分ではない。
×:エンボスの転写性が悪い。
(8)耐候性
サンシャインウェザーメーター[スガ試験機(株)、型名:S−300]において、放電電圧50V、放電電流60A、ブラックパネル温度63℃、槽内湿度50%、1サイクル時間120min(降雨時間18min)の条件で36時間照射を行い、更に40℃×95%RHの恒温恒湿槽に7日間放置後、黄変を目視で下記の基準にて評価する。
○:黄変していない
×:著しく黄変している。
(9)壁紙施工性
プラスチック製スキージを用いて、裏面に粘着加工を施した壁紙を貼り付ける際の施工性を評価する。(3)で得られた積層樹脂シートが軟らかいと巻きぐせがあっても元に戻り施工性が良好であるが、(3)で得られた積層樹脂シートが硬いと巻きぐせが元に戻りにくく、施工性が劣る。
評価基準を以下に示す。
○:良好な壁紙施工性を有する。
△:やや壁紙施工性に劣る。
×:壁紙施工性に劣る。
【0041】
実施例1
下記表1に示す配合割合(質量部)において、各成分をドライブレンドし、上層用の樹脂組成物を調製した。また、下層としてPETGを用いた。この条件下、上記の「(3)製膜加工性」の項目に記載したように壁装用積層樹脂シートを製膜し、上記各評価を行なった。結果を表1に示す。
【0042】
実施例2〜10
上層用の樹脂組成物の配合組成および下層用の樹脂を、表1および2に示すように変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表1および2に示す。
【0043】
実施例11〜16
上層と下層の厚さを表2および3に示すように変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表2および3に示す。
【0044】
比較例1〜7
上層用の樹脂組成物の配合組成および下層用の樹脂を、表4および5に示すように変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表4および5に示す。
【0045】
比較例8〜11
上層と下層の厚さを表5に示すように変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表5に示す。
【0046】
比較例12〜14
上層用の樹脂組成物の配合組成を、表6に示すように変更し、かつ下層を形成しなかったこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表6に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
表1〜6に示す結果から、以下の事項が導き出される。
・実施例1は、本発明で規定する要件、すなわち、(1)ポリエステル系樹脂からなる上層および下層の層を有すること;(2)上層および下層の合計の厚さが特定範囲にあること;(3)上層および下層の厚さの割合が特定範囲にあること;(4)上層が特定の樹脂成分を有すること;(5)下層が非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂であること;および(6)上層および下層が多層押出機を用いて押出されて積層されていること;をすべて満たしているので、発泡塩ビゾルシートとの密着性が良好で、シボ転写性、製膜加工性、壁紙施工性に優れ、また、製膜時のフィルムの切れ、穴あきがなく、表面光沢値および耐候性にも優れる壁装用積層樹脂シートを提供することができた。
・実施例2は、PETGをPCTGにした例で、実施例1と同様の性能を示した。
・実施例3は、recPBTを20質量部、PCTGを60質量部添加した例で、実施例1と同様の性能を示した。
・実施例4は、PETG 25質量部を、PCTG 15質量部、PETG 10質量部にした例で、実施例1と同様の性能を示した。
・実施例5は、カネエースFM21を20質量部添加した例で、実施例1と同様の性能を示した。
・実施例6は、カネエースFM 10質量部、メタブレンS−2001 10質量部を添加した例で、実施例1と同様の性能を示した。
・実施例7は、recPBTをcoPBTにした例で、製膜加工性、シボ転写性が△評価になった。その他の性能は実施例1と同様であった。
・実施例8は、recPBTをPBTにした例で、製膜加工性、シボ転写性が△評価になった。その他の性能は実施例1と同様であった。
・実施例9は、下層のPETGをネオペンチルPETにした例で、製膜加工性、発泡塩ビゾルシートとの密着性が△評価になった。その他の性能は実施例1と同様であった。
・実施例10は、下層のPETGをchPETにした例で、製膜加工性、発泡塩ビゾルシートとの密着性が△評価になった。その他の性能は実施例1と同様であった。
・実施例11は、上層の厚さを14μm、下層の厚さを1μm、上層/下層=9.3/0.7にした例で、製膜加工性、発泡塩ビゾルシートとの密着性が△評価になった。その他の性能は実施例1と同様であった。
・実施例12は、上層の厚さを10μm、下層の厚さを5μm、上層/下層=6.7/3.3にした例で、実施例1と同様の性能を示した。
・実施例13は、上層の厚さを8μm、下層の厚さを7μm、上層/下層=5.3/4.7にした例で、シボ転写性、壁紙施工性が△評価になった。その他の性能は実施例1と同様であった。
・実施例14は、上層の厚さを8μm、下層の厚さを2μm、上層/下層=8/2にした例で、製膜加工性、製膜時のフィルムの切れ、製膜時のフィルムの穴あきが△評価になった。その他の性能は実施例1と同様であった。
・実施例15は、上層の厚さを16μm、下層の厚さを4μm、上層/下層=8/2にした例で、実施例1と同様の性能を示した。
・実施例16は、上層の厚さを22μm、下層の厚さを6μm、上層/下層=7.9/2.1にした例で、シボ転写性が△評価になった。その他の性能は実施例1と同様であった。
【0054】
・比較例1は、PETG 80質量部、カネエースB−31 20質量部を添加した例で、本発明の範囲外であるため、製膜時のフィルムの切れ、耐候性が×評価、製膜加工性、シボ転写性が△評価になった。
・比較例2は、PETG 80質量部、メタブレンW−300A 20質量部を添加した例で、本発明の範囲外であるため、製膜加工性、製膜時のフィルムの切れ、製膜時のフィルムの穴あきが×評価、シボ転写性、壁紙施工性が△評価になった。
・比較例3は、PBT 20質量部、PETG 60質量部、カネエースFM 20質量部を添加した例で、本発明の範囲外であるため、製膜加工性、製膜時のフィルムの切れが×評価、シボ転写性、壁紙施工性が△評価になった。
・比較例4は、PCTG 80質量部、カネエースB−31 20質量部を添加した例で、本発明の範囲外であるため、耐候性が×評価、製膜加工性、シボ転写性、壁紙施工性が△評価になった。
・比較例5は、PCTG 80質量部、メタブレンW300−A 20質量部を添加した例で、本発明の範囲外であるため、製膜時のフィルムの切れ、製膜時のフィルムの穴あきが×評価、製膜加工性、シボ転写性、壁紙施工性が△評価になった。
・比較例6は、下層のPETGをrecPBTにした例で、本発明の範囲外であるため、製膜加工性、発泡塩ビゾルシートとの密着性が×評価になった。
・比較例7は、下層のPETGをPBTにした例で、本発明の範囲外であるため、製膜加工性、発泡塩ビゾルシートとの密着性が×評価になった。
・比較例8は、上層の厚さを14.5μm、下層の厚さを0.5μm、上層/下層=9.7/0.3にした例で、本発明の範囲外であるため、製膜加工性、発泡塩ビゾルシートとの密着性が×評価になった。
・比較例9は、上層の厚さを6μm、下層の厚さを9μm、上層/下層=4/6にした例で、本発明の範囲外であるため、シボ転写性、壁紙施工性が×評価になった。
・比較例10は、上層の厚さを5μm、下層の厚さを1μm、上層/下層=8.3/1.7にした例で、本発明の範囲外であるため、製膜加工性、製膜時のフィルムの切れ、発泡塩ビゾルシートとの密着性、シボ転写性が×評価、製膜時のフィルムの穴あきが△評価になった。
・比較例11は、上層の厚さを26μm、下層の厚さを7μm、上層/下層=7.9/2.1にした例で、本発明の範囲外であるため、シボ転写性が×評価になった。
・比較例12は、recPBT 55質量部、PETG 25質量部、カネエースFM−21 10質量部、メタブレンSX006 10質量部を添加した厚さ15μmの単層樹脂シートの例で、本発明の範囲外であるため、発泡塩ビゾルシートとの密着性が×評価になった。
・比較例13は、recPBT 55質量部、PCTG 25質量部、カネエースFM−21 10質量部、メタブレンSX006 10質量部を添加した厚さ15μmの単層樹脂シートの例で、本発明の範囲外であるため、発泡塩ビゾルシートとの密着性が×評価になった。
・比較例14は、recPBT 20質量部、PCTG 60質量部、カネエースFM−21 20質量部を添加した厚さ20μmの単層樹脂シートの例で、本発明の範囲外であるため、発泡塩ビゾルシートとの密着性が×評価、シボ転写性が△評価になった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の壁装用積層樹脂シートは、発泡塩ビゾルシートとの密着性が良好で、シボ転写性、製膜加工性、壁紙施工性に優れるものであるため、艶消し壁紙としてとくに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の壁紙の一態様の模式的断面図である。
【図2】本発明の壁紙の他の態様の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 紙製の下地
2 発泡性塩化ビニルペースト
3 壁装用積層樹脂シート
4 プラスチックフィルム
5 印刷層
6 粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂の上層とポリエステル系樹脂の下層が積層されてなる壁装用積層樹脂シートであって、
前記積層樹脂シートの厚さが、8〜30μmであり、
前記上層の樹脂成分が、下記(A)50〜99質量%および下記(B)1〜50質量%からなり、
前記下層の樹脂成分が、(C)非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂であり、前記上層と前記下層が多層押出機を用いて押出されて積層され、かつ前記上層と前記下層の厚さの比が、上層:下層=9.5:0.5〜5:5であることを特徴とする壁装用積層樹脂シート。
(A):(a−1)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び/又は(a−2)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール10モル%以上60モル%未満と1,4−シクロヘキサンジメタノール40モル%以上90モル%未満であるシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂。
(B):(b−1)アクリル系ゴム粒子に、(メタ)アクリル酸エステル、又は、(メタ)アクリル酸エステルとシアン化ビニル系化合物をグラフト重合して得られるアクリル系グラフト共重合体ゴム粒子、及び/又は、(b−2)アクリル系樹脂とオルガノポリシロキサンとからなる複合ゴム粒子にシアン化ビニル系化合物と芳香族ビニル系化合物、又は、(メタ)アクリル酸エステルがグラフト重合して得られるアクリルシリコーン系グラフト共重合体ゴム粒子。
【請求項2】
ポリエステル系樹脂の上層とポリエステル系樹脂の下層が積層されてなる壁装用積層樹脂シートであって、
前記積層樹脂シートの厚さが、8〜30μmであり、
前記上層の樹脂成分が、下記(X)50〜99質量%および下記(B)1〜50質量%からなり、
前記下層の樹脂成分が、(C)非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂であり、前記上層と前記下層が多層押出機を用いて押出されて積層され、かつ前記上層と前記下層の厚さの比が、上層:下層=9.5:0.5〜5:5であることを特徴とする壁装用積層樹脂シート。
(X):(a−1)ポリブチレンテレフタレート系樹脂61〜99質量%及び(a−3)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール60モル%以上90モル%未満と1,4−シクロヘキサンジメタノール10モル%以上40モル%未満であるシクロヘキサンジメタノール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂1〜39質量%からなる樹脂。
(B):(b−1)アクリル系ゴム粒子に、(メタ)アクリル酸エステル、又は、(メタ)アクリル酸エステルとシアン化ビニル系化合物をグラフト重合して得られるアクリル系グラフト共重合体ゴム粒子、及び/又は、(b−2)アクリル系樹脂とオルガノポリシロキサンとからなる複合ゴム粒子にシアン化ビニル系化合物と芳香族ビニル系化合物、又は、(メタ)アクリル酸エステルがグラフト重合して得られるアクリルシリコーン系グラフト共重合体ゴム粒子。
【請求項3】
ポリエステル系樹脂の上層とポリエステル系樹脂の下層が積層されてなる壁装用積層樹脂シートであって、
前記積層樹脂シートの厚さが、8〜30μmであり、
前記上層の樹脂成分が、下記(Y)50〜99質量%および下記(B)1〜50質量%からなり、
前記下層の樹脂成分が、(C)非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂であり、前記上層と前記下層が多層押出機を用いて押出されて積層され、かつ前記上層と前記下層の厚さの比が、上層:下層=9.5:0.5〜5:5であることを特徴とする壁装用積層樹脂シート。
(Y):(a−1)ポリブチレンテレフタレート系樹脂61〜98質量%、(a−2)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール10モル%以上60モル%未満と1,4−シクロヘキサンジメタノール40モル%以上90モル%未満であるシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂1〜38質量%及び(a−3)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール60モル%以上90モル%未満と1,4−シクロヘキサンジメタノール10モル%以上40モル%未満であるシクロヘキサンジメタノール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂1〜38質量%からなる樹脂(ただし、前記(a−1)、(a−2)および(a−3)の合計は100質量%である)。
(B):(b−1)アクリル系ゴム粒子に、(メタ)アクリル酸エステル、又は、(メタ)アクリル酸エステルとシアン化ビニル系化合物をグラフト重合して得られるアクリル系グラフト共重合体ゴム粒子、及び/又は、(b−2)アクリル系樹脂とオルガノポリシロキサンとからなる複合ゴム粒子にシアン化ビニル系化合物と芳香族ビニル系化合物、又は、(メタ)アクリル酸エステルがグラフト重合して得られるアクリルシリコーン系グラフト共重合体ゴム粒子。
【請求項4】
前記(a−1)ポリブチレンテレフタレート系樹脂が、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の壁装用積層樹脂シート。
【請求項5】
(C)非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂が、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール60モル%以上90モル%未満と1,4−シクロヘキサンジメタノール10モル%以上40モル%未満であるシクロヘキサンジメタノール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の壁装用積層樹脂シート。
【請求項6】
紙製の下地に発泡性塩化ビニルペーストを塗布したもの、又は紙製の下地に発泡性塩化ビニルペーストを塗布し、さらにその上に印刷を施したものの表面に請求項1〜5のいずれかに記載の壁装用積層樹脂シートを、加熱ラミネート加工により積層してなることを特徴とする壁紙。
【請求項7】
プラスチックフィルムの一方の面に印刷層を設け、前記印刷層上に請求項1〜5のいずれかに記載の壁装用積層樹脂シートを加熱ラミネート加工により積層し、前記プラスチックフィルムの他方の面に粘着剤層を設けてなることを特徴とする壁紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−106597(P2010−106597A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280848(P2008−280848)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000250384)リケンテクノス株式会社 (236)
【Fターム(参考)】