説明

壁面緑化用の支柱及びこの支柱を用いた壁面緑化用ラック装置

【課題】建造物の上下方向に広がる外壁又は内壁を植栽化するときに人工土壌や、そこから成長する植物の重量に対して十分に支持できる程に堅固で、かつ耐震上も安全な壁面緑化用ラック装置を提供する。
【解決手段】人工土壌を収納するボックス17が、建造物Bの外壁面Wに沿って上下方向Yに延びるトラス構造の支柱11と横方向Xに所定の間隔をあけて設置される複数の桟部材15とで画成された空間部16に配置されて支持されている。各支柱11は、上下方向から見たときに三角形の各頂点に端面が位置する3本の棒材12a〜12cと、これら各棒材を連結する2本の連結材13,14とから構成され、各連結材13,14は、上下方向にジグザグ状に延び、外壁面側の屈曲部13b,14bが、外壁面Wと並行する方向へ屈曲されて該外壁面に対する脚部とされ、この脚部の複数が外壁面Wに固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面緑化用の支柱及びこの支柱を用いた壁面緑化用ラック装置に関し、さらに詳細には建造物等において上下方向に広がる外壁又は内壁を植栽化するときに植物を保持する壁面緑化用の支柱及びこの支柱を用いた壁面緑化用ラック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンクリート製のビルディングやマンション等の建造物において、屋上緑化などが進められていることは既によく知られている。屋上緑化は単に景観上の問題だけではなく、断熱作用や二酸化炭素吸収作用もあることから温暖化防止の一手段としても期待されている。そのため、屋上を緑化するだけではなく、建造物の外壁面も緑化すれば、なお温暖化防止に効果が上がると考えられている。しかし、屋上のような水平面を緑化する場合と比較してほぼ垂直な外壁面、或いは急傾斜の外壁面を緑化することは非常に難しく、そのため、後述する特許文献1に開示された技術をはじめとして、建造物の外壁面のような上下方向に広がる壁面を植栽化する種々の技術が開発されている。
【0003】
特許文献1には、建物の壁や橋脚の表面、或いは擁壁等のような垂直面を植栽する技術が開示されている。この特許文献1に開示された技術は、建造物を建築する際などに仮設される足場等で使用されているパイプ材を格子状に組み立て支持枠本体とするものである。すなわち、鋼管パイプ材を格子状に組み立て、これを建物の外壁面に沿って設置し、この支持枠本体を形成している縦方向及び横方向のパイプ材で区画される格子状空間部に、針金のような線材で格子状に形成した籠状のパネル枠を配置し、このパネル枠内に人工土壌のような植生基材を充填した袋状マット材を収納し、パネル枠の格子状開口から袋状マット材の一部を切り裂いてポット苗を植生基材内に挿入することにより壁面の緑化を図るものである。
【特許文献1】特開2004−254559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鋼管パイプ材で格子状に組み立てられた支持枠本体における多数の格子状空間部に人工土壌を収納した籠状のパネル枠を配置して該支持枠本体に連結した場合、パネル枠の総重量は相当大きく、さらに、各パネル枠内の人工土壌に埋め込まれたポット苗が生長して支持枠本体の前面を覆うようにもなれば、さらにその重量は増す。そのため、このようなパネル枠を格子状に組み立てた鋼管パイプ材で支持することは、実際には無理がある。特に、壁面への植栽が建物の2階の高さ程度までであれば、問題はないが、それ以上の高さになると、耐震上も大きな問題がある。しかも、特許文献1に開示された技術では、該特許文献1における図17に支持枠本体を建物の外壁面に接続する道具が簡単に図示されているだけで、「発明の詳細な説明」の欄では一切説明されてはいない。
【0005】
本発明の目的は、かかる従来の問題点を解決するためになされたもので、建造物の上下方向に広がる外壁又は内壁を植栽化するときに人工土壌や、そこから成長する植物の重量に対して十分に支持できる程に堅固で、かつ耐震上も安全な壁面緑化用の支柱及びこの支柱を用いた壁面緑化用ラック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建造物の上下方向に広がる壁面に設置して該壁面を植栽化する際に使用する壁面緑化用の支柱であり、その特徴とするところは、前記支柱が、前記建造物の前記壁面に沿って前記上下方向に延び、かつ前記上下方向から見たときに三角形の各頂点に端面が位置するように配置された3本の第1,第2及び第3の棒材と、これら各棒材を連結する2本の連結材とから構成され、2本の前記第2,第3の棒材が、前記第1の棒材の両側方に位置すると共に前記第1の棒材より前記壁面側に配置され、2本の前記連結材が、並行な2つの仮想直線上にそれぞれ位置する多数の第1屈曲部と、第2屈曲部と、これら第1及び第2屈曲部の間に形成された中間直線部とを備えるように前記上下方向にジグザグ状に延び、前記各第1屈曲部が、前記第1の棒材の横方向両側に当接した状態で結合されると共に前記各中間直線部が、前記第2の棒材及び前記第3の棒材にそれぞれ結合され、多数の前記第2屈曲部が、前記壁面と並行する方向へ曲げられ、この前記第2屈曲部の少なくとも複数が前記壁面に固定されていることである。
【0007】
また、本発明は、建造物の上下方向に広がる壁面に設置して該壁面を植栽化する際に使用する壁面緑化用ラック装置であり、その特徴とするところは、前記建造物の前記壁面に沿って前記上下方向に延び、かつ前記上下方向に直交する横方向に所定の間隔をあけて設置されるトラス構造をした複数の支柱と、これら支柱間に渡されて支持され、かつ前記上下方向に所定の間隔をあけて配置された複数の桟部材と、隣接する上下の前記桟部材と該桟部材を支持すべく隣接する横方向の前記支柱とで囲まれる空間部に収められたボックスとを含み、前記ボックスは、前記壁面に対面する方向とは反対側に開口部を有する少なくとも1つの収納室を備え、この収納室内には土壌部材が配置され、前記支柱は、前記上下方向から見たときに三角形の各頂点に端面が位置するように配置された3本の第1,第2及び第3の棒材と、これら各棒材を連結する2本の連結材とから構成され、2本の前記第2,第3の棒材が、前記第1の棒材の両側方に位置すると共に前記第1の棒材より前記壁面側に配置され、2本の前記連結材が、並行な2つの仮想直線上にそれぞれ位置する多数の第1屈曲部と、第2屈曲部と、これら第1及び第2屈曲部の間に形成された中間直線部とを備えるように前記上下方向にジグザグ状に延び、前記各第1屈曲部が、前記第1の棒材の横方向両側に当接した状態で結合されると共に前記各中間直線部が、前記第2の棒材及び前記第3の棒材にそれぞれ結合され、多数の前記第2屈曲部が、前記壁面と並行する方向へ曲げられ、この前記第2屈曲部の少なくとも複数が前記壁面に固定されていることにある。
【0008】
本発明の壁面緑化用ラック装置に係る実施形態の一例としては、1つの前記ボックスを支持すべく上下方向に間隔をあけて配置された複数の前記桟部材のそれぞれが、少なくとも1本の支持棒から形成され、前記各支持棒のそれぞれの端部が、前記支柱を構成する前記第1,第2,及び第3の棒材のいずれかに接合され、前記ボックスが、その上下に配置された前記支持棒と該支持棒の両端を支持する前記支柱とにより画成された前記空間部に収められ、上下に間隔をあけて配置された前記支持棒が、前記ボックスを上下方向から挟んで支持していることである。
【0009】
本発明の壁面緑化用ラック装置に係る実施形態の他の例としては、1つの前記ボックスを支持すべく上下方向に間隔をあけて配置された複数の前記桟部材のそれぞれが、端部側から見たとき、仮想の三角形の各頂点に端面が位置するように配置された並行な3本の棒材と、これら棒材のうち少なくとも1本の棒材に他の2本の棒材を連結する連結材とからなるトラス構造で構成され、このトラス構造の前記桟部材が、前記支柱の前記第1の棒材と前記第2,第3の棒材との間を通って前記支柱を横断する横方向に延びていることである。
【0010】
なお、本発明の壁面緑化用ラック装置において、前記支柱及び前記桟部材を構成する前記各棒材や前記連結材は、鉄筋により構成され、前記各棒材と前記連結材が溶接により結合されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明における壁面緑化用の支柱によれば、上下方向に広がる壁面に沿って配置される支柱がトラス構造であり、しかも第1の棒材と第2の棒材とを連結する連結材、及び第1の棒材と第2の棒材とを連結する連結材のそれぞれが各棒材の延長方向にジグザク状に屈曲していると共に、壁側に位置する第2屈曲部を壁面に沿って曲げ、取付け用の脚部としている。これにより、これら多数の脚部を壁面に当接させ、更に、複数の脚部をアンカーボルトなどで壁面に固定することにより、各支柱が建造物の壁面に非常に堅固に固定される。その結果、かかる支柱を横方向に間隔をあけて複数設置し、隣接する支柱間に桟部材を渡して、人工土壌及びこの人工土壌を収納するボックスを取り付けるとき、これら桟部材やボックスを強固かつ安全に支持することができる。さらに、この支柱は、建造物の床(スラブ)を形成する際に使用するトラス構造の鉄筋ユニットをそのまま用いることができることから、この支柱を製作するのに特別な機械や装置を製造する必要もなく、従って安価に入手することができるので、壁面緑化用の支柱を製造するに際して高い経済性を得ることができる。
【0012】
また、上述したトラス構造の支柱を用いた壁面緑化用ラック装置によれば、支柱がトラス構造で形成され、しかもジグザグ状に形成された連結材の第2屈曲部を壁に沿ってさらに屈曲し、それを取り付け用の脚部として壁面に当接していることから支柱が壁面に一体に支持され、その結果、隣接する支柱間に渡した桟部材でボックスを十分に支持することができ、全体の構造を簡素化することができる。
【0013】
さらに、本発明の壁面緑化用ラック装置によれば、桟部材を支柱と同様にトラス構造で形成した場合、ボックスの重量が大きい場合でも堅固にこれを支持することができる。
【0014】
さらに、本発明の壁面緑化用ラック装置によれば、壁面に取り付ける支柱が、建造物の床(スラブ)を形成する際に使用するトラス構造の鉄筋ユニットをそのまま用いることができることから、この支柱を製作するのに特別な機械や装置を製造する必要もなく、従って安価に入手することができるので、壁面緑化用ラック装置の製造に際して高い経済性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る壁面緑化用の支柱及びこの支柱を用いた壁面緑化用ラック装置を図に示される実施形態について更に詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る壁面緑化用ラック装置(以下、ラック装置、と称する)を概略的に示す部分的な正面図、図2は、図1に示されたラック装置に使用する1つの支柱の一部をその長さ方向に直交する横方向から見た側面図、図3は、図1に示されたラック装置に使用する1つの支柱をその長さ方向の上端部から見た上面図である。図1では、建造物Bの外壁面Wにこの実施形態に係るラック装置10Aを設置する場合について示すもので、建造物Bの高さ方向(上下方向)を矢印Y、建造物Bの上下方向に広がる外壁面Wの横方向を矢印Xで示す。また、図1で見て、建造物Bの外壁面Wから離れる方向を「前方」と称し、その逆方向、即ち外壁面Wに向かう方向を「後方」と称する。なお、図1に示されるラック装置10Aでは、本発明を理解し易くするために実際のものに比べて支柱11の間隔を極端に小さくして描かれている。
【0016】
この実施形態に係るラック装置10Aは、建造物Bの外壁面Wに沿って上下方向Yに延びるように立てられた複数の支柱11を備えている。これらの支柱11は、すべて同じ構成であるので、その1つについて構造を説明する。支柱11は、トラス構造体として形成されている。すなわち、支柱11は、金属製の3本の棒材12a,12b,12cと、やはり金属製の連結材13,14とから構成されている。具体的には、3本の棒材、即ち第1の棒材12a、第2の棒材12b、及び第3の棒材12cとは、相互に間隔をあけて並行に、かつこれらの棒材12a,12b,12cをその端部側から見た(図3を参照)とき仮想の三角形の各頂点に位置するように配置され、第1の棒材12aは、建造物Kの外壁面Wから前方へ所定寸法離間して上下方向Yへ直線的に延び、第2,第3の棒材12b,12cは、第1の棒材12aより後方側、即ち外壁面W側で、かつ第1の棒材12aの横方向両側に位置し、かつ外壁面Wから前方へ所定寸法離間して上下方向Yに直線的に延びている。
【0017】
2本の連結材13,14は、建造物Bの外壁面Wと第1の棒材12aとの間に位置し、それらの間でジグザグ状に屈曲を繰り返して上下方向Yへ延び、従って、前方側と後方側とにそれぞれ第1屈曲部13a,14a及び第2屈曲部13b,14bと、これら第1屈曲部13a,14aと第2屈曲部13b,14bとの間の中間直線部13c,14cとを形成している。このような2本の連結材13,14は、第1の棒材12aを挟んでその両側部に対称に配置され、かつ図1に示されるように第1屈曲部13a,14aから第2屈曲部13b,14bに向かって横方向へ末広がりを呈するように建造物Kの外壁面Wに対して所定角度で傾斜している。各連結材13,14の第1屈曲部13a,14aは、第1の棒材12aの横方向両側に当接した状態で、第1の棒材12aにスポット溶接されている。第2屈曲部13b,14bは、外壁面Wと並行するように、横方向外方へ折り曲げられている。各連結材13,14の中間直線部13c,14cには第2,第3の棒材12b,12cが接触し、連結材13の中間直線部13cのうちの第2の棒材12bと交差する部分が第2の棒材12bにスポット溶接され、また、連結材14の中間直線部14cのうちの第3の棒材12cと交差する部分が第3の棒材12cにスポット溶接されている。
【0018】
外壁面Wに沿って曲げられた各連結材13,14の第2屈曲部13b,14bは、建造物Bの外壁面Wに当接する脚部として作用する。すなわち、第2屈曲部13b,14bが外壁面Wに沿う横方向に曲げられていることにより、外壁面Wに対して点接触ではなく面接触となるため、支柱11が外壁面Wに安定的に密着することになる。また、第2屈曲部13b,14bの幾つかは、押さえ金具とアンカーボルトなどを用いて外壁面Wに固定される。幾つの第2屈曲部13b,14bを外壁面Wに固定するかは、このラック装置10Aの大きさや後述するボックスの重量によって決定される。このようにして建造物Bの外壁面Wに固定された複数の支柱11間には、上下方向Yに所定の間隔をあけて複数の桟部材15が渡され、各支柱11によって支持されている。これにより、上下方向Yに所定の間隔をあけて配置された隣接する2つの桟部材15と該桟部材15を支持すべく横方向Xに所定の間隔をあけて配置された隣接する2つの支柱11とで画成される多数の空間部16が形成され、これら各空間部16には、ボックス17が配置されている。
【0019】
この実施形態における各桟部材15は、金属製の2本の棒材15a,15bから構成されている。そのうちの1本の棒材15aについてそれが支柱11を横断する部分では、図2に示されるように支柱11を構成する第1の棒材12aの後方側を通り、かつ2つの連結材13,14における前方へ下り傾斜している直線中間部13c,14c上に乗るように通過している。言い換えれば、棒材15aは、第1の棒材12aと連結材13,14の各中間直線部13c,14cとが集合する箇所の上部に挟み込まれるように通過している。棒材15aは、前後方向への移動は完全に阻止されているが、必要ならばこれら3本の棒材との接触部を溶接して固定されている。他方、他の1本の棒材15bは、棒材15aと同じ水平面内に位置するように、言い換えれば棒材15aの後方側であって外壁面Wと第2,第3の棒材12b,12cとの間を通り、さらに、該第2,第3の棒材12b,12cと接触し、これら接触部が溶接されて固定されている。このように1本の棒材15aは、外壁面Wより前方側を横方向Xに延び、他の1本の棒材15bは、棒材15aより後方側を外壁面W側に近接して横方向Xに延びることにより水平棚を形成している。
【0020】
支柱11と桟部材15とで囲まれる格子状の空間部16に収められるボックス17は、相対向しかつ並行な上壁17a及び底壁17bと、相対向する2つの側壁17cと、建造物Kの外壁面Wに近接する後方側に配置された後壁17dとから形成され、後壁より前方方向は大気に開放する開口部とされている。このボックス17内には、上壁17aと底壁17bとに並行する第1の仕切り壁18aと、この第1の仕切り壁18aに直交する第2の仕切り壁18bとが後壁17dから立ち上がるように形成され、これによりボックス17内には4つの収納室19が形成されている。これら4つの収納室19すべての前面は、前方に開放した開口部20を備えている。このボックス17における各収納室19には、人工土壌(図示せず)が配置されている。人工土壌としては、例えば、パーライトと有機物とを混合させたものなどが既に良く知られており、その他にも種々の人工培土を使用することができる。これらの人工土壌は、樹脂製の網材で覆い、さらにこれを収納室19に入れた後にボックス17の各収納室19の開口部20を比較的に目の粗いネット(図示せず)で覆うことが好ましい。
【0021】
ボックス17の底壁17bは、空間部16を画成する前後2本の棒材15a,15bで形成された桟部材(水平棚)15に乗り、また上壁17aの上面は、上部の空間部16に配置されたボックス17の底壁17bを支持する前後2本の棒材15a,15bで形成された桟部材(水平棚)15が接触して該ボックス17を押さえている。しかし、このままであるとボックス17が、空間部16から前方に抜け出ることも考えられるので、ボックス17の上壁17a及び底壁17bを適当な留め金で水平棚を構成する各棒材15a,15bに連結して固定することが好ましい。また、ボックス17は、木製で形成することができるが、建造物Kの外側に設置されることから風雨にさらされて朽ちると、破片が落下する危険もあるので、耐候性や耐水性に優れた樹脂材で形成されることが好ましい。
【0022】
ボックス17の各収容室19に収められた人工土壌には、収容室19の開口部20側に面している部分に植物の種や、発芽した苗などが植えられている。なお、ボックス17における各収容室19内の人工土壌に定期的に水を供給するための給水手段を設けることも好ましい。この給水手段の一例を説明すると、図1に示されるように、建造物Bの屋上などに設置された給水源(図示せず)に接続された給水管21を各支柱11内に通し、各ボックス17における上壁17aの内面側に配置した散水管22に接続することにより構成することができる。各ボックス17における上壁17aの内面に沿って配管された散水管22には、多数の孔が形成されていて、これらの孔から水が流れ落ち、散水管22の下に位置する人工土壌に給水する。ボックス17内を上下に仕切る第1の仕切り板18aには多数の貫通孔が形成されていて、上段の収容室19内で散水された水の一部、及び人工土壌から染み出た水は第1の仕切り板18aの各貫通孔を通って下段の収容室19内に流れ落ち、該収容室19内の人工土壌に給水される。ボックス17の各収容室19内に配置した人工土壌に給水する手段については、前述した給水手段の他に、種々の給水手段を採用することができる。
【0023】
前述した実施形態のラック装置10Aでは、ボックス17を支持する桟部材15が2本の棒材15a,15bによって構成されていたが、この桟部材15を、支柱11と同様なトラス構造で構成することができる。図4は、本発明の他の実施形態に係る壁面緑化用ラック装置10Bを示す図1と同様な正面図、図5は、壁面緑化用ラック装置10Bを示す図2と同様な側面図である。図4及び図5では、壁面緑化用ラック装置10Bを構成しているトラス構造の桟部材が符号25で示されている。この桟部材25は、これを端部側から見たとき、仮想の三角形の各頂点に端面が位置するように配置された並行な3本の棒材26a,26b,26cと、これら棒材のうち1本の棒材26aに他の2本の棒材26b,26cを連結する連結材27,28とから構成されている。このトラス構造の桟部材25は、支柱11を構成している第1の棒材12aと第2,第3の棒材12b,12cとの間を通って支柱11を横断する横方向に延びている。これら各棒材26a,26b,26cと連結材27,28は、支柱11と同様に鉄筋で形成されている。
【0024】
具体的には、トラス構造の桟部材25は、これを構成する3本の棒材26a,26b,26cのうち2本の棒材26b,26cが外壁面Wに沿って上下方向に並ぶように配置され、他の1本の棒材26aが、棒材26b,26cよりも前方に位置するように配置されている。また、連結材27は、棒材26aと棒材26bとの間に位置し、また、連結材28は、棒材26aと棒材26cとの間に位置し、これら各連結材27,28は、それぞれ2本の棒材の間でジグザグ状に屈曲を繰り返して棒材26a,26b,26cの長手方向、即ち横方向Xへ延びている。従って、各連結材27,28は、それぞれ第1屈曲部27a,28aと、第2屈曲部27b,28bとを形成している。このような2本の連結材27,28は、棒材26aを挟んでその両側部に対称に配置され、かつ図4に示されるように第1屈曲部27a,28aから第2屈曲部27b,28bに向かって横方向へ末広がりを呈するように建造物Bの外壁面Wに対して所定角度で傾斜している。各連結材27,28の第1屈曲部27a,28aは、棒材26aの横方向両側に当接した状態で、該棒材26aにスポット溶接されている。また、連結材27の第2屈曲部27bは、棒材26bの横方向両側に当接した状態で、該棒材26bにスポット溶接され、連結材28の第2屈曲部28bは、棒材26cの横方向両側に当接した状態で、該棒材26cにスポット溶接されている。従って、トラス構造の桟部材25は、トラス構造の支柱11のような脚部は存在していない。
【0025】
前述した実施形態のようにトラス構造の桟部材25を用いると、上下に間隔をあけて配置された2つの桟部材25とこれら桟部材を支持すべく横方向に所定の間隔をあけて配置された2つの支柱11とで囲まれる空間部16には、図1〜図3に示された実施形態のラック装置10Aと同様な前方開放のボックス17が収められる。空間部16に配置されたボックス17は、その周囲壁面と、該周囲壁面に接触する支柱11及び桟部材25の構成部材とを公知の留め具(図示せず)で連結することにより堅固に固定される。
【0026】
図4及び図5に示される実施形態のラック装置10Bでは、上下に間隔をあけて配置された2つの桟部材25とこれら桟部材を支持すべく横方向に所定の間隔をあけて配置された2つの支柱11とで囲まれる空間部16は、壁面側よりその対向側開放部の方が大きい切頭四角錐状を呈する。そのため、この空間部16に配置される前方開放のボックスは、切頭四角錐状の空間部16に緊密に嵌合する形状で形成することができる。このような形状のボックスを空間部16に嵌め込む場合でも、ボックスの周囲壁と、これに接触する支柱11や桟部材25の構成部材とを公知の留め具(図示せず)を用いて結合しておくことが好ましい。
【0027】
なお、上述した2つの実施形態に係る壁面緑化用ラック装置10A,10Bにおいて、支柱11を構成する第1,第2,第3の各棒材12a,12b,12c、桟部材15を構成する2本の棒材15a,15b、及び桟部材25を構成する棒材26a,26b,26cと連結材27,28それぞれの太さは特に限定されるものではなく、該ラック装置の大きさに基づいた必要な強度を維持し得るように設定される。また、これらの棒材、連結材、線材に用いられる金属は鉄が好ましいが、鉄以外の金属を使用することもできる。鉄を用いる場合はメッキ等の防食処理を施すことも好ましい。さらに、連結材13、14や連結線材27,28において、単位長さ(m)当たりの屈曲を繰り返す回数や、これらを配置する際の建造物Bの外壁面Wに対する傾斜角度についても特に限定はなく自由に設定することができる。
【0028】
また、前述した上述した2つの実施形態に係る壁面緑化用ラック装置10A,10Bにおいて、支柱11を構成する第1,第2,第3の各棒材12a,12b,12c、桟部材15を構成する2本の棒材15a,15b、及び、桟部材25を構成する棒材26a,26b,26cと連結材27,28は、中実の金属棒或いは中空の鉄棒を用いることができる。特に、中空の金属棒の使用は、軽量化を図れることから特に好ましい。
【0029】
さらに、上述した2つの実施形態に係る壁面緑化用ラック装置10A,10Bでは、建造物Bの外壁面Wに沿って設置し、該外壁面Wを植栽化するものであったが、本発明は、建造物の外壁面に限定されるものではなく、建造物の内壁面、擁壁の壁面、又は橋脚の壁面などを植栽化する場合に利用することができる。
【0030】
以上説明したように、上述した実施形態における壁面緑化用ラック装置10A,10Bに用いる支柱11によれば、該支柱11が、3本の棒材12a〜12cと、これら棒材をトラス構造に形成する連結材13,14とから構成され、しかもこの支柱11を建造物Bの外壁面Wに沿って立てたときに支柱11が外壁面Wに安定的に密着するように連結材13,14に脚部を形成し、必要に応じてその幾つかを外壁面Wに固定するようにしたことから、堅固に外壁面に取り付けることができ、その結果、耐震強度が非常に高く、かつ安全性の高い壁面緑化用の支柱を提供することができる。
【0031】
また、上述した実施形態における壁面緑化用ラック装置によれば、これに使用する支柱11は、前述したようにトラス構造のものであることから、非常に強度が高く、人工土壌を収納するボックスが相当な重量になってもこれを堅固に、かつ安全に支持することができる。さらに、このような支柱11は、建造物の床(スラブ)を形成する際に使用するトラス構造の鉄筋ユニットをそのまま用いることができることから、この支柱11や桟部材25を製作するのに特別な機械や装置を開発する必要もなく、従って、安価に入手することができるので、壁面緑化用ラック装置の製造に際して高い経済性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る壁面緑化用ラック装置を部分的に示す正面図。
【図2】図1に示される壁面緑化用ラック装置を2−2線の方向から見た側面図。
【図3】図1に示される壁面緑化用ラック装置の上面図。
【図4】本発明の他の実施形態に係る壁面緑化用ラック装置を部分的に示す図1と同様な正面図。
【図5】図4に示される壁面緑化用ラック装置の側面図。
【符号の説明】
【0033】
B 建造物
W 建造物の外壁面
10A,10B 壁面緑化用ラック装置
11 支柱
12a 第1の棒材
12b 第2の棒材
12c 第3の棒材
13,14 連結材
13a,14a 第1屈曲部
13b,14b 第2屈曲部
13c,14c 中間直線部
15,25 桟部材
15a,15b 棒材
16 空間部
17 ボックス
17a 上壁
17b 底壁
17c 側壁
18a,18b 仕切り壁
19 収納室
20 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の上下方向に広がる壁面に設置して該壁面を植栽化する際に使用する支柱において、
前記支柱が、前記建造物の前記壁面に沿って前記上下方向に延び、かつ前記上下方向から見たときに三角形の各頂点に端面が位置するように配置された3本の第1,第2及び第3の棒材と、これら各棒材を連結する2本の連結材とから構成され、
2本の前記第2,第3の棒材が、前記第1の棒材の両側方に位置すると共に前記第1の棒材より前記壁面側に配置され、
2本の前記連結材が、並行な2つの仮想直線上にそれぞれ位置する多数の第1屈曲部と、第2屈曲部と、これら第1及び第2屈曲部の間に形成された中間直線部とを備えるように前記上下方向にジグザグ状に延び、前記各第1屈曲部が、前記第1の棒材の横方向両側に当接した状態で結合されると共に前記各中間直線部が、前記第2の棒材及び前記第3の棒材にそれぞれ結合され、多数の前記第2屈曲部が、前記壁面と並行する方向へ曲げられ、この前記第2屈曲部の少なくとも複数が前記壁面に固定されていることを特徴とする壁面緑化用の支柱。
【請求項2】
建造物の上下方向に広がる壁面に設置して該壁面を植栽化する際に使用する壁面緑化用ラック装置において、
前記建造物の前記壁面に沿って前記上下方向に延び、かつ前記上下方向に直交する横方向に所定の間隔をあけて設置されるトラス構造をした複数の支柱と、これら支柱間に渡されて支持され、かつ前記上下方向に所定の間隔をあけて配置された複数の桟部材と、隣接する上下の前記桟部材と該桟部材を支持すべく隣接する横方向の前記支柱とで囲まれる空間部に収められたボックスとを含み、
前記ボックスは、前記壁面に対面する方向とは反対側に開口部を有する少なくとも1つの収納室を備え、この収納室内には土壌部材が配置され、
前記支柱は、前記上下方向から見たときに三角形の各頂点に端面が位置するように配置された3本の第1,第2及び第3の棒材と、これら各棒材を連結する2本の連結材とから構成され、
2本の前記第2,第3の棒材が、前記第1の棒材の両側方に位置すると共に前記第1の棒材より前記壁面側に配置され、
2本の前記連結材が、並行な2つの仮想直線上にそれぞれ位置する多数の第1屈曲部と、第2屈曲部と、これら第1及び第2屈曲部の間に形成された中間直線部とを備えるように前記上下方向にジグザグ状に延び、前記各第1屈曲部が、前記第1の棒材の横方向両側に当接した状態で結合されると共に前記各中間直線部が、前記第2の棒材及び前記第3の棒材にそれぞれ結合され、多数の前記第2屈曲部が、前記壁面と並行する方向へ曲げられ、この前記第2屈曲部の少なくとも複数が前記壁面に固定されていることを特徴とする壁面緑化用ラック装置。
【請求項3】
1つの前記ボックスを支持すべく上下方向に間隔をあけて配置された複数の前記桟部材のそれぞれが、少なくとも1本の支持棒から形成され、前記各支持棒のそれぞれの端部が、前記支柱を構成する前記第1,第2,及び第3の棒材のいずれかに接合され、前記ボックスが、その上下に配置された前記支持棒と該支持棒の両端を支持する前記支柱とにより画成された前記空間部に収められ、上下に間隔をあけて配置された前記支持棒が、前記ボックスを上下方向から挟んで支持している請求項2に記載の壁面緑化用ラック装置。
【請求項4】
1つの前記ボックスを支持すべく上下方向に間隔をあけて配置された複数の前記桟部材のそれぞれが、端部側から見たとき、仮想の三角形の各頂点に端面が位置するように配置された並行な3本の棒材と、これら棒材のうち少なくとも1本の棒材に他の2本の棒材を連結する連結材とからなるトラス構造で構成され、このトラス構造の前記桟部材が、前記支柱の前記第1の棒材と前記第2,第3の棒材との間を通って前記支柱を横断する横方向に延びている請求項2に記載の壁面緑化用ラック装置。
【請求項5】
前記支柱及び前記桟部材を構成する前記各棒材、並びに前記連結材が、鉄筋により構成され、前記各棒材と前記連結材が溶接により結合されている請求項2〜4のいずれかに記載の壁面緑化用ラック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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