説明

壁面設置又は自立式パネル型冷暖房装置

【課題】壁面に設置し又は自立させ、自然空気対流と冷輻射、輻射熱との併用により冷暖房を行うようにする。
【解決手段】中空で且つ側面及び頂部に内外に貫通する空気流通口を設けたパネル体1の内部に、その全体にわたって通液管4を配設する。液体を冷却又は加熱する装置15をパイプ16をもって通液管4に接続する。液体を冷却又は加熱する装置15によって冷却又は加熱した液体を通液管4に流通させ、パネル体1内部の空気を冷却又は加熱する。冷却又は加熱した空気をパネル体1の空気流通口から自然に緩やかに放出する。また、パネル体内部の空気の冷却又は加熱及び通液管からの直接的な冷却又は加熱によるパネル体の表面側の冷却又は加熱によってパネル体の表面側において冷輻射、輻射熱が発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は壁面設置又は自立式パネル型冷暖房装置に関し、更に詳細には壁面に設置し又は自立させ、自然空気対流と冷輻射、輻射熱との併用による冷暖房を行うようになしたパネル型冷暖房装置を提供せんとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、室内を冷房又は暖房する装置としてエアコンディショナーの如き冷暖房装置や、暖房のみを目的とするストーブがある。
【0003】
しかし、これらの装置はファンによって空気対流を起こさせる強制空気対流式の冷暖房方式であることから、次の如き問題点がある。
(1)ファンにより強制的に勢いよく空気を対流循環させるため、室内の空気環境がカビやハウスダスト、空気感染物質の飛散で汚染され、深刻な健康被害の原因となる。特に呼吸器系の喘息や肺炎、インフルエンザなどの感染症の鼻炎、身体アレルギー症状などの悩みが増加している。
(2)暖房では、天井付近の空気が暖かくて足元が冷たい不快な暖房になり、冷房では、冷たい空気が足元に滞留することや局部的な冷風で身体を直撃するなど快適性に劣る。
(3)空気対流式は、身体が持つ皮膚表面の温点、冷点が刺激されることで冷暖房効果を得ているため、体感温度としては暖房で高め、冷房で低めに設定する必要がある。
(4)部屋単位の暖房が一般的であるため、住宅内に極端な温度差が発生し、脳疾患や心臓疾患を持つ人にとってはヒートショックなどによる死亡事故の増加や健康被害の虞がある。
(5)設定温度が高めである空気対流式暖房は、外気温度と壁内温度差が大きくなり、結露が発生し、また、室内側では過乾燥状態になり、身体の肌や呼吸器系などの健康被害が増える。
(6)冷暖房とも上記(3)の温度設定の関係によりエネルギー消費が大きい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、自然空気対流と冷輻射、輻射熱との併用による冷暖房を行うことにより、従来装置の上記問題点を悉く解消することができるようになした壁面設置又は自立式パネル型冷暖房装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
而して、本発明の要旨とするところは、中空で且つ側面及び頂部に内外に貫通する空気流通口を設けたパネル体の内部に、その全体にわたって通液管を配設し、液体を冷却又は加熱する装置によって冷却又は加熱した液体を該通液管に流通させ、パネル体内部に空気流通口から入り込んだ空気を冷却又は加熱して放出すると共に、パネル体内部の空気の冷却又は加熱及び通液管からの直接的な冷却又は加熱によるパネル体の表面側の冷却又は加熱によってパネル体の表面側において冷輻射、輻射熱が発生するようになしたことを特徴とする壁面設置又は自立式パネル型冷暖房装置にある。
【0006】
また、上記構成において、パネル体の前面側又は前後両面を調湿機能を持つ多孔性素材で構成するようにしてもよい。
【0007】
また、上記構成において、パネル体の背面側を断熱材で構成するようにしてもよい。
【0008】
また、上記構成において、通液管の下部にドレンパンを配設するようにしてもよい。
【0009】
また、上記構成において、ブロワーによりパネル体の内部に空気を送気するようになしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上記の如き構成であり、自然空気対流と冷輻射、輻射熱との併用による冷暖房方式であるから、従来装置の問題点を悉く解消することができるものである。そしてそれは、具体的には次の通りである。
【0011】
(1)本発明は、自然空気対流によるものであって、パネル体内に入り込んだ空気を冷却又は加熱させることで自然空気対流を発生させ、そしてこれを自然にゆるやかにパネル体外に放出して室内の全体の自然空気対流を起こさせるものであり、且つまたパネル体の前面側又は前後両面に発生する冷輻射、輻射熱を併用するものであるから、従来のファンによる空気の強制対流の如きカビやハウスダスト等の飛散がない。したがって、室内の空気環境を健康維持の上で良好な状態に保持することができる。また、風や耳障りな音もなく、洞窟のような自然な冷暖房の温熱環境がきれいな空気環境とともに実現できる。特に温風や冷風による体調の不調を感じる人への効果は大きい。
【0012】
(2)室内の温度分布が偏ることなく均一であるため、暖房、冷房共に快適な温熱環境が得られる。また、これにより脳疾患や心臓疾患を持つ人にとっても安心して生活することができる温度環境が得られる。
【0013】
(3)空気を介さず直接身体の細胞に冷輻射、輻射熱が冷却、温熱効果として作用するため、冷暖房の体感は快適で、温度設定も暖房では低めに、冷房では高めに設定しても充分な冷暖房効果を発揮する。そしてまた、これにより冷暖房のエネルギー効率が高くエネルギー消費を従来よりも大幅に抑えることができる。
【0014】
(4)また、暖房にあっては設定温度を低めにすることができるから、外気温度と壁内温度差が小さくなり、結露の発生を極力抑えることができ、また室内側における乾燥状態も過乾燥にならないようにすることができる。また、パネル体の表面側を調湿機能を持つ多孔性素材で構成した場合には、冷却時でもこれの表面に結露が発生せず、それはパネル体内の通液管の表面にのみ発生する。そして発生した結露は自然落下してドレンパンに回収される。加えて、調湿機能を持つ多孔性素材によれば、脱臭、揮発性有機化合物の低減、マイナスイオンの発生等の効果も期待することができるものである。
【0015】
(5)また、本発明は建物の壁面に設置したり、自立架台を用いて自立させ、間仕切り等としても使用することができるものである。また、このように自立させて用いる場合には、パネル体の表裏両面を調湿機能を持つ多孔性素材で構成することにより、パネル体の表裏両面に冷輻射、輻射熱を発生させることもできる。また、パネル体を複数連結することで、広い面積の室内でも冷暖房ができる。また、設置が簡便であるばかりでなく、移設や移動も容易に行うことができるものである。また、特別の施工が不要なため、設備初期コストも軽減でき、導入が容易である。
【0016】
(6)パネル体の表面側に好みの絵画的デザインを施すことにより、単なる冷暖房装置に止まらず、室内装飾品としての機能も併せ持つようにすることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態は、中空で且つ側面及び頂部に内外に貫通する空気流通口を設けたパネル体の内部に、その全体にわたって通液管を配設し、液体を冷却又は加熱する装置によって冷却又は加熱した液体を該通液管に流通させ、パネル体内部の空気を冷却又は加熱して放出すると共に、パネル体内部の空気の冷却又は加熱及び通液管からの直接的な冷却又は加熱によるパネル体の表面側の冷却又は加熱によってパネル体の表面側において冷輻射、輻射熱が発生するようになすことにある。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施例のパネル体の一部を切欠して示した斜視図、図2はパネル体の正面図、図3はパネル体の左側面図、図4はガラリを省略して示したパネル体の左側面図、図5はパネル体の右側面図、図6はガラリを省略して示したパネル体の右側面図、図7はパネル体の平面図、図8はガラリを省略して示したパネル体の平面図、図9はパネル体の底面図、図10は通液管の正面図、図11は通液管の左側面図、図12はパネル体の上部側部分の中央縦断側面図、図13はパネル体の下部側部分の中央縦断側面図である。
【0019】
図中、1は中空で且つ側面及び頂部に内外に貫通する空気流通口2、2、2・・・を設けたパネル体である。また、該パネル体1の側面及び頂部には、前記空気流通口2、2、2・・・を覆うように、その外側にガラリ3を備えている。また、該パネル体1は、表面側1aを装飾面とし、背面側1bは断熱材で構成している。また、該パネル体1の表面側1aは、調湿機能を持つ多孔性素材で構成している。尚、該素材としては、火山灰シラスを主成分とするものが好ましく、これの場合にはミクロのポーラス(微細孔)か連続しており、湿度が高いときには空気中の湿気を吸着し、乾燥時には放湿して一定の湿度を保つ機能を有している。そしてまたこれの場合にはセラミックであることから、加熱すると遠赤外線の放射が高まり、輻射熱として人体に吸収され、穏やかで健康的な温熱環境が得られるものである。加えて、この素材によると、脱臭や揮発性有機化合物を吸収する作用も期待することができるものである。
【0020】
4は前記パネル体1の内部に、その全体にわたって配設した通液管である。又、該通液管4は、上下に平行する通液管5、6と、該通液管5、6間に平行して配設し、上下端部を夫々該通液管5、6に接続した複数の通液管7、8、9、10、11、12とからなり、下部の通液管6の一方側の端部6aから流入した液体を通液管7、8、9、10、11を経て上部の通液管5に導き、該上部の通液管5から通液管12を経て下部の通液管6に導き、該下部の通液管6の他方側の端部6bから流出するものである。また、13は止水プラグである。
【0021】
14は前記通液管4の下部に配設したドレンパンであり、適時図示しない排液ポンプをもって溜まった液体を排出するようになしている。
【0022】
15は液体を冷却又は加熱する装置であり、パイプ16をもって前記通液管4における下部の通液管6に接続し、該通液管4に冷却又は加熱した液体を流通させるものである。そして、通液管4を流通する冷却又は加熱した液体を通して該通液管4を冷却又は加熱し、これをもってパネル体1内部の空気を冷却又は加熱するものである。そして冷却又は加熱した空気は空気流通口2から自然に緩やかに外部に放出されるものである。
【0023】
また、図示はしないが、ブロワーによりパネル体1の内部に送気するようになしてもよい。この場合にはブロワーをパイプをもってパネル体1に接続し、該ブロワーを作動させて送気するものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のパネル体の一部を切欠して示した斜視図である。
【図2】パネル体の正面図である。
【図3】パネル体の左側面図である。
【図4】ガラリを省略して示したパネル体の左側面図である。
【図5】パネル体の右側面図である。
【図6】ガラリを省略して示したパネル体の右側面図である。
【図7】パネル体の平面図である。
【図8】ガラリを省略して示したパネル体の平面図である。
【図9】パネル体の底面図である。
【図10】通液管の正面図である。
【図11】通液管の左側面図である。
【図12】パネル体の上部側部分の中央縦断側面図である。
【図13】パネル体の下部側部分の中央縦断側面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 パネル体
2、2 空気流通口
4 通液管
5、6 通液管
7、8、9、10、11、12 通液管
14 ドレンパン
15 液体を冷却又は加熱する装置
16 パイプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空で且つ側面及び頂部に内外に貫通する空気流通口を設けたパネル体の内部に、その全体にわたって通液管を配設し、液体を冷却又は加熱する装置によって冷却又は加熱した液体を該通液管に流通させ、パネル体内部に空気流通口から入り込んだ空気を冷却又は加熱して放出すると共に、パネル体内部の空気の冷却又は加熱及び通液管からの直接的な冷却又は加熱によるパネル体の表面側の冷却又は加熱によってパネル体の表面側において冷輻射、輻射熱が発生するようになしたことを特徴とする壁面設置又は自立式パネル型冷暖房装置。
【請求項2】
パネル体の前面側又は前後両面を調湿機能を持つ多孔性素材で構成してなる請求項1記載の壁面設置又は自立式パネル型冷暖房装置。
【請求項3】
パネル体の背面側を断熱材で構成してなる請求項1又は2記載の壁面設置又は自立式パネル型冷暖房装置。
【請求項4】
通液管の下部にドレンパンを配設してなる請求項1、2又は3記載の壁面設置又は自立式パネル型冷暖房装置。
【請求項5】
ブロワーによりパネル体の内部に送気するようになした請求項1、2、3又は4記載の壁面設置又は自立式パネル型冷暖房装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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