説明

変位計測装置

【課題】ピストンロッドの伸縮量をロータリーエンコーダやポテンショメータのような機械的接触を伴うことなく非接触で計測する。
【解決手段】本発明に係る変位計測装置1は、ピストンロッド3のシリンダ本体2に対する進退量を運動体の並進移動量として計測するものであって、短冊状をなす計測用ターゲット5を、その長手方向がピストンロッド3の並進方向と平行になるように該ピストンロッドの周面に貼付してあるとともに、同じく短冊状をなす補正用ターゲット6を、その長手方向がピストンロッド3の並進方向と平行になるようにかつ計測用ターゲット5と近接するようにピストンロッド3の周面に貼付してあり、計測用ターゲット5近傍の固定部位には計測用カラーセンサー7を、補正用ターゲット6近傍の固定部位には補正用カラーセンサー8をそれぞれ取り付けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧シリンダやウィンチといった駆動装置を作動させる際、油圧シリンダを構成するピストンロッドの進退量やウィンチあるいはプーリーの回転角度を相対変位として計測し、あるいはボールジョイントやユニバーサルジョイントを介して連結されたアームを作動させる際、該アームの旋回角度や起伏角度を相対変位として計測する場合に主として適用される変位計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボーリング工事は、地質調査や地下資源探査あるいは土壌汚染調査といったさまざまな目的で行われており、使用されるボーリングマシンも、目的や用途あるいは掘削深度によってさまざまなものが開発されている。
【0003】
かかるボーリング工事を行うにあたっては、掘削深度を把握しあるいは管理することが不可欠であり、従来においては、ボーリングマシンに備えられたロータリーエンコーダを用いて掘削深度を計測していた。
【0004】
例えば、スピンドル型ボーリングマシンの場合、該ボーリングマシンを構成する穿孔装置のチャックでロッドを把持し、かかる状態のまま、油圧シリンダーで構成された送り機構を作動させてロッドに推力を与えるが、かかる構成においては、送り機構の往復動を回転運動に変換した上、該回転運動をロータリーエンコーダで計測することにより、あるいはロッドを吊持するワイヤーが掛けられたプーリー等の回転数をロータリーエンコーダで計測することにより、掘削深度の計測が可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−279452号公報
【特許文献2】特開2005−068936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、ロータリーエンコーダは、多種多様な商品が市販され、幅広い分野で用いられているものの、基本的には摩耗による軸受の劣化を避けることはできないため、定期的なメンテナンスや交換が必要になるという問題を生じていた。
【0007】
また、送り機構の往復動を回転運動に変換する場合には、変換機構が別途必要になるという問題も生じていた。
【0008】
また、送り機構の往復動を回転運動に変換せず、ポテンショメータで直接計測することも可能であるが、ポテンショメータは、電気抵抗素子の上を接点が摺動するようになっているため、機械的摩耗に起因する問題はやはり避けることができない。
【0009】
加えて、変位計測における上述した問題は、ボーリングマシンのみならず、油圧シリンダを構成するピストンロッドの進退量やウィンチあるいはプーリーの回転角度を相対変位として計測する各種機械においても同様の問題を生じる。
【0010】
また、ボールジョイントやユニバーサルジョイントを介して連結されたアームの角度を計測する各種機械の場合には、上述したピストンロッドの進退量やウィンチあるいはプーリーの回転角度といった一方向の相対変位のみならず、旋回角度及び起伏角度といった2方向の相対変位を計測する必要があるため、ジャイロやレーザー等を用いたセンサーが用いられていたところ、かかる構成においてはコスト面で合理化の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、油圧シリンダを構成するピストンロッドの伸縮量やウィンチあるいはプーリーの回転角度、あるいはジョイント部を介して連結されたアームの旋回角度や起伏角度を、ロータリーエンコーダやポテンショメータのような機械的接触を伴うことなく、非接触で計測することが可能な変位計測装置を提供することを目的とする。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る変位計測装置は請求項1に記載したように、長手方向が運動体の並進方向とそれぞれ平行になり又は回転軸線廻りに回転する運動体の周縁にそれぞれ沿うように前記運動体に近接配置される計測用ターゲット及び補正用ターゲットと、前記計測用ターゲットの表面に対向するように前記運動体近傍の固定部位に取り付けられる計測用カラーセンサーと、前記補正用ターゲットの表面に対向するようにかつ前記計測用カラーセンサーによる前記計測用ターゲット上の読込み位置近傍が前記補正用ターゲット上の読込み位置となるように前記運動体近傍の固定部位に取り付けられる補正用カラーセンサーと、前記計測用カラーセンサー及び前記補正用カラーセンサーで得られた光強度を演算処理する演算処理部とを備え、前記計測用ターゲットを、前記計測用カラーセンサーで得られる光強度が長手方向に沿って単調に増加又は減少するように構成するとともに、前記補正用ターゲットを、前記補正用カラーセンサーによって得られる光強度が長手方向に沿って均一になるように構成した変位計測装置であって、
前記演算処理部は、前記計測用ターゲットの端部からの距離x(0≦x≦L、Lは計測区間長さ)と該距離xにおいて基準照度下で前記計測用カラーセンサーで得られた光強度に対応する電流値I(x)との関係が格納された参照テーブルを備えるとともに、基準照度下において前記補正用カラーセンサーで前記補正用ターゲットを読み込んだときの光強度に対応する電流値をI0、前記運動体の並進運動中又は回転運動中において前記計測用カラーセンサー及び前記補正用カラーセンサーで得られた光強度に対応する電流値をそれぞれI1,I2としたとき、次式、
1=(I2/I0)・I(x) (1)
を満たすxを、前記固定部位に対する前記運動体の並進移動量又は回転角度として算出するようになっているものである。
【0013】
また、本発明に係る変位計測装置は請求項2に記載したように、長手方向が運動体の並進方向と平行になり又は回転軸線廻りに回転する運動体の周縁に沿うように前記運動体に配置され長手方向又は周方向に沿ってHSV色空間で定義される色相又は彩度が変化するように形成されたカラーグラデーションで表面が構成されてなる計測用ターゲットと、赤,緑及び青の各色に対応した光強度に対応する電流値を出力可能でかつ前記計測用ターゲットの表面に対向するように前記運動体近傍の固定部位に取り付けられた計測用カラーセンサーと、該計測用カラーセンサーで得た電流値をRGB出力データとして演算処理する演算処理部とを備え、
前記計測用ターゲットは、その長手方向又は周方向に沿った位置と前記色相又は前記彩度とが一意に定まるように構成してあり、
前記演算処理部は、前記RGB出力データを演算処理して得られる色相又は彩度から前記計測用ターゲット上の読込み位置を特定するとともに、特定された読込み位置から前記固定部位に対する前記運動体の並進移動量又は回転角度を算出するようになっているものである。
【0014】
また、本発明に係る変位計測装置は、油圧シリンダを構成するピストンロッドを前記運動体とし、該ピストンロッドの進退量を前記運動体の並進移動量としたものである。
【0015】
また、本発明に係る変位計測装置は、ウィンチ、プーリーその他の回転体を前記運動体とし、該回転体の回転角度を前記運動体の回転角度としたものである。
【0016】
また、本発明に係る変位計測装置は請求項5に記載したように、アームと該アームの基端側が該アームの材軸に対して直交する軸線廻りとその軸線及び前記アームの材軸に直交する軸線廻りにそれぞれ回動自在となるように連結されたアーム取付部との相対変位を前記直交2軸廻りの前記アームの回転角度として計測する変位計測装置であって、
前記アーム取付部に配置され周方向に沿ってHSV色空間で定義される色相が変化し半径方向に沿って彩度が変化するように形成された円形のカラーグラデーションで表面が構成されてなる計測用ターゲットと、赤,緑及び青の各色に対応した光強度に対応する電流値を出力可能でかつ前記計測用ターゲットの表面に対向するようにかつ前記アームの材軸延長線上に配置される計測用カラーセンサーと、該計測用カラーセンサーで得た電流値をRGB出力データとして演算処理する演算処理部とを備え、
前記計測用ターゲットは、その周方向及び半径方向に沿った位置と前記色相及び彩度とが一意に定まるように構成してあり、
前記演算処理部は、前記RGB出力データを演算処理して得られる色相及び彩度から前記計測用ターゲット上の読込み位置を特定するとともに、特定された読込み位置から前記直交2軸廻りの回転角度を算出するようになっているものである。
【0017】
また、本発明に係る変位計測装置は、前記色相をH(0≦H<2π)、前記彩度をS(0<S≦1)、前記アームの回転中心から前記計測用ターゲットまでの距離をD、該計測用ターゲットの半径をRとしたとき、前記直交2軸回りの回転角度θ1,θ2を、
θ1=tan-1(R・S・sinH/D) (2)
θ2=tan-1(R・S・cosH/D) (3)
から算出するものである。
【0018】
また、本発明に係る変位計測装置は、前記アームと前記アーム取付部との連結構造をボールジョイント又はユニバーサルジョイントとしたものである。
【0019】
[第1の発明]
【0020】
第1の発明に係る変位計測装置は、計測用ターゲットを、計測用カラーセンサーで得られる光強度が長手方向に沿って単調に増加又は減少するように構成するとともに、計測用ターゲットの位置とその位置に対応する光強度相当の電流値とを予め参照テーブルとして演算処理部に記憶しておき、運動体が並進し又は回転するとき、計測用カラーセンサーで得られた光強度相当の電流値を上述した参照テーブルに照合することで、その読取り位置を算出することを基本とし、さらに参照テーブル作成時の照度(以下、基準照度)と計測時の照度(以下、計測照度)の違いによる光強度の変動を考慮すべく、補正用ターゲットによって照度の変動率を算出するとともに、該変動率を用いて参照テーブルを補正することを特徴とするものである。
【0021】
すなわち、第1の発明に係る変位計測装置においては、計測に先立ち、まず、計測用ターゲット及び補正用ターゲットを作成し、これらを、それらの長手方向が運動体の並進方向とそれぞれ平行になり、又は回転軸線廻りに回転する運動体の周縁にそれぞれ沿うように近接配置するとともに、運動体近傍の固定部位には、計測用カラーセンサー及び補正用カラーセンサーを、計測用カラーセンサーが計測用ターゲットに対向するように、補正用カラーセンサーが補正用ターゲットに対向するようにそれぞれ取り付ける。
【0022】
ここで、補正用カラーセンサーは、補正用ターゲット上の読込み位置が、計測用カラーセンサーによる計測用ターゲット上の読込み位置近傍となるように位置決めする。
【0023】
一方、計測用ターゲットは、計測用カラーセンサーによって得られる光強度が、長手方向に沿って単調に増加又は減少するように、補正用ターゲットは、補正用カラーセンサーによって得られる光強度が、長手方向に沿って均一になるようにそれぞれ構成しておく。
【0024】
また、基準照度下において補正用ターゲットを補正用カラーセンサーで読み込み、そのときの光強度に対応する電流値I0を演算処理部に記憶しておくとともに、基準照度下において計測用ターゲットを計測用カラーセンサーで読み込むことにより、参照テーブルを作成しておく。
【0025】
参照テーブルは、計測用ターゲットの基準位置、例えばその端部からの距離xと該距離xにおいて基準照度下で計測用カラーセンサーにより得られた光強度に対応する電流値I(x)との関係を求めるためのものであって、xを特定することによってI(x)を求めることができるのであれば、どのように構成するかは任意である。
【0026】
例えば、2以上のx1,x2,x3・・・とそれらに対応するI(x1),I(x2),I(x3)・・・とを格納しておき、それらの離散値を用いて任意のxに対するI(x)を適当な補間式で求める形式や、それらの離散値から最小二乗法等で算出された近似式に任意のxを代入してI(x)を求める形式などを採用することが可能であり、離散値が2つでそれらの間を直線補間する場合が最も簡単な参照テーブルとなる。
【0027】
基準照度下での作業中においては、例えば高照度白色LED光源で計測用ターゲットや補正用ターゲットの表面を照射することにより、読取り精度を高めるのが望ましい。
【0028】
次に、運動体が並進し、又はその材軸回りに回転するとき、計測用カラーセンサーで計測用ターゲットを、補正用カラーセンサーで補正用ターゲットをそれぞれ読み込み、得られた電流値をそれぞれI1,I2とする。
【0029】
計測中においては、基準照度下での作業と同様、例えば高照度白色LED光源で計測用ターゲットや補正用ターゲットの表面を照射することにより、読取り精度を高めるのが望ましい。
【0030】
補正用ターゲットは、長手方向に沿って均一に構成してあるため、光強度に対応する電流値はその位置にかかわらず一定であり、したがって、電流値I2を電流値I0で除した値は、基準照度下での光強度に対する計測照度下での光強度の変動率Kとなり、よって、参照テーブルで定義された電流値I(x)に変動率Kを乗じれば、計測照度下での関係を得ることができる。
【0031】
以上の考え方に基づき、計測用カラーセンサーと補正用カラーセンサーで得られたI1,I2を式(1)に代入してxを求め、これを、固定部位に対する運動体の並進移動量又は回転角度とする。
【0032】
このようにすれば、固定部位に対する運動体の並進移動量又は回転角度を、該運動体と非接触の状態でリアルタイムに計測することが可能となる。
【0033】
運動体は、並進運動又は回転運動しなおかつそれらの並進移動量や回転角度が計測対象となるものが全て含まれるが、油圧シリンダを構成するピストンロッドや、ウィンチ、プーリーその他の回転体がその典型例となる。かかる場合、ピストンロッドの進退量が並進移動量となり、回転体の回転角度が上述の回転角度となる。
【0034】
計測用ターゲット及び補正用ターゲットは、計測区間長さを全長とする短冊状の貼付シールでそれぞれ構成することが可能であり、短手側で連続するように一体形成してもかまわない。
【0035】
計測用ターゲットは上述したように、計測用カラーセンサーで得られる光強度が長手方向に沿って単調に増加又は減少するように構成し、参照テーブルは、かかる計測用ターゲットに対する基準照度下での光強度を計測用カラーセンサーで計測して作成する。
【0036】
計測用ターゲットを作成するにあたり、計測用カラーセンサーで得られる光強度が長手方向に沿って単調に増加又は減少するように構成する方法は任意であるが、例えば、その表面色がRGB色空間でR=G=0かつB≠0(青色のカラーグラデーション)となるように、G=B=0かつR≠0(赤色のカラーグラデーション)となるように、又はB=R=0かつG≠0(緑色のカラーグラデーション)となるようにそれぞれ構成することができる。また、単調増加又は単調減少は、特に直線関係となるように構成することが可能である。
【0037】
一方、計測用ターゲットは、カラーグラデーションに代えて、グレースケールで構成することも可能である。この場合、R=G=Bとしてそれらの大きさを変化させる、HSV色空間で言えば、彩度をゼロにして明度を距離xに応じて変化させる構成となる。
【0038】
補正用カラーセンサーは、補正用ターゲット上の読込み位置が、計測用カラーセンサーによる計測用ターゲット上の読込み位置近傍となるように位置決めすることにより、計測用カラーセンサーによる計測用ターゲット上の読込みと補正用カラーセンサーによる補正用ターゲット上の読込みとが、実質的に同一照度下で行われるように構成すればよいのであって、計測用カラーセンサーに必ずしも隣接配置する必要はなく、計測用カラーセンサー及び補正用カラーセンサーの読込み先が互いに近接している限り、センサー自体は離間配置するようにしてもかまわない。
【0039】
カラーセンサーは、計測用ターゲットの構成に合わせて適宜選択すればよく、R,G又はBのうち、いずれか1つの色に対応した一組の光学フィルタ及びフォトダイオードで構成された単色型、R,G又はBのうち、2つの色に対応した二組の光学フィルタ及びフォトダイオードで構成された2色型、R,G及びBの各色に対応した三組の光学フィルタ及びフォトダイオードで構成された3色型を適宜選択することができる。
【0040】
例えば、計測用ターゲットを、その表面色がRGB色空間でR=G=0かつB≠0(青色のカラーグラデーション)となるように構成する場合には、青に対する分光感度に優れたフォトダイオード内蔵の単色型カラーセンサーを用いれば足りる。
【0041】
同様に、計測用ターゲットが赤色のカラーグラデーションであれば赤に対する分光感度に優れ、緑色のカラーグラデーションであれば緑に対する分光感度に優れたフォトダイオード内蔵の単色型カラーセンサーをそれぞれ用いるようにすればよい。
【0042】
また、計測用ターゲットがグレースケールの場合には、赤(R)、緑(G)及び青(B)に対応する各出力電流値が同じ値になるため、より多くの電流を得て精度を上げるべく、3色型カラーセンサーを用いるようにすればよい。
【0043】
式(1)を用いた参照テーブルの補正は、計測照度が基準照度と異なる場合、例えば環境光が入り込むことによって照度が変動するときをはじめ、補正後にさらに照度が変動する場合、例えば照明設備が劣化したときに随時行えばよい。
【0044】
[第2の発明]
【0045】
第2の発明に係る変位計測装置においては、計測用ターゲットを、HSV色空間で定義される色相又は彩度と長手方向又は周方向の位置とが一意に定まるように、換言すれば1対1の関係になるように構成しておき、かかる計測用ターゲットを運動体に取り付け、該運動体が並進し又は回転したとき、計測用カラーセンサーで計測用ターゲットを読み込むことで、赤,緑及び青の各色に対応する電流値を出力させるとともに、該電流値を用いて計測用カラーセンサー又は演算処理部でRGB出力データを算出した後、該RGB出力データを色相又は彩度に、さらには計測用ターゲット上の位置へと順次変換することを特徴とするものである。
【0046】
すなわち、第2の発明に係る変位計測装置においては、計測に先立ち、まず、計測用ターゲットを作成し、これを、その長手方向が運動体の並進方向と平行になり、又は回転軸線廻りに回転する運動体の周縁に沿うように配置するとともに、運動体近傍の固定部位には、計測用カラーセンサーが計測用ターゲットの表面に対向するように該計測用カラーセンサーを取り付ける。
【0047】
ここで、計測用ターゲットは、周方向に沿った位置とHSV色空間で定義される色相又は彩度とが一意に定まるように構成しておく。
【0048】
次に、運動体が並進し、又は回転軸線廻りに回転したとき、計測用カラーセンサーで計測用ターゲットを読み込むことで、赤,緑及び青の各色に対応する電流値を得る。
【0049】
計測中においては、例えば高照度白色LED光源で計測用ターゲットの表面を照射することにより、読取り精度を高めるのが望ましい。
【0050】
次に、計測用カラーセンサーで得た電流値を用いて計測用カラーセンサー又は演算処理部でRGB出力データを算出した後、演算処理部で該RGB出力データをHSV色空間で定義される色相又は彩度に変換するとともに、該色相又は彩度を計測用ターゲット上の位置に順次変換する。
【0051】
このようにすれば、固定部位に対する運動体の並進移動量又は回転角度を、該運動体と非接触の状態でリアルタイムに計測することが可能となる。
【0052】
運動体は、並進運動又は回転運動しなおかつそれらの並進移動量や回転角度が計測対象となるものが全て含まれるが、油圧シリンダを構成するピストンロッドや、ウィンチ、プーリーその他の回転体がその典型例となる。かかる場合、ピストンロッドの進退量が並進移動量となり、回転体の回転角度が上述の回転角度となる。
【0053】
計測用ターゲットは、進退動作を行うピストンロッドのような並進運動を行う運動体の場合であれば、計測区間長さを全長とする短冊状の貼付シールで構成し、プーリーのような回転体であれば、計測区間長さを周長とした環状の貼付シールで構成することができる。
【0054】
計測用ターゲットは、色相が変化するように構成するのであれば、0から2πの範囲、典型的には赤で始まり、黄、緑、青、紫と変化して赤に戻る色相環上で推移するように、計測用ターゲットの表面色をカラーグラデーションで構成すればよい。
【0055】
また、彩度が変化するように構成するのであれば、変換された結果が0(無彩色、R=G=B)から1の範囲(R,G,Bのいずれか1つ、又はいずれか2つが0)で変化するように、計測用ターゲットの表面色を構成すればよい。
【0056】
計測用カラーセンサーは、R,G及びBの各色に対応した三組の光学フィルタ及びフォトダイオードで構成することができるが、各色に対応した電流値のRGB出力データへの変換は、計測用カラーセンサーで行うようにしてもよいし、演算処理部で行うようにしてもよい。
【0057】
[第3の発明]
【0058】
第3の発明に係る変位計測装置においては、計測用ターゲットを、HSV色空間で定義される色相及び彩度と周方向及び半径方向の位置とが一意に定まるように、換言すれば1対1の関係になるように構成しておき、かかる計測用ターゲットをアーム取付部に取り付け、アームが直交2軸線廻りに回転したとき、計測用カラーセンサーで計測用ターゲットを読み込むことで、赤,緑及び青の各色に対応する電流値を出力させるとともに、該電流値を用いて計測用カラーセンサー又は演算処理部でRGB出力データを算出した後、該RGB出力データを色相及び彩度に、さらには計測用ターゲット上の位置へと順次変換することを特徴とするものである。
【0059】
すなわち、第3の発明に係る変位計測装置においては、計測に先立ち、まず、計測用ターゲットを作成し、これをアーム取付部に配置するとともに、アーム側には、計測用ターゲットの表面に対向するように計測用カラーセンサーをアームの材軸延長線上に取り付ける。
【0060】
ここで、計測用ターゲットは、周方向及び半径方向に沿った位置とHSV色空間で定義される色相及び彩度とが一意に定まるように構成しておく。
【0061】
次に、アームが直交する2軸線廻りに回転したとき、計測用カラーセンサーで計測用ターゲットを読み込むことで、赤,緑及び青の各色に対応する電流値を得る。
【0062】
計測中においては、例えば高照度白色LED光源で計測用ターゲットの表面を照射することにより、読取り精度を高めるのが望ましい。
【0063】
次に、計測用カラーセンサーで得た電流値を用いて計測用カラーセンサー又は演算処理部でRGB出力データを算出した後、演算処理部で該RGB出力データをHSV色空間で定義される色相及び彩度に変換するとともに、該色相及び彩度を計測用ターゲット上の位置に順次変換する。
【0064】
具体的には、RGB出力データから算出されたHSV色空間の色相をH、彩度S、直交2軸線廻りのアームの回転中心から計測用ターゲットの円形中心までの距離をD、該計測用ターゲットの半径をRとしたとき、直交2軸回りの回転角度θ1,θ2を、
θ1=tan-1(R・S・sinH/L) (2)
θ2=tan-1(R・S・cosH/L) (3)
から算出することができる。
【0065】
このようにすれば、直交する2軸線廻りのアームの回転角度を、該アームと非接触の状態でリアルタイムに計測することが可能となる。
【0066】
アームは、その基端側が該アームの材軸に対して直交する軸線廻りとその軸線及びアームの材軸に直交する軸線廻りにそれぞれ回動自在となるようにアーム取付部に連結されているものが全て含まれるが、アームとアーム取付部との連結構造をボールジョイント又はユニバーサルジョイントとした構成が典型例となる。
【0067】
計測用カラーセンサーは、R,G及びBの各色に対応した三組の光学フィルタ及びフォトダイオードで構成することができるが、各色に対応した電流値のRGB出力データへの変換は、計測用カラーセンサーで行うようにしてもよいし、演算処理部で行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】第1実施形態に係る変位計測装置の概略図。
【図2】第1実施形態に係る変位計測装置の作用を説明したグラフ。
【図3】第1実施形態に係る変位計測装置の変形例を示した斜視図。
【図4】第2実施形態に係る変位計測装置の概略斜視図。
【図5】第3実施形態に係る変位計測装置の図であり、(a)は概略図、(b)はA−A線方向から見た矢視図、(c)はブロック図。
【図6】算出された色相及び彩度から計測用ターゲット上の位置を求める手順を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下、本発明に係る変位計測装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0070】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る変位計測装置を示した図である。同図でわかるように、本実施形態に係る変位計測装置1は、油圧シリンダ4を構成する運動体としてのピストンロッド3のシリンダ本体2に対する進退量を運動体の並進移動量として計測するものであって、短冊状をなす計測用ターゲット5を、その長手方向がピストンロッド3の並進方向(同図矢印に示す往復動の方向)と平行になるように該ピストンロッドの周面に貼付してあるとともに、同じく短冊状をなす補正用ターゲット6を、その長手方向がピストンロッド3の並進方向と平行になるようにかつ計測用ターゲット5と近接するようにピストンロッド3の周面に貼付してあり、計測用ターゲット5近傍の固定部位には、該計測用ターゲットと対向するように計測用カラーセンサー7を取り付けてあるとともに、補正用ターゲット6近傍の固定部位には、該補正用ターゲットと対向するように補正用カラーセンサー8を取り付けてある。
【0071】
補正用カラーセンサー8は、計測用カラーセンサー7に隣接させる必要はないが、該計測用カラーセンサーによる計測用ターゲット5上の読込み位置近傍が、補正用ターゲット6上の読込み位置となるように取り付ける。
【0072】
計測用ターゲット5は、その表面を、RGB色空間でB=R=0かつG≠0、すなわち色相が緑でかつその光強度が長手方向、図1では右方向に沿って単調に減少する(G成分が単調減少する)カラーグラデーションとなるように構成してあるとともに、補正用ターゲット6は、補正用カラーセンサー8によって得られる光強度が長手方向に沿って均一になるように、すなわちRGB色空間で言えばG成分が一定となるように構成してある。
【0073】
計測用カラーセンサー7及び補正用カラーセンサー8は、緑に対する分光感度に優れたフォトダイオード内蔵の単色型カラーセンサーを用いればよい。
【0074】
変位計測装置1は、計測用カラーセンサー7及び補正用カラーセンサー8が電気接続されたコンピュータ13を備えるとともに、該コンピュータには、計測用カラーセンサー7及び補正用カラーセンサー8で得られた光強度を演算処理する演算処理部11と、該演算処理部からの出力データを出力するモニター、プリンタ等で構成された出力部12を設けてあり、演算処理部11には、計測用ターゲット5の端部からの距離x(0≦x≦L、Lは計測区間長さ)と該距離xにおいて基準照度下で計測用カラーセンサー7により得られた光強度に対応する電流値I(x)との関係を格納した参照テーブル10を設けてある。
【0075】
演算処理部11は、基準照度下において補正用カラーセンサー8で補正用ターゲット6を読み込んだときの光強度相当の電流値をI0、ピストンロッド3が進退したときに計測用カラーセンサー7及び補正用カラーセンサー8で得られた光強度相当の電流値をそれぞれI1,I2としたとき、次式、
1=(I2/I0)・I(x) (1)
を満たすxを、固定部位に対するピストンロッド3の並進移動量として算出するようになっている。
【0076】
本実施形態に係る変位計測装置1でピストンロッド3の並進移動量を計測するには、まず、計測用ターゲット5及び補正用ターゲット6を予め作成し、これらを、それらの長手方向がピストンロッド3の並進方向とそれぞれ平行になるようにかつ互いに近接されるように配置する。
【0077】
また、ピストンロッド3近傍の固定部位に計測用ターゲット5に対向するように計測用カラーセンサー7を取り付けるとともに、補正用ターゲット6に対向するように補正用カラーセンサー8を取り付ける。補正用カラーセンサー8は、補正用ターゲット6上の読込み位置が、計測用カラーセンサー7による計測用ターゲット5上の読込み位置近傍となるように位置決めする。
【0078】
一方、基準照度下において補正用ターゲット6を補正用カラーセンサー8で読み込み、そのときの電流値I0を演算処理部11に記憶しておく。
【0079】
図2(a)は、基準照度下で得られた電流値I0を示したものであり、その大きさは同図に示すように、ピストンロッド3の進退方向に沿って一定となっている。
【0080】
また、基準照度下において計測用ターゲット5を計測用カラーセンサー7で読み込むことにより、参照テーブル10を作成しておく。
【0081】
図2(b)は、基準照度下で得られた電流値I(x)を示したものであり、その大きさは同図に示すように、単調減少となっている。
【0082】
基準照度下での作業中においては、例えば高照度白色LED光源で計測用ターゲット5や補正用ターゲット6の表面を照射することにより、読取り精度を高めるのが望ましい。
【0083】
次に、ピストンロッド3が進退するとき、補正用カラーセンサー8で補正用ターゲット6を読み込み、得られた電流値をI2とするとともに、計測用カラーセンサー7で計測用ターゲット5を読み込み、得られた電流値をI1とする。
【0084】
計測中においては、基準照度下での作業と同様、例えば高照度白色LED光源で計測用ターゲット5や補正用ターゲット6の表面を照射することにより、読取り精度を高めるのが望ましい。
【0085】
ここで、計測用カラーセンサー7の出力電流値は、照度の違いに起因して、図2(b)に示した基準照度下での電流値I(x)に変動率Kを乗じた大きさ、つまり、図2(c)に示したK・I(x)になっている。
【0086】
したがって、I1,I2を、式(1)に代入してxを求めれば、かかるxは、固定部位に対するピストンロッド3の並進移動量となる。
【0087】
以上説明したように、本実施形態に係る変位計測装置1によれば、計測用ターゲット5を、色相が緑でかつその光強度が長手方向、図1では右方向に沿って単調に減少するカラーグラデーションとするとともに、補正用ターゲット6を光強度が長手方向に沿って均一になるように、すなわちRGB色空間で言えばG成分が一定となるように構成し、計測用ターゲット5の位置とその位置に対応する光強度相当の電流値I(x)とを予め参照テーブル10として演算処理部11に記憶しておき、ピストンロッド3が進退している間、計測用カラーセンサー7で得られた光強度相当の電流値I1を上述した参照テーブル10に照合することで、計測用カラーセンサー7による計測用ターゲット5の読込み位置を、ピストンロッド3の進退動作による並進移動量として算出するようにしたので、固定部位に対するピストンロッド3の並進移動量を、該ピストンロッドと非接触の状態で計測することが可能となる。
【0088】
そのため、従来のエンコーダにように、機械的接触による摩耗に起因した保守点検あるいは交換が不要になり、大深度地下のような長期にわたるボーリング探査あるいはボーリング掘削にはきわめて有用な手段となる。
【0089】
また、ピストンロッド3の進退動作を直線運動として直接計測することができるため、従来のように直線運動を回転運動に変換する必要もない。
【0090】
また、本実施形態に係る変位計測装置1によれば、参照テーブル作成時の照度(基準照度)と計測時の照度(計測照度)の違いによる光強度の変動を考慮すべく、補正用カラーセンサー8による補正用ターゲット6の読込みによって、照度の変動率を算出し、該変動率を、基準照度下で作成した位置xと電流値I(x)との関係を示した参照テーブル10に乗ずることで、計測用カラーセンサー7による計測用ターゲット5の読込み位置を求めるようにしたので、算出された計測用ターゲット5の読込み位置は、照度の変動が反映されたものとなり、かくして、環境光が入り込んだり、照明設備が劣化したりすることに起因して照度が変動したとしても、ピストンロッド3の並進移動量を正確に計測することが可能となる。
【0091】
本実施形態では特に言及しなかったが、油圧シリンダ4が例えばボーリングマシンのロッドを鉛直下方に送り込むための送り機構である場合には、ピストンロッド3の進退動作の繰り返し回数に応じた並進移動量の総和を求めることにより、ボーリングマシンによるロッドの掘削深さを求めることが可能である。
【0092】
また、本実施形態では、計測用ターゲット5を緑のカラーグラデーションで構成したが、光強度が長手方向に沿って単調増加又は減少するように構成することにより、計測用ターゲット5の端部からの位置xとその位置での計測用カラーセンサー7による電流値との関で1対1の関係が成立する限り、計測用ターゲットをどのように構成するかは任意であって、赤や青のカラーグラデーションはもちろん、グレースケールでもかまわない。
【0093】
また、本実施形態では、油圧シリンダ4を構成するピストンロッド3の並進移動量を計測する場合について説明したが、本発明は、並進移動量のみならず、回転角度を算出する場合に用いることも可能である。
【0094】
図3に示した変形例に係る変位計測装置31は、回転軸線32の廻りに回転するプーリー33の回転角度を計測するものであり、プーリー33と同軸にかつ該プーリーと一体になるように側方に突設された円板状の計測部34を運動体とし、上述した計測用ターゲット5及び補正用ターゲット6をそれらの長手方向が計測部34の周縁に沿うように近接配置してあるとともに、計測用ターゲット5近傍の固定部位には、該計測用ターゲットと対向するように計測用カラーセンサー7を、補正用ターゲット6近傍の固定部位には、該補正用ターゲットと対向するように補正用カラーセンサー8をそれぞれ取り付けてあり、計測用カラーセンサー7及び補正用カラーセンサー8には、上述の実施形態と同様、コンピュータ13を電気接続してある。
【0095】
本変形例においては、ピストンロッド3の進退量に代えて、プーリー33と一体に構成された計測部34の回転角度を計測するようになっている点を除いて、その構成及び作用効果は上述の実施形態と同様であり、詳細な説明は省略するが、本変形例においては、計測部34を介してプーリー33の回転角度を計測するとともに、その回転数をカウントして回転角度の総和を求めることにより、該プーリーに掛けられたワイヤー35の繰り出し長さを計測することが可能であり、ワイヤー35がボーリングマシンのロッドを吊持するワイヤーであれば、該ロッドによる掘削深さを求めることができる。
【0096】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0097】
図4は、本実施形態に係る変位計測装置を示した図である。同図でわかるように、本実施形態に係る変位計測装置41は、回転軸線42の廻りに回転するプーリー43の回転角度を計測するものであって、プーリー43と同軸にかつ該プーリーと一体になるように側方に突設された円板状の計測部44を運動体とし、該計測部の側面であってその周縁に沿って計測用ターゲット45を環状に配置してあるとともに、計測用ターゲット45近傍の固定部位には、該計測用ターゲットと対向するように計測用カラーセンサー47を取り付けてある。
【0098】
計測用ターゲット45は、周方向に沿ってHSV色空間で定義される色相が変化するように、具体的には0から2πの範囲にわたって典型的には赤で始まり、黄、緑、青、紫と変化して赤に戻る色相環上で推移するように、表面をカラーグラデーションで構成してある。
【0099】
計測用カラーセンサー47は、赤,緑及び青の各色に対応した光強度に対応する電流値を出力できるよう、赤,緑及び青のそれぞれの分光感度に優れた三組の光学フィルタ及びフォトダイオード内蔵のカラーセンサーで構成してある。
【0100】
変位計測装置41は、計測用カラーセンサー47が電気接続されたコンピュータ48を備えるとともに、該コンピュータには、計測用カラーセンサー47の出力データを演算処理する演算処理部49と、該演算処理部からの出力データを出力するモニター、プリンタ等で構成された出力部12とを設けてある。
【0101】
演算処理部49は、計測用カラーセンサー47で得られた各光強度相当の電流値から算出されたRGB出力データから色相を算出するとともに、該色相から計測用ターゲット45上の読込み位置を特定し、さらにその特定された読込み位置から固定部位に対する計測部44及びそれと一体になっているプーリー43の回転角度を算出するようになっている。
【0102】
本実施形態に係る変位計測装置41でプーリー43の回転角度を計測するには、計測に先立ち、まず、計測用ターゲット45を作成し、これを、計測部44の周縁に沿うように配置するとともに、計測部44近傍の固定部位には、計測用ターゲット45の表面に対向するように計測用カラーセンサー47を取り付ける。
【0103】
次に、プーリー43が回転軸線42廻りに回転したとき、計測用カラーセンサー47で計測用ターゲット45を読み込むことで、赤,緑及び青の各色に対応する電流値を得る。
【0104】
計測中においては、例えば高照度白色LED光源で計測用ターゲットの表面を照射することにより、読取り精度を高めるのが望ましい。
【0105】
次に、計測用カラーセンサー47で得られた電流値を用いて該計測用カラーセンサー又は演算処理部49でRGB出力データを算出した後、演算処理部49で該RGB出力データをHSV色空間で定義される色相に変換する。
【0106】
RGB出力データから色相に変換するにあたっては、計測用ターゲット45が、周方向に沿った位置とHSV色空間で定義される色相とが一意に定まるように構成してあるので、これに合うように色相を例えば以下の換算式で変換すればよい。
【0107】
すなわち、RGB出力データが0から1の範囲で正規化されたものであって各値がR,G,Bであり、それらの最大値がMax、最小値がMinである場合、色相H(0≦H<2π)は、
Max=Rのとき、
H=π/3・(G−B)/(Max−Min)
Max=Gのとき、
H=π/3・(B−R)/(Max−Min)+2π/3
Max=Bのとき、
H=π/3・(R−G)/(Max−Min)+4π/3
となる。
【0108】
色相Hが算出されたならば、該色相を計測用ターゲット上の位置に順次変換する。
【0109】
上述の例であれば、色相Hがそのままプーリー43の回転角度となる。
【0110】
以上説明したように、本実施形態に係る変位計測装置41によれば、計測用ターゲット45を、周方向の色相と位置とが1対1に対応するように表面をカラーグラデーションで構成するとともに、計測用カラーセンサー47で得られたRGB出力データから色相を算出し、その算出された色相から計測用カラーセンサー47で読み込んだ計測用ターゲット45上の位置を特定するようにしたので、固定部位に対するプーリー43の回転角度を、該プーリーと非接触の状態で計測することが可能となる。
【0111】
そのため、従来のエンコーダにように、機械的接触による摩耗に起因した保守点検あるいは交換が不要になり、大深度地下のような長期にわたるボーリング探査あるいはボーリング掘削にはきわめて有用な手段となる。
【0112】
本実施形態では特に言及しなかったが、プーリー43にボーリングマシンのロッドを吊持するワイヤー50を掛けてあるため、プーリー43の回転数をカウントしてその回転角度の総和を求めることにより、ボーリングマシンによるロッドの掘削深さを求めることができる。
【0113】
また、本実施形態では、計測用ターゲット45を作成するにあたり、周方向に沿って色相が変化する環状のグラデーションで表面を構成したが、これに代えて、周方向に沿って彩度が変化するように構成してもかまわない。
【0114】
例えば緑という色相を固定し、その緑の彩度を純色の緑と無彩色との間で周方向に沿って変化させ、その彩度と周方向に沿った位置とが1対1に対応するように計測用ターゲットを作成しておき、計測用カラーセンサー47で読み込んだとき、そのRGB出力データから彩度を算出し、その彩度から計測部44ひいてはそれと一体のプーリー43の回転角度を特定する。
【0115】
具体的には、RGB出力データの最大値がMax、最小値がMinである場合、彩度S(0≦S≦1)は、
S=(Max−Min)/Max
となるので、彩度Sを計測用ターゲット45の周方向に沿った角度位置に対応づけておけば、Sを算出することでプーリー43の回転角度を特定することができる。
【0116】
また、本実施形態では、計測部44に計測用ターゲット45を配置するようにしたが、これに代えてプーリーを運動体とし、該プーリーの周縁に沿って計測用ターゲット45を直接配置するようにしてもかまわない。
【0117】
また、本実施形態では、プーリー43の回転角度を計測する場合について説明したが、本発明は、回転角度のみならず、並進移動量を算出する場合に用いることも可能であり、かかる変形例においては、計測用ターゲット45を環状ではなく短冊状に構成し、これを油圧シリンダ4を構成するピストンロッド3に取り付けるようにすればよい。
【0118】
なお、かかる変形例の他の構成や作用効果については上述した実施形態と概ね同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0119】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。なお、第1,第2実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0120】
図5(a)は、本実施形態に係る変位計測装置を示した図である。同図でわかるように、本実施形態に係る変位計測装置51は、アーム52の基端側に設けられた球体部53がアーム取付部54に形成された球体状凹部空間56に嵌合されることで、アーム52が該アームの材軸に直交する軸線廻り(同図紙面に直交する軸線廻り)に角度θ1で回動自在となり、かつ上記軸線及びアーム52の材軸の両方に直交する軸線廻り(同図上方向に延びる軸線廻り)に角度θ2で回動自在となるように構成されてなるボールジョイントにおいて、上記直交2軸線廻りのアーム52の回転角度θ1及び回転角度θ2を計測するものであり、アーム取付部54に形成された球体状凹状空間56の内周面に計測用ターゲット55を配置してあるとともに、該計測用ターゲットに対向するようにアーム52の材軸鉛直線上に沿って計測用カラーセンサー57を取り付けてある。
【0121】
計測用ターゲット55は同図(b)に示すように、周方向に沿ってHSV色空間で定義される色相が変化するように、具体的には0から2πの範囲にわたって典型的には赤で始まり、黄、緑、青、紫と変化して赤に戻る色相環上で推移するように、かつ半径方向に沿ってHSV色空間で定義される彩度が0から1の範囲で変化するように、半径Rの円形カラーグラデーションで表面を構成してある。
【0122】
計測用カラーセンサー57は、赤,緑及び青の各色に対応した光強度に対応する電流値を出力できるよう、赤,緑及び青のそれぞれの分光感度に優れた三組の光学フィルタ及びフォトダイオード内蔵のカラーセンサーで構成してある。
【0123】
変位計測装置51は、計測用カラーセンサー57が電気接続されたコンピュータ58を備えるとともに、該コンピュータには、計測用カラーセンサー57の出力データを演算処理する演算処理部59と、該演算処理部からの出力データを出力するモニター、プリンタ等で構成された出力部12とを設けてある。
【0124】
演算処理部59は、計測用カラーセンサー57で得られた各光強度相当の電流値から算出されたRGB出力データから色相及び彩度を算出するとともに、該色相及び彩度から計測用ターゲット55上の読込み位置を特定し、さらにその特定された読込み位置から直交2軸線廻りのアーム52の回転角度θ1及び回転角度θ2を算出するようになっている。
【0125】
本実施形態に係る変位計測装置51でアーム52の直交2軸線廻りの回転角度を計測するには、計測に先立ち、まず、計測用ターゲット55を作成し、これを、アーム取付部54に形成された球体状凹状空間56の内周面に配置するとともに、計測用カラーセンサー57を計測用ターゲット55の表面に対向するようにアーム52の材軸延長線上に取り付ける。
【0126】
次に、アーム52が直交2軸線廻りに回転したしたとき、計測用カラーセンサー57で計測用ターゲット55を読み込むことで、赤,緑及び青の各色に対応する電流値を得る。
【0127】
計測中においては、例えば高照度白色LED光源で計測用ターゲットの表面を照射することにより、読取り精度を高めるのが望ましい。
【0128】
次に、計測用カラーセンサー57で得られた電流値を用いて該計測用カラーセンサー又は演算処理部59でRGB出力データを算出した後、演算処理部59で該RGB出力データをHSV色空間で定義される色相及び彩度に変換する。
【0129】
RGB出力データから色相及び彩度に変換するにあたっては、計測用ターゲット55が、周方向に沿った位置及び半径方向に沿った位置とHSV色空間で定義される色相及び彩度とが一意に定まるように構成してあるので、これに合うように色相及び彩度を例えば以下の換算式で変換すればよい。
【0130】
すなわち、RGB出力データが0から255の範囲で正規化されたものであって各値がR,G,Bであり、それらの最大値がMax、最小値がMinである場合、色相H(0≦H<2π)は、
Max=Rのとき、
H=π/3・(G−B)/(Max−Min)
Max=Gのとき、
H=π/3・(B−R)/(Max−Min)+2π/3
Max=Bのとき、
H=π/3・(R−G)/(Max−Min)+4π/3
となり、彩度S(0≦S≦1)は、
S=(Max−Min)/Max
となる。例えば、計測用ターゲット55の周縁に沿って読取り位置が移動した場合、色相H及び彩度Sは、
(R,G,B)=(255,0,0) → (H,S)=(0,1)
(R,G,B)=(0,255,0) → (H,S)=(2π/3,1)
(R,G,B)=(0,0,255) → (H,S)=(4π/3,1)
と変化し、色相H=0のときに計測用ターゲット55の中心に向けて読取り位置が移動した場合、色相H及び彩度Sは、
(R,G,B)=(255,50,50) →(H,S)=(0,0.804)
(R,G,B)=(255,100,100)→(H,S)=(0,0.608)
(R,G,B)=(255,200,200)→(H,S)=(0,0.216)
と変化する。
【0131】
色相H及び彩度Sが算出されたならば、直交2軸回りの回転角度θ1,θ2は図6に示したように、アーム52の回転中心、すなわち球体部53の中心から計測用ターゲット55までの距離をD、該計測用ターゲットの半径をRとしたとき、次式、
θ1=tan (R・S・sinH/D) (2)
θ2=tan (R・S・cosH/D) (3)
で求めることができる。
【0132】
以上説明したように、本実施形態に係る変位計測装置51によれば、計測用ターゲット55を、周方向の色相及び半径方向の彩度と位置とが1対1に対応するように表面をカラーグラデーションで構成するとともに、計測用カラーセンサー57で得られたRGB出力データから色相及び彩度を算出し、その算出された色相及び彩度から計測用カラーセンサー57で読み込んだ計測用ターゲット55上の位置を特定するようにしたので、アーム52の直交2軸線廻りの回転角度を、アーム52と非接触の状態で計測することが可能となる。
【0133】
そのため、従来のエンコーダにように、機械的接触による摩耗に起因した保守点検あるいは交換が不要になり、大深度地下のような長期にわたるボーリング探査あるいはボーリング掘削にはきわめて有用な手段となる。
【符号の説明】
【0134】
1,31,51 変位計測装置
3 ピストンロッド(運動体)
5,45,55 計測用ターゲット
6 補正用ターゲット
7,47,57 計測用カラーセンサー
8 補正用カラーセンサー
10 参照テーブル
11,49,59 演算処理部
34 計測部(運動体)
52 アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向が運動体の並進方向とそれぞれ平行になり又は回転軸線廻りに回転する運動体の周縁にそれぞれ沿うように前記運動体に近接配置される計測用ターゲット及び補正用ターゲットと、前記計測用ターゲットの表面に対向するように前記運動体近傍の固定部位に取り付けられる計測用カラーセンサーと、前記補正用ターゲットの表面に対向するようにかつ前記計測用カラーセンサーによる前記計測用ターゲット上の読込み位置近傍が前記補正用ターゲット上の読込み位置となるように前記運動体近傍の固定部位に取り付けられる補正用カラーセンサーと、前記計測用カラーセンサー及び前記補正用カラーセンサーで得られた光強度を演算処理する演算処理部とを備え、前記計測用ターゲットを、前記計測用カラーセンサーで得られる光強度が長手方向に沿って単調に増加又は減少するように構成するとともに、前記補正用ターゲットを、前記補正用カラーセンサーによって得られる光強度が長手方向に沿って均一になるように構成した変位計測装置であって、
前記演算処理部は、前記計測用ターゲットの端部からの距離x(0≦x≦L、Lは計測区間長さ)と該距離xにおいて基準照度下で前記計測用カラーセンサーで得られた光強度に対応する電流値I(x)との関係が格納された参照テーブルを備えるとともに、基準照度下において前記補正用カラーセンサーで前記補正用ターゲットを読み込んだときの光強度に対応する電流値をI0、前記運動体の並進運動中又は回転運動中において前記計測用カラーセンサー及び前記補正用カラーセンサーで得られた光強度に対応する電流値をそれぞれI1,I2としたとき、次式、
1=(I2/I0)・I(x) (1)
を満たすxを、前記固定部位に対する前記運動体の並進移動量又は回転角度として算出するようになっていることを特徴とする変位計測装置。
【請求項2】
長手方向が運動体の並進方向と平行になり又は回転軸線廻りに回転する運動体の周縁に沿うように前記運動体に配置され長手方向又は周方向に沿ってHSV色空間で定義される色相又は彩度が変化するように形成されたカラーグラデーションで表面が構成されてなる計測用ターゲットと、赤,緑及び青の各色に対応した光強度に対応する電流値を出力可能でかつ前記計測用ターゲットの表面に対向するように前記運動体近傍の固定部位に取り付けられた計測用カラーセンサーと、該計測用カラーセンサーで得た電流値をRGB出力データとして演算処理する演算処理部とを備え、
前記計測用ターゲットは、その長手方向又は周方向に沿った位置と前記色相又は前記彩度とが一意に定まるように構成してあり、
前記演算処理部は、前記RGB出力データを演算処理して得られる色相又は彩度から前記計測用ターゲット上の読込み位置を特定するとともに、特定された読込み位置から前記固定部位に対する前記運動体の並進移動量又は回転角度を算出するようになっていることを特徴とする変位計測装置。
【請求項3】
油圧シリンダを構成するピストンロッドを前記運動体とし、該ピストンロッドの進退量を前記運動体の並進移動量とした請求項1又は請求項2記載の変位計測装置。
【請求項4】
ウィンチ、プーリーその他の回転体を前記運動体とし、該回転体の回転角度を前記運動体の回転角度とした請求項1又は請求項2記載の変位計測装置。
【請求項5】
アームと該アームの基端側が該アームの材軸に対して直交する軸線廻りとその軸線及び前記アームの材軸に直交する軸線廻りにそれぞれ回動自在となるように連結されたアーム取付部との相対変位を前記直交2軸廻りの前記アームの回転角度として計測する変位計測装置であって、
前記アーム取付部に配置され周方向に沿ってHSV色空間で定義される色相が変化し半径方向に沿って彩度が変化するように形成された円形のカラーグラデーションで表面が構成されてなる計測用ターゲットと、赤,緑及び青の各色に対応した光強度に対応する電流値を出力可能でかつ前記計測用ターゲットの表面に対向するようにかつ前記アームの材軸延長線上に配置される計測用カラーセンサーと、該計測用カラーセンサーで得た電流値をRGB出力データとして演算処理する演算処理部とを備え、
前記計測用ターゲットは、その周方向及び半径方向に沿った位置と前記色相及び彩度とが一意に定まるように構成してあり、
前記演算処理部は、前記RGB出力データを演算処理して得られる色相及び彩度から前記計測用ターゲット上の読込み位置を特定するとともに、特定された読込み位置から前記直交2軸廻りの回転角度を算出するようになっていることを特徴とする変位計測装置。
【請求項6】
前記色相をH(0≦H<2π)、前記彩度をS(0<S≦1)、前記アームの回転中心から前記計測用ターゲットまでの距離をD、該計測用ターゲットの半径をRとしたとき、前記直交2軸回りの回転角度θ1,θ2を、
θ1=tan-1(R・S・sinH/D) (2)
θ2=tan-1(R・S・cosH/D) (3)
から算出する請求項5記載の変位計測装置。
【請求項7】
前記アームと前記アーム取付部との連結構造をボールジョイント又はユニバーサルジョイントとした請求項5又は請求項6記載の変位計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−150000(P2012−150000A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8825(P2011−8825)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】