変形吸収部が設けられた液体輸送タンクを備える船舶
1つ以上の液体輸送タンク(21)を船体内に直立に配置して備えており、これらの輸送タンクが、軸方向および周方向を有しており、それぞれの輸送タンクが、タンク底部(22)、タンク周壁(25)、およびタンク天井(23)を有しており、タンク底部が船体の下部デッキ上に支持され、あるいは船体の下部デッキの一部を形成している船舶(20)。タンク周壁が、タンク周壁の下端および上端にて変形可能な変形吸収部(26)によって船体の下部デッキと上部デッキ(24)との間に懸吊されており、変形吸収部が、少なくとも前記軸方向において船体とタンク周壁との間の変形を吸収するように設計されており、少なくとも下方の変形吸収部は、実質的にタンク周壁の全周を巡って周方向に延びており、少なくとも下方の変形吸収部は、タンクの壁の一部分を形成して、タンク周壁とタンク底部との間の移行の位置に取り入れられ、タンク周壁とタンク底部との間の連続的な封止の接続を形成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状の媒体を輸送するために1つ以上の液体輸送タンクが船体に設けられている船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
化学物質、油、および農産物などの液体の輸送の現在の態様は、主として、矩形の積み荷タンクを船舶に一体に装備しているタンカー、いわゆるパーセル・タンカーである。積み荷タンクは、船舶の構造体の一部であり、タンクの壁が、船体、船体に配置される異形の横方向の隔壁および長手方向の隔壁、ならびに船舶のデッキによって形成されている。
【0003】
ここでの欠点は、荒海での船の変形および温度の相違によってタンクの壁に割れが生じうる点にある。上述の変形は、とくには角の点においてタンクに高い応力集中を引き起こし、これが割れの形成につながる可能性がある。これが生じると、隣接する2つのタンクの間に開口が広がりかねず、結果として、保存されている製品の混合が不都合にも生じる可能性がある。現行の規則においては、交差汚染の危険の防止および危険な状況の回避のために、多数の製品について、隣り合うタンクを異なる製品で満たしてはならないことがすでに規定されている。タンクにてさまざまな製品が輸送される可能性があるという事実ゆえ、その後に輸送される製品が汚染されることがないよう、輸送後にタンクを注意深く清掃しなければならない。しかしながら、タンクの清掃は困難である。これは、一部には、壁を充分に剛性にするために壁の一部分が異形の設計であるためであり、さらには壁が角の点を有しているためである。これは、タンクの清掃のために比較的大量の洗浄水が必要であることを意味し、時として洗浄水を化学廃棄物として排出しなければならないことがあるため、高価かつ環境の観点から望ましくない。さらには、タンク内に残るわずかな程度の汚染は、日常のチェックでは常に検出することが可能ではなく、結果として、その後に輸送される製品を駄目にする可能性がある。タンクの絶縁がより困難であるという事実ゆえ、より大きな温度差が貯蔵されている製品に生じる可能性がある。タンク内を所望の温度に保つことができるよう、より高い温度へと加熱することも必要である。より高い温度は、製品の劣化を生じさせる可能性がある。
【0004】
この技術分野において、かなりの長きにわたって代案を求める探索が続けられてきており、1つの考えは、例えば船体に円筒形の複数の貯蔵タンクを配置することである。例えば、US‐6,167,827号またはDE‐U‐93.09.433号を参照されたい。
【0005】
請求項1の前段部分に記載の船舶が、NL‐C‐1011836号から知られている。この刊行物は、円筒形の輸送タンクを船体に配置して備える船舶を開示している。この場合には、タンクの底部が船体に支持され、円筒形のタンク周壁へと接続されている。タンク周壁の下側と船体との間に、ばね手段が設けられている。ばね手段が、タンク周壁の上下の移動を制限すべく機能する。これは、輸送タンク内の荷物が、タンクの底部を介して船体に直接支持される一方で、タンク周壁が、ばね手段によって形成される限界の範囲内で船体に対してわずかに移動可能であることを意味する。
【0006】
ここで、タンク周壁が比較的厚肉の設計でなければならない点が欠点である。さらに、比較的重いタンクの天井が必要であることが欠点である。この結果として、輸送タンクの総重量が比較的大きくなる。大型化の可能性が制限される一方で、ばね手段が壊れやすく、保守を必要とする。タンクのためのデッキ通路が、柔軟でなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、1つ以上の液体輸送タンクを船体に配置して備える船舶であって、上述の欠点が少なくとも部分的に克服される船舶を提供することにあり、あるいは有効な代案を提供することにある。とくには、本発明の目的は、船舶に配置される液体輸送タンクであって、頑丈であり、船舶の持続的かつ大きな運動および変形にも左右されにくいタンクについて、材料の大きな節約をもたらすことにある。さらに詳しくは、大型化を可能にするとともに、保守をあまり、あるいはまったく必要としない簡潔な構造をもたらすことが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明によれば、1つ以上の液体輸送タンクが船体に設けられてなる請求項1に記載の船舶によって達成される。それぞれの輸送タンクが、タンク天井、ならびに船体の下部デッキ上に支持されたタンク底部または船体の下部デッキと一体であるタンク底部を有している。上記2つの部分の間を延びるタンク周壁は、とくには実質的に円柱形の設計であるが、例えば楕円形、正方形、仕切りつきの複数のローブ状、または多角形など、他の形状であってもよい。タンク周壁の下端が、第1の変形吸収部へと接続され、第1の変形吸収部が、直接的または間接的に船体の下部デッキへと接続されている。さらに、タンク周壁の上端が、第2の変形吸収部へと接続され、第2の変形吸収部が、直接的または間接的に船体の上部デッキへと接続されている。したがって、タンク周壁は、船体の上部デッキと下部デッキとの間で、タンク周壁の上端および下端によって変形吸収部から懸吊されている。変形吸収部は、例えば船体の変形の結果としての変形の吸収を、吸収のプロセスにおいてタンク周壁に変形を生じさせることなく、かつタンク周壁に過度の荷重を加えることなく、吸収部の変形によって行うことができるよう、変形可能な様相に設計されている。下方の変形吸収部は、タンク周壁の全周を巡って周方向に延びており、タンクの壁の一部分を形成して、タンク周壁とタンク底部との間の連続的な封止の接続を形成している。
【0009】
本発明によれば、変形吸収部の主たる機能の1つは、タンク周壁の軸方向の応力を軽減することにある。タンク周壁の軸方向の応力を小さくすることで、タンク周壁にしわが生じる可能性が少なくなる。変形吸収部の軸方向の剛性を、好都合に、軸方向のしわを防止するためにタンク周壁にいかなる剛性も加える必要がないようなやり方で、選択することができる。その結果、タンク周壁の必要な壁厚さを、好都合にも小さく保つことができる。今や、必要な壁厚さは、実質的に、貯蔵されている液体の内圧、曲げモーメントの結果としての軸方向のしわの応力、せん断応力、および製造性によって決定される。
【0010】
水平方向の荷重は、実質的にせん断応力によって変形吸収部によってタンク周壁の下側および上側において船舶へと伝達される。これは、タンク周壁の円周方向における変形吸収部の比較的大きな剛性によって達成できる。すなわち、変形吸収部が円周方向についてタンク周壁を保持する。変形吸収部を、上述の円周方向について実質的に剛性である設計とすることさえ可能であり、結果として船舶への水平方向の荷重の伝達およびタンク周壁の所定の位置への保持によく適している。
【0011】
本発明によれば、タンク周壁がこれ自体の形状を保つことができ、しわを生じることがない。タンク内に貯蔵された液体に加わる加速力は、輸送タンクの上側および下側には比較的小さな反作用力しかもたらさない。この力の作用の結果としての最大モーメントは、今や実質的にタンクを半分まで上った位置に生じる。この最大モーメントも比較的小さい。応力が、タンク周壁の全体に良好に分配され、最大の軸方向の応力は、実質的にタンク周壁を半分まで下がった位置に生じ、最大のせん断応力は、変形吸収部への接続の位置に生じる。したがって、タンク周壁の最小の壁厚さを、好都合にも小さく保つことができる。周壁を、とくには円筒形である場合に、言わば膜状の形態とすることさえ可能である。
【0012】
軸方向および円周方向における変形吸収部の剛性は、変形吸収部の形状および壁の厚さを変えることによって変化させることができる。
【0013】
輸送タンクへの水平方向の力が、下側および上側の両方において船舶へと伝達されるという事実ゆえ、船体には一様な荷重が生じる。船体に沿った途中に、追加の支持構造は不要である。積み込みおよび荷下ろしのために上部デッキを通過する通路を、タンクへと柔軟に接続する必要がない。薄いタンクの壁を充分に絶縁することができ、これがエネルギーの節約および輸送後の製品の高品質をもたらす。輸送タンクの寿命が長くなり、輸送タンクの保守が実質的に不要になる。衝突の場合のタンクの壁の割れの恐れが少なくなる。変形吸収部およびタンクの壁が、衝突の結果としての変形の一部を吸収できる。最後に、変形吸収部は、荷物の温度に依存して生じるタンクの壁の膨張または収縮を吸収するのにも適している。
【0014】
タンクの周壁が、いわば2つのばね(変形吸収部)の間で懸吊されているという事実ゆえ、タンクの周壁が、重力の作用のもとでわずかに沈み込む。ここで、下降または移動の程度は、軸方向における変形吸収部のばね剛性およびタンク周壁の質量によって決定される。上向き方向における変形吸収部のばね剛性を抑えると、タンク周壁が、変形吸収部の間に配置された後に大きく沈み、変形吸収部を圧縮し、あるいは引き伸ばす。この下降または移動についての好ましい実施の形態が、請求項2〜7に記載されている。
【0015】
好都合な実施の形態においては、変形吸収部が、全体にわたって直線状であり、変形吸収部を備えるタンク周壁と同じ材料で作られており、変形吸収部を備えるタンク周壁と同じ壁厚さ曲線を有している基準壁の剛性の1/3以上の剛性を備えて、タンク周壁の周方向に設計されている。
【0016】
さらなる好都合な実施の形態においては、変形吸収部が、全体にわたって直線状であり、変形吸収部を備えるタンク周壁と同じ材料で作られており、変形吸収部を備えるタンク周壁と同じ壁厚さ曲線を有している基準壁の軸方向のばね剛性の比が、変形吸収部を備えるタンク周壁に対して2よりも大きくなるように、タンク周壁の軸方向に設計されている。
【0017】
上述のばね剛性についての条件が、両方とも満足されることが好ましい。このやり方で、タンク周壁を船体において2つの変形吸収部の間に懸吊することができる。
【0018】
タンク天井が、船体の上部デッキの一体の一部分を形成してもよい。
【0019】
しかしながら、タンク底部および/またはタンク天井が、別個独立に設計される場合には、それらが過度の抵抗を伴うことなく船体の変形に追従でき、タンク底部およびタンク天井の壁の厚さを好都合に小さく保つことができる。これらすべてが協働して、材料の顕著な節約を達成可能にしている。
【0020】
とくには、上方の変形吸収部も、実質的にタンク周壁の全周を巡って延びることができる。この連続的な接続が、局所的な応力集中の防止を保証する。
【0021】
さらにとくには、上方の変形吸収部も、タンクの壁の一部分を形成し、タンク周壁とタンク天井との間の移行の位置に取り入れられる。変形吸収部が、タンク周壁とタンク天井との間の連続的な封止の接続を形成する。
【0022】
別途の変形可能な支持部材を、軸方向についてタンク周壁を支持するため、および/または液体の圧力の一部を吸収するために、設けることが可能である。これにより、変形吸収部を、軸方向に実質的に自由に、すなわち過度の抵抗を伴うことなく動けるように設計することができる。しかしながら、変形吸収部を、2つの変形吸収部の協働によってタンク周壁を部分的に支持でき、あるいは完全にさえ支持できるように、タンクの軸方向について剛性にすることも可能である。この後者の場合、タンク周壁が、最終的に、追加の支持部材を設ける必要なく、いわば変形吸収部の間に懸吊される。
【0023】
変形吸収部は、好都合に、少なくとも輸送タンクの周方向においては剛性である。これは、変形吸収部の形状、壁厚さ、強度、および種々の方向の剛性の間の適切な比によって達成できる。変形吸収部が周方向において剛性であり、すなわち荷重のもとでも周方向について自体の形状を保つため、変形吸収部によってタンク周壁が所定の位置に保持される。
【0024】
船舶のさらなる好ましい実施の形態が、従属請求項に記載される。
【0025】
さらに、本発明は、本発明による船舶のための輸送タンク、そのような輸送タンクを船舶に配置する方法、およびそのような船舶の使用に関する。
【0026】
本発明を、添付の図面を参照してさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1に、輸送タンクの全体が、参照番号1によって示されている。輸送タンク1は、タンク底部2、円筒形のタンク周壁3、およびタンク天井4で構成されている。タンク底部2は、平坦な設計であって、絶縁層6を介在させて船体(詳しくは示されていない)の下部デッキ7へと接続されている。タンク天井4は、絶縁層8を介在させて船体の上部デッキ9へと接続されている。タンク周壁3は、変形可能な支持手段12によって、底部に向かって不完全に支持されている。支持手段12は、タンク周壁3の底部に係合している。変形吸収部15、16が、タンクの壁に取り入れられている。ここでは、変形吸収部15、16が、断面が四分円の形状の部位(円の4分の1のように形作られている)として形成され、それぞれタンク底部2またはタンク天井4とタンク周壁3との間に広がっている。変形吸収部15、16は、タンク1の全体を巡って広がっており、タンク1の円周方向において剛性である設計である。さらに、吸収部15、16は、上部デッキの下部デッキに対する変形が作用したときに異なる形状をとることができるよう、タンク1の半径および軸方向に変形可能に設計されている。これは、図示の実施の形態においては、四分円形状の部位が広がることができ、あるいは張り出すことができることを意味する。変形吸収部15、16を充分に正確な寸法とすることで、これら変形吸収部によって、予想される船体の変形を確実に吸収できるようにすることができる。これは、船体の変形を、変形吸収部15、16の適切な変形によって実質的に吸収することが、タンク周壁3を大きな荷重にさらすことなく、かつ/または変形させることなく、好都合に可能であることを意味する。結果として、タンク周壁3を、しわまたは割れを生じることなく薄肉の設計とすることができる。
【0028】
タンク底部2およびタンク天井4は、好都合に、下部および上部デッキ7、9の変形または移動に容易に追従できるよう、薄肉の設計である。
【0029】
支持部材12が、タンク周壁3の軸方向の支持を提供している。
【0030】
変形吸収部は、タンクの壁の他の部分と同様に、鋼で製作することができ、とくには例えばDuplex 2205またはステンレス鋼304などといったステンレス鋼で製作することができる。プラスチック、とくには繊維補強のプラスチックも、使用可能である。
【0031】
取り付けの際、好都合に、変形吸収部を、あらかじめ張力を加えた状態でタンクの他の壁部品へ接続することができ、たとえば溶接することができる。これにより、変形吸収部へと好都合な荷重をもたらすことができる。支持手段にあらかじめ張力を与えること、および支持手段にばねの移動の制限を設けることも考えられる。
【0032】
タンク底部、タンク天井、およびタンク周壁を、例えば通常の鋼またはステンレス鋼で製作される場合には、一般的な厚さである25mmよりも薄くすることができ、とくには約5〜15mmの厚さとすることができる。変形吸収部の厚さは、約5〜15mmであってよい。これは、部分的には、高さ‐直径比および材料に依存して決まる。部分的には、このタンクの壁の薄肉の設計のおかげで、本発明による輸送タンクの材料の節約が達成できる。
【0033】
図2は、輸送タンク21を前記船体に配置して備えている船舶20を示している。下側において、タンク21が自体のタンク底部22によって船体の底部へと接続されている。上側においては、タンク21のタンク天井23が、船体の上部デッキ24から吊り下げられている。さらに、タンクの壁は、円筒形のタンク周壁25を含んでいる。変形吸収部26が、軸方向に延びる2つのひだを備えるベローズ状の変形吸収部として、タンクの壁に取り入れられている。ひだは、タンク周壁25を通過する仮想の面の各側に延びている。これは、変形吸収部がタンク周壁25に対して対称に位置し、したがって変形吸収部の位置において、下方への液体の圧力が生じることがないという利点を有している。ここでは、別個の支持部材が省略されている。
【0034】
変形吸収部の実施の形態の他のいくつかの変化形態が、図3に示されている。これらの変化形態のそれぞれの場合において、設計者は、壁の厚さおよび材料の選択(強度および弾性係数)の相互の協調において、所望のとおりに設計を行うことができる。下方に示した5つの変化形態には、変形吸収部へと加わる積み荷からの圧力による力を吸収するための手段が設けられている。それら手段は、ここでは、変形吸収部の外側に配置された圧縮可能な支持部材によって形成されている。ここでの例は、前もって成形されたゴム製の支持ブロック、ばね、限られた圧縮性の絶縁材料、液体バッグ、などである。この結果として、変形吸収部をより薄く製作することができ、したがって、さらに大きい変形さえも吸収することが可能になる。
【0035】
さらに図3は、変形吸収部が、互いに実質的に直角につながるタンク周壁あるいはタンク底部またはタンク天井の壁部品によって形成されている変化形態を示している。所望であれば、接続の位置にわずかな丸みを設けることが可能である。船体の変形は、とくには、タンク底部またはタンク天井への接続の付近の変形吸収部の壁部分を、例えばこの壁部分をこの点において薄肉にすることによってわずかに上下に移動できるように設計することによっても、吸収することができる。接続の付近に、ばね手段を設けることも可能であり、とくにはばね手段にあらかじめ張力を与えることができ、とくにはばね手段をタンクの軸方向に動作させることができる。
【0036】
図4〜6においては、タンク周壁40が、2つの変形吸収部41、42によって船体45の上部デッキ43および下部デッキ44から直接的に懸吊されている。ここでは、タンク底部およびタンク天井が、それぞれ下部デッキ44および上部デッキ43の一体の一部分を形成している。変形吸収部41、42は、どちらもベローズ状の設計であり、タンク周壁40の全体に沿って周方向に延び、それぞれタンク周壁40とタンク底部との間およびタンク周壁40とタンク天井との間に、連続的な封止の接続を形成している。タンク周壁40は、ここでは円筒形の設計である。図5が、この場合には船舶の下部デッキ、壁体、および上部デッキのねじりおよび曲げの組み合わせである変形が船体45に存在する場合に、この変形が変形吸収部41、42によって完全に吸収されることを明確に示している。これらの変形吸収部は、軸方向に、すなわちタンク周壁40の中心線と平行に、局所的に圧縮され、局所的に引き延ばされている。これによってタンク周壁40へと加わる追加の荷重は、わずかまたはゼロであり、結果としてタンク周壁40は、実質的にもとの形状を維持することができる。
【0037】
図7は、船体71に設けられた本発明によるいくつかの輸送タンク70を示している。タンク70は、さまざまな寸法を有しており、したがって船体71の自由空間を完全に利用することができる。さらに、タンク70は、それらの周壁を互いに接触させることなく、かつ船体にも接触させることなく配置されている。変形吸収部72が、タンクの全体を巡って延びてタンクの壁の一体の一部分を形成していることを、明確に見て取ることができる。
【0038】
以下の図においては、同一および同様の部品を、可能な限り同じ参照番号によって指し示している。
【0039】
図8は、タンク底部80およびタンク天井81が別個の部品として設計されている図6の変化形態を示している。どちらも、それぞれ下部および上部デッキ44および43に完全に支持されている。変形吸収部42、41が、それぞれタンク底部80およびタンク天井81へと、さらには/あるいはそれぞれ下部および上部デッキ44および43へと恒久的に接続されている。
【0040】
図9は、タンク底部80が、例えばコルク層またはサンドイッチ層など、わずかに圧縮可能である層90によって下部デッキ44に支持されている図8の変化形態を示している。下方の変形吸収部42が、タンク底部80および下部デッキ44の両者へと接続されている。タンク天井81は、セクション91によって上部デッキ43に支持されている。上方の変形吸収部41が、ここではタンク天井81と上部デッキ43の両方へと接続されている。
【0041】
図10は、今度は、タンク底部80が、セクション100によって下部デッキ44に支持され、タンク天井が、わずかに圧縮可能である層101によって上部デッキ43へと接続されている図9の変化形態を示している。
【0042】
図11は、タンク底部80およびタンク天井81の両者が、圧縮可能な層110に支持されている変化形態を示している。変形吸収部111は、ここでは、2つの半円形の変形部分によって形成されている。
【0043】
図12は、タンク周壁120が上部および下部の半円形の変形部分121の間に懸吊されている変化形態を示している。さらに、またさらなる変形吸収部122が、タンク周壁120に一体化されている。ここでは、これらの変形吸収部が、変形部分121と同じ形状である。
【0044】
図13は、下部および上部の変形吸収部130が、それぞれ下部および上部デッキの方向において直線断面の部分132へと合流する半円形断面の部分131を有している。
【0045】
図14は、タンク周壁140の全体が、互いに接続されたベローズ状断面の部分で製作されている一変化形態を示している。ここでは、上部および下部の部分が、変形吸収部141、142を形成しており、これらの間にタンク周壁140が懸吊されている。
【0046】
図15は、中央に向かって下方へと傾斜しているタンク底部150が、セクション151によって底部デッキ44に支持されている図10の変化形態を示している。ここでは、タンク底部150が、例えば下部デッキ44に対して5度の傾斜角度を有している。これの利点は、タンクを容易に空にして清掃できる点にある。
【0047】
図16は、剛性のタンク天井160がタンク周壁40に支持されている図9の変化形態を示している。タンク周壁40およびタンク天井160が、変形吸収部161によって上部デッキ43から吊り下げられている。したがって、変形吸収部161は、タンク内の液体を仕切らなければならないタンクの壁の一部を構成しているわけではない。さらには、1つ以上の別個の支持部材162が設けられており、これによってタンク周壁40の上方への移動を制限することができる。この上方への移動は、例えばタンク天井160に対する液体の圧力の結果として生じる可能性がある。
【0048】
図17は、タンク天井がタンク周壁40上に直接支持されたドーム状の天井170によって形成されている図16の変化形態を示している。下方の変形吸収部171は、四分円の形状の部位によって形成されている。支持部材162は、ここでは省略されている。しかしながら、タンク周壁の下端が、支持部材172へと接続されている。支持部材172は、好ましくは、変形吸収部171への液体の圧力の結果としての変形吸収部171の圧縮を防止するため、およびタンク天井170への液体の圧力の結果としてのタンク周壁40の上方への移動を最小限にするために、引っ張りおよび圧縮のばねを含んでいる。
【0049】
図18は、タンク天井81がセクション180によって上部デッキ43から吊り下げられている一変化形態を示している。タンク周壁40が、下部の変形吸収部171と上部の変形吸収部181との間に懸吊されている。上部の変形吸収部181は、部分的にはタンクの壁と一体であり、部分的にはタンクの壁の上方でタンクと上部デッキ43との間を延びている。一体の部分は、四分円の形状の変形部分183と水平部分184とを含んでいる。タンクの壁の外側に位置する部分は、半円形の変形部分185を含んでいる。ここでは、支持部材172が、ゴム製ブロックまたは連続的なゴム接続186を備えて設計されている。
【0050】
図19は、変形吸収部190、191のそれぞれが、2つの半円形の変形部分192、193と真っ直ぐな壁部分194、195とを有しており、2つの半円形の変形部分192、193および真っ直ぐな壁部分194、195が、どちらもタンクの壁の一部を形成している一変化形態を示している。さらに、スカート壁196、197が設けられており、これらのスカート壁がそれぞれ、温度差の結果としてのタンクの壁の半径方向の膨張を吸収できるよう、一方では変形吸収部190、191へと接続され、他方では下部および上部デッキへと固定されている。ここで、これは、タンク底部およびタンク天井が、下部デッキおよび上部デッキに対して水平方向に滑動できるセクション198、199において軸方向に支持されているために必要である。同様に、変形吸収部190、191のそれぞれの下側および上側も、固定ではなく滑動可能な様相で、それぞれ下部および上部のデッキへと接続されている。この変化形態においては、タンクが、水平方向について、スカート壁196、197によってのみ支持されている。スカート壁196、197は、好ましくは、タンクの全周を巡って延びている。
【0051】
図20は、半径方向および軸方向の変形を吸収でき、かつ軸方向についてタンクの壁を支持できるようにスカート壁201、202が設計されている図19の一変化形態を示している。軸方向の剛性を適切な大きさとすることで、追加の支持手段が不要になる。円周方向においては、スカート壁201、202は、タンクを所定の位置に保持することができるよう、やはり比較的剛性である。さらに、変形吸収部が、ここでは、タンクの壁に取り入れられた四分円の形状の部位203、204によって形成されている。図19の場合とちょうど同じように、ここでもタンク底部およびタンク天井は、それぞれ下部および上部のデッキにおいて水平方向に滑動可能に支持されている。
【0052】
以下の図21に関する数値の例では、以下のデータを有する円筒形のステンレス鋼製タンクを仮定する。
【0053】
タンク高さ h=7000mm
タンク半径 r=5000mm
タンク周壁の壁厚さ tw=5mm
ステンレス鋼の密度 ρstainless steel=7950kg/mm3
ステンレス鋼の弾性係数 E=200000N/mm2
重力加速度 g=9.81m/s2
ステンレス鋼の許容引張応力 σtoe=240N/mm2
2つの変形吸収部は、同じ形状であって、以下の寸法を有している。
【0054】
変形吸収部の高さ hop=1000mm
変形吸収部の幅 bop=100mm
変形吸収部の壁厚さ top=4mm
タンク周壁の高さ htw=5000mm
単一の変形吸収部について、FEMによる計算によって以下の特性を割り出した。
【0055】
【数1】
【0056】
【数2】
下から半分の位置におけるタンクの壁の下降は、理論的には、タンクの壁そのものの剛性を無視すれば、
【0057】
【数3】
であり、ここで、
Gtw=タンク周壁の重量(単位は、外周1mmあたりのN)
Cp=1つの変形吸収部の剛性(単位は、N/mm/mm)
であり、
【0058】
【数4】
【0059】
【数5】
となる。
【0060】
請求項2からの式によるタンクの壁の最小限の下降は、
【0061】
【数6】
となるはずである。
【0062】
したがって、タンクの壁は、請求項2による最小値の15倍を超えてさらに下降する。
【0063】
変形吸収部の軸方向の剛性が同じであるため、下部デッキに対する上部デッキの移動が存在するとき、これらの変形吸収部が等しい変形を吸収する。壁全体の変形能力は、タンク周壁の変形能を無視すると、
【0064】
【数7】
である。
【0065】
請求項5によれば、タンク周壁が変形吸収部との協働において、上部デッキの下部デッキに対する少なくともY×h/1000=1×7000/1000=7mmの移動に耐えることができなければならない。したがって、タンク周壁と変形吸収部との協働によって、請求項5による最小値よりも少なくとも3.4倍大きい変形を吸収することができる。
【0066】
タンク周壁と変形吸収部との協働による軸方向の剛性を、以下で基準壁の軸方向の剛性と比較する。基準壁は、
・全体にわたって直線状であり、
・タンクの周壁および変形吸収部と同じ材料で作られており、
・タンクの周壁および変形吸収部と同じ壁厚さ曲線を有している。
【0067】
一般に、基準壁の軸方向の剛性は、
【0068】
【数8】
のように決定できるといえ、
ここで、
Cw=軸方向における基準壁の剛性(1ミリメートルの円周の1ミリメートルの圧縮をニュートンで表現[N/mm2])
N=縁の荷重(円周1mm当たりの荷重をニュートンで表現[N/mm])
δw=特定の縁の荷重における基準壁の圧縮(単位は、ミリメートル[mm])
である。
【0069】
タンク周壁および変形部位が、一様な材料で製作され、すべてが等しくかつ一様である厚さを有する場合、基準壁の剛性は
【0070】
【数9】
Cw=軸方向における基準壁の剛性[N/mm2]
E=弾性係数[N/mm2]
tw=(一様である)基準壁の厚さ[mm]
hw=タンクの高さに等しい基準壁の高さ[mm]
に等しい。
【0071】
タンク周壁および変形部位が、異なる壁厚さを有しており、異なる材料で製作されている場合、基準壁の軸方向の剛性に関して、
【0072】
【数10】
が当てはまる。
【0073】
この場合、基準壁が、それぞれが固有の壁厚さ、固有の高さ、および固有の弾性係数を有しているN個の円筒形の壁部分へと分割される。これは、前記数値例による基準壁の剛性を、
【0074】
【数11】
のように決定できることを意味する。
【0075】
変形吸収部を備えるタンク周壁の剛性は、Cwpである。この剛性は、
【0076】
【数12】
のように定められる。
【0077】
この剛性は、
【0078】
【数13】
のように計算できる。
【0079】
これにより、基準壁の軸方向のばね剛性と変形吸収部を備えるタンク周壁の軸方向のばね剛性との間の比は、
【0080】
【数14】
となる。
【0081】
請求項8によれば、この比の最小値は2以上であり、したがってこの例における剛性の比は、100倍を超えて大きい。
【0082】
請求項16によれば、変形吸収部のうちの少なくとも1つの剛性が、20N/mm/mm以下である。ここでは、両方の変形吸収部の剛性が1.22N/mm/mmであり、すなわち20未満である。
【0083】
請求項19によれば、タンク周壁の壁の厚さが、X未満でなければならない。Xについて、
【0084】
【数15】
が当てはまり、
【0085】
【数16】
であるため、
X=max[(23.6)and(10)]=23.6mm
である。
【0086】
タンクの周壁の壁の厚さは5mmであり、したがって23.6mm未満である。
【0087】
変形吸収部のために選択される材料に応じ、変形吸収部がタンクの壁の一体の一部分を形成しているか否かに応じ、さらには輸送される積み荷に応じて、前記吸収部を、ステンレス鋼の層などの化学的耐性を有するコーティングまたは内張りで被覆することができる。
【0088】
ここに示した実施の形態の他にも、多数の変化形態が可能である。例えば、図面からの種々の態様を、さらに互いに組み合わせることが可能である。タンク底部またはタンク天井が、例えばドーム状または円錐形など、平坦でない形状であってもよい。また、変形吸収部について、それらが軸方向および円周方向のそれぞれの変形能について設定される要件を依然として満足し、このやり方でタンク周壁から好都合に荷重を取り除く限りにおいて、他の実施の形態も考えられる。また、支持部材が、例えばいくつかの油圧ピストン‐シリンダ・システムを円周を巡って分布配置した形式など、制御可能な形式であってもよい。とくには、この場合に測定センサを設けて、現在の測定値に応じて支持部材を制御することが可能である。
【0089】
本発明による輸送タンクは、液体の輸送を意図しており、とくには大気圧のもとで輸送されなければならない液体の輸送を意図している。とくには、輸送タンクが、内部に液体を、液体のレベルの上方の最大で実質的に1barの追加の圧力で保存するように設計されている。
【0090】
変形吸収部を、いくつかの層で形成することができ、その場合には、とくには複数の層が互いに接続されず、したがってお互いに対して動くことができる。これにより、変形吸収部に大きな柔軟性がもたらされる。
【0091】
このやり方で、本発明は、タンク周壁がタンク周壁の下側および上側の変形吸収部の使用との組み合わせにおいて上部デッキと下部デッキとの間に懸吊されるという事実ゆえ、輸送タンクおよび船体内での輸送タンクの支持に関して、材料のきわめて大きな節約を可能にするきわめて好都合な設計をもたらす。結果として、製造コストおよび輸送コストが相応に小さくなるとともに、たとえ衝突の場合でも、輸送の高度の安全性および信頼性が保証される。輸送タンクを、工場の状況で好都合に製造することができ、次いで絶縁された状態または他のやり方で船体へと接続することができる。絶縁手段を設ける場合には、タンクの外側に設けることができる。タンクを容易に清掃することができ、清掃を自動化することさえ可能である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】船体に配置された本発明による円筒形の輸送タンクの実施の形態の部分的概略断面図である。
【図2】輸送タンクの一変化形態を内部に配置して備えている船舶の概略断面図である。
【図3】使用可能な変形吸収部の実施の形態の一連の変化形態を示している。
【図4】図2の変化形態の正面図である。
【図5】変形した状態にある図4の変化形態を示している。
【図6】図4の部分的断面図である。
【図7】図4によるいくつかの輸送タンクを内部に配置して備えている船体の切断斜視図である。
【図8−14】図6の変化形態を示している。
【図15】斜めのタンク底部を有する変化形態を示している。
【図16−18】上方の変形吸収部のすべてまたは一部がタンクの壁の外側に設けられている変化形態を示している。
【図19−20】追加のスカート構造を有する変化形態を示している。
【図21】図6の変化形態をパラメータを表示して概略的に示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状の媒体を輸送するために1つ以上の液体輸送タンクが船体に設けられている船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
化学物質、油、および農産物などの液体の輸送の現在の態様は、主として、矩形の積み荷タンクを船舶に一体に装備しているタンカー、いわゆるパーセル・タンカーである。積み荷タンクは、船舶の構造体の一部であり、タンクの壁が、船体、船体に配置される異形の横方向の隔壁および長手方向の隔壁、ならびに船舶のデッキによって形成されている。
【0003】
ここでの欠点は、荒海での船の変形および温度の相違によってタンクの壁に割れが生じうる点にある。上述の変形は、とくには角の点においてタンクに高い応力集中を引き起こし、これが割れの形成につながる可能性がある。これが生じると、隣接する2つのタンクの間に開口が広がりかねず、結果として、保存されている製品の混合が不都合にも生じる可能性がある。現行の規則においては、交差汚染の危険の防止および危険な状況の回避のために、多数の製品について、隣り合うタンクを異なる製品で満たしてはならないことがすでに規定されている。タンクにてさまざまな製品が輸送される可能性があるという事実ゆえ、その後に輸送される製品が汚染されることがないよう、輸送後にタンクを注意深く清掃しなければならない。しかしながら、タンクの清掃は困難である。これは、一部には、壁を充分に剛性にするために壁の一部分が異形の設計であるためであり、さらには壁が角の点を有しているためである。これは、タンクの清掃のために比較的大量の洗浄水が必要であることを意味し、時として洗浄水を化学廃棄物として排出しなければならないことがあるため、高価かつ環境の観点から望ましくない。さらには、タンク内に残るわずかな程度の汚染は、日常のチェックでは常に検出することが可能ではなく、結果として、その後に輸送される製品を駄目にする可能性がある。タンクの絶縁がより困難であるという事実ゆえ、より大きな温度差が貯蔵されている製品に生じる可能性がある。タンク内を所望の温度に保つことができるよう、より高い温度へと加熱することも必要である。より高い温度は、製品の劣化を生じさせる可能性がある。
【0004】
この技術分野において、かなりの長きにわたって代案を求める探索が続けられてきており、1つの考えは、例えば船体に円筒形の複数の貯蔵タンクを配置することである。例えば、US‐6,167,827号またはDE‐U‐93.09.433号を参照されたい。
【0005】
請求項1の前段部分に記載の船舶が、NL‐C‐1011836号から知られている。この刊行物は、円筒形の輸送タンクを船体に配置して備える船舶を開示している。この場合には、タンクの底部が船体に支持され、円筒形のタンク周壁へと接続されている。タンク周壁の下側と船体との間に、ばね手段が設けられている。ばね手段が、タンク周壁の上下の移動を制限すべく機能する。これは、輸送タンク内の荷物が、タンクの底部を介して船体に直接支持される一方で、タンク周壁が、ばね手段によって形成される限界の範囲内で船体に対してわずかに移動可能であることを意味する。
【0006】
ここで、タンク周壁が比較的厚肉の設計でなければならない点が欠点である。さらに、比較的重いタンクの天井が必要であることが欠点である。この結果として、輸送タンクの総重量が比較的大きくなる。大型化の可能性が制限される一方で、ばね手段が壊れやすく、保守を必要とする。タンクのためのデッキ通路が、柔軟でなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、1つ以上の液体輸送タンクを船体に配置して備える船舶であって、上述の欠点が少なくとも部分的に克服される船舶を提供することにあり、あるいは有効な代案を提供することにある。とくには、本発明の目的は、船舶に配置される液体輸送タンクであって、頑丈であり、船舶の持続的かつ大きな運動および変形にも左右されにくいタンクについて、材料の大きな節約をもたらすことにある。さらに詳しくは、大型化を可能にするとともに、保守をあまり、あるいはまったく必要としない簡潔な構造をもたらすことが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明によれば、1つ以上の液体輸送タンクが船体に設けられてなる請求項1に記載の船舶によって達成される。それぞれの輸送タンクが、タンク天井、ならびに船体の下部デッキ上に支持されたタンク底部または船体の下部デッキと一体であるタンク底部を有している。上記2つの部分の間を延びるタンク周壁は、とくには実質的に円柱形の設計であるが、例えば楕円形、正方形、仕切りつきの複数のローブ状、または多角形など、他の形状であってもよい。タンク周壁の下端が、第1の変形吸収部へと接続され、第1の変形吸収部が、直接的または間接的に船体の下部デッキへと接続されている。さらに、タンク周壁の上端が、第2の変形吸収部へと接続され、第2の変形吸収部が、直接的または間接的に船体の上部デッキへと接続されている。したがって、タンク周壁は、船体の上部デッキと下部デッキとの間で、タンク周壁の上端および下端によって変形吸収部から懸吊されている。変形吸収部は、例えば船体の変形の結果としての変形の吸収を、吸収のプロセスにおいてタンク周壁に変形を生じさせることなく、かつタンク周壁に過度の荷重を加えることなく、吸収部の変形によって行うことができるよう、変形可能な様相に設計されている。下方の変形吸収部は、タンク周壁の全周を巡って周方向に延びており、タンクの壁の一部分を形成して、タンク周壁とタンク底部との間の連続的な封止の接続を形成している。
【0009】
本発明によれば、変形吸収部の主たる機能の1つは、タンク周壁の軸方向の応力を軽減することにある。タンク周壁の軸方向の応力を小さくすることで、タンク周壁にしわが生じる可能性が少なくなる。変形吸収部の軸方向の剛性を、好都合に、軸方向のしわを防止するためにタンク周壁にいかなる剛性も加える必要がないようなやり方で、選択することができる。その結果、タンク周壁の必要な壁厚さを、好都合にも小さく保つことができる。今や、必要な壁厚さは、実質的に、貯蔵されている液体の内圧、曲げモーメントの結果としての軸方向のしわの応力、せん断応力、および製造性によって決定される。
【0010】
水平方向の荷重は、実質的にせん断応力によって変形吸収部によってタンク周壁の下側および上側において船舶へと伝達される。これは、タンク周壁の円周方向における変形吸収部の比較的大きな剛性によって達成できる。すなわち、変形吸収部が円周方向についてタンク周壁を保持する。変形吸収部を、上述の円周方向について実質的に剛性である設計とすることさえ可能であり、結果として船舶への水平方向の荷重の伝達およびタンク周壁の所定の位置への保持によく適している。
【0011】
本発明によれば、タンク周壁がこれ自体の形状を保つことができ、しわを生じることがない。タンク内に貯蔵された液体に加わる加速力は、輸送タンクの上側および下側には比較的小さな反作用力しかもたらさない。この力の作用の結果としての最大モーメントは、今や実質的にタンクを半分まで上った位置に生じる。この最大モーメントも比較的小さい。応力が、タンク周壁の全体に良好に分配され、最大の軸方向の応力は、実質的にタンク周壁を半分まで下がった位置に生じ、最大のせん断応力は、変形吸収部への接続の位置に生じる。したがって、タンク周壁の最小の壁厚さを、好都合にも小さく保つことができる。周壁を、とくには円筒形である場合に、言わば膜状の形態とすることさえ可能である。
【0012】
軸方向および円周方向における変形吸収部の剛性は、変形吸収部の形状および壁の厚さを変えることによって変化させることができる。
【0013】
輸送タンクへの水平方向の力が、下側および上側の両方において船舶へと伝達されるという事実ゆえ、船体には一様な荷重が生じる。船体に沿った途中に、追加の支持構造は不要である。積み込みおよび荷下ろしのために上部デッキを通過する通路を、タンクへと柔軟に接続する必要がない。薄いタンクの壁を充分に絶縁することができ、これがエネルギーの節約および輸送後の製品の高品質をもたらす。輸送タンクの寿命が長くなり、輸送タンクの保守が実質的に不要になる。衝突の場合のタンクの壁の割れの恐れが少なくなる。変形吸収部およびタンクの壁が、衝突の結果としての変形の一部を吸収できる。最後に、変形吸収部は、荷物の温度に依存して生じるタンクの壁の膨張または収縮を吸収するのにも適している。
【0014】
タンクの周壁が、いわば2つのばね(変形吸収部)の間で懸吊されているという事実ゆえ、タンクの周壁が、重力の作用のもとでわずかに沈み込む。ここで、下降または移動の程度は、軸方向における変形吸収部のばね剛性およびタンク周壁の質量によって決定される。上向き方向における変形吸収部のばね剛性を抑えると、タンク周壁が、変形吸収部の間に配置された後に大きく沈み、変形吸収部を圧縮し、あるいは引き伸ばす。この下降または移動についての好ましい実施の形態が、請求項2〜7に記載されている。
【0015】
好都合な実施の形態においては、変形吸収部が、全体にわたって直線状であり、変形吸収部を備えるタンク周壁と同じ材料で作られており、変形吸収部を備えるタンク周壁と同じ壁厚さ曲線を有している基準壁の剛性の1/3以上の剛性を備えて、タンク周壁の周方向に設計されている。
【0016】
さらなる好都合な実施の形態においては、変形吸収部が、全体にわたって直線状であり、変形吸収部を備えるタンク周壁と同じ材料で作られており、変形吸収部を備えるタンク周壁と同じ壁厚さ曲線を有している基準壁の軸方向のばね剛性の比が、変形吸収部を備えるタンク周壁に対して2よりも大きくなるように、タンク周壁の軸方向に設計されている。
【0017】
上述のばね剛性についての条件が、両方とも満足されることが好ましい。このやり方で、タンク周壁を船体において2つの変形吸収部の間に懸吊することができる。
【0018】
タンク天井が、船体の上部デッキの一体の一部分を形成してもよい。
【0019】
しかしながら、タンク底部および/またはタンク天井が、別個独立に設計される場合には、それらが過度の抵抗を伴うことなく船体の変形に追従でき、タンク底部およびタンク天井の壁の厚さを好都合に小さく保つことができる。これらすべてが協働して、材料の顕著な節約を達成可能にしている。
【0020】
とくには、上方の変形吸収部も、実質的にタンク周壁の全周を巡って延びることができる。この連続的な接続が、局所的な応力集中の防止を保証する。
【0021】
さらにとくには、上方の変形吸収部も、タンクの壁の一部分を形成し、タンク周壁とタンク天井との間の移行の位置に取り入れられる。変形吸収部が、タンク周壁とタンク天井との間の連続的な封止の接続を形成する。
【0022】
別途の変形可能な支持部材を、軸方向についてタンク周壁を支持するため、および/または液体の圧力の一部を吸収するために、設けることが可能である。これにより、変形吸収部を、軸方向に実質的に自由に、すなわち過度の抵抗を伴うことなく動けるように設計することができる。しかしながら、変形吸収部を、2つの変形吸収部の協働によってタンク周壁を部分的に支持でき、あるいは完全にさえ支持できるように、タンクの軸方向について剛性にすることも可能である。この後者の場合、タンク周壁が、最終的に、追加の支持部材を設ける必要なく、いわば変形吸収部の間に懸吊される。
【0023】
変形吸収部は、好都合に、少なくとも輸送タンクの周方向においては剛性である。これは、変形吸収部の形状、壁厚さ、強度、および種々の方向の剛性の間の適切な比によって達成できる。変形吸収部が周方向において剛性であり、すなわち荷重のもとでも周方向について自体の形状を保つため、変形吸収部によってタンク周壁が所定の位置に保持される。
【0024】
船舶のさらなる好ましい実施の形態が、従属請求項に記載される。
【0025】
さらに、本発明は、本発明による船舶のための輸送タンク、そのような輸送タンクを船舶に配置する方法、およびそのような船舶の使用に関する。
【0026】
本発明を、添付の図面を参照してさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1に、輸送タンクの全体が、参照番号1によって示されている。輸送タンク1は、タンク底部2、円筒形のタンク周壁3、およびタンク天井4で構成されている。タンク底部2は、平坦な設計であって、絶縁層6を介在させて船体(詳しくは示されていない)の下部デッキ7へと接続されている。タンク天井4は、絶縁層8を介在させて船体の上部デッキ9へと接続されている。タンク周壁3は、変形可能な支持手段12によって、底部に向かって不完全に支持されている。支持手段12は、タンク周壁3の底部に係合している。変形吸収部15、16が、タンクの壁に取り入れられている。ここでは、変形吸収部15、16が、断面が四分円の形状の部位(円の4分の1のように形作られている)として形成され、それぞれタンク底部2またはタンク天井4とタンク周壁3との間に広がっている。変形吸収部15、16は、タンク1の全体を巡って広がっており、タンク1の円周方向において剛性である設計である。さらに、吸収部15、16は、上部デッキの下部デッキに対する変形が作用したときに異なる形状をとることができるよう、タンク1の半径および軸方向に変形可能に設計されている。これは、図示の実施の形態においては、四分円形状の部位が広がることができ、あるいは張り出すことができることを意味する。変形吸収部15、16を充分に正確な寸法とすることで、これら変形吸収部によって、予想される船体の変形を確実に吸収できるようにすることができる。これは、船体の変形を、変形吸収部15、16の適切な変形によって実質的に吸収することが、タンク周壁3を大きな荷重にさらすことなく、かつ/または変形させることなく、好都合に可能であることを意味する。結果として、タンク周壁3を、しわまたは割れを生じることなく薄肉の設計とすることができる。
【0028】
タンク底部2およびタンク天井4は、好都合に、下部および上部デッキ7、9の変形または移動に容易に追従できるよう、薄肉の設計である。
【0029】
支持部材12が、タンク周壁3の軸方向の支持を提供している。
【0030】
変形吸収部は、タンクの壁の他の部分と同様に、鋼で製作することができ、とくには例えばDuplex 2205またはステンレス鋼304などといったステンレス鋼で製作することができる。プラスチック、とくには繊維補強のプラスチックも、使用可能である。
【0031】
取り付けの際、好都合に、変形吸収部を、あらかじめ張力を加えた状態でタンクの他の壁部品へ接続することができ、たとえば溶接することができる。これにより、変形吸収部へと好都合な荷重をもたらすことができる。支持手段にあらかじめ張力を与えること、および支持手段にばねの移動の制限を設けることも考えられる。
【0032】
タンク底部、タンク天井、およびタンク周壁を、例えば通常の鋼またはステンレス鋼で製作される場合には、一般的な厚さである25mmよりも薄くすることができ、とくには約5〜15mmの厚さとすることができる。変形吸収部の厚さは、約5〜15mmであってよい。これは、部分的には、高さ‐直径比および材料に依存して決まる。部分的には、このタンクの壁の薄肉の設計のおかげで、本発明による輸送タンクの材料の節約が達成できる。
【0033】
図2は、輸送タンク21を前記船体に配置して備えている船舶20を示している。下側において、タンク21が自体のタンク底部22によって船体の底部へと接続されている。上側においては、タンク21のタンク天井23が、船体の上部デッキ24から吊り下げられている。さらに、タンクの壁は、円筒形のタンク周壁25を含んでいる。変形吸収部26が、軸方向に延びる2つのひだを備えるベローズ状の変形吸収部として、タンクの壁に取り入れられている。ひだは、タンク周壁25を通過する仮想の面の各側に延びている。これは、変形吸収部がタンク周壁25に対して対称に位置し、したがって変形吸収部の位置において、下方への液体の圧力が生じることがないという利点を有している。ここでは、別個の支持部材が省略されている。
【0034】
変形吸収部の実施の形態の他のいくつかの変化形態が、図3に示されている。これらの変化形態のそれぞれの場合において、設計者は、壁の厚さおよび材料の選択(強度および弾性係数)の相互の協調において、所望のとおりに設計を行うことができる。下方に示した5つの変化形態には、変形吸収部へと加わる積み荷からの圧力による力を吸収するための手段が設けられている。それら手段は、ここでは、変形吸収部の外側に配置された圧縮可能な支持部材によって形成されている。ここでの例は、前もって成形されたゴム製の支持ブロック、ばね、限られた圧縮性の絶縁材料、液体バッグ、などである。この結果として、変形吸収部をより薄く製作することができ、したがって、さらに大きい変形さえも吸収することが可能になる。
【0035】
さらに図3は、変形吸収部が、互いに実質的に直角につながるタンク周壁あるいはタンク底部またはタンク天井の壁部品によって形成されている変化形態を示している。所望であれば、接続の位置にわずかな丸みを設けることが可能である。船体の変形は、とくには、タンク底部またはタンク天井への接続の付近の変形吸収部の壁部分を、例えばこの壁部分をこの点において薄肉にすることによってわずかに上下に移動できるように設計することによっても、吸収することができる。接続の付近に、ばね手段を設けることも可能であり、とくにはばね手段にあらかじめ張力を与えることができ、とくにはばね手段をタンクの軸方向に動作させることができる。
【0036】
図4〜6においては、タンク周壁40が、2つの変形吸収部41、42によって船体45の上部デッキ43および下部デッキ44から直接的に懸吊されている。ここでは、タンク底部およびタンク天井が、それぞれ下部デッキ44および上部デッキ43の一体の一部分を形成している。変形吸収部41、42は、どちらもベローズ状の設計であり、タンク周壁40の全体に沿って周方向に延び、それぞれタンク周壁40とタンク底部との間およびタンク周壁40とタンク天井との間に、連続的な封止の接続を形成している。タンク周壁40は、ここでは円筒形の設計である。図5が、この場合には船舶の下部デッキ、壁体、および上部デッキのねじりおよび曲げの組み合わせである変形が船体45に存在する場合に、この変形が変形吸収部41、42によって完全に吸収されることを明確に示している。これらの変形吸収部は、軸方向に、すなわちタンク周壁40の中心線と平行に、局所的に圧縮され、局所的に引き延ばされている。これによってタンク周壁40へと加わる追加の荷重は、わずかまたはゼロであり、結果としてタンク周壁40は、実質的にもとの形状を維持することができる。
【0037】
図7は、船体71に設けられた本発明によるいくつかの輸送タンク70を示している。タンク70は、さまざまな寸法を有しており、したがって船体71の自由空間を完全に利用することができる。さらに、タンク70は、それらの周壁を互いに接触させることなく、かつ船体にも接触させることなく配置されている。変形吸収部72が、タンクの全体を巡って延びてタンクの壁の一体の一部分を形成していることを、明確に見て取ることができる。
【0038】
以下の図においては、同一および同様の部品を、可能な限り同じ参照番号によって指し示している。
【0039】
図8は、タンク底部80およびタンク天井81が別個の部品として設計されている図6の変化形態を示している。どちらも、それぞれ下部および上部デッキ44および43に完全に支持されている。変形吸収部42、41が、それぞれタンク底部80およびタンク天井81へと、さらには/あるいはそれぞれ下部および上部デッキ44および43へと恒久的に接続されている。
【0040】
図9は、タンク底部80が、例えばコルク層またはサンドイッチ層など、わずかに圧縮可能である層90によって下部デッキ44に支持されている図8の変化形態を示している。下方の変形吸収部42が、タンク底部80および下部デッキ44の両者へと接続されている。タンク天井81は、セクション91によって上部デッキ43に支持されている。上方の変形吸収部41が、ここではタンク天井81と上部デッキ43の両方へと接続されている。
【0041】
図10は、今度は、タンク底部80が、セクション100によって下部デッキ44に支持され、タンク天井が、わずかに圧縮可能である層101によって上部デッキ43へと接続されている図9の変化形態を示している。
【0042】
図11は、タンク底部80およびタンク天井81の両者が、圧縮可能な層110に支持されている変化形態を示している。変形吸収部111は、ここでは、2つの半円形の変形部分によって形成されている。
【0043】
図12は、タンク周壁120が上部および下部の半円形の変形部分121の間に懸吊されている変化形態を示している。さらに、またさらなる変形吸収部122が、タンク周壁120に一体化されている。ここでは、これらの変形吸収部が、変形部分121と同じ形状である。
【0044】
図13は、下部および上部の変形吸収部130が、それぞれ下部および上部デッキの方向において直線断面の部分132へと合流する半円形断面の部分131を有している。
【0045】
図14は、タンク周壁140の全体が、互いに接続されたベローズ状断面の部分で製作されている一変化形態を示している。ここでは、上部および下部の部分が、変形吸収部141、142を形成しており、これらの間にタンク周壁140が懸吊されている。
【0046】
図15は、中央に向かって下方へと傾斜しているタンク底部150が、セクション151によって底部デッキ44に支持されている図10の変化形態を示している。ここでは、タンク底部150が、例えば下部デッキ44に対して5度の傾斜角度を有している。これの利点は、タンクを容易に空にして清掃できる点にある。
【0047】
図16は、剛性のタンク天井160がタンク周壁40に支持されている図9の変化形態を示している。タンク周壁40およびタンク天井160が、変形吸収部161によって上部デッキ43から吊り下げられている。したがって、変形吸収部161は、タンク内の液体を仕切らなければならないタンクの壁の一部を構成しているわけではない。さらには、1つ以上の別個の支持部材162が設けられており、これによってタンク周壁40の上方への移動を制限することができる。この上方への移動は、例えばタンク天井160に対する液体の圧力の結果として生じる可能性がある。
【0048】
図17は、タンク天井がタンク周壁40上に直接支持されたドーム状の天井170によって形成されている図16の変化形態を示している。下方の変形吸収部171は、四分円の形状の部位によって形成されている。支持部材162は、ここでは省略されている。しかしながら、タンク周壁の下端が、支持部材172へと接続されている。支持部材172は、好ましくは、変形吸収部171への液体の圧力の結果としての変形吸収部171の圧縮を防止するため、およびタンク天井170への液体の圧力の結果としてのタンク周壁40の上方への移動を最小限にするために、引っ張りおよび圧縮のばねを含んでいる。
【0049】
図18は、タンク天井81がセクション180によって上部デッキ43から吊り下げられている一変化形態を示している。タンク周壁40が、下部の変形吸収部171と上部の変形吸収部181との間に懸吊されている。上部の変形吸収部181は、部分的にはタンクの壁と一体であり、部分的にはタンクの壁の上方でタンクと上部デッキ43との間を延びている。一体の部分は、四分円の形状の変形部分183と水平部分184とを含んでいる。タンクの壁の外側に位置する部分は、半円形の変形部分185を含んでいる。ここでは、支持部材172が、ゴム製ブロックまたは連続的なゴム接続186を備えて設計されている。
【0050】
図19は、変形吸収部190、191のそれぞれが、2つの半円形の変形部分192、193と真っ直ぐな壁部分194、195とを有しており、2つの半円形の変形部分192、193および真っ直ぐな壁部分194、195が、どちらもタンクの壁の一部を形成している一変化形態を示している。さらに、スカート壁196、197が設けられており、これらのスカート壁がそれぞれ、温度差の結果としてのタンクの壁の半径方向の膨張を吸収できるよう、一方では変形吸収部190、191へと接続され、他方では下部および上部デッキへと固定されている。ここで、これは、タンク底部およびタンク天井が、下部デッキおよび上部デッキに対して水平方向に滑動できるセクション198、199において軸方向に支持されているために必要である。同様に、変形吸収部190、191のそれぞれの下側および上側も、固定ではなく滑動可能な様相で、それぞれ下部および上部のデッキへと接続されている。この変化形態においては、タンクが、水平方向について、スカート壁196、197によってのみ支持されている。スカート壁196、197は、好ましくは、タンクの全周を巡って延びている。
【0051】
図20は、半径方向および軸方向の変形を吸収でき、かつ軸方向についてタンクの壁を支持できるようにスカート壁201、202が設計されている図19の一変化形態を示している。軸方向の剛性を適切な大きさとすることで、追加の支持手段が不要になる。円周方向においては、スカート壁201、202は、タンクを所定の位置に保持することができるよう、やはり比較的剛性である。さらに、変形吸収部が、ここでは、タンクの壁に取り入れられた四分円の形状の部位203、204によって形成されている。図19の場合とちょうど同じように、ここでもタンク底部およびタンク天井は、それぞれ下部および上部のデッキにおいて水平方向に滑動可能に支持されている。
【0052】
以下の図21に関する数値の例では、以下のデータを有する円筒形のステンレス鋼製タンクを仮定する。
【0053】
タンク高さ h=7000mm
タンク半径 r=5000mm
タンク周壁の壁厚さ tw=5mm
ステンレス鋼の密度 ρstainless steel=7950kg/mm3
ステンレス鋼の弾性係数 E=200000N/mm2
重力加速度 g=9.81m/s2
ステンレス鋼の許容引張応力 σtoe=240N/mm2
2つの変形吸収部は、同じ形状であって、以下の寸法を有している。
【0054】
変形吸収部の高さ hop=1000mm
変形吸収部の幅 bop=100mm
変形吸収部の壁厚さ top=4mm
タンク周壁の高さ htw=5000mm
単一の変形吸収部について、FEMによる計算によって以下の特性を割り出した。
【0055】
【数1】
【0056】
【数2】
下から半分の位置におけるタンクの壁の下降は、理論的には、タンクの壁そのものの剛性を無視すれば、
【0057】
【数3】
であり、ここで、
Gtw=タンク周壁の重量(単位は、外周1mmあたりのN)
Cp=1つの変形吸収部の剛性(単位は、N/mm/mm)
であり、
【0058】
【数4】
【0059】
【数5】
となる。
【0060】
請求項2からの式によるタンクの壁の最小限の下降は、
【0061】
【数6】
となるはずである。
【0062】
したがって、タンクの壁は、請求項2による最小値の15倍を超えてさらに下降する。
【0063】
変形吸収部の軸方向の剛性が同じであるため、下部デッキに対する上部デッキの移動が存在するとき、これらの変形吸収部が等しい変形を吸収する。壁全体の変形能力は、タンク周壁の変形能を無視すると、
【0064】
【数7】
である。
【0065】
請求項5によれば、タンク周壁が変形吸収部との協働において、上部デッキの下部デッキに対する少なくともY×h/1000=1×7000/1000=7mmの移動に耐えることができなければならない。したがって、タンク周壁と変形吸収部との協働によって、請求項5による最小値よりも少なくとも3.4倍大きい変形を吸収することができる。
【0066】
タンク周壁と変形吸収部との協働による軸方向の剛性を、以下で基準壁の軸方向の剛性と比較する。基準壁は、
・全体にわたって直線状であり、
・タンクの周壁および変形吸収部と同じ材料で作られており、
・タンクの周壁および変形吸収部と同じ壁厚さ曲線を有している。
【0067】
一般に、基準壁の軸方向の剛性は、
【0068】
【数8】
のように決定できるといえ、
ここで、
Cw=軸方向における基準壁の剛性(1ミリメートルの円周の1ミリメートルの圧縮をニュートンで表現[N/mm2])
N=縁の荷重(円周1mm当たりの荷重をニュートンで表現[N/mm])
δw=特定の縁の荷重における基準壁の圧縮(単位は、ミリメートル[mm])
である。
【0069】
タンク周壁および変形部位が、一様な材料で製作され、すべてが等しくかつ一様である厚さを有する場合、基準壁の剛性は
【0070】
【数9】
Cw=軸方向における基準壁の剛性[N/mm2]
E=弾性係数[N/mm2]
tw=(一様である)基準壁の厚さ[mm]
hw=タンクの高さに等しい基準壁の高さ[mm]
に等しい。
【0071】
タンク周壁および変形部位が、異なる壁厚さを有しており、異なる材料で製作されている場合、基準壁の軸方向の剛性に関して、
【0072】
【数10】
が当てはまる。
【0073】
この場合、基準壁が、それぞれが固有の壁厚さ、固有の高さ、および固有の弾性係数を有しているN個の円筒形の壁部分へと分割される。これは、前記数値例による基準壁の剛性を、
【0074】
【数11】
のように決定できることを意味する。
【0075】
変形吸収部を備えるタンク周壁の剛性は、Cwpである。この剛性は、
【0076】
【数12】
のように定められる。
【0077】
この剛性は、
【0078】
【数13】
のように計算できる。
【0079】
これにより、基準壁の軸方向のばね剛性と変形吸収部を備えるタンク周壁の軸方向のばね剛性との間の比は、
【0080】
【数14】
となる。
【0081】
請求項8によれば、この比の最小値は2以上であり、したがってこの例における剛性の比は、100倍を超えて大きい。
【0082】
請求項16によれば、変形吸収部のうちの少なくとも1つの剛性が、20N/mm/mm以下である。ここでは、両方の変形吸収部の剛性が1.22N/mm/mmであり、すなわち20未満である。
【0083】
請求項19によれば、タンク周壁の壁の厚さが、X未満でなければならない。Xについて、
【0084】
【数15】
が当てはまり、
【0085】
【数16】
であるため、
X=max[(23.6)and(10)]=23.6mm
である。
【0086】
タンクの周壁の壁の厚さは5mmであり、したがって23.6mm未満である。
【0087】
変形吸収部のために選択される材料に応じ、変形吸収部がタンクの壁の一体の一部分を形成しているか否かに応じ、さらには輸送される積み荷に応じて、前記吸収部を、ステンレス鋼の層などの化学的耐性を有するコーティングまたは内張りで被覆することができる。
【0088】
ここに示した実施の形態の他にも、多数の変化形態が可能である。例えば、図面からの種々の態様を、さらに互いに組み合わせることが可能である。タンク底部またはタンク天井が、例えばドーム状または円錐形など、平坦でない形状であってもよい。また、変形吸収部について、それらが軸方向および円周方向のそれぞれの変形能について設定される要件を依然として満足し、このやり方でタンク周壁から好都合に荷重を取り除く限りにおいて、他の実施の形態も考えられる。また、支持部材が、例えばいくつかの油圧ピストン‐シリンダ・システムを円周を巡って分布配置した形式など、制御可能な形式であってもよい。とくには、この場合に測定センサを設けて、現在の測定値に応じて支持部材を制御することが可能である。
【0089】
本発明による輸送タンクは、液体の輸送を意図しており、とくには大気圧のもとで輸送されなければならない液体の輸送を意図している。とくには、輸送タンクが、内部に液体を、液体のレベルの上方の最大で実質的に1barの追加の圧力で保存するように設計されている。
【0090】
変形吸収部を、いくつかの層で形成することができ、その場合には、とくには複数の層が互いに接続されず、したがってお互いに対して動くことができる。これにより、変形吸収部に大きな柔軟性がもたらされる。
【0091】
このやり方で、本発明は、タンク周壁がタンク周壁の下側および上側の変形吸収部の使用との組み合わせにおいて上部デッキと下部デッキとの間に懸吊されるという事実ゆえ、輸送タンクおよび船体内での輸送タンクの支持に関して、材料のきわめて大きな節約を可能にするきわめて好都合な設計をもたらす。結果として、製造コストおよび輸送コストが相応に小さくなるとともに、たとえ衝突の場合でも、輸送の高度の安全性および信頼性が保証される。輸送タンクを、工場の状況で好都合に製造することができ、次いで絶縁された状態または他のやり方で船体へと接続することができる。絶縁手段を設ける場合には、タンクの外側に設けることができる。タンクを容易に清掃することができ、清掃を自動化することさえ可能である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】船体に配置された本発明による円筒形の輸送タンクの実施の形態の部分的概略断面図である。
【図2】輸送タンクの一変化形態を内部に配置して備えている船舶の概略断面図である。
【図3】使用可能な変形吸収部の実施の形態の一連の変化形態を示している。
【図4】図2の変化形態の正面図である。
【図5】変形した状態にある図4の変化形態を示している。
【図6】図4の部分的断面図である。
【図7】図4によるいくつかの輸送タンクを内部に配置して備えている船体の切断斜視図である。
【図8−14】図6の変化形態を示している。
【図15】斜めのタンク底部を有する変化形態を示している。
【図16−18】上方の変形吸収部のすべてまたは一部がタンクの壁の外側に設けられている変化形態を示している。
【図19−20】追加のスカート構造を有する変化形態を示している。
【図21】図6の変化形態をパラメータを表示して概略的に示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の液体輸送タンクを船体内に直立に配置して備えており、前記輸送タンクが、軸方向および周方向を有しており、それぞれの輸送タンクが、
・タンク底部、
・タンク周壁、および
・タンク天井
を有しており、タンク底部が船体の下部デッキ上に支持され、あるいは船体の下部デッキの一部を形成している船舶であって、
タンク周壁が、タンク周壁の下端および上端にて変形可能な変形吸収部によって船体の下部デッキと上部デッキとの間に懸吊されており、
変形吸収部が、少なくとも前記軸方向において船体とタンク周壁との間の変形を吸収するように設計されており、
少なくとも下方の変形吸収部は、実質的にタンク周壁の全周を巡って周方向に延びており、
少なくとも下方の変形吸収部は、タンクの壁の一部分を形成して、タンク周壁とタンク底部との間の移行の位置に取り入れられ、タンク周壁とタンク底部との間の連続的な封止の接続を形成している
ことを特徴とする船舶。
【請求項2】
変形吸収部の間に懸吊された後で、タンクの壁が重力の作用のもとで上述の軸方向に下方へと沈んで、同時に変形吸収部を変形させ、
変形吸収部の剛性が、タンク周壁の半分まで上がった位置において測定されるタンク周壁の上述の軸方向の下降に以下の式:
【数1】
c≧1e−7
h=タンクの高さ(単位は、ミリメートル)
r=タンク周壁の平均半径(単位は、ミリメートル)
が当てはまるような剛性である請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
c≧2e−7である請求項2に記載の船舶。
【請求項4】
c≧10e−7である請求項3に記載の船舶。
【請求項5】
タンク周壁が変形吸収部との協働において、上部デッキの下部デッキに対する少なくともY×h/1000(Y≧1、h=タンクの高さ(単位は、mm))の軸方向の移動を、変形吸収部および/またはタンク周壁を塑性変形させることなく、変形吸収部および/タンク周壁における許容弾性を超えることなく、かつ/またはタンク周壁にしわを生じさせることなく、吸収することができる請求項1〜4のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項6】
Y≧2である請求項5に記載の船舶。
【請求項7】
Y≧4である請求項5に記載の船舶。
【請求項8】
変形吸収部との協働におけるタンク周壁の上述の軸方向のばね剛性Cwpについて、全体にわたって直線状であり、同じ材料で作られており、同じ壁厚さ曲線を有している基準壁の上述の軸方向のばね剛性Cwに対する比に関して、Cw/Cwp≧2が当てはまる請求項1〜7のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項9】
Cw/Cwp≧25である請求項8に記載の船舶。
【請求項10】
Cw/Cwp≧50である請求項9に記載の船舶。
【請求項11】
変形吸収部のうちの少なくとも1つが、全体にわたって直線状であり、変形吸収部を備えるタンク周壁と同じ材料で作られており、変形吸収部を備えるタンク周壁と同じ壁厚さ曲線を有している基準壁の上述の円周方向における剛性の1/3以上の剛性を、上述の円周方向について有している請求項1〜10の一項に記載の船舶。
【請求項12】
変形吸収部が、少なくとも上述の軸方向において実質的に弾性的な変形を通じて船体とタンク周壁との間の変形を吸収すべく、弾性的に変形できるように配置されている請求項1〜11の一項に記載の船舶。
【請求項13】
上方の変形吸収部が、実質的にタンク周壁の全周を巡って周方向に延びている請求項1〜12の一項に記載の船舶。
【請求項14】
タンク天井が、船体の上部デッキに支持され、あるいは船体の上部デッキの一部を形成しており、
上方の変形吸収部が、タンクの壁の一部分を形成して、タンク周壁とタンク天井との間の移行の位置に取り入れられ、タンク周壁とタンク天井との間の連続的な封止の接続を形成している請求項13に記載の船舶。
【請求項15】
変形吸収部のうちの少なくとも1つが、部分的に軸方向に延び、かつ部分的に半径方向に延びている請求項1〜14の一項に記載の船舶。
【請求項16】
変形吸収部のうちの少なくとも1つにおいて、上述の軸方向におけるばね剛性が、1ミリメートルの円周について1ミリメートルの圧縮につき20ニュートン以下である請求項1〜15の一項に記載の船舶。
【請求項17】
上述の方向における上述のばね剛性が、1ミリメートルの円周について1ミリメートルの圧縮につき15ニュートン以下である請求項16に記載の船舶。
【請求項18】
上述の方向における上述のばね剛性が、1ミリメートルの円周について1ミリメートルの圧縮につき10ニュートン以下である請求項17に記載の船舶。
【請求項19】
タンク周壁の壁の厚さについて、
壁の厚さ(単位は、ミリメートル)≦X
が当てはまり、
ここで、Xについて、
【数2】
K≧0.15
Z≧10
σtoe=タンク周壁の許容引張応力(単位は、N/mm2)
h=タンクの高さ(単位は、mm)
D=タンク周壁の直径(単位は、mm)
が当てはまる請求項1〜18のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項20】
K≧0.13かつZ≧9である請求項19に記載の船舶。
【請求項21】
K≧0.11かつZ≧8である請求項19に記載の船舶。
【請求項22】
タンク底部が、下部デッキ上に支持され、下部デッキに対して5°の最大傾斜角度を有している請求項1〜21の一項に記載の船舶。
【請求項23】
タンク天井が、タンク周壁に支持され、
上方の変形吸収部が、タンク周壁の上端と船体との間を延びている請求項1〜22の一項に記載の船舶。
【請求項24】
変形吸収部のうちの少なくとも1つが、輸送タンクの周方向において剛性である請求項1〜23の一項に記載の船舶。
【請求項25】
変形吸収部のうちの少なくとも1つが、輸送タンクの軸方向において、タンク周壁を少なくとも部分的に支持するように設計されている請求項1〜24の一項に記載の船舶。
【請求項26】
支持手段が、タンク周壁を少なくとも軸方向について支持するために設けられている請求項1〜25の一項に記載の船舶。
【請求項27】
支持手段が、船体とタンク周壁との間を延びる別個独立な変形可能な支持部材を有している請求項26に記載の船舶。
【請求項28】
変形吸収部のうちの少なくとも1つが、断面が実質的に四分円の形状である部位として設計されている請求項1〜27の一項に記載の船舶。
【請求項29】
変形吸収部のうちの少なくとも1つが、ベローズ状の変形部位として設計されている請求項1〜28のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項30】
変形吸収部のうちの少なくとも1つが、ステンレス鋼からなる請求項1〜29の一項に記載の船舶。
【請求項31】
変形吸収部のうちの少なくとも1つが、繊維補強のプラスチックからなる請求項1〜30の一項に記載の船舶。
【請求項32】
変形吸収部の内側に、化学的耐性を有する内張りが設けられている請求項1〜31の一項に記載の船舶。
【請求項33】
タンク底部および/またはタンク天井が、絶縁層によって下部デッキおよび上部デッキにそれぞれ支持されている請求項1〜32の一項に記載の船舶。
【請求項34】
変形吸収部が部分的に、軸方向に延びる真っ直ぐな壁で構成されている請求項1〜33の一項に記載の船舶。
【請求項35】
タンク周壁が、上側および/または下側のスカート構造によって当該船舶へと接続されている請求項1〜34の一項に記載の船舶。
【請求項36】
輸送タンクが、内部に液体を、実質的に1bar未満である液体のレベルの上方の追加の圧力にて保存するように設計されている請求項1〜35の一項に記載の船舶。
【請求項37】
変形吸収部のうちの少なくとも1つが、複数の壁を備えて設計されている請求項1〜36の一項に記載の船舶。
【請求項38】
タンク周壁が、実質的に円筒形である請求項1〜37の一項に記載の船舶。
【請求項39】
タンク周壁が、下端と上端との間に1つ以上の変形吸収部を有している請求項1〜38の一項に記載の船舶。
【請求項40】
タンク周壁の1つ以上の変形吸収部が、タンク周壁をタンク周壁の下端および/または上端にて船体の下部デッキおよび上部デッキから懸吊している変形吸収部と、実質的に同じ形状であるように設計されている請求項39に記載の船舶。
【請求項41】
請求項1〜40の一項に記載の船舶のための液体輸送タンク。
【請求項42】
請求項41に記載の液体輸送タンクを船舶に配置するための方法。
【請求項43】
変形吸収部のうちの少なくとも1つが、あらかじめ張力を与えられた状態でタンク周壁、タンク底部、タンク天井、および/または船体へと接続される請求項42に記載の方法。
【請求項44】
船体に1つ以上の液体輸送タンクを配置して備えている請求項1〜40の一項に記載の船舶の、液体の輸送への使用。
【請求項1】
1つ以上の液体輸送タンクを船体内に直立に配置して備えており、前記輸送タンクが、軸方向および周方向を有しており、それぞれの輸送タンクが、
・タンク底部、
・タンク周壁、および
・タンク天井
を有しており、タンク底部が船体の下部デッキ上に支持され、あるいは船体の下部デッキの一部を形成している船舶であって、
タンク周壁が、タンク周壁の下端および上端にて変形可能な変形吸収部によって船体の下部デッキと上部デッキとの間に懸吊されており、
変形吸収部が、少なくとも前記軸方向において船体とタンク周壁との間の変形を吸収するように設計されており、
少なくとも下方の変形吸収部は、実質的にタンク周壁の全周を巡って周方向に延びており、
少なくとも下方の変形吸収部は、タンクの壁の一部分を形成して、タンク周壁とタンク底部との間の移行の位置に取り入れられ、タンク周壁とタンク底部との間の連続的な封止の接続を形成している
ことを特徴とする船舶。
【請求項2】
変形吸収部の間に懸吊された後で、タンクの壁が重力の作用のもとで上述の軸方向に下方へと沈んで、同時に変形吸収部を変形させ、
変形吸収部の剛性が、タンク周壁の半分まで上がった位置において測定されるタンク周壁の上述の軸方向の下降に以下の式:
【数1】
c≧1e−7
h=タンクの高さ(単位は、ミリメートル)
r=タンク周壁の平均半径(単位は、ミリメートル)
が当てはまるような剛性である請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
c≧2e−7である請求項2に記載の船舶。
【請求項4】
c≧10e−7である請求項3に記載の船舶。
【請求項5】
タンク周壁が変形吸収部との協働において、上部デッキの下部デッキに対する少なくともY×h/1000(Y≧1、h=タンクの高さ(単位は、mm))の軸方向の移動を、変形吸収部および/またはタンク周壁を塑性変形させることなく、変形吸収部および/タンク周壁における許容弾性を超えることなく、かつ/またはタンク周壁にしわを生じさせることなく、吸収することができる請求項1〜4のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項6】
Y≧2である請求項5に記載の船舶。
【請求項7】
Y≧4である請求項5に記載の船舶。
【請求項8】
変形吸収部との協働におけるタンク周壁の上述の軸方向のばね剛性Cwpについて、全体にわたって直線状であり、同じ材料で作られており、同じ壁厚さ曲線を有している基準壁の上述の軸方向のばね剛性Cwに対する比に関して、Cw/Cwp≧2が当てはまる請求項1〜7のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項9】
Cw/Cwp≧25である請求項8に記載の船舶。
【請求項10】
Cw/Cwp≧50である請求項9に記載の船舶。
【請求項11】
変形吸収部のうちの少なくとも1つが、全体にわたって直線状であり、変形吸収部を備えるタンク周壁と同じ材料で作られており、変形吸収部を備えるタンク周壁と同じ壁厚さ曲線を有している基準壁の上述の円周方向における剛性の1/3以上の剛性を、上述の円周方向について有している請求項1〜10の一項に記載の船舶。
【請求項12】
変形吸収部が、少なくとも上述の軸方向において実質的に弾性的な変形を通じて船体とタンク周壁との間の変形を吸収すべく、弾性的に変形できるように配置されている請求項1〜11の一項に記載の船舶。
【請求項13】
上方の変形吸収部が、実質的にタンク周壁の全周を巡って周方向に延びている請求項1〜12の一項に記載の船舶。
【請求項14】
タンク天井が、船体の上部デッキに支持され、あるいは船体の上部デッキの一部を形成しており、
上方の変形吸収部が、タンクの壁の一部分を形成して、タンク周壁とタンク天井との間の移行の位置に取り入れられ、タンク周壁とタンク天井との間の連続的な封止の接続を形成している請求項13に記載の船舶。
【請求項15】
変形吸収部のうちの少なくとも1つが、部分的に軸方向に延び、かつ部分的に半径方向に延びている請求項1〜14の一項に記載の船舶。
【請求項16】
変形吸収部のうちの少なくとも1つにおいて、上述の軸方向におけるばね剛性が、1ミリメートルの円周について1ミリメートルの圧縮につき20ニュートン以下である請求項1〜15の一項に記載の船舶。
【請求項17】
上述の方向における上述のばね剛性が、1ミリメートルの円周について1ミリメートルの圧縮につき15ニュートン以下である請求項16に記載の船舶。
【請求項18】
上述の方向における上述のばね剛性が、1ミリメートルの円周について1ミリメートルの圧縮につき10ニュートン以下である請求項17に記載の船舶。
【請求項19】
タンク周壁の壁の厚さについて、
壁の厚さ(単位は、ミリメートル)≦X
が当てはまり、
ここで、Xについて、
【数2】
K≧0.15
Z≧10
σtoe=タンク周壁の許容引張応力(単位は、N/mm2)
h=タンクの高さ(単位は、mm)
D=タンク周壁の直径(単位は、mm)
が当てはまる請求項1〜18のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項20】
K≧0.13かつZ≧9である請求項19に記載の船舶。
【請求項21】
K≧0.11かつZ≧8である請求項19に記載の船舶。
【請求項22】
タンク底部が、下部デッキ上に支持され、下部デッキに対して5°の最大傾斜角度を有している請求項1〜21の一項に記載の船舶。
【請求項23】
タンク天井が、タンク周壁に支持され、
上方の変形吸収部が、タンク周壁の上端と船体との間を延びている請求項1〜22の一項に記載の船舶。
【請求項24】
変形吸収部のうちの少なくとも1つが、輸送タンクの周方向において剛性である請求項1〜23の一項に記載の船舶。
【請求項25】
変形吸収部のうちの少なくとも1つが、輸送タンクの軸方向において、タンク周壁を少なくとも部分的に支持するように設計されている請求項1〜24の一項に記載の船舶。
【請求項26】
支持手段が、タンク周壁を少なくとも軸方向について支持するために設けられている請求項1〜25の一項に記載の船舶。
【請求項27】
支持手段が、船体とタンク周壁との間を延びる別個独立な変形可能な支持部材を有している請求項26に記載の船舶。
【請求項28】
変形吸収部のうちの少なくとも1つが、断面が実質的に四分円の形状である部位として設計されている請求項1〜27の一項に記載の船舶。
【請求項29】
変形吸収部のうちの少なくとも1つが、ベローズ状の変形部位として設計されている請求項1〜28のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項30】
変形吸収部のうちの少なくとも1つが、ステンレス鋼からなる請求項1〜29の一項に記載の船舶。
【請求項31】
変形吸収部のうちの少なくとも1つが、繊維補強のプラスチックからなる請求項1〜30の一項に記載の船舶。
【請求項32】
変形吸収部の内側に、化学的耐性を有する内張りが設けられている請求項1〜31の一項に記載の船舶。
【請求項33】
タンク底部および/またはタンク天井が、絶縁層によって下部デッキおよび上部デッキにそれぞれ支持されている請求項1〜32の一項に記載の船舶。
【請求項34】
変形吸収部が部分的に、軸方向に延びる真っ直ぐな壁で構成されている請求項1〜33の一項に記載の船舶。
【請求項35】
タンク周壁が、上側および/または下側のスカート構造によって当該船舶へと接続されている請求項1〜34の一項に記載の船舶。
【請求項36】
輸送タンクが、内部に液体を、実質的に1bar未満である液体のレベルの上方の追加の圧力にて保存するように設計されている請求項1〜35の一項に記載の船舶。
【請求項37】
変形吸収部のうちの少なくとも1つが、複数の壁を備えて設計されている請求項1〜36の一項に記載の船舶。
【請求項38】
タンク周壁が、実質的に円筒形である請求項1〜37の一項に記載の船舶。
【請求項39】
タンク周壁が、下端と上端との間に1つ以上の変形吸収部を有している請求項1〜38の一項に記載の船舶。
【請求項40】
タンク周壁の1つ以上の変形吸収部が、タンク周壁をタンク周壁の下端および/または上端にて船体の下部デッキおよび上部デッキから懸吊している変形吸収部と、実質的に同じ形状であるように設計されている請求項39に記載の船舶。
【請求項41】
請求項1〜40の一項に記載の船舶のための液体輸送タンク。
【請求項42】
請求項41に記載の液体輸送タンクを船舶に配置するための方法。
【請求項43】
変形吸収部のうちの少なくとも1つが、あらかじめ張力を与えられた状態でタンク周壁、タンク底部、タンク天井、および/または船体へと接続される請求項42に記載の方法。
【請求項44】
船体に1つ以上の液体輸送タンクを配置して備えている請求項1〜40の一項に記載の船舶の、液体の輸送への使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2008−534371(P2008−534371A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503978(P2008−503978)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【国際出願番号】PCT/NL2006/000171
【国際公開番号】WO2006/104386
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(507324360)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【国際出願番号】PCT/NL2006/000171
【国際公開番号】WO2006/104386
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(507324360)
【Fターム(参考)】
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