変性アルギネートおよびその製造方法および用途
【課題】カチオン結合特にカルシウム結合の損傷およびヒドロゲルの安定性の損失を制限するために側鎖分子を有する選択的に変性したアルギネート並びにその繊維およびゲルの提供。
【解決手段】a)リンカーを有するかまたは有しないアルギネートポリマーの1つ以上の未変性モノマー性サブユニットに変性用成分を共有結合的に結合させる工程、そして
b)アルギネートポリマーの1つ以上の未変性マンヌロン(M)モノマー性サブユニットを酵素によるエピマー化反応により1つ以上の未変性グルロン(G)モノマー性サブユニットに変化させる工程を含む変性アルギネートポリマーを製造する方法。
【解決手段】a)リンカーを有するかまたは有しないアルギネートポリマーの1つ以上の未変性モノマー性サブユニットに変性用成分を共有結合的に結合させる工程、そして
b)アルギネートポリマーの1つ以上の未変性マンヌロン(M)モノマー性サブユニットを酵素によるエピマー化反応により1つ以上の未変性グルロン(G)モノマー性サブユニットに変化させる工程を含む変性アルギネートポリマーを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本明細書に記載されたアルギネートポリマーの酵素化学的変性により製造された変性アルギネート、その製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
化学的に、アルギネートは、交互(alternating)構造(MG−ブロック)の領域が散在するM(M−ブロック)残基およびG(G−ブロック)残基のホモポリマー領域により鎖に沿ってブロック様パターンで配列された1→4結合β−D−マンヌロン酸(M)およびα−L−グルロン酸(G)の線状コポリマーである。天然には、アルギネートは、まずホモポリマー性マンヌロナンとして生成され、そしてマンヌロナンのM残基上のC−5転化を含む重合後エピマー化反応を経てMおよびGモノマーサブユニットを含むヘテロポリマーに転換される。反応は、マンヌロナンC−5エピメラーゼにより接触化される。
【0003】
最近、アルギネート生成細菌アゾトバクター・ビンランディのゲノムが7つの異なるマンヌロナンC−5エピメラーゼ遺伝子をエンコードしていることが見いだされた。これらの遺伝子は、配列決定され、クローンされそしてEscherichia coliに発現され、そして得られた酵素は、AlgE1−AlgE7と命名された。すべての天然のアルギネートはMからGへの同じ基本的なC−5転化によりホモポリマー性マンヌロナンから生成されるので、多糖に見いだされる組成および配列における驚くべき変化は、単に異なるエピメラーゼの異なる触媒性による。例として、AlgE4は、MG−ブロックを有するアルギネートを主として形成するが、AlgE6は、ポリマー中に長いG−ブロックを導入する。これらのアルギネート変性酵素の利用可能性およびそれらの使用は、テイラーメイドに改変された構造的および物理的性質を有するアルギネートの製造を可能にする。
【0004】
アルギネートは、イオン性結合を有するポリマーのGモノマーサブユニットを架橋する二価のカチオンの存在下架橋したゲルを形成する。ミリモルの濃度のカルシウムの存在下のアルギネートの急速なゲル形成は、G残基のフラクション並びにGおよびM残基の配列パターンに依存する。
【0005】
ここ10年の間に、バイオ技術、バイオ医学および製薬の応用のような需要が増大する最終用途にアルギネートを使用することについて関心が拡大してきている。細胞およびバイオ触媒に固定化材料としてアルギネートを使用することは、このトレンドの1例である。工業、医薬および農業におけるこのようなシステムの可能な使用は、限りなく多く、酵母からのエタノールの生産およびハイブリドーマからのモノクローナル抗体の生産から植物胚の閉じこめによる人工的な種子の大規模な生産に及ぶ。
【0006】
アルギネートゲルは、また、細胞の固定、移植および組織エンジニアリングのための細胞外マトリックス材料(ECM)としての可能性を有する。しかし、カルシウム−アルギネートヒドロゲルの興味のある物理的および質量輸送の点にもかかわらず、それらの応用は、生物学的不活発さ(例えば、細胞接着およびシグナル化)により制限されているアルギネートの閉じこめは、リビング細胞を固定化する非常に激しくない手法であるが、多くの細胞は、それらの増殖および生存のためにマトリックスとの特定の相互反応を要する。このような足場依存の行動は、ほとんどの哺乳動物の細胞では普通であるが、アルギネート網状構造それ自体は相互反応しない。
【0007】
アルギネートは、非バイオ接着材料であることが知られているが、細胞特異性リガンドまたは細胞外シグナル化分子例えばペプチドまたはオリゴ糖の導入は、細胞−細胞および細胞−ECM認識プロセスでのその直接的な関わり合いに必要である。この点に沿って、これら変性アルギネートに基づく第三世代のバイオ材料が、細胞との相互反応を顕著に増大させうることが既に報告されており、ポリマーエンジニアリングおよび組織再生の分野での新しいチャンスおよび将来の開発を開示している。しかし、適切なECMに類似したスカホールドのデザインは、基本的な生物学的側面とともに、また物理的性質例えばゲル形成、機械的強さおよび安定性による。
【0008】
イオノトロピー性ゲル化の性質によって、アルギネートは、バイオ技術および医学の応用特に細胞および組織の被包化の分野の興味をそそる候補者になっている。1例として、ランゲルハンスの膵島を含むアルギネート−ポリ−L−リジンカプセルは、大動物の糖尿病を後退させることが示されており、その場合、カプセルにより示される安定かつ選択的な浸透可能なバリヤーが、移植された細胞を宿主の免疫系から保護する。
【0009】
種々のリガンドが、アルギネートポリマーにカップリングされて、特許文献1におけるように、細胞/マトリックスの相互反応を改善する。アルギネートの化学的変性による主な問題は、このような変性がしばしば化学的選択性がないことである。すなわち、変性は、アルギネートが構成されている両方の糖類モノマー(グルロン酸(G)およびマンヌロン酸(M))で生ずる。ゲル形成そして特にゲルの強さが、未変性のGの数に関連する性質であることがさらに知られている。従来技術のアルギネートの化学的変性は、M残基(Mユニット)に制限されるばかりかG−ブロック中のG残基(Gユニット)で生じそれにより利用可能なG残基の量を減らし、従って二価カチオンの協同的結合を損ないそしてゲル形成の速度を低下させる(弱いゲルの形成を生じそして塩水中のコントロールできない膨張を生ずる)置換を明らかにしている。本明細書で使用されるとき、「残基」は、単一のMまたはGユニットをいい、そして「ブロック」は、M、GまたはMGの複数のユニットをいう。
【0010】
多糖鎖のウロン基の1−アミノ−1−デオキシ−β−ガラクトース残基を導入することにより得られるガラクトース置換アルギネートの合成および特徴は、報告されている。肝細胞の細胞表面に存在するアシアログリコ蛋白受容体(ASGP−R)によるβ−ガラクトースの認識に基づきそして報告の結果を考えて、変性アルギネートは、肝細胞の被包化および接着を改善するために好適なゲル形成バイオ材料として提案されている。しかし、分子レベルでの変性アルギネートの特徴は、アルギネート鎖への側鎖基の導入が主としてG残基に影響をあたえ、そのためカルシウム結合性を損ないそしてその結果ヒドロゲルを安定にしないことを明らかにした。変性カルシウム−アルギネートヒドロゲルの剛性および安定性のかなりの低下は、既に報告されている。そのため、多糖鎖への細胞特異性リガンドの導入がヒドロゲルの機械的性質の低下を招くことと思われる。
【特許文献1】米国特許6642362
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この観点において、かなりな改善は、カルシウム結合の損傷およびヒドロゲルの安定性の損失を制限するためにマンヌロン残基に側鎖分子を有する選択的に変性したアルギネートの製造により示されるだろう。同様に、カチオン結合の損傷およびヒドロゲルの安定性の損失を制限するために、側鎖分子を有する変性アルギネートの性質を改善する必要性が存在する。本発明は、以下に説明されるように、種々のリガンドによる置換後のアルギネートゲルの機械的性質および膨張性をコントロールできる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、変性アルギネートポリマーを製造する方法に関する。その方法は、アルギネートポリマーの1つ以上の未変性モノマー性サブユニットに変性用成分を共有結合的に結合させる工程、そしてアルギネートポリマーの1つ以上の未変性マンヌロン(M)モノマー性サブユニットを酵素によるエピマー化反応により1つ以上の未変性グルロン(G)モノマー性サブユニットに変化させる工程からなる。反応工程は、いずれかの順序および任意の配列で複数回行うことができる。
【0013】
本発明は、さらに、アルギネートゲルおよび繊維を製造する方法に関する。その方法は、溶媒中で、複数の変性アルギネートポリマーを二価のゲル化イオンと組み合わせる工程を含む。或る態様では、リビング細胞がアルギネートゲル内に内包される。
【0014】
本発明は、Mモノマー性サブユニットのみが変性されそして変性がアセチル化ではない変性アルギネートポリマーに関する。
本発明は、Mモノマー性サブユニットのみが変性されそして変性がアセチル化ではない変性アルギネートポリマーからなるアルギネートゲルおよび繊維に関する。
本発明は、さらに、成形したまたは成形していない固体の非架橋アルギネート組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
アルギネートは、種々の割合および連続した配列のD−マンヌロン酸およびL−グルロン酸の線状コポリマーの1群をひとまとめにした用語である。カルシウムのような二価のカチオンによりゲルを形成するアルギネートポリマーの能力および得られるゲルの性質は、ポリマー鎖中の連続するG残基のブロックの割合および長さに強く相関する。
【0016】
本発明は、少なくとも2つの工程を要するアルギネートを変性する方法を提供する。1つの工程は、変性用成分がアルギネートポリマーの1つ以上の未変性モノマー性サブユニットに共有結合的に付着する工程であり、他の工程は、アルギネートポリマーの1つ以上の未変性マンヌロン(M)モノマー性サブユニットが、酵素によるエピマー化反応により1つ以上の未変性グルロン(G)モノマー性サブユニットに転換される工程である。本発明の方法によれば、これらの工程は、いずれかの順序で行うことができる。さらに、変性用成分がアルギネートポリマーの1つ以上の未変性モノマー性サブユニットに共有結合的に付着する複数の工程を行うことができ、1つ以上の未変性マンヌロン(M)モノマー性サブユニットが、酵素によるエピマー化反応により1つ以上の未変性グルロン(G)モノマー性サブユニットに転換される複数の工程を行うことができる。複数の工程は、任意の順序で行うことができる。モノマー性サブユニットは、カルボキシル基および水酸基の何れかで変性される。
【0017】
アルギネート中の官能基の置換は、置換基の化学的性質および大きさに応じて、ポリマーのゲル形成能力を減少させる。この効果は、Gブロックの量を増加することによって最低にされる。いくつかの好ましい態様では、官能基の置換は、変性のための原料としてMのみを有するアルギネートを使用することによって、M残基の置換に限定される。変性後、未変性Mは、エピマー化によりGに転換される。
【0018】
Mモノマー性サブユニットのみが変性される変性アルギネートポリマーが生成される。変性アルギネートポリマーは、未変性Mおよび未変性Gを含むことができる。変性は、いくつかのMがアセチル化されるが、アセチル化ではない。すなわち、これらポリマーのMモノマー性サブユニットのいくつかは、これらポリマーの他のMモノマー性サブユニットがアセチル化されるかまたはされないかにかかわらず、アセチル化以外の変性により変性される。いくつかの好ましい態様では、Mモノマー性サブユニットのみが変性される変性アルギネートポリマーは、変性用成分例えばガラクトースおよびそのオリゴマー、マンノースおよびそのオリゴマー、sLex(NeuAca2−3Galβ1−[4Fucal−3]GlcNAc)、GleNAc、HA−オリゴマー(ヒアラドヘジン;ヒアルロナン結合蛋白)、RDGペプチド、YIGSRペプチド、REDVペプチド、IKVAVペプチド、KHIFSDDSSEペプチドおよびKRSRペプチドの付加により変性される。Mモノマー性サブユニットのみが変性される変性アルギネートポリマーは、アルギネートゲルおよび繊維をつくるのに有用である。
【0019】
原料アルギネートは、MM、GGおよび/またはMGブロックの異なる構造配列に分類できるMおよびGを種々の量で有することができる。化学反応の工程は、適用可能なものとして、アルギネートのMおよびG残基に反応する置換基(変性M残基および変性G残基)に導く。酵素による工程は、所望の数のM残基をG残基に転換することによりアルギネート中のMおよびGの量を変化する。例えば、Gの量は、MMブロックをMGまたはGGに転換することまたはMGブロックをGGに転換することにより増加する。
【0020】
いくつかの態様では、M含量の多い例えばMおよびGの全重量の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または95+%のM含量のアルギネートは有用である。本発明の1つの態様は、化学反応前のM残基の多い原料アルギネートとして、マンヌロン酸のホモポリマー例えばマンヌロナンを利用する。これらのホモポリマーは、本明細書で参考として引用されるWO 04011628に開示されているシュードモナス・エルギノーサ(aeruginosa)、P.シリンガエ(syringae)またはP.フルオレセンス(fluorescens)のAIgGネガティブミュータントにより製造される。高Mアルギネートの他の例は、本明細書で参考として引用されるWO 03046199A2に開示されている。
【0021】
本発明によれば、変性用成分は、任意の化学構造物であるが、単糖、オリゴ糖、モノヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、アミノ酸、ペプチドおよび蛋白からなる群から好ましくは選ばれる。いくつかの態様では、変性用成分は、米国特許6642362にリストされているこの群から選ばれる。いくつかの態様では、変性用成分は、遊離基重合のできる炭素−炭素二重結合または三重結合を含む。単糖は、例えば、ラクトース、ガラクトース、しょ糖、フラクトース、マンノースおよびセルロースである。オリゴ糖は、例えばラクトース、ガラクトース、しょ糖、フラクトース、マンノースおよびセルロースのような単糖からなるホモポリマーまたはヘテロポリマーである。オリゴ糖は、好ましくは、2−10のモノマー、より好ましくは2−3のモノマーを有する。モノヌクレオチドは、例えば、アデニン、グアニン、シトシン、チミジンまたはウラシルである。オリゴヌクレオチドは、例えばアデニン、グアニン、シトシン、チミジンまたはウラシルのようなモノヌクレオチドからなるホモポリマーまたはヘテロポリマーである。オリゴヌクレオチドは、好ましくは、2−150モノマー、より好ましくは2−50モノマー、さらに好ましくは5−35モノマーそして一層好ましくは10−20モノマーを有する。アミノ酸は、26の天然のアミノ酸の任意のものおよび任意の合成アミノ酸残基である。ペプチドは、例えばポリリジンのようなホモポリマーまたはヘテロポリマーである。ペプチドは、好ましくは、2−25モノマー、より好ましくは、2−20モノマー、さらに好ましくは2−15モノマー、一層好ましくは2−10モノマー、より好ましくは2−5モノマーそしてさらに好ましくは2,3または4モノマーを有する。蛋白は、細胞付着また接着分子、受容体蛋白またはリガンドのような任意の蛋白様分子である。蛋白は、好ましくは、25より多いアミノ酸を有し、そしていくつかの態様では、25−200またはそれ以上のアミノ酸である。
【0022】
いくつかの態様では、変性用成分は、ガラクトースに基づくオリゴ糖例えばASGPRアシアログリゴ蛋白受容体またはガレクチンに結合するものである。ASPGRは、肝細胞接着受容体である。ガレクチンは、細胞接着受容体である。いくつかの態様では、変性用成分は、細胞−細胞認識分子であるセクチンであるsLex(NeuAca2−3Galβ1−[4Fucal−3]GlcNAc)である。いくつかの態様では、変性用成分は、また肝細胞接着に有用であるASGPであるGlcNAcである。いくつかの態様では、変性用成分は、上皮細胞増殖に有用であるHA−オリゴマー(ヒアラドヘジン;ヒアルロナン結合蛋白)である。いくつかの態様では、変性用成分は、マンノースに基づくオリゴ糖例えばマンノース結合レクチンまたはランゲリンに結合するものである。マンノース結合レクチンは、ケラチノサイト増殖に関係がある。ランゲリンは、ランゲルハンス細胞の受容体である。
【0023】
いくつかの態様では、変性用成分は、RDGペプチド例えばフィブロネクチンまたはビトロエンクチンから由来するものである。RDGペプチドは、細胞接着および筋芽細胞接着ペプチドとして有用である。いくつかの態様では、変性用成分は、YIGSRペプチド例えばラミニンB1から由来するものである。YIGSRペプチドは、細胞接着ペプチドとして有用である。いくつかの態様では、変性用成分は、REDVペプチド例えばフィブロネクチンから由来するものである。REDVペプチドは、上皮細胞接着ペプチドとして有用である。いくつかの態様では、IKVAVペプチド例えばラミニンから由来するものである。IKVAVペプチドは、神経突起延長ペプチドとして有用である。いくつかの態様では、変性用成分は、KHIFSDDSSEペプチド例えば天然の細胞接着分子から由来するものである。KHIFSDDSSEペプチドおよび2,3、4またはそれ以上のアミノ酸を有するそのフラグメントは、星状膠細胞接着ペプチドとして有用である。いくつかの態様では、変性用成分は、KRSRペプチド例えばヘパリン結合ドメインから由来するものである。KRSRペプチドは、骨芽細胞接着ペプチドとして有用である。
【0024】
アルギネートポリマーは、変性用成分の間の結合により架橋できる。これらの結合は、共有結合、イオン結合であり、そして結合中間物を含むことができる。アルギネートポリマーは、従って、非ゲル化架橋可能な例により予定された形状に製造できる。
【0025】
変性アルギネートサンプルは、式A−X(式中、Aはアルギネート多糖でありそしてXは変性用成分である)を有する。AおよびXは、エステル、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、アミド、イミド、第二級アミン、直接炭素−炭素(C−C)結合、スルフェートエステル、スルホネートエステル、ホスフェートエステル、ウレタン、カーボネートなどから選ばれる結合を経て共有結合的に結合している。すなわち、アルギネートの1つ以上のモノマーは、変性用成分に直接またはスペーサーにより共有結合している。従って、変性アルギネートサンプルは、また式A−Y−X(式中、AおよびXは前記同様であり、Yはアルキルまたはアリール鎖例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基を含むスペーサーである)を有することができる。いくつかの態様では、アルキル基は、C1−C15、好ましくはC1−C10、好ましくはC1−C5、好ましくはC1−C3アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール基である。AおよびY並びにYおよびXは、上記の結合を経て結合される。
【0026】
結合またはリンカーは、任意にスペーサーとともにまたはそれなしで提供されて変性用成分をアルギネートポリマーのモノマーサブユニットに接続する。リンカーの例は、スペーサー例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基と組み合わされてまたは組み合わされることなく、エステル、エーテル、チオエステル、ジスルフィド、アミド、イミド、第二級アミノ、直接炭素−炭素(C−C)結合、スルフェートエステル、スルホネートエステル、ホスフェートエステル、ウレタンおよびカーボネートを含むが、これらに限定されない。
【0027】
エステル結合は、−C(=O)−O−または−O−C(=O)−の何れかの構造をいう。エーテル結合は、−O−の構造をいい、チオエーテル結合は、−S−の構造をいい、ジスルフィド結合は、−S−S−の構造をいい、アミド結合は、−C(=O)−N−または−N−C(=O)−の何れかの構造をいう。イミド結合は、−N−C(=O)−N−の構造をいう。第二級または第三級アミン結合は、−NH−または−N(−R)−の構造をいう。直接炭素−炭素結合は、−C−C−の構造をいい、スルホネートおよびスルファートエステル結合は、それぞれ−O−S(=O)−O−または−O−S(=O)2−O−の構造をいう。ホスフェートエステル結合は、−O−P(=O)(−O−)−O−の構造をいう。ウレタン結合は、−N−C(=O)−O−または−O−C(=O)−N−の構造をいう。カーボネート結合は、−O−C(=O)−O−の構造をいう。
【0028】
本発明の方法は、アルギネートの1つ以上の未変性M残基が酵素によるエピマー化反応によりG残基に転換される1つ以上の工程を含む。エピメラーゼ酵素は、広く知られている。それらの例は、本明細書において参考として引用される米国特許5939289に記載されたもののようなアゾトバクター・ビンランディから由来する。他の源は、シュードモナス・シリンガエ(本明細書において参考として引用されるBjerkanら、J.Biol.Chem.Vol.279、28920−28929)およびラミナリア・ジギタタ(本明細書において参考として引用されるWO 2004065594)を含む。
【0029】
AIgE酵素であるマンヌロナンC−5エピメラーゼは、アゾトバクター・ビンランディのようなアルギネート生成細菌によりエンコードされるモジュラー蛋白の群からなる。米国特許5939289は、これらの酵素をコードする配列、限定されたG/M比およびブロック構造を有するアルギネートを製造するためのこれらの酵素の製法およびそれらの用途を開示している。これらのイソ酵素は、それらの活性およびそれらが導入するエピマー化パターンにおいて異なる。AIgE−1および6は、長いG−ブロックを生ずるのに有効であり、AIgE4は、MGM配列のみを導入する。前者は、強いゲル形成剤を与え、一方後者の酵素は、たわみ性鎖を発生する。例えば以下の表1を参照。
【0030】
(表1)
(A,ビンランディからの7つのAIgEエピメラーゼ)
タイプ [kDa] モジュラー構造 生成物
AIgE1 147.2 A1R1R2R3A2R4 2官能性Gブロック+
MGブロック
AIgE2 103.1 A1R1R2R3R4 Gブロック(短い)
AIgE3 191 A1R1R2R3A2R4R5 2官能性
R6R7
AIgE4 57.7 A1R1 MGブロック
AIgE5 103.7 A1R1R2R3R4 Gブロック(短い)
AIgE6 90.2 A1R1R2R3 Gブロック(長い)
AIgE7 90.4 A1R1R2R3 リアーゼ活性+Gブロック
+MGブロック
A:365アミノ酸、R:155アミノ酸
【0031】
すべてのアルギネートおよびマンヌロナンは、置換前の原料アルギネートのエピマー化次に追加のエピマー化のような化学的工程および酵素的工程の順序を変更することを含む、1つの工程でまたは次々と、単一または混合物で使用される異なるC−5エピメラーゼの使用によってエピマー化できる。置換の程度並びにエピマー化の量および時間の両方を変えることにより、異なって選択的に置換されたアルギネート分子を得ることができる。エピマー化反応は、温度、反応時間、試薬の量およびこれらの組み合わせをコントロールすることによってコントロールできる。例えば、いくつかの態様では、エピマー化反応は、酸の添加、90℃への加熱、または酵素反応に必要なカルシウムイオンを封鎖するEDTA50mMの添加により停止される。反応をコントロールすることにより、Gに転換される未変性物の量はコントロールでき、従って最終の変性アルギネートにおけるGの量はコントロールできる。
【0032】
原料の性質も、最終生成物の性質をコントロールする。変性がエピマー化の前である方法における原料としてのポリマンヌロネートの使用は、Mのみが変性される最終生成物を与える。すなわち、マンヌロン酸残基を含む多糖(ポリマンヌロネート)を出発原料として使用すると、これらの物質は、カルボキシ官能基または水酸基の何れかで変性され次にC−5エピメラーゼの使用によりエピマー化されることが分かった。このエピマー化は、非変性残基で生じ、マンヌロン酸で選択的に変性されたアルギネート分子を生ずる。
【0033】
もしマンヌロナンが原料として使用されそして残基の変性がMからGへのすべての酵素による転換の前であるならば、変性反応は、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布した置換基を有するマンヌロナンを生ずる。未変性残基に対する変性残基の量は、反応時間、温度、試薬の量およびこれらの組み合わせをコントロールして所望度の変性Mを有する変性マンヌロナンを生成することによりコントロールできる。本発明の第二の工程では、部分的に置換されたマンヌロナンは、マンヌロナン−C−5エピメラーゼ、すなわちD−M残基をポリマー鎖の破壊なしにL−グルロン酸に転換する酵素により処理される。C−5エピメラーゼは、置換したM−残基を転換できないので、最終生成物は、カルシウム結合および結合形成のための未処理Gブロック並びに可溶な部分に残るM残基に排他的に位置する置換基を含むポリマーであろう。そこで、それらは、化学的架橋で互いに自由に相互反応するかまたは外性受容体と自由に反応する。
【0034】
いくつかの態様では、原料アルギネートは、MおよびGの両方を含む。この場合、化学的置換は、MおよびGの両方の残基で起こることができる。酵素による部分的に置換したアルギネートの処理は、次に未置換のMおよびG残基の一部を転換できる。1つの態様は、Mおよび/またはG基でまず部分的に置換され次にMGの残りのポリ交互セグメントを転換する特異性を有するG形成酵素(すなわちAIgE−1)を使用するC−5エピマー化により酵素的に反応されるポリMGブロックからなるアルギネートである。
【0035】
工程の順序および反応速度をコントロールすることにより、生成される変性アルギネートポリマーは、変化した度合の変性、M対Gの変化したレベルの変性、変化する量の未変性Mおよび変化する量の未変性Gを有する。
いくつかの態様では、Mのみが変性される。いくつかの態様では、MおよびGが変性される。
【0036】
いくつかの態様では、10%より少ない残基が変性される。いくつかの態様では、20%より少ない残基が変性される。いくつかの態様では、20%より多い残基が変性される。いくつかの態様では、10−80%の残基が変性される。いくつかの態様では、20−60%の残基が変性される。いくつかの態様では、30−50%の残基が変性される。いくつかの態様では、約40%の残基が変性される。
【0037】
いくつかの態様では、20%より少ない残基が未変性Gである。いくつかの態様では、20%より多い残基が未変性Gである。いくつかの態様では、20−80%の残基が未変性Gである。いくつかの態様では、30−60%の残基が未変性Gである。いくつかの態様では、40−50%の残基が未変性Gである。いくつかの態様では、約45%の残基が未変性Gである。
【0038】
変性アルギネートは、変性アルギネートと二価のゲル化イオン例えばCa++、Sr++、Ba++、Zn++、Fe++、Mn++、Cu++、Pb++、Co、Niまたはこれらの組み合わせとを組み合わせることによりアルギネートゲルまたは繊維を製造するのに使用できる。
【0039】
いくつかの態様では、アルギネートゲルは、リビング細胞例えば増殖細胞または非増殖細胞を内包するのに使用される。細胞は、細胞株または患者/ドナーから得られる。細胞の例は、膵島、肝細胞、神経細胞、腎皮質細胞、血管上皮細胞、甲状腺および上皮小体細胞、副腎細胞、胸腺細胞、卵巣細胞、軟骨細胞、筋肉細胞、心臓細胞、幹細胞、繊維芽細胞、ケラチノサイトまたは確立された細胞株から由来する細胞例えば293、MDCKおよびC2C12細胞株を含む。いくつかの態様では、内包した細胞は、細胞が維持されるとき発現する1つ以上の蛋白をエンコードする発現ベクターを含む。いくつかの態様では、蛋白は、サイトカイン、成長因子、インスリンまたは血管形成阻害剤例えばアンジオスタチンまたはエンドスタチン、他の治療蛋白または他の分子例えば医薬である。約60−70より少ないkDの低いMWを有する蛋白は、ゲル網状構造の有孔性のために特に良好な候補者である。いくつかの態様では、細胞は、多細胞の凝集体または組織として存在する。
【0040】
いくつかの態様では、アルギネート繊維は、複数の変性アルギネートポリマーと二価のゲル化イオンとを組み合わせそして架橋したアルギネートポリマーからなる繊維を押し出すことからなる方法で製造される。いくつかの態様では、固体の非架橋アルギネート組成物またはペーストは、複数の変性アルギネートポリマーを成形、成型、注型またはそれ以外の成形することにより製造される。
いくつかの態様では、変性工程および/またはエピメラーゼ工程は、既に存在するアルギネートゲルまたは繊維で行われる。
(実施例)
【実施例1】
【0041】
(1−アミノ−1−デオキシ−ガラクトースを有する変性ポリマンヌロナンの製造)
1−アミノ−1−デオキシ−β−D−ガラクトース(270mg)を、N−ヒドロキシサクシンイミド(NHS)(1.3g)および1−エチル−3−[3−(ジメチルアミノ)−プロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)(2.17g)を含む0.2Mの2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)緩衝液(pH4.5、400mL)中のポリマンヌロナン(1.5g)のナトリウムの形の攪拌溶液に添加した。溶液を室温で30分間攪拌した。生成物を、5日間12000−14000の分子量カットオフの透析膜を通して脱イオン水に対して透析した。透析した生成物を凍結乾燥してナトリウムポリマンヌロナンの精製したガラクトース誘導体を得た。収量1.45g。1H−NMRから計算した置換度は、12%であることが分かった。この方法によるアミド形成は、ポリマー中に存在するマンヌロン酸のカルボキシル(ウロン)基をターゲットにした。当業者は、生成物の置換度を、上記の反応においてポリマンヌロナン対1−アミノ−1−デオキシガラクトースの異なる比の使用により変化できることを認識する。同じ方法は、分子とアミノ官能基との間のアルキルまたはアリールスペーサーを有するかまたは有しないアミノ基をもつアミノ酸、ペプチド、異なる単糖およびオリゴ糖、ヌクレオチドおよび光架橋可能な基に適用される。
【実施例2】
【0042】
(ポリマンヌロナンのメタクリレートエステルの合成)
ナトリウムポリマンヌロナン(3g)を300mLの脱イオン水に溶解し、そして氷浴で4℃に冷却した。無水メタクリル酸(23g)を冷却ポリマンヌロナン溶液に一定に攪拌しつつ滴下し、そしてpHを好適な量の5MのNaOHの添加により9.0に維持した。攪拌を4℃の温度で24時間続けた。反応生成物を96%エタノールに沈殿させ、遠心分離し、エタノールにより3回洗った。生成物を次に水に溶解し、そして3日間12000−14000の分子量カットオフの透析膜に対して脱イオン水に対して透析した。透析した生成物を凍結乾燥してナトリウムポリマンヌロナンの精製メタクリレート誘導体を得た。収量2.6g。1H−NMRから計算して置換度は、8%であった。この方法によるエステル形成は、モノマー性単位に存在する第二級水酸基を目的とする。当業者は、生成物の置換度が、上記の反応においてポリマンヌロナン対無水物の異なる比の使用により変化できることを認識する。同じ方法は、変性アミノ酸、ペプチド、異なる単糖およびオリゴ糖、ヌクレオチドおよび光架橋可能な基に適用される。
【実施例3】
【0043】
(AIgE4を使用することによる変性ポリマーのエピマー化)
実施例1および2で記載したように得られた変性ポリマンヌロナン(1g)を、2.5g/Lの濃度で、CaCl2(2.5mM)およびNaCl(10mM)を含む50mMのMOPS緩衝液(pH6.9)に溶解した。C−5エピメラーゼAIgE4を次に添加し(酵素/ポリマー重量の比=1/200)、次に溶液を37℃で24時間攪拌した。エピマー化反応は、1−2のpH値に濃HClを冷却ポリマー溶液に添加することにより停止した。混合物にNaClを加え(最終濃度1.5%)、そして4℃で一晩維持した。沈殿した生成物を遠心分離し、3回希釈HCl(0.05M)で洗った。生成物を7より僅か上のpHに維持した脱イオン水に溶解した。溶液にNaCl(最終濃度0.2%)を加え、96%エタノールにより沈殿させた。生成物を濾過し、3回エタノールで洗い、そして3日間12000−14000の分子量カットオフの透析膜を通して脱イオン水に対して透析した。透析した生成物を凍結乾燥して変性マンヌロナンの精製したエピマー化ポリマーを得た。収量0.85g。当業者は、エピマー化度が、異なる反応時間の使用により変化することを認識する。
【実施例4】
【0044】
(AIgE6を使用することによる変性ポリマーのエピマー化)
実施例1および2に記載したように得られた変性ポリマンヌロナンサンプル(1g)を、2.37g/Lの濃度で、CaCl2(2.5mM)およびNaCl(75mM)を含む50mMのMOPS緩衝液(pH6.9)に溶解した。C−5エピメラーゼAIgE6を次に添加し(酵素/ポリマーの重量の比=1/20)、溶液を37℃で48時間攪拌した。エピマー化反応を、1−2のpH値に濃HClを冷却溶液に添加することにより停止した。混合物にNaClを添加し(最終濃度1.5%)、4℃に一晩維持した。沈殿した生成物を遠心分離し、3回希釈HCl(0.05M)により洗った。生成物を7より僅か上のpHに維持した脱イオン水に溶解した。溶液にNaClを添加し(最終濃度0.2%)、96%エタノールにより沈殿させた。生成物を濾過し、3回エタノールで洗い、そして3日間12000−14000の分子量カットオフの透析膜を通して脱イオン水に対して透析した。透析した生成物を凍結乾燥して、変性マンヌロナンの精製エピマー化ポリマーを得た。収量0.90g。当業者は、エピマー化度が異なる反応時間の使用により変化できることを認識する。
【0045】
この方法は、2つのタイプのポリマーを与えた。(1)ガラクトースによるウロン基の変性次にエピマー化。d.s.=12%、FG=0.45、FM=0.55、FGG=0.16。(2)光架橋可能な置換基による水酸基の変性次にエピマー化。原料;実施例2で報告されたポリマンヌロナン。d.s.=8%、FG=0.54、FM=0.46、FGG=0.37。
【0046】
図1および2は、ラミナリア・ハイパーボレアン(Laminaria hyperborean)からの未変性および変性(ガラクトースの14%)アルギネートに比べてガラクトシル化およびエピマー化マンヌロナンのゲル化性に対する効果を示す。
【実施例5】
【0047】
(AIgE4およびAIgE6の組み合わせを使用することによる化学的に変性されたポリマーのエピマー化)
実施例1および2に記載されたように得られた変性ポリマンヌロナンサンプル(1g)を、2.5g/Lの濃度で、CaCl2(2.5mM)およびNaCl(10mM)を含む50mMのMOPS緩衝液(pH6.9)に溶解した。C−5エピメラーゼAIgE4を次に添加し(酵素/ポリマー重量の比=1/100)、溶液を37℃で24時間攪拌した。C−5エピメラーゼAIgE6を次に添加し(酵素/ポリマー重量の比=1/20)、溶液を37℃で24時間攪拌した。エピマー化反応を、1−2のpH値に濃HClを冷却ポリマー溶液に添加することにより停止した。混合物にNaClを加え(最終濃度1.5%)、4℃で一晩維持した。沈殿した生成物を遠心分離し、3回希釈HCl(0.05M)で洗った。生成物を7より僅か上のpHを維持する脱イオン水に溶解した。溶液にNaClを加え(最終濃度0.2%)、96%エタノールにより沈殿させた。生成物を濾過し、3回エタノールで洗い、そして3日間12000−14000の分子量カットオフの透析膜を通して脱イオン水に対して透析した。透析した生成物を凍結乾燥して、変性マンヌロナンの精製したエピマー化ポリマーを得た。収量0.90g。当業者は、エピマー化度が、異なる反応時間を使用することにより変化して、Gブロックおよび置換したM残基が分散しているポリ交互ブロックを有しそしてMM配列を欠くことによりAIgE6エピマー化ポリマーとは異なるポリマーを生ずることを認識する。これは、ポリマーのたわみ性を増大させそして高い離液および低い膨潤へ導く。
【実施例6】
【0048】
(置換したポリMG配列が散在するGブロックからなるポリマーの製造)
実施例1および2に記載されたように得られたポリマンヌロナンサンプル(1g)を、2.5g/Lの濃度で、CaCl2(2.5mM)およびNaCl(10mM)を含む50mMのMOPS緩衝液(pH6.9)に溶解した。C−5エピメラーゼAIgE4を次に添加し(酵素/ポリマー重量の比=1/100)、溶液を37℃で24時間攪拌した。エピマー化反応を、1−2のpH値に濃HClを冷却ポリマー溶液に添加することにより停止した。混合物にNaClを加え(最終濃度1.5%)、4℃で一晩維持した。沈殿した生成物を遠心分離し、3回希釈HCl(0.05M)で洗った。生成物を7より僅か上のpHを維持する脱イオン水に溶解した。溶液にNaClを加え(最終濃度0.2%)、96%エタノールにより沈殿させた。生成物を濾過し、3回エタノールで洗い、そして3日間12000−14000の分子量カットオフの透析膜を通して脱イオン水に対して透析した。透析した生成物を凍結乾燥して、変性マンヌロナンの精製したエピマー化ポリマーを得た。収量0.85g。組成;Gのモルフラクション=0.47、GGのモルフラクション=0。当業者は、エピマー化度が異なる反応時間の使用により変化できることを認識する。
【0049】
(1−アミノ−1−デオキシ−ガラクトースによる変性ポリMGの製造)
1−アミノ−1−デオキシ−ガラクトース(270g)を、NHS(1.3g)およびEDC(2.17g)を含む変性ポリマンヌロナンのナトリウムの形(1.5g)の攪拌溶液に添加した。溶液を室温で30分間攪拌した。生成物を、5日間12000−14000の分子量カットオフの透析膜を通して脱イオン水に対して透析した。透析した生成物を凍結乾燥して、ナトリウムポリマンヌロナンの精製したガラクトース誘導体を得た。収量1.45g。1H−NMRから計算した置換度は、12%であった。この方法によるアミド形成は、ポリマー中に存在するカルボキシル(ウロン)基を目的とした。当業者は、生成物の置換度が、上記の反応中のポリMG対1−アミノ−1−デオキシ−ガラクトースの異なる比の使用により変化できることを認識する。同じ方法は、アミノ酸、ペプチド、異なる単糖およびオリゴ糖、ヌクレオチドおよび分子とアミノ官能基との間にアルキルまたはアリールスペーサーを有するかまたは有しないアミノ基をもつ光架橋可能な基に適用される。
【0050】
(AIgE1を使用することによる変性ポリMGの実験)
実施例1および2に記載したように得られた変性ポリマンヌロナンサンプル(1g)を、2.37g/Lの濃度で、CaCl2(2.5mM)およびNaCl(75mM)を含む50mMのMOPS緩衝液(pH6.9)に溶解した。C−5エピメラーゼAIgE1を次に添加し(酵素/ポリマーの重量の比=1/20)、溶液を37℃で48時間攪拌した。エピマー化反応を、1−2のpH値に濃HClを冷却溶液に添加することにより停止した。混合物にNaClを添加し(最終濃度1.5%)、4℃に一晩維持した。沈殿した生成物を遠心分離し、3回希釈HCl(0.05M)により洗った。生成物を7より僅か上のpHに維持した脱イオン水に溶解した。溶液にNaClを添加し(最終濃度0.2%)、96%エタノールにより沈殿させた。生成物を濾過し、3回エタノールで洗い、そして3日間12000−14000の分子量カットオフの透析膜を通して脱イオン水に対して透析した。透析した生成物を凍結乾燥して、MまたはG置換ポリMG配列が散在する長いGブロックを特徴とする変性マンヌロナンの精製エピマー化ポリマーを得た。収量0.90g。当業者は、エピマー化度が異なる反応時間の使用により変化できることを認識する。
【実施例7】
【0051】
化学的アプローチと酵素的アプローチとの組み合わせが開発されてM残基のみにβ−ガラクトース部分を有するアルギネート様ポリマーを得た。1−アミノ−1−デオキシガラクトースを、カップリング試薬としてEDC(1−エチル−3−[3−(ジメチルアミノ)−プロピル]カルボジイミド塩酸塩)およびNHS(N−ヒドロキシサクシンイミド)を使用してアミド結合を経てマンヌロナンに導入した。このポリマーは、交互G配列とホモポリマー性G配列との両方にグルロン酸残基を導入する2つの異なるC−5エピメラーゼの使用によりエピマー化された。M残基で選択的に変性されたグラフトアルギネートは、1H−NMRによりHPSEC−RI−MALLSと同定され、そして固有粘度およびそのカルシウム結合能は、円二色性スペクトル分析により検出された。変性物質は、同じ糖部分がG残基に導入されたアルギネートサンプルに比べたとき、機械的性質およびゲル形成の性質における改善を示した。最後に、M残基の選択的変性は、グラフトされたアルギネートから製造されたカルシウムビードの高い安定性を生じた。
【0052】
(材料および方法)
ラミナリア・ハイパーボレアstpeから単離されたナトリウムアルギネートの市販のサンプルLF10/60(FG=0.69、FGG=0.56)は、FMC Biopolymers(ノルウェー)により用意された。高分子量マンヌロナン(FG<0.001)を、シュードモナス・フルオレセンスのエピメラーゼネガティブミュータント(Alg)から単離した。精製および脱アセチル化は、本明細書で参考として引用されるBucke,C編「Methods in Biotechnology、1999、Carbohydrate Biochemistry Protocols」Humana Press Inc.Totowa、NJ、10、71に記載されているように実施された。ポリ交互MG(FG=0.47、FGG=0)を、本明細書で参考として引用されるHartmann、M.ら「Biochim.Biophys.Acta」2002、1570、104に記載されているように、AIgE4エピメラーゼの使用によりマンヌロナンから製造した。1−エチル−3−[3−(ジメチルアミノ)−プロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)および塩化ナトリウムは、Aldrich Chemical Co.(ミルウオーキー、WI)から購入した。N−ヒドロキシサクシンイミド(NHS)、2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)およびD−グルコノ−δ−ラクトン(GDL)は、Sigma Chemical Co.(セントルイス、MO)から購入した。炭酸カルシウム(平均粒子サイズ4μm)は、Merck(ダルムスタット、ドイツ)から購入した。
【0053】
(組み換えマンヌロナンC−5エピメラーゼ)
マンヌロナンC−5エピメラーゼは、E.コリ菌株のこれら組み換え体:JM105のAIgE4およびSUREのAIgE6の発酵により製造された。酵素は、Q−Sepharose FF(Pharmacia、ウプサラ、スウェーデン)のイオン交換クロマトグラフィーによりそしてフェニルSepharose FF(Pharmacia)の疎水性相互反応クロマトグラフィーにより部分的に精製した。酵素の活性は、3H−5−ラベルマンヌロナンを酵素とインキュベートしたとき、水へのトリチウムの放出を測定することにより分析された。
【0054】
(ガラクトース置換マンヌロナン(MGal))
1−アミノ−1−デオキシ−β−D−ガラクトース(ガラクトシルアミン)(270mg、0.2当量)を、NHSおよびEDC([EDC]/[Polym]=1.5;[NHS]/[EDC]=1、[Polym]は、グリコピラノシドポリマー繰り返し単位のモル濃度である)を含む0.2MのMES緩衝液(pH4.5、400mL)中のマンヌロナンのナトリウムの形(1.5g)の攪拌溶液に添加した。溶液を室温で30分間攪拌し、ポリマーを、1日間NaHCO3(0.05M)に対して透析し(膜のカットオフ分子量、約12000)、次に伝導度が4℃で2μSより低くなるまで脱イオン水に対して透析した。pHを7に調節し、ポリマーを0.45μmのミリポアフィルターを通して濾過し、凍結乾燥して、1H−NMR分析(ポリマー鎖のM残基のアノマー性プロトンの強度に対するガラクトシルアミンのH−1シグナルの強度から計算した置換度(d.s.))および電位差滴定により明らかになる側鎖基として導入される12%のガラクトースを含む変性マンヌロナンサンプルを得た。
【0055】
(AIgE4によるエピマー化(MGalE4))
ポリマーMGalを、2.5g/Lの濃度で、CaCl2(2.5mM)およびNaCl(10mM)を含む50mMのMOPS緩衝液(pH6.9)に溶解した。C−5エピメラーゼAIgE4を添加し(酵素/ポリマー重量の比=1/100)そして溶液を37℃で24時間攪拌した。
【0056】
(AIgE6によるエピマー化(MGalE4E6))
ポリマーMGalE4を、2.37g/Lの濃度で、CaCl2(2.5mM)およびNaCl(75mM)を含む50mMのMOPS緩衝液(pH6.9)に溶解した。C−5エピメラーゼAIgE6を添加し(酵素/ポリマー重量の比=1/20)そして溶液を37℃で24時間攪拌した。
【0057】
(エピマー化ポリマーの精製)
エピマー化反応を、5MのNaCl溶液(最終濃度1.5%)および塩酸(3M)を冷却ポリマー溶液に添加してpH値をほぼ1−2にすることにより停止した。混合物を4℃で一晩貯蔵して沈降を助けた。沈殿物を遠心分離し、3回希釈HCl(0.05M)により洗った。沈殿物を、希釈水酸化ナトリウムの添加により7より僅か上のpHに維持した脱イオン水に溶解した。溶液をNaClの5M溶液と混合し(最終濃度0.2%)、エタノールにより沈殿させた。沈殿物を、伝導度が4℃で2μSより低くなるまで脱イオン水に対して透析し(膜のカットオフ分子量、約12000)、pHを7に調節し、ポリマーを0.45μmのミリポアフィルターを通して濾過し、凍結乾燥した。
【0058】
(L.ハイパーボレアからのガラクトース置換アルギネート(LhypGal))
L.ハイパーボレアからのアルギネートサンプルを、前記のように1−アミノ−1−デオキシ−ガラクトースにより処理した。1H−NMR分析により明らかにされるようにG残基に導入された14%のガラクトース部分を有する変性アルギネートを得た。
【0059】
(1H−NMRスペクトル分析)
サンプルを、Grasdalenらにより記載されたように製造した。1H−NMRスペクトルは、Bruker WM300により90℃でD2Oで記録された。化学シフトは、3−(トリメチルシリル)プロパンスルホネートに関するシグナルからダウンフィールドでp.p.m.で示された。
【0060】
(電位差測定)
電位差滴定は、MGalおよびMGalE4E6サンプルの当量を決定するのに行われた。ガラス電極を備えた放射計pHM240pHメーターを使用した。ポリマーのH+の形は、一晩0.1MのHClに対して3g/Lの溶液を透析することにより製造された。過剰のHClは、脱イオン水に対する完全透析により除いた。ポリマーを凍結乾燥によって回収した。特定の濃度を有する周知のポリマーの水溶液を、0.1MのNaOH標準溶液(Tritisol、Merck)により滴定した。198±4g/モルおよび200±3g/モルの繰り返し単位のモル質量が、それぞれMGalおよびMGalE4E6の+H形について見いだされ、それらは、NMRから得られる置換度に基づいて計算された理論値(195.3g/モル)とややうまく類似した。
【0061】
(円二色性スペクトル分析)
ポリマーMGal、MGalE4およびMGalE4E6のナトリウムの形の円二色性スペクトル(表2参照)は、それぞれJasco J−700分光偏光計により脱イオン水(c〜2*10−3モノモル/L)中で記録された。1cm光路長の石英セルを使用しそして以下の構成を維持した。バンド幅、1nm、時間定数、2s、走査速度、20nm/分。バックグラウンドに対して補正された4つのスペクトルをそれぞれのサンプルについて平均化した。それぞれのサンプルのスペクトルは、[Ca2+]/[Polym]=0.26へのCa(ClO4)2溶液の添加前および後に記録された。
【0062】
(ビード形成)
それぞれLhypGalおよびMGalE4E6であるL.ハイパーボレアからのカルシウムビードは、2%(w/v)ポリマー溶液を50mMのCaCl2溶液に注ぐことにより得られた。小滴のサイズは、高電圧静電気ビード発生器(7kV、10mL/時、外径0.4mmの鋼針、針からゲル化溶液の距離1.7cm)を使用することによりコントロールできた。得られたアルギネートゲルビードを、使用前にゲル化溶液中で30分間攪拌した。
【0063】
(塩水溶液中の安定性)
L.ハイパーボレア、LhypGalおよびMGalE4E6から得られたカルシウムアルギネートビードの寸法安定性は、1/2mLのゲルビードが3mLの塩水溶液(0.9%)に添加されたとき、それぞれ倒立光学顕微鏡(Zeiss)により測定された。サンプルを1時間攪拌した。塩水溶液を数回取り替え、そしてカプセルの直径を、それぞれの取り替え前に測定した(n=25)。カプセルを、測定前に脱イオン水により洗った。
【0064】
(ゲル化の反応の仕組みおよびレオロジーの同定)
ゲル化の反応の仕組みおよび動的粘弾性の測定は、Stress−Tech汎用レオメーター(REOLOGICA Instruments AB、22363 Lund、スウェーデン)を用いることにより実施された。簡単にいえば、それぞれL.ハイパーボレア、LhypGalおよびMGalE4E6の1.5%溶液(表2参照)に、CaCO3(20mM)およびGDL(40mM)を添加しそして混合物を測定前に30秒間攪拌した。これらの実験は、T=20℃およびギャップ=1.00mmで、切り込みの入ったプレート−プレート(d=40mm)の測定パターンにより行われた。ゲル化の反応の仕組みは、ほぼ18時間3分間の間隔でG′およびG′′(ω=6.28rad*s−1)の繰り返された測定により得られた。動的粘弾性の測定は、動的弾性率(G′)および損失弾性率(G′′)の振動数依存度を測定することによりゲル化24時間後に行われた。振動数の掃引は、振動数の範囲0.01−50Hzで一定のひずみ(0.001)で行われた。サンプルは、低密度シリコーン油によりシールされて、ゲル化実験中の溶媒の蒸発に伴う不都合な作用を避けた。
【0065】
(ゲル円筒の製造および離液)
L.ハイパーボレア、LhypGalおよびMGalE4E6からの均質なカルシウムゲルは、それぞれ、ポリマー溶液とCa2+(CaCO3)の不活性形とをブレンドし次に徐々に加水分解したD−グルコノ−δ−ラクトン(GDL)をモル比GDL/Ca2+=2に維持しつつ添加することにより製造した。ポリマーの最終の濃度は、すべての場合に1%(w/v)であった。
【0066】
Ca−アルギネートゲルの離液は、密度の値を1と考えて計算して、最初の重量に対するゲルの重量減として測定された。上記のようにして製造されたCa−ポリマーゲル化溶液の一部を、直径16mmおよび高さ18mmを有する24穴組織培養プレート(Costar、ケンブリッジ、MA)で硬化した。ゲルを24時間後穴から取りだし、そしてそれらの重量を測定した。離液は、(1−W/W0)*100(ただし、WおよびW0は、それぞれ、ゲル円筒の最終および最初の重量である)として計算された。
【0067】
得られるゲルのヤング率(E)は、20℃でStable Micro Systems TA−XT2 Texture分析器により測定された力/変形の曲線の最初のスロープから計算された。離液を示すすべてのゲルについて、最終のポリマー濃度が決定され、そしてEは、E∝c2を採用して補正された。
【0068】
(粘度測定)
サンプルMGal、MGalE4およびMGalE4E6のナトリウム形(表2参照)の細管粘度の低下は、それぞれ、Schott−Gereate AVS/G自動装置およびUbbelohdeタイプ粘度計を使用することにより25℃で0.1MのNaClで測定された。固有粘度の値は、低下した比粘度(ηsp/c)の濃度依存性並びにHuggins(1)およびKraemer(2)の式を使用することによる相対粘度(Inηsp/c)の対数の低下をそれぞれ分析することによって測定された。
ηsp/c=[η]+k′[η]2c (1)
(lnηrel)/c=[η]−k′′[η]2c (2)
(式中、k′およびk′′は、HugginsおよびKraemerの定数である。)
【0069】
(複数角レーザー光散乱と組み合わされた高速サイズ除外クロマトグラフィー(HPSEC−RI−MALLS))
HPSEC−RI−MALLSシステムは、オンライン脱気器(島津DGU−4A)、ポンプ(島津LC−10AD)および3つの直列に連結したカラム(TSK GEL G6000/5000/4000PWXL)から成った。溶離液は、0.5mL/分で0.01MのEDTA(pH6)を含む0.05MのNa2SO4であった。検出器は、屈折率(RI)UVモニター(Pharmacia LKB UV−M II、Amersham Pharmacia Biotech.ウプサラ、スウェーデン)および複数角レーザー光散乱(He−Neレーザー632.8nmを備えたMALLS−Dawn DSP、Wyatt Technology Corp.サンタ バーバラ、CA、米国)であった。サンプルを、pH=6で0.01MのEDTAを含む0.05MのNa2SO4中に1mg/mLの濃度で溶解し、そして100μLの注入前に0.22μmのフィルターを通して濾過した。分子量測定のためのデータは、ASTRAソフトウエア(バージョン4.70.07、Wyatt Technology Corp.サンタ バーバラ、CA、米国)を用いて分析した。使用された屈折率の増分(dn/dc)は、0.15であった。角適合度は、Debyeの方法に基づき、重量平均分子量Mwそして数平均分子量Mnは、logM(M=分子量)対溶離体積の一次多項曲線に従って得られた。
【0070】
(結果および検討)
(合成および特性)
アルギネート鎖への1−アミノ−1−デオキシ−β−ガラクトースの導入が、G残基に主として影響を与え、ゲル化の能力および安定性の両者並びにポリマー鎖のコンホメーションに影響することが既に報告されている。明白な改善は、マンヌロナン(M)残基への側鎖基の選択的導入の可能性により示されるだろう。これらの基がゲルの形成に含まれないことを考えて、これらの選択的に変性されたアルギネートのカルシウム結合およびゲル化性は、影響されないだろう。しかし、ウロン性官能基の類似性から、本発明者の考えによれば、保護基に基づくどんな方法も、この目的には適さない。この問題を克服するために、C−5エピメラーゼにより誘導される2つのエピマー化を伴うマンヌロナンの連続する化学的変性が、考えられてきた(図14)。
【0071】
第一の工程では、1−アミノ−1−デオキシ−ガラクトース(ガラクトシルアミン)は、マンヌロナンのM残基のウロン性基にNグルコシド結合を経て導入された。アルギネートとガラクトシルアミンとの間のカップリング反応は、既に成功することが証明されているNHSの存在下縮合剤EDCを利用して行われた。ガラクトース置換マンヌロナンMGalの1H−NMRスペクトルは、図6に報告されている。前述したように、M残基へガラクトシルアミン部分が導入されると、新しく形成されたピークは、約4.75ppmで検知可能であり、側鎖として存在する糖のアノマー性プロトンから生ずる。このピークの領域から得られた置換度(12%)は、ポリマーのH+形の電位差滴定から得られる値と良く一致する。
【0072】
ガラクトース置換マンヌロナンから出発して、グルロン残基は、酵素AIgE4およびAIgE6の使用により行われた2つの連続するエピマー化反応によりポリマー鎖に導入された。従来の研究と矛盾して、2つの酵素は、最高のエピマー化の能率を達成するために必要な異なる塩化ナトリウムの濃度からみて、別々に使用された。始めのエピマー化反応では、サンプルMGalは、24時間AIgE4により処理され、そのためエピメラーゼの作用の態様をもたらすと予想されるように、G残基は長い交互MGM配列に導入される(図14)、事実、エピマー化された物質すなわちMGalE4の1H−NMRスペクトルでは(図6)、新しく導入されるG残基のアノマー性プロトンから生ずる〜5.07ppmでのピークの存在は、明確に検知可能である。後者のピークの領域から数値が求められるG残基の全体の含量(FG)は、0.33であると分かった(表2)。その上、交互の配列のG残基に属するH−5シグナルの存在により誘導される4.8−4.65ppmに及ぶ領域のスペクトルの複雑性の増大に注目することが重要である。
【0073】
ホモポリマー性配列または交互配列のM残基に結合するガラクトシルアミン間を区別する可能性のために、変性M残基および隣接基へのエピマー化反応の障害は、容易に予言できるものとして開示された。事実、G残基に隣接するMに導入されるガラクトシルアミンのアノマー性プロトンに属する〜4.9ppmに位置するどんなシグナルも検知されず、変性M部分に隣接するM残基がエピマー化に利用されないことを証明した。この考えに基づいて、MGalE4の場合に達成されたエピマー化全体を、AIgE4処理マンヌロナンについて得られた結果と比較した。図7aは、実験上のG残基含量と理論上のG残基含量との間の比として示される酵素の能率(%)を報告し、後者は、厳密な交互配列を生成するすべての利用可能なM残基の全エピマー化として計算された。AIgE4処理マンヌロナンの場合には、最終のG含量は、厳密な交互配列で0.47であることを見いだした。この基質について0.50の理論上の最大値を考えて、94%の酵素の能率は計算された。サンプルMGalE4の場合では、ガラクトース変性残基および隣接するM基は、エピマー化反応では利用されず、この事実は、0.38に等しい導入されたG残基の理論上最大の量(FG)に導く。そのため、酵素の活性が後者の場合に86%に低下されるので、側鎖としてガラクトース残基の存在は、エピマー化反応に小さい作用のみをもたらすに過ぎない。
【0074】
サンプルMGalE4E6を生ずる第二のエピマー化は、ホモポリマー性G配列を導入するために、エピメラーゼAIgE6を使用して行われた(図14)。図6は、サンプルMGalE4E6の1H−NMRスペクトルのアノマー性領域を報告している。ホモポリマー性配列のG残基のH−5プロトンから生ずる〜4.45ppmでの新しく形成されたシグナルは、排他的にM残基に12%のガラクトース部分を有するサンプルMGalE4E6の交互性およびホモポリマー性の両者のG配列の存在を証明する。サンプルMGalE4E6の1価の基および2価の基の含量は、表2に報告される。カルシウムゲルの形成に必須の特徴である約16%のGG2価基の存在を強調することは重要である。
【0075】
サンプルMGalE4E6中のポリマー鎖のシグナルのいくつかは、側鎖として存在するガラクトース部分のシグナルと重なり、これは、独立した方法により置換度をチェックさせる。従って、このポリマーのH+形の電位差滴定が行われた。後者の方法で計算される置換度(15%)は、N−グリコシド結合のどんな劣化もエピマー化または最終の生成物の精製の何れの間で生じなかった。
【0076】
サンプルMGalE4に関するエピメラーゼAIgE6の能率の数値を求めるために、厳密に交互するMGポリマーを同じ反応条件で処理した(図7b)。上記の同じ推定の下、ポリマー性鎖のガラクトシルアミンの存在が、ポリマー中の追加のG残基の導入を劇的に妨げないと結論せざるをえない。事実、図7bに報告されたように、僅かな減少(59%)が、ポリ交互MGサンプルについて観察されたそれ(67%)に比べたとき、ガラクトース変性ポリマーに対するAIgE6の能率について経験された。しかし、側鎖の作用は、ポリ交互MGサンプルに対する同じ酵素により示される41%に比べて、MGalE4に対する21%に等しい酵素の能率により、GG2価基の導入に一層明らかである。
【0077】
表2は、1価の基および2価の基の両者において3つのサンプルの組成を要約している。交互性およびホモポリマー性の両方のG配列が存在するので、サンプルMGalE4E6は、選択的にM残基に12%のガラクトシルアミンを有するアルギネート様部分として記述できる。
【0078】
ポリマーと糖部分との間に導入されるスペーサーのエピマー化に対する作用を予備的に明らかにするために、p−アミノフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(pNH2PhβGal)をマンヌロナンポリマー鎖に結合する。0.3当量のpNH2PhβGalを使用するEDC/NHS化学(材料および方法参照)により達成されるこの変性ポリマーは、MGalについて報告された同じ反応条件の下にエピマー化され、そして得られたサンプルは、1H−NMRにより分析された。図8(a−c)で報告されているスペクトルから、比較的高い置換度(d.s.=18%)にもかかわらず、注目すべきエピマー化が達成されていることに注目すべきである。事実、図8に報告されている1H−NMRの定量分析は、pNH2PhβGal変性基質へのG残基の導入に関して、それぞれAIgE4およびAIgE6の場合の82%および56%の能率を明らかにしており、従ってフェニル部分により示される剛いスペーサー基が、未変性M残基のC−5転化に顕著に影響しないことを証明している。さらに、AIgE4およびAIgE6による処理が、エピマー化サンプルの1H−NMRスペクトル中の芳香族環に属する容易に検出できる共鳴の存在により証明されるように、ポリマーと側鎖基との間のアミド結合を開裂しない(図8bおよびc参照)。
【0079】
サンプルMGal、MGalE4およびMGalE4E6の分子的な詳細の予備的な評価は、固有粘度およびSEC−MALLS測定により得られた(表2)。両方の方法が、エピマー化の結果として分子量の低下(恐らく酵素の僅かなリアーゼ活性から生ずる)を明らかにしていることを強調したい。この劣化にもかかわらず、本発明の化学−酵素的なアプローチすなわちMGalE4E6から生成されるポリマーは、比較的高い分子量(〜183000)を示す。
【0080】
サンプルMGal、MGalE4およびMGalE4E6の永存長qは、FloryおよびFoxによる等しいモデル(「ノンドレイニング(nondraining)」理論)から誘導された以下の式を用いて試みられた。アルギネートを比較的硬い分子(毛虫様鎖)としてアルギネートを考えると、永存長は、固有粘度の値および分子量から推定できる。
q=1/2*[(1/DP*l)*([η]Mw/Φ)2/3]
(式中、DPは重合度を表し、lは仮想の結合長であり、そしてΦは鎖分子単位の空間的分布の関数である)。上記の式は、単分散系では完全にあてはまり、その上、Φは普遍的な定数であるか、または少なくとも考慮されている異なるポリマーの所定の群では一定である。これらの仮定の下で、qの非常に類似した値が得られ(MGal、MGalE4およびMGalE4E6について、それぞれ、12.2±1.2nm、13.5±0.6nmおよび14.4±0.3nm)、定性的なレベルで、M残基のエピマー化がこれらのガラクトース変性ポリマーの剛さを顕著に変えないことを示唆している。
【0081】
サンプルMGal、MGalE4およびMGalE4E6のキロプチカル性は、それぞれ、円二色性により調べられた(図9a−c)。波長の関数としてのモル楕円率の異なるプロフィルが、3つのサンプルにより開示され、それはポリマー鎖中のG残基の導入から生ずることが注目される。事実、アルギネートの2つの糖成分が異なるキロプチカル挙動を示し、ポリマーの全体のCDスペクトルがMおよびG部分の相対的量および配列パターンに依存することは、良く知られている。特に、GG、MMおよびMG配列のCDスペクトルは、ピークの位置、サインおよび強度において相違を示す。円二色性は、また、上記の3つのポリマーすなわちMGal、MGalE4およびMGalE4E6によるカルシウムのような二価のカチオンの結合に関する定量ではないが有用な情報をもたらすことができる。ポリマーのウロン性部分による二価のカチオンの強い配位は、Ca結合の配列のコンホメーションに変化をもたらす。後者は、ポリマーサンプルの全体のCDスペクトルの変化として検出される、カルボキシレート基のエレクトロニック環境の変性に導かれる。MGal、MGalE4およびMGalE4E6のCDスペクトルは、それぞれ、既知でしかも等しい量のカルシウムの添加前および後に記録され、結果は、図9(a−c)に報告される。特に、サンプルMGalは、カルシウムの添加によりスペクトルに関連のある変化を示さなかったが(図9a)、そのため、ホモポリマー性M配列によるカルシウムイオンの特異的な配位の可能性を排除することを注意すべきである。対照的に、当量のカルシウムによりサンプルMGalE4E6を処理することにより、スペクトルの注目すべき変化が検出され(図9c)、これは、MGalE4E6にのみ生ずるにすぎないいわゆる「エッグボックス」構造であるコンホメーション的に配列されたホモポリマー性G配列の形成により説明される。この結果は、これらの選択的に変性かつエ)ピマー化された物質が協働してカルシウムを結合する能力を証明する。図9bに報告されるように、またポリマーMGalE4は、GG二価基を完全に欠いているにもかかわらず、カルシウムの添加によりかなりな変化を示すことは、意味のあることである。さらなる分析が必要であるが、カルシウムの存在により誘導される長い規則的な交互配列間の鎖内結合の形成は、Morrisおよび共同研究者により既に示唆されているように、観察された挙動の原因であると提案することができるだろう。
【0082】
(ゲルの形成および性質)
好適なバイオ活性のバイオ材料として選択的に変性されたアルギネートMGalE4E6を提示するために、そのカルシウムゲルの物理的性質すなわちゲルの反応の仕組み、粘弾性挙動およびヤング率が測定された。特に、サンプルMGalE4E6からのカルシウム−ヒドロゲルは、既に報告されたようにサンプルLhypGalから得られるものと比較された。前者はM残基にのみ12%の1−アミノ−1−デオキシ−ガラクトースを有するが、後者はG部分に位置する同じ残基の同様な含量(14%)の存在を特徴とすることを強調するのが重要である。L.ハイパーボレアからの未変性アルギネートは、標準ゲル形成材料としてこの比較に使用された。
【0083】
サンプルMGalE4E6、LhypGalおよびL.ハイパーボレアからのアルギネートに関するゲル形成の反応の仕組みは、それぞれ、ポリマー溶液に不活性形のカルシウムイオン(CaCO3)を添加し、次に徐々に加水分解するラクトンGDLを添加することにより研究された。添加されるカルシウムのモルとポリマー繰り返し単位のモルとの間の比は、ゲルの離液を制限するために、すべての3つのサンプルで0.26に等しかった(図12b参照)。
【0084】
この「内部ゲル化」プロセスでは、GDLの(遅い)加水分解は、HCO3−の不溶性CaCO3を転換するプロトンを放出し、それによりゲルの形成に必要なカルシウムイオンをもたらす。ラクトンの混合とゲル形成との間の遅延は、レオメーターにおけるヒドロゲルの形成および硬化の研究を可能にする(図10a−c)。
【0085】
図10aは、ゲル形成プロセスの最初の1000秒におけるL.ハイパーボレア、LhypGalおよびMGalE4E6のそれぞれの動的弾性率(G′)の変化を報告している。データは、アルギネート中のG残基へのガラクトース部分の導入は、ゲル形成の反応の仕組みに強く影響する。事実、LhypGalとL.ハイパーボレアからの未変性アルギネートサンプルとの比較から、前者は、最初の1000秒ではG′値の顕著な変化を示さないが、後者は、動的弾性率の16倍の増加を開示することが強調される。逆に、LhypGalのそれに似た量のガラクトースを有するがM残基に選択的に導入されたサンプルMGalE4E6は、同じ観察時間で動的弾性率の顕著な増加を示し、L.ハイパーボレアからのガラクトース変性アルギネートに比較するとき、より早いゲル形成を示した。サンプルMGalE4E6の場合の動的弾性率の顕著な増加は、長い交互配列のポリマーにおける量の多さにさかのぼることができ、それは結合のより早い、しかもより能率的な形成を導くものと思われる。
【0086】
これらの考察は、図10bにより確認でき、そこでは、ゲル形成の最初の1000秒中記録される相角度(δ)の変化が、それぞれL.ハイパーボレア、LhypGalおよびMGalE4E6について報告されている。繰り返すが、G残基への側鎖の導入は、LhypGalのゲル形成を損なう。反対に、酵素化学的変性アプローチを開発しそして非ゲル形成M残基上の選択的置換すなわちMGalE4E6を達成することにより、ポリマーのゲル形成性は、影響されることがない。
【0087】
内部ゲル化により得られるゲルの硬化は、L.ハイパーボレア、LhypGalおよびMGalE4E6について、それぞれ約7×104秒行われ、図10cで示されるように、すべての3つのケースで安定なゲルを得た。ゲルの完全な形成後、機械的な面は、L.ハイパーボレア、LhypGalおよびMGalE4E6サンプルについて、それぞれ測定された(図11)。すべての3つのケースにおいて、動的弾性率(G′)は、ωの全範囲にわたって損失弾性率(G′′)より常に高く、これらの物質をゲルとして規定するための本当に初めの要件を満足する。サンプルMGalE4E6の場合、振動数からのG′の独立性は、G′とG′′との間のほぼ100倍の相違とあいまって、この系を強いゲルとする。
【0088】
3つのアルギネートサンプルからのヒドロゲルの物理的性質における相違のさらなる評価を得るために、MGalE4E6、LhypGalおよび未変性L.ハイパーボレアアルギネートサンプルから得られるゲル円筒に関するヤング率は、それぞれ測定された(図12a)。3つのサンプルの定量的比較のために、カルシウムキレート化に利用できるCa2+イオンのモルとG残基のモルとの間の一定の比が使用された。従って、MGalE4E6、LhypGalおよびL.ハイパーボレアからのアルギネートからのゲル円筒は、各ポリマーの炭酸カルシウムの異なる濃度すなわちそれぞれ13.3、16および22mMを使用して製造された。
【0089】
変性アルギネートサンプルの値(〜11kPa)から出発して、G残基へのガラクトシルアミン部分の導入は、ゲルの強さに劇的に影響し、そしてLhypGalについてヤング率を〜4.2kPa低下させたことに注意することが重要である。しかし、マンヌロナンへの側鎖ガラクトースの導入次に2つのエピマー化を行うことは、ゲルの強さの点で良好な結果を生ずる。事実、8.7kPaのヤング率は、サンプルMGalE4E6について測定され、それはポリマー鎖の選択的変性の重要性を強調する。
【0090】
サンプルMGalE4E6は、また、図12bで報告されるように、添加されたカルシウムの量により誘導される驚くべき離液を示す。ゲルの離液は、液体の部分的な滲出を生ずる遅い時間に依存する収縮を顕微鏡的に特徴とする現象である。離液は、ゲル形成後のポリマー鎖の横方向の会合により生ずるものとされており、そしてそれは、アルギネートサンプル中に存在する交互配列の量に既に関連している。図12bでは、カルシウム/ポリマー繰り返し単位の比に対する離液(%)は、それぞれサンプルMGalE4E6、LhypGalおよびL.ハイパーボレアについてプロットされた。エピマー化された物質すなわちサンプルMGalE4E6が、L.ハイパーボレアからの未変性サンプルに比べたとき、溶液中に分散したCaCO3の量に対する離液の高い依存性を示すことを認めることができる。この挙動は、前のポリマーに存在する多量の交互MGM配列を考慮に入れることによって説明できる。対照的に、L.ハイパーボレア源からのG変性アルギネートサンプルすなわちLhypGalは、カルシウム濃度に対する離液の依存性をなんら示さず、後者の場合には、G残基上のかさ高なガラクトース部分の存在は、ゲル中のポリマー鎖の横方向の会合を立体的に障害し、従って脱膨潤作用を妨げる。
【0091】
(カプセルの形成および安定性)
カプセルを形成するサンプルMGalE4E6の能力について特別な注目が集まっている。MGalE4E6の2%溶液を50mMの塩化カルシウム溶液に注ぐと、安定なカプセルが得られたことが観察された。これらカプセルの直径は、静電気ビード発生器(材料および方法の項参照)によりコントロールされるが、404±19μmであることが分かった(n=20)。
【0092】
サンプルMGalE4E6から得られるカプセルの安定性は、塩水溶液(NaCl 0.9%)による処理によって寸法(直径)の変化を測ることによりテストされた。比較のために、未変性L.ハイパーボレアおよびサンプルLhypGalから得られるカプセルの安定性を考えた。
【0093】
カプセルは、イオン性ゲルであり、その体積は、正の浸透圧(膨張)により主として左右され、その正の圧は、ゲル中の架橋の数に関連する網状構造の弾性による負の圧により平衡になる。
【0094】
カプセルを過剰のNa+対イオンすなわち塩水溶液により処理することによって、一価のカチオンと二価のカチオンとの間の競合は、カプセル中のカルシウムイオンへの置換に導かれることが最終的に生ずる。これらの処理の効果のすべては、カプセルの直径の増大に関係のあるG結合の数および長さの減少である。そのため、塩水処理の取り替えの所定の数による寸法の変化が大きければ大きいほど、カプセルの安定性は低くなる。
【0095】
図13は、それぞれL.ハイパーボレアアルギネート、LhypGalおよびMGalE4E6から得られるカプセルに対する塩水溶液の置換の取り替えの効果を報告している。未変性L.ハイパーボレアとG残基に導入される14%のガラクトースを有するサンプルすなわちLhypGalとの間の比較から、後者の場合では安定性の低下を合わせたものが、既に論じられたように、経験されることを強調すべきである。事実、塩水溶液を2回変えた後、サンプルLhypGalからのカプセルは直径が2倍増加するが、L.ハイパーボレアからの未変性アルギネートから得られるカプセルは、1.1倍の増加を示すに過ぎなかった。この効果は、アルギネート中のグルロン残基における側鎖基の存在にさかのぼり、そのカルシウム結合性を実質的に損なうことになる。
【0096】
逆に、MGalE4E6からのカプセルは、驚くべき安定性を示し、塩水を2回変えた後に直径が1.3倍に増加した。G変性物質LhypGalに比較してこのサンプルによって示される高い安定性は、サンプルポリマーにおいて、側鎖基の導入はM残基のみに影響することを考えて、説明できる。ゲル形成に含まれない残基上の選択的なこのような変性は、アルギネートサンプルによるカルシウムの結合を妨げず、一層安定なカプセルに導かれる。さらに、カプセルの安定における長い交互配列の役割も、また、既に報告されたように、提案されている。
【0097】
(結論)
構造的に精製されたマンヌロナンの利用可能性および異なるC−5エピメラーゼの利用可能性は、M残基で選択的に変性されるアルギネート様分子を生成する新しい方法を案出することを可能にした。酵素化学的変性アプローチは、マンヌロン部分に排他的にガラクトース残基を有する新しいバイオ活性バイオ材料の生成でテストされた。ガラクトース変性物質に対するエピメラーゼの作用は、1H−NMRにより分析され、そして得られたポリマーは、固有粘度、SEC−MALLSおよび円二色性スペクトル分析により分析された。
【0098】
変性かつエピマー化された物質のレオロージー測定は、特にG残基を同様に変性したアルギネートサンプルとの比較において、M残基への側鎖基の選択的導入の機械的性質への有利さを指摘している。
【0099】
ガラクトース部分を存在させることにより、変性かつエピマー化された物質は、肝細胞の内包のための新しいバイオ活性バイオ材料として提案でき、その場合、アルギネートゲルの機械的および膨潤の性質が、L.ハイパーボレアサンプルからの変性アルギネートに関して改善されている。しかし、このような酵素化学的変性アプローチが、広範囲な応用可能性をもたらし、新規なバイオ材料の製造に向かって新しい機会を特にアピールし開くようにすることに注目することが重要である。結論として、エピマー化を伴うマンヌロナンの変性は、テイラーメイドの構造および物理性を有する選択的に変性された物質を得るために、信頼できる新しい方法として提案できる。
【0100】
(表2)
(ポリマーMGal、MGalE4およびMGalE4E6の1価の基および2価の基としての組成、固有粘度および分子量)
サンプル FG FM FGG FGM/MG FMM
MGal 0 1 0 0 1
MGalE4 0.33 0.67 0 0.33 0.34
MGalE4E6 0.45 0.55 0.16 0.29 0.26
サンプル [η] K′ K′′ Mw d
(dL/g)a (g/モル)b(Mw/Mn)c
MGal 11.98 0.424 0.12 448×103 1.54
MGalE4 9.34 0.393 0.130 2362×102 1.68
MGalE4E6 8.85 0.372 0.141 1832×102 1.73
【0101】
FGは、グルロン酸からなるアルギネートの割合を示し、FGGは、ダイマーのブロック中のグルロン酸からなるアルギネートの割合を示し、一方FMMは、2価のマンヌロン基からなるアルギネートの割合を示し、FGM/MGは、グルロン酸およびマンヌロン酸の混合配列からなるアルギネートの割合を示す。aは、溶媒:NaCl 0.1M、T=20℃であり、k′およびk′′は、それぞれヒギンスの定数およびクレマーの定数を示す。bは、重量平均分子量であり、そしてcは、HPSEC−RI−MALLSにより測定された多分散性指数である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】アルギネートのManA残基の選択的置換の2工程方法の例を示す。第一の工程は、ガラクトサミンによるマンヌロナンの置換である。第二の工程は、組み換えで生成したC−5エピメラーゼを使用するC−5エピマー化である。実施例1は、図1に示された方法に関する。
【図2】以下の3つから作られたカルシウムアルギネートゲルビードの膨潤を示す。四角:L.ハイパーボレア、丸:ポリマンヌロナン、変性およびエピマー化(12%のガラクトース)、三角:塩水溶液(NaCl 0.9%)の取り替えの数による変性L.ハイパーボレア(14%のガラクトース)。
【図3】以下の1−3に関するヤング率として測定された機械的強さを示す。1:未変性L.ハイパーボレア、2:変性L.ハイパーボレア(14%のガラクトース)、3;ポリマンヌロナン、変性およびエピマー化(12%のガラクトース)。
【図4】塩水溶液(NaCl 0.9%)の取り替えの数による、以下の3つから製造されたCaアルギネートゲルビードの膨潤に対するM残基の選択的変性の効果を示す。丸:L.ハイパーボレア、四角:変性かつエピマー化マンヌロナン、三角:L.hyp.アルギネート。
【図5】50mMのEDTAにおける安定性(左)および0.9%NaCl溶液中の膨潤(右)に対するM置換アルギネートカプセルの光架橋の効果を示す。四角:未架橋サンプル、丸:光架橋サンプル。
【図6】MGal、MGalE4およびMGalE4E6の300MHzの1H−NMRスペクトル(アノマー性領域)を示す。
【図7】aは、ポリマー鎖中の単一G残基の導入に関するマンヌロナンおよびMGalサンプルに対するエピメラーゼAIgE4の能率(%)の比較を示す。bは、ポリマー鎖中の単一のG残基(淡いグレー)およびGG2価基(濃いグレー)の導入に関するポリ交互MG(FG=0.47)およびMGalE4サンプルに対するエピメラーゼAIgE6の能率(%)の比較を示す。
【図8】aは、pNH2PhβGal(d.s.=0.18)により変性されたマンヌロナンの300MHzの1H−NMRスペクトルを示す。bは、aの変性マンヌロナンをAIgE4によりエピマー化した生成物(最終組成物;FG=0.26、FGG=0)の300MHzの1H−NMRスペクトルを示す。cは、bの生成物をさらにAIgE6により処理された生成物(最終組成物;FG=0.36、FGG=0.17)の300MHzの1H−NMRスペクトルを示す。H−IGは、導入されるグルロン残基のアノマー性シグナルを表し、H−5G(G)は、他のグルロン部分に隣接するグルロン残基のH5シグナルを表す。
【図9】aは、MGalの円二色性スペクトルであり、bはMGalE4の円二色性スペクトルであり、cはMGalE4E6の円二色性スペクトルである。図中、実線はカルシウムの添加前であり、点線はその添加後である。報告されたサンプルのすべてで、[Ca2+]/[Polym]=0.26である。
【図10】aは、サンプルMGalE4E6(三角)、LhypGal(丸)およびL.ハイパーボレアからのアルギネート(四角)から得られたゲルの初めの1000秒のG′の変化を示す。bは、サンプルMGalE4E6(三角)、LhypGal(丸)およびL.ハイパーボレアからのアルギネート(四角)から得られたゲルの初めの1000秒のδの変化を示す。cは、MGalE4E6(実線)、LhypGal(太い点線)およびL.ハイパーボレアからのアルギネート(細かい点線)の硬化中のG′の変化を示す。ゲルは、20mMのCaCO3および40mMのGDLを添加された1.5%ポリマー溶液から得られた。
【図11】L.ハイパーボレアアルギネート(四角)、LhypGal(丸)およびMGalE4E6(三角)から得られるヒドロゲルに関する動的弾性率G′(黒いシンボル)および損失弾性率G′′(白いシンボル)を示す。ゲルは、20mMのCaCO3および40mMのGDLを添加された1.5%ポリマー溶液から得られた。
【図12】aは、L.ハイパーボレアアルギネート、LhypGalおよびMGalE4E6から得られたゲル円筒のヤング率(E)を示す。モル比[Ca2+]/[G残基]は、すべて3つのサンプルで0.59に等しかった。値は、平均±s.d.として報告された。(n=8)。bは、L.ハイパーボレアアルギネート(四角)、LhypGal(三角)およびMGalE4E6(丸)から得られたゲル円筒に関する比[Ca2+]/[Polym]に対する離液の依存性を示す。値は、平均±s.d.として報告された。(n=8)。
【図13】L.ハイパーボレアからのアルギネート(四角)、LhypGal(三角)およびMGalE4E6(丸)に関する塩水溶液の取り替えを増やすとき絶対直径(d0=ビードの最初の直径)の増加として示されるカルシウムビードの安定性を示す。値は、平均±s.d.として報告された。
【図14】M残基を選択的に変性されたアルギネートの生成に関する酵素化学的変性アプローチを示す。S=1−アミノ−1−デオキシ−β−D−ガラクトースまたはpNH2Ph−β−D−ガラクトピラノシド。
【技術分野】
【0001】
本発明は、本明細書に記載されたアルギネートポリマーの酵素化学的変性により製造された変性アルギネート、その製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
化学的に、アルギネートは、交互(alternating)構造(MG−ブロック)の領域が散在するM(M−ブロック)残基およびG(G−ブロック)残基のホモポリマー領域により鎖に沿ってブロック様パターンで配列された1→4結合β−D−マンヌロン酸(M)およびα−L−グルロン酸(G)の線状コポリマーである。天然には、アルギネートは、まずホモポリマー性マンヌロナンとして生成され、そしてマンヌロナンのM残基上のC−5転化を含む重合後エピマー化反応を経てMおよびGモノマーサブユニットを含むヘテロポリマーに転換される。反応は、マンヌロナンC−5エピメラーゼにより接触化される。
【0003】
最近、アルギネート生成細菌アゾトバクター・ビンランディのゲノムが7つの異なるマンヌロナンC−5エピメラーゼ遺伝子をエンコードしていることが見いだされた。これらの遺伝子は、配列決定され、クローンされそしてEscherichia coliに発現され、そして得られた酵素は、AlgE1−AlgE7と命名された。すべての天然のアルギネートはMからGへの同じ基本的なC−5転化によりホモポリマー性マンヌロナンから生成されるので、多糖に見いだされる組成および配列における驚くべき変化は、単に異なるエピメラーゼの異なる触媒性による。例として、AlgE4は、MG−ブロックを有するアルギネートを主として形成するが、AlgE6は、ポリマー中に長いG−ブロックを導入する。これらのアルギネート変性酵素の利用可能性およびそれらの使用は、テイラーメイドに改変された構造的および物理的性質を有するアルギネートの製造を可能にする。
【0004】
アルギネートは、イオン性結合を有するポリマーのGモノマーサブユニットを架橋する二価のカチオンの存在下架橋したゲルを形成する。ミリモルの濃度のカルシウムの存在下のアルギネートの急速なゲル形成は、G残基のフラクション並びにGおよびM残基の配列パターンに依存する。
【0005】
ここ10年の間に、バイオ技術、バイオ医学および製薬の応用のような需要が増大する最終用途にアルギネートを使用することについて関心が拡大してきている。細胞およびバイオ触媒に固定化材料としてアルギネートを使用することは、このトレンドの1例である。工業、医薬および農業におけるこのようなシステムの可能な使用は、限りなく多く、酵母からのエタノールの生産およびハイブリドーマからのモノクローナル抗体の生産から植物胚の閉じこめによる人工的な種子の大規模な生産に及ぶ。
【0006】
アルギネートゲルは、また、細胞の固定、移植および組織エンジニアリングのための細胞外マトリックス材料(ECM)としての可能性を有する。しかし、カルシウム−アルギネートヒドロゲルの興味のある物理的および質量輸送の点にもかかわらず、それらの応用は、生物学的不活発さ(例えば、細胞接着およびシグナル化)により制限されているアルギネートの閉じこめは、リビング細胞を固定化する非常に激しくない手法であるが、多くの細胞は、それらの増殖および生存のためにマトリックスとの特定の相互反応を要する。このような足場依存の行動は、ほとんどの哺乳動物の細胞では普通であるが、アルギネート網状構造それ自体は相互反応しない。
【0007】
アルギネートは、非バイオ接着材料であることが知られているが、細胞特異性リガンドまたは細胞外シグナル化分子例えばペプチドまたはオリゴ糖の導入は、細胞−細胞および細胞−ECM認識プロセスでのその直接的な関わり合いに必要である。この点に沿って、これら変性アルギネートに基づく第三世代のバイオ材料が、細胞との相互反応を顕著に増大させうることが既に報告されており、ポリマーエンジニアリングおよび組織再生の分野での新しいチャンスおよび将来の開発を開示している。しかし、適切なECMに類似したスカホールドのデザインは、基本的な生物学的側面とともに、また物理的性質例えばゲル形成、機械的強さおよび安定性による。
【0008】
イオノトロピー性ゲル化の性質によって、アルギネートは、バイオ技術および医学の応用特に細胞および組織の被包化の分野の興味をそそる候補者になっている。1例として、ランゲルハンスの膵島を含むアルギネート−ポリ−L−リジンカプセルは、大動物の糖尿病を後退させることが示されており、その場合、カプセルにより示される安定かつ選択的な浸透可能なバリヤーが、移植された細胞を宿主の免疫系から保護する。
【0009】
種々のリガンドが、アルギネートポリマーにカップリングされて、特許文献1におけるように、細胞/マトリックスの相互反応を改善する。アルギネートの化学的変性による主な問題は、このような変性がしばしば化学的選択性がないことである。すなわち、変性は、アルギネートが構成されている両方の糖類モノマー(グルロン酸(G)およびマンヌロン酸(M))で生ずる。ゲル形成そして特にゲルの強さが、未変性のGの数に関連する性質であることがさらに知られている。従来技術のアルギネートの化学的変性は、M残基(Mユニット)に制限されるばかりかG−ブロック中のG残基(Gユニット)で生じそれにより利用可能なG残基の量を減らし、従って二価カチオンの協同的結合を損ないそしてゲル形成の速度を低下させる(弱いゲルの形成を生じそして塩水中のコントロールできない膨張を生ずる)置換を明らかにしている。本明細書で使用されるとき、「残基」は、単一のMまたはGユニットをいい、そして「ブロック」は、M、GまたはMGの複数のユニットをいう。
【0010】
多糖鎖のウロン基の1−アミノ−1−デオキシ−β−ガラクトース残基を導入することにより得られるガラクトース置換アルギネートの合成および特徴は、報告されている。肝細胞の細胞表面に存在するアシアログリコ蛋白受容体(ASGP−R)によるβ−ガラクトースの認識に基づきそして報告の結果を考えて、変性アルギネートは、肝細胞の被包化および接着を改善するために好適なゲル形成バイオ材料として提案されている。しかし、分子レベルでの変性アルギネートの特徴は、アルギネート鎖への側鎖基の導入が主としてG残基に影響をあたえ、そのためカルシウム結合性を損ないそしてその結果ヒドロゲルを安定にしないことを明らかにした。変性カルシウム−アルギネートヒドロゲルの剛性および安定性のかなりの低下は、既に報告されている。そのため、多糖鎖への細胞特異性リガンドの導入がヒドロゲルの機械的性質の低下を招くことと思われる。
【特許文献1】米国特許6642362
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この観点において、かなりな改善は、カルシウム結合の損傷およびヒドロゲルの安定性の損失を制限するためにマンヌロン残基に側鎖分子を有する選択的に変性したアルギネートの製造により示されるだろう。同様に、カチオン結合の損傷およびヒドロゲルの安定性の損失を制限するために、側鎖分子を有する変性アルギネートの性質を改善する必要性が存在する。本発明は、以下に説明されるように、種々のリガンドによる置換後のアルギネートゲルの機械的性質および膨張性をコントロールできる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、変性アルギネートポリマーを製造する方法に関する。その方法は、アルギネートポリマーの1つ以上の未変性モノマー性サブユニットに変性用成分を共有結合的に結合させる工程、そしてアルギネートポリマーの1つ以上の未変性マンヌロン(M)モノマー性サブユニットを酵素によるエピマー化反応により1つ以上の未変性グルロン(G)モノマー性サブユニットに変化させる工程からなる。反応工程は、いずれかの順序および任意の配列で複数回行うことができる。
【0013】
本発明は、さらに、アルギネートゲルおよび繊維を製造する方法に関する。その方法は、溶媒中で、複数の変性アルギネートポリマーを二価のゲル化イオンと組み合わせる工程を含む。或る態様では、リビング細胞がアルギネートゲル内に内包される。
【0014】
本発明は、Mモノマー性サブユニットのみが変性されそして変性がアセチル化ではない変性アルギネートポリマーに関する。
本発明は、Mモノマー性サブユニットのみが変性されそして変性がアセチル化ではない変性アルギネートポリマーからなるアルギネートゲルおよび繊維に関する。
本発明は、さらに、成形したまたは成形していない固体の非架橋アルギネート組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
アルギネートは、種々の割合および連続した配列のD−マンヌロン酸およびL−グルロン酸の線状コポリマーの1群をひとまとめにした用語である。カルシウムのような二価のカチオンによりゲルを形成するアルギネートポリマーの能力および得られるゲルの性質は、ポリマー鎖中の連続するG残基のブロックの割合および長さに強く相関する。
【0016】
本発明は、少なくとも2つの工程を要するアルギネートを変性する方法を提供する。1つの工程は、変性用成分がアルギネートポリマーの1つ以上の未変性モノマー性サブユニットに共有結合的に付着する工程であり、他の工程は、アルギネートポリマーの1つ以上の未変性マンヌロン(M)モノマー性サブユニットが、酵素によるエピマー化反応により1つ以上の未変性グルロン(G)モノマー性サブユニットに転換される工程である。本発明の方法によれば、これらの工程は、いずれかの順序で行うことができる。さらに、変性用成分がアルギネートポリマーの1つ以上の未変性モノマー性サブユニットに共有結合的に付着する複数の工程を行うことができ、1つ以上の未変性マンヌロン(M)モノマー性サブユニットが、酵素によるエピマー化反応により1つ以上の未変性グルロン(G)モノマー性サブユニットに転換される複数の工程を行うことができる。複数の工程は、任意の順序で行うことができる。モノマー性サブユニットは、カルボキシル基および水酸基の何れかで変性される。
【0017】
アルギネート中の官能基の置換は、置換基の化学的性質および大きさに応じて、ポリマーのゲル形成能力を減少させる。この効果は、Gブロックの量を増加することによって最低にされる。いくつかの好ましい態様では、官能基の置換は、変性のための原料としてMのみを有するアルギネートを使用することによって、M残基の置換に限定される。変性後、未変性Mは、エピマー化によりGに転換される。
【0018】
Mモノマー性サブユニットのみが変性される変性アルギネートポリマーが生成される。変性アルギネートポリマーは、未変性Mおよび未変性Gを含むことができる。変性は、いくつかのMがアセチル化されるが、アセチル化ではない。すなわち、これらポリマーのMモノマー性サブユニットのいくつかは、これらポリマーの他のMモノマー性サブユニットがアセチル化されるかまたはされないかにかかわらず、アセチル化以外の変性により変性される。いくつかの好ましい態様では、Mモノマー性サブユニットのみが変性される変性アルギネートポリマーは、変性用成分例えばガラクトースおよびそのオリゴマー、マンノースおよびそのオリゴマー、sLex(NeuAca2−3Galβ1−[4Fucal−3]GlcNAc)、GleNAc、HA−オリゴマー(ヒアラドヘジン;ヒアルロナン結合蛋白)、RDGペプチド、YIGSRペプチド、REDVペプチド、IKVAVペプチド、KHIFSDDSSEペプチドおよびKRSRペプチドの付加により変性される。Mモノマー性サブユニットのみが変性される変性アルギネートポリマーは、アルギネートゲルおよび繊維をつくるのに有用である。
【0019】
原料アルギネートは、MM、GGおよび/またはMGブロックの異なる構造配列に分類できるMおよびGを種々の量で有することができる。化学反応の工程は、適用可能なものとして、アルギネートのMおよびG残基に反応する置換基(変性M残基および変性G残基)に導く。酵素による工程は、所望の数のM残基をG残基に転換することによりアルギネート中のMおよびGの量を変化する。例えば、Gの量は、MMブロックをMGまたはGGに転換することまたはMGブロックをGGに転換することにより増加する。
【0020】
いくつかの態様では、M含量の多い例えばMおよびGの全重量の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または95+%のM含量のアルギネートは有用である。本発明の1つの態様は、化学反応前のM残基の多い原料アルギネートとして、マンヌロン酸のホモポリマー例えばマンヌロナンを利用する。これらのホモポリマーは、本明細書で参考として引用されるWO 04011628に開示されているシュードモナス・エルギノーサ(aeruginosa)、P.シリンガエ(syringae)またはP.フルオレセンス(fluorescens)のAIgGネガティブミュータントにより製造される。高Mアルギネートの他の例は、本明細書で参考として引用されるWO 03046199A2に開示されている。
【0021】
本発明によれば、変性用成分は、任意の化学構造物であるが、単糖、オリゴ糖、モノヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、アミノ酸、ペプチドおよび蛋白からなる群から好ましくは選ばれる。いくつかの態様では、変性用成分は、米国特許6642362にリストされているこの群から選ばれる。いくつかの態様では、変性用成分は、遊離基重合のできる炭素−炭素二重結合または三重結合を含む。単糖は、例えば、ラクトース、ガラクトース、しょ糖、フラクトース、マンノースおよびセルロースである。オリゴ糖は、例えばラクトース、ガラクトース、しょ糖、フラクトース、マンノースおよびセルロースのような単糖からなるホモポリマーまたはヘテロポリマーである。オリゴ糖は、好ましくは、2−10のモノマー、より好ましくは2−3のモノマーを有する。モノヌクレオチドは、例えば、アデニン、グアニン、シトシン、チミジンまたはウラシルである。オリゴヌクレオチドは、例えばアデニン、グアニン、シトシン、チミジンまたはウラシルのようなモノヌクレオチドからなるホモポリマーまたはヘテロポリマーである。オリゴヌクレオチドは、好ましくは、2−150モノマー、より好ましくは2−50モノマー、さらに好ましくは5−35モノマーそして一層好ましくは10−20モノマーを有する。アミノ酸は、26の天然のアミノ酸の任意のものおよび任意の合成アミノ酸残基である。ペプチドは、例えばポリリジンのようなホモポリマーまたはヘテロポリマーである。ペプチドは、好ましくは、2−25モノマー、より好ましくは、2−20モノマー、さらに好ましくは2−15モノマー、一層好ましくは2−10モノマー、より好ましくは2−5モノマーそしてさらに好ましくは2,3または4モノマーを有する。蛋白は、細胞付着また接着分子、受容体蛋白またはリガンドのような任意の蛋白様分子である。蛋白は、好ましくは、25より多いアミノ酸を有し、そしていくつかの態様では、25−200またはそれ以上のアミノ酸である。
【0022】
いくつかの態様では、変性用成分は、ガラクトースに基づくオリゴ糖例えばASGPRアシアログリゴ蛋白受容体またはガレクチンに結合するものである。ASPGRは、肝細胞接着受容体である。ガレクチンは、細胞接着受容体である。いくつかの態様では、変性用成分は、細胞−細胞認識分子であるセクチンであるsLex(NeuAca2−3Galβ1−[4Fucal−3]GlcNAc)である。いくつかの態様では、変性用成分は、また肝細胞接着に有用であるASGPであるGlcNAcである。いくつかの態様では、変性用成分は、上皮細胞増殖に有用であるHA−オリゴマー(ヒアラドヘジン;ヒアルロナン結合蛋白)である。いくつかの態様では、変性用成分は、マンノースに基づくオリゴ糖例えばマンノース結合レクチンまたはランゲリンに結合するものである。マンノース結合レクチンは、ケラチノサイト増殖に関係がある。ランゲリンは、ランゲルハンス細胞の受容体である。
【0023】
いくつかの態様では、変性用成分は、RDGペプチド例えばフィブロネクチンまたはビトロエンクチンから由来するものである。RDGペプチドは、細胞接着および筋芽細胞接着ペプチドとして有用である。いくつかの態様では、変性用成分は、YIGSRペプチド例えばラミニンB1から由来するものである。YIGSRペプチドは、細胞接着ペプチドとして有用である。いくつかの態様では、変性用成分は、REDVペプチド例えばフィブロネクチンから由来するものである。REDVペプチドは、上皮細胞接着ペプチドとして有用である。いくつかの態様では、IKVAVペプチド例えばラミニンから由来するものである。IKVAVペプチドは、神経突起延長ペプチドとして有用である。いくつかの態様では、変性用成分は、KHIFSDDSSEペプチド例えば天然の細胞接着分子から由来するものである。KHIFSDDSSEペプチドおよび2,3、4またはそれ以上のアミノ酸を有するそのフラグメントは、星状膠細胞接着ペプチドとして有用である。いくつかの態様では、変性用成分は、KRSRペプチド例えばヘパリン結合ドメインから由来するものである。KRSRペプチドは、骨芽細胞接着ペプチドとして有用である。
【0024】
アルギネートポリマーは、変性用成分の間の結合により架橋できる。これらの結合は、共有結合、イオン結合であり、そして結合中間物を含むことができる。アルギネートポリマーは、従って、非ゲル化架橋可能な例により予定された形状に製造できる。
【0025】
変性アルギネートサンプルは、式A−X(式中、Aはアルギネート多糖でありそしてXは変性用成分である)を有する。AおよびXは、エステル、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、アミド、イミド、第二級アミン、直接炭素−炭素(C−C)結合、スルフェートエステル、スルホネートエステル、ホスフェートエステル、ウレタン、カーボネートなどから選ばれる結合を経て共有結合的に結合している。すなわち、アルギネートの1つ以上のモノマーは、変性用成分に直接またはスペーサーにより共有結合している。従って、変性アルギネートサンプルは、また式A−Y−X(式中、AおよびXは前記同様であり、Yはアルキルまたはアリール鎖例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基を含むスペーサーである)を有することができる。いくつかの態様では、アルキル基は、C1−C15、好ましくはC1−C10、好ましくはC1−C5、好ましくはC1−C3アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール基である。AおよびY並びにYおよびXは、上記の結合を経て結合される。
【0026】
結合またはリンカーは、任意にスペーサーとともにまたはそれなしで提供されて変性用成分をアルギネートポリマーのモノマーサブユニットに接続する。リンカーの例は、スペーサー例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基と組み合わされてまたは組み合わされることなく、エステル、エーテル、チオエステル、ジスルフィド、アミド、イミド、第二級アミノ、直接炭素−炭素(C−C)結合、スルフェートエステル、スルホネートエステル、ホスフェートエステル、ウレタンおよびカーボネートを含むが、これらに限定されない。
【0027】
エステル結合は、−C(=O)−O−または−O−C(=O)−の何れかの構造をいう。エーテル結合は、−O−の構造をいい、チオエーテル結合は、−S−の構造をいい、ジスルフィド結合は、−S−S−の構造をいい、アミド結合は、−C(=O)−N−または−N−C(=O)−の何れかの構造をいう。イミド結合は、−N−C(=O)−N−の構造をいう。第二級または第三級アミン結合は、−NH−または−N(−R)−の構造をいう。直接炭素−炭素結合は、−C−C−の構造をいい、スルホネートおよびスルファートエステル結合は、それぞれ−O−S(=O)−O−または−O−S(=O)2−O−の構造をいう。ホスフェートエステル結合は、−O−P(=O)(−O−)−O−の構造をいう。ウレタン結合は、−N−C(=O)−O−または−O−C(=O)−N−の構造をいう。カーボネート結合は、−O−C(=O)−O−の構造をいう。
【0028】
本発明の方法は、アルギネートの1つ以上の未変性M残基が酵素によるエピマー化反応によりG残基に転換される1つ以上の工程を含む。エピメラーゼ酵素は、広く知られている。それらの例は、本明細書において参考として引用される米国特許5939289に記載されたもののようなアゾトバクター・ビンランディから由来する。他の源は、シュードモナス・シリンガエ(本明細書において参考として引用されるBjerkanら、J.Biol.Chem.Vol.279、28920−28929)およびラミナリア・ジギタタ(本明細書において参考として引用されるWO 2004065594)を含む。
【0029】
AIgE酵素であるマンヌロナンC−5エピメラーゼは、アゾトバクター・ビンランディのようなアルギネート生成細菌によりエンコードされるモジュラー蛋白の群からなる。米国特許5939289は、これらの酵素をコードする配列、限定されたG/M比およびブロック構造を有するアルギネートを製造するためのこれらの酵素の製法およびそれらの用途を開示している。これらのイソ酵素は、それらの活性およびそれらが導入するエピマー化パターンにおいて異なる。AIgE−1および6は、長いG−ブロックを生ずるのに有効であり、AIgE4は、MGM配列のみを導入する。前者は、強いゲル形成剤を与え、一方後者の酵素は、たわみ性鎖を発生する。例えば以下の表1を参照。
【0030】
(表1)
(A,ビンランディからの7つのAIgEエピメラーゼ)
タイプ [kDa] モジュラー構造 生成物
AIgE1 147.2 A1R1R2R3A2R4 2官能性Gブロック+
MGブロック
AIgE2 103.1 A1R1R2R3R4 Gブロック(短い)
AIgE3 191 A1R1R2R3A2R4R5 2官能性
R6R7
AIgE4 57.7 A1R1 MGブロック
AIgE5 103.7 A1R1R2R3R4 Gブロック(短い)
AIgE6 90.2 A1R1R2R3 Gブロック(長い)
AIgE7 90.4 A1R1R2R3 リアーゼ活性+Gブロック
+MGブロック
A:365アミノ酸、R:155アミノ酸
【0031】
すべてのアルギネートおよびマンヌロナンは、置換前の原料アルギネートのエピマー化次に追加のエピマー化のような化学的工程および酵素的工程の順序を変更することを含む、1つの工程でまたは次々と、単一または混合物で使用される異なるC−5エピメラーゼの使用によってエピマー化できる。置換の程度並びにエピマー化の量および時間の両方を変えることにより、異なって選択的に置換されたアルギネート分子を得ることができる。エピマー化反応は、温度、反応時間、試薬の量およびこれらの組み合わせをコントロールすることによってコントロールできる。例えば、いくつかの態様では、エピマー化反応は、酸の添加、90℃への加熱、または酵素反応に必要なカルシウムイオンを封鎖するEDTA50mMの添加により停止される。反応をコントロールすることにより、Gに転換される未変性物の量はコントロールでき、従って最終の変性アルギネートにおけるGの量はコントロールできる。
【0032】
原料の性質も、最終生成物の性質をコントロールする。変性がエピマー化の前である方法における原料としてのポリマンヌロネートの使用は、Mのみが変性される最終生成物を与える。すなわち、マンヌロン酸残基を含む多糖(ポリマンヌロネート)を出発原料として使用すると、これらの物質は、カルボキシ官能基または水酸基の何れかで変性され次にC−5エピメラーゼの使用によりエピマー化されることが分かった。このエピマー化は、非変性残基で生じ、マンヌロン酸で選択的に変性されたアルギネート分子を生ずる。
【0033】
もしマンヌロナンが原料として使用されそして残基の変性がMからGへのすべての酵素による転換の前であるならば、変性反応は、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布した置換基を有するマンヌロナンを生ずる。未変性残基に対する変性残基の量は、反応時間、温度、試薬の量およびこれらの組み合わせをコントロールして所望度の変性Mを有する変性マンヌロナンを生成することによりコントロールできる。本発明の第二の工程では、部分的に置換されたマンヌロナンは、マンヌロナン−C−5エピメラーゼ、すなわちD−M残基をポリマー鎖の破壊なしにL−グルロン酸に転換する酵素により処理される。C−5エピメラーゼは、置換したM−残基を転換できないので、最終生成物は、カルシウム結合および結合形成のための未処理Gブロック並びに可溶な部分に残るM残基に排他的に位置する置換基を含むポリマーであろう。そこで、それらは、化学的架橋で互いに自由に相互反応するかまたは外性受容体と自由に反応する。
【0034】
いくつかの態様では、原料アルギネートは、MおよびGの両方を含む。この場合、化学的置換は、MおよびGの両方の残基で起こることができる。酵素による部分的に置換したアルギネートの処理は、次に未置換のMおよびG残基の一部を転換できる。1つの態様は、Mおよび/またはG基でまず部分的に置換され次にMGの残りのポリ交互セグメントを転換する特異性を有するG形成酵素(すなわちAIgE−1)を使用するC−5エピマー化により酵素的に反応されるポリMGブロックからなるアルギネートである。
【0035】
工程の順序および反応速度をコントロールすることにより、生成される変性アルギネートポリマーは、変化した度合の変性、M対Gの変化したレベルの変性、変化する量の未変性Mおよび変化する量の未変性Gを有する。
いくつかの態様では、Mのみが変性される。いくつかの態様では、MおよびGが変性される。
【0036】
いくつかの態様では、10%より少ない残基が変性される。いくつかの態様では、20%より少ない残基が変性される。いくつかの態様では、20%より多い残基が変性される。いくつかの態様では、10−80%の残基が変性される。いくつかの態様では、20−60%の残基が変性される。いくつかの態様では、30−50%の残基が変性される。いくつかの態様では、約40%の残基が変性される。
【0037】
いくつかの態様では、20%より少ない残基が未変性Gである。いくつかの態様では、20%より多い残基が未変性Gである。いくつかの態様では、20−80%の残基が未変性Gである。いくつかの態様では、30−60%の残基が未変性Gである。いくつかの態様では、40−50%の残基が未変性Gである。いくつかの態様では、約45%の残基が未変性Gである。
【0038】
変性アルギネートは、変性アルギネートと二価のゲル化イオン例えばCa++、Sr++、Ba++、Zn++、Fe++、Mn++、Cu++、Pb++、Co、Niまたはこれらの組み合わせとを組み合わせることによりアルギネートゲルまたは繊維を製造するのに使用できる。
【0039】
いくつかの態様では、アルギネートゲルは、リビング細胞例えば増殖細胞または非増殖細胞を内包するのに使用される。細胞は、細胞株または患者/ドナーから得られる。細胞の例は、膵島、肝細胞、神経細胞、腎皮質細胞、血管上皮細胞、甲状腺および上皮小体細胞、副腎細胞、胸腺細胞、卵巣細胞、軟骨細胞、筋肉細胞、心臓細胞、幹細胞、繊維芽細胞、ケラチノサイトまたは確立された細胞株から由来する細胞例えば293、MDCKおよびC2C12細胞株を含む。いくつかの態様では、内包した細胞は、細胞が維持されるとき発現する1つ以上の蛋白をエンコードする発現ベクターを含む。いくつかの態様では、蛋白は、サイトカイン、成長因子、インスリンまたは血管形成阻害剤例えばアンジオスタチンまたはエンドスタチン、他の治療蛋白または他の分子例えば医薬である。約60−70より少ないkDの低いMWを有する蛋白は、ゲル網状構造の有孔性のために特に良好な候補者である。いくつかの態様では、細胞は、多細胞の凝集体または組織として存在する。
【0040】
いくつかの態様では、アルギネート繊維は、複数の変性アルギネートポリマーと二価のゲル化イオンとを組み合わせそして架橋したアルギネートポリマーからなる繊維を押し出すことからなる方法で製造される。いくつかの態様では、固体の非架橋アルギネート組成物またはペーストは、複数の変性アルギネートポリマーを成形、成型、注型またはそれ以外の成形することにより製造される。
いくつかの態様では、変性工程および/またはエピメラーゼ工程は、既に存在するアルギネートゲルまたは繊維で行われる。
(実施例)
【実施例1】
【0041】
(1−アミノ−1−デオキシ−ガラクトースを有する変性ポリマンヌロナンの製造)
1−アミノ−1−デオキシ−β−D−ガラクトース(270mg)を、N−ヒドロキシサクシンイミド(NHS)(1.3g)および1−エチル−3−[3−(ジメチルアミノ)−プロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)(2.17g)を含む0.2Mの2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)緩衝液(pH4.5、400mL)中のポリマンヌロナン(1.5g)のナトリウムの形の攪拌溶液に添加した。溶液を室温で30分間攪拌した。生成物を、5日間12000−14000の分子量カットオフの透析膜を通して脱イオン水に対して透析した。透析した生成物を凍結乾燥してナトリウムポリマンヌロナンの精製したガラクトース誘導体を得た。収量1.45g。1H−NMRから計算した置換度は、12%であることが分かった。この方法によるアミド形成は、ポリマー中に存在するマンヌロン酸のカルボキシル(ウロン)基をターゲットにした。当業者は、生成物の置換度を、上記の反応においてポリマンヌロナン対1−アミノ−1−デオキシガラクトースの異なる比の使用により変化できることを認識する。同じ方法は、分子とアミノ官能基との間のアルキルまたはアリールスペーサーを有するかまたは有しないアミノ基をもつアミノ酸、ペプチド、異なる単糖およびオリゴ糖、ヌクレオチドおよび光架橋可能な基に適用される。
【実施例2】
【0042】
(ポリマンヌロナンのメタクリレートエステルの合成)
ナトリウムポリマンヌロナン(3g)を300mLの脱イオン水に溶解し、そして氷浴で4℃に冷却した。無水メタクリル酸(23g)を冷却ポリマンヌロナン溶液に一定に攪拌しつつ滴下し、そしてpHを好適な量の5MのNaOHの添加により9.0に維持した。攪拌を4℃の温度で24時間続けた。反応生成物を96%エタノールに沈殿させ、遠心分離し、エタノールにより3回洗った。生成物を次に水に溶解し、そして3日間12000−14000の分子量カットオフの透析膜に対して脱イオン水に対して透析した。透析した生成物を凍結乾燥してナトリウムポリマンヌロナンの精製メタクリレート誘導体を得た。収量2.6g。1H−NMRから計算して置換度は、8%であった。この方法によるエステル形成は、モノマー性単位に存在する第二級水酸基を目的とする。当業者は、生成物の置換度が、上記の反応においてポリマンヌロナン対無水物の異なる比の使用により変化できることを認識する。同じ方法は、変性アミノ酸、ペプチド、異なる単糖およびオリゴ糖、ヌクレオチドおよび光架橋可能な基に適用される。
【実施例3】
【0043】
(AIgE4を使用することによる変性ポリマーのエピマー化)
実施例1および2で記載したように得られた変性ポリマンヌロナン(1g)を、2.5g/Lの濃度で、CaCl2(2.5mM)およびNaCl(10mM)を含む50mMのMOPS緩衝液(pH6.9)に溶解した。C−5エピメラーゼAIgE4を次に添加し(酵素/ポリマー重量の比=1/200)、次に溶液を37℃で24時間攪拌した。エピマー化反応は、1−2のpH値に濃HClを冷却ポリマー溶液に添加することにより停止した。混合物にNaClを加え(最終濃度1.5%)、そして4℃で一晩維持した。沈殿した生成物を遠心分離し、3回希釈HCl(0.05M)で洗った。生成物を7より僅か上のpHに維持した脱イオン水に溶解した。溶液にNaCl(最終濃度0.2%)を加え、96%エタノールにより沈殿させた。生成物を濾過し、3回エタノールで洗い、そして3日間12000−14000の分子量カットオフの透析膜を通して脱イオン水に対して透析した。透析した生成物を凍結乾燥して変性マンヌロナンの精製したエピマー化ポリマーを得た。収量0.85g。当業者は、エピマー化度が、異なる反応時間の使用により変化することを認識する。
【実施例4】
【0044】
(AIgE6を使用することによる変性ポリマーのエピマー化)
実施例1および2に記載したように得られた変性ポリマンヌロナンサンプル(1g)を、2.37g/Lの濃度で、CaCl2(2.5mM)およびNaCl(75mM)を含む50mMのMOPS緩衝液(pH6.9)に溶解した。C−5エピメラーゼAIgE6を次に添加し(酵素/ポリマーの重量の比=1/20)、溶液を37℃で48時間攪拌した。エピマー化反応を、1−2のpH値に濃HClを冷却溶液に添加することにより停止した。混合物にNaClを添加し(最終濃度1.5%)、4℃に一晩維持した。沈殿した生成物を遠心分離し、3回希釈HCl(0.05M)により洗った。生成物を7より僅か上のpHに維持した脱イオン水に溶解した。溶液にNaClを添加し(最終濃度0.2%)、96%エタノールにより沈殿させた。生成物を濾過し、3回エタノールで洗い、そして3日間12000−14000の分子量カットオフの透析膜を通して脱イオン水に対して透析した。透析した生成物を凍結乾燥して、変性マンヌロナンの精製エピマー化ポリマーを得た。収量0.90g。当業者は、エピマー化度が異なる反応時間の使用により変化できることを認識する。
【0045】
この方法は、2つのタイプのポリマーを与えた。(1)ガラクトースによるウロン基の変性次にエピマー化。d.s.=12%、FG=0.45、FM=0.55、FGG=0.16。(2)光架橋可能な置換基による水酸基の変性次にエピマー化。原料;実施例2で報告されたポリマンヌロナン。d.s.=8%、FG=0.54、FM=0.46、FGG=0.37。
【0046】
図1および2は、ラミナリア・ハイパーボレアン(Laminaria hyperborean)からの未変性および変性(ガラクトースの14%)アルギネートに比べてガラクトシル化およびエピマー化マンヌロナンのゲル化性に対する効果を示す。
【実施例5】
【0047】
(AIgE4およびAIgE6の組み合わせを使用することによる化学的に変性されたポリマーのエピマー化)
実施例1および2に記載されたように得られた変性ポリマンヌロナンサンプル(1g)を、2.5g/Lの濃度で、CaCl2(2.5mM)およびNaCl(10mM)を含む50mMのMOPS緩衝液(pH6.9)に溶解した。C−5エピメラーゼAIgE4を次に添加し(酵素/ポリマー重量の比=1/100)、溶液を37℃で24時間攪拌した。C−5エピメラーゼAIgE6を次に添加し(酵素/ポリマー重量の比=1/20)、溶液を37℃で24時間攪拌した。エピマー化反応を、1−2のpH値に濃HClを冷却ポリマー溶液に添加することにより停止した。混合物にNaClを加え(最終濃度1.5%)、4℃で一晩維持した。沈殿した生成物を遠心分離し、3回希釈HCl(0.05M)で洗った。生成物を7より僅か上のpHを維持する脱イオン水に溶解した。溶液にNaClを加え(最終濃度0.2%)、96%エタノールにより沈殿させた。生成物を濾過し、3回エタノールで洗い、そして3日間12000−14000の分子量カットオフの透析膜を通して脱イオン水に対して透析した。透析した生成物を凍結乾燥して、変性マンヌロナンの精製したエピマー化ポリマーを得た。収量0.90g。当業者は、エピマー化度が、異なる反応時間を使用することにより変化して、Gブロックおよび置換したM残基が分散しているポリ交互ブロックを有しそしてMM配列を欠くことによりAIgE6エピマー化ポリマーとは異なるポリマーを生ずることを認識する。これは、ポリマーのたわみ性を増大させそして高い離液および低い膨潤へ導く。
【実施例6】
【0048】
(置換したポリMG配列が散在するGブロックからなるポリマーの製造)
実施例1および2に記載されたように得られたポリマンヌロナンサンプル(1g)を、2.5g/Lの濃度で、CaCl2(2.5mM)およびNaCl(10mM)を含む50mMのMOPS緩衝液(pH6.9)に溶解した。C−5エピメラーゼAIgE4を次に添加し(酵素/ポリマー重量の比=1/100)、溶液を37℃で24時間攪拌した。エピマー化反応を、1−2のpH値に濃HClを冷却ポリマー溶液に添加することにより停止した。混合物にNaClを加え(最終濃度1.5%)、4℃で一晩維持した。沈殿した生成物を遠心分離し、3回希釈HCl(0.05M)で洗った。生成物を7より僅か上のpHを維持する脱イオン水に溶解した。溶液にNaClを加え(最終濃度0.2%)、96%エタノールにより沈殿させた。生成物を濾過し、3回エタノールで洗い、そして3日間12000−14000の分子量カットオフの透析膜を通して脱イオン水に対して透析した。透析した生成物を凍結乾燥して、変性マンヌロナンの精製したエピマー化ポリマーを得た。収量0.85g。組成;Gのモルフラクション=0.47、GGのモルフラクション=0。当業者は、エピマー化度が異なる反応時間の使用により変化できることを認識する。
【0049】
(1−アミノ−1−デオキシ−ガラクトースによる変性ポリMGの製造)
1−アミノ−1−デオキシ−ガラクトース(270g)を、NHS(1.3g)およびEDC(2.17g)を含む変性ポリマンヌロナンのナトリウムの形(1.5g)の攪拌溶液に添加した。溶液を室温で30分間攪拌した。生成物を、5日間12000−14000の分子量カットオフの透析膜を通して脱イオン水に対して透析した。透析した生成物を凍結乾燥して、ナトリウムポリマンヌロナンの精製したガラクトース誘導体を得た。収量1.45g。1H−NMRから計算した置換度は、12%であった。この方法によるアミド形成は、ポリマー中に存在するカルボキシル(ウロン)基を目的とした。当業者は、生成物の置換度が、上記の反応中のポリMG対1−アミノ−1−デオキシ−ガラクトースの異なる比の使用により変化できることを認識する。同じ方法は、アミノ酸、ペプチド、異なる単糖およびオリゴ糖、ヌクレオチドおよび分子とアミノ官能基との間にアルキルまたはアリールスペーサーを有するかまたは有しないアミノ基をもつ光架橋可能な基に適用される。
【0050】
(AIgE1を使用することによる変性ポリMGの実験)
実施例1および2に記載したように得られた変性ポリマンヌロナンサンプル(1g)を、2.37g/Lの濃度で、CaCl2(2.5mM)およびNaCl(75mM)を含む50mMのMOPS緩衝液(pH6.9)に溶解した。C−5エピメラーゼAIgE1を次に添加し(酵素/ポリマーの重量の比=1/20)、溶液を37℃で48時間攪拌した。エピマー化反応を、1−2のpH値に濃HClを冷却溶液に添加することにより停止した。混合物にNaClを添加し(最終濃度1.5%)、4℃に一晩維持した。沈殿した生成物を遠心分離し、3回希釈HCl(0.05M)により洗った。生成物を7より僅か上のpHに維持した脱イオン水に溶解した。溶液にNaClを添加し(最終濃度0.2%)、96%エタノールにより沈殿させた。生成物を濾過し、3回エタノールで洗い、そして3日間12000−14000の分子量カットオフの透析膜を通して脱イオン水に対して透析した。透析した生成物を凍結乾燥して、MまたはG置換ポリMG配列が散在する長いGブロックを特徴とする変性マンヌロナンの精製エピマー化ポリマーを得た。収量0.90g。当業者は、エピマー化度が異なる反応時間の使用により変化できることを認識する。
【実施例7】
【0051】
化学的アプローチと酵素的アプローチとの組み合わせが開発されてM残基のみにβ−ガラクトース部分を有するアルギネート様ポリマーを得た。1−アミノ−1−デオキシガラクトースを、カップリング試薬としてEDC(1−エチル−3−[3−(ジメチルアミノ)−プロピル]カルボジイミド塩酸塩)およびNHS(N−ヒドロキシサクシンイミド)を使用してアミド結合を経てマンヌロナンに導入した。このポリマーは、交互G配列とホモポリマー性G配列との両方にグルロン酸残基を導入する2つの異なるC−5エピメラーゼの使用によりエピマー化された。M残基で選択的に変性されたグラフトアルギネートは、1H−NMRによりHPSEC−RI−MALLSと同定され、そして固有粘度およびそのカルシウム結合能は、円二色性スペクトル分析により検出された。変性物質は、同じ糖部分がG残基に導入されたアルギネートサンプルに比べたとき、機械的性質およびゲル形成の性質における改善を示した。最後に、M残基の選択的変性は、グラフトされたアルギネートから製造されたカルシウムビードの高い安定性を生じた。
【0052】
(材料および方法)
ラミナリア・ハイパーボレアstpeから単離されたナトリウムアルギネートの市販のサンプルLF10/60(FG=0.69、FGG=0.56)は、FMC Biopolymers(ノルウェー)により用意された。高分子量マンヌロナン(FG<0.001)を、シュードモナス・フルオレセンスのエピメラーゼネガティブミュータント(Alg)から単離した。精製および脱アセチル化は、本明細書で参考として引用されるBucke,C編「Methods in Biotechnology、1999、Carbohydrate Biochemistry Protocols」Humana Press Inc.Totowa、NJ、10、71に記載されているように実施された。ポリ交互MG(FG=0.47、FGG=0)を、本明細書で参考として引用されるHartmann、M.ら「Biochim.Biophys.Acta」2002、1570、104に記載されているように、AIgE4エピメラーゼの使用によりマンヌロナンから製造した。1−エチル−3−[3−(ジメチルアミノ)−プロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)および塩化ナトリウムは、Aldrich Chemical Co.(ミルウオーキー、WI)から購入した。N−ヒドロキシサクシンイミド(NHS)、2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)およびD−グルコノ−δ−ラクトン(GDL)は、Sigma Chemical Co.(セントルイス、MO)から購入した。炭酸カルシウム(平均粒子サイズ4μm)は、Merck(ダルムスタット、ドイツ)から購入した。
【0053】
(組み換えマンヌロナンC−5エピメラーゼ)
マンヌロナンC−5エピメラーゼは、E.コリ菌株のこれら組み換え体:JM105のAIgE4およびSUREのAIgE6の発酵により製造された。酵素は、Q−Sepharose FF(Pharmacia、ウプサラ、スウェーデン)のイオン交換クロマトグラフィーによりそしてフェニルSepharose FF(Pharmacia)の疎水性相互反応クロマトグラフィーにより部分的に精製した。酵素の活性は、3H−5−ラベルマンヌロナンを酵素とインキュベートしたとき、水へのトリチウムの放出を測定することにより分析された。
【0054】
(ガラクトース置換マンヌロナン(MGal))
1−アミノ−1−デオキシ−β−D−ガラクトース(ガラクトシルアミン)(270mg、0.2当量)を、NHSおよびEDC([EDC]/[Polym]=1.5;[NHS]/[EDC]=1、[Polym]は、グリコピラノシドポリマー繰り返し単位のモル濃度である)を含む0.2MのMES緩衝液(pH4.5、400mL)中のマンヌロナンのナトリウムの形(1.5g)の攪拌溶液に添加した。溶液を室温で30分間攪拌し、ポリマーを、1日間NaHCO3(0.05M)に対して透析し(膜のカットオフ分子量、約12000)、次に伝導度が4℃で2μSより低くなるまで脱イオン水に対して透析した。pHを7に調節し、ポリマーを0.45μmのミリポアフィルターを通して濾過し、凍結乾燥して、1H−NMR分析(ポリマー鎖のM残基のアノマー性プロトンの強度に対するガラクトシルアミンのH−1シグナルの強度から計算した置換度(d.s.))および電位差滴定により明らかになる側鎖基として導入される12%のガラクトースを含む変性マンヌロナンサンプルを得た。
【0055】
(AIgE4によるエピマー化(MGalE4))
ポリマーMGalを、2.5g/Lの濃度で、CaCl2(2.5mM)およびNaCl(10mM)を含む50mMのMOPS緩衝液(pH6.9)に溶解した。C−5エピメラーゼAIgE4を添加し(酵素/ポリマー重量の比=1/100)そして溶液を37℃で24時間攪拌した。
【0056】
(AIgE6によるエピマー化(MGalE4E6))
ポリマーMGalE4を、2.37g/Lの濃度で、CaCl2(2.5mM)およびNaCl(75mM)を含む50mMのMOPS緩衝液(pH6.9)に溶解した。C−5エピメラーゼAIgE6を添加し(酵素/ポリマー重量の比=1/20)そして溶液を37℃で24時間攪拌した。
【0057】
(エピマー化ポリマーの精製)
エピマー化反応を、5MのNaCl溶液(最終濃度1.5%)および塩酸(3M)を冷却ポリマー溶液に添加してpH値をほぼ1−2にすることにより停止した。混合物を4℃で一晩貯蔵して沈降を助けた。沈殿物を遠心分離し、3回希釈HCl(0.05M)により洗った。沈殿物を、希釈水酸化ナトリウムの添加により7より僅か上のpHに維持した脱イオン水に溶解した。溶液をNaClの5M溶液と混合し(最終濃度0.2%)、エタノールにより沈殿させた。沈殿物を、伝導度が4℃で2μSより低くなるまで脱イオン水に対して透析し(膜のカットオフ分子量、約12000)、pHを7に調節し、ポリマーを0.45μmのミリポアフィルターを通して濾過し、凍結乾燥した。
【0058】
(L.ハイパーボレアからのガラクトース置換アルギネート(LhypGal))
L.ハイパーボレアからのアルギネートサンプルを、前記のように1−アミノ−1−デオキシ−ガラクトースにより処理した。1H−NMR分析により明らかにされるようにG残基に導入された14%のガラクトース部分を有する変性アルギネートを得た。
【0059】
(1H−NMRスペクトル分析)
サンプルを、Grasdalenらにより記載されたように製造した。1H−NMRスペクトルは、Bruker WM300により90℃でD2Oで記録された。化学シフトは、3−(トリメチルシリル)プロパンスルホネートに関するシグナルからダウンフィールドでp.p.m.で示された。
【0060】
(電位差測定)
電位差滴定は、MGalおよびMGalE4E6サンプルの当量を決定するのに行われた。ガラス電極を備えた放射計pHM240pHメーターを使用した。ポリマーのH+の形は、一晩0.1MのHClに対して3g/Lの溶液を透析することにより製造された。過剰のHClは、脱イオン水に対する完全透析により除いた。ポリマーを凍結乾燥によって回収した。特定の濃度を有する周知のポリマーの水溶液を、0.1MのNaOH標準溶液(Tritisol、Merck)により滴定した。198±4g/モルおよび200±3g/モルの繰り返し単位のモル質量が、それぞれMGalおよびMGalE4E6の+H形について見いだされ、それらは、NMRから得られる置換度に基づいて計算された理論値(195.3g/モル)とややうまく類似した。
【0061】
(円二色性スペクトル分析)
ポリマーMGal、MGalE4およびMGalE4E6のナトリウムの形の円二色性スペクトル(表2参照)は、それぞれJasco J−700分光偏光計により脱イオン水(c〜2*10−3モノモル/L)中で記録された。1cm光路長の石英セルを使用しそして以下の構成を維持した。バンド幅、1nm、時間定数、2s、走査速度、20nm/分。バックグラウンドに対して補正された4つのスペクトルをそれぞれのサンプルについて平均化した。それぞれのサンプルのスペクトルは、[Ca2+]/[Polym]=0.26へのCa(ClO4)2溶液の添加前および後に記録された。
【0062】
(ビード形成)
それぞれLhypGalおよびMGalE4E6であるL.ハイパーボレアからのカルシウムビードは、2%(w/v)ポリマー溶液を50mMのCaCl2溶液に注ぐことにより得られた。小滴のサイズは、高電圧静電気ビード発生器(7kV、10mL/時、外径0.4mmの鋼針、針からゲル化溶液の距離1.7cm)を使用することによりコントロールできた。得られたアルギネートゲルビードを、使用前にゲル化溶液中で30分間攪拌した。
【0063】
(塩水溶液中の安定性)
L.ハイパーボレア、LhypGalおよびMGalE4E6から得られたカルシウムアルギネートビードの寸法安定性は、1/2mLのゲルビードが3mLの塩水溶液(0.9%)に添加されたとき、それぞれ倒立光学顕微鏡(Zeiss)により測定された。サンプルを1時間攪拌した。塩水溶液を数回取り替え、そしてカプセルの直径を、それぞれの取り替え前に測定した(n=25)。カプセルを、測定前に脱イオン水により洗った。
【0064】
(ゲル化の反応の仕組みおよびレオロジーの同定)
ゲル化の反応の仕組みおよび動的粘弾性の測定は、Stress−Tech汎用レオメーター(REOLOGICA Instruments AB、22363 Lund、スウェーデン)を用いることにより実施された。簡単にいえば、それぞれL.ハイパーボレア、LhypGalおよびMGalE4E6の1.5%溶液(表2参照)に、CaCO3(20mM)およびGDL(40mM)を添加しそして混合物を測定前に30秒間攪拌した。これらの実験は、T=20℃およびギャップ=1.00mmで、切り込みの入ったプレート−プレート(d=40mm)の測定パターンにより行われた。ゲル化の反応の仕組みは、ほぼ18時間3分間の間隔でG′およびG′′(ω=6.28rad*s−1)の繰り返された測定により得られた。動的粘弾性の測定は、動的弾性率(G′)および損失弾性率(G′′)の振動数依存度を測定することによりゲル化24時間後に行われた。振動数の掃引は、振動数の範囲0.01−50Hzで一定のひずみ(0.001)で行われた。サンプルは、低密度シリコーン油によりシールされて、ゲル化実験中の溶媒の蒸発に伴う不都合な作用を避けた。
【0065】
(ゲル円筒の製造および離液)
L.ハイパーボレア、LhypGalおよびMGalE4E6からの均質なカルシウムゲルは、それぞれ、ポリマー溶液とCa2+(CaCO3)の不活性形とをブレンドし次に徐々に加水分解したD−グルコノ−δ−ラクトン(GDL)をモル比GDL/Ca2+=2に維持しつつ添加することにより製造した。ポリマーの最終の濃度は、すべての場合に1%(w/v)であった。
【0066】
Ca−アルギネートゲルの離液は、密度の値を1と考えて計算して、最初の重量に対するゲルの重量減として測定された。上記のようにして製造されたCa−ポリマーゲル化溶液の一部を、直径16mmおよび高さ18mmを有する24穴組織培養プレート(Costar、ケンブリッジ、MA)で硬化した。ゲルを24時間後穴から取りだし、そしてそれらの重量を測定した。離液は、(1−W/W0)*100(ただし、WおよびW0は、それぞれ、ゲル円筒の最終および最初の重量である)として計算された。
【0067】
得られるゲルのヤング率(E)は、20℃でStable Micro Systems TA−XT2 Texture分析器により測定された力/変形の曲線の最初のスロープから計算された。離液を示すすべてのゲルについて、最終のポリマー濃度が決定され、そしてEは、E∝c2を採用して補正された。
【0068】
(粘度測定)
サンプルMGal、MGalE4およびMGalE4E6のナトリウム形(表2参照)の細管粘度の低下は、それぞれ、Schott−Gereate AVS/G自動装置およびUbbelohdeタイプ粘度計を使用することにより25℃で0.1MのNaClで測定された。固有粘度の値は、低下した比粘度(ηsp/c)の濃度依存性並びにHuggins(1)およびKraemer(2)の式を使用することによる相対粘度(Inηsp/c)の対数の低下をそれぞれ分析することによって測定された。
ηsp/c=[η]+k′[η]2c (1)
(lnηrel)/c=[η]−k′′[η]2c (2)
(式中、k′およびk′′は、HugginsおよびKraemerの定数である。)
【0069】
(複数角レーザー光散乱と組み合わされた高速サイズ除外クロマトグラフィー(HPSEC−RI−MALLS))
HPSEC−RI−MALLSシステムは、オンライン脱気器(島津DGU−4A)、ポンプ(島津LC−10AD)および3つの直列に連結したカラム(TSK GEL G6000/5000/4000PWXL)から成った。溶離液は、0.5mL/分で0.01MのEDTA(pH6)を含む0.05MのNa2SO4であった。検出器は、屈折率(RI)UVモニター(Pharmacia LKB UV−M II、Amersham Pharmacia Biotech.ウプサラ、スウェーデン)および複数角レーザー光散乱(He−Neレーザー632.8nmを備えたMALLS−Dawn DSP、Wyatt Technology Corp.サンタ バーバラ、CA、米国)であった。サンプルを、pH=6で0.01MのEDTAを含む0.05MのNa2SO4中に1mg/mLの濃度で溶解し、そして100μLの注入前に0.22μmのフィルターを通して濾過した。分子量測定のためのデータは、ASTRAソフトウエア(バージョン4.70.07、Wyatt Technology Corp.サンタ バーバラ、CA、米国)を用いて分析した。使用された屈折率の増分(dn/dc)は、0.15であった。角適合度は、Debyeの方法に基づき、重量平均分子量Mwそして数平均分子量Mnは、logM(M=分子量)対溶離体積の一次多項曲線に従って得られた。
【0070】
(結果および検討)
(合成および特性)
アルギネート鎖への1−アミノ−1−デオキシ−β−ガラクトースの導入が、G残基に主として影響を与え、ゲル化の能力および安定性の両者並びにポリマー鎖のコンホメーションに影響することが既に報告されている。明白な改善は、マンヌロナン(M)残基への側鎖基の選択的導入の可能性により示されるだろう。これらの基がゲルの形成に含まれないことを考えて、これらの選択的に変性されたアルギネートのカルシウム結合およびゲル化性は、影響されないだろう。しかし、ウロン性官能基の類似性から、本発明者の考えによれば、保護基に基づくどんな方法も、この目的には適さない。この問題を克服するために、C−5エピメラーゼにより誘導される2つのエピマー化を伴うマンヌロナンの連続する化学的変性が、考えられてきた(図14)。
【0071】
第一の工程では、1−アミノ−1−デオキシ−ガラクトース(ガラクトシルアミン)は、マンヌロナンのM残基のウロン性基にNグルコシド結合を経て導入された。アルギネートとガラクトシルアミンとの間のカップリング反応は、既に成功することが証明されているNHSの存在下縮合剤EDCを利用して行われた。ガラクトース置換マンヌロナンMGalの1H−NMRスペクトルは、図6に報告されている。前述したように、M残基へガラクトシルアミン部分が導入されると、新しく形成されたピークは、約4.75ppmで検知可能であり、側鎖として存在する糖のアノマー性プロトンから生ずる。このピークの領域から得られた置換度(12%)は、ポリマーのH+形の電位差滴定から得られる値と良く一致する。
【0072】
ガラクトース置換マンヌロナンから出発して、グルロン残基は、酵素AIgE4およびAIgE6の使用により行われた2つの連続するエピマー化反応によりポリマー鎖に導入された。従来の研究と矛盾して、2つの酵素は、最高のエピマー化の能率を達成するために必要な異なる塩化ナトリウムの濃度からみて、別々に使用された。始めのエピマー化反応では、サンプルMGalは、24時間AIgE4により処理され、そのためエピメラーゼの作用の態様をもたらすと予想されるように、G残基は長い交互MGM配列に導入される(図14)、事実、エピマー化された物質すなわちMGalE4の1H−NMRスペクトルでは(図6)、新しく導入されるG残基のアノマー性プロトンから生ずる〜5.07ppmでのピークの存在は、明確に検知可能である。後者のピークの領域から数値が求められるG残基の全体の含量(FG)は、0.33であると分かった(表2)。その上、交互の配列のG残基に属するH−5シグナルの存在により誘導される4.8−4.65ppmに及ぶ領域のスペクトルの複雑性の増大に注目することが重要である。
【0073】
ホモポリマー性配列または交互配列のM残基に結合するガラクトシルアミン間を区別する可能性のために、変性M残基および隣接基へのエピマー化反応の障害は、容易に予言できるものとして開示された。事実、G残基に隣接するMに導入されるガラクトシルアミンのアノマー性プロトンに属する〜4.9ppmに位置するどんなシグナルも検知されず、変性M部分に隣接するM残基がエピマー化に利用されないことを証明した。この考えに基づいて、MGalE4の場合に達成されたエピマー化全体を、AIgE4処理マンヌロナンについて得られた結果と比較した。図7aは、実験上のG残基含量と理論上のG残基含量との間の比として示される酵素の能率(%)を報告し、後者は、厳密な交互配列を生成するすべての利用可能なM残基の全エピマー化として計算された。AIgE4処理マンヌロナンの場合には、最終のG含量は、厳密な交互配列で0.47であることを見いだした。この基質について0.50の理論上の最大値を考えて、94%の酵素の能率は計算された。サンプルMGalE4の場合では、ガラクトース変性残基および隣接するM基は、エピマー化反応では利用されず、この事実は、0.38に等しい導入されたG残基の理論上最大の量(FG)に導く。そのため、酵素の活性が後者の場合に86%に低下されるので、側鎖としてガラクトース残基の存在は、エピマー化反応に小さい作用のみをもたらすに過ぎない。
【0074】
サンプルMGalE4E6を生ずる第二のエピマー化は、ホモポリマー性G配列を導入するために、エピメラーゼAIgE6を使用して行われた(図14)。図6は、サンプルMGalE4E6の1H−NMRスペクトルのアノマー性領域を報告している。ホモポリマー性配列のG残基のH−5プロトンから生ずる〜4.45ppmでの新しく形成されたシグナルは、排他的にM残基に12%のガラクトース部分を有するサンプルMGalE4E6の交互性およびホモポリマー性の両者のG配列の存在を証明する。サンプルMGalE4E6の1価の基および2価の基の含量は、表2に報告される。カルシウムゲルの形成に必須の特徴である約16%のGG2価基の存在を強調することは重要である。
【0075】
サンプルMGalE4E6中のポリマー鎖のシグナルのいくつかは、側鎖として存在するガラクトース部分のシグナルと重なり、これは、独立した方法により置換度をチェックさせる。従って、このポリマーのH+形の電位差滴定が行われた。後者の方法で計算される置換度(15%)は、N−グリコシド結合のどんな劣化もエピマー化または最終の生成物の精製の何れの間で生じなかった。
【0076】
サンプルMGalE4に関するエピメラーゼAIgE6の能率の数値を求めるために、厳密に交互するMGポリマーを同じ反応条件で処理した(図7b)。上記の同じ推定の下、ポリマー性鎖のガラクトシルアミンの存在が、ポリマー中の追加のG残基の導入を劇的に妨げないと結論せざるをえない。事実、図7bに報告されたように、僅かな減少(59%)が、ポリ交互MGサンプルについて観察されたそれ(67%)に比べたとき、ガラクトース変性ポリマーに対するAIgE6の能率について経験された。しかし、側鎖の作用は、ポリ交互MGサンプルに対する同じ酵素により示される41%に比べて、MGalE4に対する21%に等しい酵素の能率により、GG2価基の導入に一層明らかである。
【0077】
表2は、1価の基および2価の基の両者において3つのサンプルの組成を要約している。交互性およびホモポリマー性の両方のG配列が存在するので、サンプルMGalE4E6は、選択的にM残基に12%のガラクトシルアミンを有するアルギネート様部分として記述できる。
【0078】
ポリマーと糖部分との間に導入されるスペーサーのエピマー化に対する作用を予備的に明らかにするために、p−アミノフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(pNH2PhβGal)をマンヌロナンポリマー鎖に結合する。0.3当量のpNH2PhβGalを使用するEDC/NHS化学(材料および方法参照)により達成されるこの変性ポリマーは、MGalについて報告された同じ反応条件の下にエピマー化され、そして得られたサンプルは、1H−NMRにより分析された。図8(a−c)で報告されているスペクトルから、比較的高い置換度(d.s.=18%)にもかかわらず、注目すべきエピマー化が達成されていることに注目すべきである。事実、図8に報告されている1H−NMRの定量分析は、pNH2PhβGal変性基質へのG残基の導入に関して、それぞれAIgE4およびAIgE6の場合の82%および56%の能率を明らかにしており、従ってフェニル部分により示される剛いスペーサー基が、未変性M残基のC−5転化に顕著に影響しないことを証明している。さらに、AIgE4およびAIgE6による処理が、エピマー化サンプルの1H−NMRスペクトル中の芳香族環に属する容易に検出できる共鳴の存在により証明されるように、ポリマーと側鎖基との間のアミド結合を開裂しない(図8bおよびc参照)。
【0079】
サンプルMGal、MGalE4およびMGalE4E6の分子的な詳細の予備的な評価は、固有粘度およびSEC−MALLS測定により得られた(表2)。両方の方法が、エピマー化の結果として分子量の低下(恐らく酵素の僅かなリアーゼ活性から生ずる)を明らかにしていることを強調したい。この劣化にもかかわらず、本発明の化学−酵素的なアプローチすなわちMGalE4E6から生成されるポリマーは、比較的高い分子量(〜183000)を示す。
【0080】
サンプルMGal、MGalE4およびMGalE4E6の永存長qは、FloryおよびFoxによる等しいモデル(「ノンドレイニング(nondraining)」理論)から誘導された以下の式を用いて試みられた。アルギネートを比較的硬い分子(毛虫様鎖)としてアルギネートを考えると、永存長は、固有粘度の値および分子量から推定できる。
q=1/2*[(1/DP*l)*([η]Mw/Φ)2/3]
(式中、DPは重合度を表し、lは仮想の結合長であり、そしてΦは鎖分子単位の空間的分布の関数である)。上記の式は、単分散系では完全にあてはまり、その上、Φは普遍的な定数であるか、または少なくとも考慮されている異なるポリマーの所定の群では一定である。これらの仮定の下で、qの非常に類似した値が得られ(MGal、MGalE4およびMGalE4E6について、それぞれ、12.2±1.2nm、13.5±0.6nmおよび14.4±0.3nm)、定性的なレベルで、M残基のエピマー化がこれらのガラクトース変性ポリマーの剛さを顕著に変えないことを示唆している。
【0081】
サンプルMGal、MGalE4およびMGalE4E6のキロプチカル性は、それぞれ、円二色性により調べられた(図9a−c)。波長の関数としてのモル楕円率の異なるプロフィルが、3つのサンプルにより開示され、それはポリマー鎖中のG残基の導入から生ずることが注目される。事実、アルギネートの2つの糖成分が異なるキロプチカル挙動を示し、ポリマーの全体のCDスペクトルがMおよびG部分の相対的量および配列パターンに依存することは、良く知られている。特に、GG、MMおよびMG配列のCDスペクトルは、ピークの位置、サインおよび強度において相違を示す。円二色性は、また、上記の3つのポリマーすなわちMGal、MGalE4およびMGalE4E6によるカルシウムのような二価のカチオンの結合に関する定量ではないが有用な情報をもたらすことができる。ポリマーのウロン性部分による二価のカチオンの強い配位は、Ca結合の配列のコンホメーションに変化をもたらす。後者は、ポリマーサンプルの全体のCDスペクトルの変化として検出される、カルボキシレート基のエレクトロニック環境の変性に導かれる。MGal、MGalE4およびMGalE4E6のCDスペクトルは、それぞれ、既知でしかも等しい量のカルシウムの添加前および後に記録され、結果は、図9(a−c)に報告される。特に、サンプルMGalは、カルシウムの添加によりスペクトルに関連のある変化を示さなかったが(図9a)、そのため、ホモポリマー性M配列によるカルシウムイオンの特異的な配位の可能性を排除することを注意すべきである。対照的に、当量のカルシウムによりサンプルMGalE4E6を処理することにより、スペクトルの注目すべき変化が検出され(図9c)、これは、MGalE4E6にのみ生ずるにすぎないいわゆる「エッグボックス」構造であるコンホメーション的に配列されたホモポリマー性G配列の形成により説明される。この結果は、これらの選択的に変性かつエ)ピマー化された物質が協働してカルシウムを結合する能力を証明する。図9bに報告されるように、またポリマーMGalE4は、GG二価基を完全に欠いているにもかかわらず、カルシウムの添加によりかなりな変化を示すことは、意味のあることである。さらなる分析が必要であるが、カルシウムの存在により誘導される長い規則的な交互配列間の鎖内結合の形成は、Morrisおよび共同研究者により既に示唆されているように、観察された挙動の原因であると提案することができるだろう。
【0082】
(ゲルの形成および性質)
好適なバイオ活性のバイオ材料として選択的に変性されたアルギネートMGalE4E6を提示するために、そのカルシウムゲルの物理的性質すなわちゲルの反応の仕組み、粘弾性挙動およびヤング率が測定された。特に、サンプルMGalE4E6からのカルシウム−ヒドロゲルは、既に報告されたようにサンプルLhypGalから得られるものと比較された。前者はM残基にのみ12%の1−アミノ−1−デオキシ−ガラクトースを有するが、後者はG部分に位置する同じ残基の同様な含量(14%)の存在を特徴とすることを強調するのが重要である。L.ハイパーボレアからの未変性アルギネートは、標準ゲル形成材料としてこの比較に使用された。
【0083】
サンプルMGalE4E6、LhypGalおよびL.ハイパーボレアからのアルギネートに関するゲル形成の反応の仕組みは、それぞれ、ポリマー溶液に不活性形のカルシウムイオン(CaCO3)を添加し、次に徐々に加水分解するラクトンGDLを添加することにより研究された。添加されるカルシウムのモルとポリマー繰り返し単位のモルとの間の比は、ゲルの離液を制限するために、すべての3つのサンプルで0.26に等しかった(図12b参照)。
【0084】
この「内部ゲル化」プロセスでは、GDLの(遅い)加水分解は、HCO3−の不溶性CaCO3を転換するプロトンを放出し、それによりゲルの形成に必要なカルシウムイオンをもたらす。ラクトンの混合とゲル形成との間の遅延は、レオメーターにおけるヒドロゲルの形成および硬化の研究を可能にする(図10a−c)。
【0085】
図10aは、ゲル形成プロセスの最初の1000秒におけるL.ハイパーボレア、LhypGalおよびMGalE4E6のそれぞれの動的弾性率(G′)の変化を報告している。データは、アルギネート中のG残基へのガラクトース部分の導入は、ゲル形成の反応の仕組みに強く影響する。事実、LhypGalとL.ハイパーボレアからの未変性アルギネートサンプルとの比較から、前者は、最初の1000秒ではG′値の顕著な変化を示さないが、後者は、動的弾性率の16倍の増加を開示することが強調される。逆に、LhypGalのそれに似た量のガラクトースを有するがM残基に選択的に導入されたサンプルMGalE4E6は、同じ観察時間で動的弾性率の顕著な増加を示し、L.ハイパーボレアからのガラクトース変性アルギネートに比較するとき、より早いゲル形成を示した。サンプルMGalE4E6の場合の動的弾性率の顕著な増加は、長い交互配列のポリマーにおける量の多さにさかのぼることができ、それは結合のより早い、しかもより能率的な形成を導くものと思われる。
【0086】
これらの考察は、図10bにより確認でき、そこでは、ゲル形成の最初の1000秒中記録される相角度(δ)の変化が、それぞれL.ハイパーボレア、LhypGalおよびMGalE4E6について報告されている。繰り返すが、G残基への側鎖の導入は、LhypGalのゲル形成を損なう。反対に、酵素化学的変性アプローチを開発しそして非ゲル形成M残基上の選択的置換すなわちMGalE4E6を達成することにより、ポリマーのゲル形成性は、影響されることがない。
【0087】
内部ゲル化により得られるゲルの硬化は、L.ハイパーボレア、LhypGalおよびMGalE4E6について、それぞれ約7×104秒行われ、図10cで示されるように、すべての3つのケースで安定なゲルを得た。ゲルの完全な形成後、機械的な面は、L.ハイパーボレア、LhypGalおよびMGalE4E6サンプルについて、それぞれ測定された(図11)。すべての3つのケースにおいて、動的弾性率(G′)は、ωの全範囲にわたって損失弾性率(G′′)より常に高く、これらの物質をゲルとして規定するための本当に初めの要件を満足する。サンプルMGalE4E6の場合、振動数からのG′の独立性は、G′とG′′との間のほぼ100倍の相違とあいまって、この系を強いゲルとする。
【0088】
3つのアルギネートサンプルからのヒドロゲルの物理的性質における相違のさらなる評価を得るために、MGalE4E6、LhypGalおよび未変性L.ハイパーボレアアルギネートサンプルから得られるゲル円筒に関するヤング率は、それぞれ測定された(図12a)。3つのサンプルの定量的比較のために、カルシウムキレート化に利用できるCa2+イオンのモルとG残基のモルとの間の一定の比が使用された。従って、MGalE4E6、LhypGalおよびL.ハイパーボレアからのアルギネートからのゲル円筒は、各ポリマーの炭酸カルシウムの異なる濃度すなわちそれぞれ13.3、16および22mMを使用して製造された。
【0089】
変性アルギネートサンプルの値(〜11kPa)から出発して、G残基へのガラクトシルアミン部分の導入は、ゲルの強さに劇的に影響し、そしてLhypGalについてヤング率を〜4.2kPa低下させたことに注意することが重要である。しかし、マンヌロナンへの側鎖ガラクトースの導入次に2つのエピマー化を行うことは、ゲルの強さの点で良好な結果を生ずる。事実、8.7kPaのヤング率は、サンプルMGalE4E6について測定され、それはポリマー鎖の選択的変性の重要性を強調する。
【0090】
サンプルMGalE4E6は、また、図12bで報告されるように、添加されたカルシウムの量により誘導される驚くべき離液を示す。ゲルの離液は、液体の部分的な滲出を生ずる遅い時間に依存する収縮を顕微鏡的に特徴とする現象である。離液は、ゲル形成後のポリマー鎖の横方向の会合により生ずるものとされており、そしてそれは、アルギネートサンプル中に存在する交互配列の量に既に関連している。図12bでは、カルシウム/ポリマー繰り返し単位の比に対する離液(%)は、それぞれサンプルMGalE4E6、LhypGalおよびL.ハイパーボレアについてプロットされた。エピマー化された物質すなわちサンプルMGalE4E6が、L.ハイパーボレアからの未変性サンプルに比べたとき、溶液中に分散したCaCO3の量に対する離液の高い依存性を示すことを認めることができる。この挙動は、前のポリマーに存在する多量の交互MGM配列を考慮に入れることによって説明できる。対照的に、L.ハイパーボレア源からのG変性アルギネートサンプルすなわちLhypGalは、カルシウム濃度に対する離液の依存性をなんら示さず、後者の場合には、G残基上のかさ高なガラクトース部分の存在は、ゲル中のポリマー鎖の横方向の会合を立体的に障害し、従って脱膨潤作用を妨げる。
【0091】
(カプセルの形成および安定性)
カプセルを形成するサンプルMGalE4E6の能力について特別な注目が集まっている。MGalE4E6の2%溶液を50mMの塩化カルシウム溶液に注ぐと、安定なカプセルが得られたことが観察された。これらカプセルの直径は、静電気ビード発生器(材料および方法の項参照)によりコントロールされるが、404±19μmであることが分かった(n=20)。
【0092】
サンプルMGalE4E6から得られるカプセルの安定性は、塩水溶液(NaCl 0.9%)による処理によって寸法(直径)の変化を測ることによりテストされた。比較のために、未変性L.ハイパーボレアおよびサンプルLhypGalから得られるカプセルの安定性を考えた。
【0093】
カプセルは、イオン性ゲルであり、その体積は、正の浸透圧(膨張)により主として左右され、その正の圧は、ゲル中の架橋の数に関連する網状構造の弾性による負の圧により平衡になる。
【0094】
カプセルを過剰のNa+対イオンすなわち塩水溶液により処理することによって、一価のカチオンと二価のカチオンとの間の競合は、カプセル中のカルシウムイオンへの置換に導かれることが最終的に生ずる。これらの処理の効果のすべては、カプセルの直径の増大に関係のあるG結合の数および長さの減少である。そのため、塩水処理の取り替えの所定の数による寸法の変化が大きければ大きいほど、カプセルの安定性は低くなる。
【0095】
図13は、それぞれL.ハイパーボレアアルギネート、LhypGalおよびMGalE4E6から得られるカプセルに対する塩水溶液の置換の取り替えの効果を報告している。未変性L.ハイパーボレアとG残基に導入される14%のガラクトースを有するサンプルすなわちLhypGalとの間の比較から、後者の場合では安定性の低下を合わせたものが、既に論じられたように、経験されることを強調すべきである。事実、塩水溶液を2回変えた後、サンプルLhypGalからのカプセルは直径が2倍増加するが、L.ハイパーボレアからの未変性アルギネートから得られるカプセルは、1.1倍の増加を示すに過ぎなかった。この効果は、アルギネート中のグルロン残基における側鎖基の存在にさかのぼり、そのカルシウム結合性を実質的に損なうことになる。
【0096】
逆に、MGalE4E6からのカプセルは、驚くべき安定性を示し、塩水を2回変えた後に直径が1.3倍に増加した。G変性物質LhypGalに比較してこのサンプルによって示される高い安定性は、サンプルポリマーにおいて、側鎖基の導入はM残基のみに影響することを考えて、説明できる。ゲル形成に含まれない残基上の選択的なこのような変性は、アルギネートサンプルによるカルシウムの結合を妨げず、一層安定なカプセルに導かれる。さらに、カプセルの安定における長い交互配列の役割も、また、既に報告されたように、提案されている。
【0097】
(結論)
構造的に精製されたマンヌロナンの利用可能性および異なるC−5エピメラーゼの利用可能性は、M残基で選択的に変性されるアルギネート様分子を生成する新しい方法を案出することを可能にした。酵素化学的変性アプローチは、マンヌロン部分に排他的にガラクトース残基を有する新しいバイオ活性バイオ材料の生成でテストされた。ガラクトース変性物質に対するエピメラーゼの作用は、1H−NMRにより分析され、そして得られたポリマーは、固有粘度、SEC−MALLSおよび円二色性スペクトル分析により分析された。
【0098】
変性かつエピマー化された物質のレオロージー測定は、特にG残基を同様に変性したアルギネートサンプルとの比較において、M残基への側鎖基の選択的導入の機械的性質への有利さを指摘している。
【0099】
ガラクトース部分を存在させることにより、変性かつエピマー化された物質は、肝細胞の内包のための新しいバイオ活性バイオ材料として提案でき、その場合、アルギネートゲルの機械的および膨潤の性質が、L.ハイパーボレアサンプルからの変性アルギネートに関して改善されている。しかし、このような酵素化学的変性アプローチが、広範囲な応用可能性をもたらし、新規なバイオ材料の製造に向かって新しい機会を特にアピールし開くようにすることに注目することが重要である。結論として、エピマー化を伴うマンヌロナンの変性は、テイラーメイドの構造および物理性を有する選択的に変性された物質を得るために、信頼できる新しい方法として提案できる。
【0100】
(表2)
(ポリマーMGal、MGalE4およびMGalE4E6の1価の基および2価の基としての組成、固有粘度および分子量)
サンプル FG FM FGG FGM/MG FMM
MGal 0 1 0 0 1
MGalE4 0.33 0.67 0 0.33 0.34
MGalE4E6 0.45 0.55 0.16 0.29 0.26
サンプル [η] K′ K′′ Mw d
(dL/g)a (g/モル)b(Mw/Mn)c
MGal 11.98 0.424 0.12 448×103 1.54
MGalE4 9.34 0.393 0.130 2362×102 1.68
MGalE4E6 8.85 0.372 0.141 1832×102 1.73
【0101】
FGは、グルロン酸からなるアルギネートの割合を示し、FGGは、ダイマーのブロック中のグルロン酸からなるアルギネートの割合を示し、一方FMMは、2価のマンヌロン基からなるアルギネートの割合を示し、FGM/MGは、グルロン酸およびマンヌロン酸の混合配列からなるアルギネートの割合を示す。aは、溶媒:NaCl 0.1M、T=20℃であり、k′およびk′′は、それぞれヒギンスの定数およびクレマーの定数を示す。bは、重量平均分子量であり、そしてcは、HPSEC−RI−MALLSにより測定された多分散性指数である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】アルギネートのManA残基の選択的置換の2工程方法の例を示す。第一の工程は、ガラクトサミンによるマンヌロナンの置換である。第二の工程は、組み換えで生成したC−5エピメラーゼを使用するC−5エピマー化である。実施例1は、図1に示された方法に関する。
【図2】以下の3つから作られたカルシウムアルギネートゲルビードの膨潤を示す。四角:L.ハイパーボレア、丸:ポリマンヌロナン、変性およびエピマー化(12%のガラクトース)、三角:塩水溶液(NaCl 0.9%)の取り替えの数による変性L.ハイパーボレア(14%のガラクトース)。
【図3】以下の1−3に関するヤング率として測定された機械的強さを示す。1:未変性L.ハイパーボレア、2:変性L.ハイパーボレア(14%のガラクトース)、3;ポリマンヌロナン、変性およびエピマー化(12%のガラクトース)。
【図4】塩水溶液(NaCl 0.9%)の取り替えの数による、以下の3つから製造されたCaアルギネートゲルビードの膨潤に対するM残基の選択的変性の効果を示す。丸:L.ハイパーボレア、四角:変性かつエピマー化マンヌロナン、三角:L.hyp.アルギネート。
【図5】50mMのEDTAにおける安定性(左)および0.9%NaCl溶液中の膨潤(右)に対するM置換アルギネートカプセルの光架橋の効果を示す。四角:未架橋サンプル、丸:光架橋サンプル。
【図6】MGal、MGalE4およびMGalE4E6の300MHzの1H−NMRスペクトル(アノマー性領域)を示す。
【図7】aは、ポリマー鎖中の単一G残基の導入に関するマンヌロナンおよびMGalサンプルに対するエピメラーゼAIgE4の能率(%)の比較を示す。bは、ポリマー鎖中の単一のG残基(淡いグレー)およびGG2価基(濃いグレー)の導入に関するポリ交互MG(FG=0.47)およびMGalE4サンプルに対するエピメラーゼAIgE6の能率(%)の比較を示す。
【図8】aは、pNH2PhβGal(d.s.=0.18)により変性されたマンヌロナンの300MHzの1H−NMRスペクトルを示す。bは、aの変性マンヌロナンをAIgE4によりエピマー化した生成物(最終組成物;FG=0.26、FGG=0)の300MHzの1H−NMRスペクトルを示す。cは、bの生成物をさらにAIgE6により処理された生成物(最終組成物;FG=0.36、FGG=0.17)の300MHzの1H−NMRスペクトルを示す。H−IGは、導入されるグルロン残基のアノマー性シグナルを表し、H−5G(G)は、他のグルロン部分に隣接するグルロン残基のH5シグナルを表す。
【図9】aは、MGalの円二色性スペクトルであり、bはMGalE4の円二色性スペクトルであり、cはMGalE4E6の円二色性スペクトルである。図中、実線はカルシウムの添加前であり、点線はその添加後である。報告されたサンプルのすべてで、[Ca2+]/[Polym]=0.26である。
【図10】aは、サンプルMGalE4E6(三角)、LhypGal(丸)およびL.ハイパーボレアからのアルギネート(四角)から得られたゲルの初めの1000秒のG′の変化を示す。bは、サンプルMGalE4E6(三角)、LhypGal(丸)およびL.ハイパーボレアからのアルギネート(四角)から得られたゲルの初めの1000秒のδの変化を示す。cは、MGalE4E6(実線)、LhypGal(太い点線)およびL.ハイパーボレアからのアルギネート(細かい点線)の硬化中のG′の変化を示す。ゲルは、20mMのCaCO3および40mMのGDLを添加された1.5%ポリマー溶液から得られた。
【図11】L.ハイパーボレアアルギネート(四角)、LhypGal(丸)およびMGalE4E6(三角)から得られるヒドロゲルに関する動的弾性率G′(黒いシンボル)および損失弾性率G′′(白いシンボル)を示す。ゲルは、20mMのCaCO3および40mMのGDLを添加された1.5%ポリマー溶液から得られた。
【図12】aは、L.ハイパーボレアアルギネート、LhypGalおよびMGalE4E6から得られたゲル円筒のヤング率(E)を示す。モル比[Ca2+]/[G残基]は、すべて3つのサンプルで0.59に等しかった。値は、平均±s.d.として報告された。(n=8)。bは、L.ハイパーボレアアルギネート(四角)、LhypGal(三角)およびMGalE4E6(丸)から得られたゲル円筒に関する比[Ca2+]/[Polym]に対する離液の依存性を示す。値は、平均±s.d.として報告された。(n=8)。
【図13】L.ハイパーボレアからのアルギネート(四角)、LhypGal(三角)およびMGalE4E6(丸)に関する塩水溶液の取り替えを増やすとき絶対直径(d0=ビードの最初の直径)の増加として示されるカルシウムビードの安定性を示す。値は、平均±s.d.として報告された。
【図14】M残基を選択的に変性されたアルギネートの生成に関する酵素化学的変性アプローチを示す。S=1−アミノ−1−デオキシ−β−D−ガラクトースまたはpNH2Ph−β−D−ガラクトピラノシド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)リンカーを有するかまたは有しないアルギネートポリマーの1つ以上の未変性モノマー性サブユニットに変性用成分を共有結合的に結合させる工程、そして
b)アルギネートポリマーの1つ以上の未変性マンヌロン(M)モノマー性サブユニットを酵素によるエピマー化反応により1つ以上の未変性グルロン(G)モノマー性サブユニットに変化させる工程
を含むことを特徴とする変性アルギネートポリマーを製造する方法。
【請求項2】
変性用成分が、単糖、オリゴ糖、モノヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、アミノ酸、ペプチドおよび蛋白からなる群から選ばれる請求項1の方法。
【請求項3】
変性用成分が、ガラクトースおよびそのオリゴマー、マンノースおよびそのオリゴマー、sLex(NeuAca2−3Galβ1−[4Fucal−3]GlcNAc)、GlcNAc、HA−オリゴマー(ヒアラドヘジン;ヒアルロナン結合蛋白)、RDGペプチド、YIGSRペプチド、REDVペプチド、IKVAVペプチド、KHIFSDDSSEペプチドおよびKRSRペプチドからなる群から選ばれる請求項1の方法。
【請求項4】
酵素によるエピマー化反応が、アゾトバクター・ビンランディ(Azotobacter vinelandii)、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)またはラミナリア・ジギタータ(Laminaria digitata)から由来するエピメラーゼ酵素を使用する請求項1の方法。
【請求項5】
酵素によるエピマー化反応が、アゾトバクター・ビンランディ AIgE1、アゾトバクター・ビンランディ AIgE2、アゾトバクター・ビンランディ AIgE3、アゾトバクター・ビンランディ AIgE4、アゾトバクター・ビンランディ AIgE5、アゾトバクター・ビンランディ AIgE6およびアゾトバクター・ビンランディ AIgE7からなる群から選ばれるエピメラーゼ酵素を使用する請求項1の方法。
【請求項6】
工程a)が工程b)の前に行われる請求項1の方法。
【請求項7】
アルギネートポリマーのすべての未変性モノマー性サブユニットが、工程a)の前の未変性Mモノマー性サブユニットである請求項1の方法。
【請求項8】
変性アルギネートポリマーが、工程a)およびb)の後で40−50%の未変性Gモノマー性サブユニットを含む請求項1の方法。
【請求項9】
複数の請求項1のアルギネートポリマーと二価のゲル化イオンとを溶媒中で組み合わせることを特徴とするアルギネートゲルまたは繊維の製造方法。
【請求項10】
二価のゲル化イオンがカルシウム、ストロンチウムまたはバリウムである請求項9の方法。
【請求項11】
該アルギネートゲルが1つ以上のリビング細胞をさらに含む請求項9のアルギネートゲルの製造方法。
【請求項12】
該アルギネートゲルが、膵島、肝細胞、神経細胞、腎皮質細胞、血管上皮細胞、甲状腺および上皮小体細胞、副腎細胞、胸腺細胞、卵巣細胞、軟骨細胞、筋肉細胞、心臓細胞、幹細胞、繊維芽細胞、ケラチノサイトまたは確立された細胞株から由来する細胞例えば293、MDCKおよびC2C12細胞株からなる群から選ばれる1つ以上のリビング細胞をさらに含む請求項11の方法。
【請求項13】
マンヌロン(M)モノマー性サブユニットのみが変性され、そして変性が、リンカーを有するかまたは有しないアルギネートポリマーの1つ以上のマンヌロン(M)モノマー性サブユニットに結合したアセチル基以外の変性用成分からなることを特徴とする未変性マンヌロン(M)モノマー性サブユニットおよび未変性グルロン(G)モノマー性サブユニットを含む変性アルギネートポリマー。
【請求項14】
変性用成分が、単糖、オリゴ糖、モノヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、アミノ酸、ペプチドおよび蛋白からなる群から選ばれる請求項13の変性アルギネートポリマー。
【請求項15】
変性用成分が、ガラクトースおよびそのオリゴマー、マンノースおよびそのオリゴマー、sLex(NeuAca2−3Galβ1−[4Fucal−3]GlcNAc)、GlcNAc、HA−オリゴマー(ヒアラドヘジン;ヒアルロナン結合蛋白)、RDGペプチド、YIGSRペプチド、REDVペプチド、IKVAVペプチド、KHIFSDDSSEペプチドおよびKRSRペプチドからなる群から選ばれる請求項13の変性アルギネートポリマー。
【請求項16】
変性アルギネートポリマーが、40−50%の未変性Gモノマー性サブユニットを含む請求項13の変性アルギネートポリマー。
【請求項17】
二価のゲル化イオンにより架橋された複数の請求項13のアルギネートポリマーを含むことを特徴とするアルギネートゲルまたは繊維。
【請求項18】
二価のゲル化イオンがカルシウム、ストロンチウムまたはバリウムである請求項17のアルギネートゲルまたは繊維。
【請求項19】
該アルギネートゲルが1つ以上のリビング細胞をさらに含む請求項17のアルギネートゲル。
【請求項20】
該アルギネートゲルが、膵島、肝細胞、神経細胞、腎皮質細胞、血管上皮細胞、甲状腺および上皮小体細胞、副腎細胞、胸腺細胞、卵巣細胞、軟骨細胞、筋肉細胞、心臓細胞、幹細胞、繊維芽細胞、ケラチノサイトまたは確立された細胞株から由来する細胞例えば293、MDCKおよびC2C12細胞株からなる群から選ばれる1つ以上のリビング細胞をさらに含む請求項19のアルギネートゲル。
【請求項1】
a)リンカーを有するかまたは有しないアルギネートポリマーの1つ以上の未変性モノマー性サブユニットに変性用成分を共有結合的に結合させる工程、そして
b)アルギネートポリマーの1つ以上の未変性マンヌロン(M)モノマー性サブユニットを酵素によるエピマー化反応により1つ以上の未変性グルロン(G)モノマー性サブユニットに変化させる工程
を含むことを特徴とする変性アルギネートポリマーを製造する方法。
【請求項2】
変性用成分が、単糖、オリゴ糖、モノヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、アミノ酸、ペプチドおよび蛋白からなる群から選ばれる請求項1の方法。
【請求項3】
変性用成分が、ガラクトースおよびそのオリゴマー、マンノースおよびそのオリゴマー、sLex(NeuAca2−3Galβ1−[4Fucal−3]GlcNAc)、GlcNAc、HA−オリゴマー(ヒアラドヘジン;ヒアルロナン結合蛋白)、RDGペプチド、YIGSRペプチド、REDVペプチド、IKVAVペプチド、KHIFSDDSSEペプチドおよびKRSRペプチドからなる群から選ばれる請求項1の方法。
【請求項4】
酵素によるエピマー化反応が、アゾトバクター・ビンランディ(Azotobacter vinelandii)、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)またはラミナリア・ジギタータ(Laminaria digitata)から由来するエピメラーゼ酵素を使用する請求項1の方法。
【請求項5】
酵素によるエピマー化反応が、アゾトバクター・ビンランディ AIgE1、アゾトバクター・ビンランディ AIgE2、アゾトバクター・ビンランディ AIgE3、アゾトバクター・ビンランディ AIgE4、アゾトバクター・ビンランディ AIgE5、アゾトバクター・ビンランディ AIgE6およびアゾトバクター・ビンランディ AIgE7からなる群から選ばれるエピメラーゼ酵素を使用する請求項1の方法。
【請求項6】
工程a)が工程b)の前に行われる請求項1の方法。
【請求項7】
アルギネートポリマーのすべての未変性モノマー性サブユニットが、工程a)の前の未変性Mモノマー性サブユニットである請求項1の方法。
【請求項8】
変性アルギネートポリマーが、工程a)およびb)の後で40−50%の未変性Gモノマー性サブユニットを含む請求項1の方法。
【請求項9】
複数の請求項1のアルギネートポリマーと二価のゲル化イオンとを溶媒中で組み合わせることを特徴とするアルギネートゲルまたは繊維の製造方法。
【請求項10】
二価のゲル化イオンがカルシウム、ストロンチウムまたはバリウムである請求項9の方法。
【請求項11】
該アルギネートゲルが1つ以上のリビング細胞をさらに含む請求項9のアルギネートゲルの製造方法。
【請求項12】
該アルギネートゲルが、膵島、肝細胞、神経細胞、腎皮質細胞、血管上皮細胞、甲状腺および上皮小体細胞、副腎細胞、胸腺細胞、卵巣細胞、軟骨細胞、筋肉細胞、心臓細胞、幹細胞、繊維芽細胞、ケラチノサイトまたは確立された細胞株から由来する細胞例えば293、MDCKおよびC2C12細胞株からなる群から選ばれる1つ以上のリビング細胞をさらに含む請求項11の方法。
【請求項13】
マンヌロン(M)モノマー性サブユニットのみが変性され、そして変性が、リンカーを有するかまたは有しないアルギネートポリマーの1つ以上のマンヌロン(M)モノマー性サブユニットに結合したアセチル基以外の変性用成分からなることを特徴とする未変性マンヌロン(M)モノマー性サブユニットおよび未変性グルロン(G)モノマー性サブユニットを含む変性アルギネートポリマー。
【請求項14】
変性用成分が、単糖、オリゴ糖、モノヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、アミノ酸、ペプチドおよび蛋白からなる群から選ばれる請求項13の変性アルギネートポリマー。
【請求項15】
変性用成分が、ガラクトースおよびそのオリゴマー、マンノースおよびそのオリゴマー、sLex(NeuAca2−3Galβ1−[4Fucal−3]GlcNAc)、GlcNAc、HA−オリゴマー(ヒアラドヘジン;ヒアルロナン結合蛋白)、RDGペプチド、YIGSRペプチド、REDVペプチド、IKVAVペプチド、KHIFSDDSSEペプチドおよびKRSRペプチドからなる群から選ばれる請求項13の変性アルギネートポリマー。
【請求項16】
変性アルギネートポリマーが、40−50%の未変性Gモノマー性サブユニットを含む請求項13の変性アルギネートポリマー。
【請求項17】
二価のゲル化イオンにより架橋された複数の請求項13のアルギネートポリマーを含むことを特徴とするアルギネートゲルまたは繊維。
【請求項18】
二価のゲル化イオンがカルシウム、ストロンチウムまたはバリウムである請求項17のアルギネートゲルまたは繊維。
【請求項19】
該アルギネートゲルが1つ以上のリビング細胞をさらに含む請求項17のアルギネートゲル。
【請求項20】
該アルギネートゲルが、膵島、肝細胞、神経細胞、腎皮質細胞、血管上皮細胞、甲状腺および上皮小体細胞、副腎細胞、胸腺細胞、卵巣細胞、軟骨細胞、筋肉細胞、心臓細胞、幹細胞、繊維芽細胞、ケラチノサイトまたは確立された細胞株から由来する細胞例えば293、MDCKおよびC2C12細胞株からなる群から選ばれる1つ以上のリビング細胞をさらに含む請求項19のアルギネートゲル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2008−519595(P2008−519595A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540751(P2007−540751)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【国際出願番号】PCT/IB2005/003633
【国際公開番号】WO2006/051421
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(504369661)エフエムシー バイオポリマー エイエス (14)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【国際出願番号】PCT/IB2005/003633
【国際公開番号】WO2006/051421
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(504369661)エフエムシー バイオポリマー エイエス (14)
【Fターム(参考)】
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