変性エポキシドプライマー
【課題】改良された硬度、付着性、及び機械特性を有するプライマー組成物の提供。
【解決手段】反応性末端基を有するテレケリック樹脂(たとえば、エポキシホスフェート及びエポキシエステル)をビスフェノール−A(BPA)エポキシドを用いて合成した。ビスフェノール−Aをベースとするエポキシド及びテレケリック樹脂をすべてテトラエチルオルトシリケート(TEOS)オリゴマーによって変性し、エポキシド/ポリシリケート(有機/無機)ハイブリッド系を生成した。変性されたエポキシドはスチール基材上にキャスティングされたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂により熱硬化し、塩スプレイ分析は無機変性されたエポキシドは、未変性エポキシド樹脂よりも、耐腐食性及びスチール基材に対する付着性に関して改良されていることを示した。
【解決手段】反応性末端基を有するテレケリック樹脂(たとえば、エポキシホスフェート及びエポキシエステル)をビスフェノール−A(BPA)エポキシドを用いて合成した。ビスフェノール−Aをベースとするエポキシド及びテレケリック樹脂をすべてテトラエチルオルトシリケート(TEOS)オリゴマーによって変性し、エポキシド/ポリシリケート(有機/無機)ハイブリッド系を生成した。変性されたエポキシドはスチール基材上にキャスティングされたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂により熱硬化し、塩スプレイ分析は無機変性されたエポキシドは、未変性エポキシド樹脂よりも、耐腐食性及びスチール基材に対する付着性に関して改良されていることを示した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は2010年10月1日に出願された米国特許仮出願第61/388,665号の優先権を主張し、その全内容を参照により本明細書中に取り込む。
【0002】
発明の分野
本発明は変性エポキシドプライマーに関し、特に、テトラエチルオルトシリケートオリゴマーにより変性されたかかるプライマーに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
有機/無機ハイブリッド材料は、ハイブリッド材料が両方の材料の有利な特性を相乗的に組み合わせるので、二十年超にわたって多くの注目を集めてきた[1,2]。ハイブリッド材料は向上した物理的特性、機械的特性、熱的特性、ガスバリア特性及び光量子的特性などのユニークな特性を提供する[3〜7]。様々なエラストマー、熱可塑性樹脂及び架橋系はその場で無機材料により変性されてきた[8〜10]。ハイブリッド材料は無機材料の特性、すなわち、硬度、耐久性及び熱安定性と、有機材料の特性、すなわち、可とう性及び靭性を組み合わせた特性を有する。結果として、このようなハイブリッドは固体レーザ、マイクロエレクトロニクス工業における絶縁材料としての二酸化ケイ素の代替品、コンタクトレンズ又はケミカルセンサのためのホスト材料などの様々な用途に有望な材料である[11〜14]。
【0004】
コーティング科学では、また、無機/有機ハイブリッドコーティング系を適用することにより、腐食保護、衝撃、薬品、耐タンパー性、防汚性、外観、可とう性及び不透過性において改良がなされてきた[15〜18]。ハイブリッドにおいて、アルコキシシランのゾルゲル技術は、反応が周囲温度にて溶液中で進行することができるので、無機/有機ハイブリッド材料を調製するための有用な方法の1つである。一般的なゾルゲル反応スキームは種々のアルコキシドを加水分解して、それぞれのシラノールを生成することに基づく[19]。その後、シラノール間又はシラノールとアルコキシドとの間に生じる縮合反応が続く。無機−有機ハイブリッドの有機成分は、一般に、2つの独立した(共有結合していない)ポリマーネットワーク(有機/無機)の同時合成、又は、共有結合が有機成分と無機成分を結合しているマトリックスの形成のいずれかにより生成されうる[20,21]。アルコキシシラン基によって変性された有機モノマー又はポリマーはその場で生成された無機構造への結合を提供するカップリング剤として使用される。有機相と無機相との間の強い相互作用はハイブリッドの機械特性を改良することが判った[20,22,23]。
【0005】
シリコンゾルゲル技術は金属の腐食を防止しそしてコーティング付着性を改良するために広く使用されてきた[24〜27]。Holmes-Farley及びYanyo[28]はアミノシラン接着促進剤と組み合わせてテトラエトキシシラン(TEOS)を用いて、アルミニウム基材上での腐食を防止した。Soucekら[29,30]は有機官能性アルコキシシランなどの各種ゾルゲル前駆体を用いてポリウレア及びポリウレタン有機/無機フィルムを研究した。ポリウレタン/ポリシロキサンは「ユニコート(Unicoat)」系として開発された[31〜33]。この系において、ポリウレタンはプライマー及びトップコートの両方としての一般的な機械特性を提供し、そしてポリシロキサンは接着促進剤及び腐食防止剤として機能する。セラマーフィルムは自己構築型相分離機構により、改良された付着性及び耐腐食性を示した。耐腐食性はクロメート予備処理系に匹敵し、そのため、研究本体の一部はクロメート代替に向けられた。有機/無機ハイブリッドコーティングでは、また、Soucek及びその共同研究者により開発されたアプローチを用いた乾燥オイルとゾルゲル前駆体との混合も報告された[34,35]。得られたハイブリッドコーティングはゾルゲル前駆体含有分を増加させるとともに改良された硬度及び付着性を示した。
【0006】
エポキシド樹脂/シリカハイブリッドの調製に関してこれまで幾つかの報告があった。何人かの研究者[36〜38]はインターカレーションプロセスを用いたエポキシド樹脂-モンモリロナイトハイブリッド及びクレー層の明確規定寸法を調査した。Landryら[39]はγ-アミノプロピルトリエトキシシランにより官能化された非常に高分子量のエポキシドとシリカからハイブリッド材料を調製した。Hussainら[40]はテトラグリシジル-メタ-キシレン-ジアミンを樹脂として用いた、エポキシ樹脂/シリカ系をベースとするハイブリッド材料の調製を報告した。彼らの研究では、ゾルゲル法を用いてシリカフィラーを製造し、次いで、エポキシ樹脂混合物中に取り込んでハイブリッドを調製した。エポキシド-シリカ相互貫入ネットワーク(IPN)はBauerら[41]により調査され、そしてMatejkaら[42,43]によってモデル化された。ハイブリッド系は有機ゴム状ネットワーク及びテトラエトキシシランからのゾルゲルプロセスにより形成される無機シリカ構造からなる。
【0007】
エポキシド、特に、ビスフェノール−A(BPA)型エポキシドはそれが商業的市場に導入されて以来、金属のためのプライマーの選択肢となっている。エポキシドプライマーは、繰り返し単位内の第二級ヒドロキシル基のために、金属に対する優れた付着性を有する[44]。エポキシドは、また、BPA基のために、硬度、疎水性及び耐薬品性が顕著である。低分子量エポキシド誘導体/テトラエトキシシランオリゴマーハイブリッド系に関する総合的特性、評価ならびに腐食性能及び付着性の比較はなおも報告されていない。
【発明の概要】
【0008】
発明の要旨
反応性末端基を有するテレケリック樹脂(エポキシホスフェート及びエポキシエステル)を、ビスフェノール−A(BPA)エポキシドを用いて合成した。ボスフェノール−Aをベースとするエポキシド、エポキシホスフェート及びエポキシエステルはすべてテトラエチルオルトシリケート(TEOS)オリゴマーにより変性され、それは酸性条件下でのTEOSモノマーの水による加水分解及び縮合により調製された。エポキシド/ポリシリケート(有機/無機)ハイブリッド系はフーリエ変換赤外分光法(FTIR)、1H,13C,31P及び29Si核磁気共鳴(NMR)及びマトリックス支援レーザ脱離/イオン化−飛行時間型質量分析(MALDI−TOF)を用いて総合的に特性化した。変性エポキシドを、スチール基材上にキャストされたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂により熱硬化した。変性エポキシドのコーティング特性を、鉛筆硬度、クロスハッチ付着力、逆及び直接衝撃耐性(reverse and direct impact resistance)、マンドレル曲げ及びプルオフ付着力により評価した。ハイブリッド系の粘弾性特性もポリシリケート含有分の関数として評価した。腐食性能を264時間の塩スプレイ(フォグ)試験により評価した。塩スプレイ分析は、無機変性されたエポキシドは耐腐食性及びスチール基材に対する付着性の両方に関して、未変性エポキシド樹脂よりも改良されていることを示した。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面の簡単な説明
【図1】図1はa)BPAをベースとするエポキシド樹脂、b)エポキシホスフェート及びc)エポキシエステルの化学構造の模式図である。
【0010】
【図2】図2は、a)BPAをベースとするエポキシド樹脂、b)エポキシホスフェート及びc)エポキシエステルの図1に示す化学構造をTEOSオリゴマーにより変性したものの模式図である。
【0011】
【図3】図3はビスフェノール−AをベースとするエポキシホスフェートのFTIRスペクトルである。
【0012】
【図4】図4はビスフェノール−Aをベースとするエポキシド及びエポキシエステルのFTIRスペクトルである。
【0013】
【図5】図5はTEOSオリゴマー変性エポキシホスフェートのマススペクトルである。
【0014】
【図6】図6はメラミンホルムアルデヒド樹脂と、エポキシド樹脂の−OH官能基との間の架橋反応の模式図である。
【0015】
【図7】図7は、エポキシ/TEOSハイブリッドコーティング(0%(E0)、2.5%(E2.5)、5%(E5)、7.5%(E7.5)及び10%(E10)のTEOS)における温度の関数としての粘弾性特性:貯蔵弾性率(a)及びtanδ(b)のグラフである。
【0016】
【図8】図8は、エポキシホスフェート/TEOSハイブリッドコーティング(0%(EP0)、2.5%(EO2.5)、5%(EP5)、7.5%(EP7.5)及び10%(EP10)のTEOS)における温度の関数としての粘弾性特性:(a)貯蔵弾性率及び(b)tanδのグラフである。
【0017】
【図9】図9は、エポキシエステル/TEOSハイブリッドコーティング(0%(EE0)、2.5%(EE2.5)、5%(EE5)、7.5%(EE7.5)及び10%(EE10)のTEOS)における温度の関数としての粘弾性特性:貯蔵弾性率(a)及びtanδのグラフである。
【0018】
【図10】図10は、96時間及び264時間の塩スプレイ暴露後の、エポキシド/TEOSハイブリッドコーティング(E0=0%、E2.5=2.5%、E5=5%、E7.5=7.5%及びE10=10%のTEOSオリゴマー)により被覆された未処理のスチール基材の一連の光学像である。
【0019】
【図11】図11は、96時間及び264時間の塩スプレイ暴露後の、エポキシホスフェート/TEOSハイブリッドコーティング(EP0=0%、EP2.5=2.5%、EP5=5%、EP7.5=7.5%及びEP10=10%のTEOSオリゴマー)により被覆された未処理のスチール基材の一連の光学像である。
【0020】
【図12】図12は、96時間及び264時間の塩スプレイ暴露後の、エポキシエステル/TEOSハイブリッドコーティング(EE0=0%、EE2.5=2.5%、EE5=5%、EE7.5=7.5%及びEE10=10%のTEOSオリゴマー)により被覆された未処理のスチール基材の一連の光学像である。
【0021】
【図13】図13は本発明の実施形態によるハイブリッドコーティングとスチール基材との間の相互作用に関する提案の機構の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は被覆された基材に改良された耐腐食性を提供する変性プライマー組成物及び変性プライマー組成物の製造方法を開示する。よって、本発明は保護コーティング及び審美的に満足できるコーティングのためのプライマー及び/又はベースコート層として有用性を有する。
【0023】
変性プライマー組成物はテレケリック樹脂及びアルコキシドオリゴマーを含むことができる。テレケリック樹脂は反応性末端基を有するエポキシドであることができ、そして少なくとも2個のフェノール官能基を有しても又は有しなくてもよい。エポキシドはビスフェノール−A(BPA)エポキシド又はアクリル系脂環式エポキシドなどの脂環式エポキシドなどであることができる。反応性末端基は少なくとも1個のヒドロキシド基を含むことができる。
【0024】
ある場合には、反応性末端基を有するテレケリック樹脂はエポキシホスフェート、エポキシエステル又はエポキシモリブデートである。さらに、アルコキシドオリゴマーは金属アルコキシドオリゴマーもしくはアルコキシシランオリゴマー、たとえば、テトラエチルオルトシリケートオリゴマー(TEOS)、テトラメチルオルトシリケートオリゴマー(TMOS)などであることができる。
【0025】
変性プライマーは、例示的に未被覆のスチール、亜鉛メッキされたスチール、アルミニウム合金などを含む、金属及び/又は合金を被覆するために使用できる。さらに、変性プライマーは自己重層化コーティングのためのベースコートとして使用できる。
【0026】
よりよく例示するために、しかし、発明の範囲を限定することなく、例示の変性プライマー組成物及び変性プライマー組成物の製造方法を下記に提供する。
【0027】
材料
反応性末端基を有するテレケリック樹脂(エポキシホスフェート及びエポキシエステル)をビスフェノール−A(BPA)エポキシドを用いて合成した。ビスフェノール−Aをベースとするエポキシド、エポキシホスフェート及びエポキシエステルはすべてテトラエチルオルトシリケート(TEOS)オリゴマーにより変性されており、それは酸性条件下でのTEOSモノマーの水による加水分解及び縮合により調製された。エポキシド/ポリシリケート(有機/無機)ハイブリッド系はフーリエ変換赤外分光法(FTIR)、1H,13C,31P及び29Si核磁気共鳴(NMR)及びマトリックス支援レーザ脱離/イオン化−飛行時間型質量分析(MALDI−TOF)を用いて総合的に特性化した。変性エポキシドを、スチール基材上にキャストされたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂により熱硬化した。変性エポキシドのコーティング特性を、鉛筆硬度、クロスハッチ付着力、逆及び直接衝撃耐性(reverse and direct impact resistance)、マンドレル曲げ及びプルオフ付着力により評価した。ハイブリッド系の粘弾性特性もポリシリケート含有分の関数として評価した。腐食性能を264時間の塩スプレイ(フォグ)試験により評価した。塩スプレイ分析は、無機変性されたエポキシドは耐腐食性及びスチール基材に対する付着性の両方に関して、未変性エポキシドよりも改良されていることを示した。
【0028】
ビスフェノール−A(BPA)をベースとする液体エポキシド(商品名:DER317)はDow Chemicalsから入手した。脂肪酸のPamolyn 380混合物(70wt%の共役リノール酸で、残部がオレイン酸及び非共役リノール酸である)はEastman Chemical Companyから入手した。テトラエトキシシラン(TEOS)、リン酸(ACS試薬、≧99.0%)、塩酸(水中37wt%)、エタノール、p−キシレン(puriss.p.a.≧99.0%)、ジエチレングリコールブチルエーテル(puriss.p.a.≧99.2%)及びジブチルスズオキシドはAldrich Chemical Companyから購入した。メタノール−エーテル化メラミンホルムアルデヒド樹脂(商品名:Luwipal 072)はBASF Corporation から入手した。普通鋼(0.020インチ厚さ)の基材はThe Q-Panel Companyから購入した。すべての材料を受け取ったまま使用した。材料の化学構造を表1に示す。
【表1】
【0029】
エポキシド当量決定
エポキシド当量はASTM D1652−97により決定した。液体エポキシド樹脂(DER317、0.3g)を250mL三角フラスコに入れた。塩化メチレン(30mL)もフラスコに添加し、樹脂を溶解した。テトラエチルアンモニウムブロミド(3.75g)を氷酢酸(15mL)中に溶解し、そして溶液をマグネティックスターラを用いてエポキシドと混合した。数滴のフェノールフタレイン溶液(メタノール中0.1wt%)を指示薬として添加した。過塩素酸溶液(氷酢酸中0.1N)により滴定を行った。エポキシド当量を下記式を用いて計算した。
EEW=W×1000/V×N (1)
(上式中、Wはエポキシドの質量(g)であり、Vはサンプルを滴定するために使用される0.1N過塩素酸溶液の量(mL)であり、そしてNは過塩素酸溶液の規定度である)。エポキシドの当量は192g/eqと計算された。EEW決定の後に、表1に記載される液体エポキシド樹脂の化学構造に基づいてnを0.155と計算した。
【0030】
BPAをベースとするエポキシホスフェート(EP)の合成
エポキシド樹脂を基準として、1wt%のリン酸(1g、0.0102モル)をジエチレングリコールブチルエーテル(9.67g、0.0596モル、10mL)中に溶解した。溶液を、エポキシド樹脂(DER317、100g)を含む4つ口丸底フラスコ(500mL)に滴下して加え、その間、混合物を機械的に攪拌していた。反応を150℃で1時間行った。2wt%(エポキシ樹脂を基準)の蒸留水(2.00g、0.111モル)を、その後、熱混合物に添加し、そして150℃で2時間攪拌した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により得られた数平均分子量(Mn)は543であり、多分散度は1.48であった。31P NMRはC−O−P基のリンに割り当てられる108.2ppmにて一重項を示す。エポキシホスフェートの1H及び13C NMR共鳴割り当てを表2に示す。
【表2】
【0031】
脂肪酸当量決定
250mL三角フラスコ中で、脂肪酸(Pamolyn 380、2g)を高純度グレードのアセトン(39.25g、50mL)中に溶解させた。3〜4滴のフェノールフタレイン溶液(0.1wt%、メタノール中)を指示薬として添加した。その後、溶液をKOH溶液(メタノール中0.1N)で滴定した。脂肪酸当量を下記式により決定した:
EFA=W×1000/(B−V)×N (2)
(上式中、Wは脂肪酸の質量(g)であり、Bはブランク試験に使用される0.1N KOH溶液の量(mL)であり、Vはサンプルを滴定するために使用される0.1N KOHの量(mL)であり、そしてNはKOH溶液の規定度である)。脂肪酸の当量は321g/eqと決定された。
【0032】
BPAをベースとするエポキシエステル(EE)の合成
温度コントローラに接続したヒーティングマントル中に置いた500mL4つ口丸底フラスコ中でエステル化反応を行った。反応フラスコは温度計、メカニカルスターラ、窒素ガスインレット、ディーンスタークトラップ及び還流凝縮器を装備していた。液体エポキシド樹脂(DER317、Mn=356、多分散度1.03、EE=192g/eq)を、脂肪酸(Pamolyn 380、EFA=321g/eq)と、エポキシド基/脂肪酸基の1:1の当量比を基礎として反応させた。したがって、エポキシド樹脂(100g)、脂肪酸(167g)、キシレン(10.68g、0.1008モル、エポキシド及び脂肪酸の合計量を基準として4wt%)及び触媒のジブチルスズオキシド(0.8010g、0.0032モル、エポキシド及び脂肪酸の合計量を基準として0.3wt%)をすべて反応フラスコに装填した。反応混合物をゆっくりと210℃に加熱し、そして酸価が5mgKOH/g(ASTM D1639−90)になるまでその温度に6時間維持した。数平均分子量(Mn)は1528と測定され、多分散度は1.42であった。エポキシエステルの1H及び13C NMR共鳴割り当てを表3に示す。
【表3】
【0033】
TEOSオリゴマー及びTEOSオリゴマー変性エポキシドの調製
テトラエチルオルトシリケート(TEOS、100g、0.48モル)を丸底フラスコ(250mL)中でエタノール(88.32g、1.92モル)中に溶解させ、その後、蒸留水(8.64g、0.48モル)を混合物中に添加した。水が分散した後に、塩酸(0.175g、0.0048モル)を滴下して加え、その間、混合物を機械的に攪拌した。反応を周囲温度にて96時間行った。混合物中の未反応残留物をロータリーエバポレータを50℃にて用いて除去し、TEOSオリゴマー(TEOSを基準にして77.23%収率)を提供した。生成物を、1H及び29Si NMR、FTIR及びESI−MSにより特性化した。後に、市販のエポキシド、合成したリン酸化エポキシ及び合成したエポキシエステルをすべてTEOSオリゴマー溶液と種々の質量比(総溶液を基準として2.5wt%、5wt%、7.5wt%及び10wt%)で混合し、40℃にて酸性条件下に72時間攪拌し、架橋剤と混合する前に、対応するハイブリッド系を生成した。TEOSオリゴマー変性エポキシホスフェート及びエポキシエステルの1H及び13C NMR共鳴割り当てを表4に示す。
【表4】
【0034】
フィルム調製及びコーティング試験
エポキシ誘導体を、メラミンホルムアルデヒド(MF)樹脂により、MF樹脂中のメトキシ基/エポキシド中のヒドロキシ基の2:1当量比を基準として、架橋することによりフィルム形成を行った。MF樹脂の当量は80g/eqであり、ダイマー、トリマー及びより高級のオリゴマーの存在から得られた[45]。強酸触媒としてp−トルエンスルホン酸一水和物、1wt%のMF樹脂を配合物に添加した。混合物を1時間攪拌し、その後、薄いフィルムをスチールパネル上にドローダウンバーにより、湿潤厚さ125μmでキャスティングした。湿潤フィルムをホコリのない乾燥環境中に室温で24時間入れ、そして120℃で1時間熱硬化した。フィルムを塩スプレイ(フォグ)試験(ASTM B117)に使用し、また、鉛筆硬度(ASTM D3363)、クロスハッチ付着力(ASTM D3359)、プルオフ付着力(ASTM D4541)、耐衝撃(ASTM D2794)、マンドレル曲げ試験(ASTM D522−93)及び溶剤(MEK)耐性(ASTM D4752)などのコーティング試験に用いた。乾燥フィルム厚さは、通常、50〜80μmであった。すべてのフィルムを試験前に7日間保存した。
【0035】
この研究でハイブリッド系を表すために開発した名称は、エポキシドのタイプ及び組成物中のTEOSの濃度に焦点を当てている。特定は用語と数字からなる。最初の用語「E」、「EP」又は「EE」はエポキシド、エポキシドホスフェート又はエポキシドエステルをそれぞれ規定する。第二の用語(0、2.5、5、7.5又は10)はコーティング中に存在するアルコキシシランを指定している。数は総組成物に対するTEOSの質量分率を定量化している。
【0036】
計器
ダイアモンド結晶UATRを用いたThermo Scientific Nicolet 380 FTIRで4000〜400cm−1で32回スキャンしてフーリエ変換赤外(FTIR)分光分析を行った。1H NMR、13C NMR及び31P NMRスペクトルを、溶剤としてクロロホルム−d中で、Gemini-300MHzスペクトロメータ(Varian)にて記録した。29Si NMRスペクトルを、溶剤としてクロロホルム−d中で、Gemini-400MHzスペクトロメータ(Varian)にて記録した。29Si−NMRスペクトルのケミカルシフトをテトラメチルシラン(TMS)対照標準に対して決定した。
【0037】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを、均一濃度HPLCポンプ、屈折率検知器及び3つのステラゲル(styragel)HRシリーズカラム;HR1、HR2及びHR3からなるカラムセットからなるWaters Breeze GPC装置を用いて行った。ポリスチレン(PS)標準を用いて装置を検量した。サンプルを、蒸留されたテトラヒドロフラン(THF)中で調製して1%(v/v)濃度を得た。溶液を0.45μm膜シリンジフィルタ上でろ過し、そして200μLを室温にてエフルエント流速1.0mL/分でクロマトグラフ中に注入した。
【0038】
LSIモデルVSL-337NDパルス窒素レーザ(337nm、3nmパルス幅)、2段階グリッドレスリフレクタ及び単一ステージパルスイオン抽出源を装備したBruker REFLEX-III 飛行時間型マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計 (Bruker Daltonics, Bi11erica, MA)を用いて、マススペクトル実験を行い、コポリマーの化学構造を決定するのを支援した。ジトラノールマトリックスの別個のTHF(非晶性、≧99.9;Aldrich)溶液(20mg/mL)(>97%;Alfa Aesar)、トリフルオロ酢酸ナトリウム(10mg/mL)(>98%;Aldrich)及びコポリマー(10mg/mL)をマトリックス:カチオン化塩:コポリマー(10:1:2)の比で混合し、そして得られた混合物0.5μLをMALDI標的プレート上に導入した。リフレクトロンモードでスペクトルを得た。窒素レーザの減衰を調節して、所望しないコポリマーフラグメンテーションを最小化し、そして感度を最大化した。マススケールの検量を、サンプルと同様の分子量を有するポリ(メチルメタクリレート)標準(Fluka)を用いて外部的に行った。
【0039】
引っ張りモードで1Hzの周波数及び−50〜200℃の範囲にわたって3℃/分の加熱速度を用いて、動的機械熱分析器(Perkin Elmer Instruments, Pyris Diamond DMTA)で粘弾性特性を測定した。測定の間、40psiに設定したN2流速でDMTAファーネス中に循環させた。長方形試験試料(長さ15mm、幅8〜10mm及び厚さ0.05〜0.08mm)に対して、ギャップ距離を2mmで設定した。DMTAデータの再現性を、有用な温度範囲にわたって複数回スキャンすることにより確認した。
【0040】
コーティングに対するプルオフ付着力試験をElcometer 106付着力試験機を用いて行った。3つのアルミニウムプルスタブ(ドリー)を市販の2液型エポキシ接着剤を用いて各試験パネルに接着した。接着剤を試験前に24時間硬化した。試験機はスタブを引っ張って取るように真の軸引張り応力を課し、そしてコーティングと試験表面との間の結合強度を定量的に測定した。3つのドリーから得られる結合強度の平均値をlbf/in2で報告した。
【0041】
塩スプレイ試験[46]をASTM B117により行った。被覆スチールパネルを、標準様式でコーティングをとおして罫書き、むき出しの基材を露出させ、塩スプレイチャンバー中につり下げ、そこで、ノズル圧10〜12psiのアトマイザーによって5%NaCl溶液ミストにパネルをさらした。試験の間に、チャンバーを気密シールした。チャンバー内部の温度及び相対湿度を、264時間の試験時間にわたって35±2℃及び99±1%に維持した。被覆パネルの状態を表面変化に関して視覚検査により周期的に綿密に調査した。罫書きされていない領域はブリスタリングに関して調査し、そして罫書き部分は罫書き跡からどの程度離れるまでコーティングが皮下剥離され又は付着力を失っているかに知るために観察した。被覆パネルのディジタル画像を96時間及び264時間間隔で撮った。
【0042】
市販のBPAをベースとするエポキシドを3種の異なる化学基:脂肪酸、リン酸及びTEOSオリゴマーにより化学変性した。テトラエチルオルトシリケート(TEOS)オリゴマーは酸性条件下での水によるTEOSの加水分解及び縮合により調製された。有機/無機ハイブリッド系をFTIR分光法、1H、13C、31P及び29Si-NMRならびにマススペクトル法を用いて特性化した。耐腐食性はコーティングを塩スプレイ(フォグ)試験にさらして調べた。コーティング特性を264時間塩スプレイ暴露の前に評価した。フィルムの粘弾性特性をTEOSオリゴマー含有分の関数として調べた。
【0043】
有機/無機ハイブリッド系の調製及び描写
ビスフェノール-Aをベースとするエポキシド樹脂をリン酸及び脂肪酸により変性して、それぞれエポキシホスフェート及びエポキシエステルを得た。エポキシ誘導体の化学構造を図1に示す。
【0044】
無機ネットワーク及び有機ネットワークの間の共有結合は加水分解されたテトラエトキシシランクラスタのシラノール基と、エポキシドのCH2CH(OH)CH2Oセグメント中のペンダントヒドロキシル基との反応により形成しうる。エポキシ誘導体にグラフト化された無機構造は環式及び/又は直鎖ポリシリケートとして異なる形態で存在しうる。図2は無機変性エポキシドネットワーク構造を示す。
【0045】
エポキシド誘導体の構造特性
室温FTIR透過スペクトル(図3)はすべての面でビスフェノール−Aをベースとするエポキシホスフェート(EP)の構造を裏付ける。3200〜3700cm−1の範囲における非常に広い吸収ピークはリン酸化エポキシド構造中のペンダントヒドロキシル基から生じるO−H伸縮に帰因する。3000cm−1を超えるすべてのC−H伸縮バンドは芳香族C−H伸縮により生じる。このため、3057及び3036cm−1での2つの狭い間隔の吸収バンドはオキシラン環(エポキシド基)及びビスフェノール-Aのベンゼン環における非対称及び対称芳香族C−H伸縮振動に割り当てられる。2967、2928及び2871cm−1で起こる3つの明確なバンドは構造中の幾つかのメチル(CH3)基及びメチレン(CH2)基の非対称及び対称C−H伸縮モードによるものである。2350cm−1付近での二重吸収バンドP−OH伸縮振動に割り当てられる[47]。弱いコンビネーション及びオーバートーンバンドは1650〜2100cm−1領域に現れる(示していない、図3において軸破断を用いている)。
【0046】
1610、1580及び1506cm−1の3つの強いバンドは構造中のベンゼン環の芳香族C=C及びC−C伸縮に帰因することができる。1454及び1362cm−1の吸収バンドはそれぞれ、メチル(CH3)基中のC−H結合のアウトオブフェーズ(out of phase)(非対称)曲げ振動及びインフェーズ(in-phase)(対称)曲げ振動によるものである。1383cm−1での吸収バンドはメチレン(CH2)基のC−Hはさみ振動に帰因する。メチルC−H結合の対称曲げにより生じるバンドの強度は非対称メチル曲げ振動又はメチレンはさみ振動のものよりも大きい。メチレン捩れ振動及び縦ゆれ振動は1350〜1150cm−1領域で観測される。1260〜1200cm−1領域での強いバンドは1,2−オキシラン環又はベンゼン環における非対称C−O−C伸縮振動及びホスフェート単位のP=O伸縮である。1160cm−1でのショルダーはP−O結合の振動モードに割り当てられる[48]。
【0047】
1035cm−1でのバンドはエポキシ環及びベンゼン環における対称C−O−C伸縮振動に帰因する。971cm−1及び914cm−1で生じる2つの明確なバンドは構造中のメチル基及びメチレン基の面外C−H曲げ(捩れ)振動によるものである。他方、構造中の芳香族面外C−H曲げ振動は831cm−1及び775cm−1に現れる。結果として、BPAをベースとするエポキシドのリン酸による変性により、小さな振動を生じ、リン原子に関連する種々のバンドの強度及び/又は幅を若干高める。
【0048】
図4はビスフェノール−Aをベースとするエポキシド樹脂及び合成されたエポキシエステルのFTIRスペクトルを示す。3200〜3600cm−1の範囲におけるO−H伸縮バンドはエポキシドのスペクトルで観察される対応のバンドよりも、エポキシエステルの赤外スペクトルにおいてずっと広くかつ鋭い。強度及び幅の増加はエポキシエステル構造でヒドロキシル官能化がより高いことによる。エポキシドにおける3047及び3029cm−1での2つの吸収バンドは芳香族C−H伸縮振動に割り当てられる。しかしながら、1,2−オキシラン環がエステル化反応の際に脂肪酸と反応するように開環するという事実のために、エポキシエステルのスペクトルにおいて、3010cm−1付近で単一の吸収バンドが現れる。このことにより、エポキシエステルが環伸縮振動の強度を失うことになり得る。メチル(CH3)及びメチレン(CH2)基のC−H伸縮モードはビスフェノールAをベースとするエポキシドの赤外スペクトルにおいて2970、2921及び2867cm−1で生じる3つの明確なバンドとして現れる。一方、エポキシエステルは同一の領域に2918及び2852cm−1にて生じる2つの吸収バンドを示す。図4において、2500〜1800cm−1の波数領域で大きな空白を避け、そして1800〜500cm−1の低い波数領域を拡大するために、スペクトルのx−軸に軸破断を用いる。
【0049】
強いC=O伸縮吸収バンドは比較的に一定の位置に高い強度を1737cm−1に有し、エポキシエステルのスペクトル中で容易に認識される。芳香族C=C及びC−C伸縮に帰因する3つのバンドはエポキシエステルに関して1608、1581及び1508cm−1で観察される。これらの伸縮周波数の位置はエポキシ樹脂に関してほぼ一定のままであり、1604、1579及び1504cm−1に生じる。エポキシエステルにおける1460、1377及び1359cm−1、及び、エポキシド樹脂における1452、1382及び1361cm−1での吸収は、それぞれ、メチル基中のC−H結合の非対称振動、メチレン基のC−Hはさみ振動及びメチル基のC−H結合の対称振動により生じる。
【0050】
エポキシエステル構造中のすべてのメチレン基が同調して揺れるメチレン揺れ振動による生じる強いバンドは単一項として723cm−1で現れる。エポキシ環の対称伸縮は1250cm−1付近で生じる。C−O結合の収縮の間にC−C結合が延伸する非対称エポキシ環伸縮に帰因する別のバンドは825cm−1で現れる[49]。エポキシ環に関連する第三のバンドは750cm−1付近でエポキシド樹脂のスペクトルにおいてのみ現れる。
【0051】
TEOSオリゴマー変性エポキシ誘導体のFTIRスペクトルの低い波数領域(600〜1500cm−1)において、1000〜1110cm−1での吸収バンドの強度はSi−O−C(脂肪族)及びSi−O−Si伸縮により増加する[50]。2つの強い吸収バンドは無機変性されたリン酸化エポキシドのFTIRスペクトルにおいて1107及び1080cm−1で現れ、同様に、1099及び1081cm−1で生じる2つの狭い間隔の吸収バンドは無機変性されたエポキシエステルの赤外スペクトルにおいて観察される。さらに、Si−OH基のO−H伸縮振動は領域3700〜3200cm−1で吸収する。その領域での吸収特性は水素結合の程度に依存する。それゆえ、3500cm−1付近での吸収バンドの強度及び幅はエポキシ誘導体をTEOSオリゴマーによって変性した後に有意に増加する。Soucekら[29]により以前に報告されたとおり、TEOSオリゴマーの分光測定特性化は1H NMR、29Si NMR及びESI−MSを用いて行った。
【0052】
TEOSオリゴマー変性エポキシホスフェートの1H及び13C NMR(CDCl3)スペクトルのケミカルシフトを表4に要約する。29Si NMRは、Si−O−C(脂肪族)基に割り当てられるδ−81.6ppmに一重項、−88.6ppmに二重項を示した。共鳴差異は隣接ケイ素原子の置換に帰因することができる。δ−91.2ppm及び−96.0ppmでの2つの一重項もスペクトルに現れ、それらはエポキシホスフェートに結合した直鎖もしくは環式ポリシリケート中のSi−O−Si結合に帰因する。
【0053】
TEOSオリゴマー変性エポキシホスフェートを図5に示すMALDI−TOF分光法によりさらに分析した。観測されたイオンは存在する化学種に結合しているナトリウムにより生じる。たとえば、1141Daに対応する構造は環式Si3O3(OEt)6グラフト化エポキシホスフェートのナトリウム(23Da)カチオン化により生じる。環式Si3O3(OEt)6([M]=134n)は402Daであり、無機変性されたエポキシホスフェートはm/z=1141からm/z=739へと環式トリシリケート単位を失う。直鎖トリシリケート([M]=74+134n)による変性に対応する別の分布もスペクトルに現れ、665Daでのピークを示す。1195Daイオン及び1061Daに関連する化学種は単環式構造SiO(OEt)2(134Da)単位により互いに相関している。他方、987Daでのピークは直鎖Si(OEt)4シリケート(208Da)の付加により1195Daで観測される化学種と相関がある。
【0054】
熱硬化性エポキシ誘導体の調製
未変性エポキシ樹脂とメラミンホルムアルデヒド樹脂との間の主要な架橋反応を図6に記述し、エポキシド繰り返し単位におけるヒドロキシル基がメラミンとどのように反応しているかを示す。未変性エポキシ誘導体及び化学変性エポキシ誘導体が硬化剤によりすべて架橋された後に、一般コーティング試験ならびに動的機械熱特性及び耐腐食性を評価した。
【0055】
粘弾性特性
ハイブリッドネットワークの粘弾性特性を動的機械熱アナライザー(DMTA)を用いて調査した。図7a及び7bはそれぞれ、温度の関数としてエポキシ(E)ハイブリッドネットワークの貯蔵弾性率及び損失係数tanδを示す。図7aは半対数グラフとして参照される。貯蔵弾性率データが数桁に及ぶので、図7aにおいて、値の分布は、直線yスケールを対数yスケールで置き換えることによって、より明確に識別される。グラフのゴム弾性平坦領域を大きくするために、データポイントを全く省略することなく、両方の軸にそって軸破断を配置している。tanδ最大値の最も顕著な低下は10%TEOSを含むエポキシドE10で観測され、一方、2.5%TEOSを含むエポキシドE2.5は緩やかな低下のみを示している。貯蔵弾性率(図7a)はフィルムが50℃の温度に達するまで若干低下し、そして50〜110℃で有意に低下している。110℃を超えると、貯蔵弾性率はすべてのエポキシハイブリッドフィルムで最小値を示す。tanδピークの高さは硬化の程度が増加するとともに低下しそしてピークはブロードになる。
【0056】
エポキシホスフェート−TEOSオリゴマーハイブリッドネットワークの貯蔵弾性率及び損失係数tanδを図8a及び8bにそれぞれ示す。図8aにおいて、エポキシホスフェート(EP)ハイブリッドフィルムの貯蔵弾性率(E’)は温度が40℃に達するまで、ここでも、低下傾向を示す。リン酸化エポキシハイブリッドネットワーク関して、E’の値は温度40〜90℃で劇的に低減し、そして、90℃のごく近傍又はそれより高い温度で最小値を示す。
【0057】
図9a及び9bにおいて、エポキシエステル(EE)/TEOSハイブリッド系の貯蔵弾性率(E’)及び損失係数tanδを示す。図9aにおいて、貯蔵弾性率(E’)は温度が0℃に達するまで若干の低下傾向を示す。0℃〜60℃で、エポキシエステル(EE)/TEOSオリゴマーハイブリッドフィルムに関して、E’は劇的に低減する。エポキシエステルハイブリッドネットワークの貯蔵弾性率の増加は損失係数tanδの変化を伴う。約29℃に位置するtanδのα−転移はニートエポキシエステルネットワークのガラス転移に対応し、エポキシエステル−TEOSオリゴマーハイブリッドでは低下しかつブロードになり、そのことはほとんどの複合材系に典型的である[51]。
【0058】
図9bに示される損失最大高さの減少はTEOS濃度に直接的に比例する。硬化したフィルムのガラス転移温度も、ハイブリッドフィルム中のTEOS含有分とともに増加する。どのハイブリッド系も、より高い温度に新たな減衰ピークを示しておらず、そのことはエポキシ誘導体−TEOSハイブリッド系中にマクロ相分離が生じていないことの証拠となる。換言すると、フィルム内の無機領域の主な分離又はクラスタリングのない均一な系を促進している。
【0059】
図8a及び9aも半対数として参照される。両方のグラフにおいて、データポイントを省略せず、そしてグラフ上での明確な比較のために、フィルムの最小貯蔵弾性率の間の差を観察できるように軸破断をx軸及びy軸に入れた。フィルムの架橋密度を、ゴム弾性の理論に由来する等式により計算した[52]。エポキシ、エポキシエステル及びエポキシホスフェートハイブリッドフィルムの粘弾性特性である最小貯蔵弾性率(E’min)、架橋密度(γc)、最大tanδ、ガラス転移温度(Tg)及びtanδ転移の幅を表5に要約する。
【表5】
【0060】
エポキシド(E)系において、84℃から91℃へのガラス転移温度の有意な増加は質量基準でエポキシ樹脂の2.5%TEOSオリゴマー変性で観察される。無機含有分の増加に伴い、損失係数が低下し、一方、架橋密度が増加する。エポキシエステル(EE)シリーズに関しては、ハイブリッドフィルム中の最も高い百分率(10%)の無機含有分は最も大きい架橋密度を示し、それは1180モル/m3と計算された。ガラス転移温度の低下はエポキシホスフェート(EP)フィルムでも観測される(Tg60℃付近)。
【0061】
コーティング特性及び腐食性能
表6はMF樹脂により硬化された種々のTEOS変性エポキシハイブリッドのフィルム特性を示す。ほとんどのコーティング配合物は同一の鉛筆高度(5H)及びクロスハッチ付着力(5B)挙動を示した。付着特性に関してより正確な結果を得るために、プルオフ付着試験を行った。エポキシドのTEOS変性では、2.5wt%TEOSで50%から10wt%TEOSで>100%のプルオフ付着力の増加となった。フィルムの可とう性は逆衝撃試験により判断し、そして可とう性はTEOS装填量に依らないことを示した(未変性エポキシドE0を除く)。
【表6】
【0062】
フィルムの腐食性能を図10、11及び12に示す。図10は未処理のスチール基材上に被覆したエポキシハイブリッドプライマーの96時間及び264時間塩スプレイ暴露後の画像を示す。24時間塩スプレイ暴露されたパネルのいずれにも、コーティングのブリスタ形成又はリフティングは観測されなかった。しかしながら、48時間暴露後に、未変性エポキシ誘導体に対して腐食が観測された。無機変性エポキシド(E5、E7.5及びE10)により被覆されたパネルは264時間暴露の後でも塩スプレイ試験に合格した。
【0063】
エポキシホスフェート及びエポキシエステルハイブリッドプライマーの塩スプレイ試験結果を図11及び12にそれぞれ示す。罫書きされたパネルを264時間までの塩スプレイ暴露で評価した。図10、11及び12には96時間及び264時間の画像のみを示したが、検査は周期的に行った。Buchheitら[53]は塩スプレイ暴露の間に生じるピット形成による腐食損傷を定量化する試みにおける検査方法を用いた。その試験において、各検査間隔で、パネルを合格又は不合格等級に割り当てた。その基準に基づいて、ピット形成損傷対時間の変化をパネルに対して評価した。たとえば、EP0におけるブリスタ形成は系の中の無機含有分の増加に伴い劇的に低減し、96時間暴露後にEP10では目に見える腐食生成物の汚点又は跡を生じない(図11を参照されたい)。5wt%を超えるTEOSオリゴマー含有分で変性したエポキシ誘導体の被覆パネルは腐食性能試験に合格し、5個を超える孤立したスポット又はピットを有せず、直径が0.031in.(0.8mm)を超えるものはなかった。被覆パネルの塩スプレイ性能のさらなる改良はリン酸及び不飽和脂肪酸によりエポキシド樹脂を変性することで観察された。
【0064】
ニートのエポキシエステルで被覆したサンプルは塩スプレイに24時間暴露した後に不合格であった。一方、無機変性されたサンプルは約200時間を超える暴露に耐性であった。最も良好な塩スプレイ性能はエポキシコーティングが10wt%TEOSオリゴマーで無機変性されたときに常に観測された。リン酸化エポキシ及びエポキシエステルはブリスタ耐性を有意に改良することにより、エポキシ樹脂に対して実質的な改良を与え、また、金属基材に対して改良された付着性を提供することが判った(図6を参照されたい)。
【0065】
エポキシエステル系において、不飽和脂肪酸を選択したので、脂肪酸のグラフト化が自己酸化硬化(熱硬化)機構の能力を提供することものと評価される[15]。ガラス転移温度は可とう性の改良のために、エポキシ及びエポキシホスフェート対照物と比較して非常に低い。可とう性は、エポキシ末端基が1,2-オキシランからエステル基に転化することにより生じる。ガラス転移温度の低下は、また、エポキシホスフェート(EP)フィルムにおいても観測される(表5を参照されたい)。同一のアプローチは有効であり、1,2−オキシラン基がリン酸及び水と反応し、ホスフェートエステルを形成することができる。さらに、未反応の低分子量種は可塑剤としても作用することができ、結果的に、より低いガラス転移温度となる。
【0066】
ホスフェートエステル基は金属との反応、それゆえ、コーティングポリマーと金属との強い化学結合を生じることにより金属基材への付着性を増加させることが判った[25,57]。この金属-ホスフェート結合は金属基材に対する通常のコーティングの水素結合よりも水による置換に対してより耐性であり、コーティングの耐腐食性の改良にも寄与する(図11を参照されたい)。TEOSオリゴマーを含むことにより付着性も増加したが、TEOSオリゴマーの濃度をさらに上げても横ばいになった(表6を参照されたい)。この挙動はポリウレア/ポリシロキサンセラマー系においてもSoucekら[29]によって観察されていた。付着力の増加はスチールパネルの表面上に形成されたSi−O−H結合の数の増加に帰因しうる。このように、ホスフェートエステル基及びTEOSオリゴマーの両方により変性されたエポキシ樹脂は金属基材に対してより良好な付着力を達成することが期待される。TEOSオリゴマー変性エポキシが金属基材に対してより良好な付着力を得ることができる理由は、変性樹脂中のシラノール基(Si−OH)が金属ヒドロキシル基(M−OH)と結合して、縮合反応によりSi−O−M結合を形成することができるからである。
【0067】
理論に拘束されず、そして部分的に、塩スプレイ暴露後に撮ったハイブリッドコーティングの画像に基づいて(図10、11及び12を参照されたい)、腐食保護の機構を図13に提案する。耐腐食性コーティングにおいて、エポキシド樹脂の使用は他の合成樹脂を制している。というのは、金属基材に対する結合性及び長期間の耐腐食性が改良されているからである。しかしながら、エポキシ樹脂は親水性の性質があるので、耐湿潤性が妥協される。より良好に付着したゾルゲル層のスチール基材上での形成はコーティング基材界面上での、水及び酸素を主に含む腐食反応の化学種の輸送をブロックすることができ、そして腐食の速度を限定することができる。
【0068】
本明細書中に示された教示を見ると、本発明の多くの変更及び変形が当業者に容易に明らかであることが理解されるべきである。たとえば、本発明は主にビスフェノール−A(BPA)をベースとする液体エポキシド樹脂及びテトラエチルオルトシリケートを参照して記載してきたが、他のエポキシド樹脂及びアルコキシシランオリゴマーも同様に組み合わせて使用され、エポキシド樹脂よりも実質的に改良された変性エポキシ誘導体を提供することができる。そのため、上記は本発明の特定の実施形態の例示であるが、その実施を制限することが意図されない。すべての等価物を含めた請求の範囲が本発明の範囲を規定するものである。
【0069】
参考文献
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は2010年10月1日に出願された米国特許仮出願第61/388,665号の優先権を主張し、その全内容を参照により本明細書中に取り込む。
【0002】
発明の分野
本発明は変性エポキシドプライマーに関し、特に、テトラエチルオルトシリケートオリゴマーにより変性されたかかるプライマーに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
有機/無機ハイブリッド材料は、ハイブリッド材料が両方の材料の有利な特性を相乗的に組み合わせるので、二十年超にわたって多くの注目を集めてきた[1,2]。ハイブリッド材料は向上した物理的特性、機械的特性、熱的特性、ガスバリア特性及び光量子的特性などのユニークな特性を提供する[3〜7]。様々なエラストマー、熱可塑性樹脂及び架橋系はその場で無機材料により変性されてきた[8〜10]。ハイブリッド材料は無機材料の特性、すなわち、硬度、耐久性及び熱安定性と、有機材料の特性、すなわち、可とう性及び靭性を組み合わせた特性を有する。結果として、このようなハイブリッドは固体レーザ、マイクロエレクトロニクス工業における絶縁材料としての二酸化ケイ素の代替品、コンタクトレンズ又はケミカルセンサのためのホスト材料などの様々な用途に有望な材料である[11〜14]。
【0004】
コーティング科学では、また、無機/有機ハイブリッドコーティング系を適用することにより、腐食保護、衝撃、薬品、耐タンパー性、防汚性、外観、可とう性及び不透過性において改良がなされてきた[15〜18]。ハイブリッドにおいて、アルコキシシランのゾルゲル技術は、反応が周囲温度にて溶液中で進行することができるので、無機/有機ハイブリッド材料を調製するための有用な方法の1つである。一般的なゾルゲル反応スキームは種々のアルコキシドを加水分解して、それぞれのシラノールを生成することに基づく[19]。その後、シラノール間又はシラノールとアルコキシドとの間に生じる縮合反応が続く。無機−有機ハイブリッドの有機成分は、一般に、2つの独立した(共有結合していない)ポリマーネットワーク(有機/無機)の同時合成、又は、共有結合が有機成分と無機成分を結合しているマトリックスの形成のいずれかにより生成されうる[20,21]。アルコキシシラン基によって変性された有機モノマー又はポリマーはその場で生成された無機構造への結合を提供するカップリング剤として使用される。有機相と無機相との間の強い相互作用はハイブリッドの機械特性を改良することが判った[20,22,23]。
【0005】
シリコンゾルゲル技術は金属の腐食を防止しそしてコーティング付着性を改良するために広く使用されてきた[24〜27]。Holmes-Farley及びYanyo[28]はアミノシラン接着促進剤と組み合わせてテトラエトキシシラン(TEOS)を用いて、アルミニウム基材上での腐食を防止した。Soucekら[29,30]は有機官能性アルコキシシランなどの各種ゾルゲル前駆体を用いてポリウレア及びポリウレタン有機/無機フィルムを研究した。ポリウレタン/ポリシロキサンは「ユニコート(Unicoat)」系として開発された[31〜33]。この系において、ポリウレタンはプライマー及びトップコートの両方としての一般的な機械特性を提供し、そしてポリシロキサンは接着促進剤及び腐食防止剤として機能する。セラマーフィルムは自己構築型相分離機構により、改良された付着性及び耐腐食性を示した。耐腐食性はクロメート予備処理系に匹敵し、そのため、研究本体の一部はクロメート代替に向けられた。有機/無機ハイブリッドコーティングでは、また、Soucek及びその共同研究者により開発されたアプローチを用いた乾燥オイルとゾルゲル前駆体との混合も報告された[34,35]。得られたハイブリッドコーティングはゾルゲル前駆体含有分を増加させるとともに改良された硬度及び付着性を示した。
【0006】
エポキシド樹脂/シリカハイブリッドの調製に関してこれまで幾つかの報告があった。何人かの研究者[36〜38]はインターカレーションプロセスを用いたエポキシド樹脂-モンモリロナイトハイブリッド及びクレー層の明確規定寸法を調査した。Landryら[39]はγ-アミノプロピルトリエトキシシランにより官能化された非常に高分子量のエポキシドとシリカからハイブリッド材料を調製した。Hussainら[40]はテトラグリシジル-メタ-キシレン-ジアミンを樹脂として用いた、エポキシ樹脂/シリカ系をベースとするハイブリッド材料の調製を報告した。彼らの研究では、ゾルゲル法を用いてシリカフィラーを製造し、次いで、エポキシ樹脂混合物中に取り込んでハイブリッドを調製した。エポキシド-シリカ相互貫入ネットワーク(IPN)はBauerら[41]により調査され、そしてMatejkaら[42,43]によってモデル化された。ハイブリッド系は有機ゴム状ネットワーク及びテトラエトキシシランからのゾルゲルプロセスにより形成される無機シリカ構造からなる。
【0007】
エポキシド、特に、ビスフェノール−A(BPA)型エポキシドはそれが商業的市場に導入されて以来、金属のためのプライマーの選択肢となっている。エポキシドプライマーは、繰り返し単位内の第二級ヒドロキシル基のために、金属に対する優れた付着性を有する[44]。エポキシドは、また、BPA基のために、硬度、疎水性及び耐薬品性が顕著である。低分子量エポキシド誘導体/テトラエトキシシランオリゴマーハイブリッド系に関する総合的特性、評価ならびに腐食性能及び付着性の比較はなおも報告されていない。
【発明の概要】
【0008】
発明の要旨
反応性末端基を有するテレケリック樹脂(エポキシホスフェート及びエポキシエステル)を、ビスフェノール−A(BPA)エポキシドを用いて合成した。ボスフェノール−Aをベースとするエポキシド、エポキシホスフェート及びエポキシエステルはすべてテトラエチルオルトシリケート(TEOS)オリゴマーにより変性され、それは酸性条件下でのTEOSモノマーの水による加水分解及び縮合により調製された。エポキシド/ポリシリケート(有機/無機)ハイブリッド系はフーリエ変換赤外分光法(FTIR)、1H,13C,31P及び29Si核磁気共鳴(NMR)及びマトリックス支援レーザ脱離/イオン化−飛行時間型質量分析(MALDI−TOF)を用いて総合的に特性化した。変性エポキシドを、スチール基材上にキャストされたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂により熱硬化した。変性エポキシドのコーティング特性を、鉛筆硬度、クロスハッチ付着力、逆及び直接衝撃耐性(reverse and direct impact resistance)、マンドレル曲げ及びプルオフ付着力により評価した。ハイブリッド系の粘弾性特性もポリシリケート含有分の関数として評価した。腐食性能を264時間の塩スプレイ(フォグ)試験により評価した。塩スプレイ分析は、無機変性されたエポキシドは耐腐食性及びスチール基材に対する付着性の両方に関して、未変性エポキシド樹脂よりも改良されていることを示した。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面の簡単な説明
【図1】図1はa)BPAをベースとするエポキシド樹脂、b)エポキシホスフェート及びc)エポキシエステルの化学構造の模式図である。
【0010】
【図2】図2は、a)BPAをベースとするエポキシド樹脂、b)エポキシホスフェート及びc)エポキシエステルの図1に示す化学構造をTEOSオリゴマーにより変性したものの模式図である。
【0011】
【図3】図3はビスフェノール−AをベースとするエポキシホスフェートのFTIRスペクトルである。
【0012】
【図4】図4はビスフェノール−Aをベースとするエポキシド及びエポキシエステルのFTIRスペクトルである。
【0013】
【図5】図5はTEOSオリゴマー変性エポキシホスフェートのマススペクトルである。
【0014】
【図6】図6はメラミンホルムアルデヒド樹脂と、エポキシド樹脂の−OH官能基との間の架橋反応の模式図である。
【0015】
【図7】図7は、エポキシ/TEOSハイブリッドコーティング(0%(E0)、2.5%(E2.5)、5%(E5)、7.5%(E7.5)及び10%(E10)のTEOS)における温度の関数としての粘弾性特性:貯蔵弾性率(a)及びtanδ(b)のグラフである。
【0016】
【図8】図8は、エポキシホスフェート/TEOSハイブリッドコーティング(0%(EP0)、2.5%(EO2.5)、5%(EP5)、7.5%(EP7.5)及び10%(EP10)のTEOS)における温度の関数としての粘弾性特性:(a)貯蔵弾性率及び(b)tanδのグラフである。
【0017】
【図9】図9は、エポキシエステル/TEOSハイブリッドコーティング(0%(EE0)、2.5%(EE2.5)、5%(EE5)、7.5%(EE7.5)及び10%(EE10)のTEOS)における温度の関数としての粘弾性特性:貯蔵弾性率(a)及びtanδのグラフである。
【0018】
【図10】図10は、96時間及び264時間の塩スプレイ暴露後の、エポキシド/TEOSハイブリッドコーティング(E0=0%、E2.5=2.5%、E5=5%、E7.5=7.5%及びE10=10%のTEOSオリゴマー)により被覆された未処理のスチール基材の一連の光学像である。
【0019】
【図11】図11は、96時間及び264時間の塩スプレイ暴露後の、エポキシホスフェート/TEOSハイブリッドコーティング(EP0=0%、EP2.5=2.5%、EP5=5%、EP7.5=7.5%及びEP10=10%のTEOSオリゴマー)により被覆された未処理のスチール基材の一連の光学像である。
【0020】
【図12】図12は、96時間及び264時間の塩スプレイ暴露後の、エポキシエステル/TEOSハイブリッドコーティング(EE0=0%、EE2.5=2.5%、EE5=5%、EE7.5=7.5%及びEE10=10%のTEOSオリゴマー)により被覆された未処理のスチール基材の一連の光学像である。
【0021】
【図13】図13は本発明の実施形態によるハイブリッドコーティングとスチール基材との間の相互作用に関する提案の機構の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は被覆された基材に改良された耐腐食性を提供する変性プライマー組成物及び変性プライマー組成物の製造方法を開示する。よって、本発明は保護コーティング及び審美的に満足できるコーティングのためのプライマー及び/又はベースコート層として有用性を有する。
【0023】
変性プライマー組成物はテレケリック樹脂及びアルコキシドオリゴマーを含むことができる。テレケリック樹脂は反応性末端基を有するエポキシドであることができ、そして少なくとも2個のフェノール官能基を有しても又は有しなくてもよい。エポキシドはビスフェノール−A(BPA)エポキシド又はアクリル系脂環式エポキシドなどの脂環式エポキシドなどであることができる。反応性末端基は少なくとも1個のヒドロキシド基を含むことができる。
【0024】
ある場合には、反応性末端基を有するテレケリック樹脂はエポキシホスフェート、エポキシエステル又はエポキシモリブデートである。さらに、アルコキシドオリゴマーは金属アルコキシドオリゴマーもしくはアルコキシシランオリゴマー、たとえば、テトラエチルオルトシリケートオリゴマー(TEOS)、テトラメチルオルトシリケートオリゴマー(TMOS)などであることができる。
【0025】
変性プライマーは、例示的に未被覆のスチール、亜鉛メッキされたスチール、アルミニウム合金などを含む、金属及び/又は合金を被覆するために使用できる。さらに、変性プライマーは自己重層化コーティングのためのベースコートとして使用できる。
【0026】
よりよく例示するために、しかし、発明の範囲を限定することなく、例示の変性プライマー組成物及び変性プライマー組成物の製造方法を下記に提供する。
【0027】
材料
反応性末端基を有するテレケリック樹脂(エポキシホスフェート及びエポキシエステル)をビスフェノール−A(BPA)エポキシドを用いて合成した。ビスフェノール−Aをベースとするエポキシド、エポキシホスフェート及びエポキシエステルはすべてテトラエチルオルトシリケート(TEOS)オリゴマーにより変性されており、それは酸性条件下でのTEOSモノマーの水による加水分解及び縮合により調製された。エポキシド/ポリシリケート(有機/無機)ハイブリッド系はフーリエ変換赤外分光法(FTIR)、1H,13C,31P及び29Si核磁気共鳴(NMR)及びマトリックス支援レーザ脱離/イオン化−飛行時間型質量分析(MALDI−TOF)を用いて総合的に特性化した。変性エポキシドを、スチール基材上にキャストされたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂により熱硬化した。変性エポキシドのコーティング特性を、鉛筆硬度、クロスハッチ付着力、逆及び直接衝撃耐性(reverse and direct impact resistance)、マンドレル曲げ及びプルオフ付着力により評価した。ハイブリッド系の粘弾性特性もポリシリケート含有分の関数として評価した。腐食性能を264時間の塩スプレイ(フォグ)試験により評価した。塩スプレイ分析は、無機変性されたエポキシドは耐腐食性及びスチール基材に対する付着性の両方に関して、未変性エポキシドよりも改良されていることを示した。
【0028】
ビスフェノール−A(BPA)をベースとする液体エポキシド(商品名:DER317)はDow Chemicalsから入手した。脂肪酸のPamolyn 380混合物(70wt%の共役リノール酸で、残部がオレイン酸及び非共役リノール酸である)はEastman Chemical Companyから入手した。テトラエトキシシラン(TEOS)、リン酸(ACS試薬、≧99.0%)、塩酸(水中37wt%)、エタノール、p−キシレン(puriss.p.a.≧99.0%)、ジエチレングリコールブチルエーテル(puriss.p.a.≧99.2%)及びジブチルスズオキシドはAldrich Chemical Companyから購入した。メタノール−エーテル化メラミンホルムアルデヒド樹脂(商品名:Luwipal 072)はBASF Corporation から入手した。普通鋼(0.020インチ厚さ)の基材はThe Q-Panel Companyから購入した。すべての材料を受け取ったまま使用した。材料の化学構造を表1に示す。
【表1】
【0029】
エポキシド当量決定
エポキシド当量はASTM D1652−97により決定した。液体エポキシド樹脂(DER317、0.3g)を250mL三角フラスコに入れた。塩化メチレン(30mL)もフラスコに添加し、樹脂を溶解した。テトラエチルアンモニウムブロミド(3.75g)を氷酢酸(15mL)中に溶解し、そして溶液をマグネティックスターラを用いてエポキシドと混合した。数滴のフェノールフタレイン溶液(メタノール中0.1wt%)を指示薬として添加した。過塩素酸溶液(氷酢酸中0.1N)により滴定を行った。エポキシド当量を下記式を用いて計算した。
EEW=W×1000/V×N (1)
(上式中、Wはエポキシドの質量(g)であり、Vはサンプルを滴定するために使用される0.1N過塩素酸溶液の量(mL)であり、そしてNは過塩素酸溶液の規定度である)。エポキシドの当量は192g/eqと計算された。EEW決定の後に、表1に記載される液体エポキシド樹脂の化学構造に基づいてnを0.155と計算した。
【0030】
BPAをベースとするエポキシホスフェート(EP)の合成
エポキシド樹脂を基準として、1wt%のリン酸(1g、0.0102モル)をジエチレングリコールブチルエーテル(9.67g、0.0596モル、10mL)中に溶解した。溶液を、エポキシド樹脂(DER317、100g)を含む4つ口丸底フラスコ(500mL)に滴下して加え、その間、混合物を機械的に攪拌していた。反応を150℃で1時間行った。2wt%(エポキシ樹脂を基準)の蒸留水(2.00g、0.111モル)を、その後、熱混合物に添加し、そして150℃で2時間攪拌した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により得られた数平均分子量(Mn)は543であり、多分散度は1.48であった。31P NMRはC−O−P基のリンに割り当てられる108.2ppmにて一重項を示す。エポキシホスフェートの1H及び13C NMR共鳴割り当てを表2に示す。
【表2】
【0031】
脂肪酸当量決定
250mL三角フラスコ中で、脂肪酸(Pamolyn 380、2g)を高純度グレードのアセトン(39.25g、50mL)中に溶解させた。3〜4滴のフェノールフタレイン溶液(0.1wt%、メタノール中)を指示薬として添加した。その後、溶液をKOH溶液(メタノール中0.1N)で滴定した。脂肪酸当量を下記式により決定した:
EFA=W×1000/(B−V)×N (2)
(上式中、Wは脂肪酸の質量(g)であり、Bはブランク試験に使用される0.1N KOH溶液の量(mL)であり、Vはサンプルを滴定するために使用される0.1N KOHの量(mL)であり、そしてNはKOH溶液の規定度である)。脂肪酸の当量は321g/eqと決定された。
【0032】
BPAをベースとするエポキシエステル(EE)の合成
温度コントローラに接続したヒーティングマントル中に置いた500mL4つ口丸底フラスコ中でエステル化反応を行った。反応フラスコは温度計、メカニカルスターラ、窒素ガスインレット、ディーンスタークトラップ及び還流凝縮器を装備していた。液体エポキシド樹脂(DER317、Mn=356、多分散度1.03、EE=192g/eq)を、脂肪酸(Pamolyn 380、EFA=321g/eq)と、エポキシド基/脂肪酸基の1:1の当量比を基礎として反応させた。したがって、エポキシド樹脂(100g)、脂肪酸(167g)、キシレン(10.68g、0.1008モル、エポキシド及び脂肪酸の合計量を基準として4wt%)及び触媒のジブチルスズオキシド(0.8010g、0.0032モル、エポキシド及び脂肪酸の合計量を基準として0.3wt%)をすべて反応フラスコに装填した。反応混合物をゆっくりと210℃に加熱し、そして酸価が5mgKOH/g(ASTM D1639−90)になるまでその温度に6時間維持した。数平均分子量(Mn)は1528と測定され、多分散度は1.42であった。エポキシエステルの1H及び13C NMR共鳴割り当てを表3に示す。
【表3】
【0033】
TEOSオリゴマー及びTEOSオリゴマー変性エポキシドの調製
テトラエチルオルトシリケート(TEOS、100g、0.48モル)を丸底フラスコ(250mL)中でエタノール(88.32g、1.92モル)中に溶解させ、その後、蒸留水(8.64g、0.48モル)を混合物中に添加した。水が分散した後に、塩酸(0.175g、0.0048モル)を滴下して加え、その間、混合物を機械的に攪拌した。反応を周囲温度にて96時間行った。混合物中の未反応残留物をロータリーエバポレータを50℃にて用いて除去し、TEOSオリゴマー(TEOSを基準にして77.23%収率)を提供した。生成物を、1H及び29Si NMR、FTIR及びESI−MSにより特性化した。後に、市販のエポキシド、合成したリン酸化エポキシ及び合成したエポキシエステルをすべてTEOSオリゴマー溶液と種々の質量比(総溶液を基準として2.5wt%、5wt%、7.5wt%及び10wt%)で混合し、40℃にて酸性条件下に72時間攪拌し、架橋剤と混合する前に、対応するハイブリッド系を生成した。TEOSオリゴマー変性エポキシホスフェート及びエポキシエステルの1H及び13C NMR共鳴割り当てを表4に示す。
【表4】
【0034】
フィルム調製及びコーティング試験
エポキシ誘導体を、メラミンホルムアルデヒド(MF)樹脂により、MF樹脂中のメトキシ基/エポキシド中のヒドロキシ基の2:1当量比を基準として、架橋することによりフィルム形成を行った。MF樹脂の当量は80g/eqであり、ダイマー、トリマー及びより高級のオリゴマーの存在から得られた[45]。強酸触媒としてp−トルエンスルホン酸一水和物、1wt%のMF樹脂を配合物に添加した。混合物を1時間攪拌し、その後、薄いフィルムをスチールパネル上にドローダウンバーにより、湿潤厚さ125μmでキャスティングした。湿潤フィルムをホコリのない乾燥環境中に室温で24時間入れ、そして120℃で1時間熱硬化した。フィルムを塩スプレイ(フォグ)試験(ASTM B117)に使用し、また、鉛筆硬度(ASTM D3363)、クロスハッチ付着力(ASTM D3359)、プルオフ付着力(ASTM D4541)、耐衝撃(ASTM D2794)、マンドレル曲げ試験(ASTM D522−93)及び溶剤(MEK)耐性(ASTM D4752)などのコーティング試験に用いた。乾燥フィルム厚さは、通常、50〜80μmであった。すべてのフィルムを試験前に7日間保存した。
【0035】
この研究でハイブリッド系を表すために開発した名称は、エポキシドのタイプ及び組成物中のTEOSの濃度に焦点を当てている。特定は用語と数字からなる。最初の用語「E」、「EP」又は「EE」はエポキシド、エポキシドホスフェート又はエポキシドエステルをそれぞれ規定する。第二の用語(0、2.5、5、7.5又は10)はコーティング中に存在するアルコキシシランを指定している。数は総組成物に対するTEOSの質量分率を定量化している。
【0036】
計器
ダイアモンド結晶UATRを用いたThermo Scientific Nicolet 380 FTIRで4000〜400cm−1で32回スキャンしてフーリエ変換赤外(FTIR)分光分析を行った。1H NMR、13C NMR及び31P NMRスペクトルを、溶剤としてクロロホルム−d中で、Gemini-300MHzスペクトロメータ(Varian)にて記録した。29Si NMRスペクトルを、溶剤としてクロロホルム−d中で、Gemini-400MHzスペクトロメータ(Varian)にて記録した。29Si−NMRスペクトルのケミカルシフトをテトラメチルシラン(TMS)対照標準に対して決定した。
【0037】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを、均一濃度HPLCポンプ、屈折率検知器及び3つのステラゲル(styragel)HRシリーズカラム;HR1、HR2及びHR3からなるカラムセットからなるWaters Breeze GPC装置を用いて行った。ポリスチレン(PS)標準を用いて装置を検量した。サンプルを、蒸留されたテトラヒドロフラン(THF)中で調製して1%(v/v)濃度を得た。溶液を0.45μm膜シリンジフィルタ上でろ過し、そして200μLを室温にてエフルエント流速1.0mL/分でクロマトグラフ中に注入した。
【0038】
LSIモデルVSL-337NDパルス窒素レーザ(337nm、3nmパルス幅)、2段階グリッドレスリフレクタ及び単一ステージパルスイオン抽出源を装備したBruker REFLEX-III 飛行時間型マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計 (Bruker Daltonics, Bi11erica, MA)を用いて、マススペクトル実験を行い、コポリマーの化学構造を決定するのを支援した。ジトラノールマトリックスの別個のTHF(非晶性、≧99.9;Aldrich)溶液(20mg/mL)(>97%;Alfa Aesar)、トリフルオロ酢酸ナトリウム(10mg/mL)(>98%;Aldrich)及びコポリマー(10mg/mL)をマトリックス:カチオン化塩:コポリマー(10:1:2)の比で混合し、そして得られた混合物0.5μLをMALDI標的プレート上に導入した。リフレクトロンモードでスペクトルを得た。窒素レーザの減衰を調節して、所望しないコポリマーフラグメンテーションを最小化し、そして感度を最大化した。マススケールの検量を、サンプルと同様の分子量を有するポリ(メチルメタクリレート)標準(Fluka)を用いて外部的に行った。
【0039】
引っ張りモードで1Hzの周波数及び−50〜200℃の範囲にわたって3℃/分の加熱速度を用いて、動的機械熱分析器(Perkin Elmer Instruments, Pyris Diamond DMTA)で粘弾性特性を測定した。測定の間、40psiに設定したN2流速でDMTAファーネス中に循環させた。長方形試験試料(長さ15mm、幅8〜10mm及び厚さ0.05〜0.08mm)に対して、ギャップ距離を2mmで設定した。DMTAデータの再現性を、有用な温度範囲にわたって複数回スキャンすることにより確認した。
【0040】
コーティングに対するプルオフ付着力試験をElcometer 106付着力試験機を用いて行った。3つのアルミニウムプルスタブ(ドリー)を市販の2液型エポキシ接着剤を用いて各試験パネルに接着した。接着剤を試験前に24時間硬化した。試験機はスタブを引っ張って取るように真の軸引張り応力を課し、そしてコーティングと試験表面との間の結合強度を定量的に測定した。3つのドリーから得られる結合強度の平均値をlbf/in2で報告した。
【0041】
塩スプレイ試験[46]をASTM B117により行った。被覆スチールパネルを、標準様式でコーティングをとおして罫書き、むき出しの基材を露出させ、塩スプレイチャンバー中につり下げ、そこで、ノズル圧10〜12psiのアトマイザーによって5%NaCl溶液ミストにパネルをさらした。試験の間に、チャンバーを気密シールした。チャンバー内部の温度及び相対湿度を、264時間の試験時間にわたって35±2℃及び99±1%に維持した。被覆パネルの状態を表面変化に関して視覚検査により周期的に綿密に調査した。罫書きされていない領域はブリスタリングに関して調査し、そして罫書き部分は罫書き跡からどの程度離れるまでコーティングが皮下剥離され又は付着力を失っているかに知るために観察した。被覆パネルのディジタル画像を96時間及び264時間間隔で撮った。
【0042】
市販のBPAをベースとするエポキシドを3種の異なる化学基:脂肪酸、リン酸及びTEOSオリゴマーにより化学変性した。テトラエチルオルトシリケート(TEOS)オリゴマーは酸性条件下での水によるTEOSの加水分解及び縮合により調製された。有機/無機ハイブリッド系をFTIR分光法、1H、13C、31P及び29Si-NMRならびにマススペクトル法を用いて特性化した。耐腐食性はコーティングを塩スプレイ(フォグ)試験にさらして調べた。コーティング特性を264時間塩スプレイ暴露の前に評価した。フィルムの粘弾性特性をTEOSオリゴマー含有分の関数として調べた。
【0043】
有機/無機ハイブリッド系の調製及び描写
ビスフェノール-Aをベースとするエポキシド樹脂をリン酸及び脂肪酸により変性して、それぞれエポキシホスフェート及びエポキシエステルを得た。エポキシ誘導体の化学構造を図1に示す。
【0044】
無機ネットワーク及び有機ネットワークの間の共有結合は加水分解されたテトラエトキシシランクラスタのシラノール基と、エポキシドのCH2CH(OH)CH2Oセグメント中のペンダントヒドロキシル基との反応により形成しうる。エポキシ誘導体にグラフト化された無機構造は環式及び/又は直鎖ポリシリケートとして異なる形態で存在しうる。図2は無機変性エポキシドネットワーク構造を示す。
【0045】
エポキシド誘導体の構造特性
室温FTIR透過スペクトル(図3)はすべての面でビスフェノール−Aをベースとするエポキシホスフェート(EP)の構造を裏付ける。3200〜3700cm−1の範囲における非常に広い吸収ピークはリン酸化エポキシド構造中のペンダントヒドロキシル基から生じるO−H伸縮に帰因する。3000cm−1を超えるすべてのC−H伸縮バンドは芳香族C−H伸縮により生じる。このため、3057及び3036cm−1での2つの狭い間隔の吸収バンドはオキシラン環(エポキシド基)及びビスフェノール-Aのベンゼン環における非対称及び対称芳香族C−H伸縮振動に割り当てられる。2967、2928及び2871cm−1で起こる3つの明確なバンドは構造中の幾つかのメチル(CH3)基及びメチレン(CH2)基の非対称及び対称C−H伸縮モードによるものである。2350cm−1付近での二重吸収バンドP−OH伸縮振動に割り当てられる[47]。弱いコンビネーション及びオーバートーンバンドは1650〜2100cm−1領域に現れる(示していない、図3において軸破断を用いている)。
【0046】
1610、1580及び1506cm−1の3つの強いバンドは構造中のベンゼン環の芳香族C=C及びC−C伸縮に帰因することができる。1454及び1362cm−1の吸収バンドはそれぞれ、メチル(CH3)基中のC−H結合のアウトオブフェーズ(out of phase)(非対称)曲げ振動及びインフェーズ(in-phase)(対称)曲げ振動によるものである。1383cm−1での吸収バンドはメチレン(CH2)基のC−Hはさみ振動に帰因する。メチルC−H結合の対称曲げにより生じるバンドの強度は非対称メチル曲げ振動又はメチレンはさみ振動のものよりも大きい。メチレン捩れ振動及び縦ゆれ振動は1350〜1150cm−1領域で観測される。1260〜1200cm−1領域での強いバンドは1,2−オキシラン環又はベンゼン環における非対称C−O−C伸縮振動及びホスフェート単位のP=O伸縮である。1160cm−1でのショルダーはP−O結合の振動モードに割り当てられる[48]。
【0047】
1035cm−1でのバンドはエポキシ環及びベンゼン環における対称C−O−C伸縮振動に帰因する。971cm−1及び914cm−1で生じる2つの明確なバンドは構造中のメチル基及びメチレン基の面外C−H曲げ(捩れ)振動によるものである。他方、構造中の芳香族面外C−H曲げ振動は831cm−1及び775cm−1に現れる。結果として、BPAをベースとするエポキシドのリン酸による変性により、小さな振動を生じ、リン原子に関連する種々のバンドの強度及び/又は幅を若干高める。
【0048】
図4はビスフェノール−Aをベースとするエポキシド樹脂及び合成されたエポキシエステルのFTIRスペクトルを示す。3200〜3600cm−1の範囲におけるO−H伸縮バンドはエポキシドのスペクトルで観察される対応のバンドよりも、エポキシエステルの赤外スペクトルにおいてずっと広くかつ鋭い。強度及び幅の増加はエポキシエステル構造でヒドロキシル官能化がより高いことによる。エポキシドにおける3047及び3029cm−1での2つの吸収バンドは芳香族C−H伸縮振動に割り当てられる。しかしながら、1,2−オキシラン環がエステル化反応の際に脂肪酸と反応するように開環するという事実のために、エポキシエステルのスペクトルにおいて、3010cm−1付近で単一の吸収バンドが現れる。このことにより、エポキシエステルが環伸縮振動の強度を失うことになり得る。メチル(CH3)及びメチレン(CH2)基のC−H伸縮モードはビスフェノールAをベースとするエポキシドの赤外スペクトルにおいて2970、2921及び2867cm−1で生じる3つの明確なバンドとして現れる。一方、エポキシエステルは同一の領域に2918及び2852cm−1にて生じる2つの吸収バンドを示す。図4において、2500〜1800cm−1の波数領域で大きな空白を避け、そして1800〜500cm−1の低い波数領域を拡大するために、スペクトルのx−軸に軸破断を用いる。
【0049】
強いC=O伸縮吸収バンドは比較的に一定の位置に高い強度を1737cm−1に有し、エポキシエステルのスペクトル中で容易に認識される。芳香族C=C及びC−C伸縮に帰因する3つのバンドはエポキシエステルに関して1608、1581及び1508cm−1で観察される。これらの伸縮周波数の位置はエポキシ樹脂に関してほぼ一定のままであり、1604、1579及び1504cm−1に生じる。エポキシエステルにおける1460、1377及び1359cm−1、及び、エポキシド樹脂における1452、1382及び1361cm−1での吸収は、それぞれ、メチル基中のC−H結合の非対称振動、メチレン基のC−Hはさみ振動及びメチル基のC−H結合の対称振動により生じる。
【0050】
エポキシエステル構造中のすべてのメチレン基が同調して揺れるメチレン揺れ振動による生じる強いバンドは単一項として723cm−1で現れる。エポキシ環の対称伸縮は1250cm−1付近で生じる。C−O結合の収縮の間にC−C結合が延伸する非対称エポキシ環伸縮に帰因する別のバンドは825cm−1で現れる[49]。エポキシ環に関連する第三のバンドは750cm−1付近でエポキシド樹脂のスペクトルにおいてのみ現れる。
【0051】
TEOSオリゴマー変性エポキシ誘導体のFTIRスペクトルの低い波数領域(600〜1500cm−1)において、1000〜1110cm−1での吸収バンドの強度はSi−O−C(脂肪族)及びSi−O−Si伸縮により増加する[50]。2つの強い吸収バンドは無機変性されたリン酸化エポキシドのFTIRスペクトルにおいて1107及び1080cm−1で現れ、同様に、1099及び1081cm−1で生じる2つの狭い間隔の吸収バンドは無機変性されたエポキシエステルの赤外スペクトルにおいて観察される。さらに、Si−OH基のO−H伸縮振動は領域3700〜3200cm−1で吸収する。その領域での吸収特性は水素結合の程度に依存する。それゆえ、3500cm−1付近での吸収バンドの強度及び幅はエポキシ誘導体をTEOSオリゴマーによって変性した後に有意に増加する。Soucekら[29]により以前に報告されたとおり、TEOSオリゴマーの分光測定特性化は1H NMR、29Si NMR及びESI−MSを用いて行った。
【0052】
TEOSオリゴマー変性エポキシホスフェートの1H及び13C NMR(CDCl3)スペクトルのケミカルシフトを表4に要約する。29Si NMRは、Si−O−C(脂肪族)基に割り当てられるδ−81.6ppmに一重項、−88.6ppmに二重項を示した。共鳴差異は隣接ケイ素原子の置換に帰因することができる。δ−91.2ppm及び−96.0ppmでの2つの一重項もスペクトルに現れ、それらはエポキシホスフェートに結合した直鎖もしくは環式ポリシリケート中のSi−O−Si結合に帰因する。
【0053】
TEOSオリゴマー変性エポキシホスフェートを図5に示すMALDI−TOF分光法によりさらに分析した。観測されたイオンは存在する化学種に結合しているナトリウムにより生じる。たとえば、1141Daに対応する構造は環式Si3O3(OEt)6グラフト化エポキシホスフェートのナトリウム(23Da)カチオン化により生じる。環式Si3O3(OEt)6([M]=134n)は402Daであり、無機変性されたエポキシホスフェートはm/z=1141からm/z=739へと環式トリシリケート単位を失う。直鎖トリシリケート([M]=74+134n)による変性に対応する別の分布もスペクトルに現れ、665Daでのピークを示す。1195Daイオン及び1061Daに関連する化学種は単環式構造SiO(OEt)2(134Da)単位により互いに相関している。他方、987Daでのピークは直鎖Si(OEt)4シリケート(208Da)の付加により1195Daで観測される化学種と相関がある。
【0054】
熱硬化性エポキシ誘導体の調製
未変性エポキシ樹脂とメラミンホルムアルデヒド樹脂との間の主要な架橋反応を図6に記述し、エポキシド繰り返し単位におけるヒドロキシル基がメラミンとどのように反応しているかを示す。未変性エポキシ誘導体及び化学変性エポキシ誘導体が硬化剤によりすべて架橋された後に、一般コーティング試験ならびに動的機械熱特性及び耐腐食性を評価した。
【0055】
粘弾性特性
ハイブリッドネットワークの粘弾性特性を動的機械熱アナライザー(DMTA)を用いて調査した。図7a及び7bはそれぞれ、温度の関数としてエポキシ(E)ハイブリッドネットワークの貯蔵弾性率及び損失係数tanδを示す。図7aは半対数グラフとして参照される。貯蔵弾性率データが数桁に及ぶので、図7aにおいて、値の分布は、直線yスケールを対数yスケールで置き換えることによって、より明確に識別される。グラフのゴム弾性平坦領域を大きくするために、データポイントを全く省略することなく、両方の軸にそって軸破断を配置している。tanδ最大値の最も顕著な低下は10%TEOSを含むエポキシドE10で観測され、一方、2.5%TEOSを含むエポキシドE2.5は緩やかな低下のみを示している。貯蔵弾性率(図7a)はフィルムが50℃の温度に達するまで若干低下し、そして50〜110℃で有意に低下している。110℃を超えると、貯蔵弾性率はすべてのエポキシハイブリッドフィルムで最小値を示す。tanδピークの高さは硬化の程度が増加するとともに低下しそしてピークはブロードになる。
【0056】
エポキシホスフェート−TEOSオリゴマーハイブリッドネットワークの貯蔵弾性率及び損失係数tanδを図8a及び8bにそれぞれ示す。図8aにおいて、エポキシホスフェート(EP)ハイブリッドフィルムの貯蔵弾性率(E’)は温度が40℃に達するまで、ここでも、低下傾向を示す。リン酸化エポキシハイブリッドネットワーク関して、E’の値は温度40〜90℃で劇的に低減し、そして、90℃のごく近傍又はそれより高い温度で最小値を示す。
【0057】
図9a及び9bにおいて、エポキシエステル(EE)/TEOSハイブリッド系の貯蔵弾性率(E’)及び損失係数tanδを示す。図9aにおいて、貯蔵弾性率(E’)は温度が0℃に達するまで若干の低下傾向を示す。0℃〜60℃で、エポキシエステル(EE)/TEOSオリゴマーハイブリッドフィルムに関して、E’は劇的に低減する。エポキシエステルハイブリッドネットワークの貯蔵弾性率の増加は損失係数tanδの変化を伴う。約29℃に位置するtanδのα−転移はニートエポキシエステルネットワークのガラス転移に対応し、エポキシエステル−TEOSオリゴマーハイブリッドでは低下しかつブロードになり、そのことはほとんどの複合材系に典型的である[51]。
【0058】
図9bに示される損失最大高さの減少はTEOS濃度に直接的に比例する。硬化したフィルムのガラス転移温度も、ハイブリッドフィルム中のTEOS含有分とともに増加する。どのハイブリッド系も、より高い温度に新たな減衰ピークを示しておらず、そのことはエポキシ誘導体−TEOSハイブリッド系中にマクロ相分離が生じていないことの証拠となる。換言すると、フィルム内の無機領域の主な分離又はクラスタリングのない均一な系を促進している。
【0059】
図8a及び9aも半対数として参照される。両方のグラフにおいて、データポイントを省略せず、そしてグラフ上での明確な比較のために、フィルムの最小貯蔵弾性率の間の差を観察できるように軸破断をx軸及びy軸に入れた。フィルムの架橋密度を、ゴム弾性の理論に由来する等式により計算した[52]。エポキシ、エポキシエステル及びエポキシホスフェートハイブリッドフィルムの粘弾性特性である最小貯蔵弾性率(E’min)、架橋密度(γc)、最大tanδ、ガラス転移温度(Tg)及びtanδ転移の幅を表5に要約する。
【表5】
【0060】
エポキシド(E)系において、84℃から91℃へのガラス転移温度の有意な増加は質量基準でエポキシ樹脂の2.5%TEOSオリゴマー変性で観察される。無機含有分の増加に伴い、損失係数が低下し、一方、架橋密度が増加する。エポキシエステル(EE)シリーズに関しては、ハイブリッドフィルム中の最も高い百分率(10%)の無機含有分は最も大きい架橋密度を示し、それは1180モル/m3と計算された。ガラス転移温度の低下はエポキシホスフェート(EP)フィルムでも観測される(Tg60℃付近)。
【0061】
コーティング特性及び腐食性能
表6はMF樹脂により硬化された種々のTEOS変性エポキシハイブリッドのフィルム特性を示す。ほとんどのコーティング配合物は同一の鉛筆高度(5H)及びクロスハッチ付着力(5B)挙動を示した。付着特性に関してより正確な結果を得るために、プルオフ付着試験を行った。エポキシドのTEOS変性では、2.5wt%TEOSで50%から10wt%TEOSで>100%のプルオフ付着力の増加となった。フィルムの可とう性は逆衝撃試験により判断し、そして可とう性はTEOS装填量に依らないことを示した(未変性エポキシドE0を除く)。
【表6】
【0062】
フィルムの腐食性能を図10、11及び12に示す。図10は未処理のスチール基材上に被覆したエポキシハイブリッドプライマーの96時間及び264時間塩スプレイ暴露後の画像を示す。24時間塩スプレイ暴露されたパネルのいずれにも、コーティングのブリスタ形成又はリフティングは観測されなかった。しかしながら、48時間暴露後に、未変性エポキシ誘導体に対して腐食が観測された。無機変性エポキシド(E5、E7.5及びE10)により被覆されたパネルは264時間暴露の後でも塩スプレイ試験に合格した。
【0063】
エポキシホスフェート及びエポキシエステルハイブリッドプライマーの塩スプレイ試験結果を図11及び12にそれぞれ示す。罫書きされたパネルを264時間までの塩スプレイ暴露で評価した。図10、11及び12には96時間及び264時間の画像のみを示したが、検査は周期的に行った。Buchheitら[53]は塩スプレイ暴露の間に生じるピット形成による腐食損傷を定量化する試みにおける検査方法を用いた。その試験において、各検査間隔で、パネルを合格又は不合格等級に割り当てた。その基準に基づいて、ピット形成損傷対時間の変化をパネルに対して評価した。たとえば、EP0におけるブリスタ形成は系の中の無機含有分の増加に伴い劇的に低減し、96時間暴露後にEP10では目に見える腐食生成物の汚点又は跡を生じない(図11を参照されたい)。5wt%を超えるTEOSオリゴマー含有分で変性したエポキシ誘導体の被覆パネルは腐食性能試験に合格し、5個を超える孤立したスポット又はピットを有せず、直径が0.031in.(0.8mm)を超えるものはなかった。被覆パネルの塩スプレイ性能のさらなる改良はリン酸及び不飽和脂肪酸によりエポキシド樹脂を変性することで観察された。
【0064】
ニートのエポキシエステルで被覆したサンプルは塩スプレイに24時間暴露した後に不合格であった。一方、無機変性されたサンプルは約200時間を超える暴露に耐性であった。最も良好な塩スプレイ性能はエポキシコーティングが10wt%TEOSオリゴマーで無機変性されたときに常に観測された。リン酸化エポキシ及びエポキシエステルはブリスタ耐性を有意に改良することにより、エポキシ樹脂に対して実質的な改良を与え、また、金属基材に対して改良された付着性を提供することが判った(図6を参照されたい)。
【0065】
エポキシエステル系において、不飽和脂肪酸を選択したので、脂肪酸のグラフト化が自己酸化硬化(熱硬化)機構の能力を提供することものと評価される[15]。ガラス転移温度は可とう性の改良のために、エポキシ及びエポキシホスフェート対照物と比較して非常に低い。可とう性は、エポキシ末端基が1,2-オキシランからエステル基に転化することにより生じる。ガラス転移温度の低下は、また、エポキシホスフェート(EP)フィルムにおいても観測される(表5を参照されたい)。同一のアプローチは有効であり、1,2−オキシラン基がリン酸及び水と反応し、ホスフェートエステルを形成することができる。さらに、未反応の低分子量種は可塑剤としても作用することができ、結果的に、より低いガラス転移温度となる。
【0066】
ホスフェートエステル基は金属との反応、それゆえ、コーティングポリマーと金属との強い化学結合を生じることにより金属基材への付着性を増加させることが判った[25,57]。この金属-ホスフェート結合は金属基材に対する通常のコーティングの水素結合よりも水による置換に対してより耐性であり、コーティングの耐腐食性の改良にも寄与する(図11を参照されたい)。TEOSオリゴマーを含むことにより付着性も増加したが、TEOSオリゴマーの濃度をさらに上げても横ばいになった(表6を参照されたい)。この挙動はポリウレア/ポリシロキサンセラマー系においてもSoucekら[29]によって観察されていた。付着力の増加はスチールパネルの表面上に形成されたSi−O−H結合の数の増加に帰因しうる。このように、ホスフェートエステル基及びTEOSオリゴマーの両方により変性されたエポキシ樹脂は金属基材に対してより良好な付着力を達成することが期待される。TEOSオリゴマー変性エポキシが金属基材に対してより良好な付着力を得ることができる理由は、変性樹脂中のシラノール基(Si−OH)が金属ヒドロキシル基(M−OH)と結合して、縮合反応によりSi−O−M結合を形成することができるからである。
【0067】
理論に拘束されず、そして部分的に、塩スプレイ暴露後に撮ったハイブリッドコーティングの画像に基づいて(図10、11及び12を参照されたい)、腐食保護の機構を図13に提案する。耐腐食性コーティングにおいて、エポキシド樹脂の使用は他の合成樹脂を制している。というのは、金属基材に対する結合性及び長期間の耐腐食性が改良されているからである。しかしながら、エポキシ樹脂は親水性の性質があるので、耐湿潤性が妥協される。より良好に付着したゾルゲル層のスチール基材上での形成はコーティング基材界面上での、水及び酸素を主に含む腐食反応の化学種の輸送をブロックすることができ、そして腐食の速度を限定することができる。
【0068】
本明細書中に示された教示を見ると、本発明の多くの変更及び変形が当業者に容易に明らかであることが理解されるべきである。たとえば、本発明は主にビスフェノール−A(BPA)をベースとする液体エポキシド樹脂及びテトラエチルオルトシリケートを参照して記載してきたが、他のエポキシド樹脂及びアルコキシシランオリゴマーも同様に組み合わせて使用され、エポキシド樹脂よりも実質的に改良された変性エポキシ誘導体を提供することができる。そのため、上記は本発明の特定の実施形態の例示であるが、その実施を制限することが意図されない。すべての等価物を含めた請求の範囲が本発明の範囲を規定するものである。
【0069】
参考文献
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性末端基を有するテレケリック樹脂、及び、
アルコキシドオリゴマー、
を含む、変性エポキシドプライマー組成物。
【請求項2】
前記テレケリック樹脂は反応性末端基を有するエポキシドである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記エポキシドは少なくとも2個のフェノール官能基を有する、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記エポキシドはビスフェノール−A(BPA)エポキシドである、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記エポキシドは脂環式エポキシドである、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
前記反応性末端基は少なくとも1個のヒドロキシド基を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記反応性末端基を有するテレケリック樹脂はエポキシホスフェートである、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記反応性末端基を有するテレケリック樹脂はエポキシエステルである、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記反応性末端基を有するテレケリック樹脂はエポキシモリブデートである、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記アルコキシドオリゴマーは金属アルコキシドオリゴマーである、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記アルコキシドオリゴマーはアルコキシシランオリゴマーである、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
前記アルコキシシランオリゴマーはテトラエチルオルトシリケートオリゴマーである、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
前記アルコキシシランオリゴマーはテトラメチルオルトシリケートオリゴマーである、請求項11記載の組成物。
【請求項14】
反応性末端基を有するテレケリック樹脂を提供すること、及び、
前記反応性末端基を有するテレケリック樹脂をアルコキシドオリゴマーと接触させること
を含む、変性エポキシドプライマーの製造方法。
【請求項15】
前記反応性末端基を有するテレケリック樹脂は反応性末端基を有するエポキシドを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記エポキシドは少なくとも2個のフェノール官能基を含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記エポキシドはビスフェノール−A(BPA)エポキシドを含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記エポキシドは脂環式エポキシドを含む、請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記反応性末端基を有するテレケリック樹脂はエポキシホスフェートである、請求項14記載の方法。
【請求項20】
前記反応性末端基を有するテレケリック樹脂はエポキシエステルである、請求項14記載の方法。
【請求項21】
前記アルコキシドオリゴマーはアルコキシシランオリゴマーである、請求項14記載の方法。
【請求項1】
反応性末端基を有するテレケリック樹脂、及び、
アルコキシドオリゴマー、
を含む、変性エポキシドプライマー組成物。
【請求項2】
前記テレケリック樹脂は反応性末端基を有するエポキシドである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記エポキシドは少なくとも2個のフェノール官能基を有する、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記エポキシドはビスフェノール−A(BPA)エポキシドである、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記エポキシドは脂環式エポキシドである、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
前記反応性末端基は少なくとも1個のヒドロキシド基を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記反応性末端基を有するテレケリック樹脂はエポキシホスフェートである、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記反応性末端基を有するテレケリック樹脂はエポキシエステルである、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記反応性末端基を有するテレケリック樹脂はエポキシモリブデートである、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記アルコキシドオリゴマーは金属アルコキシドオリゴマーである、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記アルコキシドオリゴマーはアルコキシシランオリゴマーである、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
前記アルコキシシランオリゴマーはテトラエチルオルトシリケートオリゴマーである、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
前記アルコキシシランオリゴマーはテトラメチルオルトシリケートオリゴマーである、請求項11記載の組成物。
【請求項14】
反応性末端基を有するテレケリック樹脂を提供すること、及び、
前記反応性末端基を有するテレケリック樹脂をアルコキシドオリゴマーと接触させること
を含む、変性エポキシドプライマーの製造方法。
【請求項15】
前記反応性末端基を有するテレケリック樹脂は反応性末端基を有するエポキシドを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記エポキシドは少なくとも2個のフェノール官能基を含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記エポキシドはビスフェノール−A(BPA)エポキシドを含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記エポキシドは脂環式エポキシドを含む、請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記反応性末端基を有するテレケリック樹脂はエポキシホスフェートである、請求項14記載の方法。
【請求項20】
前記反応性末端基を有するテレケリック樹脂はエポキシエステルである、請求項14記載の方法。
【請求項21】
前記アルコキシドオリゴマーはアルコキシシランオリゴマーである、請求項14記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図13】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図13】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−162717(P2012−162717A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−22550(P2012−22550)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【出願人】(507342261)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド (135)
【出願人】(509144579)ユニバーシティ オブ アクロン (3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−22550(P2012−22550)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【出願人】(507342261)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド (135)
【出願人】(509144579)ユニバーシティ オブ アクロン (3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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