説明

変性共役ジエン系重合体、ゴム組成物及びタイヤ

【課題】共役ジエン系重合体中の別々の場所に、ポリマー成分に反応する基と、充填材に親和性を有する基を導入することにより、充填材反応とポリマー主鎖架橋反応を一つのポリマーで同時に発生させることができるヒステリシスロスの低減に格別な効果を有し、低発熱性、耐摩耗性に優れた変性共役ジエン系重合体、この変性共役ジエン系重合体を含有するゴム組成物及び該ゴム組成物を用いた、低発熱性、耐摩耗性、乗り心地性に優れたタイヤを提供する。
【解決手段】変性共役ジエン系重合体であって、変性基として、ポリマー成分に反応する基と、充填材に親和性を有する基を有し、該親和性を有する基は窒素原子及び珪素原子の両方を有することを特徴とする変性共役ジエン系重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役ジエン系重合体中の別々の場所に、ポリマー成分と反応する基と、充填材(フィラー)に親和性を有する基を各々少なくとも1つ有する、ヒステリシスロスの低減に効果的であり、低発熱性、耐摩耗性に優れた変性共役ジエン系重合体、この変性共役ジエン系重合体を含有するゴム組成物及び該ゴム組成物を用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの社会的な要請及び環境問題への関心の高まりに伴う世界的な二酸化炭素排出規制の動きに関連して、自動車の低燃費化に対する要求はより過酷なものとなりつつある。
このような要求に対応するため、タイヤ性能についても転がり抵抗の減少が求められてきている。タイヤの転がり抵抗を下げる手法としては、タイヤ構造の最適化による手法についても検討されてきたものの、ゴム組成物としてよりヒステリシスロスが低い、すなわち、熱に対する力学的エネルギーの損失が少ない材料を用いることが最も一般的な手法として行われている。
【0003】
ヒステリシスロスは、多くの場合、架橋結合したゴムのネットワーク内のポリマーの遊離端に加えて、充填材の凝集体の分離に帰因する。変性共役ジエン系重合体は、ヒステリシスロスを減少させ、バウンドラバーを増大させるために使用されている。変性共役ジエン系重合体の官能基が、ポリマーの遊離端の数を減らすと考えられている。また、官能基が充填材粒子との相互作用によって、充填材の凝集が抑えられ、それによって、充填材の凝集体の分離を原因とするヒステリシスロス(すなわち、ペイン(Payne)効果)が減少する。
従来より、特定の官能性アニオン重合開始剤を選択することによって、ポリマー鎖の先端に官能性を有する変性共役ジエン系重合体が得られている。また、官能性化合物でリビング・ポリマーを停止することによって、アニオン重合したポリマーの末端に官能基を付けることもできる。
【0004】
このようなヒステリシスロスが低いゴム組成物を得るために、有機リチウム化合物を用いたアニオン重合で得られるジエン系重合体の重合活性末端を充填材と相互作用を持つ官能基にて修飾する方法としては、例えば、充填材にカーボンブラックを用い、重合活性末端をスズ化合物にて修飾する方法(例えば、特許文献1参照)、同様にカーボンブラックを用い、重合活性末端にアミノ基を導入する方法(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
また、良好な低燃費性と良好なウェット性能とを同時にタイヤに与えるゴム組成物を得る方法として、補強用充填材として、これまで一般的に用いられてきたカーボンブラックに変えて含水ケイ酸などのシリカを用いる場合には、有機リチウム化合物を用いたアニオン重合で得られるジエン系重合体の重合活性末端を該シリカと相互作用をもつ官能基で修飾してなるゴム材料を用いることが試みられている。例えば、充填材としてシリカを用い、重合活性末端をアルコキシル基を有するケイ素化合物で修飾する方法(例えば、特許文献3、4、5参照)などが知られている。
【0005】
しかしながら、上記ジエン系重合体の重合活性末端をカーボンブラックやシリカ等の充填材と相互作用をもつ官能基で修飾してなる共重合体は、ヒステリシスロスの低減等に必ずしも充分に満足しうるものではないという問題があった。
【0006】
そこで、本出願人は、モノマーのアニオン重合に硫黄含有開始剤を使用することにより、硫黄含有開始剤由来の先端の基を有する変性共役ジエン系重合体である官能性ポリマー、該官能性を含有するゴム配合物及びタイヤ構成部材を提案している(例えば、特許文献6参照)。この変性共役ジエン系重合体は、硫黄(S)基を含有することで、他のポリマーとの架橋が可能となり、ポリマー同士のネットワーク増大、ポリマーの末端の動きが抑制されて、ヒステリシスロスの低減に効果的ものとなるが、更なるヒステリシスロスの低減等に効果的な変性共役ジエン系重合体が切望されている。また、この特許文献6の官能性ポリマーでは、DMIなどの充填材反応性変性剤であるジチアン開始ポリマーの停止剤となっているため、ポリマー主鎖と結合可能な官能基と充填材反応性能基を有するものであるが、フィラー反応性が弱いため、本発明の目的である強固なポリマーフィラーネットワークが形成されない点で、本発明の変性共役ジエン系重合体とは相違し、区別化されるものである。
【0007】
一方、本発明に近接する技術として、リビングアニオンエラストマーポリマー、及び特定の式によって表されるシラン−スルフィド修飾剤により鎖末端修飾されたエラストポリマー{式では、RSi−S−R´−Si〔(OR)x(R)y〕−P(ポリマー)}、該エラストポリマー、カーボンブラックやシリカ等の充填材(フィラー)及び加硫剤を含む加硫エラストポリマー組成物、該加硫エラストポリマー組成物を含むタイヤトレッド(例えば、特許文献7参照)などが知られている。
【0008】
しかしながら、このシラン−スルフィド修飾剤により鎖末端修飾されたエラストポリマーは、主鎖架橋性官能基となる硫黄(S)基を含有することで、他のポリマーとの架橋が可能となり、充填材(フィラー)反応性架橋基となるSiOR基を含有することでカーボンブラックやシリカ等の充填材との親和性が良好となり、充填材の分散性が改良されることでヒステリシスロスの低減にも効果的なものとなるものであるが、一つの修飾剤(変性剤)に2つの官能基が含まれたものであるので、充填材反応+主鎖架橋反応による大きなポリマー・充填材(フィラー)ネットワークは得られず、ヒステリシスロスの低減効果も限定的で、必ずしも満足しうるものではないという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平5−87530号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開昭62−207342号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特公平6−57767号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開平7−233216号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献5】特開平9−87426号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献6】特表2006−504866号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献7】特表2009−512762号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、充填材(フィラー)反応+主鎖架橋反応による大きなポリマー・充填材ネットワークを得ることにより、ヒステリシスロスの低減に格別な効果を有し、低発熱性、耐摩耗性に優れた変性共役ジエン系重合体、この変性共役ジエン系重合体を含有するゴム組成物及び該ゴム組成物を用いた、低発熱性、耐摩耗性、乗り心地性に優れたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記従来の課題等について、鋭意検討した結果、共役ジエン系重合体中の別々の場所に、ポリマー成分と反応する基と、充填材(フィラー)に親和性を有する基を各々少なくとも1つ導入することにより、充填材反応とポリマー主鎖架橋反応を一つのポリマーで同時に発生させることができる上記目的の変性共役ジエン系重合体、これをを含有するゴム組成物及び該ゴム組成物を用いたタイヤが得られることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0012】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(6)に存する。
(1) 変性共役ジエン系重合体であって、変性基として、ポリマー成分に反応する基と、充填材に親和性を有する基を有し、該親和性を有する基は窒素原子及び珪素原子の両方を有することを特徴とする変性共役ジエン系重合体。
(2) 下記式(I)〜(III)の何れかで表されることを特徴とする上記(1)記載の変性共役ジエン系重合体。
【化1】

〔上記式(I)中、Aは、下記式(IV)で表される基であり、Bは硫黄原子を含み、かつポリマー成分と反応する基であり、Pはポリマー鎖である。〕
【化2】

〔上記式(II)中、Aは、下記式(IV)で表される基であり、CはX−Bの構造を有し、Xは共重合可能な部位、Bは硫黄原子を含み、かつポリマー成分と反応する基であり、Pはポリマー鎖である。〕
【化3】

〔上記式(III)中、Bは硫黄原子を含み且つポリマー成分と反応する基であり、DはX−Aの構造を有し、Xは共重合可能な部位、Aは下記式(IV)で表される基であり、Pはポリマー鎖である。〕
【化4】

〔上記式(IV)中、nは、0〜2、mは1〜2、3−n−m≧0を満たす整数であり、Rは炭素数1〜20の2価の炭化水素基または炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基であり、R及びRは、それぞれ炭素数1〜20の1価の炭化水素基または炭素数6〜18の1価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子または窒素原子を含む飽和炭化水素基であり、Zは飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基、ピリジン基、アミド基、並びに加水分解可能な基を有する1級若しくは2級アミノ基から選択される少なくとも1種の官能基である。〕
(3) 前記式(I)〜(III)中の硫黄原子を含み、かつポリマー成分と反応する基Bが、それぞれ、ポリサルファイド基、チオエステル基、チオール基、ジチオカーボネート基、ジチオアセタール基、ヘミチオアセタール基、ビニルチオ基、α−チオカルボニル基、β−チオカルボニル基、S−CO−O部分、S−CO−CO部分、及びS−CH―Si部分からなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする上記(2)記載の変性共役ジエン系重合体。
(4) 平均分子量が15,000〜1,000,000であり、ガラス転移温度(Tg)が−90℃〜0℃であることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の変性共役ジエン系重合体。
(5) 上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の変性共役ジエン系重合体を少なくとも10質量部以上含むゴム成分100質量部に対して、無機充填材10〜150質量部を含有することを特徴とするゴム組成物。
(6) 上記(5)記載のゴム組成物をタイヤ構成部材の何れか一つに用いたことを特徴とするタイヤ。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、共役ジエン系重合体中の別々の場所に、ポリマー成分と反応する基と、充填材に親和性を有する窒素原子及び珪素原子の両方を有する基を各々少なくとも1つ導入することにより、充填材反応とポリマー主鎖架橋反応を一つのポリマーで同時に発生させることができるので、ヒステリシスロスの低減に格別の効果を有し、低発熱性、耐摩耗性に優れた変性共役ジエン系重合体、この変性共役ジエン系重合体を含有するゴム組成物及び該ゴム組成物を用いた、低発熱性、耐摩耗性、乗り心地性に優れたタイヤが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
(変性共役ジエン系重合体)
本発明の変性共役ジエン系重合体は、変性基として、ポリマー成分に反応する基と、充填材に親和性を有する基を有し、該親和性を有する基は窒素原子及び珪素原子の両方を有することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の変性共役ジエン系重合体としては、変性基として、ポリマー成分に反応する基と、充填材に親和性を有する基を有し、該親和性を有する基は窒素原子及び珪素原子の両方を有するものであればよく、例えば、下記式(I)〜(III)の何れかで表される変性共役ジエン系重合体が挙げられる。
【化5】

〔上記式(I)中、Aは、下記式(IV)で表される基であり、Bは硫黄原子を含み、かつポリマー成分と反応する基であり、Pはポリマー鎖である。〕
【化6】

〔上記式(II)中、Aは、下記式(IV)で表される基であり、CはX−Bの構造を有し、Xは共重合可能な部位、Bは硫黄原子を含み、かつポリマー成分と反応する基であり、Pはポリマー鎖である。〕
【化7】

〔上記式(III)中、Bは硫黄原子を含み且つポリマー成分と反応する基であり、DはX−Aの構造を有し、Xは共重合可能な部位、Aは下記式(IV)で表される基であり、Pはポリマー鎖である。〕
【化8】

〔上記式(IV)中、nは、0〜2、mは1〜2、3−n−m≧0を満たす整数であり、Rは炭素数1〜20の2価の炭化水素基または炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基であり、R及びRは、それぞれ炭素数1〜20の1価の炭化水素基または炭素数6〜18の1価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子または窒素原子を含む飽和炭化水素基であり、Zは飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基、ピリジン基、アミド基、並びに加水分解可能な基を有する1級若しくは2級アミノ基から選択される少なくとも1種の官能基である。〕
【0016】
上記式(I)の変性共役ジエン系重合体は、ポリマー鎖Pの両末端に、充填材に親和性を有する基Aとポリマー成分に反応する基Bをそれぞれ導入したものであり、また、上記式(II)はポリマー鎖Pの末端の一つに、充填材に親和性を有する基Aを導入すると共に、ポリマー鎖Pの途中にポリマー成分に反応するX−B構造を有する基Cを分岐させたものであり、上記式(III)はポリマー鎖Pの末端の一つに、ポリマー成分に反応する基Bを導入すると共に、ポリマー鎖Pの途中に、充填材に親和性を有するX−A構造を有する基Dを分岐させたものである。
【0017】
上記式(II)中のCは、X−Bの構造を有するものであり、Xは、芳香族ビニル、共役ジエンなどの共重合可能な部位であり、Bは上記(I)及び(III)と同じ、硫黄原子を含み、かつポリマー成分と反応する基である。
また、上記式(III)中のDは、X−Aの構造を有するものであり、Xは上記と同じ共重合可能な部位であり、Aは上記(I)及び(II)と同じものである。
前記式(I)〜(III)中の充填材に親和性を有する基Aは、窒素原子(N)及び珪素原子(Si)の両方を有するものであり、例えば、上記式(IV)で表されるものであり、式(IV)中、nは、0〜2、mは1〜2、3−n−m≧0を満たす整数であり、Rは炭素数1〜20の2価の炭化水素基または炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基であり、R及びRは、炭素数1〜20の1価の炭化水素基または炭素数6〜18の1価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子または窒素原子を含む飽和炭化水素基であり、Zは飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基、ピリジン基、アミド基、並びに加水分解可能な基を有する1級若しくは2級アミノ基から選択される少なくとも1種の官能基である。
上記式(IV)中のRが炭素数1〜20の2価の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキレン基を挙げることができ、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基などを挙げることができ、炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基などを挙げることができ、R及びRの炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基及び炭素数2〜20のアルケニル基を挙げることができ、これらは直鎖状,枝分かれ状,環状のいずれであってもよく、その例としては、メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,tert−ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,オクチル基,デシル基,ドデシル基,シクロペンチル基,シクロヘキシル基,ビニル基,プロペニル基,アリル基,ヘキセニル基,オクテニル基,シクロペンテニル基,シクロヘキセニル基などが挙げられる。また、炭素数6〜18の1価の芳香族炭化水素基としては、芳香環状に低級アルキル基などの置換基を有していてもよく、その例としては、フェニル基,トリル基,キシリル基,ナフチル基、ベンジル基,フェネチル基,ナフチルメチル基などが挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などを挙げることできる。
更に、Zの飽和環状3級アミン化合物残基としては、ヘキサメチレンイミンや、環の一部として(チオ)エーテル結合を含むことができ、不飽和環状3級アミン化合物残基としては、1,2,3,6−テトラヒドロピリジン,N−二置換アニリンなどのN,N−二置換芳香族アミンを包含するものが挙げられ、ケチミン残基(−N=C=)、ニトリル基(−CN)、(チオ)イソシアナート基(−NCO)、ピリジン基(CN)、アミド基(−CONH)、加水分解可能な基を有する1級若しくは2級アミノ基としては、ジトリメチルシリルアミンなどを挙げることができる。
上記式(IV)の好ましい充填材に親和性を有する基Aとしては、カーボンブラックやシリカなどの充填材(フィラー)との相互作用の強さから、nは、1〜2、mは1で、Rが炭素数1〜5の飽和炭化水素、Rが炭素数1〜7の飽和炭化水素、Rが炭素数1〜5の飽和炭化水素となるものから構成されるものが望ましい。
これらの上記式(IV)で表される充填材に親和性を有する基A、または、X−A構造のDは、後述する充填材反応性官能基を付与する各種変性剤などを重合の際に用いることにより導入することができる。
【0018】
前記式(I)〜(III)中のポリマー主鎖Pと結合可能な官能基となる硫黄原子を含み且つポリマー成分と反応する基Bとしては、例えば、ポリサルファイド基、チオエステル基、チオール基、ジチオカーボネート基、ジチオアセタール基、ヘミチオアセタール基、ビニルチオ基、α−チオカルボニル基、β−チオカルボニル基、S−CO−O部分、S−CO−CO部分、及びS−CH―Si部分からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、好ましくは、ポリサルファイド基及びチオエステル基の少なくとも一方を含むことが望ましい。
これらの硫黄原子を含み且つポリマー成分と反応する基B、または、X−B構造のCは、後述する硫黄原子を含み且つポリマー成分と反応する基を付与する各種変性剤などを重合の際に用いることにより導入することができる。
【0019】
本発明における前記式(I)〜(III)中のポリマー主鎖Pは、共役ジエンを含むモノマーのアニオン重合などの重合技術に従い得られるものである。用いるモノマーとしては、例えば、炭素数4〜12の共役ジエンと、炭素数4〜18のモノビニル芳香族モノマー、または、炭素数6〜20のトリエンなどが挙げられる。共役ジエンモノマーの例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、及び1,3−ヘキサジエンが挙げられるが、これらに限定されない。トリエンの例として、ミルセンが挙げられるがこれに限定されない。芳香族ビニルモノマーとして、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、及びビニルナフタレンが挙げられるがこれらに限定されない。
共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーを含有するエラストマーの共重合体などの共重合体を製造する場合、共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーは、95:5〜50:50、好ましくは95:5〜65:35の比率で通常使用される。
【0020】
(変性共役ジエン系重合体の製造方法)
本発明において、変性基として、ポリマー成分に反応する基と、充填材に親和性を有する基を有し、該親和性を有する基は窒素原子及び珪素原子の両方を有する変性共役ジエン系重合体は、例えば、共役ジエンを含むモノマーをアニオン重合する際に、ポリマー主鎖Pの一方の末端又は分岐に充填材に親和性を有する基A、または、X−A構造を結合することができる変性剤、または、ポリマー主鎖Pの他方の末端又は分岐に硫黄原子を含み且つポリマー成分と反応する基となるポリマー主鎖と結合可能な官能基B、並びに、X−B構造のCを結合することができる変性剤などを用いることにより製造することができる。
【0021】
上記充填材に親和性を有する基A、または、X−A構造をポリマー主鎖の末端に結合することができる変性剤としては、上述の各種充填材に親和性を有する基A、または、X−A構造をポリマー主鎖の末端又は分岐に結合できるものであれば、特に限定されず、例えば、下記式(IV)、
【化9】

〔上記式(IV)中、nは、0〜2、mは1〜2、3−n−m≧0を満たす整数であり、Rは炭素数1〜20の2価の炭化水素基または炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基であり、R及びRは、それぞれ炭素数1〜20の1価の炭化水素基または炭素数6〜18の1価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子であり、Zは飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基、ピリジン基、アミド基、並びに加水分解可能な基を有する1級若しくは2級アミノ基から選択される少なくとも1種の官能基である。〕で表されるシラン化合物及び/その部分縮合物を用いることができる。
具体的には、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(1,3−ジメチル−1−ブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、または、1級アミノ基及びケイ素原子に結合したアルコキシ基を少なくとも有する2官能性ケイ素原子を含む化合物、例えば、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン、および1−トリメチルシリル−2−エトキシ−2−メチル−1−アザ−2−シラシクロペンタンなどを挙げることができる。
また、例えば、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルメトキシクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルエトキシクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルメトキシクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルエトキシクロロシランなどが挙げられる。
これらの変性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0022】
ポリマー成分と反応する基B、または、X−Y−B構造をポリマー主鎖の末端などに結合することができる変性剤としては、硫黄原子を含み且つポリマー成分と反応する基を結合できる変性剤であれば、特に限定されないが、重合開始剤となるリチオ・アルキル・チオ・アセタール及びリチオ・アリール・チオ・アセタール、チオエーテルを含む硫黄含有リチオ化合物などが挙げられる。
具体的な硫黄含有リチオ化合物としては、2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアンなどのリチオ・アルキル・チオ・アセタール、2−リチオ−2−フェニル−1,3−ジチアン、2−リチオ−2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアンなどが挙げられる。これらの2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアン、2−リチオ−2−フェニル−1,3−ジチアンなどの硫黄含有リチオ化合物は、2−メチル−1,3−ジチアン、または2−フェニル−1,3−ジチアン等とn−ブチルリチウムなどの有機リチウム化合物から公知の製法により合成することができる。
【0023】
上記式(I)で表される両末端変性の変性共役ジエン系重合体の製造法としては、1,3−ブタジエンなどの共役ジエンモノマー及びスチレン等の芳香族ビニルモノマーをテトラヒドロフラン(THF)などの極性溶媒、又は種々の環状及び非環式のヘキサン、ヘプタン、オクタン、ペンタン、それらのアルキル化誘導体、及びそれらの混合物、並びにベンゼンなどの非極性炭化水素内で、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパンなどの直線状及び環状のオリゴマーのオキソラニルアルカン、ジピペリジルエタン、ジピペリジルメタン、ヘキサメチルホスホラミド、N−N’−ジメチルピペラジン、ジアザビシクロオクタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、トリブチルアミンなどの重合調整剤を加え、更に、硫黄原子を含み且つポリマー成分と反応する基Bを結合でき、かつ、重合開始剤となる2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアン、2−リチオ−2−フェニル−1,3−ジチアンなどの硫黄含有リチオ化合物などの変性剤を加えた後、温度30〜150℃の温水浴中で0.1〜10時間重合反応を行う。なお、上記重合調整剤、変性剤の配合量は、用いるモノマー、導入する官能基種により変動するものであるが、上記使用モノマー全量100gに対して、変性剤0.05〜20mmol程度である。
次いで、上記重合反応系に、上述のアミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(1,3−ジメチル−1−ブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、ヘキサメチルシクロトリシロキサンなどの充填材に親和性を有する窒素原子及び珪素原子の両方を有する基Aを付与する変性剤をモノマー全量100gに対して、0.05〜20mmol添加し、更に、温度30〜150℃の温水浴中で0.1〜5時間重合反応を行うにより、目的の両末端変性の変性共役ジエン系重合体が得られる。
【0024】
上記式(II)で表される変性共役ジエン系重合体の製造法としては、重合開始剤として上記(I)と同様の変性剤を用い、(I)と同様の重合調整剤を加え、温度30〜150℃の温水浴中で0.1〜10時間反応を行い、前記X−A構造を持つ変性剤を0.05〜20mmol加え、0.1〜5時間重合を行い、更に0.5〜10時間反応を行った後、大過剰のイソプロピルアルコール(IPA)で反応を停止することにより製造することができる。
また、上記式(III)で表される変性共役ジエン系重合体の製造法としては、重合開始剤としてBuLiを用い、(I)と同様の重合調整剤を加え、温度30〜150℃の温水浴中で0.5〜10時間反応を行い、前記X−B構造を持つ変性剤を0.05〜20mmol加え、0.1〜5時間重合を行い、更に0.5〜10時間反応を行った。以下変性停止反応は、上記式(I)の変性共役ジエン系重合体の製造法と同様にして製造することができる。
【0025】
本発明において、上記式(I)〜(III)で表される変性共役ジエン系重合体は、加工性、加硫ゴム物性の点から、数平均分子量(Mn)が15,000〜1,000,000であり、ガラス転移温度(Tg)が−90℃〜0℃であるものが望ましい。
この好適な範囲となる数平均分子量(Mn)、ガラス転移温度(Tg)の変性共役ジエン系重合体は、使用するモノマー種、各変性剤種、重合反応の温度、時間等を調整することにより調製することができる。
【0026】
本発明において、上記製法等で得られる上記式(I)〜(III)の何れかで表される変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系重合体中の別々の場所に、充填材に親和性を有する窒素原子及び珪素原子の両方を有する基A、または、X−A構造となるD、並びに、ポリマー成分と反応する基B、または、X−B構造のCをそれぞれ導入することにより、充填材反応とポリマー主鎖架橋反応を一つのポリマーで同時に発生させることができるものとなるので、ヒステリシスロスの低減に格別の効果を有し、低発熱性、耐摩耗性に優れた変性共役ジエン系重合体となる。
上記式(I)で表される変性共役ジエン系重合体では、配合ゴム練り時にフィラー結合性官能基となるAがフィラー(カーボンブラック、シリカなどの無機充填材)と結合し、かつ主鎖結合型官能基となる基Bが他のポリマーの主鎖に結合することにより、各々単独で使用するよりも大きなポリマー・フィラーネットワークが得られるものとなる。
【0027】
(本発明のゴム組成物)
本発明のゴム組成物は、変性共役ジエン系重合体を少なくとも10質量部以上含むゴム成分100質量部に対して、無機充填材10〜150質量部を含有することを特徴とする。
この変性共役ジエン系重合体の含有量が10質量部未満では所望の物性を有するゴム組成物が得られず、本発明の目的が発揮できないものとなる。ゴム成分(100質量%)中の該変性共役ジエン系重合体の好ましい含有量は20質量%以上であり、特に30〜100質量%が好適である。
この変性共役ジエン系重合体は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、この変性共役ジエン系重合体と併用されるゴム成分としては、天然ゴム及びジエン系合成ゴムが挙げられ、ジエン系合成ゴムとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合体及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0028】
本発明のゴム組成物に用いる無機充填材としては、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、クレー、炭酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種の充填材が挙げられ、好ましくは、カーボンブラック単独、シリカ単独、又はカーボンブラック及びシリカの併用が望ましい。
【0029】
本発明に用いるシリカは、特に制限はなく、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が含まれ、中でも破壊特性の改良効果、並びに、ウェットグリップ性及び低転がり抵抗性の両立効果が最も顕著である湿式シリカが好ましい。
この場合に、シリカは、ゴム成分100質量部に対して10〜150質量部で用いられ、補強性とそれによる諸物性の改良効率の観点より好ましくは30〜90質量部である。このシリカの含有量が10質量部未満では破壊特性等が十分でなく、また、150質量部を越えると加工性が劣ることとなる。
【0030】
また、本発明に用いるカーボンブラックは、特に制限はなく、各種グレードのカーボンブラックが用いられる。好ましくは、NSAが10m/g以上、かつ、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が50ml/100g以上のカーボンブラックである。カーボンブラックを用いることにより、諸物性の改良効果は大きくなるが、特に、耐摩耗性に優れるFEF、SRF、HAF、ISAF,SAFなどのグレードが好ましい。
【0031】
本発明のゴム組成物においては、シリカを用いる場合、所望により、シランカップリング剤を更に含有することができる。このシランカップリング剤としては、特に制限はなく、従来ゴム組成物に使用されている公知のもの、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどを用いることができる。
用いられるシランカップリング剤の含有量は、前記シリカに対して、通常、1〜20重量%の範囲で選定される。この量が1重量%未満ではカップリング剤としての効果が充分に発揮されにくく、また、20重量%を超えると、ゴム成分のゲル化を引き起こすおそれがある。カップリング剤としての効果及びゲル化防止などの点から、このシランカップリング剤の好ましい含有量は、5〜15重量%の範囲である。
【0032】
本発明のゴム組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば、加硫剤、加硫促進剤,プロセス油,老化防止剤,スコーチ防止剤,亜鉛華,ステアリン酸などを含有させることができる。上記加硫剤としては、硫黄等が挙げられ、その使用量は、ゴム成分100質量部に対し、硫黄分として0.1〜10.0質量部が好ましく、さらに好ましくは1.0〜5.0質量部である。
本発明で使用できる加硫促進剤は、特に限定されるものではないが、例えば、M(2−メルカプトベンゾチアゾール),DM(ジベンゾチアジルジスルフィド),CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系、あるいはDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアジニン系の加硫促進剤等を挙げることができ、その使用量は、ゴム成分100質量部に対し、0.1〜5.0質量部が好ましく、さらに好ましくは0.2〜3.0質量部である。
また、本発明のゴム組成物で使用できるプロセス油としては、例えば、パラフィン系,ナフテン系,アロマチック系等を挙げることができる。引張強度、耐摩耗性を重視する用途にはアロマチック系が、ヒステリシスロス、低温特性を重視する用途にはナフテン系又はパラフィン系が用いられる。その使用量は、ゴム成分100質量部に対して、0〜100質量部が好ましく、100質量部を超えると加硫ゴムの引張強度、低発熱性が悪化する傾向がある。
【0033】
本発明のゴム組成物は、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後、加硫を行い、タイヤトレッド,アンダートレッド,カーカス,サイドウォール,ビード部分等のタイヤ用途を始め、防振ゴム,ベルト,ホースその他の工業品等の用途にも用いることができるが、特にタイヤトレッド用ゴムとして好適に使用される。
【0034】
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて、上記のように各種薬品を含有させた本発明のゴム組成物が未加硫の段階でタイヤ部材として、例えば、トレッド用部材に押出し加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。このようにして得られた本発明の空気入りタイヤは、上記ヒステリシスロスの低減に格別な効果を有し、低発熱性、耐摩耗性に優れた変性共役ジエン系重合体をゴム成分に有効に含有するので、低燃費性が良好であると共に、特に破壊特性、耐摩耗性及び乗り心地性に優れており、しかも該ゴム組成物の加工性が良好であるので、生産性にも優れたものとなる。
【実施例】
【0035】
次に、製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記製造例、実施例に何ら限定されるものではない。
【0036】
〔変性共役ジエン系重合体の実施製造例、比較製造例〕
実施製造例1(フェニルジチアン:アミノプロピルメチルジエトキシシラン)
(変性剤の調製)
シリンジ中で10.69mmolの2−フェニル−1,3−ジチアンが入ったTHF溶液(5ml)とヘキサン10mlをn−ブチルリチウム(6.37ml.1.68Mのヘキサン溶液)に、−78℃で滴下した溶液を更に0℃で3時間攪拌した。得られた0.5Mの2−リチオ−2−フェニル−1,3−ジチアン(以下、単に「フェニルジチアン」という)はアニオン重合の開始剤として使用されるものであり、窒素雰囲気で冷蔵庫に貯蔵した。
(変性共役ジエン系重合体の調製)
乾燥し、窒素置換した800mlの耐圧ガラス用に、1,3−ブタジエンのシクロヘキサン溶液及びスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3−ブタジエン60g及びスチレン15gとなるように加え、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパンを0.70mmol加え、更に、2−リチオ−2−フェニル−1,3−ジチアンを0.70mmmolを加えた後、50℃の温水俗中で1.5時間重合を行った。この際の重合添加率はほぼ100%であった。
次に、重合反応系に変性剤となるアミノプロピルメチルジエトキシシランを0.63mmol添加し、更に50℃で30分間変性反応を行い、変性共役ジエン系重合体を得た。
【0037】
実施製造例2〔フェニルジチアン:N−(1,3−ジメチル−1−ブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン〕
上記実施製造例1において、重合反応系に添加する変性剤のアミノプロピルメチルジエトキシシラン0.63mmolに代え、N−(1,3−ジメチル−1−ブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン0.63mmolを用いて上記実施製造例1と同様にして変性共役ジエン系重合体を得た。
【0038】
実施製造例3(ジメチルアミノフェニルジチアン:アミノプロピルメチルジエトキシシラン)
上記実施製造例1で用いた変性剤2−リチオ−2−フェニル−1,3−ジチアン(フェニルジチアン)に代え、下記で調製した変性剤〔2−リチオ−2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアン〕(0.70mmol)を用いて、上記実施製造例1と同様にして、変性共役ジエン系重合体を得た。
(変性剤の調製)
2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアン1.25gが入った8mlのTHF溶液と1mlのEtN(トリエチルアミン)をn−ブチルリチウム3.1ml、1.68Mのヘキサン溶液に、−78℃で加えた。溶液は更に0℃で4時間攪拌した。得られた0.43Mの2−リチオ−2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアンはアニオン重合の開始剤として使用され、窒素雰囲気で冷蔵庫に貯蔵した。
【0039】
実施製造例4〔ジメチルアミノフェニルジチアン:N−(1,3−ジメチル−1−ブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン〕
上記実施製造例2において、変性剤2−リチオ−2−フェニル−1,3−ジチアン(フェニルジチアン)に代え、上記で調製した変性剤〔2−リチオ−2−(4−ジメチルアミノ)フェニル−1,3−ジチアン〕(0.70mmol)を用いて、上記実施製造例2と同様にして、変性共役ジエン系重合体を得た。
【0040】
比較製造例1(フェニルジチアン:イソプロピルアルコール)
上記実施製造例1において、重合反応系に添加する変性剤のアミノプロピルメチルジエトキシシラン0.63mmolに代え、大過剰のイソプロピルアルコール(IPA)を用いて上記実施製造例1と同様にして変性共役ジエン系重合体を得た。
【0041】
比較製造例2(ジメチルアミノフェニルジチアン:イソプロピルアルコール)
上記実施製造例3において、重合反応系に添加する変性剤のアミノプロピルメチルジエトキシシラン0.63mmolに代え、大過剰のイソプロピルアルコール(IPA)を用いて上記実施製造例1と同様にして変性共役ジエン系重合体を得た。
【0042】
比較製造例3(フェニルジチアン:テトラエトキシシラン)
上記実施製造例1において、重合反応系に添加する変性剤のアミノプロピルメチルジエトキシシラン0.63mmolに代え、テトラエトキシシラン(TEOS)0.63mmolを用いて上記実施製造例1と同様にして変性共役ジエン系重合体を得た。
【0043】
比較製造例4(ジメチルアミノフェニルジチアン:テトラエトキシシラン)
上記実施製造例3において、重合反応系に添加する変性剤のアミノプロピルメチルジエトキシシラン0.63mmolに代え、テトラエトキシシラン(TEOS)0.63mmolを用いて上記実施製造例1と同様にして変性共役ジエン系重合体を得た。
【0044】
比較製造例5(フェニルジチアン:塩化トリブチルスズ)
上記実施製造例1において、重合反応系に添加する変性剤のアミノプロピルメチルジエトキシシラン0.63mmolに代え、塩化トリブチルスズ(BuSnCl)0.63mmolを用いて上記実施製造例1と同様にして変性共役ジエン系重合体を得た。
【0045】
比較製造例6(ジメチルアミノフェニルジチアン:塩化トリブチルスズ)
上記実施製造例3において、重合反応系に添加する変性剤のアミノプロピルメチルジエトキシシラン0.63mmolに代え、塩化トリブチルスズ(BuSnCl)0.63mmolを用いて上記実施製造例1と同様にして変性共役ジエン系重合体を得た。
【0046】
比較製造例7(n−ブチルリチウム:アミノプロピルメチルジエトキシシラン)
乾燥し、窒素置換した800mlの耐圧ガラス用に、1,3−ブタジエンのシクロヘキサン溶液及びスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3−ブタジエン60g及びスチレン15gとなるように加え、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパンを0.70mmol加え、更に、n−ブチルリチウム(BuLi)を0.70mmmolを加えた後、50℃の温水俗中で1.5時間重合を行った。この際の重合添加率はほぼ100%であった。
次に、重合反応系に変性剤となるアミノプロピルメチルジエトキシシランを0.63mmol添加し、更に50℃で30分間変性反応を行い、変性共役ジエン系重合体を得た。
【0047】
比較製造例8〔n−ブチルリチウム:N−(1,3−ジメチル−1−ブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン〕
上記比較製造例7において、重合反応系に添加する変性剤のアミノプロピルメチルジチオキシシラン0.63mmolに代え、N−(1,3−ジメチル−1−ブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン0.63mmolを用いて上記比較製造例7と同様にして変性共役ジエン系重合体を得た。
【0048】
比較製造例9(n−ブチルリチウム:テトラエトキシシラン)
上記比較製造例7において、重合反応系に添加する変性剤のアミノプロピルメチルジエトキシシラン0.63mmolに代え、テトラエトキシシラン(TEOS)0.63mmolを用いて上記比較製造例7と同様にして共役ジエン系重合体を得た。
【0049】
比較製造例10(n−ブチルリチウム:塩化トリブチルスズ)
上記比較製造例7において、重合反応系に添加する変性剤のアミノプロピルメチルジエトキシシラン0.63mmolに代え、塩化トリブチルスズ(BuSnCl)0.63mmolを用いて上記比較製造例7と同様にして共役ジエン系重合体を得た。
【0050】
比較製造例11(n−ブチルリチウム:イソプロピルアルコール)
上記比較製造例7において、重合反応系に添加する変性剤のアミノプロピルメチルジエトキシシラン0.63mmolに代え、イソプロピルアルコール(IPA)0.63mmolを用いて上記比較製造例7と同様にして共役ジエン系重合体を得た。
【0051】
上記で得られた実施製造例1〜4及び比較製造例1〜11の変性共役ジエン系重合体等を用いて、下記方法により、Mw/k、St/Viを測定、算出した。
これらの変性共役ジエン系重合体等の評価結果を下記表1に示す。
【0052】
(Mw/kの算出法)
重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィ〔GPC;東ソー社製HLC−8020、カラム;東ソー社製GMH−XL(2本直列)〕により行い、示差屈折率(R1)を用いて、単分散ポリスチレンを標準としてポリスチレン換算で行った。
(St/Viの算出法)
重合体のブタジエン部分のミクロ構造は赤外法(モレロ法)によって求めた。重合体中のスチレン単位含有量は1H−NMRスペクトルの積分比より算出した。
【0053】
〔実施例1〜6及び比較例1〜15、ゴム組成物の調製〕
下記表1及び2に示すシリカ配合処方のゴム組成物、下記表3及び4に示すカーボンブラック配合処方のゴム組成物を下記各方法により各ゴム組成物を調製した。得られた各ゴム組成物について、下記方法により、転がり抵抗、耐摩耗性の評価を行った。
【0054】
(実施例1〜4及び比較例1〜8、シリカ配合処方のゴム組成物の調製方法、表1及び2)
下記表1に示す各変性共役ジエン系共重合体等を用いて下記表2に示すシリカ配合処方、具体的には、第1ステージで、加硫促進剤、加硫促進助剤、架橋剤以外の各成分を配合してバンバリーミキサーで混練し、第2ステージで加硫促進剤、加硫促進助剤、架橋剤の各成分を配合してバンバリーミキサーで混練してゴム組成物を調製した。
(実施例5〜6及び比較例9〜15、カーボンブラック配合処方のゴム組成物の調製方法、表1及び2)
下記表1に示す各変性共役ジエン系共重合体等を用いて下記表2に示すカーボンブラック配合処方、具体的には、第1ステージで、加硫促進剤、加硫促進助剤、架橋剤以外の各成分を配合してバンバリーミキサーで混練し、第2ステージで加硫促進剤、加硫促進助剤、架橋剤の各成分を配合してバンバリーミキサーで混練してゴム組成物を調製した。
【0055】
〔低ロス性(低発熱性)の評価方法〕
レオメトリックス社製の粘弾性測定装置を用いて、温度50℃、周波数10Hz、歪3%でtanδを測定し、表1では比較例8、表3では比較例15をそれぞれ100として指数表示した。指数が大きいほど低ロス性(低発熱性)が良好である。
(耐摩耗性の評価方法)
ランボーン型摩擦試験機を用い、スリップ率が25%の摩耗量で表し、また測定温度は室温とした。表1では比較例8、表3では比較例15をそれぞれ100として指数表示した。指数が大きいほど耐摩耗性が良好である。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
上記表1〜4の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜6の変性共役ジエン系共重合体を用いたシリカ配合処方、カーボンブラック配合処方の各ゴム組成物は、本発明範囲外となる比較例1〜15の変性共役ジエン系共重合体等を用いたシリカ配合処方、カーボンブラック配合処方の各ゴム組成物に較べ、低発熱性(転がり抵抗)、耐摩耗性に優れていることが判明した。
本発明範囲となる実施製造例1〜4で得た変性共役ジエン系共重合体は、共役ジエン系重合体中の別々の場所に、充填材反応性官能基となる充填材に親和性を有する窒素原子及び珪素原子の両方を有する基と、ポリマー主鎖と結合可能な官能基とが導入されているので、充填材反応とポリマー主鎖架橋反応を一つのポリマーで同時に発生させることができ、ヒステリシスロスの低減に格別の効果を有し、低発熱性、耐摩耗性に優れた変性共役ジエン系重合体である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
ヒステリシスロスの低減に格別な効果を有し、低発熱性、耐摩耗性に優れた変性共役ジエン系重合体が得られるので、タイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部分等のタイヤ構成部材用途を始め、防振ゴム、ベルト、ホースその他のゴム工業製品のゴム成分として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性共役ジエン系重合体であって、変性基として、ポリマー成分に反応する基と、充填材に親和性を有する基を有し、該親和性を有する基は窒素原子及び珪素原子の両方を有することを特徴とする変性基役ジエン系重合体。
【請求項2】
下記式(I)〜(III)の何れかで表されることを特徴とする請求項1記載の変性共役ジエン系重合体。
【化1】

〔上記式(I)中、Aは、下記式(IV)で表される基であり、Bは硫黄原子を含み、かつポリマー成分と反応する基であり、Pはポリマー鎖である。〕
【化2】

〔上記式(II)中、Aは、下記式(IV)で表される基であり、CはX−Bの構造を有し、Xは共重合可能な部位、Bは硫黄原子を含み、かつポリマー成分と反応する基であり、Pはポリマー鎖である。〕
【化3】

〔上記式(III)中、Bは硫黄原子を含み且つポリマー成分と反応する基であり、DはX−Yの構造を有し、Xは共重合可能な部位、Aは下記式(IV)で表される基であり、Pはポリマー鎖である。〕
【化4】

〔上記式(IV)中、nは、0〜2、mは1〜2、3−n−m≧0を満たす整数であり、Rは炭素数1〜20の2価の炭化水素基または炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基であり、R及びRは、それぞれ炭素数1〜20の1価の炭化水素基または炭素数6〜18の1価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子または窒素原子を含む飽和炭化水素基であり、Zは飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基、ピリジン基、アミド基、並びに加水分解可能な基を有する1級若しくは2級アミノ基から選択される少なくとも1種の官能基である。〕
【請求項3】
前記式(I)〜(III)中の硫黄原子を含み、かつポリマー成分と反応する基Bが、それぞれ、ポリサルファイド基、チオエステル基、チオール基、ジチオカーボネート基、ジチオアセタール基、ヘミチオアセタール基、ビニルチオ基、α−チオカルボニル基、β−チオカルボニル基、S−CO−O部分、S−CO−CO部分、及びS−CH―Si部分からなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項2記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項4】
平均分子量が15,000〜1,000,000であり、ガラス転移温度(Tg)が−90℃〜0℃であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一つに記載の変性共役ジエン系重合体を少なくとも10質量部以上含むゴム成分100質量部に対して、無機充填材10〜150質量部を含有することを特徴とするゴム組成物。
【請求項6】
請求項5記載のゴム組成物をタイヤ構成部材の何れか一つに用いたことを特徴とするタイヤ。

【公開番号】特開2012−214662(P2012−214662A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82053(P2011−82053)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】