説明

変成器試験装置

【課題】電子式変成器を正確かつ迅速に測定することができる変成器試験装置を提供すること。
【解決手段】電子式変成器として構成された被試験変成器の2次出力を標準変成器の2次出力と比較し、前記被試験変成器の2次出力が前記標準変成器の2次出力に対する比誤差εと位相角θを測定する変成器試験装置であって、前記標準変成器の2次出力を所定範囲の値を持った標準電圧に変換する変換回路CT,OP1と、前記被試験変成器の出力電圧と前記標準電圧との偏差電圧を取り出す偏差検出回路VT,OP2と、前記標準電圧と前記偏差電圧とが与えられてディジタル変換し、前記標準電圧に対する前記偏差電圧の位相角を算出するディジタル演算回路AUとをそなえたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変成器試験装置に係わり、とくに変流器、変圧器の誤差を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の変成器は、変圧器であれば、鉄心に1次巻線および2次巻線が巻装されており、1次巻線に1次電圧を印加すると電磁誘導により2次巻線に2次電圧が誘起される、というものである。変流器も同様に、1次巻線に電流を流すと、電磁誘導によって2次巻線に2次電流が流れる。
【0003】
そこで、従来の変成器試験装置は、標準および被試験の両変圧器の2次電圧同士、または変流器の2次電流同士を比較し、その比誤差および位相角を測定する構成となっている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特公昭57−57667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対して、近年、電子式変圧器(EVT)または電子式変流器(ECT)と呼ばれる被測定量を信号化して処理する変成器が登場し、これらの変成器は従来の変成器試験装置では測定することができないことがある。
【0005】
最も端的な例を示せば、電子式変流器の場合、被試験量が電圧であるから標準量も電圧に変換する必要があり、電流出力のままでは比較測定ができない。
【0006】
また、従来は、標準変成器の2次出力信号と被試験変成器の2次出力信号とをアナログ的な帰還回路を用いて平衡を取っているが、この方法では、平衡を取るのに時間を要する。しかも、帰還回路を用いており、帰還量を増すと発振し易くなり動作が不安定である。
【0007】
とくに、位相角の誤差測定の原理式が近似式であり、高精度の測定には不向きである。
【0008】
本発明は上述の点を考慮してなされたもので、電子式変成器の位相角誤差を正確かつ迅速に測定することができる変成器試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的達成のため、本発明では、
電子式変成器として構成された被試験変成器の2次出力を標準変成器の2次出力と比較し、前記被試験変成器の2次出力が前記標準変成器の2次出力に対する位相角誤差を測定する変成器試験装置であって、
前記標準変成器の2次出力を所定範囲の値を持った標準電圧に変換する変換回路と、
前記被試験変成器の出力電圧と前記標準電圧との偏差電圧を取り出す偏差検出回路と、
前記標準電圧と前記偏差電圧とが与えられてディジタル変換し、前記標準電圧に対する前記偏差電圧の比誤差と位相角を算出するディジタル演算回路と
をそなえたことを特徴とする変成器試験装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述のように、標準電圧を形成するとともに被試験電圧の標準電圧に対する偏差電圧を検出して両者を用いて演算することにより比誤差と位相角を算出するようにしたため、電子式変成器として構成された被試験変成器の2次出力における位相角誤差を正確かつ迅速に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施形態1】
【0012】
図1は、被試験変成器がECTである、本発明の一実施例の構成を示している。この場合、被試験変流器ECTxから2次出力電流に対応した被試験電圧Vxが与えられる。また、巻数比n11:n12の標準変流器CTから取り出され、この標準変流器CTの2次電圧が演算増幅器OP1に与えられて得られた出力である標準電圧vが、偏差検出用の変圧器VTの1次巻線の一端、およびディジタル演算部AUの1次巻線に設けられた2つの入力端子の一方に与えられる。
【0013】
一方、被試験電圧Vxは、偏差検出用の変圧器VTの2つの入力端子の他方に与えられる。これにより、偏差検出用の変圧器VTの2次側出力端子には、演算増幅器OP2が接続され、偏差電圧Δvが取り出されてディジタル演算部AUに与えられる。
【0014】
ここで、上記標準電圧vおよび偏差電圧Δvは、下式(a1),(a2)の通り表わすことができる。
【数1】

【0015】
ディジタル演算部AUは、2つの入力つまり標準電圧としてのvと偏差電圧としてのΔvとから、詳細は図3を用いて後述するように、比誤差εおよび位相角θを算出する。
【実施形態2】
【0016】
図2は、被試験変成器がEVTである本発明の他の実施例の構成を示している。この場合、被試験電圧Vxは実施例1と同様であるが、標準電圧vは、巻数比がn11対n12である誘導分圧器IVDから与えられる。
【0017】
ここで、上記標準電圧vおよび偏差電圧Δvは、下式(b1),(b2)の通り表わすことができる。
【数2】

【ディジタル演算部】
【0018】
図3は、実施例1,2に示したディジタル演算部AUにより具体的な回路構成を示すブロック線図である。この演算部AUは、標準電圧v、偏差電圧Δvをディジタル変換するA/D変換器ADC1,ADC2の出力電圧v(t),Δv(t)を得て、3つの乗算回路MP1ないしMP3および移相メモリーMにより下記信号A,B,Cを形成し、更にこれら信号A,B,Cを中央処理装置CPUに与えて下式(1),(2)により比誤差εおよび位相角θを算出させる。
【数3】

ここで、
【数4】

である。
【0019】
これらの数式3および数式4に示すように、比誤差εおよび位相角θの算出は、ディジタル方式での信号A,BおよびCに基く演算によりなされており、アナログ回路における問題、すなわち帰還回路を用いた構成に起因する発振等の問題を生じない。したがって、常に安定的に測定を行うことができる。
【0020】
しかも、算出式は、従来の位相角θの算出に用いていた近似方式によるものではないから位相角θの測定精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を変流器に適用した第1の実施形態の構成を示す説明図。
【図2】本発明を変圧器に適用した第2の実施形態の構成を示す説明図。
【図3】第1および第2の実施形態に用いるディジタル演算部の詳細構成を示すブロック線図。
【符号の説明】
【0022】
CT 変流器、VT 変圧器、OP 演算増幅器、AU ディジタル演算部、
IVD 誘導分圧器、ADC A/D変換器、M メモリー、
MP 乗算回路、CPU 中央演算処理装置。
Vs,v 標準電圧、Vx 被試験電圧、Δv 偏差電圧。
ε 比誤差、θ 位相角。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子式変成器として構成された被試験変成器の2次出力を標準変成器の2次出力と比較し、前記被試験変成器の2次出力が前記標準変成器の2次出力に対する位相角誤差を測定する変成器試験装置であって、
前記標準変成器の2次出力を所定範囲の値を持った標準電圧に変換する変換回路と、
前記被試験変成器の出力電圧と前記標準電圧との偏差電圧を取り出す偏差検出回路と、
前記標準電圧と前記偏差電圧とが与えられてディジタル変換し、前記標準電圧に対する前記偏差電圧の比誤差と位相角を算出するディジタル演算回路と
をそなえたことを特徴とする変成器試験装置。
【請求項2】
請求項1記載の変成器試験装置において、
前記変換回路は、変流器と演算増幅器とにより構成されたことを特徴とする変成器試験装置。
【請求項3】
請求項1記載の変成器試験装置において、
前記変換回路は、変圧器として構成されたことを特徴とする変成器試験装置。
【請求項4】
請求項1記載の変成器試験装置において、
前記偏差検出回路は、1次巻線に前記標準電圧および前記被試験変成器の出力電圧が与えられ、2次巻線に前記標準電圧と前記被試験変成器の出力電圧との偏差電圧を取り出すようにしたことを特徴とする変成器試験装置。
【請求項5】
請求項1記載の変成器試験装置において、
前記ディジタル演算回路は、下記式(1)および(2)に示す演算を行う回路およびメモリーMを有することを特徴とする変成器試験装置。
【数1】

ただし、
【数2】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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