変換手段体、オプトエレクトロニクス半導体チップ及びオプトエレクトロニクス半導体チップの製造方法
本発明は、オプトエレクトロニクス半導体チップの製造方法に関する。この製造方法の少なくとも一つの実施の形態においては、方法が、少なくとも一つの活性層を備えている半導体積層体(3)を準備するステップと、変換手段粒子(55)が埋め込まれているマトリクス材料(50)を有しているワンピースの変換手段体(5)を準備するステップであって、マトリクス材料は不完全に架橋されており、及び/又は、硬化されており、且つ、変換手段体は室温においてショアA0を上回り且つショアA35以下の硬度、及び/又は、10Pa・s以上150Pa・s以下の粘度を有するステップと、半導体積層体の上に変換手段体を取り付け、半導体積層体と変換手段体とを相互に直接的に接触させるステップと、変換手段体を硬化させるステップであって、硬化後に変換手段体の硬度は少なくともショアA30且つ最大でショアD80であるステップとを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変換手段体並びにその種の変換手段体を備えたオプトエレクトロニクス半導体チップに関する。更には、オプトエレクトロニクス半導体チップの製造方法が提供される。
【0002】
本発明の解決すべき課題は、半導体積層体における高い固着性を有する変換手段体を提供することである。本発明の解決すべき別の課題は、その種の変換手段体を備えたオプトエレクトロニクス半導体チップを提供することである。本発明の解決すべき更に別の課題は、その種のオプトエレクトロニクス半導体チップの製造方法を提供することである。
【0003】
変換手段体の少なくとも一つの実施の形態によれば、この変換手段体は、オプトエレクトロニクス半導体チップに被着されるために設けられている。半導体チップとしてフォトダイオード、レーザダイオード、又は、有利には発光ダイオードが考えられる。特に、変換手段体は、半導体チップの寸法と同等の幾何学的な寸法を有している。例えば、半導体チップ及び/又は変換手段体の横方向の平均寸法は0.3mm以上10.0mm以下、特に0.5mm以上3.0mm以下である。
【0004】
変換手段体の少なくとも一つの実施の形態によれば、この変換手段体はマトリクス材料と、このマトリクス材料内に埋め込まれている変換手段粒子とを有している。一種類の変換手段粒子又は複数の異なる種類の変換手段粒子を使用することができる。
【0005】
変換手段体の少なくとも一つの実施の形態によれば、マトリクス材料は不完全に硬化されている、及び/又は、不完全に架橋されている。換言すれば、マトリクス材料の硬度及び/又はヤング率を、別の硬化プロセス又は架橋プロセスによって高めることができる。
【0006】
変換手段体の少なくとも一つの実施の形態によれば、この変換手段体は室温において、ショアA0を上回る硬度且つショアA35以下の硬度、又は、ショアA2以上ショアA15以下の硬度、及び/又は、10.0Pa・s以上150Pa・s以下の粘度、又は、15.0Pa・s以上70Pa・s以下の粘度を有している。室温とは特に約293Kの温度を意味している。即ち、不完全に硬化及び/又は架橋されたマトリクス材料を有している変換手段体は比較的柔らかい。
【0007】
オプトエレクトロニクス半導体チップのために設けられている変換手段体の少なくとも一つの実施の形態においては、この変換手段体はマトリクス材料と、このマトリクス材料内に埋め込まれている変換手段粒子とを有している。マトリクス材料は不完全に硬化されている、及び/又は、不完全に架橋されている。また、変換手段体は室温においてショアA10以上ショアA35以下の硬度、及び/又は、10Pa・s以上70Pa・s以下の粘度を示す。
【0008】
変換手段体は不完全に硬化及び/又は架橋された状態で、形状結合(形状による束縛;formschluessig)により、半導体積層体に被着可能である。変換手段体の後続の硬化によって、変換手段体と半導体積層体との間の特に固い機械的な結合を達成することができる。これによって、半導体チップの寿命を延長することができる。
【0009】
変換手段体の少なくとも一つの実施の形態によれば、マトリクス材料はシリコーンを含有しているか、又は、その種の材料から構成されている。同様に、マトリクス材料はエポキシド又はシリコーン−エポキシドハイブリッド材料を含有することができるか、又は、その種の材料から構成されている。
【0010】
変換手段体の少なくとも一つの実施の形態によれば、この変換手段体はチキソトロピー剤を含有していない。特に、シリコーン用の長鎖基本材料の使用によって、及び/又は、マトリクス材料用の高粘度出発材料の使用によって、硬化していないマトリクス材料における変換手段粒子の分離及び/又は沈降を阻止できることが分かった。これによって、特に粒子として、とりわけナノ粒子として存在するチキソトロピー剤を省略することができる。
【0011】
変換手段体の少なくとも一つの実施の形態によれば、変換手段粒子の重量割合は20%以上75%以下、有利には55%以上70%以下である。換言すれば、変換手段体の重量割合の大部分は変換手段粒子によるものである。
【0012】
変換手段体の少なくとも一つの実施の形態によれば、この変換手段体はワンピースで形成されている。即ち、変換手段体は一体的に形成されている。即ち、マトリクス材料は、変換手段粒子が埋め込まれている、繋がった中断の無い集合体を形成する。特に、この場合、変換手段体は複数の変換手段粒子を含有している部分領域を有していない。それらの変換粒子手段は、例えば、相境界によって相互に隔てられている、及び/又は、平均材料組成及び/又は物理的な特性が相互に異なっている。
【0013】
更には、例えば上述の実施形態の内の一つ又は複数の実施形態による変換手段体を有しているオプトエレクトロニクス半導体チップが提供される。従って、変換手段体の特徴は本発明によるオプトエレクトロニクス半導体チップに対しても開示されており、またその逆についても当てはまる。
【0014】
オプトエレクトロニクス半導体チップの少なくとも一つの実施の形態においては、このオプトエレクトロニクス半導体チップは、少なくとも一つの活性層を備えている半導体積層体を有している。更に半導体チップは、変換手段粒子が埋め込まれているマトリクス材料を有しているワンピースの変換手段体を含んでいる。変換手段体は、半導体積層体と直接的に接触しており、また更には、結合手段を介することなく半導体積層体上に取り付けられている。変換手段体の硬度は、少なくともショアA30且つ最大でショアD80、有利には少なくともショアA60且つ最大でショアD80、特に少なくともショアD30且つ最大でショアD75である。
【0015】
結合材料を介さないとは、半導体積層体と変換手段体との間に接着剤、接着フィルム又ははんだのような結合手段が存在しないことを意味している。半導体積層体及び変換手段体は少なくとも部分的に相互に直接的に接触しているということは、マトリクス材料が少なくとも部分的に半導体積層体の半導体材料と物理的に接触していることを意味している。
【0016】
コンタクト構造が直接的に固定的で永続的に半導体材料と結合されている、及び/又は、半導体材料に一体的に結合されている場合、例えば半導体積層体の半導体材料上に直接的に取り付けられている電気的なコンタクト構造を半導体積層体に属するものと見なすことができる。即ち、半導体積層体と直接的に接触しているとは、変換手段体が、例えば金属又は透明導電性酸化物によって形成されている電気的なコンタクト構造上に直接的に取り付けられていることを意味している。
【0017】
オプトエレクトロニクス半導体チップの少なくとも一つの実施の形態によれば、半導体積層体の放射通過面及び側面がそれぞれ少なくとも90%変換手段体によって覆われている。被覆度合いは特に、半導体積層体のそれぞれの側面に対して垂直な方向において決定することができる。
【0018】
オプトエレクトロニクス半導体チップの少なくとも一つの実施の形態によれば、変換手段体が半導体積層体の少なくとも一つの境界面に形状結合により接触している。このことは、特に微視的なスケールにおいて、変換手段体及び境界面が相互に密着していることを意味している。特に、半導体積層体の粗面部を境界面における変換手段体によって模造することができる。これによって、特に微視的なスケールで、半導体積層体と変換手段体との間に噛合部を生じさせることができ、従って、変換手段体と半導体積層体との間の特に高い固着を達成することができる。同様に、半導体積層体と変換手段体との間のコンタクト面が拡大するので、付着力を介する固着性も増加する。変換手段体における半導体基体の境界面側とは反対側の面を平滑又は平坦に構成することができるので、例えばこの面においては粗面部は形成されていない。
【0019】
少なくとも一つの実施の形態によれば、半導体チップの側面、即ち、特に半導体チップの成長方向に並行な横方向の境界面は、最大で15%又は最大で5%まで変換手段体によって、側面に垂直な方向において覆われている。特に、側面は変換手段体によって覆われていない。
【0020】
更には、オプトエレクトロニクス半導体チップの製造方法が提供される。半導体チップは、例えば、上述の実施形態の内の一つ又は複数に従い構成されている。従って、変換手段体並びにオプトエレクトロニクス半導体チップの特徴は本発明による方法に対しても開示されており、またその逆についても当てはまる。
【0021】
本方法の少なくとも一つの実施の形態においては、本方法が以下のステップを備えている:
−少なくとも一つの活性層を備えている半導体積層体を準備するステップ、
−変換手段粒子が埋め込まれているマトリクス材料を有しているワンピースの変換手段体を準備するステップ、但し、マトリクス材料は不完全に架橋されており、及び/又は、硬化されており、変換手段体は室温においてショアA0を上回り且つショアA35以下の硬度及び/又は10Pa・s以上150Pa・s以下の粘度を有する、
−半導体積層体の上に変換手段体を取り付け、半導体積層体と変換手段体とを相互に直接的に接触させるステップ、
−変換手段体を硬化させるステップ、但し、硬化後に変換手段体の硬度は少なくともショアA30且つ最大でショアD80である、
−オプトエレクトロニクス半導体チップを完成させるステップ。
【0022】
本方法の少なくとも一つの実施の形態によれば、変換手段体が支持体フィルム上に取り付けられており、且つ、カバーフィルムによって覆われている。換言すれば、変換手段体は支持体フィルムとカバーフィルムとの間に設けられている。少なくともカバーフィルムを変換手段体から損傷無く除去することができ、特に、変換手段体のマトリクス材料が完全に硬化されていない限りにおいて損傷無く除去することができる。
【0023】
本方法の少なくとも一つの実施の形態によれば、支持体フィルムもカバーフィルムも、マトリクス材料が完全には硬化していない限りは、それら二つのフィルムを損傷させること無く、変換手段体から除去することができる。
【0024】
本方法の少なくとも一つの実施の形態によれば、支持体フィルム及び/又はカバーフィルムが紫外線スペクトル領域及び/又は青色スペクトル領域において少なくとも部分的に放射を透過させる。これによって、例えば支持体フィルムを介して、マトリクス材料を光化学的に架橋及び/又は硬化させることができる。
【0025】
本方法の少なくとも一つの実施の形態によれば、変換手段体が特に最大で25%又は最大で5%の公差でもって半導体チップの横方向の拡張部及び/又は成形部を有するように変換手段体が準備される。即ち、変換手段体を、半導体チップ上に取り付ける前に既に、半導体チップの放射通過面と同様に、又は、半導体チップの放射通過面とほぼ同様に、形成及び/又は切断することができる。即ち、変換手段体は特に放射通過面と合同で例えば支持体フィルム上に形成されており、また半導体チップ上に取り付けられている。
【0026】
以下、本発明による構成素子並びに本発明による方法を実施例に基づき図面を参照しながら詳細に説明する。個々の図面において、同一の構成要素には同一の参照符号並びに参照番号を付している。しかしながら、縮尺通りの関係性が図示されているのではなく、むしろより良い理解のために個々の構成要素が過度に拡大図示されている場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明によるオプトエレクトロニクス半導体チップの概略的な部分断面図を示す。
【図2】本発明によるオプトエレクトロニクス半導体チップの概略的な部分断面図を示す。
【図3】本発明によるオプトエレクトロニクス半導体チップの概略的な部分断面図を示す。
【図4】本発明によるオプトエレクトロニクス半導体チップの概略的な部分断面図を示す。
【図5】本発明のオプトエレクトロニクス半導体チップにおける本発明の変換手段体の固着性の時間依存性を概略的に示す。
【図6】本発明によるオプトエレクトロニクス半導体チップの本発明による製造方法の概略図を示す。
【図7】本発明によるオプトエレクトロニクス半導体チップの本発明による製造方法の概略図を示す。
【図8】従来の半導体構成素子の概略的な断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1には、オプトエレクトロニクス半導体チップ1の実施例が示されている。半導体チップ1は半導体積層体3を有しており、この半導体積層体3は少なくとも一つの活性層を含んでいる。例えば、半導体積層体3は、動作時に特に紫外線放射及び/又は青色光放射を放出する発光ダイオードを表す。半導体積層体3の放射通過面32には粗面部が形成されている。粗面部を介して、放射通過面32における半導体積層体3からの光出力が高められる。側面34は半導体積層体3の横方向の境界面を表す。
【0029】
更に半導体チップ1は変換手段体5を有している。変換手段体5は変換手段粒子55を含んでおり、それらの変換粒子手段55はマトリクス材料50内に埋め込まれている。変換手段粒子55は静的に及び/又は均一にマトリクス材料50内に分散している。変換手段粒子55を介して、動作時に半導体積層体3によって生成された放射が部分的に、又は完全に、別の波長を有する放射に変換される。変換手段体5は有利には、半導体積層体3から放出される放射及び動作時に生じる熱負荷に対して光化学的に安定している。
【0030】
変換粒子手段55の平均直径は例えば1nm以上100nm以下である。これに代替的又は付加的に、変換粒子手段55又は別の変換手段粒子の直径が1μm以上20μm以下であることも同様に考えられる。後続の図面においては、マトリクス材料50及び変換手段粒子55はそれぞれ図示されていない。
【0031】
ワンピースの変換手段体5は、半導体積層体3の放射通過面32における粗面部に形状結合により密着している。これによって放射通過面32の粗面部とマトリクス材料50との間には微視的なスケールにおいて噛合部が生じ、その結果、半導体積層体3と変換手段体5との間の非常に安定した固着を実現することができる。
【0032】
変換手段体5は横方向において半導体積層体3の側面34と面一に終端している。変換手段体5及び/又は半導体積層体3の横方向の寸法は、有利には300μm以上3mm以下、特に500μm以上2mm以下である。変換手段体の厚さは有利には20μm以上125μm以下、特に30μm以上70μm以下である。半導体積層体3の厚さは有利には最大で200μm、特に最大で12μmである。
【0033】
図2による実施例においては、変換手段体5が横方向において半導体積層体3から突出している。この実施例では、半導体積層体3が支持体2上に取り付けられている。半導体積層体3は、支持体2と、変換手段体5と、半導体積層体3との電気的な接触接続のための、図2には図示していない電気的なコンタクト構造とによって完全に包囲されている。半導体積層体3の側面34に中空部7を形成することができる。
【0034】
変換手段体5の支持体2側とは反対側の境界面は、放射通過面32の上方の領域において、レンズ状の成形部を有している。換言すれば、支持体2を基準にした変換手段体5の高さは横方向における拡張部全体にわたり一定ではない。
【0035】
図3による実施例においては、電気的なコンタクト構造6aから6dが示されている。ボンディングワイヤとして形成されているコンタクト構造6cは、半導体積層体3の主延在方向に直交する方向において、ワンピースの変換手段体5を完全に貫通している。
【0036】
ここでは、変換手段体5がそれぞれ放射通過面32及び側面34の少なくとも90%を覆っている。電気的なコンタクト構造6bは例えば、半導体積層体3の半導体材料の上に蒸着されている。
【0037】
図4による実施例においては、コンタクト構造6bが、半導体積層体3上に直接的に取り付けられているワンピースの変換手段体5を完全に貫通している。コンタクト構造6bは例えば蒸着及び/又はフォトリソグラフィプロセスを介して形成されている。コンタクト構造6bも変換手段体5も電気的な絶縁層11によって完全に覆われている。絶縁層5の材料は有利には、変換手段体5のマトリクス材料とは異なる。
【0038】
変換手段体5の硬度はショアD45以上ショアD80以下である。この高い硬度によって、半導体積層体3を変換手段体5によって機械的に保護することができる。更には、高い硬度は特に効率的な噛合部、従って、放射通過面32の構造化部又は粗面部とマトリクス材料50との間の高い固着性を実現する。
【0039】
図5には、半導体積層体3における変換手段体、例えば図1から図4のいずれかによる変換手段体の時間tに依存する剪断力Fが示されている。1000時間の全体の期間にわたり、温度は185℃にある。例えば図1から図4のいずれかによる半導体積層体3からの変換手段体5の層剥離が行なわれる剪断力はそれぞれ少なくとも50Nである。
【0040】
図6には、半導体チップ1に関する製造方法が示されている。図6Aによれば、例えばエチレン−テトラフルオロエチレンフィルムである支持体フィルム8の上に、特にシルクスクリーン法によって、変換手段体5が被着される。続いて、4分間にわたる約150℃の温度での温度作用Tによって、マトリクス材料及び変換手段粒子を有する変換手段体5が硬化される。マトリクス材料は例えば、Shin-Etsu社のLPS−AF500Yである。硬化によって変換手段体はショアA10以上ショアA35以下の硬度を有するので、変換手段体を実装機械(英語Pick and Place Machine)10によって半導体積層体上に取り付けることができる(図6Bを参照されたい)。
【0041】
支持体フィルム8上に形成された変換手段体5を、図6には図示していない任意の別のステップにおいて平滑化して、変換手段体5の非常に均等な厚さを生じさせることができる、及び/又は、変換手段体5を横方向の寸法で切断することができる。この場合には図6Aに示されている実施例とは異なり、支持体フィルム8を横方向において半導体基体5と面一に終端させることも可能である。
【0042】
続く図6Cにおいては、温度作用Tを介してマトリクス材料が完全に硬化される、及び/又は、架橋されることが示されている。硬化時間は有利には少なくとも10分である。例えば、硬化は150℃の温度で1時間にわたり行なわれる。選択的に、変換手段体5の熱硬化を行なっている時間の全体又は一部にわたり、圧力作用pを介して、変換手段体5を半導体積層体3に押し付けることができる、及び/又は、圧着することができる。
【0043】
図7による方法においては、支持体フィルム8とカバーフィルム9との間に変換手段体5が設けられている(図7Aを参照されたい)。変換手段体5の硬化は、例えば、温度作用Tを介して、及び/又は、支持体フィルム8を通過する紫外線放射又は青色光放射を介して行なわれる。硬化後に、変換手段体5は低い硬度しか有していない、及び/又は、10Pa・s以上70Pa・s以下の比較的低い粘度しか有していない。変換手段体5は例えば圧延によって成形され、また任意に、後続の個別化及び/又は切断が行なわれる。特に変換手段体5がレンズ状に形成される場合には、スタンピング又は圧縮成型も可能である。
【0044】
図7Bによれば、硬化後にカバーフィルム9が変換手段体5から除去される。変換手段体5は支持体フィルム8上に残存している。
【0045】
図7Cには、支持体フィルム8を介して変換手段体5が半導体積層体3に被着されることが示されている。ワンピースの変換手段体5の温度作用Tを介する硬化又は光化学的な硬化は、有利に、それと同時に圧力作用pも介して行なわれる。支持体フィルム8を硬化の際に依然として変換手段体5の上に残存させることができるか、又は、図7Cに示されている実施例とは異なり、完全な硬化及び/又は架橋の前に、例えば、半導体積層体3における変換手段体5の位置決め前又は位置決め直後に、支持体フィルム8を既に変換手段体5から除去することができる。
【0046】
支持体フィルム8が硬化の前に既に除去されていなかった場合には、支持体フィルム8は完全な硬化後に変換手段体5から取り外される(図7Dを参照されたい)。
【0047】
図8には、同様に変換手段体5を有している、従来の半導体構成素子が示されている。図8Aによれば、特にシリコーンを含有している変換手段体5が結合手段4を介して半導体積層体3に被着されている。結合手段4は例えば低粘度のシリコーン接着剤である。変換手段体5とは異なり、結合手段4は、動作時に半導体積層体3が放射を生成するスペクトル領域においては透過性であるか透明である。
【0048】
結合手段4が取り付けの際に低い粘度しか有していないことによって、変換手段体5を取り付けた際に、横方向においては、結合手段4が半導体積層体3の側面34、また場合によっては支持体2も部分的に湿潤させる可能性がある。その種の湿潤は、支持体2乃至半導体積層体3の特別な設計、並びに、支持体2の特別な洗浄ステップによって回避することができる。もっともその種の措置によって製造コストは高まる。例えば図1から図4に従い、変換手段体5が結合手段を介さずに取り付けられることによって、結合手段4による例えば支持体2の汚染の危険は存在せず、また、支持体2及び/又は半導体積層体3の煩雑な設計を省略することができる。
【0049】
図8Bによれば、変換手段体5がシルクスクリーン法によって半導体積層体3上に直接的に被着されている。その種の方法は高い精度を要求し、また比較的コストが掛かる。変換手段体5を半導体積層体3上に直接的に被着させるために、出発材料、また特に完成した変換手段体5は、比較的低い硬度、特にショアA80又はショアA60を下回る硬度しか有していない。
【0050】
半導体積層体3上に直接的にシルクスクリーン法を実施する際の硬度に関する材料制限の他に、変換手段体5の厚さも図1から図4による変換手段体5に比べて不均一に構成されるので、これによって、波長変換された放射の色度座標の局所的な変動が生じる可能性がある。結合手段4を使用する場合と同様に、半導体積層体3上に変換手段体5を直接的に印刷する場合には、変換手段体5の材料によって側面34又は支持体2の汚染が生じる危険が存在する。
【0051】
上記において説明した本発明は、実施例に基づいた上記の説明によって限定されるものではない。むしろ本発明はあらゆる新規の特徴並びにそれらの特徴のあらゆる組み合わせを含むものであり、これには殊に特許請求の範囲に記載した特徴の組み合わせ各々が含まれ、このことはそのような組み合わせ自体が特許請求の範囲あるいは実施例に明示的には記載されていないにしても当てはまる。
【0052】
本願は、ドイツ連邦共和国特許出願第10 2009 040 148.2号の優先権を主張するものであり、その開示内容は参照により本願に含まれるものとする。
【技術分野】
【0001】
本発明は、変換手段体並びにその種の変換手段体を備えたオプトエレクトロニクス半導体チップに関する。更には、オプトエレクトロニクス半導体チップの製造方法が提供される。
【0002】
本発明の解決すべき課題は、半導体積層体における高い固着性を有する変換手段体を提供することである。本発明の解決すべき別の課題は、その種の変換手段体を備えたオプトエレクトロニクス半導体チップを提供することである。本発明の解決すべき更に別の課題は、その種のオプトエレクトロニクス半導体チップの製造方法を提供することである。
【0003】
変換手段体の少なくとも一つの実施の形態によれば、この変換手段体は、オプトエレクトロニクス半導体チップに被着されるために設けられている。半導体チップとしてフォトダイオード、レーザダイオード、又は、有利には発光ダイオードが考えられる。特に、変換手段体は、半導体チップの寸法と同等の幾何学的な寸法を有している。例えば、半導体チップ及び/又は変換手段体の横方向の平均寸法は0.3mm以上10.0mm以下、特に0.5mm以上3.0mm以下である。
【0004】
変換手段体の少なくとも一つの実施の形態によれば、この変換手段体はマトリクス材料と、このマトリクス材料内に埋め込まれている変換手段粒子とを有している。一種類の変換手段粒子又は複数の異なる種類の変換手段粒子を使用することができる。
【0005】
変換手段体の少なくとも一つの実施の形態によれば、マトリクス材料は不完全に硬化されている、及び/又は、不完全に架橋されている。換言すれば、マトリクス材料の硬度及び/又はヤング率を、別の硬化プロセス又は架橋プロセスによって高めることができる。
【0006】
変換手段体の少なくとも一つの実施の形態によれば、この変換手段体は室温において、ショアA0を上回る硬度且つショアA35以下の硬度、又は、ショアA2以上ショアA15以下の硬度、及び/又は、10.0Pa・s以上150Pa・s以下の粘度、又は、15.0Pa・s以上70Pa・s以下の粘度を有している。室温とは特に約293Kの温度を意味している。即ち、不完全に硬化及び/又は架橋されたマトリクス材料を有している変換手段体は比較的柔らかい。
【0007】
オプトエレクトロニクス半導体チップのために設けられている変換手段体の少なくとも一つの実施の形態においては、この変換手段体はマトリクス材料と、このマトリクス材料内に埋め込まれている変換手段粒子とを有している。マトリクス材料は不完全に硬化されている、及び/又は、不完全に架橋されている。また、変換手段体は室温においてショアA10以上ショアA35以下の硬度、及び/又は、10Pa・s以上70Pa・s以下の粘度を示す。
【0008】
変換手段体は不完全に硬化及び/又は架橋された状態で、形状結合(形状による束縛;formschluessig)により、半導体積層体に被着可能である。変換手段体の後続の硬化によって、変換手段体と半導体積層体との間の特に固い機械的な結合を達成することができる。これによって、半導体チップの寿命を延長することができる。
【0009】
変換手段体の少なくとも一つの実施の形態によれば、マトリクス材料はシリコーンを含有しているか、又は、その種の材料から構成されている。同様に、マトリクス材料はエポキシド又はシリコーン−エポキシドハイブリッド材料を含有することができるか、又は、その種の材料から構成されている。
【0010】
変換手段体の少なくとも一つの実施の形態によれば、この変換手段体はチキソトロピー剤を含有していない。特に、シリコーン用の長鎖基本材料の使用によって、及び/又は、マトリクス材料用の高粘度出発材料の使用によって、硬化していないマトリクス材料における変換手段粒子の分離及び/又は沈降を阻止できることが分かった。これによって、特に粒子として、とりわけナノ粒子として存在するチキソトロピー剤を省略することができる。
【0011】
変換手段体の少なくとも一つの実施の形態によれば、変換手段粒子の重量割合は20%以上75%以下、有利には55%以上70%以下である。換言すれば、変換手段体の重量割合の大部分は変換手段粒子によるものである。
【0012】
変換手段体の少なくとも一つの実施の形態によれば、この変換手段体はワンピースで形成されている。即ち、変換手段体は一体的に形成されている。即ち、マトリクス材料は、変換手段粒子が埋め込まれている、繋がった中断の無い集合体を形成する。特に、この場合、変換手段体は複数の変換手段粒子を含有している部分領域を有していない。それらの変換粒子手段は、例えば、相境界によって相互に隔てられている、及び/又は、平均材料組成及び/又は物理的な特性が相互に異なっている。
【0013】
更には、例えば上述の実施形態の内の一つ又は複数の実施形態による変換手段体を有しているオプトエレクトロニクス半導体チップが提供される。従って、変換手段体の特徴は本発明によるオプトエレクトロニクス半導体チップに対しても開示されており、またその逆についても当てはまる。
【0014】
オプトエレクトロニクス半導体チップの少なくとも一つの実施の形態においては、このオプトエレクトロニクス半導体チップは、少なくとも一つの活性層を備えている半導体積層体を有している。更に半導体チップは、変換手段粒子が埋め込まれているマトリクス材料を有しているワンピースの変換手段体を含んでいる。変換手段体は、半導体積層体と直接的に接触しており、また更には、結合手段を介することなく半導体積層体上に取り付けられている。変換手段体の硬度は、少なくともショアA30且つ最大でショアD80、有利には少なくともショアA60且つ最大でショアD80、特に少なくともショアD30且つ最大でショアD75である。
【0015】
結合材料を介さないとは、半導体積層体と変換手段体との間に接着剤、接着フィルム又ははんだのような結合手段が存在しないことを意味している。半導体積層体及び変換手段体は少なくとも部分的に相互に直接的に接触しているということは、マトリクス材料が少なくとも部分的に半導体積層体の半導体材料と物理的に接触していることを意味している。
【0016】
コンタクト構造が直接的に固定的で永続的に半導体材料と結合されている、及び/又は、半導体材料に一体的に結合されている場合、例えば半導体積層体の半導体材料上に直接的に取り付けられている電気的なコンタクト構造を半導体積層体に属するものと見なすことができる。即ち、半導体積層体と直接的に接触しているとは、変換手段体が、例えば金属又は透明導電性酸化物によって形成されている電気的なコンタクト構造上に直接的に取り付けられていることを意味している。
【0017】
オプトエレクトロニクス半導体チップの少なくとも一つの実施の形態によれば、半導体積層体の放射通過面及び側面がそれぞれ少なくとも90%変換手段体によって覆われている。被覆度合いは特に、半導体積層体のそれぞれの側面に対して垂直な方向において決定することができる。
【0018】
オプトエレクトロニクス半導体チップの少なくとも一つの実施の形態によれば、変換手段体が半導体積層体の少なくとも一つの境界面に形状結合により接触している。このことは、特に微視的なスケールにおいて、変換手段体及び境界面が相互に密着していることを意味している。特に、半導体積層体の粗面部を境界面における変換手段体によって模造することができる。これによって、特に微視的なスケールで、半導体積層体と変換手段体との間に噛合部を生じさせることができ、従って、変換手段体と半導体積層体との間の特に高い固着を達成することができる。同様に、半導体積層体と変換手段体との間のコンタクト面が拡大するので、付着力を介する固着性も増加する。変換手段体における半導体基体の境界面側とは反対側の面を平滑又は平坦に構成することができるので、例えばこの面においては粗面部は形成されていない。
【0019】
少なくとも一つの実施の形態によれば、半導体チップの側面、即ち、特に半導体チップの成長方向に並行な横方向の境界面は、最大で15%又は最大で5%まで変換手段体によって、側面に垂直な方向において覆われている。特に、側面は変換手段体によって覆われていない。
【0020】
更には、オプトエレクトロニクス半導体チップの製造方法が提供される。半導体チップは、例えば、上述の実施形態の内の一つ又は複数に従い構成されている。従って、変換手段体並びにオプトエレクトロニクス半導体チップの特徴は本発明による方法に対しても開示されており、またその逆についても当てはまる。
【0021】
本方法の少なくとも一つの実施の形態においては、本方法が以下のステップを備えている:
−少なくとも一つの活性層を備えている半導体積層体を準備するステップ、
−変換手段粒子が埋め込まれているマトリクス材料を有しているワンピースの変換手段体を準備するステップ、但し、マトリクス材料は不完全に架橋されており、及び/又は、硬化されており、変換手段体は室温においてショアA0を上回り且つショアA35以下の硬度及び/又は10Pa・s以上150Pa・s以下の粘度を有する、
−半導体積層体の上に変換手段体を取り付け、半導体積層体と変換手段体とを相互に直接的に接触させるステップ、
−変換手段体を硬化させるステップ、但し、硬化後に変換手段体の硬度は少なくともショアA30且つ最大でショアD80である、
−オプトエレクトロニクス半導体チップを完成させるステップ。
【0022】
本方法の少なくとも一つの実施の形態によれば、変換手段体が支持体フィルム上に取り付けられており、且つ、カバーフィルムによって覆われている。換言すれば、変換手段体は支持体フィルムとカバーフィルムとの間に設けられている。少なくともカバーフィルムを変換手段体から損傷無く除去することができ、特に、変換手段体のマトリクス材料が完全に硬化されていない限りにおいて損傷無く除去することができる。
【0023】
本方法の少なくとも一つの実施の形態によれば、支持体フィルムもカバーフィルムも、マトリクス材料が完全には硬化していない限りは、それら二つのフィルムを損傷させること無く、変換手段体から除去することができる。
【0024】
本方法の少なくとも一つの実施の形態によれば、支持体フィルム及び/又はカバーフィルムが紫外線スペクトル領域及び/又は青色スペクトル領域において少なくとも部分的に放射を透過させる。これによって、例えば支持体フィルムを介して、マトリクス材料を光化学的に架橋及び/又は硬化させることができる。
【0025】
本方法の少なくとも一つの実施の形態によれば、変換手段体が特に最大で25%又は最大で5%の公差でもって半導体チップの横方向の拡張部及び/又は成形部を有するように変換手段体が準備される。即ち、変換手段体を、半導体チップ上に取り付ける前に既に、半導体チップの放射通過面と同様に、又は、半導体チップの放射通過面とほぼ同様に、形成及び/又は切断することができる。即ち、変換手段体は特に放射通過面と合同で例えば支持体フィルム上に形成されており、また半導体チップ上に取り付けられている。
【0026】
以下、本発明による構成素子並びに本発明による方法を実施例に基づき図面を参照しながら詳細に説明する。個々の図面において、同一の構成要素には同一の参照符号並びに参照番号を付している。しかしながら、縮尺通りの関係性が図示されているのではなく、むしろより良い理解のために個々の構成要素が過度に拡大図示されている場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明によるオプトエレクトロニクス半導体チップの概略的な部分断面図を示す。
【図2】本発明によるオプトエレクトロニクス半導体チップの概略的な部分断面図を示す。
【図3】本発明によるオプトエレクトロニクス半導体チップの概略的な部分断面図を示す。
【図4】本発明によるオプトエレクトロニクス半導体チップの概略的な部分断面図を示す。
【図5】本発明のオプトエレクトロニクス半導体チップにおける本発明の変換手段体の固着性の時間依存性を概略的に示す。
【図6】本発明によるオプトエレクトロニクス半導体チップの本発明による製造方法の概略図を示す。
【図7】本発明によるオプトエレクトロニクス半導体チップの本発明による製造方法の概略図を示す。
【図8】従来の半導体構成素子の概略的な断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1には、オプトエレクトロニクス半導体チップ1の実施例が示されている。半導体チップ1は半導体積層体3を有しており、この半導体積層体3は少なくとも一つの活性層を含んでいる。例えば、半導体積層体3は、動作時に特に紫外線放射及び/又は青色光放射を放出する発光ダイオードを表す。半導体積層体3の放射通過面32には粗面部が形成されている。粗面部を介して、放射通過面32における半導体積層体3からの光出力が高められる。側面34は半導体積層体3の横方向の境界面を表す。
【0029】
更に半導体チップ1は変換手段体5を有している。変換手段体5は変換手段粒子55を含んでおり、それらの変換粒子手段55はマトリクス材料50内に埋め込まれている。変換手段粒子55は静的に及び/又は均一にマトリクス材料50内に分散している。変換手段粒子55を介して、動作時に半導体積層体3によって生成された放射が部分的に、又は完全に、別の波長を有する放射に変換される。変換手段体5は有利には、半導体積層体3から放出される放射及び動作時に生じる熱負荷に対して光化学的に安定している。
【0030】
変換粒子手段55の平均直径は例えば1nm以上100nm以下である。これに代替的又は付加的に、変換粒子手段55又は別の変換手段粒子の直径が1μm以上20μm以下であることも同様に考えられる。後続の図面においては、マトリクス材料50及び変換手段粒子55はそれぞれ図示されていない。
【0031】
ワンピースの変換手段体5は、半導体積層体3の放射通過面32における粗面部に形状結合により密着している。これによって放射通過面32の粗面部とマトリクス材料50との間には微視的なスケールにおいて噛合部が生じ、その結果、半導体積層体3と変換手段体5との間の非常に安定した固着を実現することができる。
【0032】
変換手段体5は横方向において半導体積層体3の側面34と面一に終端している。変換手段体5及び/又は半導体積層体3の横方向の寸法は、有利には300μm以上3mm以下、特に500μm以上2mm以下である。変換手段体の厚さは有利には20μm以上125μm以下、特に30μm以上70μm以下である。半導体積層体3の厚さは有利には最大で200μm、特に最大で12μmである。
【0033】
図2による実施例においては、変換手段体5が横方向において半導体積層体3から突出している。この実施例では、半導体積層体3が支持体2上に取り付けられている。半導体積層体3は、支持体2と、変換手段体5と、半導体積層体3との電気的な接触接続のための、図2には図示していない電気的なコンタクト構造とによって完全に包囲されている。半導体積層体3の側面34に中空部7を形成することができる。
【0034】
変換手段体5の支持体2側とは反対側の境界面は、放射通過面32の上方の領域において、レンズ状の成形部を有している。換言すれば、支持体2を基準にした変換手段体5の高さは横方向における拡張部全体にわたり一定ではない。
【0035】
図3による実施例においては、電気的なコンタクト構造6aから6dが示されている。ボンディングワイヤとして形成されているコンタクト構造6cは、半導体積層体3の主延在方向に直交する方向において、ワンピースの変換手段体5を完全に貫通している。
【0036】
ここでは、変換手段体5がそれぞれ放射通過面32及び側面34の少なくとも90%を覆っている。電気的なコンタクト構造6bは例えば、半導体積層体3の半導体材料の上に蒸着されている。
【0037】
図4による実施例においては、コンタクト構造6bが、半導体積層体3上に直接的に取り付けられているワンピースの変換手段体5を完全に貫通している。コンタクト構造6bは例えば蒸着及び/又はフォトリソグラフィプロセスを介して形成されている。コンタクト構造6bも変換手段体5も電気的な絶縁層11によって完全に覆われている。絶縁層5の材料は有利には、変換手段体5のマトリクス材料とは異なる。
【0038】
変換手段体5の硬度はショアD45以上ショアD80以下である。この高い硬度によって、半導体積層体3を変換手段体5によって機械的に保護することができる。更には、高い硬度は特に効率的な噛合部、従って、放射通過面32の構造化部又は粗面部とマトリクス材料50との間の高い固着性を実現する。
【0039】
図5には、半導体積層体3における変換手段体、例えば図1から図4のいずれかによる変換手段体の時間tに依存する剪断力Fが示されている。1000時間の全体の期間にわたり、温度は185℃にある。例えば図1から図4のいずれかによる半導体積層体3からの変換手段体5の層剥離が行なわれる剪断力はそれぞれ少なくとも50Nである。
【0040】
図6には、半導体チップ1に関する製造方法が示されている。図6Aによれば、例えばエチレン−テトラフルオロエチレンフィルムである支持体フィルム8の上に、特にシルクスクリーン法によって、変換手段体5が被着される。続いて、4分間にわたる約150℃の温度での温度作用Tによって、マトリクス材料及び変換手段粒子を有する変換手段体5が硬化される。マトリクス材料は例えば、Shin-Etsu社のLPS−AF500Yである。硬化によって変換手段体はショアA10以上ショアA35以下の硬度を有するので、変換手段体を実装機械(英語Pick and Place Machine)10によって半導体積層体上に取り付けることができる(図6Bを参照されたい)。
【0041】
支持体フィルム8上に形成された変換手段体5を、図6には図示していない任意の別のステップにおいて平滑化して、変換手段体5の非常に均等な厚さを生じさせることができる、及び/又は、変換手段体5を横方向の寸法で切断することができる。この場合には図6Aに示されている実施例とは異なり、支持体フィルム8を横方向において半導体基体5と面一に終端させることも可能である。
【0042】
続く図6Cにおいては、温度作用Tを介してマトリクス材料が完全に硬化される、及び/又は、架橋されることが示されている。硬化時間は有利には少なくとも10分である。例えば、硬化は150℃の温度で1時間にわたり行なわれる。選択的に、変換手段体5の熱硬化を行なっている時間の全体又は一部にわたり、圧力作用pを介して、変換手段体5を半導体積層体3に押し付けることができる、及び/又は、圧着することができる。
【0043】
図7による方法においては、支持体フィルム8とカバーフィルム9との間に変換手段体5が設けられている(図7Aを参照されたい)。変換手段体5の硬化は、例えば、温度作用Tを介して、及び/又は、支持体フィルム8を通過する紫外線放射又は青色光放射を介して行なわれる。硬化後に、変換手段体5は低い硬度しか有していない、及び/又は、10Pa・s以上70Pa・s以下の比較的低い粘度しか有していない。変換手段体5は例えば圧延によって成形され、また任意に、後続の個別化及び/又は切断が行なわれる。特に変換手段体5がレンズ状に形成される場合には、スタンピング又は圧縮成型も可能である。
【0044】
図7Bによれば、硬化後にカバーフィルム9が変換手段体5から除去される。変換手段体5は支持体フィルム8上に残存している。
【0045】
図7Cには、支持体フィルム8を介して変換手段体5が半導体積層体3に被着されることが示されている。ワンピースの変換手段体5の温度作用Tを介する硬化又は光化学的な硬化は、有利に、それと同時に圧力作用pも介して行なわれる。支持体フィルム8を硬化の際に依然として変換手段体5の上に残存させることができるか、又は、図7Cに示されている実施例とは異なり、完全な硬化及び/又は架橋の前に、例えば、半導体積層体3における変換手段体5の位置決め前又は位置決め直後に、支持体フィルム8を既に変換手段体5から除去することができる。
【0046】
支持体フィルム8が硬化の前に既に除去されていなかった場合には、支持体フィルム8は完全な硬化後に変換手段体5から取り外される(図7Dを参照されたい)。
【0047】
図8には、同様に変換手段体5を有している、従来の半導体構成素子が示されている。図8Aによれば、特にシリコーンを含有している変換手段体5が結合手段4を介して半導体積層体3に被着されている。結合手段4は例えば低粘度のシリコーン接着剤である。変換手段体5とは異なり、結合手段4は、動作時に半導体積層体3が放射を生成するスペクトル領域においては透過性であるか透明である。
【0048】
結合手段4が取り付けの際に低い粘度しか有していないことによって、変換手段体5を取り付けた際に、横方向においては、結合手段4が半導体積層体3の側面34、また場合によっては支持体2も部分的に湿潤させる可能性がある。その種の湿潤は、支持体2乃至半導体積層体3の特別な設計、並びに、支持体2の特別な洗浄ステップによって回避することができる。もっともその種の措置によって製造コストは高まる。例えば図1から図4に従い、変換手段体5が結合手段を介さずに取り付けられることによって、結合手段4による例えば支持体2の汚染の危険は存在せず、また、支持体2及び/又は半導体積層体3の煩雑な設計を省略することができる。
【0049】
図8Bによれば、変換手段体5がシルクスクリーン法によって半導体積層体3上に直接的に被着されている。その種の方法は高い精度を要求し、また比較的コストが掛かる。変換手段体5を半導体積層体3上に直接的に被着させるために、出発材料、また特に完成した変換手段体5は、比較的低い硬度、特にショアA80又はショアA60を下回る硬度しか有していない。
【0050】
半導体積層体3上に直接的にシルクスクリーン法を実施する際の硬度に関する材料制限の他に、変換手段体5の厚さも図1から図4による変換手段体5に比べて不均一に構成されるので、これによって、波長変換された放射の色度座標の局所的な変動が生じる可能性がある。結合手段4を使用する場合と同様に、半導体積層体3上に変換手段体5を直接的に印刷する場合には、変換手段体5の材料によって側面34又は支持体2の汚染が生じる危険が存在する。
【0051】
上記において説明した本発明は、実施例に基づいた上記の説明によって限定されるものではない。むしろ本発明はあらゆる新規の特徴並びにそれらの特徴のあらゆる組み合わせを含むものであり、これには殊に特許請求の範囲に記載した特徴の組み合わせ各々が含まれ、このことはそのような組み合わせ自体が特許請求の範囲あるいは実施例に明示的には記載されていないにしても当てはまる。
【0052】
本願は、ドイツ連邦共和国特許出願第10 2009 040 148.2号の優先権を主張するものであり、その開示内容は参照により本願に含まれるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オプトエレクトロニクス半導体チップ(1)のための変換手段体(5)において、
マトリクス材料(50)と、
前記マトリクス材料(50)内に埋め込まれている変換手段粒子(55)とを有しており、
前記マトリクス材料(50)は不完全に硬化及び/又は架橋されており、且つ、
前記変換手段体(5)は室温においてショアA0を上回り且つショアA35以下の硬度、及び/又は、10Pa・s以上150Pa・s以下の粘度を有していることを特徴とする、変換手段体(5)。
【請求項2】
前記マトリクス材料(50)はシリコーンを含有するか、又は、シリコーンである、請求項1に記載の変換手段体(5)。
【請求項3】
前記マトリクス材料(50)は熱的に完全に架橋可能及び/又は硬化可能であり、硬化時間は少なくとも10分である、請求項1又は2に記載の変換手段体(5)。
【請求項4】
前記変換手段体(5)はチキソトロピー剤を含んでいない、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の変換手段体(5)。
【請求項5】
前記変換手段粒子(55)の重量割合は20%以上75%以下、特に、55%以上70%以下である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の変換手段体(5)。
【請求項6】
オプトエレクトロニクス半導体チップ(1)において、
少なくとも一つの活性層を備えている半導体積層体(3)と、
変換手段粒子(55)が埋め込まれているマトリクス材料(50)を含むワンピースの変換手段体(5)とを有しており、
前記変換手段体(5)は前記半導体積層体(3)と直接的に接触しており、結合手段を介することなく前記半導体積層体(3)上に被着されており、
前記変換手段体(5)の硬度は少なくともショアA30且つ最大でショアD80であることを特徴とする、オプトエレクトロニクス半導体チップ(1)。
【請求項7】
前記変換手段体(5)の横方向の寸法は300μm以上且つ3mm以下であり、
前記変換手段(5)の厚さは20μm以上125μm以下である、請求項6に記載のオプトエレクトロニクス半導体チップ(1)。
【請求項8】
前記半導体積層体(3)の放射通過面(32)及び側面はそれぞれ少なくとも少なくとも90%前記変換手段体(5)によって覆われている、請求項6又は7に記載のオプトエレクトロニクス半導体チップ(1)。
【請求項9】
前記変換手段体(5)は前記半導体積層体(3)の少なくとも一つの境界面(32,34)に形状結合により接触している、請求項6乃至8のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス半導体チップ(1)。
【請求項10】
一つ又は複数の電気的なコンタクト構造(6)が前記変換手段体(5)を貫通している、請求項6乃至9のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス半導体チップ(1)。
【請求項11】
オプトエレクトロニクス半導体チップ(1)の製造方法において、
少なくとも一つの活性層を備えている半導体積層体(3)を準備するステップと、
変換手段粒子(55)が埋め込まれているマトリクス材料(50)を有しているワンピースの変換手段体(5)を準備するステップであって、前記マトリクス材料(50)は不完全に架橋されており、及び/又は、硬化されており、且つ、前記変換手段体(5)は室温においてショアA0を上回り且つショアA35以下の硬度、及び/又は、10Pa・s以上150Pa・s以下の粘度を有するステップと、
前記半導体積層体(3)の上に前記変換手段体(5)を取り付け、前記半導体積層体(3)と前記変換手段体(5)とを相互に直接的に接触させるステップと、
前記変換手段体(5)を硬化させるステップであって、前記硬化後に前記変換手段体(5)の前記硬度は少なくともショアA30且つ最大でショアD80であるステップとを備えていることを特徴とする、オプトエレクトロニクス半導体チップ(1)の製造方法。
【請求項12】
前記変換手段体(5)を支持体フィルム(8)上に取り付け、カバーフィルム(9)によって覆い、
少なくとも前記支持体フィルム(8)は紫外線スペクトル領域及び青色スペクトル領域において少なくとも部分的に放射を透過させる、請求項11に記載の方法。
【請求項1】
オプトエレクトロニクス半導体チップ(1)のための変換手段体(5)において、
マトリクス材料(50)と、
前記マトリクス材料(50)内に埋め込まれている変換手段粒子(55)とを有しており、
前記マトリクス材料(50)は不完全に硬化及び/又は架橋されており、且つ、
前記変換手段体(5)は室温においてショアA0を上回り且つショアA35以下の硬度、及び/又は、10Pa・s以上150Pa・s以下の粘度を有していることを特徴とする、変換手段体(5)。
【請求項2】
前記マトリクス材料(50)はシリコーンを含有するか、又は、シリコーンである、請求項1に記載の変換手段体(5)。
【請求項3】
前記マトリクス材料(50)は熱的に完全に架橋可能及び/又は硬化可能であり、硬化時間は少なくとも10分である、請求項1又は2に記載の変換手段体(5)。
【請求項4】
前記変換手段体(5)はチキソトロピー剤を含んでいない、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の変換手段体(5)。
【請求項5】
前記変換手段粒子(55)の重量割合は20%以上75%以下、特に、55%以上70%以下である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の変換手段体(5)。
【請求項6】
オプトエレクトロニクス半導体チップ(1)において、
少なくとも一つの活性層を備えている半導体積層体(3)と、
変換手段粒子(55)が埋め込まれているマトリクス材料(50)を含むワンピースの変換手段体(5)とを有しており、
前記変換手段体(5)は前記半導体積層体(3)と直接的に接触しており、結合手段を介することなく前記半導体積層体(3)上に被着されており、
前記変換手段体(5)の硬度は少なくともショアA30且つ最大でショアD80であることを特徴とする、オプトエレクトロニクス半導体チップ(1)。
【請求項7】
前記変換手段体(5)の横方向の寸法は300μm以上且つ3mm以下であり、
前記変換手段(5)の厚さは20μm以上125μm以下である、請求項6に記載のオプトエレクトロニクス半導体チップ(1)。
【請求項8】
前記半導体積層体(3)の放射通過面(32)及び側面はそれぞれ少なくとも少なくとも90%前記変換手段体(5)によって覆われている、請求項6又は7に記載のオプトエレクトロニクス半導体チップ(1)。
【請求項9】
前記変換手段体(5)は前記半導体積層体(3)の少なくとも一つの境界面(32,34)に形状結合により接触している、請求項6乃至8のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス半導体チップ(1)。
【請求項10】
一つ又は複数の電気的なコンタクト構造(6)が前記変換手段体(5)を貫通している、請求項6乃至9のいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクス半導体チップ(1)。
【請求項11】
オプトエレクトロニクス半導体チップ(1)の製造方法において、
少なくとも一つの活性層を備えている半導体積層体(3)を準備するステップと、
変換手段粒子(55)が埋め込まれているマトリクス材料(50)を有しているワンピースの変換手段体(5)を準備するステップであって、前記マトリクス材料(50)は不完全に架橋されており、及び/又は、硬化されており、且つ、前記変換手段体(5)は室温においてショアA0を上回り且つショアA35以下の硬度、及び/又は、10Pa・s以上150Pa・s以下の粘度を有するステップと、
前記半導体積層体(3)の上に前記変換手段体(5)を取り付け、前記半導体積層体(3)と前記変換手段体(5)とを相互に直接的に接触させるステップと、
前記変換手段体(5)を硬化させるステップであって、前記硬化後に前記変換手段体(5)の前記硬度は少なくともショアA30且つ最大でショアD80であるステップとを備えていることを特徴とする、オプトエレクトロニクス半導体チップ(1)の製造方法。
【請求項12】
前記変換手段体(5)を支持体フィルム(8)上に取り付け、カバーフィルム(9)によって覆い、
少なくとも前記支持体フィルム(8)は紫外線スペクトル領域及び青色スペクトル領域において少なくとも部分的に放射を透過させる、請求項11に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A)】
【図6B)】
【図6C)】
【図7A)】
【図7B)】
【図7C)】
【図7D)】
【図8A)】
【図8B)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A)】
【図6B)】
【図6C)】
【図7A)】
【図7B)】
【図7C)】
【図7D)】
【図8A)】
【図8B)】
【公表番号】特表2013−504188(P2013−504188A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527269(P2012−527269)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061648
【国際公開番号】WO2011/026716
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061648
【国際公開番号】WO2011/026716
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】
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