説明

変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ及びそれらの使用

本発明は、ラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ(PTE)と、有機リン化合物で汚染された物体、皮膚若しくは粘膜の表面の除染に関連するか、或いは外部の汚染又は有機リン化合物の摂取若しくは吸入による内部の中毒の予防又は治療に関連して用いることができる医薬品の製造に関連するか、或いは有機リン化合物で汚染された水の除染に関連する生物清浄剤としてのそれらの使用とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、変異超好熱性(hyperthermophilic)ホスホトリエステラーゼ(PTE)、及び有機リン化合物で汚染された物質又は皮膚若しくは粘膜の表面の除染に関連するか、或いは衣類、手袋、カートリッジ、有機リンスカベンジャーの製造に関連するか、或いは外部(external)の汚染又は有機リン化合物の摂取若しくは吸入による内部の中毒の予防又は治療に関連して用いることができる医薬品の製造に関連するか、又は有機リン化合物で汚染された水の汚染管理に関連するバイオスカベンジャーとしてのそれらの使用、並びにこれらの変異超好熱性PTEをコードするヌクレオチド配列、及びこれらのPTEを特にその表面で発現する細菌の調製に関連するそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
有機リン化合物
有機リン化合物(OP)は、ある種の化学戦に用いられる薬品及び農薬を構成する毒性が高い分子である。パラオクソン又はパラチオンのようなこれらの化合物のいくつかは、その殺虫特性により用いられる。実際に、これらは製造が容易であり、発展途上国で農業に広く用いられている。残念なことに、この非常に広範な使用は、世界的な中毒の症例の多数の原因である(WHOによると、年間200,000名が死亡する)。
【0003】
ほとんどのOPは、迅速に加水分解されるので、不安定な生成物である。これらは、よって、その毒性の形態で環境中に存続しない。このこととは対照的に、サリン、ソマン、タブン又はVXのような軍隊により開発されたある種の生成物は、より安定で危険である。これらの化学戦に用いられる薬品に対するテロリストによる興味が、現在、増大している。特に、サリンは、1994年の松本、及び1995年の東京の地下鉄でのオウム教による襲撃の間に既に用いられている。これらの脅威の増大に直面して、除染の効果的な手段の研究及び特に開発が、今までになく急務である。
【0004】
有機リン化合物は、経皮吸収及び吸入により作用する。これらは、ほとんどの場合、無色無臭の液体である。これらの薬品の1つによる中毒は、特徴的で非常に深刻な症状(中毒者の死亡までもある)のために、迅速に明らかになる(1分〜60分未満)。ヒト生体に一旦摂取されたこれらの分子は、神経毒性作用を有する。これらは、神経系の正しい機能にとって非常に重要な酵素であるアセチルコリンエステラーゼを攻撃する。この酵素は、神経メッセージの伝達に必須である。実際に、ニューロンからニューロンへインパルスが通過すると、電気的情報がシナプス間隙内で化学的メッセージに変換される。このようにして放出される分子は、神経伝達物質(例えばアセチルコリン)とよばれる。間隙で一旦放出されると、アセチルコリンのほとんどは、神経メッセージの連続性を確実にするために、シナプス後ニューロンの受容体に結合する。結合した分子及び未結合の分子は、次いで、再捕捉されるか又は分解されるはずであり、このことにより、強度及びインパルスの期間の調節が可能になる。アセチルコリンエステラーゼの役割は、よって、シナプス間隙でアセチルコリンが分解されることにより、神経メッセージを確実に停止させることである。
【0005】
OPは、アセチルコリンエステラーゼの活性部位でセリンと迅速に反応し、不活性リン酸化酵素を形成する。このようにして、共有結合した中間体が形成され、酵素は全ての活性を失う。これらの化合物は、よって、これらの酵素の不可逆的な阻害物質を構成する。すると、アセチルコリンは、シナプス間隙でもはや分解されず、蓄積する。
【0006】
これらの危険性に備えるために、予防及び除染のプロトコルが提供される。現在のところ、設備は、高濃縮苛性ソーダ(NaOH)を用いて除染される。防護スーツ及びマスクは、これらの薬品との全ての接触を妨げるように設計されている。ヒトの中毒の場合には、苛性ソーダでの処置は明らかに構想できない。被害者は、次亜塩素酸ナトリウムの溶液(ジャベル水)を用いて単純に除染され、大量の石鹸及び水で洗浄される。フォロン(Foulon)手袋も、被害者の皮膚に液体が吸収されることを可能にする。神経毒性薬品の吸入の場合(経皮的又は非経皮的)、カシェ剤の形態で摂取できるパイロスチグミン(pyrostigmine)での前処置がある。この分子は、アセチルコリンエステラーゼを可逆的に遮断し、OPがそれらに結合することを妨げる。このようにして、個体が救命される。さらに、症状の救急処置は、アトロピン(抗コリン薬)、ジアゼパム(抗けいれん薬)及びプラリドキシム(阻害されたアセチルコリンエステラーゼの再活性化剤)を含有する自己注射用シリンジの形態でも存在する。しかし、注射は、有効であるためには、中毒の直後に行わなければならない。しかし、これは、活動不能後遺症の出現を予防しない。
【0007】
予防処置のいくらかの進展が、上記のような方法により、過去20年間に行われているが、これらの中毒に対する治療及び現存する防御は、それにもかかわらず、満足されるものではないままである。残念なことに、探索された全ての薬理学的な手掛かりは、行き詰っているようである。しかし、「バイオスカベンジャー」の概念の出現は、より効果的な医療設備の新しい希望を増大させる。実際に、OPがそれらの神経筋及び中枢の生体標的に到達する前に、皮膚上及び血液内でOPを捕捉及び/又は分解できる酵素を用いるというアイデアは、特に魅力的である
【0008】
ヒトブチリルコリンエステラーゼ(BuChe)は、アセチルコリンエステラーゼに類似の酵素であり、その生理的役割は明確には確立されていない。それにもかかわらず、これは、有機リン化合物がそれらの標的に到達する前に、血液中で有機リン化合物を捕捉するという大きな希望を示すものである(Ravehら,1993)。さらに、ヒトに注入された天然酵素は特に安定であり、半減期が11日である。しかし、この天然スカベンジャーの血液中の量は、OPの危険性から我々を自然に防御するには低すぎる。実際に、これは、OPの化学量論的結合物質として作用する:1つの酵素が、単一分子を中和できるだけである。迅速な計算により、効果的な治療のためには、大量の酵素が必要であることが示される。用いられる資源は、よって、不均衡であり、注射あたり及び兵士あたり200 mgのタンパク質の用量に相当する。しかし、何かよりよいものを求めて、BuChEは、特に米軍(2006年末にその兵士のために百万回投与量を提供した)の具体的な計画にある。酵素の生産は、トランスジェニックヤギによる遺伝子工学により確実に行われる。このような量のタンパク質の必要性は、やはり、非常に高価であり、利用される資源にもかかわらず、この計画は、大きな技術的挑戦である。OP-加水分解酵素活性を有するBuChEのいくつかの変異体が存在するが、これらの触媒作用は、OPを天然に加水分解できる酵素に比較すると、非常に遅い。
【0009】
ヒトパラオクソナーゼ(HPON1)は、多くの利点を有するOP-加水分解酵素である。OP中毒に対するその防御の役割は、マウスで確立されている。さらに、そのヒト起源は、免疫応答を誘発する治療プロトコルの複数回の注射を回避するはずである。HPON1は、HDLと主に会合する血漿タンパク質である。天然酵素の3次元構造は解明されておらず、PON1のヒト-マウス-ラット-ウサギキメラの構造だけが解明されている(Harelら, 2004)。それにもかかわらず、この構造は、より活性がある変異体を得ることを可能にしていない。さらに、近い将来に薬理的に使用することは不可能である。実際に、活性なヒトパラオクソナーゼを大量に得るための全ての試みは、技術的理由から失敗している。
【0010】
他の見込みのあるOP-加水分解酵素が単離されている。これらは、ホスホトリエステラーゼ(PTE)のファミリーの酵素である。これらの酵素は、特に、opd遺伝子についてシュードモナス・ディミニュータ(Pseudomonas diminuta)及びフラボバクテリウム種(flavobacterium sp.) (Munnecke, 1976)、並びにopdA遺伝子についてアグロバクテリウム・ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter) (Jackson et al., 2005)の土壌細菌から発見された真の触媒的スカベンジャーである。PTEは、神経毒性薬品のバイオスカベンジャーの開発のために非常に見込みがある酵素である。しかし、これらの酵素に関して、基本的な懸念がある。実際に、これらの酵素の生物学的意味が全く分からないままである。さらに、これらの非常に効果的な酵素の触媒機構は、ややはっきりしない。
【0011】
PTEは、OPを分解することが知られている酵素のうちで最も活性である。これらの研究は、苛性ソーダである現存する唯一の効果的な手段を有利に置き換えるであろう治療的(皮膚及び眼での)除染のための処置を行うことを可能にする。苛性ソーダは、生体には明らかに用いることができない。さらに、PTEは、農薬で汚染された土壌の除染にも効果的であろう。これらは、OP汚染を検出するために用いることもできる。よって、これらのタンパク質を支持体に化学的に結合させ、いずれの触媒作用を種々の方法、例えば電気シグナルの検出又は分光光学法により検出することを試みる計画がある。別の主要な長所は、PTEが、広範囲のOP、例えばパラチオン、パラオクソン、ソマン、サリン及びこれらの全てのうちで最も毒性が高いVXを加水分解できることである。
【0012】
細菌におけるこのOP-加水分解酵素活性の起源に関連する仮説は、その天然の基質がこれらの毒と構造的に類似することにこの活性が起因するようであるが、複数あって議論の余地がある。さらに、これらの酵素の生理的役割は、まだわかっていない(Aubertら, 2004)。中温性PTEをコードすることが知られているいくつかの遺伝子が存在する。第1の遺伝子(opd)は、ピー・ディミニュータ及びフラボバクテリウム種から同時に単離され、365アミノ酸のタンパク質をコードする。このタンパク質は、29残基のペプチドシグナルを有し、これは、ペリプラスム空間に該タンパク質が存在することを可能にする。エー・ラジオバクターから単離された別の既知の遺伝子(opda) (Jacksonら, 2005)は、33残基のペプチドシグナルを有する362アミノ酸のタンパク質をコードする。これらの2つのタンパク質は、90%の配列同一性を有する。これらの中温性PTEはOPに関して非常に活性であるが、これらは生産するのに高価であり、不安定である。
【0013】
最近、このファミリーの新規タンパク質が単離及び精製された(Meroneら, 2005)。この35.5 kDaの金属結合酵素は、ピー・ディミニュータのPTEと31%の配列同一性を有し、古細菌であるスルフォロバス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)から単離された。この生物は、極限条件で生存する(87℃〜93℃、及びpH 3.5〜5)。この条件は、このタンパク質に例外的な熱安定特性を与える。これは、超好熱性酵素であり、その最大活性は約95℃で生じ、ピー・ディミニュータのPTEよりもパラオクソンに対する活性が明らかにより低い。別の超好熱性PTEが、スルフォロバス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)から単離されている(Porzioら, 2007)。超好熱性PTEは、中温性PTEよりもOPに対する活性がより低いが、一方で、非常に安定で、生産が安価であるという利点を有する。
【0014】
細菌感染
細菌感染は、ヒトの病気の主要な原因の1つである。これらの感染のいくつかは、病院でかかり、公衆衛生問題を構成できる。フランスでは、行われた種々の研究によると、入院個体のおよそ5〜10%が、その入院中に被害者となり、すなわちこれは年間600,000〜1,000,000名の患者である。入院の最初の原因である病気よりも優位に、これらの感染は、患者の生命予後を悪化させる(年間およそ6000名の死者、フランスで第10位の死亡原因)。この事実とともに、長期化する入院によるさらなる経済的費用及び高価な治療への支給も存在する。これらの問題は、抗生物質耐性の症例数の増加が出現することによってもさらに悪化させられる。この耐性に対する新しい手段を獲得するために、いくつかのストラテジーが開発されている。最も見込みがある手掛かりの1つは、細菌同士の交信を妨げることを含む。実際に、細菌は単細胞生物であるが、これらは互いに交信でき、よって、環境変化に対して集合的に応答できる。「クオラムセンシング」(QS)として知られるこの交信機構は、いくつかの遺伝子の発現の同調及び調節を可能にする(FederleおよびBassler, 2003; FuquaおよびGreenberg, 2002; Whiteheadら, 2001)。この交信は、細胞膜を通して自由に拡散でき、かつ遺伝子の発現プロフィールを調節できる小さい「シグナル」分子により調節される。さらに、QS現象は、原核生物に限定されない。なぜなら、藻類の単細胞真核生物病原体も、毒性のようなある種の生物機能を調和させるためにQSを用いるからである(Ohら, 2001)。
【0015】
QSのために用いられる全てのシグナルのうち、アシルホモセリンラクトン(AHL)は、最も広く普及しているようであり(特にグラム陰性細菌のうちで)、かつ最も研究されている。
これらが用いられていることは、多数の重要な生体機能、例えば共生、接合、抗生物質の生産、胞子形成、毒性及びバイオフィルム形成において示されている(Fuqua及びGreenberg, 2002; Whiteheadら, 2001; Zhang, 2003)。
【0016】
これらの「シグナル」分子の濃度は非常に低く、これらの化合物を分解できる酵素により部分的に調節されている。特に、バチルス・スリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)に由来する、これらのラクトンを分解できるAHLアシラーゼ及びAHLラクトナーゼ、例えばAiiAがある(Dongら, 2002)。細菌感染と戦うために、クオラムセンシングを妨げるアイデアが、非常に見込みのある手がかりである(Rasmussen及びGivskov, 2006)。実際に、QS変異体病原体が毒性遺伝子をもはや発現せず、非毒性になることに鑑みて(Passadorら, 1993; Pirhonenら, 1993)、病原体のQSを減弱させることにより細菌感染を制御できるようである。
【0017】
つまり、エルウィニア・カロトボーラ(Erwinia carotovora)及びシュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)のような植物又はヒトの病原体での、AHLラクトナーゼ又はAHLアシラーゼであってもQS減弱化酵素:「クオラムクエンチング」(QQ)酵素の発現は、それらの毒性を低減させる(Dongら, 2000; Linら, 2003; Reimmannら, 2002)。さらに、QQラクトナーゼを発現するトランスジェニック植物は、病原体感染に対して有効に耐性である(Dongら, 2001)。
【0018】
最近、超好熱性古細菌であるスルフォロバス・ソファタリカスに由来するタンパク質SsoPoxがクローニングされ、そのホスホトリエステラーゼ活性が特徴づけられた(Meroneら, 2005)。このタンパク質は、超熱安定性であり、90〜95℃及び100℃での変性半減期がそれぞれおよそ4時間である。このことは細菌溶解物の加熱及び宿主タンパク質(大腸菌(Escherichia coli))の沈殿による組換えタンパク質の非常に効果的で安価な精製を可能にする。2006年には、SsoPoxが、著しいAHLラクトナーゼ活性を有することが示された(Afriatら, 2006)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、
- 上記の野生型超好熱性PTEよりもOPに対してより活性であり、
- 上記の野生型超好熱性PTEよりも安定で生産が安価である
という両方の利点を有する新規なPTEを本質的に提供することである。
本発明の目的は、有機リン化合物で汚染された物質、皮膚若しくは粘膜の表面の除染に関連して、又は外部汚染又は有機リン化合物の摂取若しくは吸入による内部中毒の予防又は治療に関連して用い得る医薬品の製造に関連して、又は有機リン化合物で汚染された水の汚染管理に関連して用いることができる新規なバイオスカベンジャー化合物を提供することでもある。
【0020】
本発明の別の目的は、有機リン化合物で汚染された物質、皮膚若しくは粘膜の表面の除染、又は有機リン化合物で汚染された水の汚染管理、又は神経毒性薬品のストックの分解のためのキットを提供することである。
本発明の別の目的は、上記の新規なPTEの能力のおかげで非常に感度が高いという利点を有する、これらの有機リン化合物のスカベンジャーを提供することである。
本発明の別の目的は、液体又は固体の形態の、上記の利点を有する新規なPTEを含浸させた物体、例えば手袋、種々の衣類(特に、化学防護スーツ用の布地に固定される)、ふき取り布(wipes)、スプレー泡を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、上記の利点を有する新規なPTEを、医薬的に許容されるビヒクルとともに含む、特に注入可能な形態又は軟膏の形態の医薬組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、特に有機リン化合物で汚染された個体の血液を除染するための、内部に新規なPTEがグラフトされた、外部除染用のカートリッジを提供することである。
本発明の別の目的は、これらの新規なPTEをコードするヌクレオチド配列を用いて形質転換され、その細胞質又は表面で該PTEを発現する細菌を提供することであり、このようにして形質転換された該細菌は、有機リン化合物の除染に関連して用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の主題は、配列番号1のコンセンサス配列に相当する超好熱性ホスホトリエステラーゼ(PTE)に由来し、かつ任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号1の:
- 98位のチロシンY、
- 100位のチロシンY、
- 224位のアルギニンR、
- 259位のシステインC
の置換の4つの変異の少なくとも1つを含む、ラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ(PTE)であって、それが由来する非変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ(PTE)のものよりも大きいラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性PTEである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ラクトナーゼ活性を有する本発明の上記の変異超好熱性PTEは、熱安定性である、すなわち95℃までの温度でその酵素活性を保持できるタンパク質である(Meroneら, 2005)という利点を有する。本発明の上記の変異超好熱性PTEの酵素活性は、特に、以前に記載された方法(Meroneら, 2005)により測定されるOP加水分解活性に相当する。この熱安定性により、それらの生産が安価であるという利点を与える。これは、一方で、それらが有機溶媒中で安定であり、このことが工業的プロセスについてそれらをより適するものにし、他方で、これらのPTEを生産する細胞、例えば大腸菌の細胞溶解物を加熱する方法により、それらが非常に安価に精製されることによる。よって、1段階で大量生産及び高純度が得られる。
【0024】
ラクトナーゼ活性を有する本発明の上記の変異超好熱性PTEは、それらが由来する野生型超好熱性PTEよりもOPの加水分解(特に上記の方法による)に関連してより活性であるという利点も有する。ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性PTEは、それらが由来する野生型超好熱性PTEよりも「クオラムクエンチング」に関連して、すなわち病原体感染に対する耐性に関連してより活性であるという利点も有する。
【0025】
本発明のより具体的な主題は、配列番号3の配列に相当するスルフォロバス・ソルファタリカスの超好熱性PTE、又は配列番号5の配列に相当するスルフォロバス・アシドカルダリウスの超好熱性PTEに由来する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼであって、上記の配列番号3及び配列番号5の配列は、コンセンサス配列である配列番号1に属し、配列番号1の2位のアミノ酸は、配列番号3には存在しない変異超好熱性ホスホトリエステラーゼである。
【0026】
本発明は、より具体的には、任意の他の天然又は非天然のアミノ酸による配列番号1の:
- 98位のチロシンY、
- 100位のチロシンY、
- 224位のアルギニンR、
- 259位のシステインC
の置換の4つの変異を少なくとも含む、ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼに関する。
【0027】
本発明のより具体的な主題は、任意の他の天然又は非天然のアミノ酸による配列番号1の:
- 28位のバリンV、
- 68位のプロリンP、
- 69位のスレオニンT、
- 73位のロイシンL、
- 142位のアスパラギン酸D、
- 226位のグリシンG、
- 227位のロイシンL、
- 230位のフェニルアラニンF、
- 264位のトリプトファンW、
- 279位のトリプトファンW
の置換の変異の少なくとも1つを含むことを特徴とする、ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼである。
【0028】
本発明は、より具体的には、任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号1の:
- 28位のバリンV、
- 73位のロイシンL、
- 142位のアスパラギン酸D、
- 226位のグリシンG、
- 227位のロイシンL
の置換の5つの変異を含むことを特徴とする、ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼに関する。
【0029】
本発明のより具体的な主題は、任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号1の:
- 68位のプロリンP、
- 69位のスレオニンT、
- 230位のフェニルアラニンF、
- 264位のトリプトファンW、
- 279位のトリプトファンW
の置換の5つの変異を含むことを特徴とする、ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼである。
【0030】
本発明は、より具体的には、
- 98位のチロシンYのトリプトファンWによる置換、
- 100位のチロシンYのフェニルアラニンFによる置換、
- 224位のアルギニンRのヒスチジンHによる置換、
- 259位のシステインCのロイシンLによる置換、
である4つの変異の少なくとも1つと、もし適切であれば:
- 28位のバリンVのアラニンAによる置換、
- 68位のプロリンPのバリンVによる置換、
- 69位のスレオニンTのセリンSによる置換、
- 73位のロイシンLのイソロイシンIによる置換、
- 142位のアスパラギン酸DのスレオニンTによる置換、
- 226位のグリシンGのプロリンPによる置換、
- 227位のロイシンLのヒスチジンHによる置換、
- 230位のフェニルアラニンFのセリンSによる置換、
- 264位のトリプトファンWのアラニンAによる置換、
- 279位のトリプトファンWのイソロイシンIによる置換
の変異の少なくとも1つとを含むことを特徴とする、配列番号1のコンセンサス配列に相当する超好熱性PTEに由来する、ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼに関する。
【0031】
本発明のより具体的な主題は、配列番号3の配列に相当するスルフォロバス・ソルファタリカスの超好熱性PTEに由来し、任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号3の:
- 97位のチロシンY、
- 99位のチロシンY、
- 223位のアルギニンR、
- 258位のシステインC
の置換の4つの変異の少なくとも1つを含む、ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼである。
【0032】
本発明は、配列番号3の配列に相当するスルフォロバス・ソルファタリカスの超好熱性PTEに由来し、任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号3の:
- 97位のチロシンY、
- 99位のチロシンY、
- 223位のアルギニンR、
- 258位のシステインC
の置換の4つの変異を少なくとも含む、ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼに関する。
【0033】
本発明のより具体的な主題は、任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号3の:
- 27位のバリンV、
- 67位のプロリンP、
- 68位のスレオニンT、
- 72位のロイシンL、
- 141位のアスパラギン酸D、
- 225位のグリシンG、
- 226位のロイシンL、
- 229位のフェニルアラニンF、
- 263位のトリプトファンW、
- 278位のトリプトファンW
の置換の変異の少なくとも1つも含むことを特徴とする、配列番号3の配列に相当するスルフォロバス・ソルファタリカスの超好熱性PTEに由来する、ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼである。
【0034】
本発明は、より具体的には、任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号3の:
- 27位のバリンV、
- 72位のロイシンL、
- 141位のアスパラギン酸D、
- 225位のグリシンG、
- 226位のロイシンL
の置換の5つの変異を含むことを特徴とする、配列番号3の配列に相当するスルフォロバス・ソルファタリカスの超好熱性PTEに由来する、ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼに関する。
【0035】
本発明のより具体的な主題は、任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号3の:
- 67位のプロリンP、
- 68位のスレオニンT、
- 229位のフェニルアラニンF、
- 263位のトリプトファンW、
- 278位のトリプトファンW
の置換の5つの変異を含むことを特徴とする、配列番号3の配列に相当するスルフォロバス・ソルファタリカスの超好熱性PTEに由来する、ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼである。
【0036】
本発明は、より具体的には:
- 97位のチロシンYのトリプトファンWによる置換、
- 99位のチロシンYのフェニルアラニンFによる置換、
- 223位のアルギニンRのヒスチジンHによる置換、
- 258位のシステインCのロイシンLによる置換
の4つの変異の少なくとも1つと、もし適切であれば:
- 27位のバリンVのアラニンAによる置換、
- 67位のプロリンPのバリンVによる置換、
- 68位のスレオニンTのセリンSによる置換、
- 72位のロイシンLのイソロイシンIによる置換、
- 141位のアスパラギン酸DのスレオニンTによる置換、
- 225位のグリシンGのプロリンPによる置換、
- 226位のロイシンLのヒスチジンHによる置換、
- 229位のフェニルアラニンFのセリンSによる置換、
- 263位のトリプトファンWのアラニンAによる置換、
- 278位のトリプトファンWのイソロイシンIによる置換
の変異の少なくとも1つとを含むことを特徴とする、配列番号3の配列に相当するスルフォロバス・ソルファタリカスの超好熱性PTEに由来する、ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼに関する。
【0037】
本発明のより具体的な主題は、以下の配列:
- 以下の4つの変異:
* 97位のチロシンYのトリプトファンWによる置換、
* 99位のチロシンYのフェニルアラニンFによる置換、
* 223位のアルギニンRのヒスチジンHによる置換、
* 258位のシステインCのロイシンLによる置換
を含む配列番号3に相当する配列番号7、
- 以下の5つの変異:
* 27位のバリンVのアラニンAによる置換、
* 72位のロイシンLのイソロイシンIによる置換、
* 141位のアスパラギン酸DのスレオニンTによる置換、
* 225位のグリシンGのプロリンPによる置換、
* 226位のロイシンLのヒスチジンHによる置換
をさらに含む配列番号7の配列に相当する配列番号9、
- 以下の5つの変異:
* 67位のプロリンPのバリンVによる置換、
* 68位のスレオニンTのセリンSによる置換、
* 229位のフェニルアラニンFのセリンSによる置換、
* 263位のトリプトファンWのアラニンAによる置換、
* 278位のトリプトファンWのイソロイシンIによる置換
をさらに含む配列番号9の配列に相当する配列番号11
に相当することを特徴とする、配列番号3の配列に相当するスルフォロバス・ソルファタリカスの超好熱性PTEに由来する、ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼである。
【0038】
本発明は、より具体的には、配列番号3中の位置が以下に記載されるとおりである以下のアミノ酸対のアミノ酸の、他の天然又は非天然アミノ酸による少なくとも1つの置換に相当する少なくとも1つの変異を含むことを特徴とする、配列番号3の配列に相当するスルフォロバス・ソルファタリカスの超好熱性PTEに由来する、ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼに関する:2R/314S、14K/12E、26R/75D、26R/42E、33R/42E、33R/45E、55R/52E、55R/285E、74R/121D、81K/42E、81K/43D、84K/80E、109R/113E、123K/162E、147K/148D、151K/148D、154R/150E、154R/187E、154R/188E、161K/188E、183R/150E、183R/187E、183R/180E、210K/245D、215K/214D、223R/256D、223R/202D、234K/204D、235R/202D、241R/245D、245D/244K、250K/249D、277R/286D、292K/298E、310K/307E。
【0039】
本発明のより具体的な主題は、配列番号5の配列に相当するスルフォロバス・アシドカルダリウスの超好熱性PTEに由来し、任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号5の:
- 98位のチロシンY、
- 100位のチロシンY、
- 224位のアルギニンR、
- 259位のシステインC
の置換の4つの変異の少なくとも1つを含む、ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼである。
【0040】
本発明は、より具体的には、配列番号5の配列に相当するスルフォロバス・アシドカルダリウスの超好熱性PTEに由来し、任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号5の:
- 98位のチロシンY、
- 100位のチロシンY、
- 224位のアルギニンR、
- 259位のシステインC
の置換の4つの変異を少なくとも含む、ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼに関する。
【0041】
本発明のより具体的な主題は、任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号5の:
- 28位のバリンV、
- 68位のプロリンP、
- 69位のスレオニンT、
- 73位のロイシンL、
- 142位のアスパラギン酸D、
- 226位のグリシンG、
- 227位のロイシンL、
- 230位のフェニルアラニンF、
- 264位のトリプトファンW、
- 279位のトリプトファンW
の置換の変異の少なくとも1つも含むことを特徴とする、配列番号5の配列に相当するスルフォロバス・アシドカルダリウスの超好熱性PTEに由来する、ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼである。
【0042】
本発明は、より具体的には、任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号5の:
- 28位のバリンV、
- 73位のロイシンL、
- 142位のアスパラギン酸D、
- 226位のグリシンG、
- 227位のロイシンL
の置換の5つの変異を含むことを特徴とする、配列番号5の配列に相当するスルフォロバス・アシドカルダリウスの超好熱性PTEに由来する、ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼに関する。
【0043】
本発明のより具体的な主題は、任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号5の:
- 68位のプロリンP、
- 69位のスレオニンT、
- 230位のフェニルアラニンF、
- 264位のトリプトファンW、
- 279位のトリプトファンW
の置換の5つの変異を含むことを特徴とする、配列番号5の配列に相当するスルフォロバス・アシドカルダリウスの超好熱性PTEに由来する、ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼである。
【0044】
本発明は、より具体的には、
- 98位のチロシンYのトリプトファンWによる置換、
- 100位のチロシンYのフェニルアラニンFによる置換、
- 224位のアルギニンRのヒスチジンHによる置換、
- 259位のシステインCのロイシンLによる置換
の4つの変異の少なくとも1つと、もし適切であれば、
- 28位のバリンVのアラニンAによる置換、
- 68位のプロリンPのバリンVによる置換、
- 69位のスレオニンTのセリンSによる置換、
- 73位のロイシンLのイソロイシンIによる置換、
- 142位のアスパラギン酸DのスレオニンTによる置換、
- 226位のグリシンGのプロリンPによる置換、
- 227位のロイシンLのヒスチジンHによる置換、
- 230位のフェニルアラニンFのセリンSによる置換、
- 264位のトリプトファンWのアラニンAによる置換、
- 279位のトリプトファンWのイソロイシンIによる置換
の変異の少なくとも1つとを含むことを特徴とする、配列番号5の配列に相当するスルフォロバス・アシドカルダリウスの超好熱性PTEに由来する、ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼに関する。
【0045】
本発明のより具体的な主題は、以下の配列:
- 以下の4つの変異:
* 98位のチロシンYのトリプトファンWによる置換、
* 100位のチロシンYのフェニルアラニンFよる置換、
* 224位のアルギニンRのヒスチジンHによる置換、
* 259位のシステインCのロイシンLによる置換
を含む配列番号5の配列に相当する配列番号13、
- 以下の5つの変異:
* 28位のバリンVのアラニンAによる置換、
* 73位のロイシンLのイソロイシンIによる置換、
* 142位のアスパラギン酸DのスレオニンTによる置換、
* 226位のグリシンGのプロリンPによる置換、
* 227位のロイシンLのヒスチジンHによる置換
をさらに含む配列番号13の配列に相当する配列番号15、
- 以下の5つの変異
* 68位のプロリンPのバリンVによる置換、
* 69位のスレオニンTのセリンSによる置換、
* 230位のフェニルアラニンFのセリンSによる置換、
* 264位のトリプトファンWのアラニンAによる置換、
* 279位のトリプトファンWのイソロイシンIによる置換
をさらに含む配列番号15の配列に相当する配列番号17
に相当することを特徴とする、配列番号5の配列に相当するスルフォロバス・アシドカルダリウスの超好熱性PTEに由来する、ラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼである。
【0046】
本発明のより具体的な主題は、ラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼの活性化温度が、塩橋に含まれるアミノ酸が改変されていないラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼと比較して低減されるように、塩橋に含まれるアミノ酸の少なくとも1つが置換又は欠失により変異されている、ラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼである。
本発明の有利な実施形態において、上記の塩橋に含まれるアミノ酸は、少なくとも2アミノ酸の配列により置き換えられ得る。これは、つまり、付加である。
【0047】
本発明において、用語「置換」とは、別のアミノ酸によるあるアミノ酸の置き換えに相当すると理解される。置換は、保存的であり得、すなわち、置換アミノ酸が、同じ構造のアミノ酸又はタンパク質の3次元構造が変化されない同じ物理化学的特性(極性、疎水性、酸性、塩基性のアミノ酸など)を有するアミノ酸により置き換えられるか、又は非保存的であり得る。本発明により定義される置換は、天然アミノ酸又は人工アミノ酸に等しく関係する。つまり、塩橋に含まれるアミノ酸は、天然アミノ酸又は人工アミノ酸により置き換えることができる。
本発明において、「欠失」は、欠失に供されたタンパク質配列が、欠失に供されていない配列よりも短いようなアミノ酸の除去に相当することも理解される。
【0048】
超好熱性PTEの3次元構造の研究により、塩橋に含まれるアミノ酸を検出することが可能になった。これらの重要なアミノ酸は荷電され、5.5Å未満の相互作用距離(interaction distance)を有する。上記のタンパク質が、活性部位に変異を有するが、中温性PTEと比較して充分な活性を有しない場合、塩橋に含まれるアミノ酸を変異させることが可能である。これらの変異は、相互作用に干渉し、タンパク質をより柔軟にする効果を有する。
結晶学的データにより、4Å未満の距離の25個の相互作用、4Åと5Åの間の距離の6つの相互作用、5Åと5.5Åの間の距離の4つの相互作用が示されている。上記の相互作用は、2つのアミノ酸を含む。よって、合計で52アミノ酸が塩橋に含まれる。
【0049】
これらの相互作用に含まれるアミノ酸、及び該アミノ酸の相互作用の距離を、以下の表1に示す。
【表1】

【0050】
本発明の有利な実施形態において、Ssoのラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼでは、以下の位置のアミノ酸の少なくとも1つが改変される:2位、12位、14位、26位、33位、42位、43位、45位、52位、55位、74位、75位、80位、81位、84位、109位、113位、121位、123位、145位、147位、148位、150位、151位、154位、161位、162位、180位、183位、187位、188位、202位、204位、210位、214位、215位、223位、234位、235位、241位、244位、245位、249位、250位、256位、277位、285位、286位、292位、298位、307位及び310位。上記のアミノ酸の位置は、タンパク質SsoPoxの最初のアミノ酸に関して定義される。
【0051】
本発明の有利な実施形態において、Sacのラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼでは、以下の位置のアミノ酸の少なくとも1つが改変される:3位、13位、15位、27位、34位、43位、44位、46位、53位、56位、75位、76位、81位、82位、85位、110位、114位、122位、124位、146位、148位、149位、151位、152位、155位、162位、163位、181位、184位、188位、189位、203位、205位、211位、215位、216位、224位、235位、236位、242位、245位、246位、250位、251位、257位、278位、286位、287位、293位、299位、308位及び311位。上記のアミノ酸の位置は、タンパク質SacPoxの最初のアミノ酸に関して定義される。
【0052】
本発明は、上記で定義されるラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼをコードするヌクレオチド配列にも関する。
本発明の主題は、上記で定義されるラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼをコードするヌクレオチド配列を含有するベクター、特にプラスミドでもある。
【0053】
本発明は、そのゲノムが、上記で定義されるラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼをコードするヌクレオチド配列を含有するように、上記で定義されるベクターを用いて形質転換された宿主細胞、特に細菌であって、該ラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性PTEが宿主細胞の細胞質で生産されるか、又はその表面に分泌される宿主細胞にも関する。
本発明は、上記で定義されるラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼと結合させたか、又はその表面にグラフトされた上記で定義されるラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼを有する宿主細胞、特に細菌にも関する。
【0054】
本発明は、病原体に対して耐性がある、上記で定義されるベクターを用いて形質転換されたトランスジェニック生物、特に哺乳動物にも関する。
【0055】
本発明の主題は、上記で定義されるラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ、又は上記の形質転換宿主細胞の、有機リン化合物若しくは細菌で汚染された物体、皮膚又は粘膜の表面の除染に関連するか、或いは外部の汚染又は有機リン化合物の摂取若しくは吸入による内部の中毒の予防又は治療に関連して用いることができる医薬品(又はバイオ医薬品)の製造に関連するか、或いは細菌感染の予防若しくは治療に関連して用いることができる医薬品の製造に関連するか、或いは有機リン化合物で汚染された水の汚染管理に関連するか、或いは神経毒性剤のストックの分解に関連するバイオスカベンジャーとしての使用でもある。
【0056】
本発明の主題は、液体又は固体の形態の、上記で定義されるラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼを含浸させた物体、例えば手袋、種々の衣類(特に、化学防護スーツ用の布地に固定される)、ふき取り布、スプレー泡でもある。
本発明は、上記で定義されるラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ(適切であれば凍結乾燥された形態で)、又はラクトナーゼ活性を有する上記の変異超好熱性ホスホトリエステラーゼを含浸させた物体を含むことを特徴とする、有機リン化合物で汚染された物体、皮膚又は粘膜の表面を除染するため、又は有機リン化合物で汚染された水の汚染管理のためのキットにも関する。
【0057】
本発明の主題は、上記で定義されるラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼの上記の能力により非常に感度が高いという利点を有する上記の有機リン化合物のスカベンジャーでもある。
本発明は、本発明による上記で定義されるラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼが内部にグラフトされ、有機リン化合物で汚染された個体の血液を除染するために特に用いることができる、外部除染用のカートリッジにも関する。
本発明は、上記で定義されるラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼを、医薬的に許容されるビヒクルと組み合わせて含むことを特徴とする医薬組成物にも関する。
【0058】
本発明の主題は、特に溶液又はパッケージされたか若しくはPEG化された、注入可能な経路により投与できるか、又は特にPEG化されたか若しくは封入された形態又は軟膏、エアゾール若しくはふき取り布の形態の局所経路により投与できる形態にあることを特徴とする、上記で定義される医薬組成物でもある。
【0059】
本発明は、上記の含浸させた物体、又は上記で定義される外部の除染用のカートリッジの、表面細菌感染の除染のための消毒剤としての使用にも関する。
本発明は、特に血液中の細菌感染の治療のための上記で定義される医薬組成物の使用にも関する。
【0060】
本発明は、スルフォロバス・ソルファタリカスのホスホトリエステラーゼ、及び本発明による上記で定義されるラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼの調製の関係においてスルフォロバス・ソルファタリカスのホスホトリエステラーゼに作製された変異についての以下の詳細な記載によりさらに説明される。
【実施例】
【0061】
有機リン化合物(OP)は、ある種の化学戦に用いられる薬品及び農薬を構成する非常に毒性が高い分子である。これらの分子は、現在、深刻な公衆衛生問題(汚染、土壌汚染、水汚染)を示す。残念なことに、現在利用できる解決法は、満足できるものではない。それにもかかわらず、バイオテクノロジーは、非常に見込みのある代替を構成する。実際に、「バイオスカベンジャー」として用い得るある種の酵素は、広いスペクトルのこれらの毒を非常に効果的に破壊できる。
【0062】
I) スルフォロバス・ソルファタリカスのホスホトリエステラーゼの構造の研究
古細菌に由来するこの酵素は、超好熱性であるという特徴を有する。この研究により、熱安定性タンパク質に対する知識を深めることができる。OPを加水分解できるこのタンパク質は、環境及び皮膚の除染のための可能性のある候補である。この研究は、よって、生物工学により活性で熱安定性の酵素を得るための基礎となる。この最後の特徴は、低コストで大規模な生産を可能にする。大腸菌のような中温性生物により生産される組換えタンパク質は、1段階で効果的に精製できる。細胞溶解物を加熱し、宿主の中温性タンパク質の沈殿を導く。超好熱性タンパク質だけが可溶性のままである。
【0063】
いくつかの研究により、SsoPoxが、無差別の(promiscuous)ホスホトリエステラーゼ活性を有する天然ラクトナーゼであることを示すことが可能になった(Eliasら, 2007b)。
その「クオラムクエンチング」活性、低コストでの生産の容易性、及び工業的プロセスでの束縛に適合するその高い安定性により、SsoPoxは、クオラムクエンチング経路を用いて細菌感染と戦うための見込みのある候補である。
【0064】
A) 材料及び方法
1. 結晶化
大腸菌中のエス・ソルファタリカスの超好熱性PTEのクローニング、発現及び精製は、Meroneら(2005)により記載される。酵素を、5.8 mg.mL-1に濃縮した。結晶化試験は、懸滴蒸気拡散法を用いて行った。1〜2μLの範囲の等容量のタンパク質溶液とレザバー溶液とを混合した。得られた滴を、Tris-HClバッファー、pH 8中に15〜18% (質量/容量)のポリエチレングリコール(PEG) 8000を含有するレザバー溶液との平衡にした。非常に微細な結晶が、4℃にて1週間後に出現する。
【0065】
2. データ収集
結晶は、まず、レザバー溶液と25% (容量/容量)のグリセロールで構成される低温保護溶液に移した。それぞれの結晶を、次いで、液体窒素中で直ちに凍結させた。X線回折データを、100°Kにて、グルノーブルシンクロトロン(ESRF, Grenoble, France)のビームラインFIP BM 30で収集した。これらの収集について、Mar CCD検出器(165 mm)を用いた。データセットを、2.6Åの分解能で記録した。
【0066】
3. 構造の決定
回折データを積分し、XDS2000プログラム及びCCP4 (Collaborative Computational Project)ソフトウェア一式によりスケールに適合させた。第1の分子置換を、ピー・ディミニュータのPTEの構造(PDBコード:1DPM)から導き出されるポリアラニンモデルを用いるPHASERを用いて行った。2つのタンパク質分子は、非対称ユニットで見出された。2つの金属イオンで構成される活性部位は、明確に見ることができた。電子密度地図は、DMソフトウェアにより、溶媒平滑化法及び2つの分子の非結晶学的対称平均化を用いて改良した。モデルの手動での構築は、COOTプログラムを用いて行った。あるいくつかの側鎖を位置決めすることが可能であり、2量体界面に含まれるいくつかのループは除かなければならなかった。新しい分子の置換は、見出された最初の2つの解(solutions)を固定し、そのようにして改良されたモデルを用いることにより、MOLREPを用いて行った。2つのさらなる解を見出し、非対称ユニット内に合計で4つの分子を作製した(R= 46%、Rfree= 51%)。構造モデルを、次いで、手動で構築し、COOT及びREFMACソフトウェアサイクルの連続により洗練した。
【0067】
B) 結果
1. 3次元構造
エス・ソルファタリカスのPTEはPEG中で結晶化し、回折データをシンクロトロン(ESRF, Grenoble, France)を用いて収集した。このタンパク質の構造を、分子置換法により決定し(材料及び方法を参照されたい)、2.6Åの分解能にて、21.8%のR因子、28%のRfree因子及び良好な結晶構造を用いて洗練した。主鎖は、平均分解能にもかかわらず、非対称ユニットの2つのホモ2量体について、密度地図において完全に可視化される。
【0068】
この超好熱性PTEの構造は、この分子がおよそ40Å×54Å×46Åの寸法のほぼ球状であるようなものである。そのトポロジーは、構造が既知の2つの中温性PTEに非常によく似ている。最初のものは、ピー・ディミニュータに由来し(Vanhookeら, 1994; pdbコード: 1DPM)、第2のものは、エー・ラジオバクターに由来する(Jacksonら, 2005; コードpdb: 2D2J)。この超熱安定性(hyperthermostable)の構造は、TIMバレルともよばれるねじれた(β/α)8バレルとして記載できる。これは、11個のαヘリックスに挟まれた、バレルを形成する8つの平行β鎖からなる。これらの3つの解明された構造の重ね合わせは、エス・ソルファタリカスのPTEとピー・ディミニュータのPTEとの間(268個の原子にわたる)、及びエス・ソルファタリカスのPTEとエー・ラジオバクターのPTEとの間(271個の原子にわたる)のα炭素の位置についての平均偏差(RMS)が、それぞれ1.05Å及び1.11Åであることを導く。
【0069】
いくつかの主要な違い、すなわち中温性PTEの構造と比較して、エス・ソルファタリカスのPTEの構造には2つの不足がある。第1は、活性部位の入口に位置し、15残基のループの欠失からなる。他方の短縮は、ポリペプチド鎖の2つの末端に関する。実際に、ピー・ディミニュータ及びエー・ラジオバクターのPTEと比較してそれぞれ、C-末端では6残基及び2残基少なく、N-末端では2残基及び4残基少ない。別の改変が、エス・ソルファタリカスのPTEの構造において、2量体形成に含まれるさらなるループが存在することに関連する。
【0070】
2. 2量体界面
中温性PTEとちょうど同様に(Benningら, 1994; Jacksonら, 2005)、エス・ソルファタリカスのPTEは、ホモ2量体として結晶化する。2つの中温性PTEについて、単量体間の接触面積は、およそ1350Å2であり、62.5%が疎水性接触であり、界面にはおよそ25個の水素結合が存在する。エス・ソルファタリカスのPTEの構造において、2量体の形成に含まれるさらなるループが接触面を増大させる。2つの単量体は、よって、互いに貫通するようである。実際に、接触面積は、1720Å2である。この増大にもかかわらず、界面での水素結合の量は、同じ程度である(およそ20)。実際に、接触面におけるこの増大は、本質的に、さらなる疎水接触による。つまり、界面での疎水性の接触は、この2量体における全ての接触の68%である。
【0071】
さらに、2量体のコンホメーションは、中温性PTEのものと同一でない。2量体形成に含まれるさらなるループにより引き起こされるであろう第2単量体の相対的位置の明らかな移動がある。
【0072】
別の興味のある点は、タンパク質の溶媒への全体的な近づきやすさに関する。実際に、ピー・ディミニュータ、エー・ラジオバクター及びエス・ソルファタリカスの全てのこれらのPTEは、単量体に関して溶媒へほぼ同じ近づきやすさを有し(それぞれ13076.1Å2、12828.7Å2、13039.4Å2)、ほぼ同じ容積を有する(それぞれ42464.2Å3、44313.2Å3、43429.9Å3)。これとは対照的に、超熱安定性二量体は、中温性二量体(88800Å3)よりも小さい(86950Å3)。
【0073】
3. 静電位
Swiss-PdbViewerを用いる静電位分析により、エス・ソルファタリカスのPTEが高度に荷電されたタンパク質であることが明らかになる。実際に、構造は、タンパク質表面に位置する多くの電荷を表す39 Asp及びGlu、37 Lys及びArgを示す。この荷電残基の数が非常に多いことは、多数の電荷クラスタの存在の原因である。一方の面は主に負に荷電され、他方はむしろ正である。この特定の電荷分布は、タンパク質に非常に強い双極子モーメントを与える。さらに、2つの単量体間の境界は、均一に負に荷電される。このことは、非常に驚くべきことである。なぜなら、非相補的な電荷は、2つの単量体間の斥力エネルギーをむしろ増大させる傾向にあるからである。タンパク質の単一領域は低い電荷を有する。これは、疎水性ポケットであり、これが活性部位に相当する。これは、負電荷に囲まれる。
【0074】
4. イオン結合
この多数の電荷及び強い双極子モーメントにより誘導される結合エネルギーを打ち消すために、これらの荷電表面残基の半分が、塩橋に関わる。エス・ソルファタリカスのPTEは、中温性PTEの場合の15ユニットに比較して、単量体あたり25個の塩橋を有する。これらの塩橋の大部分は、タンパク質の表面に均一に位置する。他の超好熱性タンパク質について記載したことと同様に、この多数の塩橋は、タンパク質の表面で電荷の複雑なネットワークを形成する。
【0075】
5. 活性部位の説明
中温性PTEのように、エス・ソルファタリカスのPTEの活性部位は、βバレルのC-末端の端に位置する、2種の金属からなる中心からなる。これらの2つの金属カチオンは、触媒水分子及び修飾残基であるカルボキシル化リジンにより橋かけされる。酵素は、グルタメートよりもむしろカルボキシル化リジンを用いる。これはおそらく、窒素が有する電子対が非局在化でき、よってそれぞれの酸素が負電荷を有することが可能になり、2つの金属の4つの形式的な正電荷を打ち消すからであろう。これらの配位のために、4つのヒスチジン、及びアスパラギン酸(Asp 256)、及び別の水分子も関与する。最も隠蔽された金属(αとよばれる)は、His 22、His 24、Asp 256、Lys 137及び橋かけ水分子により配位結合された三方両錐体構造を採用する。溶媒に最も露出する金属(βとよばれる)は、His 170、His 199、Lys 137、橋かけ水分子及び別の水分子をリガンドとするゆがんだ三方両錐体構造を採用する。橋かけ水分子は、2つの金属から等距離(距離はおよそ2Å)にあり、Asp 256 (2.68Å)と水素結合する。エス・ソルファタリカスのPTEにおいて、金属中心、4つのヒスチジン、アスパラギン酸及びカルボキシル化リジンは保存され、PTEの他の既知の構造とよく重複する。2つの中温性PTEとの構造比較により、記載される部位によるホスホトリエステルの結合部位の同定が導かれる(Chen-Goodspeedら, 2001)。空隙での側鎖の化学的性質は、中温性PTEと比較して全体的に変わらず、このことはおそらく、エス・ソルファタリカスのPTEの活性部位でのホスホトリエステルの同様の結合を導く。
【0076】
折り畳みは、中温性PTEと全般的に似ているが、エス・ソルファタリカスのPTEの活性部位は、ペプチド骨格のわずかな修飾及び2つのチロシンの存在(Tyr 97及びTyr 99)により、かなりより狭い。さらに、活性部位の入り口にて、9残基のループが疎水性トンネルを創出し、これが活性部位につながる。このことは、中温性PTEの構造について記載されていない。
【0077】
C) 結論
1. 熱安定性
エス・ソルファタリカスのPTEは、非常に安定な酵素である。実際に、これは、パラオクソンに関して、非常に高温まで活性である。Meroneらは(2005)、さらに、技術的理由からその最大活性を見出していなかったが、95℃までは、活性は増加し続ける。このタンパク質の構造研究により、この著しく熱安定性の機構を説明することを可能にするいくつかの指標が示される。
【0078】
1.1 構造の短縮化
エス・ソルファタリカスPTEの構造は、中温性PTEと比較して、大きいループの欠失を示す(結果を参照)。これは、標準的な場合である。なぜなら、熱安定性タンパク質のループは、その中温性ホモログのものより非常にしばしばより短く(Vieille C., 1996)、このことが、天然立体構造を安定化するか、又は変性状態に対して差別化することを可能にするからである。この熱安定性構造において、鎖の2つの末端は短くされ、タンパク質のコアにより繋ぎ止められる。さらに、この緻密なコアを補強するために、これら2つの末端は、末端カルボン酸(Ser 314)とArg 2の側鎖とイオン性相互作用している。2つのプロリン残基(Pro 4及びPro 309)が、これらの末端をもう少し強固にしていることも注目される。N-末端とC-末端の間のこの型の相互安定化は、タンパク質の全体的な剛直性を増大させる因子であると考えられ、ティー・マリティマ(T. maritime)のホスホリボシルアントラニレートイソメラーゼについても記載されている。実際に、ペプチド骨格のループ及び末端の塩橋による安定化又はそれらの短縮化若しくは欠失による該ループ及び末端の柔軟性の低減は、タンパク質の安定性の全体的な増大に寄与する。
【0079】
1.2 二量体の会合
熱安定性二量体に含まれるさらなるループは、意義を有する。第1のものは、単量体の組み立てに関する。実際に、この二量体のコンホメーションは、標準的なTIM二量体のコンホメーションとは異なる。同様の事実は、TtxのTIM二量体について既に記載されている(Waldenら 2004)。
別の直接的な意義は、2つの単量体間の接触面の増大に関し、永続的な複合体についての極度の値を導く(Lo Conte L.ら, 1999) (結果を参照)。この相互作用の補強は、二量体形成が熱安定化の重要な手段であることを確実にする(Vieilleら, 2001)。この接触面の極度の疎水性(Lo Conte L.ら, 1999)は、疎水性接触が高温でより好ましいことに鑑みて、安定化に重要な因子であるはずである。
【0080】
二量体に含まれるこれらのさらなるループは、二量体の容積の改変も誘導する。実際に、この超熱安定性タンパク質の単量体は、中温性PTEの単量体とほぼ同じ容積を有する。一方、その二量体は、より小さい。このことは、このタンパク質についてそうであるのと同様に、表面/容積比の最小化が、内部誘引相互作用を増大させながら、好ましくない表面により誘導されるエネルギーを低減させることによりタンパク質の安定性を同時に増大させ得る(Sterner及びLiebl, 2001)という事実と矛盾しない。
この二量体の観察された補強は、超熱安定性タンパク質がそれらをオリゴマーに組織化する優先性と矛盾しない。このことは、TIMタンパク質についても記載されている(Waldenら, 2004)。
【0081】
1.3 配列の比較
この超熱安定性タンパク質の配列は、中温性PTEのものとは異なるアミノ酸組成を示す(Meroneら, 2005)。実際に、このエス・ソルファタリカスのタンパク質において、Gln、Asn、Thr及びSerのような非荷電極性アミノ酸の含量が低減している。実際に、これらの50個(全残基の15.9%)が熱安定性PTEに存在するが、ピー・ディミニュータ及びエー・ラジオバクターのPTEの配列には、それぞれ65個及び60個(全残基の18.3%及び19.7%)が存在する。この違いは、超好熱性タンパク質及び中温性タンパク質の間の典型的な値である(Sterner及びLiebl, 2001)。残基Gln及びAsnは脱アミノ化に供され、これは残基Thr及びSerにより触媒され得る(Wright, 1991)。このことは、Gln及びAsnが、タンパク質構造において、特に90℃に近づくか又は超える温度で鎖の切断を導き得るそれらの脱アミノ化の傾向のために弱い連結であることを意味する。これらの弱い連結は、これらの熱安定性タンパク質内で保護されているか又は除去されているようである。平均して、これらの弱点の中和は、統計学的分析が示すように(Szilagyi及びZavodszky, 2000)、超熱安定性配列内のこれらの残基の数の全体的な低減を導く。
【0082】
さらに、エス・ソルファタリカスのPTEの配列は、荷電アミノ酸の含量の増加を示す。これは、77個(全残基の24.5%)の荷電残基、Asp、Glu、Lys又はArgを含有するが、2つの中温性PTEは、69個を含有する(全残基のおよそ21%)。3次元構造は、これらの荷電残基の大部分が、タンパク質の表面上に位置することを示し、このことは、超熱安定性タンパク質についての以前の観察と矛盾しない(Szilagyi及びZavodszky, 2000)。これらの記載は、超好熱性生物と中温性生物との全ゲノムの比較により既に導き出されているように(Fukuchi及びNishikawa, 2001)、これらの型のタンパク質における荷電残基の割合と非荷電残基の割合との間の大きな違いを反映する。
【0083】
1.4 静電的相互作用
HBPLUSを用いる水素結合の合計数の分析は、中温性PTEと超熱安定性タンパク質との間の著しい違いを示さなかった。これとは対照的に、これらのタンパク質間の安定性の違いは、中温性タンパク質と比較してエス・ソルファタリカスのPTEについて観察される多数の塩橋に部分的によるはずである。塩橋はタンパク質の熱力学的安定性に貢献するので、これは、超好熱性タンパク質の構造における支配的な要素であると記載される(Sterner及びLiebl, 2001)。つまり、タンパク質の熱安定性の増大と並行して、これらの塩橋は、この構造で観察されるように、タンパク質の表面で通常は見出される電荷のネットワークに塩橋を配置する傾向にある(Vieille C., 1996)。イオン結合間の高レベルの協力は、孤立(isolated)イオン対の合計よりも熱安定性についてより効果的なようである。
【0084】
この多数の塩橋の存在及びネットワーク内でのそれらの配置は、エス・ソルファタリカスのPTEの驚異の熱安定性を説明するにはそれらだけでは充分でないようである。実際に、超好熱性TIMとそれらの中温性ホモログとの間の塩橋の数の増大は、TIM細菌であるサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritime)について記載されただけである。以前に記載された古細菌のTIMの全てが熱安定化の手段としてイオン結合を用いているわけではないことに鑑みて、このストラテジーは、熱安定性を達成するために唯一のものではないだろう。エス・ソルファタリカスのPTEは、我々が知る限り、その中温性ホモログよりも著しく多数の塩橋を有する最初の古細菌のTIMである。
【0085】
タンパク質は、安定性と柔軟性との間の微妙なバランスを特徴とする、それらの機能的状態を保存することにより極限条件に適合する。このバランスがいくつかの水素結合、塩橋、疎水性相互作用又はループの短縮化に基づくことに鑑みて、熱安定化は、タンパク質の種々の部位での多数のそして微細な改良を蓄積することにより明らかに達成される(Jaenicke, R. 1996)。周囲温度では、熱安定性酵素は、それらの中温性ホモログより柔軟性がより低いことも提案される。一方、2つの酵素は、その最適活性温度にて等しい柔軟性を示す。
【0086】
エス・ソルファタリカスのPTEの結晶学的構造は、その剛直性の増加が、その中温性ホモログと比較してのある数の特定の構造の違いを原因とすることを示す。その熱安定性を決定する、可能性のある因子は、柔軟性領域の欠失及び安定化;二量体の緻密化及び補強;並びに電荷のネットワークに部分的に配置されるイオン対の数の増大である。
【0087】
2. 活性部位
2.1 生物学的な関わり
いくつかのOP加水分解酵素が、単離され特徴決定されている。最もよく知られているものは、土壌細菌から元々単離されたPTEである。しかし、これらの酵素の天然の基質は、わからないままである。現在までに決定されている最も効率的な基質、すなわちパラオクソンの合成が1950年に最初に記載されたので、この活性の起源に関していくつかの議論がある。実際に、これは、基質の構造の近似性による活性であり得るか、又はこれらの酵素はこの短期間にわたってこれらの分子に対して特異的に進化できたはずである。
エス・ソルファタリカスのPTEに関して、このタンパク質がこれらの殺虫剤を特異的に加水分解するために進化したとは考えにくい。なぜなら、これらの分子は、この古細菌の生息場所にほとんど生じないからである。さらに、その環境(およそ90℃)は、これらの熱不安定性化合物の非常に迅速な自発分解を導くだろう。
【0088】
この酵素の構造は、活性部位に通じる疎水性トンネルも示す。比較的狭いこのトンネルは、N-アシルL-ホモセリンラクトンのような生理的基質の指標(indication)であり得る。さらに、このことは、リパーゼクラスターの中心でこの遺伝子が発見されたことと矛盾しない(Meroneら, 2005)。この型の疎水性トンネルの存在は、この型の基質について標準的であり、既に記載されている(Musayevら, 2005)。3つのプロリンに関わらず、トンネルの起源での9残基のループは、タンパク質の残りの部分よりもより柔軟であるようであり、48Å2の平均熱擾乱係数(thermal agitation factor)を有する。このことは、このループが基質の固定化に適合するように充分に柔軟であり、基質を正しく配置するように充分に剛性であることを示唆する。
【0089】
3次元構造は、活性部位の空隙内のシステイン残基の存在も明らかにする。このことは興味深い。なぜなら、この型の残基は、Met、Asn及びGlnとともに、超好熱性タンパク質についての熱不安定性アミノ酸であると考えられるからである。一般に、これらの数は、この研究においてAsn及びGlnについて記載されるように、これらタンパク質では大きく低減される(Sterner及びLiebl, 2001)。Cys 258は、溶媒に非常に近づきやすい。結晶構造は、この残基の特定の活性化を示さない。しかし、このシステインの反応性を知ることは、この酵素の生理的役割を確立するために有用であろう。
【0090】
2.2 提案される新規な機構
Aubertら(2004)により示唆された機構に基づいて、我々は、この超好熱性PTEについて、以前に記載されたプロトン移動に関与しない、活性超好熱性PTEについての新規な機構を提案する。
2つの金属を有する中心は、リン−酸素結合を分極することにより、求核性攻撃のために基質を活性化するのに用いられる。リンの酸素はβ金属に結合し、これは、リン中心の求電子性の特徴を増大させ、水酸化物イオンの求核性攻撃を促進する。実際に、リンが有する酸素のβ金属への結合は、水分子の反応性を、水分子のβ金属に対する相互作用を弱めることにより、増大できるはずである。
基質がこの2金属中心と錯体を形成する場合、水酸化物イオンは、SN2型の機構によりリン中心を攻撃し、このことは、2つの金属を橋かけする5価の中間体の形成を引き起こす。リンの酸素上で生じる負電荷は、金属、特にβ金属との相互作用により安定化される。この酸素の電子対は、リン−酸素結合を折り重ね、脱離基の脱離を可能にする。2つの金属を橋かけするリン含有生成物は、溶媒の新しい水分子により活性部位から退去する。このリン含有分子は、そのpKaを介して溶媒分子により脱プロトン化される。Aubertら(2004)は、ピー・ディミニュータのPTEの機構におけるプロトン移動の存在を示唆する。簡単に、この機構では、Asp 301は、5価の中間体のプロトンをとると仮定される。プロトンは、次いで、His 254及びAsp 233の助けを用いて活性部位から退去する。このことが、エス・ソルファタリカスのPTEについて生じるとは考えられない。なぜなら、His 254に相当する残基がアルギニンだからである。このアルギニンは、そのNεを介してAsp 256と相互作用し、このことは、エス・ソルファタリカスのPTEの機構においていずれのプロトン移動もより困難にする。
この新規な機構は、実際に、特徴決定される全てのPTEについて一般的である。ある指標は、実際に、Aubertらの機構に矛盾する。エー・ラジオバクターのPTEは、非常に活性な酵素であり、この位置にアルギニンも有する。さらに、ピー・ディミニュータのPTEに対して行った突然変異誘発は、われわれの仮定を確かにする。H254R及びH254G変異は、酵素の触媒パラメータに対して劇的な効果を示さない(Grimsleyら, 2005; Hillら, 2003)。
【0091】
他の矛盾も注目できる。ピー・ディミニュータのPTEにおいて、Asp 301はα金属と非常に近い相互作用にある。静電的観点から、このことは、この負に荷電された残基がプロトン化される必要がないことを意味する。さらに、His 254のイミダゾールの2つの窒素は、負に荷電された残基と水素結合にある(Asp 301及びAsp 233)。このことによる効果は、このヒスチジンのpKaを増大させることであるはずであり、このことはイミダゾリウム形に好ましく、この残基が、このプロトン移動で提案される酸/塩基触媒作用を行うために最良の環境にないことを示唆する。
【0092】
結論として、この構造の分析により、この酵素の驚異の熱安定性を説明する要素を見出すことができた。さらに、この構造の分析及び重要な書誌的研究により、全てのPTEについての新規な全般的作用機構を提案することができた。
最後に、これらの全ての分析は、以下に記載されるプロトコルに従う生体触媒の迅速な開発を可能にする。
【0093】
II) 配列番号3の配列に相当するスルフォロバス・ソルファタリカスの超好熱性PTEに由来する、本発明によるラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼの調製方法
945塩基対(bp)を有する合成遺伝子Ssopoxを調製するために、14個のオリゴヌクレオチド(7センス及び7アンチセンス)を用いた。Ssopoxは、配列番号3の配列に相当するスルフォロバス・ソルファタリカスの超好熱性PTEに由来する、本発明によるラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼをコードし、以下の4つの変異:
- 97位のチロシンYのトリプトファンWによる置換、
- 99位のチロシンYのフェニルアラニンFによる置換、
- 223位のアルギニンRのヒスチジンHによる置換、
- 258位のシステインCのロイシンLによる置換
の少なくとも1つと、適切であれば、以下の変異:
- 27位のバリンVのアラニンAによる置換、
- 67位のプロリンPのバリンVによる置換、
- 68位のスレオニンTのセリンSによる置換、
- 72位のロイシンLのイソロイシンIによる置換、
- 141位のアスパラギン酸DのスレオニンTによる置換、
- 225位のグリシンGのプロリンPによる置換、
- 226位のロイシンLのヒスチジンHによる置換、
- 229位のフェニルアラニンFのセリンSによる置換、
- 263位のトリプトファンWのアラニンAによる置換、
- 278位のトリプトファンWのイソロイシンIによる置換
の少なくとも1つを含む。オリゴヌクレオチドのサイズはおよそ90 pbであり、各プライマーは、27 pbのオーバーラップ領域で次のものと重なる。当該オリゴヌクレオチド配列は、5'から3'方向に、次のとおりである。
【0094】
【表2】

【0095】
タンパク質中の変異を行うために選択されたヌクレオチドを太字で示し、重複領域に下線を付す。オリゴヌクレオチド1for及び14revも、それぞれの遺伝子のN-末端及びC-末端配列にNdeI及びEcoRI制限部位を挿入するように構築した。
オリゴヌクレオチドは、Sambrook (Sambrook J.及びRussell D. W. 2001 "Molecular Cloning: a laboratory manual")に記載される方法に従って、アクリルアミドゲル電気泳動(10%)により精製した。
【0096】
遺伝子の再構築方法は、本質的に4段階を含む。最初の段階において、オリゴヌクレオチドの連続する対(例えば1forと2rev)を(200 nMの最終濃度で) PCRチューブ中でポリメラーゼ1×DeepVentバッファー(NEB)、6 mM MgSO4、200 uM dNTP及び1 UのPolymerase DeepVentと混合し、およそ160 pbのフラグメントを得るためにサーマルサイクル装置に入れる(サイクル:95℃にて10分、68℃にて1分、72℃にて10分)。得られたフラグメントを混合し(20 nMの濃度で)、次いで、DnアーゼI (0.0013 U)を用いて、30秒〜1.5分間、周囲温度にて消化する。DnアーゼI反応は、95℃にて10分間のサーマル不活性化により停止させる。第3段階又は組み立て段階は、DnアーゼIの消化後に得られたフラグメントを組み合わせ、外的オリゴを付加することなく全Ssopox遺伝子を再構築するためのPCR (95℃にて1分、50℃にて30秒、72℃にて30秒、55回)である。
最後の段階又は増幅段階において、外的オリゴヌクレオチド(5'センス及び3'アンチセンスssopox; Meroneら, 2005)を、遺伝子全体を増幅するために(PCRサイクル:95℃にて1分、50℃にて30秒、72℃にて30秒)、1μMの最終濃度で混合物に加える。
およそ950 pbのフラグメントは、1%アガロースゲルに一定量を流すことにより検出できる。DNAを精製し、配列決定のためにプラスミドにクローニングする。
【0097】
【表3】

【0098】
【表4】

【0099】
【表5】

【0100】
【表6】

【0101】
【表7】

【0102】
【表8】

【0103】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のコンセンサス配列に相当する超好熱性ホスホトリエステラーゼ(PTE)に由来し、かつ任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号1の:
- 98位のチロシンY、
- 100位のチロシンY、
- 224位のアルギニンR、
- 259位のシステインC
の置換の4つの変異の少なくとも1つを含む、ラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ(PTE)であって、それが由来する非変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ(PTE)のものよりも大きい活性を有するラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性PTE。
【請求項2】
配列番号3の配列に相当するスルフォロバス・ソルファタリカスの超好熱性PTE、又は配列番号5の配列に相当するスルフォロバス・アシドカルダリウスの超好熱性PTEに由来し、前記配列番号3及び配列番号5の配列は、コンセンサス配列である配列番号1に属し、配列番号1の2位のアミノ酸は、配列番号3には存在しない、請求項1に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項3】
任意の他の天然又は非天然のアミノ酸による配列番号1の:
- 98位のチロシンY、
- 100位のチロシンY、
- 224位のアルギニンR、
- 259位のシステインC
の置換の4つの変異を少なくとも含む、請求項1又は2に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項4】
任意の他の天然又は非天然のアミノ酸による配列番号1の:
- 28位のバリンV、
- 68位のプロリンP、
- 69位のスレオニンT、
- 73位のロイシンL、
- 142位のアスパラギン酸D、
- 226位のグリシンG、
- 227位のロイシンL、
- 230位のフェニルアラニンF、
- 264位のトリプトファンW、
- 279位のトリプトファンW
の置換の変異の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項5】
任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号1の:
- 28位のバリンV、
- 73位のロイシンL、
- 142位のアスパラギン酸D、
- 226位のグリシンG、
- 227位のロイシンL
の置換の5つの変異を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項6】
任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号1の:
- 68位のプロリンP、
- 69位のスレオニンT、
- 230位のフェニルアラニンF、
- 264位のトリプトファンW、
- 279位のトリプトファンW
の置換の5つの変異を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項7】
- 98位のチロシンYのトリプトファンWによる置換、
- 100位のチロシンYのフェニルアラニンFによる置換、
- 224位のアルギニンRのヒスチジンHによる置換、
- 259位のシステインCのロイシンLによる置換
の4つの変異の少なくとも1つと、もし適切であれば:
- 28位のバリンVのアラニンAによる置換、
- 68位のプロリンPのバリンVによる置換、
- 69位のスレオニンTのセリンSによる置換、
- 73位のロイシンLのイソロイシンIによる置換、
- 142位のアスパラギン酸DのスレオニンTによる置換、
- 226位のグリシンGのプロリンPによる置換、
- 227位のロイシンLのヒスチジンHによる置換、
- 230位のフェニルアラニンFのセリンSによる置換、
- 264位のトリプトファンWのアラニンAによる置換、
- 279位のトリプトファンWのイソロイシンIによる置換
の変異の少なくとも1つとを含むことを特徴とする、配列番号1のコンセンサス配列に相当する超好熱性PTEに由来する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項8】
配列番号3の配列に相当するスルフォロバス・ソルファタリカスの超好熱性PTEに由来し、任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号3の:
- 97位のチロシンY、
- 99位のチロシンY、
- 223位のアルギニンR、
- 258位のシステインC
の置換の4つの変異の少なくとも1つを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項9】
任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号3の:
- 97位のチロシンY、
- 99位のチロシンY、
- 223位のアルギニンR、
- 258位のシステインC
の置換の4つの変異を少なくとも含む、請求項8に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項10】
任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号3の:
- 27位のバリンV、
- 67位のプロリンP、
- 68位のスレオニンT、
- 72位のロイシンL、
- 141位のアスパラギン酸D、
- 225位のグリシンG、
- 226位のロイシンL、
- 229位のフェニルアラニンF、
- 263位のトリプトファンW、
- 278位のトリプトファンW
の置換の変異の少なくとも1つも含むことを特徴とする、請求項8又は9に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項11】
任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号3の:
- 27位のバリンV、
- 72位のロイシンL、
- 141位のアスパラギン酸D、
- 225位のグリシンG、
- 226位のロイシンL
の置換の5つの変異を含むことを特徴とする、請求項8〜10のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項12】
任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号3の:
- 67位のプロリンP、
- 68位のスレオニンT、
- 229位のフェニルアラニンF、
- 263位のトリプトファンW、
- 278位のトリプトファンW
の置換の5つの変異を含むことを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項13】
- 97位のチロシンYのトリプトファンWによる置換、
- 99位のチロシンYのフェニルアラニンFによる置換、
- 223位のアルギニンRのヒスチジンHによる置換、
- 258位のシステインCのロイシンLによる置換
の4つの変異の少なくとも1つと、もし適切であれば:
- 27位のバリンVのアラニンAによる置換、
- 67位のプロリンPのバリンVによる置換、
- 68位のスレオニンTのセリンSによる置換、
- 72位のロイシンLのイソロイシンIによる置換、
- 141位のアスパラギン酸DのスレオニンTによる置換、
- 225位のグリシンGのプロリンPによる置換、
- 226位のロイシンLのヒスチジンHによる置換、
- 229位のフェニルアラニンFのセリンSによる置換、
- 263位のトリプトファンWのアラニンAによる置換、
- 278位のトリプトファンWのイソロイシンIによる置換
の変異の少なくとも1つとを含むことを特徴とする、請求項8〜12のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項14】
以下の配列:
- 以下の4つの変異:
* 97位のチロシンYのトリプトファンWによる置換、
* 99位のチロシンYのフェニルアラニンFによる置換、
* 223位のアルギニンRのヒスチジンHによる置換、
* 258位のシステインCのロイシンLによる置換
を含む配列番号3の配列に相当する配列番号7、
- 以下の5つの変異:
* 27位のバリンVのアラニンAによる置換、
* 72位のロイシンLのイソロイシンIによる置換、
* 141位のアスパラギン酸DのスレオニンTによる置換、
* 225位のグリシンGのプロリンPによる置換、
* 226位のロイシンLのヒスチジンHによる置換
をさらに含む配列番号7の配列に相当する配列番号9、
- 以下の5つの変異:
* 67位のプロリンPのバリンVによる置換、
* 68位のスレオニンTのセリンSによる置換、
* 229位のフェニルアラニンFのセリンSによる置換、
* 263位のトリプトファンWのアラニンAによる置換、
* 278位のトリプトファンWのイソロイシンIによる置換
をさらに含む配列番号9の配列に相当する配列番号11
に相当することを特徴とする、請求項8〜13のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項15】
配列番号3中の位置が以下に記載されるとおりである以下のアミノ酸対のアミノ酸の少なくとも1つの、他の天然又は非天然アミノ酸による置換に相当する少なくとも1つの変異を含むことを特徴とする、配列番号8〜14のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ:2R/314S、14K/12E、26R/75D、26R/42E、33R/42E、33R/45E、55R/52E、55R/285E、74R/121D、81K/42E、81K/43D、84K/80E、109R/113E、123K/162E、147K/148D、151K/148D、154R/150E、154R/187E、154R/188E、161K/188E、183R/150E、183R/187E、183R/180E、210K/245D、215K/214D、223R/256D、223R/202D、234K/204D、235R/202D、241R/245D、245D/244K、250K/249D、277R/286D、292K/298E、310K/307E。
【請求項16】
配列番号5の配列に相当するスルフォロバス・アシドカルダリウスの超好熱性PTEに由来し、任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号5の:
- 98位のチロシンY、
- 100位のチロシンY、
- 224位のアルギニンR、
- 259位のシステインC
の置換の4つの変異の少なくとも1つを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項17】
任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号5の:
- 98位のチロシンY、
- 100位のチロシンY、
- 224位のアルギニンR、
- 259位のシステインC
の置換の4つの変異を少なくとも含む、請求項16に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項18】
任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号5の:
- 28位のバリンV、
- 68位のプロリンP、
- 69位のスレオニンT、
- 73位のロイシンL、
- 142位のアスパラギン酸D、
- 226位のグリシンG、
- 227位のロイシンL、
- 230位のフェニルアラニンF、
- 264位のトリプトファンW、
- 279位のトリプトファンW
の置換の変異の少なくとも1つも含むことを特徴とする、請求項16又は17に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項19】
任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号5の:
- 28位のバリンV、
- 73位のロイシンL、
- 142位のアスパラギン酸D、
- 226位のグリシンG、
- 227位のロイシンL
の置換の5つの変異を含むことを特徴とする、請求項16〜18のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項20】
任意の他の天然又は非天然アミノ酸による配列番号5の:
- 68位のプロリンP、
- 69位のスレオニンT、
- 230位のフェニルアラニンF、
- 264位のトリプトファンW、
- 279位のトリプトファンW
の置換の5つの変異を含むことを特徴とする、請求項16〜19のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項21】
- 98位のチロシンYのトリプトファンWによる置換、
- 100位のチロシンYのフェニルアラニンFによる置換、
- 224位のアルギニンRのヒスチジンHによる置換、
- 259位のシステインCのロイシンLによる置換
の4つの変異の少なくとも1つと、もし適切であれば、
- 28位のバリンVのアラニンAによる置換、
- 68位のプロリンPのバリンVによる置換、
- 69位のスレオニンTのセリンSによる置換、
- 73位のロイシンLのイソロイシンIによる置換、
- 142位のアスパラギン酸DのスレオニンTによる置換、
- 226位のグリシンGのプロリンPによる置換、
- 227位のロイシンLのヒスチジンHによる置換、
- 230位のフェニルアラニンFのセリンSによる置換、
- 264位のトリプトファンWのアラニンAによる置換、
- 279位のトリプトファンWのイソロイシンIによる置換
の変異の少なくとも1つとを含むことを特徴とする、請求項16〜20のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項22】
以下の配列:
- 以下の4つの変異:
* 98位のチロシンYのトリプトファンWによる置換、
* 100位のチロシンYのフェニルアラニンFよる置換、
* 224位のアルギニンRのヒスチジンHによる置換、
* 259位のシステインCのロイシンLによる置換
を含む配列番号5の配列に相当する配列番号13、
- 以下の5つの変異:
* 28位のバリンVのアラニンAによる置換、
* 73位のロイシンLのイソロイシンIによる置換、
* 142位のアスパラギン酸DのスレオニンTによる置換、
* 226位のグリシンGのプロリンPによる置換、
* 227位のロイシンLのヒスチジンHによる置換
をさらに含む配列番号13の配列に相当する配列番号15、
- 以下の5つの変異
* 68位のプロリンPのバリンVによる置換、
* 69位のスレオニンTのセリンSによる置換、
* 230位のフェニルアラニンFのセリンSによる置換、
* 264位のトリプトファンWのアラニンAによる置換、
* 279位のトリプトファンWのイソロイシンIによる置換
をさらに含む配列番号15の配列に相当する配列番号17
に相当することを特徴とする、請求項16〜21のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項23】
ラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼの活性化温度が、塩橋に含まれるアミノ酸が改変されていないラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼの活性化温度と比較して低減されるように、塩橋に含まれるアミノ酸の少なくとも1つが置換又は欠失により改変されている、請求項1〜22のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼをコードするヌクレオチド配列。
【請求項25】
請求項24に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼをコードするヌクレオチド配列を含むベクター、特にプラスミド。
【請求項26】
請求項25に記載のベクターを用いて形質転換された宿主細胞、特に細菌。
【請求項27】
請求項1〜23のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼと結合したか、又は請求項1〜23のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼが表面にグラフトされている宿主細胞、特に細菌。
【請求項28】
病原体に対して耐性がある、請求項25で定義されるベクターを用いて形質転換されたトランスジェニック生物、特に哺乳動物。
【請求項29】
請求項1〜23のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ、又は請求項26若しくは27に記載の宿主細胞の、有機リン化合物若しくは細菌で汚染された物体、皮膚又は粘膜の表面の除染に関連するか、或いは
外部の汚染又は有機リン化合物の摂取若しくは吸入による内部の中毒の予防又は治療に関連して用いることができる医薬品の製造に関連するか、或いは
細菌感染の予防若しくは治療に関連して用いることができる医薬品の製造に関連するか、或いは
有機リン化合物で汚染された水の汚染管理に関連するか、或いは
神経毒性剤のストックの分解に関連する
バイオスカベンジャーとしての使用。
【請求項30】
液体又は固体の形態の、請求項1〜23のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼを含浸させた、手袋、種々の衣類、ふき取り布、スプレー泡のような物体。
【請求項31】
請求項1〜23のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼ、又は請求項29に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼを含浸させた物体を含むことを特徴とする、有機リン化合物で汚染された物体、皮膚又は粘膜の表面を除染するため、又は有機リン化合物で汚染された水の汚染管理のためのキット。
【請求項32】
請求項1〜23のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼを含む有機リン化合物のスカベンジャー。
【請求項33】
請求項1〜23のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼが内部にグラフトされた、外部除染用のカートリッジ。
【請求項34】
請求項1〜23のいずれか1項に記載のラクトナーゼ活性を有する変異超好熱性ホスホトリエステラーゼを、医薬的に許容されるビヒクルと組み合わせて含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項35】
特に溶液又はパッケージされたか若しくはPEG化された、注入可能な経路により投与できるか、又は特に軟膏、エアゾール若しくはふき取り布の形態の局所経路により投与できる形態にあることを特徴とする、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項36】
請求項30に記載の含浸させた物体、請求項33に記載の外部の除染のためのカートリッジの、表面細菌感染の除染のための消毒剤としての使用。
【請求項37】
特に血液中の細菌感染の治療のための請求項34又は35に記載の医薬組成物の使用。

【公表番号】特表2010−525801(P2010−525801A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504790(P2010−504790)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000596
【国際公開番号】WO2008/145865
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(509296214)ユニベルシテ アンリ ポアンカレ ナンシー 1 (3)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE HENRI POINCARE NANCY 1
【住所又は居所原語表記】24−30, rue du Lionnois, BP 60120, F−54003 Nancy Cedex, France
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【Fターム(参考)】