説明

変異ILV5遺伝子及びその用途

本発明は変異アセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ遺伝子(変異ILV5遺伝子)及びその用途に関し、特に、優れた風味を有する酒類製造のための醸造酵母、該酵母を用いて製造した酒類、その製造方法などに関する。本発明の酒類の製造方法によれば、製品中の異風味に関与するVDK、特にDAの生成量の低減により、優れた風味を有する酒類を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変異アセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ遺伝子(変異ILV5遺伝子)及びその用途に関し、特に、優れた風味を有する酒類製造のための醸造酵母、該酵母を用いて製造した酒類、その製造方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
ラガービール醸造は、エタノール及び風味化合物を生成させる一次発酵、及びビール風味物質を熟成させる二次発酵(又は貯蔵期間)の2つの発酵段階からなる。一次発酵中、酵母細胞は、それぞれイソロイシン及びバリン合成の中間体であるα-アセト-α-ヒドロキシ酪酸及びα-アセト乳酸を生成する。これらのアセトヒドロキシ酸の一部は細胞外に拡散し、ビール中の非酵素的な酸化的脱炭酸により2つのビシナルジケトン(VDK)、2,3-ペンタンジオン及びジアセチルにそれぞれ変わる(図1参照)。VDKはバターのような不快な風味をもたらし、2,3-ペンタンジオン及びジアセチルの閾値はそれぞれ0.9及び0.15mg/Lである(非特許文献1:Meilgaard 1975、引用文献の詳細は明細書の最後に記載する)。
【0003】
α-アセト乳酸の自発的な脱炭酸はジアセチル生成の律速段階である。VDK量は貯蔵期間中に許容レベルまで低減する。ビール熟成に必要な時間の短縮は、VDK生成量の少ない醸造酵母菌株の使用によって達成することができる。アセトヒドロキシ酸シンターゼ(Ilv2p/Ilv6p)、アセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ(Ilv5p)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(Ilv3p)、及び分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(Bat1p)/トランスアミナーゼ(Bat2p)は、イソロイシン及びバリン合成の2つの同種の反応を触媒する。
【0004】
VDK生成量の少ない酵母菌株を構築するために、アセトヒドロキシ酸シンターゼの不活性化及びアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ活性の強化という異なる2つのアプローチがある。アセトヒドロキシ酸シンターゼの触媒サブユニットをコードするILV2遺伝子のアンチセンスRNAによる負の制御は、酵素活性を80%超減少させ、その結果発酵中間点のジアセチル量を40%低減させる(非特許文献2:Vakeria et al. 1991)。
【0005】
一方、アセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼをコードするILV5遺伝子の数はVDK生成に大きな影響を与える。ILV5を有するマルチコピーベクターで形質転換した酵母細胞は、対照菌株と比較して、レダクトイソメラーゼ活性の5〜10倍の増加を示し、同時に50〜60%のジアセチル生成の減少を示す(非特許文献3:Dillemans et al. 1987;非特許文献4:Gjermansen et al. 1988)。イソロイシン及びバリンの合成に関与する酵素はミトコンドリアマトリクス中に局在することが知られている(非特許文献5:Ryan及びKohlhaw 1974)。ミトコンドリアは2つの水性区画(膜間及びマトリクス)、及び2つの膜(外膜及び内膜)からなる(非特許文献6:Wiedemann et al. 2003;非特許文献7:Koehler 2004)。
【0006】
ミトコンドリアは、ミトコンドリアDNAによってコードされる安定なタンパク質を8種しか合成しないため、1000種に至るミトコンドリアタンパク質の大部分は、核ゲノムによってコードされ、細胞質中の遊離型リボソームで前駆体タンパク質として合成された後、TOM及びTIM(それぞれミトコンドリア外膜及び内膜のトランスロカーゼ(非特許文献8:Endo et al. 2003;非特許文献9:Truscot et al. 2003))として知られるタンパク質集合体によってミトコンドリア膜内へ又は膜を通って輸送される。Ilv2p及びIlv5pは、細胞質中で前駆体タンパク質として合成された後、TOM及びTIM23トランスロカーゼによってミトコンドリアマトリクス中に取り込まれる。
【0007】
N末端プレ配列は、ミトコンドリアマトリクスへ移動する際にミトコンドリアの特異的プロセシングペプチダーゼによって切断される(非特許文献10:Gakh et al. 2002)。N末端の47残基がIlv5p切断可能プレ配列として同定されている(非特許文献11:Kassow 1992)。Kassowは、輸送ペプチドをコードする領域に欠失のあるILV5遺伝子を構築し、その構築物がジアセチル生成量に影響を与えるようであると述べている。
【0008】
典型的なミトコンドリア標的プレ配列によく見られるように、Ilv5pプレ配列は正電荷に富んでおり、切断部位から−(マイナス)2位の位置にアルギニンが存在している(非特許文献12:von Heijne et al. 1989; 非特許文献10:Gakh et al. 2002)。Ilv5pは、ミトコンドリアDNAの安定性並びに分岐鎖アミノ酸の生合成において作用する二機能性タンパク質として知られる(非特許文献13:Zelenaya-Troitskaya et al. 1995)。ミトコンドリアDNAはタンパク質-DNA複合体(ヌクレオイド)として受け継がれる。他の要因と合わせて、Ilv5pは、アミノ酸欠乏に応じてミトコンドリアDNAを個々のヌクレオイドにパージング(parsing)することによってミトコンドリアDNAとヌクレオイドの化学量論を維持している(非特許文献14:MacAlpine et al. 2000)。Ilv5pの分岐鎖アミノ酸合成における酵素機能及びミトコンドリアDNA安定性に対する機能は、変異によるアプローチによって区別することができる(非特許文献15:Bateman et al. 2002)。酵素の変異は、基質及び補因子結合に重要な保存された内部ドメインに位置し、一方、ミトコンドリアDNA安定性に対する機能に関する変異は、Ilv5p表面のC末端領域に位置している。呼吸欠損(rho-)酵母は多量のVDKを生成することが知られている(非特許文献16:Ernandes et al. 1993)。このことから、これは酵母が「異常」(rho-)である場合にアセトヒドロキシ酸シンターゼ(Ilv2p)がミトコンドリア中に適切に局在せず、むしろ細胞質中に局在する傾向があり、そこで細胞質のピルビン酸塩からα-アセト乳酸が容易に生成されるためであるという仮説が導かれる。
【0009】
この考えに基づき、細胞質で生成されたα-アセト乳酸を代謝するために細胞質Ilv5pの発現が研究されてきた(非特許文献11:Kassow 1992)。N末端の47残基を有さない細胞質Ilv5pは、ilv5Δ株においてイソロイシン要求性を補完するがバリン要求性を補完せず、N末端欠失型Ilv5pのごく一部がイソロイシン合成を支援するミトコンドリア中になお局在していることを示唆している。
【非特許文献1】Meilgaard MC (1975), Tech Q Master Brew Assoc Am 12:151-168
【非特許文献2】Vakeria D, Box WG, Hinchliffe E (1991), In: Proceedings of the "European Brewery Convention the 23rd congress", 12-16 May, Lisbon, Portugal
【非特許文献3】Dillemans M, Goossens E, Goffin O, Masschelein CA (1987), J Am Soc Brew Chem 45:81-84
【非特許文献4】Gjermansen C, Nilsson-Tillgren T, Petersen JGL, Kielland-Brandt MC, Sigsgaard P, Holmberg S (1988), J Basic Microbiol 28:175-183
【非特許文献5】Ryan ED, Kohlhaw GB (1974), J Bacteriol 120:631-637
【非特許文献6】Wiedemann N, Kozjak V, Chacinska A, Schoenfisch B, Rospert S, Ryan MT, Pfanner N, Meisinger C (2003), Nature 424:565-571
【非特許文献7】Koehler CM (2004), Annu Rev Cell Dev Biol 20:309-335
【非特許文献8】Endo T, Yamamoto H, Esaki M (2003), J Cell Sci 116:3259-3267
【非特許文献9】Truscott KN, Brandner K, Pfanner N (2003), Curr Biol 13:R326-R337
【非特許文献10】Gakh O, Cavadini P, Isaya G (2002), Biochim Biophys Acta 1592:63-77
【非特許文献11】Kassow A (1992), Metabolic effects of deleting the region encoding the transit peptide in Saccharomyces cerevisiae ILV5. PhD thesis, University of Copenhagen
【非特許文献12】von Heijne G, Steppuhn J, Herrmann RG (1989), Eur J Biochem 180:535-545
【非特許文献13】Zelenaya-Troitskaya O, Perlman PS, Butow RA (1995), EMBO J 14:3268-3276
【非特許文献14】MacAlpine DM, Perlman PS, Butow RA (2000) , EMBO J 19:767-775
【非特許文献15】Bateman JM, Perlman PS, Butow RA (2002), Genetics 161:1043-1052
【非特許文献16】Ernandes JR, Williams JW, Russell I, Stewart GG (1993) Respiratory deficiency in brewing yeast strains: Effects on fermentation, flocculation, and beer flavor components. J Am Soc Brew Chem 51:16-20
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した状況において、VDK(ビシナルジケトン)、特にDA(ジアセチル)の生成を低減させることが可能な酒類の製造方法を開発することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ラガービール酵母におけるN末端に46残基の欠失を有する細胞質Ilv5pの発現が、結果として得られるビールの質を大きく変化させることなくVDK生成を減少させるのに効果的であることを見出した。
【0012】
すなわち本発明は、特定の変異ILV5遺伝子、該遺伝子がコードするタンパク質、該遺伝子の発現が調節された形質転換酵母、該遺伝子の発現が調節された酵母を用いることによる製品中のVDK量、特にDA量の制御方法などに関する。本発明は、具体的には、次に示すポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含有するベクター、該ベクターが導入された形質転換酵母、該形質転換酵母を用いる酒類の製造方法などを提供する。
(1)以下の(a)〜(c)からなる群より選択されるポリヌクレオチド
(a)配列番号:1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
(b)配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;及び
(c)付加及び/又は欠失がN末端に起こらないという条件で、1〜15個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加した配列番号:2のアミノ酸配列からなり、かつアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(2)以下の(d)からなる群より選択される上記(1)に記載のポリヌクレオチド:
(d)配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするか、又は1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加した配列番号:2のアミノ酸配列をコードし、かつアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(3)配列番号:1からなる上記(1)に記載のポリヌクレオチド。
(4)配列番号:2からなるタンパク質をコードする上記(1)に記載のポリヌクレオチド。
(5)DNAである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリヌクレオチドにコードされるタンパク質。
(7)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有するベクター。
(7a)以下の(x)〜(z)の構成要素を含む発現カセットを含む上記(7)に記載のベクター:
(x)酵母細胞内で転写可能なプロモーター;
(y)該プロモーターにセンス方向又はアンチセンス方向で結合した、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリヌクレオチド;及び
(z)RNA分子の転写終結及びポリアデニル化に関して酵母内で機能できるシグナル。
(8)上記(7)に記載のベクターが導入された酵母。
(9)全ビシナルジケトン生成能又は全ジアセチル生成能が上記(7)に記載のベクターを導入することによって低減した上記(8)に記載の酵母。
(10)全ビシナルジケトン生成能又は全ジアセチル生成能が、上記(6)に記載のタンパク質の発現量を増加させることによって低減した上記(8)に記載の酵母。
(11)上記(8)〜(10)のいずれかに記載の酵母を用いた酒類の製造方法。
(12)醸造する酒類が麦芽飲料である上記(11)に記載の酒類の製造方法。
(13)醸造する酒類がワインである上記(11)に記載の酒類の製造方法。
(14)上記(11)〜(13)のいずれかに記載の方法で製造された酒類。
(15)配列番号:1のヌクレオチド配列を有するアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列に基づいて設計したプライマー又はプローブを用いて、被検酵母の全ビシナルジケトン生成能又は全ジアセチル生成能について評価する方法。
(15a)上記(15)に記載の方法によって、全ビシナルジケトン生成能又は全ジアセチル生成能の低減した酵母を選別する方法。
(15b)上記(15a)に記載の方法によって選別された酵母を用いて酒類(例えば、ビール)を製造する方法。
(16)被検酵母を培養し、配列番号:1のヌクレオチド配列を有するアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ遺伝子の発現量を測定することによって、被検酵母の全ビシナルジケトン生成能又は全ジアセチル生成能を評価する方法。
(16a)上記(16)に記載の方法で、被検酵母を評価し、アセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ遺伝子の発現量が高い酵母を選別する、全ビシナルジケトン生成能又は全ジアセチル生成能の低減した酵母の選択方法。
(16b)上記(16a)に記載の方法によって選別された酵母を用いて酒類(例えば、ビール)を製造する方法。
(17)被検酵母を培養して、上記(6)に記載のタンパク質を定量又は配列番号:1のヌクレオチド配列を有するアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ遺伝子の発現量を測定し、ターゲットとする全ビシナルジケトン生成能又は全ジアセチル生成能に応じた前記タンパク質量又は前記遺伝子発現量の被検酵母を選択する、酵母の選択方法。
(17a)被検酵母を培養して、全ビシナルジケトン生成能又は全ジアセチル生成能又はアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ活性を定量し、ターゲットとする全ビシナルジケトン生成能又は全ジアセチル生成能又はアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ活性を有する被検酵母を選択する、酵母の選択方法。
(18)基準酵母及び被検酵母を培養して各酵母における配列番号:1のヌクレオチド配列を有するアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ遺伝子の発現量を測定し、基準酵母よりも該遺伝子が高発現である被検酵母を選択する、上記(17)に記載の酵母の選択方法。
(19)基準酵母及び被検酵母を培養して各酵母における上記(6)に記載のタンパク質を定量し、基準酵母よりも該タンパク質量の多い被検酵母を選択する、上記(17)に記載の酵母の選択方法。
(20)上記(8)〜(10)に記載の酵母又は上記(17)〜(19)に記載の方法により選択された酵母のいずれかの酵母を用いて酒類製造のための発酵を行い、全ビシナルジケトン生成量又は全ジアセチル生成量を低減させることを特徴とする、酒類の製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ビシナルジケトン(VDK)は、バターのようなビールの異風味の原因であり、α-アセト-α-ヒドロキシ酪酸及びα-アセト乳酸の非酵素的な酸化的脱炭酸により形成され、α-アセト-α-ヒドロキシ酪酸及びα-アセト乳酸は、ミトコンドリア中で起こるイソロイシン及びバリンの生合成において生成される中間体である。ILV2及びILV6遺伝子にコードされる、関与するアセトヒドロキシ酸シンターゼの誤局在が原因で、α-アセト乳酸の一部は細胞質においても形成される場合があるという想定のもとに、細胞質で形成されたα-アセト乳酸を代謝するためにアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ(Ilv5p)の細胞質中での機能発現が検討され、それによって全VDK生成量は減少した。様々なN末端欠失を有する変異Ilv5p酵素のうちで、46残基の欠失を有する酵素(Ilv5pΔ46)は、細胞質中に明確な局在を示したことがIlv5pΔ46-GFP融合タンパク質の顕微鏡観察によって判断され、ilv5Δ株においてIlv5pΔ46がイソロイシン/バリン要求性を補完できないことが示された。業務用ラガービール菌株中に導入された場合、Ilv5pΔ46の強い発現は、2L規模の試醸において全VDK生成量を減少させるのに、野生型Ilv5pのものと同程度に効果的であった。野生型Ilv5pの場合とは異なり、Ilv5pΔ46のさらなる発現は、芳香族化合物及び有機酸の含有量に関して、結果として得られるビールの質を変化させなかった。本発明はこれらの知見に基づき完成された。
【0014】
1.本発明のポリヌクレオチド
まず、本発明は、(a)配列番号:1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、又は(b)配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドからなる群から選択されるポリヌクレオチドを提供する。配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質は、N末端の46アミノ酸残基が欠失した変異Ilv5pタンパク質である(Ilv5pΔ46と称することもある)。配列番号:1のヌクレオチド配列はIlv5pΔ46のアミノ酸配列をコードする。ポリヌクレオチドはDNAであってもRNAであってもよい。
【0015】
本発明で対象とするポリヌクレオチドは、上記で同定されたポリヌクレオチドに限定されるものではないが、(c)付加及び/又は欠失がN末端に起こらないという条件で、1〜15個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加した配列番号:2のアミノ酸配列からなり、かつアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0016】
このようなタンパク質としては、配列番号:2のアミノ酸配列において、例えば、1〜15個、1〜14個、1〜13個、1〜12個、1〜11個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個のアミノ酸)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、又は1個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ活性を有するタンパク質が挙げられる。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/又は付加の数は、一般的には小さい程好ましい。また、このようなタンパク質としては、(d)配列番号:2のアミノ酸配列と約85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ活性を有するタンパク質が挙げられる。上記相同性の数値は一般的に大きい程好ましい。
【0017】
なお、アセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ活性は、例えばMethods Enzymol.、17: 751-755(1970)に記載のArfin et al.の方法によって測定することができる。
【0018】
また、本発明は、(d)配列番号:1のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;及び(f)配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含むことができる。N末端の47アミノ酸残基が欠失した変異Ilv5タンパク質をコードするポリヌクレオチドは本発明から除外されるべきである。
【0019】
ここで、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、配列番号:1のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド又は配列番号:2のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの全部又は一部をプローブとして用いるコロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法又はサザンハイブリダイゼーション法などにより得られるヌクレオチド配列(例えばDNA)をいう。ハイブリダイゼーションの方法としては、例えばMolecular Cloning 3rd Ed.、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons 1987-1997に記載されている方法を利用することができる。
【0020】
本明細書でいう「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチド(例えばDNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することが可能である。
【0021】
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコルにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたポリヌクレオチド(例えばDNA)を検出することができる。
【0022】
これ以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、FASTA、BLASTなどの相同性検索ソフトウェアにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、配列番号:2のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと約85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有するポリヌクレオチドをあげることができる。
【0023】
なお、アミノ酸配列間やヌクレオチド配列間の同一性は、カーリン及びアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, 2264-2268, 1990; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873, 1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al: J. Mol. Biol. 215: 403, 1990)。BLASTNを用いてヌクレオチド配列を解析する場合は、パラメータは、例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメータは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメータを用いる。
【0024】
2.本発明のタンパク質
本発明は、上記ポリヌクレオチド(a)〜(d)のいずれかにコードされるタンパク質も提供する。本発明の好ましいタンパク質は、付加及び/又は欠失がN末端に起こらないという条件で、配列番号:2のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加したアミノ酸配列を含み、かつアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ活性を有するタンパク質である。
【0025】
このようなタンパク質としては、配列番号:2のアミノ酸配列において、上記したような数のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ活性を有するタンパク質が挙げられる。また、このようなタンパク質としては、配列番号:2のアミノ酸配列と上記したような約85%以上、さらにより好ましくは約90%以上、又は最も好ましくは約95%以上の相同性を有し、かつアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ活性を有するタンパク質が挙げられる。
【0026】
このようなタンパク質は、「モレキュラークローニング第3版」、「カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー」、“Nuc. Acids. Res., 10, 6487 (1982)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)”、“Gene, 34, 315 (1985)”、“Nuc. Acids. Res., 13, 4431 (1985)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)”等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することができる。
【0027】
本発明のタンパク質のアミノ酸配列において1以上のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたとは、同一配列中の任意かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中の位置において、1又は複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/又は付加があることを意味する。欠失、置換、挿入及び付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。
【0028】
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2-アミノブタン酸、メチオニン、o-メチルセリン、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン; B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2-アミノアジピン酸、2-アミノスベリン酸; C群:アスパラギン、グルタミン; D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸; E群:プロリン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン; F群:セリン、スレオニン、ホモセリン; G群:フェニルアラニン、チロシン。
【0029】
また、本発明のタンパク質は、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t-ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても製造することができる。また、アドバンスドケムテック社製、パーキンエルマー社製、ファルマシア社製、プロテインテクノロジーインストゥルメント社製、シンセセルーベガ社製、パーセプティブ社製、島津製作所社製等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。
【0030】
3.本発明のベクター及びこれを導入した形質転換酵母
次に、本発明は、上記したポリヌクレオチドを含有するベクターを提供する。本発明のベクターは、上記(a)〜(d)のいずれかに記載のポリヌクレオチド(DNAなど)を含有する。また、本発明のベクターは、通常、(x)酵母細胞内で転写可能なプロモーター;(y)該プロモーターにセンス方向又はアンチセンス方向で結合した、上記(a)〜(i)のいずれかに記載のポリヌクレオチド(DNAなど);及び(z)RNA分子の転写終結及びポリアデニル化に関し、酵母で機能するシグナルを構成要素として含む発現カセットを含むように構成される。
【0031】
酵母に導入する際に用いるベクターとしては、多コピー型(YEp型)、単コピー型(YCp型)、染色体組み込み型(YIp型)のいずれもが利用可能である。例えば、YEp型ベクターとしてはYEp24 (J. R. Broach et al., Experimental Manipulation of Gene Expression, Academic Press, New York, 83, 1983) 、YCp型ベクターとしてはYCp50 (M. D. Rose et al., Gene, 60, 237, 1987) 、YIp型ベクターとしてはYIp5 (K. Struhl et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76, 1035, 1979) が知られており、容易に入手することができる。
【0032】
酵母での遺伝子発現を調節するためのプロモーター/ターミネーターとしては、醸造用酵母中で機能するとともに、もろみ中のアミノ酸及びエキスなどの成分濃度に影響を与えなければ、任意の組み合わせでよい。例えばグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(TDH3)のプロモーター、3-ホスホグリセレートキナーゼ遺伝子(PGK1)のプロモーターなどが利用可能である。これらの遺伝子はすでにクローニングされており、例えばM. F. Tuite et al., EMBO J., 1, 603 (1982) に詳細に記載されており、既知の方法により容易に入手することができる。
【0033】
形質転換の際に用いる選択マーカーとしては、醸造用酵母の場合は栄養要求性マーカーが利用できないので、ジェネチシン耐性遺伝子(G418r)、銅耐性遺伝子(CUP1)(Marin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 337 1984)、セルレニン耐性遺伝子(fas2m, PDR4)(それぞれ猪腰淳嗣ら, 生化学, 64, 660, 1992; Hussain et al., Gene, 101, 149, 1991)などが利用可能である。
【0034】
上記のように構築されるベクターは、宿主酵母に導入される。宿主酵母としては、醸造用に使用可能な任意の酵母、例えばビール,ワイン、清酒等の醸造用酵母等が挙げられる。具体的には、サッカロマイセス(Saccharomyces)属等の酵母が挙げられる。本発明においては、ラガービール酵母、例えばサッカロマイセス パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)W34/70、サッカロマイセス カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)NCYC453、NCYC456、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)NBRC1951、NBRC1952、NBRC1953、NBRC1954が使用できる。さらにワイン酵母、例えば協会ぶどう酒用1号、同3号、同4号等、清酒酵母、例えば協会酵母 清酒用7号、同9号等も用いることができるが、これに限定されない。本発明においては、ラガービール酵母、例えばサッカロマイセス パストリアヌスが好ましく用いられる。
【0035】
酵母の形質転換方法としては一般に用いられる公知の方法が利用できる。例えば、エレクトロポレーション法“Meth. Enzym., 194, p182 (1990)”、スフェロプラスト法“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 p1929(1978)”、酢酸リチウム法“J. Bacteriology, 153, p163(1983)”、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 p1929 (1978)、Methods in Yeast Genetics, 2000 Edition : A Cold Spring Harbor Laboratory Course Manualなどに記載の方法で実施可能であるが、これに限定されない。
【0036】
より具体的には、宿主酵母を標準酵母栄養培地(例えばYEPD培地“Genetic Engineering. Vo1.1, Plenum Press, New York, 117(1979)”等)で、OD600nmの値が1〜6となるように培養する。この培養酵母を遠心分離して集め、洗浄し、濃度約1〜2Mのアルカリイオン金属イオン、好ましくはリチウムイオンで前処理する。この細胞を約30℃で、約60分間静置した後、導入するDNA(約1〜20μg)とともに約30℃で、約60分間静置する。ポリエチレングリコール、好ましくは約4,000ダルトンのポリエチレングリコールを、最終濃度が約20%〜50%となるように加える。約30℃で、約30分間静置した後、この細胞を約42℃で約5分間加熱処理する。好ましくは、この細胞懸濁液を標準酵母栄養培地で洗浄し、所定量の新鮮な標準酵母栄養培地に入れて、約30℃で約60分間静置する。その後、選択マーカーとして用いる抗生物質等を含む標準寒天培地上に植えつけ、形質転換体を取得する。
【0037】
その他、一般的なクローニング技術に関しては、「モレキュラークローニング第3版」、“Methods in Yeast Genetics、A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor, NY)”等を参照することができる。
【0038】
4.本発明の酒類の製法及びその製法によって得られる酒類
上述した本発明のベクターを、目的とするアルコール製品の醸造に適した酵母に導入する。この酵母を使用して所望の酒類のVDK、特にDAの量を低減させることができ、風味の向上した酒類を製造することができる。また、本発明の酵母の評価方法によって選択される酵母もまた使用することができる。対象となる酒類としては、これらに限定されないが、例えば、ビール、ビールテイストドリンクなどの発泡酒、ワイン、ウイスキー、清酒等を挙げることができる。
【0039】
これらの酒類を製造する場合は、親株の代わりに本発明において得られた醸造酵母を用いる以外は公知の手法を利用することができる。したがって、原料、製造設備、製造管理等は従来法と全く同一でよく、VDK、特にDAの量の減少した酒類を製造するためのコストを増加させることはない。つまり、本発明によれば、既存の施設を用い、コストを増加させることなく、風味の向上した酒類を製造することができる。
【0040】
5.本発明の酵母の評価方法
本発明は、配列番号:1のヌクレオチド配列を有するアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列に基づいて設計したプライマー又はプローブを用いて、被検酵母の全ビシナルジケトン生成能又は全ジアセチル生成能について評価する方法に関する。このような評価方法の一般的手法は公知であり、例えば、WO01/040514号公報、特開平8−205900号公報などに記載されている。以下、この評価方法について以下に説明する。
【0041】
まず、被検酵母のゲノムを調製する。調製方法は、Hereford法や酢酸カリウム法など、公知の如何なる方法を用いることができる(例えば、Methods in Yeast Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, p130 (1990))。得られたゲノムを対象にして、アセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列(好ましくは、ORF配列)に基づいて設計したプライマー又はプローブを用いて、被検酵母のゲノムにその遺伝子あるいはその遺伝子に特異的な配列が存在するか否かを調べる。プライマー又はプローブの設計は公知の手法を用いて行うことができる。
【0042】
遺伝子又は特異的な配列の検出は、公知の手法を用いて実施することができる。例えば、特異的配列の一部又は全部を含むポリヌクレオチド又はそのヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを1つのプライマーとして用い、もう一方のプライマーとしてこの配列よりも上流あるいは下流の配列の一部又は全部を含むポリヌクレオチド又はそのヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを用いて、PCR 法によって酵母の核酸を増幅し、増幅物の有無、増幅物の分子量の大きさなどを測定する。プライマーに使用するポリヌクレオチドの塩基数は、通常、10bp以上であり、15〜25bpであることが好ましい。また、挟み込む部分の塩基数は、通常、300〜2000bpが適当である。
【0043】
PCR 法の反応条件は、特に限定されないが、例えば、変性温度:90〜95℃、アニーリング温度:40〜60℃、伸長温度:60〜75℃、サイクル数:10回以上などの条件を用いることができる。得られる反応生成物はアガロースゲルなどを用いた電気泳動法等によって分離され、増幅産物の分子量を測定することができる。この方法により、増幅産物の分子量が特定部分のDNA分子を含む大きさかどうかによって、その酵母の全ビシナルジケトン生成能又は全ジアセチル生成能について予測・評価できる。また、増幅産物のヌクレオチド配列を分析することによって、さらに上記能力についてより正確に予測・評価することが可能である。
【0044】
また、本発明においては、被検酵母を培養し、配列番号:1のヌクレオチド配列を有するアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ遺伝子の発現量を測定することによって、被検酵母の全ビシナルジケトン生成能又は全ジアセチル生成能を評価することもできる。この場合は、被検酵母を培養し、アセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ遺伝子産物であるmRNA又はタンパク質を定量することによって可能である。mRNA又はタンパク質の定量は、公知の手法を用いて行うことができる。例えば、mRNAの定量は例えばノーザンハイブリダイゼーションや定量的RT-PCRによって、タンパク質の定量は例えばウエスタンブロッティングによって行うことができる(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons 1994-2003)。
【0045】
さらに、被検酵母を培養して、配列番号:1のヌクレオチド配列を有する本発明の遺伝子の発現量を測定し、目的とする全ビシナルジケトン生成能又は全ジアセチル生成能に応じた前記遺伝子発現量の酵母を選択することによって、所望の酒類の醸造に好適な酵母を選択することができる。また、基準酵母及び被検酵母を培養し、各酵母における前記遺伝子発現量を測定し、所望の酵母を選択してもよい。具体的には、例えば、基準酵母及び1種以上の被検酵母を培養して配列番号:1のヌクレオチド配列を有するアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ遺伝子の各酵母における発現量を測定する。基準酵母よりも該遺伝子が高発現である被検酵母を選択することによって、酒類の醸造に好適な酵母を選択することができる。
【0046】
あるいは、被検酵母を培養して、全ビシナルジケトン生成能又は全ジアセチル生成能の低い又はアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ活性の高い酵母を選択することによって、所望の酒類の醸造に好適な被検酵母を選択することができる。
【0047】
これらの場合、被検酵母又は基準酵母としては、例えば、本発明のベクターを導入した酵母、上述した本発明の遺伝子が増幅発現された酵母、上述した本発明のタンパク質が増幅発現された酵母、突然変異処理が施された酵母、自然変異した酵母などが使用され得る。全ビシナルジケトン量は、Drews et al.、Mon. fur Brau.、34、1966に記載の方法によって定量することができる。全ジアセチル量は、例えばJ. Agric. Food Chem. 50(13): 3647-53、2002に記載の方法によって定量することができる。アセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ活性は、例えばMethods Enzymol.、17: 751-755 (1970)に記載のArfin et al.の方法によって測定することができる。突然変異処理は、例えば、紫外線照射や放射線照射などの物理的方法、EMS(エチルメタンスルホネート)、N−メチル−N−ニトロソグアニジンなどの薬剤処理による化学的方法など、いかなる方法を用いてもよい(例えば、大嶋泰治編著、生物化学実験法39 酵母分子遺伝学実験法、p67-75、学会出版センターなど参照)。
【0048】
なお、基準酵母、被検酵母として使用され得る酵母としては、醸造用に使用可能な任意の酵母、例えばビール、ワイン、清酒等の醸造用酵母等が挙げられる。具体的には、サッカロマイセス(Saccharomyces)属等の酵母(例えば、サッカロマイセス パストリアヌス、サッカロマイセス セレビシエ、及びサッカロマイセス カールスベルゲンシス)が使用できる。本発明においては、ラガービール酵母、例えばサッカロマイセス パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)W34/70等、サッカロマイセス カールスベルゲン シス(Saccharomyces carlsbergensis)NCYC453、NCYC456等、サッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)NBRC1951、NBRC1952、NBRC1953、NBRC1954が使用できる。さらにウイスキー酵母、例えばサッカロマイセス セレビシエNCYC90等、ワイン酵母、例えば協会ぶどう酒用1号、同3号、同4号等、清酒酵母、例えば協会酵母 清酒用7号、同9号等も用いることができるが、これに限定されない。本発明においては、ラガービール酵母、例えばサッカロマイセスパストリアヌスが好ましく用いられる。基準酵母、被検酵母は、上記酵母から任意の組み合わせで選択しても良い。
【実施例】
【0049】
以下、実施例によって本発明の詳細を述べるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
実施例1:細胞質Ilv5pを含有するプラスミドの調製
特定数(17、33、40、46、53、66、83又は99)のN末端アミノ酸残基が欠失した変異Ilv5p-GFP融合タンパク質を発現するためのプラスミドを以下の方法で調製した。標準的な方法を使用して制限酵素消化及びライゲーションを行った(Sambrook et al. 1989)。TOPO(商標)TAクローニングキット(インビトロジェン社、Carlsbad、CA)を使用してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物をクローニングし、配列決定した。この実施例で使用したオリゴヌクレオチドを以下に記載する。
【表1】

【0051】
5'末端にSacI制限部位を有するILV5オープンリーディングフレーム(ORF)に相当する1.2kbのDNA断片を、オリゴヌクレオチド1+2をプライマーとして、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(X2180-1A株)の染色体DNAを鋳型として使用するPCRによって調製した。オリゴヌクレオチド3はインフレームで融合されたILV5 ORFの3'末端(25塩基)及び緑色蛍光タンパク質(GFP)ORFの5'末端(20塩基)配列を含む。オリゴヌクレオチド3+4をプライマーとして、プラスミドpYES-GFP(Omura et al. 2001)を鋳型として使用して、GFPをコードする840bpの断片を増幅した。上述の2つのPCR産物を混合し、オリゴヌクレオチド1+4を用いたその後のPCRのためにオーバーラップした鋳型として使用し2.0kbのILV5-GFP融合遺伝子断片を得た。
【0052】
DNA断片をSacI及びBamHIで消化し、酵母セントロメア発現ベクターpYCGPY(Kodama et al. 2001)のSacI-BamHIギャップにサブクローニングし、pYC-ILV5-GFPを得た。
【0053】
リバースプライマー(オリゴヌクレオチド13)及び鋳型としてのプラスミドpYC-ILV5-GFPと組み合わせて、オリゴヌクレオチド5、6、7、8、9、10、11、及び12(図2のN末端欠失Δ17、Δ33、Δ40、Δ46、Δ53、Δ66、Δ83、及びΔ99に相当)のうちの1つをフォワードプライマーとして使用するPCRによって、Ilv5pのN末端における一連の入れ子式(nested)欠失に対するDNA断片を得た。
【0054】
得られた断片(370bp〜620bp)をSacI及びAgeIで消化し、ILV5-GFP構築物中の野生型SacI-AgeI配列を、pYC-ILV5-GFPのSacI-AgeIギャップとのライゲーションによって置換し、8種のプラスミド、すなわち、pYC-ILV5Δ17-GFP、pYC-ILV5Δ33-GFP、pYC-ILV5Δ40-GFP、pYC-ILV5Δ46-GFP、pYC-ILV5Δ53-GFP、pYC-ILV5Δ66-GFP、pYC-ILV5Δ83-GFP及びpYC-ILV5Δ99-GFPを得た。N末端欠失Ilv5p-GFPは、N末端で翻訳を開始するために必要なメチオニン開始コドン(ATG)を有する。
【0055】
実施例2:形質転換体の調製/局在及び安定性試験
S.セレビシエM1-2B株(Stinchcomb et al. 1980)を、pYC-ILV5-GFP(野生型融合タンパク質)及びその誘導体pYC-ILV5Δx-GFP(xは各構築物の欠失したN末端残基の数を表す)で形質転換した。この形質転換細胞を、300μg/mlのネオマイシン類似体G418を添加したYPD中で対数期まで増殖させ、蛍光顕微鏡観察に供した。蛍光顕微鏡(Eclipse E600、ニコン、東京、日本)によって細胞を視覚化し、カラーチルド3CCDカメラ(C5810、浜松ホトニクス、静岡、日本)を使用して100×で画像を撮影した。結果を図3に示す。
【0056】
図3に示すように、Ilv5pΔ17-GFPは野生型Ilv5p-GFPのものと同様な局在パターンを示したが、変異融合タンパク質Ilv5pΔ33-GFP、Ilv5pΔ40-GFP、Ilv5pΔ46-GFP、及びIlv5pΔ53-GFPは、細胞質全体で強い蛍光を示し、後者の4種の融合タンパク質がミトコンドリアではなく細胞質に主に局在することを示唆した。一方、より大きな欠失を有するIlv5pΔ66-GFP、Ilv5pΔ83-GFP、及びIlv5pΔ99-GFPの融合タンパク質は、他の構築物と比較して細胞質の蛍光が弱く、これらのタンパク質が細胞質に安定して存在できないことを示唆した。
【0057】
次に、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)のための全細胞抽出物をBrondijk (1998)によって記載されたように調製し、タンパク質濃度をプロテインアッセイキット(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA)を使用してブラッドフォード法に従って測定した。60μgのタンパク質をSDS-PAGE、続いて以前に記載された化学発光検出系(Omura et al. 2001)を使用するイムノブロット解析に供した。抗原検出のために、GFPに対するウサギ抗体(Medical and Biological Laboratories、名古屋、日本)及びアクチンに対するウサギ抗体(Santa Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CA)を1:1000希釈で使用した。細胞抽出物の内部標準として、アクチン量を抗アクチン抗体を用いて検出した。結果を図4に示す。
【0058】
図4に示すように、試験したN末端欠失型Ilv5p-GFP融合タンパク質のうち、所定量の細胞抽出物においてIlv5p-GFPΔ46の量が最も多く、Ilv5p-GFPΔ53及びIlv5p-GFPΔ40の量がこの順でより多かった。したがって、N末端の46アミノ酸残基の欠失が、細胞質Ilv5pを調製する場合に最も適していることが分かった。
【0059】
実施例3:ビール試醸
野生型Ilv5p又は細胞質Ilv5p(N末端の46アミノ酸残基が欠失した変異Ilv5pΔ46)を、ラガービール酵母に導入して、安定発現のための発現プラスミドを構築した。3'末端に終止コドンを有するILV5 ORFを調製するために、プライマーとしてオリゴヌクレオチド14+15及び鋳型としてプラスミドpYC-ILV5-GFPを用いてPCRを行った。得られた530-bp断片をAgeI及びSacIで消化し、組み込み発現ベクターpUP3GLP(Omura et al. 2001)のSacI-SalIギャップに、pYC-ILV5-GFP(670-bp)及びpYI-ILV5Δ46(540-bp)からそれぞれ切り出されたSacI-AgeI断片の1つと一緒に連結した。発現プラスミドをそれぞれ、pIY-ILV5及びpIY-ILV5Δ46と称し、ラガービール酵母FOY422(J株(Versuchs-und Lehranstalt fur Brauerei、Berlinから入手)由来の高VDK生成株)に導入した。これらの菌株をFOY437(野生型Ilv5p含有)及びFOY438(細胞質Ilv5pΔ46含有)と称し、以下の試醸に供した。ビール試醸は以下の条件で実施した。
試験規模: 2リットル大型発酵管
麦汁: 100%麦芽汁(ホップ添加)
初期麦汁比重: 12.9プラトー度(°P)
(1°Pは1%w/wスクロース溶液の比重に相当)
酵母投入量: 1.5×107cells/mL
麦汁エキス濃度: 11.85%
麦汁溶存酸素濃度:8.0mg/L
発酵温度: 15℃
【0060】
野生型ILV5遺伝子及び細胞質ILV5Δ46遺伝子の発現を確認するために、発酵開始から1、2、3、4、5及び6日後のもろみから酵母を集めた。全RNAの単離、続いてアガロースゲル電気泳動及びブロッティングを標準的な方法(Rose et al. 1990)に従って行った。手順では、40μgのRNAをアガロースゲル電気泳動によって展開し、ノーザンブロット解析に供した。標識されたILV5 ORF配列を含有するプローブを用いてmRNAを検出した。結果を図5に示す。また対照としてPDA1遺伝子の発現量も図5に示す。
【0061】
図5に示すように、親株と比較して、FOY422、野生型ILV5株及び細胞質ILV5Δ46株は、発現プラスミドに含まれる構成的プロモーターTDH3pによって誘導される遺伝子を過剰発現した。特に、1日目及び2日目の親株(対照)との差は顕著であった。
【0062】
発酵中の糖の減少速度及び細胞増殖速度は、野生型ILV5遺伝子及び細胞質ILV5Δ46遺伝子の導入によって悪影響を受けなかった。図6(a)、6(b)及び6(c)はそれぞれ、麦汁中の外観エキス、細胞増殖、及び全VDK生成の変化を示す。酵母の増殖速度は、660nmの吸光度で浮遊酵母量を測定することによって決定した。VDK量はVDK及びその前駆体の全量である「全VDK」として、Drews,et al (1966)に記載の方法に従って定量した。
【0063】
図6に示すように、全VDK量は発酵開始から3日目にピークに達した。FOY422株の全VDK量は2.4mg/Lに達したが、野生型ILV5株及び細胞質ILV5Δ46株の全VDK量はともに0.9mg/Lまで減少した。さらに、対照の親株と比較して、両形質転換体はVDK値が早い段階で閾値(すなわちジアセチルが0.15mg/L)を下回って発酵を終了した。
【0064】
次に、発酵したビールの化学分析を行った。表2は、親株(FOY422)及び野生型Ilv5p(FOY437)又はIlv5pΔ46(FOY438)を過剰発現する形質転換株で10日間発酵したビールの化学分析の結果を示す。
【表2】

【0065】
FOY438を用いたビールの質は親株を用いたビールと区別がつかないものであった。一方、野生型Ilv5pを過剰発現させたFOY437のビールは親株を用いたビールと比較していくつかの異なる特徴を有しており、例えば、ピルビン酸(FOY422を用いた対照ビールの60%)及び酢酸(73%)の量が少ない、及びイソブチルアルコール(135%)、アミルアルコール(123%)、及び酢酸イソアミル(143%)の量が多いようであった。
【0066】
これらの実験結果から、細胞質ILV5Δ46の高発現によりビールの質を損なわずにVDK量を低減できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の酒類の製造方法によれば、製品中の異風味に関与するVDK、特にDAの生成量の低減により、優れた風味を有する酒類を製造することができる。
【0068】
本明細書中で引用された参考文献は以下の通りである。
【表3】

【表4】

【表5】

【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、イソロイシン及びバリン生合成を示す略図である。5つの酵素、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)、アセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ(RI)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(DHA)、及び分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼ(BAT)が2つの経路に共通である。相当する遺伝子を括弧内に示す。TD:スレオニンデアミナーゼ、KB:α-ケト酪酸、AHB:α-アセト-α-ヒドロキシ酪酸、AL:α-アセト乳酸、DHMV:α,β-ジヒドロキシ-β-メチル吉草酸、DHIV:α,β-ジヒドロキシイソ吉草酸。
【図2】図2は、Ilv5p前駆体タンパク質のN末端における切断を示す図である。Ilv5p前駆体タンパク質中のアミノ酸番号を示す。8種の変異タンパク質の切断部位を矢印で示す。48番目のロイシン残基(成熟Ilv5pのN末端)に星印を付けている。塩基性残基、水酸基を有する残基、及び疎水性残基をそれぞれ、黒点、白点、及び下線で示す。枠で囲まれた残基は、アセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼのNADPH結合に関与するドメインIにおいて保存されたアミノ酸である(Dumas et al. 1995)。
【図3】図3は、酵母M1-2B株(Stinchcomb et al. 1980)における、野生型及びN末端欠失型Ilv5p-GFP融合構築物の局在を示す写真である。切断された残基の数を示す。対照の空のベクターDNAを有する細胞は蛍光を示さなかった。バー、5μm。
【図4】図4は、N末端欠失型Ilv5p-GFPのイムノブロット解析の結果を示す図である。各溶解物中の対照アクチンタンパク質を内部標準として使用した。対数期まで増殖させた細胞から全RNAを調製し、標識したILV5及びACT1 ORF DNA断片をプローブとして使用してノーザン解析のための処理をした。
【図5】図5は、ビール発酵中の野生型ILV5遺伝子及び細胞質ILV5Δ46遺伝子の発現を確認するためのノーザンブロット解析の結果を示す図である。全RNAを、発酵管から毎日1回抜き取ったサンプルから調製し、標識されたILV5及びPDA1(Wenzel et al. 1993)のORF断片をプローブとして使用してノーザン解析を行った。
【図6】図6は、ビール発酵性能に対するラガービール酵母におけるIlv5p過剰発現の影響を示す図である。図6(a)、6(b)及び6(c)はそれぞれ、親株FOY422(●)、野生型Ilv5p発現株FOY437(○)、及びIlv5pΔ46発現株FOY438(▲)による試醸中の麦汁中の外観エキス、細胞増殖、及び全VDK生成の変化を示す。結果は3回の独立した実験の平均値である。標準偏差をエラーバーによって示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(c)からなる群から選択されるポリヌクレオチド:
(a)配列番号:1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
(b)配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;及び
(c)付加及び/又は欠失がN末端に起こらないという条件で、1〜15個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加した配列番号:2のアミノ酸配列からなり、かつアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項2】
以下の(d)からなる群から選択される請求項1に記載のポリヌクレオチド:
(d)配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするか、又は1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加した配列番号:2のアミノ酸配列をコードし、かつアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項3】
配列番号:1からなる請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
配列番号:2からなるタンパク質をコードする請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
DNAである、請求項1〜4のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリヌクレオチドにコードされるタンパク質。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有するベクター。
【請求項8】
請求項7に記載のベクターを含有する酵母。
【請求項9】
全ビシナルジケトン生成能又は全ジアセチル生成能が、請求項7に記載のベクターを導入することによって低減した請求項8に記載の酵母。
【請求項10】
全ビシナルジケトン生成能又は全ジアセチル生成能が、請求項6に記載のタンパク質の発現量を増加させることによって低減した請求項8に記載の酵母。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれかに記載の酵母を培養することを含む、酒類の製造方法。
【請求項12】
醸造する酒類が麦芽飲料である請求項11に記載の酒類の製造方法。
【請求項13】
醸造する酒類がワインである請求項11に記載の酒類の製造方法。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれかに記載の方法で製造された酒類。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−503379(P2010−503379A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553415(P2008−553415)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【国際出願番号】PCT/JP2007/074620
【国際公開番号】WO2009/078108
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【Fターム(参考)】