説明

変調光解析装置とその変調光解析装置を用いた電界あるいは磁界測定プローブ装置

【課題】伝送路での位相差変動を抽出する変調光解析装置と、それを用いて、プローブ部の揺動の影響を差し引ける電界磁界測定用光学プローブとを実現する。
【解決手段】解析対象の楕円偏光を入射し、これを第1、2の偏光に分岐し、第1の偏光を入射し、第1の偏光分岐手段でその搬送波と側帯波にπ/4で交叉する偏光成分に分離し、第1、2の光電変換手段で強度を測定する。第2の偏光を1/4波長板に通した後、搬送波と側帯波に対してπ/4で交叉する偏光成分に分離し、この強度を第3、4の光電変換手段で測定し、第1から第4の光電変換手段の出力を入力して、入射光の搬送波と側帯波の強度や位相を算出する。解析する周波数は信号発生器の周波数で指定する。信号処理回路は、第1、2(第3、4)の光電変換手段の各々の出力間の差の第1(第2)の差信号について強度の比から、解析対象の入射光の搬送波と側帯波の位相差を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直交する偏光成分が各々搬送波と側帯波で変調された信号の解析技術に関する。特に伝送路において上記偏光成分間に位相差が生じる場合、上記位相差を解析してその伝送路の影響を除去することで、上記搬送波及び側帯波の振幅及び位相を正しく測定する変調光解析装置に関するものである。さらにこの発明は、上記変調光解析装置を適用し電気光学効果または磁気光学効果を利用した電界や磁界の測定装置であって、伝送路から発生する誤差を補正して、より正しい測定値を得る電界あるいは磁界検出プローブ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
偏光を変調して得られる搬送波とそれに直交する側帯波を含む光を伝送する系において、その伝送路では、直交する方位の屈折率の変動が生じることはよく知られている。例えば、偏波面保存光ファイバー(以下PMFと省略する)の遅軸と速軸に信号を伝搬するとき、PMFの曲げや揺動によって遅軸、速軸それぞれの屈折率が変動し、それぞれを伝搬する光の位相が相対的に変動する。より具体的には、例えば、電気光学効果を用いて電界あるいは磁界を測定する装置において、測定器のプローブ部と信号解析機能を有する変調光解析装置間を、固定されず設置位置が絶えず変化するPMFで接続したときこの問題は顕著で、測定値が数パーセント変動することが報告されている。また大気中の光の伝播においても、空気の流れで各地点の密度が変わることによって、屈折率が変動することは知られている。
【0003】
本発明は、電界あるいは磁界検出プローブ装置に関するものであるが、測定しようとする領域の電界、表面電位、あるいは磁界を殆ど乱すことなく測定しようとする際に用いる測定装置の1つとして、EO(電気光学)効果やMO(磁気光学)効果を用いた測定装置は、既によく知られている。
【0004】
例えば、特許文献1(米国特許第3605013号明細書)には、ファラデイ効果を示す光ファイバーを用いた電流測定システムが開示されている。また、特許文献2(米国特許第4002975号明細書)には、電場あるいは磁場の強度に従って偏光方向の変わる光学結晶を用いた電圧測定が開示されている。
【0005】
また、特許文献3(特開2005−292068号公報)には、PMFなどの伝送路によって生ずる偏波間の位相変動を電気的に検出し機械的な手段によって調整する技術が開示されている。交流電界や交流磁界などの物理量が印加されている電気光学結晶、磁気光学結晶、圧光学(光弾性)結晶などの光学結晶に光を入射させ、光学結晶から出射された光を検出することにより交流電界、交流磁界、音圧などに相当する信号を得る計測システムが開示されている。これは、光学結晶の変位による感度の低下を抑制することを目的にするもので、光源からの光源出力直線偏光を光学結晶に伝送し、光学結晶を介して光源出力直線偏光を被測定物理量により偏光変調してサーキュレータにより偏光調整器に伝送し、偏光調整器によって偏光変調光を任意偏光に変換し、任意偏光を偏光分離手段により直交する分離直線偏光に分離し、分離した直線偏光をそれぞれ光検出器により電気信号に変換し、電気信号を差動増幅器により差動信号として出力し、差動信号をロックインアンプにより被測定物理量の振幅信号と位相信号として出力し、光検出器の光電流とロックインアンプからの振幅信号を制御信号処理部に入力し、制御信号処理部により光電流が等しくかつ振幅信号が最大となるように偏光調整器を制御して任意偏光を調節するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3605013号明細書
【特許文献2】米国特許第4002975号明細書
【特許文献3】特開2005−292068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
偏光成分として変調された信号が伝送されるとき、伝送路の屈性率楕円体が変化する場合がある。この場合は、直交する偏波面の偏光成分間に位相差が発生することが知られている。この位相差の変動よって、伝送されたデータにエラーが生ずるという不具合がある。この問題は、特に、偏波面保持光ファイバーの速軸と遅軸を伝搬する光間に位相差が発生する問題として知られている。
【0008】
そこで、本発明の変調光解析装置では、偏光を受光する側の光学的な演算と光電変換手段の出力を電気的に演算とを行うことで、偏光を変調して送出する系に何ら制約をつけずに、伝送路での位相差の変動による測定値の変動を抽出する。
【0009】
また、本発明の電界あるいは磁界検出プローブ装置は、上記の変調光解析装置を活用して、電気光学効果または磁気光学効果を利用した電界または磁界センサーを構成する。これは、大きさ、重量ともに片手で把持できる程度のプローブ部が光検出系と光ファイバーで結ばれたもので、プローブ部の揺動にたいして、測定値が変動しないようにした電界磁界測定用光学プローブを実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の変調光解析装置は、
搬送波とそれに直交する偏波面をもつ側帯波とを含む楕円偏光を解析対象の入射光とし、
上記入射光を第1、第2の偏光に分岐するための第1の光分岐手段と、
第1の偏光を入射光とし、その搬送波および側帯波の各々の偏波面に対して±π/4ラジアンのいずれかの方位で交叉し、2つの互いに直交する偏光成分に分離するための第1の偏光分岐手段と、
上記の互いに直交する2つの偏光成分の其々の強度を測定するための第1、第2の光電変換手段と、
第2の偏光に適用してその偏光成分間に位相差を与える1/4波長板と、
前記1/4波長板を出た第2の偏光を入射光とし、その搬送波および側帯波偏波面に対して±π/4ラジアンのいずれかの方位で交叉し、互いに直交する2つの偏光成分に分離するための第2の偏光分岐手段と、
第2の偏光変更分離手段で分離され互いに直交する2つの上記偏光成分の其々の強度を測定するための第3、第4の光電変換手段と、
第1、第2、第3、第4の光電変換手段の全ての出力を入力して、前記入射光の搬送波または側帯波のそれぞれの強度、または、その位相の一部またはすべてを算出する信号処理回路と、
解析対象の上記入射光を解析する周波数を指定するための第1の参照信号を発生する第1の信号発生器と、を具備し、
前記信号処理回路は、第1、第2の光電変換手段の各々の出力間の差である第1の差信号の指定された上記周波数における強度と、第3、第4の光電変換手段の出力間の差である第2の差信号の指定された上記周波数における強度との第1の比から、解析対象の上記入射光の搬送波と側帯波の位相差を算出することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の変調光解析装置における信号処理装置は、上記の特徴に加えて、
第1の差信号と、第1の参照信号の周波数成分のπ/2または−π/2ラジアンに相当する移相を施した第2の差信号、との和信号を生成し、更に前記和信号と前記第1の参照信号との積を前記参照信号の整数周期にわたり積算して得られる第1の積算値と、上記和信号と、第1の参照信号をπ/2または−π/2ラジアン移相した信号との積を上記周期にわたり積算して得られる第2の積算値とを求め、
第1の積算値の平方値と第2の積算値の平方値との和から解析対象の上記搬送波の強度と上記側帯波の強度の積を求め、
上記信号処理回路は、第1の比と、第1の積算値と第2の積算値との比とから、第1の参照信号と解析対象の上記入射光の側帯波に含まれ第1の参照信号と同じ周波数の信号との位相差を算出することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記の変調光解析装置を用いた電界あるいは磁界検出プローブ装置であって、
直線偏光を出力する光源と、
電界あるいは磁界によって屈折率の変化する電気または磁気光学結晶と、
請求項1記載の変調光解析装置と、
前記直線偏光を前記電気または磁気光学結晶へ導くとともに前記電気または磁気光学結晶を透過あるいは反射した出力を上記変調光解析装置へ導くための偏波面保存光ファイバーを含む光路と、
を具備し、
上記電気または磁気光学結晶に印加された電界あるいは磁界の周波数、強度、参照信号と搬送波の相対位相の少なくとも1つを測定する機能を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の電界あるいは磁界検出プローブ装置は、上記の構成に加えて、
上記光源からの直線偏光を変調する手段と、
第2の参照信号を発生する第2の信号発生器と、
を具備し、
上記直線偏光は第2の信号参照によって変調されて上記電気または磁気光学結晶への入射光であり、
上記電気または磁気光学結晶は、上記入射光に含まれる前記第2の参照信号による変調成分と、被測定電界または磁界との周波数混合を行ってその出力光に第1の周波数に相当する中間周波数成分を発生し、変調光解析装置は第1の周波数成分に対して解析処理を行う光ヘテロダイン法を用いることを特徴とする。
【0014】
また、上記の構成に加えて、
上記光路は、
第2の光分岐手段と、
双方向性光路とを備え、
第2の光分岐手段は、上記光源から入射する上記直線偏光を上記双方向性光路を介して上記電気または磁気光学結晶に送り、前記電気または磁気光学結晶からのからの戻り光を上記双方向性光路を介して上記偏光解析装置に出射するものであって、上記双方向性光路は偏波面保持光ファイバーを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、光路の偏波面ごとの屈折率変動によって生ずる信号の変動を受動的に補償し受信信号の安定化を行うことができる。また、上記の変調光解析装置を用いた電界あるいは磁界測定プローブ装置では、測定端子と変調光解析装置をPMFを用いて光を伝送した場合に発生するPMFの揺動などによる測定の劣化を保障することができる。更にヘテロダイン法を用いた上記の電界あるいは磁界測定プローブ装置においては、変更解析装置は信号の検出と処理を行う機能を一定の周波数に限定することができ、測定の安定化に更に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の偏光解析装置20の構成例を示すブロック図である。入射光は互いに直交する偏波面において、その一方は搬送波で、他方は側帯波で変調された偏光であって(図4(c)参照)、第1の光分岐手段5に入射して略等しい第1、第2の偏光に分岐される。第1の偏光は第1の偏光分岐手段7によって前記入射光の側帯波または搬送波の偏波面に対して±π/4ラジアンのいずれかの方位を有して互いに直交する2つの偏光、即ち第3、第4の偏光に分離される。第3の偏光は第1の光電変換手段9、第4の偏光は第2の光電変換手段10によって光電変換されて信号処理回路14に入力される。第1の光分岐手段5の他方の出力である第2の偏光は、λ/4板6を介して第2の偏光分岐手段8によって±π/4ラジアンのいずれかの方位を有して互いに直交する2つの偏光、即ち第5、第6の偏光に分岐される。第5の偏光は第3の光電変換手段11によって、第6の偏向は第4の光電変換手段12によって光電変換されて、信号処理回路14に入力される。図中13は第1の信号発生手段であって、信号処理回路14に、解析しようとする周波数の第1の参照信号を供給する。
【図2】本発明の電気または磁気光学プローブ装置の第1の実施例の構成を示すブロック図である。偏光を出力する光源1の発する偏光は、第2の光分岐手段2を介して偏波面保存光ファイバー(PMF)を含む光路3に入射し、電気または磁気光学結晶4の照射へ導くとともに、前記電気または磁気光学結晶4を透過あるいは反射した出力を偏光解析装置20へ導く。偏光解析装置20はその入射光から電気または磁気光学結晶に印加された電界あるいは磁界の周波数、強度、参照信号と搬送波の相対位相を解析して測定する。第2の光分岐手段2と偏光解析装置の間20には、その入射光の偏光の方位を調整するための手段、例えばλ/2板が具備されていると好ましい。
【図3】本発明の電気あるは磁気光学プローブ装置の第2の実施例を示すブロック図である。第1の実施例に対して、偏光を変調するための変調装置16と、その信号を供給する第2の信号発手段15を加えた構成である。
【図4】本発明の偏光解析装置における、偏光の状態を示す図である。(A)は光源1の偏光を示した図で、図面上で上下方向(以下Y軸と記す)の直線偏光である。(B)は電気或いは磁気光学結晶4を出た直後の偏光を示している。電気または磁気光学結晶4において電界あるいは磁界によって変調されて、図面上水平方向(以下X軸と記す)の偏光成分に側帯波が発生していることを示す。搬送波はY軸成分である。(C)は電気または磁気光学結晶4を出射した光が、伝送路によってX軸、Y軸成分間に位相差φを生じたときの偏光を示す。(D)は第1の偏光分岐手段7によって分離された第3の偏光、(E)は同様に第1の偏光分岐手段7によって分離された第4の偏光25を示す図であって、X軸とπ/4の角度で交差する(D)u−u’と(E)v−v’成分の偏光を示す図である。
【図5】本発明の偏光解析装置における、偏光の状態を示す図であり、(F)は、λ/4板6を通過した後の第2の偏光23の偏波面を示す電界ベクトル図、(G)は第2の偏光分離手段8出力の第5の偏光の座標軸をπ/4ラジアン傾けた場合の電界ベクトル図、(H)は第2の偏光分離手段8出力の第4の偏光である。
【図6】図3の実施例における、第1の信号発生手段13からの第1の参照信号33、第2の信号発生手段15からの第2の参照信号30、および被測定信号となる被測定物の発する電界あるいは磁界31の周波数の関係を示す模式図である。第2の参照信号30で変調された偏光は電気または磁気光学結晶4に入射し被測定物の発する電界あるいは磁界31によって更に変調される。その結果被測定物の発する電界あるいは磁界31は周波数変換されて中間周波数信号32を生ずる。偏光解析装置20は中間周波数信号32中の第1の参照信号33に等しい周波数成分を解析する。このことは被測定物の発する電界あるいは磁界31を解析することと等価である。第1の参照信号33の周波数と第2の参照信号30の周波数の和である測定する周波数が実際に解析される電界あるいは磁界の周波数位置である。被測定周波数は第1の参照信号33の周波数と第2の参照信号30の周波数の差であってもよい。
【図7】図1に示した変更解析装置20の光学部分の実施例を示す図である。入射光28は第1の光分岐手段5によって第1の偏光22、第2の偏光23に分岐し、第1の偏光22は第1の偏光分岐手段7に入射し、互いに偏光面が直交する第3の偏光24と第4の偏光25に分離して、第1の光電変換手段9と第2の光電変換手段10に入射する。第2の偏光23は反射鏡21によって曲げられてλ/4板6によって偏光面成分間に位相差を加えられた後、第2の偏光分離手段8に入射して互いに直交する第5の偏光26と第6の偏光27に分離し、第3の光電変換手段11と第4の光電検出手段12に入射する。4つの光電変換手段の出力は信号処理回路に入力し解析が行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、この発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明においては、同じ機能あるいは類似の機能をもった装置に、特別な理由がない場合には、同じ符号を用いるものとする。
【実施例1】
【0018】
図1に本発明の実施例である偏光解析装置20のブロック図を示す。入射光は、互いに直交する偏波面において、その一方は搬送波で、他方は側帯波で変調された偏光であって、第1の光分岐手段5に入射して略等しい第1、第2の偏光22、23に2分岐される。第1の偏光22は第1の偏光分岐手段7によって前記入射光の側帯波または搬送波の偏波面に対して±π/4ラジアンのいずれかの方位を有して互いに直交する2つの偏光、つまり第3、第4の偏光24、25に分離される。第3の偏光24は第1の光電変換手段9、第4の偏光25は第2の光電変換手段10によって光電変換されて信号処理回路14に入力される。第1の光分岐手段5の他方の出力である第2の偏光23は、λ/4板6を介して第2の偏光分岐手段8によって第5、第6の偏光26、27に分岐され、それぞれ第3の光電変換手段11、第4光電変換手段12によって光電変換されて信号処理回路14に入力される。第1の信号発生手段13は、信号処理回路14に解析しようとする周波数の第1の参照信号を供給する。
【0019】
信号処理回路14は、第1の光電変換手段9と第2の光電変換手段10出力間の差から第1の差信号の指定された上記周波数における強度と、第3の光電変換手段11と第4光電変換手段12の出力間の差である第2の差信号の指定された上記周波数における強度を判定し、更に第1の差信号の上記強度と第2の差信号の上記強度との第1の比から、解析対象の上記入射光の搬送波と側帯波の位相差を算出する。
さらに、第1の差信号と、第1の参照信号の周波数成分のπ/2または−π/2ラジアンに相当する移相を施した第2の差信号、との和信号を生成し、更に前記和信号と前記第1の参照信号との積を前記参照信号の整数周期にわたり積算して得られる第1の積算値と、上記和信号と、第1の参照信号をπ/2または−π/2ラジアン移相した信号との積を上記周期にわたり積算して得られる第2の積算値とを求め、
第1の積算値の平方値と第2の積算値の平方値との和から解析対象の上記搬送波の強度と上記側帯波の強度の積を求め、
上記信号処理回路14は、第1の比と、第1の積算値と第2の積算値との比とから、第1の参照信号と解析対象の上記入射光の側帯波に含まれ第1の参照信号と同じ周波数の信号との位相差を算出する。信号処理回路14の処理は、アナログ演算回路で行うことも、光電変換手段入力を数値化してデジタル信号処理で行う事も可能である。
【0020】
図4は本発明の信号処理過程を示す。図4(A)は光源1から発する偏光を示すもので、図4(B)は例えば電気または磁気光学結晶4に印加された電界あるいは磁界によって変調された結果生じた側帯波と搬送波の偏波面を示す。これを行列で記載すると、図4(B)は次の数1の様になる。
【0021】
【数1】

【0022】
この光が、伝送路の歪等によって、相対的に位相差が加えられて偏光解析装置20に入力する。このときの偏波面の様子を図4(C)で示す。ここでは搬送波にφの位相差として記述すると、次の数2となる。
【0023】
【数2】

ここで、iは虚数単位である。
【0024】
図4(D)は第1の偏光分岐手段7出力の第3の偏光である。
u−u’方向の偏光成分の電界は以下の式に示す。
【0025】
【数3】

【0026】
図4(E)は第2の偏光分離手段8出力の第4の偏光である。
v−v’方向の偏光成分の電界は、次の数4になる。
【0027】
【数4】

【0028】
図5(F)は、λ/4板6を通過した後の第2偏光の偏波面を示す電界ベクトル図であり、以下のように表わせる。
【0029】
【数5】

【0030】
図5(G)は第2の偏光分離手段8出力の第5の偏光である。
u−u’方向の偏光成分の電界は、次のようになる。
【0031】
【数6】

【0032】
図5(H)は第2の偏光分離手段8出力の第4の偏光である。
v−v’方向の偏光成分の電界は、次のようになる。
【0033】
【数7】

【0034】
偏光3、4、5、6の電界を表わす数3、数4、数6、数7から、指数関数にオイラーの公式を適用した後、共役複素数を乗じて光の強度、すなわち上記第1から第4の光電変換手段9から12の出力を計算すると以下のようになる。
【0035】
第1の光電変換手段の出力;
【数8】

【0036】
第2の光電変換手段の出力;
【数9】

【0037】
第3の光電変換手段の出力;
【数10】

【0038】
第4の光電変換手段の出力;
【数11】

【0039】
第1の差信号は、第1の光電変換手段の出力から第2の光電変換手段の出力を差し引くことで得られる。従って、数8から数9を引くと、次を得る。
【0040】
【数12】

【0041】
第2の差信号は、第3の光電変換手段の出力から第4の光電変換手段の出力を差し引くことで得られる。従って、数10から数11をひくと、次を得る。
【0042】
【数13】

【0043】
搬送波と側帯波の位相差φは、数12と数13の比から以下のように求める事が出来る。
【0044】
【数14】

【0045】
さらに、数12の結果をπ/2または−π/2ラジアン移相して数13と加算することにより、次式を得る。
【0046】
【数15】

【0047】
この結果に参照信号として、sin(θ±δ)あるいはcos(θ±δ)を乗じて、参照信号周期(2π)の整数(n)倍の時間にわたり積分すると、次のようになる。但し積分時間にわたりφが一定と見なせるようにするため、積分時間はφの変化時間よりも十分短いものとする。また、δについては、解析対象の上記入射光の側帯波に含まれ第1の参照信号33と同じ周波数の信号の位相、つまり測定時の信号(sin(θ))の位相と、上記第1の参照信号33の位相、つまり計算処理時の信号(sin(θ+δ))の位相の違いを反映するものである。
【0048】
【数16】

【0049】
【数17】

【0050】
【数18】

となるので、積abを求めることができる。
【0051】
結局、数7から得られる位相差φと上記の積abを数13または数14に適用して、sin(θ)、つまり、測定対象となる電磁界の強度に比例する位相θを得ることができる。また、基準となる電磁界強度との比較から、測定した電磁界強度に換算する。このように、偏波保持光ファイバーの曲げの等で引き起こされる位相の揺らぎを、光学系の調整を行うことなく、電気信号を演算することで補正することができ、上記の揺らぎに影響されない安定な測定を実現することができる。
【0052】
ここで、4分の1波長板6としては、16分の1波長程度の製造誤差があっても用いることができる。また、信号処理回路14としては、アナログ演算器でも構成することができるが、入力信号をデジタル信号に変換してデジタル処理するデジタル演算器であることが、安定動作の点で望ましい。
【実施例2】
【0053】
図2は、本発明の偏光の偏光解析装置20を用い、電界あるいは磁界測定用プローブ装置の実施例を示すブロック図である。電界あるいは磁界は、被測定物19の発する電界あるいは磁界中に設置された電気または磁気光学結晶4における電気または磁気カー効果等によって屈折率が変化する現象を応用して、屈折率の変化量から電界あるいは磁界の大きさを測定するものである。
【0054】
偏光を出力する光源1の発する偏光は、第2の光分岐手段2を介して偏波面保存光ファイバーを含む光路3に入射し、電気または磁気光学結晶4の照射へ導かれる。また、前記電気または磁気光学結晶4を透過あるいは反射した出力は、偏光解析装置20へ導かれる。偏光解析装置20はその入射光から電気または磁気光学結晶4に印加された電界あるいは磁界の参照信号と同じ周波数成分の強度、参照信号と搬送波の相対位相を解析して測定する。第2の光分岐手段2と偏光解析装置20の間には、その入射光の偏光の方位を調整するための手段、例えばλ/2板が具備されていると好ましい。
【実施例3】
【0055】
図3は光ヘテロダイン法を用いた電気または磁気プローブ装置20の実施例を示すブロック図である。光源1から出た偏光は変調装置16によって第2の信号発生手段15からの第2の参照信号で変調されて第2の光分岐手段2と光路3を介して電気または磁気光学結晶4に入射する。入射した偏光は被測定物19の発する電界あるいは磁界の影響によって入射光を変調されて、再度光路3を遡行して第2の光分岐手段2によって偏光解析装置20に入射して偏光の解析を受ける。偏光解析装置20は偏光の解析結果から電気または磁気光学結晶4に影響を及ぼした電界あるいは磁界の信号成分で第1の信号発生手段13からの第1の参照信号と同じ周波数成分の強度と、前記第2の参照信号と電界あるいは磁界の前記周波数成分との位相差を測定する。第2の参照信号を発する第2の信号発生器15はヘテロダイン検出法のために本実施例において加えられたものである。
【0056】
図6に、上記第1の信号発生手段13からの第1の参照信号33、第2の信号発生手段15からの第2の参照信号30、および被測定信号となる被測定物の発する電界あるいは磁界31の周波数の関係を示す。第2の参照信号30で変調された偏光は電気または磁気光学結晶4に入射し被測定物の発する電界あるいは磁界31によって変調される。その結果被測定物の発する電界あるいは磁界31は周波数変換されて中間周波数信号32を生ずる。偏光解析装置20は中間周波数信号32中の第1の参照信号33に等しい周波数成分を解析する。このことは被測定物の発する電界あるいは磁界31を解析することと等価である。第1の参照信号33の周波数と第2の参照信号30の周波数の和である測定する周波数が実際に解析される電界あるいは磁界の周波数位置である。
【0057】
本実施例においては第1参照信号の周波数は例えば1MHz程度の比較的低い周波数に設定し、第2の参照信号の周波数を被測定物の動作周波数に近傍に設定することが望ましい。このことによって本発明の偏光解析装置は概ね第1の参照信号の周波数に応答すればよいので、処理速度は遅い物で良く、更に第1の参照信号を周波数を固定することによって特定の周波数に応答することで十分であるので狭帯域で高性能のフィルタを導入することができる。
【実施例4】
【0058】
図7は図1に示した変更解析装置20の光学部分の実施例である。入射光28は第1の光分岐手段5によって第1の偏光22、第2の偏光23に分岐され、第1の偏光22は第1の偏光分岐手段7に入射し、互いに偏光面が直交する第3の偏光24と第4の偏光25に分岐されて、第1の光電変換手段9と第2の光電変換手段10に入射する。第2の偏光は反射鏡21によって曲げられてλ/4板6によって偏光面成分間に位相差を加えられた後、第2の偏光分岐手段8に入射して互いに偏光面が直交する第5の偏光26と第6の偏光27に分岐され、第3の光電変換手段11と第4の光電検出手段12に入射する。上記第1から第4の4つの光電変換手段の出力は信号処理回路14に入力し解析が行われる。第1の光分岐手段5としては、単なる半透鏡でもよいが、本実施例ではキューブビームスプリッターを用いている。第1および第2の偏光分離手段は、偏光分離版、ローション・プリズム、ウオラトムソン・プリズム、サバール板、グランレーザ・プリズム、偏光分離板、偏光ビームスプリッタなどが使用可能である。本実施例ではサバール板を用いた図である。第1から第4の光電変換手段は、例えば光電管、光電子増倍管、フォトダイオード、フォトトランジスタ、アバランシェフォトダイオード等を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の偏光解析装置は光の伝送路における媒質の複屈折率の変化を解析して相殺する機能を有するので、媒質の複屈折率の変動を測定することもできる。従ってレーザレーダにおける解析法などにも応用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 光源
2 第2の光分岐手段
3 光路または双方向性光路
4 電気または磁気光学結晶
5 第1の光分岐手段
6 λ/4板
7 第1の偏光分岐手段
8 第2の偏向分岐手段
9 第1の光電変換手段
10 第2の光電変換手段
11 第3の光電変換手段
12 第4の光電変換手段
13 第1の信号発生手段
14 信号処理回路
15 第2の信号発生手段
16 変調装置
19 被測定物
20 偏光解析装置
21 反射鏡
22 第1の偏光
23 第2の偏光
24 第3の偏光
25 第4の偏光
26 第5の偏光
27 第6の偏光
28 入射光
30 第2の参照信号
31 電界あるいは磁界
32 中間周波数信号
33 第1の参照信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送波とそれに直交する偏波面をもつ側帯波とを含む楕円偏光を解析対象の入射光とし、
上記入射光を第1、第2の偏光に分岐するための第1の光分岐手段と、
第1の偏光を入射光とし、その搬送波および側帯波の各々の偏波面に対して±π/4ラジアンのいずれかの方位で交叉し、2つの互いに直交する偏光成分に分離するための第1の偏光分岐手段と、
上記の互いに直交する2つの偏光成分の其々の強度を測定するための第1、第2の光電変換手段と、
第2の偏光に適用してその偏光成分間に位相差を与える1/4波長板と、
前記1/4波長板を出た第2の偏光を入射光とし、その搬送波および側帯波偏波面に対して±π/4ラジアンのいずれかの方位で交叉し、互いに直交する2つの偏光成分に分離するための第2の偏光分岐手段と、
第2の偏光変更分離手段で分離され互いに直交する2つの上記偏光成分の其々の強度を測定するための第3、第4の光電変換手段と、
第1、第2、第3、第4の光電変換手段の全ての出力を入力して、前記入射光の搬送波または側帯波のそれぞれの強度、または、その位相の一部またはすべてを算出する信号処理回路と、
解析対象の上記入射光を解析する周波数を指定するための第1の参照信号を発生する第1の信号発生器と、を具備し、
前記信号処理回路は、第1、第2の光電変換手段の各々の出力間の差である第1の差信号の指定された上記周波数における強度と、第3、第4の光電変換手段の出力間の差である第2の差信号の指定された上記周波数における強度との第1の比から、解析対象の上記入射光の搬送波と側帯波の位相差を算出するものであることを特徴とする変調光解析装置。
【請求項2】
第1の差信号と、第1の参照信号の周波数成分のπ/2または−π/2ラジアンに相当する移相を施した第2の差信号、との和信号を生成し、更に前記和信号と前記第1の参照信号との積を前記参照信号の整数周期にわたり積算して得られる第1の積算値と、上記和信号と、第1の参照信号をπ/2または−π/2ラジアン移相した信号との積を上記周期にわたり積算して得られる第2の積算値とを求め、
第1の積算値の平方値と第2の積算値の平方値との和から解析対象の上記搬送波の強度と上記側帯波の強度の積を求め、
上記信号処理回路は、第1の比と、第1の積算値と第2の積算値との比とから、第1の参照信号と解析対象の上記入射光の側帯波に含まれ第1の参照信号と同じ周波数の信号との位相差を算出するものであることを特徴とする請求項1に記載の変調光解析装置。
【請求項3】
直線偏光を出力する光源と、
電界あるいは磁界によって屈折率の変化する電気あるいは磁気光学結晶と、
請求項1記載の変調光解析装置と、
前記直線偏光を前記電気あるいは磁気光学結晶へ導くとともに前記電気あるいは磁気光学結晶を透過あるいは反射した出力を上記変調光解析装置へ導くための偏波面保存光ファイバーを含む光路と、
を具備し、
上記電気あるいは磁気光学結晶に印加された電界あるいは磁界の周波数、強度、参照信号と搬送波の相対位相の少なくとも1つを測定する機能を有することを特徴とする電界あるいは磁界検出プローブ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の構成に加えて、
上記光源からの直線偏光を変調する手段と、
第2の参照信号を発生する第1の信号発生器と、
を具備し、
上記直線偏光は第2の信号参照によって変調されて上記電気あるいは磁気光学結晶への入射光であり、
上記電気あるいは磁気光学結晶は、上記入射光に含まれる前記第2の参照信号による変調成分と、被測定電界または磁界との周波数混合を行ってその出力光に第1の周波数に相当する中間周波数成分を発生し、変調光解析装置は第1の周波数成分に対して解析処理を行う光ヘテロダイン法を用いることを特徴とする請求項3に記載の電界あるいは磁界検出プローブ装置。
【請求項5】
上記光路は、
第2の光分岐手段と、
双方向性光路を備え、
第2の光分岐手段は、上記光源から入射する上記直線偏光を上記双方向性光路を介して上記電気あるいは磁気光学結晶に送り、前記電気あるいは磁気光学結晶からのからの戻り光を上記双方向性光路を介して上記偏光解析装置に出射するものであって、
上記双方向性光路は偏波面保持光ファイバーを含むことを特徴とする請求項3あるいは請求項4に記載の電界あるいは磁界検出プローブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−103200(P2012−103200A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253919(P2010−253919)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】