説明

変速操作装置

【課題】製造コストが嵩んでしまうのを回避しつつ操作レバーの揺動範囲が異なるものに容易に対応することができる変速操作装置を提供する。
【解決手段】車両に固定されるブラケット1と、シフト方向及びセレクト方向に揺動操作されることにより車両の変速機を任意操作可能とされた操作レバー2と、ブラケット1に取り付けられるとともに、操作レバー2をブラケット1に対して揺動自在に保持するソケット3と、ブラケット1及びソケット3に形成され、所定方向に揺動した操作レバー2と当接して当該方向の更なる揺動を規制するストッパ部とを具備した変速操作装置において、ソケット3のブラケット1に対する取付状態が変更可能とされるとともに、当該取付状態に応じて操作レバー2と当接するストッパ部の位置が設定されて操作レバー2の揺動範囲が変更可能とされたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作レバーを車両の進行方向に対して前後左右方向に揺動操作することにより車両の変速機を任意操作可能とされた変速操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に設けられた変速機(トランスミッション)を変速操作するための変速操作装置は、通常、車両に固定されるブラケットと、運転者が把持して揺動操作可能な操作レバーとを具備して構成されている。このうち操作レバーは、車両の進行方向に対して前後方向であるシフト方向及び左右方向であるセレクト方向に揺動操作可能とされ、その操作がワイヤを介して変速機に伝達されることにより、当該変速機を操作して任意のシフトとすることが可能とされていた。
【0003】
また、従来の変速操作装置におけるブラケットには、操作レバーを揺動自在に保持するソケットが取り付けられるとともに、操作レバーを所定の揺動範囲内で揺動させるべく、所定角度揺動した操作レバーと当接して、その方向に対する更なる操作レバーの揺動を規制するためのストッパ部が形成されていた。かかるストッパ部を形成することにより、操作レバーが揺動範囲を超えて揺動してしまってワイヤ等に過負荷が付与され、当該ワイヤや周辺部品が破損或いは変形してしまうのを回避することができる。なお、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の変速操作装置においては、以下の如き問題があった。
例えば、図11に示すように、1〜5速及びリバース(R)の各シフト操作が可能な変速操作装置(5速仕様)(同図(a)参照)と、1〜6速及びリバース(R)の各シフト操作が可能な変速操作装置(6速仕様)(同図(b)参照)とでは、操作レバーのニュートラル(N)の位置からの揺動範囲(設定揺動範囲)が異なり、ニュートラル(N)からリバース側に向かうセレクト方向に関しては、6速仕様の方が5速仕様より揺動範囲が大きい。したがって、5速仕様と6速仕様とでニュートラル(N)からリバース側に向かうセレクト方向のストッパ部の形成位置が互いに異なることから、5速仕様のブラケットと6速仕様のブラケットとの2種類のブラケットを用意しておく必要があり、製造コストが嵩んでしまうという問題があった。
【0005】
また、6速仕様の変速操作装置においても5速仕様のブラケットを用いるようにすれば、1種類のブラケットを用意すれば足りることから、製造コストの低減を図ることができると思われるものの、その場合、操作レバーをニュートラル(N)からリバース側に向けて揺動操作する際、当該操作レバーがストッパ部と当接せず、変速機と連結されたワイヤ等に過負荷が付与されてしまうという不具合がある。しかるに、ワイヤ等に過負荷が付与されても当該ワイヤや周辺部品が破損或いは変形してしまうのを防止すべく、それら部品を補強して対応することも考えられるが、その場合であっても、少なくとも補強の分だけ製造コストが嵩んでしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、製造コストが嵩んでしまうのを回避しつつ操作レバーの揺動範囲が異なるものに容易に対応することができる変速操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、車両に固定されるブラケットと、車両の前後方向であるシフト方向及び左右方向であるセレクト方向に揺動操作されることにより車両の変速機を任意操作可能とされた操作レバーと、前記ブラケットに取り付けられるとともに、前記操作レバーを当該ブラケットに対して揺動自在に保持する保持手段と、前記ブラケット又は保持手段に形成され、所定方向に揺動した前記操作レバーと当接して当該方向の更なる揺動を規制するストッパ部とを具備した変速操作装置において、前記保持手段の前記ブラケットに対する取付状態が変更可能とされるとともに、当該取付状態に応じて前記操作レバーと当接するストッパ部の位置が設定されて当該操作レバーの揺動範囲が変更可能とされたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の変速操作装置において、前記ストッパ部は、前記操作レバーのセレクト方向の揺動のうち一方の方向に揺動した前記操作レバーと当接して当該一方の方向の更なる揺動を規制する第1ストッパ部と、前記操作レバーのセレクト方向の揺動のうち他方の方向に揺動した前記操作レバーと当接して当該他方の方向の更なる揺動を規制する第2ストッパ部とを具備したことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の変速操作装置において、前記保持手段は、その周方向に回転することにより取付状態が任意選択可能とされ、前記操作レバーの揺動範囲を変更可能とされたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の変速操作装置において、前記保持手段は、その周方向に180度回転することにより取付状態が第1の取付状態と第2の取付状態との間で変更可能とされ、前記操作レバーのセレクト方向の揺動範囲を変更可能とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、保持手段のブラケットに対する取付状態が変更可能とされるとともに、当該取付状態に応じて操作レバーと当接するストッパ部の位置が設定されて当該操作レバーの揺動範囲が変更可能とされたので、製造コストが嵩んでしまうのを回避しつつ操作レバーの揺動範囲が異なるものに容易に対応することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、ストッパ部は、操作レバーのセレクト方向の揺動のうち一方の方向に揺動した操作レバーと当接して当該一方の方向の更なる揺動を規制する第1ストッパ部と、操作レバーのセレクト方向の揺動のうち他方の方向に揺動した操作レバーと当接して当該他方の方向の更なる揺動を規制する第2ストッパ部とを具備したので、操作レバーのセレクト方向の揺動範囲を容易かつ確実に設定することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、保持手段は、その周方向に回転することにより取付状態が任意選択可能とされ、操作レバーの揺動範囲を変更可能とされたので、保持手段の取付状態をより円滑に変更することができ、操作レバーの揺動範囲が異なるものにより一層容易に対応することができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、保持手段は、その周方向に180度回転することにより取付状態が第1の取付状態と第2の取付状態との間で変更可能とされ、操作レバーのセレクト方向の揺動範囲を変更可能とされたので、製造コストが嵩んでしまうのを回避しつつ操作レバーの揺動範囲が異なる2種類のものに容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る変速操作装置を示す斜視図
【図2】同変速操作装置を示す側面図
【図3】同変速操作装置におけるソケットを示す斜視図
【図4】同ソケットを示す断面図
【図5】同ソケットをブラケットに取り付けた状態(第1の取付状態)を示す断面図
【図6】同ソケットをブラケットに取り付けた状態(第2の取付状態)を示す断面図
【図7】本発明の第2実施形態に係る変速操作装置におけるソケットを示す斜視図
【図8】同ソケットを示す断面図
【図9】同ソケットをブラケットに取り付けた状態(第1の取付状態)を示す断面図
【図10】同ソケットをブラケットに取り付けた状態(第2の取付状態)を示す断面図
【図11】(a)5速仕様の変速操作装置における操作レバーの揺動範囲を示す模式図(b)6速仕様の変速操作装置における操作レバーの揺動範囲を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る変速操作装置は、操作レバーを車両の進行方向に対して前後左右方向に揺動操作することにより自動車の変速機(マニュアルトランスミッション)を任意操作可能とされたもので、図1〜4に示すように、ブラケット1と、操作レバー2と、保持手段としてのソケット3とから主に構成されている。
【0017】
ブラケット1は、その上面にエスカッション(不図示)が取り付けられるとともに、操作レバー2及びソケット3等を保持しつつ車両の運転席近傍に固定されるものであり、例えば樹脂成形品やダイカスト成形品等で構成される。なお、ブラケット1は、車種に応じた任意形状及び寸法のものとされ、車両に固定するためのボルト等を挿通させるためのボルト孔等が任意の位置に形成されている。
【0018】
操作レバー2は、車両の前後方向であるシフト方向a及び左右方向であるセレクト方向bに揺動操作されることにより車両の変速機(マニュアルトランスミッション)を任意操作可能とされたもので、図5、6に示すように、球状の支承部2aを介してブラケット1に対して揺動自在に支持されるよう構成されている。かかる操作レバー2の先端部2bには、変速機まで延びるワイヤW1(図2参照)が接続され、当該操作レバー2のシフト方向aの揺動をワイヤW1を介して変速機に伝達可能とされている。
【0019】
なお、操作レバー2の支承部2aからは、側方に向かって連動部2cが突設されており、この連動部2cにリンケージ4(ベルクランク)が接続されている。このリンケージ4には、変速機まで延びるワイヤW2(図2参照)が接続される接続部4aが突設されている。しかして、操作レバー2のセレクト方向bの揺動は、連動部2cを介してリンケージ4に伝達され、当該リンケージ4にてシフト方向aと同一方向の揺動動作に変換されつつワイヤW2を介して変速機に伝達可能とされている。
【0020】
すなわち、運転者が操作レバー2の基端側に形成されたシフトノブ(不図示)を把持しつつ当該操作レバー2をシフト方向aに揺動操作すると、その動作が先端部2bに接続されたワイヤW1を介して変速機に伝達されるとともに、操作レバー2をセレクト方向bに揺動操作すると、その動作がリンケージ4の接続部4aに接続されたワイヤW2を介して変速機に伝達されるよう構成されており、運転者が意図する任意の変速操作が可能とされているのである。
【0021】
ソケット3(保持手段)は、ブラケット1における操作レバー2の支持位置に取り付けられるとともに、操作レバー2を当該ブラケット1に対して揺動自在に保持するためのものであり、例えばポリアセタールPOM等から成る部品で構成されている。しかるに、ソケット3は、所定の取付状態でブラケット1に取り付けられるとともに、操作レバー2の支承部2aを回転可能に支承することで、操作レバー2を揺動自在に保持可能とされているのである。
【0022】
また、ブラケット1及びソケット3には、所定方向に揺動した操作レバー2と当接して当該方向の更なる揺動を規制するストッパ部(本実施形態においては、ブラケット1に形成されたストッパ部1a、1b、及びソケット3に形成されたストッパ部3a、3b)が形成されている。なお、ソケット3は、図3〜5に示すように、上下方向に開口した略筒状部材から成るとともに、上下方向に亘って操作レバー2を貫通させつつ支持可能とされている。そして、当該ソケット3の下部の開口縁部における対向する位置にストッパ部3a、3bがそれぞれ形成されているのである。
【0023】
ここで、本実施形態においては、ソケット3は、ブラケット1に対する取付状態が変更可能とされるとともに、当該取付状態に応じて操作レバー2と当接するストッパ部の位置が設定されて当該操作レバー2の揺動範囲が変更可能とされている。より具体的には、本実施形態に係るソケット3は、その周方向c(図3参照)に180度回転することにより取付状態が任意選択可能とされており、当該回転によって、図5に示すような第1の取付状態、図6に示すような第2の取付状態との間で変更可能とされ、操作レバー2の揺動範囲を変更可能とされているのである。
【0024】
しかるに、ソケット3が第1の取付状態でブラケット1に取り付けられた場合、図5に示すように、ソケット3に形成されたストッパ部3aが、操作レバー2のセレクト方向bの揺動のうち一方の方向baに揺動した操作レバー2と当接して当該一方の方向baの更なる揺動を規制する第1ストッパ部を構成するとともに、ブラケット1に形成されたストッパ部1aが、操作レバー2のセレクト方向bの揺動のうち他方の方向bbに揺動した操作レバー2と当接して(同図2点鎖線参照)当該他方の方向bbの更なる揺動を規制する第2ストッパ部を構成することとなる。
【0025】
すなわち、かかる第1の取付状態においては、ソケット3に形成されたストッパ部3aが一方の方向baに揺動した操作レバー2と当接するとともに、ブラケット1に形成されたストッパ部1aが他方の方向bbに揺動した操作レバー2と当接することとなり、これにより、該操作レバー2の揺動範囲が設定されることとなる。なお、この場合、ソケット3に形成されたストッパ部3b及びブラケット1に形成されたストッパ部1bは、揺動した操作レバー2と当接せず、操作レバー2の揺動範囲を設定する機能を果たさない状態とされる。
【0026】
一方、ソケット3が第2の取付状態でブラケット1に取り付けられた場合、図6に示すように、ソケット3に形成されたストッパ部3b及びブラケット1に形成されたストッパ部1bが、操作レバー2のセレクト方向bの揺動のうち一方の方向baに揺動した操作レバー2と当接して当該一方の方向baの更なる揺動を規制する第1ストッパ部を構成するとともに、ソケット3に形成されたストッパ部3a及びブラケット1に形成されたストッパ部1aが、操作レバー2のセレクト方向bの揺動のうち他方の方向bbに揺動した操作レバー2と当接して(同図2点鎖線参照)当該他方の方向bbの更なる揺動を規制する第2ストッパ部を構成することとなる。
【0027】
すなわち、かかる第2の取付状態においては、ソケット3に形成されたストッパ部3b及びブラケット1に形成されたストッパ部1bが一方の方向baに揺動した操作レバー2と当接するとともに、ソケット3に形成されたストッパ部3a及びブラケット1に形成されたストッパ部1aが他方の方向bbに揺動した操作レバー2と当接することとなり、これにより、該操作レバー2の揺動範囲が設定されることとなる。なお、この場合、ソケット3に形成されたストッパ部3a、3b及びブラケット1に形成されたストッパ部1a、1bは、何れも揺動した操作レバー2と当接して、操作レバー2の揺動範囲を設定する機能を果たす状態とされる。
【0028】
しかして、本実施形態においては、第2の取付状態より第1の取付状態の方が、操作レバー2のセレクト方向bの揺動のうち一方の方向baの揺動角度が小さく設定されており、例えば図11(a)で示す如き5速仕様に適用する場合は、ソケット3を第1の取付状態とするとともに、同図(b)で示す如き6速仕様に適用する場合は、ソケット3を第2の取付状態とすることができる。
【0029】
なお、第2の取付状態より第1の取付状態の方が、操作レバー2のセレクト方向bの揺動のうち一方の方向baの揺動角度が大きく設定されたもの、或いは操作レバー2のセレクト方向bの揺動のうち他方の方向bbの揺動角度をソケット3の取付状態に応じて異ならせるもの等としてもよい。また、本実施形態においては、ブラケット1に形成されたストッパ部1a、1b及びソケット3に形成されたストッパ部3a、3bの合計4カ所にストッパ部が形成されているが、例えばストッパ部1b及びストッパ部3bのうち何れか一方と、ストッパ部1a及びストッパ部3aとの合計3カ所にストッパ部が形成されたものであってもよい。
【0030】
上記実施形態によれば、ソケット3のブラケット1に対する取付状態が変更可能とされるとともに、当該取付状態に応じて操作レバー2と当接するストッパ部の位置が設定されて当該操作レバー2の揺動範囲が変更可能とされたので、ブラケット1及びソケット3を操作レバー2の揺動範囲の異なるもので共用させることができ、製造コストが嵩んでしまうのを回避しつつ操作レバー2の揺動範囲が異なるものに容易に対応することができる。
【0031】
また、ストッパ部は、操作レバー2のセレクト方向bの揺動のうち一方の方向baに揺動した操作レバー2と当接して当該一方の方向baの更なる揺動を規制する第1ストッパ部と、操作レバー2のセレクト方向bの揺動のうち他方の方向bbに揺動した操作レバー2と当接して当該他方の方向bbの更なる揺動を規制する第2ストッパ部とを具備したので、操作レバー2のセレクト方向bの揺動範囲を容易かつ確実に設定することができる。
【0032】
さらに、ソケット3は、その周方向cに回転することにより取付状態が任意選択可能とされ、操作レバー2の揺動範囲を変更可能とされたので、ソケット3の取付状態をより円滑に変更することができ、操作レバー2の揺動範囲が異なるものにより一層容易に対応することができる。特に本実施形態によれば、ソケット3は、その周方向cに180度回転することにより取付状態が第1の取付状態と第2の取付状態との間で変更可能とされ、操作レバー2のセレクト方向bの揺動範囲を変更可能とされたので、製造コストが嵩んでしまうのを回避しつつ操作レバー2の揺動範囲が異なる2種類のもの(本実施形態においては、5速仕様のもの及び6速仕様のもの)に容易に対応することができる。
【0033】
次に、本発明の第2の実施形態に係る変速操作装置について説明する。
本実施形態に係る変速操作装置は、第1の実施形態と同様、操作レバーを車両の進行方向に対して前後左右方向に揺動操作することにより自動車の変速機(マニュアルトランスミッション)を任意操作可能とされたもので、図7〜10に示すように、ブラケット1’と、操作レバー2と、保持手段としてのソケット5とから主に構成されている。なお、操作レバー2或いはブラケット1’のストッパ部以外の部位は、第1の実施形態と略同一構成のものであるため、詳細な説明を省略することとする。
【0034】
本実施形態に係るソケット5(保持手段)は、第1実施形態に係るソケット3と同様、ブラケット1’における操作レバー2の支持位置に取り付けられるとともに、操作レバー2を当該ブラケット1’に対して揺動自在に保持するためのものであり、例えばポリアセタールPOM等から成る部品で構成されている。しかるに、ソケット5は、所定の取付状態でブラケット1’に取り付けられるとともに、操作レバー2の支承部2aを回転可能に支承することで、操作レバー2を揺動自在に保持可能とされているのである。
【0035】
本実施形態に係るブラケット1’及びソケット5には、所定方向に揺動した操作レバー2と当接して当該方向の更なる揺動を規制するストッパ部(本実施形態においては、ブラケット1’に形成されたストッパ部1’a、1’b、及びソケット5に形成されたストッパ部5a)が形成されている。なお、ソケット5は、図7〜9に示すように、上下方向に開口した略筒状部材から成るとともに、上下方向に亘って操作レバー2を貫通させつつ支持可能とされている。そして、当該ソケット5の上部の開口縁部を突設させてストッパ部5aが形成されているのである。
【0036】
ここで、本実施形態においては、ソケット5は、ブラケット1’に対する取付状態が変更可能とされるとともに、当該取付状態に応じて操作レバー2と当接するストッパ部の位置が設定されて当該操作レバー2の揺動範囲が変更可能とされている。より具体的には、本実施形態に係るソケット5は、その周方向c(図7参照)に180度回転することにより取付状態が任意選択可能とされており、当該回転によって、図9に示すような第1の取付状態、図10に示すような第2の取付状態との間で変更可能とされ、操作レバー2の揺動範囲を変更可能とされているのである。
【0037】
しかるに、ソケット5が第1の取付状態でブラケット1’に取り付けられた場合、図9に示すように、ソケット5に形成されたストッパ部5aが、操作レバー2のセレクト方向bの揺動のうち一方の方向baに揺動した操作レバー2と当接して当該一方の方向baの更なる揺動を規制する第1ストッパ部を構成するとともに、ブラケット1’に形成されたストッパ部1’aが、操作レバー2のセレクト方向bの揺動のうち他方の方向bbに揺動した操作レバー2と当接して(同図2点鎖線参照)当該他方の方向bbの更なる揺動を規制する第2ストッパ部を構成することとなる。
【0038】
すなわち、かかる第1の取付状態においては、ソケット5に形成されたストッパ部5aが一方の方向baに揺動した操作レバー2と当接するとともに、ブラケット1’に形成されたストッパ部1’aが他方の方向bbに揺動した操作レバー2と当接することとなり、これにより、該操作レバー2の揺動範囲が設定されることとなる。なお、この場合、ブラケット1’に形成されたストッパ部1’bは、揺動した操作レバー2と当接せず、操作レバー2の揺動範囲を設定する機能を果たさない状態とされる。
【0039】
一方、ソケット5が第2の取付状態でブラケット1’に取り付けられた場合、図10に示すように、ブラケット1’に形成されたストッパ部1’bが、操作レバー2のセレクト方向bの揺動のうち一方の方向baに揺動した操作レバー2と当接して当該一方の方向baの更なる揺動を規制する第1ストッパ部を構成するとともに、ブラケット1’に形成されたストッパ部1’aが、操作レバー2のセレクト方向bの揺動のうち他方の方向bbに揺動した操作レバー2と当接して(同図2点鎖線参照)当該他方の方向bbの更なる揺動を規制する第2ストッパ部を構成することとなる。
【0040】
すなわち、かかる第2の取付状態においては、ブラケット1’に形成されたストッパ部1’bが一方の方向baに揺動した操作レバー2と当接するとともに、ブラケット1’に形成されたストッパ部1’aが他方の方向bbに揺動した操作レバー2と当接することとなり、これにより、該操作レバー2の揺動範囲が設定されることとなる。なお、この場合、ソケット5に形成されたストッパ部5aは、揺動した操作レバー2と当接せず、操作レバー2の揺動範囲を設定する機能を果たさない状態とされる。
【0041】
しかして、本実施形態においては、第1の実施形態と同様、第2の取付状態より第1の取付状態の方が、操作レバー2のセレクト方向bの揺動のうち一方の方向baの揺動角度が小さく設定されており、例えば図11(a)で示す如き5速仕様に適用する場合は、ソケット5を第1の取付状態とするとともに、同図(b)で示す如き6速仕様に適用する場合は、ソケット5を第2の取付状態とすることができる。
【0042】
なお、第2の取付状態より第1の取付状態の方が、操作レバー2のセレクト方向bの揺動のうち一方の方向baの揺動角度が大きく設定されたもの、或いは操作レバー2のセレクト方向bの揺動のうち他方の方向bbの揺動角度をソケット5の取付状態に応じて異ならせるもの等としてもよい。また、本実施形態においては、ブラケット1’に形成されたストッパ部1’a、1’b及びソケット5に形成されたストッパ部5aの合計3カ所にストッパ部が形成されているが、例えばソケット5のストッパ部5aと対向する位置に、第2の取付状態でストッパ部1’bと共に第1ストッパ部を構成するストッパ部を形成するようにしてもよく、その場合、ストッパ部1’bを形成しないものとしてもよい。
【0043】
上記実施形態によれば、ソケット5のブラケット1’に対する取付状態が変更可能とされるとともに、当該取付状態に応じて操作レバー2と当接するストッパ部の位置が設定されて当該操作レバー2の揺動範囲が変更可能とされたので、ブラケット1’及びソケット5を操作レバー2の揺動範囲の異なるもので共用させることができ、製造コストが嵩んでしまうのを回避しつつ操作レバー2の揺動範囲が異なるものに容易に対応することができる。
【0044】
また、ストッパ部は、操作レバー2のセレクト方向bの揺動のうち一方の方向baに揺動した操作レバー2と当接して当該一方の方向baの更なる揺動を規制する第1ストッパ部と、操作レバー2のセレクト方向bの揺動のうち他方の方向bbに揺動した操作レバー2と当接して当該他方の方向bbの更なる揺動を規制する第2ストッパ部とを具備したので、操作レバー2のセレクト方向bの揺動範囲を容易かつ確実に設定することができる。
【0045】
さらに、ソケット5は、その周方向cに回転することにより取付状態が任意選択可能とされ、操作レバー2の揺動範囲を変更可能とされたので、ソケット5の取付状態をより円滑に変更することができ、操作レバー2の揺動範囲が異なるものにより一層容易に対応することができる。特に本実施形態によれば、ソケット5は、その周方向cに180度回転することにより取付状態が第1の取付状態と第2の取付状態との間で変更可能とされ、操作レバー2のセレクト方向bの揺動範囲を変更可能とされたので、製造コストが嵩んでしまうのを回避しつつ操作レバー2の揺動範囲が異なる2種類のもの(本実施形態においては、5速仕様のもの及び6速仕様のもの)に容易に対応することができる。
【0046】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えばソケット(3、5)を180度以外の所定角度(例えば90度等)回転させ、或いは上下反転させることにより、ブラケット(1、1’)に対して互いに異なる取付状態とすることができるものとし、当該取付状態に応じて操作レバー2と当接するストッパ部の位置が設定されて当該操作レバー2の揺動範囲が変更可能とされたものとしてもよい。
【0047】
また、本実施形態においては、ソケット(3、5)とブラケット(1、1’)との双方にストッパ部を形成しておき、ソケット(3、5)の取付状態に応じて操作レバー2と当接させるストッパ部を異ならせるよう構成されているが、ソケット(3、5)の取付状態に応じて操作レバー2と当接するストッパ部の位置が設定されて当該操作レバー2の揺動範囲が変更可能とされるものであれば、ストッパ部がソケットのみに形成されたもの、或いはブラケットのみに形成されたものとしてもよい。
【0048】
さらに、第2の実施形態に係るソケット5は、操作レバー2の支承部2aを回転可能に支承することで、操作レバー2を揺動自在に保持可能とされているが、当該支承部2aにおける下側の球面をブラケット1’にて受けるようにし、当該支承部2aにおける上側の球面をソケット5にて保持させるものとして、操作レバー2の支承部2aを上下方向で挟持する構成のものに適用するようにしてもよい。この場合、ソケット5は、ブラケット1’に取り付けられた状態でその取付状態が変更可能とされたものであってもよい。
【0049】
なお、本実施形態においては、適用される変速機がマニュアルトランスミッションとされているが、シフト方向及びセレクト方向に揺動操作可能な操作レバーを有するものであれば、自動変速機を操作するものに適用してもよい。また、本実施形態においては、操作レバーのセレクト方向の揺動範囲を変更可能なものとされているが、操作レバーのシフト方向の揺動範囲を変更可能なものに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
保持手段のブラケットに対する取付状態が変更可能とされるとともに、当該取付状態に応じて操作レバーと当接するストッパ部の位置が設定されて当該操作レバーの揺動範囲が変更可能とされた変速操作装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1、1’ ブラケット
2 操作レバー
3 ソケット(保持手段)
4 リンケージ
5 ソケット
a シフト方向
b セレクト方向
c 周方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に固定されるブラケットと、
車両の前後方向であるシフト方向及び左右方向であるセレクト方向に揺動操作されることにより車両の変速機を任意操作可能とされた操作レバーと、
前記ブラケットに取り付けられるとともに、前記操作レバーを当該ブラケットに対して揺動自在に保持する保持手段と、
前記ブラケット又は保持手段に形成され、所定方向に揺動した前記操作レバーと当接して当該方向の更なる揺動を規制するストッパ部と、
を具備した変速操作装置において、
前記保持手段の前記ブラケットに対する取付状態が変更可能とされるとともに、当該取付状態に応じて前記操作レバーと当接するストッパ部の位置が設定されて当該操作レバーの揺動範囲が変更可能とされたことを特徴とする変速操作装置。
【請求項2】
前記ストッパ部は、
前記操作レバーのセレクト方向の揺動のうち一方の方向に揺動した前記操作レバーと当接して当該一方の方向の更なる揺動を規制する第1ストッパ部と、
前記操作レバーのセレクト方向の揺動のうち他方の方向に揺動した前記操作レバーと当接して当該他方の方向の更なる揺動を規制する第2ストッパ部と、
を具備したことを特徴とする請求項1記載の変速操作装置。
【請求項3】
前記保持手段は、その周方向に回転することにより取付状態が任意選択可能とされ、前記操作レバーの揺動範囲を変更可能とされたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の変速操作装置。
【請求項4】
前記保持手段は、その周方向に180度回転することにより取付状態が第1の取付状態と第2の取付状態との間で変更可能とされ、前記操作レバーのセレクト方向の揺動範囲を変更可能とされたことを特徴とする請求項3記載の変速操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−91473(P2013−91473A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236249(P2011−236249)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(391064005)株式会社アツミテック (39)
【Fターム(参考)】