説明

変速機駆動プレート用の磁気トルクセンサ

【課題】磁気弾性活性領域を備えたディスク状部材を有する磁気トルク感知デバイスを提供する。
【解決手段】磁気弾性活性領域は、逆向きに分極された磁気的に調整された領域を有し、その初期磁化方向は、磁気弾性活性領域に近接して配置された磁場センサ対の感知方向に垂直である。磁場センサは、RSU性能を改善してコンパシングの悪影響を低減しながらトルクを正確に測定するようにディスク状部材に対して特別に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の変速機用の方法及び感知デバイスに係り、特に、変速機駆動プレート又は同様のディスク状部材を半径方向に伝わるトルクの測定を提供するための非接触磁気弾性トルクセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
回転駆動シャフトを有するシステムの制御においては、トルク及び速度が基本的な対象パラメータである。従って、正確で信頼性があり且つ安価な方法でのトルクの感知及び測定が、このような制御システムの設計の主な課題であり続けている。
【0003】
以前では、トルク測定は、シャフトに直接取り付けられた接触型センサを用いて行われていた。このようなセンサの一つが、“歪みゲージ”型トルク検出装置であり、一つ又は複数の歪みゲージが、シャフトの外周面に直接取り付けられ、トルク誘起歪みによって生じる抵抗の変化が、ブリッジ回路又は他の周知の手段を用いて測定される。しかしながら、接触型センサは比較的不安定であり、回転シャフトへの直接接触に起因して信頼性が限られたものである。また、これらのセンサは高価であり、トルクセンサが必要である自動車のステアリングシステム等の多くの応用における競合的使用に対しては商業的に不向きである。
【0004】
その後、回転シャフトと共に使用するための磁歪型の非接触トルクセンサが開発された。例えば、Garshelisの特許文献1(参照として本願に組み込まれる)には、適切な強磁性及び磁歪性表面を有するトルク伝達部材と、各々対称で螺旋状の残留応力誘起磁気異方性が与えられた部材内部の二つの軸方向に区別できる円周バンドと、トルク部材に接触せずに、トルク伝達部材に印加される力に対する二つのバンドの応答の違いを検出するための磁気識別装置とを備えたセンサが開示されている。大抵の場合、磁化及び感知は、バンドを覆い取り囲む一対の励磁コイルを提供することによって達成され、ここで、これらコイルは、直接に接続されて、交流によって駆動される。トルクは、二つのバンドの外部磁束に起因する異なる信号を感知するために逆向きに接続された一対の感知コイルを用いることによって感知される。残念ながら、センサが用いられる装置の上及び周囲に必須な励磁及び感知コイル用に十分な空間を提供することは、空間が貴重である応用においては実際的な問題を生じさせ得る。また、このようなセンサは、自動車応用等の非常にコスト競争力のあるデバイスに対する使用にとって非現実的に高価であり得る。
【0005】
初期円周方向残留磁化のトルク誘起傾斜から生じる場を測定することに基づいたトルク変換器が開発されていて、好ましくは、場発生素子として機能する薄壁のリング(“カラー”)を利用する。例えば、Grashelisの特許文献2及び特許文献3(本願に参照として組み込まれる)を参照。リング内の引っ張り“フープ”応力(測定されるトルクを伝達するシャフトへの取り付け手段に関連する)は、優勢な円周方向一軸性異方性を与える。シャフトにねじり応力を印加すると、磁化が再配向して、ねじり応力が増大するにつれて次第に螺旋状になる。ねじりに起因する螺旋状磁化は、半径方向成分及び軸方向成分を有し、軸方向成分の大きさは、ねじれの程度に完全に依存する。一つ又は複数の磁場ベクトルセンサを用いて、シャフト上の磁気的に調整された領域(磁気的に条件付けされた領域)の上方の空間において印加トルクの結果として生じる場の大きさ及び極性を感知して、トルクの大きさ及び方向を反映した信号出力を提供することができる。リングセンサ内のピーク許容可能トルクが、リング/シャフト界面における滑りによって制限されるので、トルク過負荷の条件下におけるリング/シャフト界面における滑りから生じる歪みに関する懸念が表明されている。これによって、寄生場の悪影響を最少化する異なる物質の複数の部分の必要性と共に、代替設計の調査が求められている。
【0006】
磁気弾性トルク変換器が開発されていて、活性トルク感知領域が、シャフトに取り付ける必要がある別個の強磁性素子の上ではなくて、シャフト自体の上に直接形成される。例えば、Grashelisの特許文献4(参照として本願に組み込まれる)を参照。所謂“カラーレス”変換器の一形状では、磁気弾性活性領域が、単一の円周方向に分極されて、それ自体が、部材に対するトルクの印加に従った領域内の磁化を、印加トルクがゼロに下がった際に単一の円周方向に戻すのに十分な磁気異方性を有する。トルクのかかるシャフトは、多結晶物質製であることが望ましく、局所磁化の分布の少なくとも50%が、磁化分極の方向周りに対称的な90度の四分円内に存在して、変換領域場は、磁場センサによって感じられる正味の磁場の有用性(トルク感知目的に対して)を壊すのに十分な強度のシャフトの領域近傍の寄生磁場を生成しないように十分高い飽和保磁力を有する。このような変換器の特に好ましい形状においては、シャフトは、立方体対称性を有するランダムに配向した多結晶物質製であり、その飽和保磁力は、15エルステッド(Oe)以上、望ましくは20Oe以上、好ましくは35Oe以上のである。
【0007】
最近、ディスク状部材の半径方向に離隔された複数箇所の間に伝達されるトルクを示す信号を提供する非接触磁気弾性トルクセンサが開発されている。Jonesの特許文献5(参照として本願に組み込まれる)には、単一の円周方向に分極された磁気弾性活性領域を有するディスク状部材を含むトルクセンサが記載されている。この特許文献では、磁場センサが活性領域に近接して取り付けられていて、そのセンサが、シャフトからディスク状部材まで伝達されるトルクに起因する磁場の大きさを感知して、また、そのセンサが、それに応答して信号を出力する。このような構成は、後述のように、コンパシングの影響を受け易いものであり得る。この特許文献には、二重の円周方向に逆向きに分極した領域を有するディスクも記載されていて、同じ半径方向ラインに沿って配置された二つのセンサが備わっていて、それらの感知方向は半径方向において逆向きであり、コモンモード場をキャンセルすることができる。しかしながら、この配置のセンサは、ディスクに印加されるトルクの変化に応答して線形に変化しない磁場信号をセンサがピックアップするという望ましくない結果を有する。
【0008】
他の従来技術には、環状の磁気的に調整された領域が互いに離隔されていて、半径方向に間隔が空けられているという領域を有するディスク状部材を含むトルクセンサが記載されている。しかしながら、磁気的に調整された領域間にギャップを有するトルクセンサは、二つの環状の磁気的に調整された領域間におけるランダムな漏洩磁場に起因して大きな回転信号均一性(RSU,rotational signal uniformity)を示し得ると考えられている。理想的には、トルクセンサは、ゼロのRSU信号を示し、これは、トルクが回転部材に印加されていない又は一定のトルクが回転部材に印加されている場合に、部材の回転中に信号出力の変化が無いこととして定義される。しかしながら、実際には、表面処理及び磁化プロセスにおける不備に起因して、顕著なRSU信号が検出される。更に、磁気的に調整された領域間にギャップを有するディスク状部材を有するトルクセンサは、追加の空間を要し、これは、ディスクの磁気的に調整された領域用に利用可能な平坦な表面の量が限られている応用において望ましくない。
【0009】
磁場が、その測定に関して、代替可能であるので、上記の及び他の従来技術の教示によるセンサは、外部由来の他の磁場の影響を受け易い。特に、地磁場は、“コンパシング”として知られる現象を生じさせて、測定場が、トルク誘起磁場及び地磁場の和となる。本願において、“コンパシング”との用語は、地磁場に起因する誤差を表すものとして用いられる。
【0010】
外部由来の磁場は、遠距離場源及び近距離場源の両方から生じ得る。遠距離場源(地磁場を有する地球等)は一般的に、多数の磁場センサを有するトルク感知デバイス内の各磁場センサに同じ影響を有する。近距離場源(永久磁石、磁化レンチ、モータ、ソレノイド等)は、顕著な局所勾配を有する磁場を生じさせ得て、多数の磁場センサを有するトルク感知デバイス内の異なる磁場センサに対して顕著に異なる影響を有する。
【0011】
Garshelisの特許文献3は、遠距離場源に対するコンパシングの問題を対象としている。この特許文献では、シャフトは、二つの軸方向に区別可能な磁気弾性活性領域(反対の円周方向に分極している)を有するものとして記載されていて、磁場センサは、活性領域に近接して配置された逆向きの軸方向極性を有し、シャフトに印加されるトルクに応答して出力信号を提供する。磁場センサの出力を足し合わせることによって、全てのコモンモード外部磁場(つまり、遠距離場)がキャンセルされる。このような方式を用いた応用では、逆に分極したセンサは、可能な限り互いに近接して配置されて、コモンモード阻止方式の効率を保つことが望ましい。地磁場が、トルクセンサの中及び周囲の強磁性部分の周囲において顕著に歪み得るので、互いに間隔のあけられたセンサは、コモンモード阻止効率の低下を示す。
【0012】
Leeの特許文献6(参照として本願に組み込まれる)には、トルク誘起磁場をキャンセルせずに外部源からの近距離場磁気ノイズをキャンセルするように設計されたトルク感知デバイスが記載されている。この文献には、シャフトに近接して軸方向に間隔の空けられた三組の磁場センサを含むトルクセンサが記載されていて、そのシャフトは、円周方向に分極した磁気弾性活性領域を有する。各磁場センサが受信した信号は、近距離場源の影響を補償するように調整される。
【0013】
環状の磁気弾性活性領域を備えた強磁性部材を有するトルク感知デバイスのおいては、磁場センサと或る半径の部材との間の角距離に関わらず、部材に印加されるトルクを正確に表す信号をピックアップするように、磁気弾性活性領域に近接して配置された磁場センサが望ましい。この特性を示すトルク感知デバイスは、回転信号均一性(RSU)が改善されたものである。環状の磁気弾性活性領域に関する深度、幅、磁場強度の不均一性は、顕著なRSU信号に繋がり得て、結局、不正確なトルク測定に繋がる。また、RSU性能の改善及びヒステリシス効果の低減は、従来技術において知られているように、磁化の前に、強磁性部材を、適切な表面硬度処理に晒すことによっても達成可能である。例えば、特許文献6には、角方向及び軸方向に間隔が空けられて、回転可能シャフトの円周方向表面に近接して配置された複数の磁場センサを組み込むことによってRSU性能の改善を示すように設計されたトルク感知デバイスが記載されている。
【0014】
従来技術に記載されているトルク感知デバイスは、RSU性能の改善及びコンパシングによって生じる悪影響を低減しながら、シャフトとディスク状部材の半径方向隔離部分との間に伝達されるトルクを測定するように特別に構成されたものではない。従って、このようなデバイスが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第4896544号明細書
【特許文献2】米国特許第5351555号明細書
【特許文献3】米国特許第5520059号明細書
【特許文献4】米国特許第6047605号明細書
【特許文献5】米国特許第6513395号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2009/0230953号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本願において説明されるように、本発明は、軸周りに回転可能なディスク状部材(滑車、ギア、スプロケット等)のトルクを測定するのに適用可能である。
【0017】
本発明の主な課題は、シャフトとディスク状部材の半径方向離隔部分との間に伝達されるトルクを測定するために、ディスク状部材に近接して配置された非接触磁場センサを有するトルク感知デバイスを提供することである。
【0018】
本発明の他の課題は、印加トルクを表す信号を出力する磁場センサを有するトルク感知デバイスを提供することであり、その出力信号は、印加トルクの変化に対して線形に変化する。
【0019】
本発明の他の課題は、対で配置された磁場センサを有するトルク感知デバイスを提供することであり、それら磁場センサは、互いに逆向きの感知方法を有し、磁気的ノイズの悪影響(コンパシングを含む)を最少化する。
【0020】
本発明の他の課題は、トルク感知デバイスのRSU性能を増強するように、二重の分離されていない逆に分極した磁気的に調整された領域を有する環状の磁気弾性活性領域を有するトルク感知デバイスを提供することである。
【0021】
本発明の他の課題は、トルク感知デバイスのRSU性能を増強するように、特別に配置された複数の角度的に間隔の空けられた磁場センサを有するトルク感知デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
概説すると、本発明の上記及び他の課題、利点、並びに特徴は、本願において実施され完全に説明されるような磁気トルク感知デバイスによって達成され、その磁気トルク感知デバイスは、対向する略円形の表面及び回転中心軸を有する略ディスク状部材と、磁気弾性活性領域を形成するようにディスク状部材の上に配置された強磁性且つ磁歪性の第一及び第二の磁気的に調整された領域と、互いに隣接して且つ磁気弾性活性領域に近接して配置された少なくとも一対の磁場センサとを備え、磁気弾性活性領域が、ディスク状部材に印加されるトルクと共に変化する磁場を生成し、磁気活性領域が、ディスク状部材に印加されるトルクがゼロに下がった際に磁気弾性活性領域内の磁化が初期状態に戻るのに十分な磁気異方性を有し、各対の磁場線センサの感知方向が互いに逆向きであり、且つ、第一及び第二の磁気的に調整された領域の分極方向に垂直であり、磁場センサが、ディスク状部材に印加されるトルクを表す出力信号を提供し、出力信号の変化が、ディスク状部材に印加されるトルクの変化に対して実質的に線形である。
【0023】
デバイスの磁気的に調整された領域は環状であり得て、その間にギャップが存在せず、トルク感知デバイスの精度を上昇させる。デバイスは、複数の対の磁場センサを含み得て、精度を上昇させる。磁場センサは、磁気的に調整された領域が軸方向に分極されている場合には、円周方向に向けられ得て、磁気的に調整された領域が円周方向に分極されている場合には、軸方向に向けられ得て、デバイスの線形性能を増強して精度を上昇させる。
【0024】
以下の発明の詳細な説明、添付の特許請求の範囲及び添付図面を参照することによって、本発明の他の課題、利点及び特徴が明らかになると共に、本発明の特性がより明確に理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るディスク状部材の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る磁気弾性活性領域の大きさを示す図1のディスク状部材の側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る磁気弾性活性領域の磁化を示す図2のディスク状部材の平面図である。
【図4A】本発明のトルク感知デバイスが休止状態にある際の磁気的に調整された領域内の磁場強度を示すグラフである。
【図4B】ディスク状部材と図4Aのグラフとの間の関係性を示す本発明に係るディスク状部材の平面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る磁場センサの例示的な配置を示すディスク状部材の平面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る磁場センサの例示的な配置を示すディスク状部材の平面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る磁場センサの例示的な配置を示すディスク状部材の平面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る磁場センサの例示的な配置を示すディスク状部材の平面図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る磁場センサの例示的な配置を示すディスク状部材の平面図である。
【図10】ディスク状部材がトルクを受けた際の磁気弾性活性領域の磁化の変化を示す本発明に係るディスク状部材の斜視図である。
【図11】自動車の駆動系に使用される本発明に係る例示的なトルク感知デバイスを示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の複数の好ましい実施形態を例示目的で説明するが、本発明が、図面に特に示されない他の形態でも実施可能であることは理解されたい。図面は例示目的で提供されるものであって、縮尺通りではない。
【0027】
まず図1を参照すると、本発明のトルク感知デバイスに係る略ディスク状部材110の斜視図が示されている。ディスク110は、強磁性体製であるか、又は、磁気弾性活性領域140を少なくとも含む。ディスク110を形成するために選択された物質は、磁気弾性活性領域140内に残留磁化を少なくとも形成するための磁区の存在を保証するように少なくとも強磁性でなければならず、また、磁気弾性活性領域140内の磁力線の向きが、印加トルクに関連する応力によって変更可能であるように磁歪性でなければならない。ディスク110は、完全にソリッドであるか、又は部分的に中空であり得る。ディスクは、一様な一物質製であるか、又は複数物質の混合物製であり得る。ディスクは任意の厚さのものであり得るが、好ましくは略3mmから略1cmの厚さである。
【0028】
磁気弾性活性領域140は好ましくは平坦であり、少なくとも二つの半径方向に区別可能であり、環状で、逆向きに分極された磁気的に調整された領域(磁気的に条件付けされた領域)142、144を備えて、トルク感知デバイスの磁気弾性活性領域を画定している。しかしながら、頂面112及び底面114は、図示されているように平坦である必要は無く、ディスク110の中心から外縁までの断面において変化する厚さを有し得る。トルク感知デバイスが必要とされる応用によっては、磁場センサ152、154をディスク110の両面に配置することが実用的でなくなり得る。従って、本発明は、磁気弾性活性領域140が、ディスク110の一方の表面上にのみ存在する場合に機能するように設計される。しかしながら、磁気弾性活性領域140は、ディスク110の両面に存在してもよい。
【0029】
図2は、ディスク110の側面を示し、磁気弾性活性領域140がディスク110の環状部分に形成され得るプロセスを示す。図示されるように、逆方向の磁化(従って逆極性)を有する二つの永久磁石202、204は、距離d1においてディスク110の表面に近接して配置される。永久磁石202、204の配置に続いて、ディスク110が、中心軸O周りに回転され得て、二つの環状で逆向きに分極されて磁気的に調整された領域142、144が形成される。代わりに、磁気的に調整された領域142、144は、ディスク110を静止させたままで、永久磁石を中心軸O周りに回転されることによっても形成可能である。磁気弾性活性領域140の形成中、中心軸O周りの回転速度、及び永久磁石202、204とディスク表面110との間の距離は、磁気弾性活性領域140の均一性を保証して、トルク感知デバイスのRSU性能を改善するために一定に保たれることが望ましい。好ましくは、磁気弾性活性領域140の形成中、永久磁石202、204は互いに隣接して配置され、その間にギャップが存在せず、その間にギャップの存在しない磁気的に調整された領域142、144を形成する。磁気的に調整された領域142、144間にギャップが存在しないことは、RSU性能の改善されたトルク感知デバイスをもたらすものと理解される。
【0030】
磁気弾性活性領域140の形成において、永久磁石202、240の強度、及び永久磁石202、204とディスク110との間の距離d1は、トルク感知デバイスの性能を最適化するように注意深く選択されなければならない。より強力な永久磁石202、204を用いることによって、また、永久磁石202、204をよりディスク110の近くに配置することによって、一般的には、トルク感知デバイスに使用された際により強力でより簡単に測定可能な信号を提供する磁気弾性活性領域140を形成することができる。しかしながら、極度に強力な永久磁石202、204を用いることによって、又は、永久磁石202、204を極端にディスク110の近くに配置することによって、印加トルクに応答してトルク感知デバイスによって生成される信号の線形性に悪影響を与えるヒステリシスを示す磁気弾性活性領域140が形成され得る。好ましくは、磁気弾性調整領域140は、ディスク110の表面から略0.1mmから5mmの間の距離に配置された矩形のN42又はN45等級のネオジム鉄ホウ素(NdFeB)磁石を用いて、形成される。より好ましくは、磁石は、ディスク110の表面から略3mmの距離に配置される。好ましくは、磁気弾性活性領域140の幅は13mm以下である。より好ましくは、磁気弾性活性領域140の幅は略10mmである。
【0031】
図2は、ディスク110の平面に垂直な磁化方向を有する永久磁石202、204を有する実施形態を示す。この構成は、軸方向(つまりディスク表面に垂直)に初め分極している磁気的に調整された領域142、144をもたらす。この構成では、磁気的に調整された領域142、144は、ディスク110に印加されたトルクが存在しない場合(つまり、トルク感知デバイスが休止状態である際)に、磁気的に調整された領域142、144が、円周方向又は半径方向に正味の磁化成分を有さないように分極されることが好ましい。
【0032】
磁気弾性活性領域140の形成中、図2に示されるように、永久磁石202、204は、最内側の磁気的に調整された領域142が、上向きのN極を有して形成され、最外側の磁気的に調整された領域144が下向きのN極を有して形成されるように、配置され得る。代わりに、磁気弾性活性領域140の形成中、永久磁石は、最内側の磁気的に調整された領域142が下向きのN極を有して形成され、最外側の磁気的に調整された領域144が上向きのN極を有して形成されるように、配置され得る。
【0033】
図3は、ディスク110の平面図を示し、磁気弾性活性領域140が、円周方向においてディスクの平面に平行な磁化方向を有する永久磁石302、304を用いて形成される実施形態を示す。この構成は、ディスク110の円周方向に初め分極している磁気的に調整された領域142、144をもたらす。この構成では、磁気的に調整された領域142、142は、ディスク110の印加されたトルクが存在しない際に磁気的に調整された領域142、144が軸方向又は半径方向に正味の磁化成分を有さないように分極されることが好ましい。
【0034】
磁気弾性活性領域140の形成中、永久磁石302、304は、図3に示されるように、最内側の磁気的に調整された領域142が、時計回りのN極を有して形成され、最外側の磁気的に調整された領域144が、反時計回りのN極を有して形成されるように配置され得る。代わりに、磁気弾性活性領域の形成中、永久磁石302、304は、最内側の磁気的に調整された領域142が反時計回りのN極を有して、最外側の磁気的に調整された領域144が時計回りのN極を有するように配置され得る。
【0035】
図4A及び図4Bを参照すると、図4Aは、トルク感知デバイスが休止状態の際の磁気的に調整された領域142、144内の磁場強度を示すグラフである。縦軸に沿った値は、磁気弾性活性領域140の磁場強度を表す。ディスク110の表面から発する磁場は、図2のディスク110のように軸方向にその主成分を有するか、又は、図3のディスク110のように円周方向にその主成分を有し得る。横軸に沿った値は、中心線Oからディスク110の外縁までのディスク110の半径に沿った距離を表す。点Aは、ディスク110の中心に最も近い最内側の磁気的に調整された領域142の縁に沿った点に対応する。点Bは、ディスク110の円周方向縁に最も近い最外側の磁気的に調整された領域144の縁に沿った点を表す。点Cは、最内側の磁気的に調整された領域142と最外側の磁気的に調整された領域144との間の境界に沿った点に対応する。点r1は、磁場強度が最大である最内側の磁気的に調整された領域142内の点に対応する。点r2は、磁場強度が最大である最外側の磁気的に調整された領域144内の点に対応する。図4Bは、図4Aのグラフに示される点に対応する点A、B、C、r1、r2を有するディスク110を示す。ピーク磁場に対応する点r1及びr2は、外部磁束の方向を最適化して、トルク感知デバイスの性能を最大化するように磁場センサ152、152を配置することが望ましいディスク110の中心からの距離を示す。図4に示される単位は例示的なものであって、本発明を限定するものではない。
【0036】
図5を参照すると、休止状態のディスク110の平面図が示されていて、磁気弾性活性領域140が図2に示されるような永久磁石202、204によって形成されている。磁気弾性活性領域140は、それぞれ正及び負の軸方向に逆向きに分極した二重の磁気的に調整された領域142、144を含む。図5のドットは、ディスク110の表面に垂直に向いた磁力線546を示し、磁力線546が紙面外(上向き)に向けられる。図5の×は、ディスク110の表面に垂直に向いた磁力線548を示し、磁力線548は紙面内(下向き)に向けられている。
【0037】
一対の磁場センサ552、554が、磁気弾性活性領域140に近接して配置され、各磁力センサ552、554が、磁場強度が最大である箇所において、磁気的に調整された領域142、144の一部の上に配置されている。磁場センサ552、554は、それらの感知方向が磁気弾性活性領域140内の磁化方向に垂直になるように向けられる。図5において、矢印は、磁場センサ552、554の感知方向を示す。磁場センサ552、554は、ディスク110の表面に平行な(つまり円周方向内の)感知方向を有するように向けられていて、磁気的に調整された領域142、144は、ディスク110の表面に垂直に(つまり軸方向において)分極される。この構成は、磁場センサ552、554によって出力される信号が、ディスク110に印加されるトルクの変化に対して線形に変化することを保証する。
【0038】
磁場センサ552、554は、逆向きに分極されて、対で提供される。この配置法は、コモンモード阻止構成と称される。対の磁場センサ552、554の各々からの出力信号は足し合わされて、ディスク110に印加されるトルクを表す信号を提供する。外部磁場は、対の磁場センサ552、554の各々に対して同じ影響を有する。対の磁場センサ552、554が逆向きに分極されているので、磁場センサ552、554の足し合わされた出力は、外部磁場に対してゼロである。しかしながら、磁気的に調整された領域142、144が、磁場センサ552、554のように逆向きに分極されているので、磁場センサ552、554の足し合わされた出力は、ディスク110に印加されたトルクに関して各磁場センサ552、554の出力の二倍である。従って、コモンモード阻止構成で磁場センサ552、554を配置することによって、トルク感知デバイスにおけるコンパシングの悪影響が大幅に低減される。
【0039】
図6に示される実施形態を参照すると、休止状態のディスク110が示されていて、図3のような永久磁石302、304によって形成された磁気弾性活性領域140を有している。磁気弾性活性領域140は、逆向きに分極された二重の磁気的に調整された領域142、144を含み、磁力線646、648が円周方向において逆向きである。一対の磁場センサ652、654が、各磁場センサ652、656が、磁場強度が最大である箇所において磁気的に調整された領域142、144の一部の上に配置されるように、磁気弾性活性領域140に近接して配置され得る。磁場センサ652、654は、それらの感知方向が磁気弾性活性領域140内の磁化方向に垂直であるように、向けられる。図6において、ドット(紙面から出て来る方向を示す)及び×(紙面内に向かう方向を示す)は、磁場センサ652、654の感知方向を示す。磁場センサ652、654は、ディスク110の表面に垂直な感知方向(つまり、軸方向)を有するように向けられて、磁気的に調整された領域142、144は、ディスク110の表面に平行に(つまり、円周方向に)分極されて、磁場センサ652、654によって出力される信号がディスク110に印加されるトルクの変化に対して線形に変化することを保証する。磁場センサ652、654は、トルク感知デバイスにおけるコンパシングの影響を低減するためにコモンモード阻止構成で配置される。
【0040】
図7を参照すると、軸方向において逆向きに分極された二重の磁気的に調整された領域142、144を有する磁気弾性活性領域140を有するディスク110が示されている。四対の磁場センサ552、554が、磁気弾性活性領域140に近接して配置されていて、それらの感知方向は、磁気的に調整された領域142、144の磁化に垂直である。四対の磁場センサ552、554は、各対の間において略90度で磁気弾性活性領域140周りに均等に間隔が空けられている。この構成は、複数の磁場センサ552、554によって出力される信号を平均化することによって、ディスク110に印加されるトルクのより正確な測定を可能にするので、RSU性能を改善する。磁気弾性領域140における不均一性に起因する単一の磁場センサによる誤差は、複数の磁場センサ552、554からの信号が平均化された場合にはあまり顕著なものではなくなる。高度の均一性(つまり、RSU信号が実質的にゼロ)を示す磁気弾性活性領域140を有するトルク感知デバイスでは、一対の磁場センサ552、554だけを用いて、十分なRSU性能を達成することができる。しかしながら、材料調製及び磁化プロセスにおける制限に起因して、顕著なゼロではないRSU信号を回避することが難しくなり得る。RSU性能の上昇が望まれる場合、磁場センサの対の数を増やし得る。例えば、45度の間隔で、八対の磁場センサ552、554を用いることができる。
【0041】
図8を参照すると、磁気弾性活性領域140を有するディスク110が示されていて、磁気的に調整された領域142、144が、単一の軸方向に分極されていて、本質的には、単一の磁気的に調整された領域を形成している。磁場センサユニット850は、四つの個別の磁場センサ852、854、856、858を含む。一次磁場センサ852、854は、磁気弾性活性領域140に近接して配置されて、半径方向に整列されて、磁気弾性活性領域140の磁化に垂直な方向に同様に分極される。二次磁場センサ856、858は、ディスク110に近接しているが、磁気弾性活性領域140から離隔して、一次磁場センサ852、854の両側に配置されて、二次磁場センサ856、858がトルク誘起信号をピックアップしないようにする。二次磁場センサ856、858は、一次磁場センサ852、854とは逆向きにおいて同じ様に分極される。この構成は、Leeの特許文献6(参照として本願に組み込まれる)において検討されているように、ノイズ源(図示せず)が各一次磁場センサ852、854に対して異なる影響を有する局所磁場勾配を生成する場合に有利となり得る。このような場合、ノイズ源は、ノイズ源に最も近い方の二次磁場センサ856、858に対して最大の影響を有して、ノイズ源から最も遠い方の二次磁場センサ858、856に対して最少の影響を有すると考えられる。また、一次磁場センサ852、854に対するノイズ源の影響は、二次磁場センサ856、858の各々に対する影響と影響の間であると考えられる。最後に、二次磁場センサ856、858によってピックアップされるノイズ誘起信号の和は、一次磁場センサ852、854によってピックアップされるノイズ誘起信号の和と値において等しいと考えられる。従って、四つの磁場センサ852、854、856、858の各々によってピックアップされる信号を足し合わせることによって、磁場センサユニット850に対する磁気ノイズの影響がキャンセルされて、磁場センサユニット850によってピックアップされる複合信号が、完全にトルク誘起のものになる。
【0042】
図9は、ディスク110の半径方向空間が限られている場合に有利となり得るディスク110の構成を示す。ディスク110は、単一に軸方向に分極された単一の磁気的に調整された領域143を備えた磁気弾性活性領域140を有する。磁場センサユニット950は、四つの個別の磁場センサ952、954、956、958を含む。一次磁場センサ952、954は、磁気弾性活性領域140に近接して配置され、円周方向に整列されて、磁気弾性活性領域140の磁化に垂直な方向において同様に分極されている。二次磁場センサ956、958は、ディスク110に近接しているが、磁気弾性活性領域140から離隔して一次磁場センサ952、954の両側に配置されて、二次磁場センサ956、958がトルク誘起信号をピックアップしないようにする。二次磁場センサ956、958は、一次磁場センサ952、954とは逆方向において同様に分極される。この構成は、Leeの特許文献6(本願に参照として組み込まれる)において検討されているように、ノイズ源(図示せず)が、一次磁場センサ952、954の各々に対して異なる影響を有する局所磁場勾配を生成する場合に有利となり得る。このような場合、ノイズ源は、ノイズ源から最も近い方の二次磁場センサ956、958に対して最大の影響を有し、ノイズ源から最も遠い方の二次磁場センサ958、956に対して最少の影響を有すると考えられる。また、一次磁場センサ952、954に対する影響は、二次磁場センサ956、958の各々に対する影響と影響との間であると考えられる。最後に、二次磁場センサ956、958によってピックアップされるノイズ誘起信号の和は、一次磁場センサ952、954によってピックアップされるノイズ誘起信号の和と値において等しいと考えられる。従って、四つの磁場センサ952、954、956、958の各々によってピックアップされる信号を足し合わせることによって、磁場センサユニット950に対する磁気ノイズの影響がキャンセルされて、磁場センサユニット950によってピックアップされる複合信号が完全にトルク誘起のものになる。
【0043】
図10は、トルク感知デバイスによってディスク110に印加されるトルクを測定する原理を図解する。上述のように、休止状態において、磁気弾性活性領域140内の磁場は、図5に示されるように実質的に軸方向においてのみ整列されるか、又は、図6に示されるように実質的に円周方向においてのみ整列される。トルクがディスク110に印加されると、磁気弾性活性領域140内の磁気モーメントは、図10の矢印Aによって示されるように、ディスク110の表面に対して略45度の角度を成すせん断応力方向に沿って傾斜する傾向にある。この傾斜によって、磁気弾性活性領域140の磁化が、初期方向における成分の減少及びせん断応力方向における成分の増大を示すようになる。傾斜の程度は、ディスク110に印加されるトルクの強度に比例する。磁場センサ152、154は、磁場センサ152、154の感知方法に沿った磁場成分の強度の変化を感知することができる。従って、トルクがディスク110に印加されると、磁場センサ152、154は、印加トルクに比例した信号を出力する。
【0044】
磁場センサ152、154は、当該分野において既知であり、フラックスゲートインダクタ、ホール効果センサ等の磁場ベクトルセンサデバイスが挙げられる。好ましくは、本発明に係る磁場センサは、ソレノイダル形状を有するフラックスゲートインダクタである。他の実施形態では、磁場センサ152、154は、集積回路ホール効果センサであり得る。図10に示されるような導体156が、磁場センサを、直流電源に接続して、磁場センサ152、154の信号出力を、制御又はモニタリング回路等の受信デバイス(図示せず)に転送する。
【0045】
図11を参照すると、本発明に係るトルク変換器1100の斜視分解図が示されている。図示される例示的な実施形態では、トルク変換器1100は、ディスク1110と、ハブ1120と、シャフト1130とを含む。ディスク1110、ハブ1120、及びシャフト1130は個別部品であり得る(必須ではない)。ディスク1110は、軸方向に薄くて、略ディスク状の部材であり得て、完全に平坦であるか又は輪郭を含み得る。ハブ1120は、シャフト1130にディスク1120を強固に取り付けることによって、機能する。取り付けは、既知の手段によって直接又は間接になされ得て、ハブ1120及びシャフト1130が、シャフト1130に印加されるトルクがハブ1120に比例的に伝送されるような、また、その逆となるような機械的ユニットとして機能するようにする。取り付け手段の例として、ピン、スプライン、キー、溶接、接着剤、プレス又は収縮フィット等が挙げられる。ディスク1110は、適切な方法によってハブ1120に取り付けられ得て、ディスク1110及びハブ1120が、ハブ1120に印加されたトルクがディスク1110に比例的に伝達されるような、また、その逆となるような機械的ユニットして機能するようにする。好ましくは、ホール1112、1122がディスク1110及びハブ1120に設けられて、ディスク1110のホール112がハブ1120のホール1122に対応するようにする。締め具(ボルト等)を、ディスク1110のホール1112及びハブ1120の対応するホール1122を通して挿入し得て、強固な取り付けが、ディスク1110とハブ1120との間に形成されるようにする。代替的な取り付け手段の例として、リベット、溶接等が挙げられる。
【0046】
ディスク1110は、リム1160に取り付けられ得て、リム1160に取り付けられたディスク1110の一部が、ハブ1120に取り付けられたディスク1110の一部と半径方向において区別可能となる。リム1160は、ディスク1110の周囲を取り囲み、又はディスク1110の表面に取り付けられ得る。リム1160はディスク1110の一体部分であり得る。ディスク1110及びリム1160は、ディスク1110の印加されるトルクがリム1160に比例的に伝達されるように、また、その逆となるような機械的ユニットとして機能する。リム1160は、駆動する又は駆動される部材に対する主な接線力の伝達のための力伝達特徴部1162を含み得る。
【0047】
本発明の例示的な実施形態は、自動車のエンジンに関連して使用するためのトルク感知デバイスであり、ディスク1110が駆動プレートを含み、シャフト1130がクランクシャフトを含み、リム1160がトルク変換器を含む。しかしながら、当業者には、本発明が特定のタイプの自動車の構成に限定されるものではなく、一般的な自動車の応用に限定されるものでもないことは明らかである。
【0048】
リム1160及びハブ1120は好ましくは、非強磁性体製であり、又は、ハブ1120とディスク1110との間、及びディスク1110とリム1160との間に挿入された低透磁率リング(図示せず)等の非強磁性スペーサによってディスク1110から磁気的に分離されている。
【0049】
磁気弾性活性領域1140は、印加トルクがゼロに下がった際に磁化が休止又は初期方向に戻るのに十分な異方性を有していなければならない。磁気異方性は、ディスク1110の物質の物理的作用によって、又は他の方法によって誘起され得る。磁気異方性を誘起する例示的な方法は、特許文献3(参照として本願に組み込まれる)に開示されている。
【0050】
好ましくは、ディスク1110は、AISI9310物質製である。ディスクが形成される代替的な物質の例は、特許文献3及び特許文献5(参照として本願に組み込まれる)に開示されている。ディスク1110は、特に望ましい結晶構造を有する物質製であり得る。
【0051】
本発明の他の実施形態では、磁気弾性活性領域1140が、ディスク1110とは別に形成され得て、その後、接着剤、溶接、締め具等の手段によってディスク1110に適用されて、ディスク1110内に誘起されるトルクが、磁気弾性活性領域内に誘起されるトルクに伝えられて、またこれに比例するようにする。
【0052】
本発明の動作時には、磁場が磁気弾性活性領域1140から生じて、その磁場が、磁場センサ1152、1154が配置されている空間だけではなくて、ディスク1110自体によって占められている空間にも充満する。ディスク1110の非活性部分内に生じる磁化の変化は、磁場センサ1152、1154が配置されている空間領域に充満し得る寄生磁場の形成をもたらし得る。ハブ1120及びリム1160は、寄生磁場を低減又は排除するように非強磁性体製であり得る。従って、磁気弾性活性領域1140の伝達機能を損なわないため、寄生場が、磁気弾性活性領域から生じる磁場と比較して非常に小さい、理想的にはゼロであることが重要であり、又は、顕著な強度の場合には、寄生場が印加トルクに対して線形且つ非ヒステリシス的に変化する(又は全く変化しない)ことが重要であり、また、寄生場が、時間に対して安定であり、また、シャフト1130、ディスク1110及び磁気弾性活性領域1140が晒され得る動作条件及び環境条件下において安定であることが重要である。言い換えると、生じる寄生場は、磁気弾性活性領域の場と比較して十分に小さくなければならず、磁場センサ1152、1154が受ける正味の場が、トルク感知目的にとって有用であるようにする。従って、寄生場の悪影響を最少化するため、磁気弾性活性領域1140から生じる場が、磁気弾性活性領域に近接するディスク1110の領域を磁化しないのに十分高い飽和保磁力を有するディスク物質を利用することが重要であり、磁場センサ1152、1154が受ける正味の磁場の有用性(トルク感知目的にとって)を破壊しないのに十分な強度のものである寄生磁場を生じさせるようにする。これは、例えば、ディスク1110の飽和保磁力が15Oe以上、好ましくは20Oe以上、最も望ましくは35Oe以上である物質を用いることによって、達成可能である。
【0053】
トルクに加えて、本発明は、出力、エネルギー、回転速度を測定することもできて、ここで、
出力=トルク×2π×回転速度
エネルギー=出力/時間
である。
【0054】
本発明の現状において好ましい実施形態を本願において具体的に説明してきたが、当業者には、本願で示され説明された多様な実施形態のバリエーション及び修正が、本発明の精神及び範囲を逸脱せずに為され得ることは明らかである。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲及び適用法令によって規定される程度においてのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0055】
110 ディスク
112 頂面
114 底面
140 磁気弾性活性領域
142、144 磁気的に調整された領域
152、154 磁場センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する略円形の間隔の空けられた表面を有し、回転中心軸を形成している略ディスク状部材と、
前記ディスク状部材に印加されるトルクと共に変化する磁場を生成するための磁気弾性活性領域を形成している前記ディスク状部材の少なくとも一部の上又は中に配置された強磁性且つ磁歪性の第一及び第二の磁気的に調整された領域であって、前記磁気弾性活性領域が、前記ディスク状部材に印加されるトルクがゼロに下がった際に前記磁気弾性活性領域内の磁化を初期状態に戻すのに十分な磁気異方性を有する、第一及び第二の磁気的に調整された領域と、
少なくとも一対の磁場センサであって、前記磁場センサの各々が、感知方向を有し、互いに隣接して且つ前記磁気弾性活性領域に近接して配置されていて、第一のセンサの感知方向が、第二のセンサの感知方向と逆向きであり、前記第一及び第二の磁気的に調整された領域の分極方向に垂直であり、前記磁場センサが、前記ディスク状部材に印加されるトルクを表す出力信号を提供し、前記出力信号の変化が、前記ディスク状部材に印加されるトルクの変化に対して実質的に線形である、少なくとも一対の磁場センサとを備えた磁気トルク感知デバイス。
【請求項2】
前記第一及び第二の磁気的に調整された領域が環状である、請求項1に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項3】
前記第一及び第二の磁気的に調整された領域が、該第一及び第二の磁気的に調整された領域の間に半径方向のギャップを有さずに配置されている、請求項1に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項4】
前記第一及び第二の磁気的に調整された領域が最初軸方向において逆向きに分極されていて、各対の磁場センサの感知方向が円周方向において逆向きに向けられている、請求項1に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項5】
前記第一及び第二の磁気的に調整された領域が最初円周方向において逆向きに分極されていて、各対の磁場センサの感知方向が軸方向において逆向きに向けられている、請求項1に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項6】
互いに角度がずらされた少なくとも四対の磁場センサを備えた請求項1に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項7】
互いに角度がずらされた少なくとも八対の磁場センサを備えた請求項1に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項8】
前記少なくとも一対の磁場センサがフラックスゲートセンサを備える、請求項1に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項9】
前記少なくとも一対の磁場センサがホール効果センサを備える、請求項1に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項10】
前記ディスク状部材の少なくとも一部が、少なくともAISI9310物質製である、請求項1に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項11】
前記磁気弾性活性領域が、逆向きの極性で配置された一対の永久磁石を用いることによって、前記ディスク状部材の上に形成されている、請求項1に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項12】
前記ディスク状部材が、15Oe以上の飽和保磁力を有する物質製である、請求項1に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項13】
前記ディスク状部材が、20Oe以上の飽和保磁力を有する物質製である、請求項1に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項14】
前記ディスク状部材が、35Oe以上の飽和保磁力を有する物質製である、請求項1に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項15】
前記ディスク状部材が駆動プレートを備える、請求項1に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項16】
トルク伝達素子を更に備え、前記トルク伝達素子が、前記トルク伝達素子に印加されるトルクが前記トルク伝達素子と前記ディスク状部材との間において比例的に伝達されるように、前記回転中心軸において前記ディスク状部材の一部に直接若しくは間接に取り付けられているか又は前記ディスク状部材の一部を形成している、請求項1に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項17】
前記トルク伝達素子がクランクシャフトを備える、請求項16に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項18】
磁気トルク感知デバイスを製造するための方法であって、
対向する略円形の間隔の空けられた表面と回転中心軸とを有する略ディスク状部材を提供するステップであって、前記ディスク状部材が、強磁性且つ磁歪性の少なくとも一つの部分を含み、前記部分が、前記ディスク状部材に印加されるトルクと共に変化する磁場を生成し、前記部分が、前記ディスク状部材に印加されるトルクがゼロに下がった際に前記部分内の磁化を初期状態に戻すのに十分な磁気異方性を有する、ステップと、
前記ディスク状部材の表面から第一の距離において前記ディスク状部材の表面に近接して逆向きに分極された一対の永久磁石を配置するステップと、
前記ディスク状部材を中心軸周りに回転させて、二つの環状で逆向きに分極された磁気的に調整された領域を形成するステップとを備えた方法。
【請求項19】
前記一対の永久磁石が、前記一対の永久磁石の間に半径方向のギャップを有さずに配置される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記一対の永久磁石が、該一対の永久磁石が前記ディスク状部材に対して軸方向において逆向きに分極されるように、配置される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記一対の永久磁石が、該一対の永久磁石が前記ディスク状部材に対して円周方向において逆向きに分極されるように、配置される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記一対の永久磁石が、矩形のN42又はN45等級のネオジム鉄ホウ素磁石である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記第一の距離が略0.1mmから5mmの間である、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記第一の距離が略3mmである、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
対向する略円形の間隔の空けられた表面を有し、回転中心軸を形成している略ディスク状部材と、
前記ディスク状部材に印加されるトルクと共に変化する磁場を生成するための磁気弾性活性領域を形成する前記ディスク状部材の少なくとも一部の上又は中に配置された磁歪性の磁気的に調整された領域であって、前記磁気弾性活性領域が、前記ディスク状部材に印加されるトルクがゼロに下がった際に前記磁気弾性活性領域内の磁化を初期状態に戻すのに十分な磁気異方性を有する、磁気的に調整された領域と、
少なくとも一つの磁場センサユニットとを備えた磁気トルク感知デバイスであって、
前記少なくとも一つの磁場センサユニットが、
互いに隣接して且つ前記磁気的に調整された領域に近接して配置された一対の一次磁場センサであって、前記一次磁場センサの各々が感知方向を有し、第一の一次磁場センサの感知方向が、第二の一次磁場センサの感知方向と同じであり、且つ、前記磁気的に調製された領域の分極方向に垂直である、一対の一次磁場センサと、
前記一対の一次磁場センサに隣接して且つ前記磁気的に調整された領域から離隔して配置された第一の二次磁場センサであって、第一及び第二の一次磁場センサの感知方向と逆向きの感知方向を有する第一の二次磁場センサと、
前記一対の一次磁場センサに隣接して、前記第一の二次磁場センサの反対側に且つ前記磁気的に調整された領域から離隔して配置された第二の二次磁場センサであって、第一及び第二の一次磁場センサの感知方向と逆向きの感知方向を有する第二の二次磁場センサとを備え、
前記一次磁場センサ及び前記二次磁場センサが共に、前記ディスク状部材に印加されるトルクを表す出力信号を提供し、前記出力信号の変化が、前記ディスク状部材に印加されるトルクの変化対して実質的に線形である、磁気トルク感知デバイス。
【請求項26】
前記磁気的に調整された領域が環状である、請求項25に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項27】
前記磁気的に調整された領域が最初軸方向に分極されていて、前記一次磁場センサの感知方向が第一の円周方向に向けられていて、前記二次磁場センサの感知方向が、前記第一の円周方向と逆向きの第二の円周方向に向けられている、請求項25に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項28】
前記磁気的に調整された領域が最初円周方向に分極されていて、前記一次磁場センサの感知方向が第一の軸方向に向けられていて、前記二次磁場センサの感知方向が、前記第一の軸方向と逆向きの第二の軸方向に向けられている、請求項25に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項29】
互いに角度がずらされた少なくとも四つの磁場センサユニットを備えた請求項25に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項30】
互いに角度がずらされた少なくとも八つの磁場センサユニットを備えた請求項25に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項31】
前記少なくとも一つの磁場センサユニットがフラックスゲートセンサを備える、請求項25に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項32】
前記少なくとも一つの磁場センサユニットがホール効果センサを備える、請求項25に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項33】
前記ディスク状部材の少なくとも一部が少なくともAISI9310物質製である、請求項25に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項34】
前記ディスク状部材が、15Oe以上の飽和保磁力を有する物質製である、請求項25に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項35】
前記ディスク状部材が、20Oe以上の飽和保磁力を有する物質製である、請求項25に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項36】
前記ディスク状部材が、35Oe以上の飽和保磁力を有する物質製である、請求項25に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項37】
前記ディスク状部材が駆動プレートを備える、請求項25に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項38】
トルク伝達素子を更に備え、前記トルク伝達素子が、前記トルク伝達素子に印加されるトルクが前記トルク伝達素子と前記ディスク状部材との間において比例的に伝達されるように、前記回転中心軸において前記ディスク状部材の一部に直接若しくは間接に取り付けられているか又は前記ディスク状部材の一部を形成している、請求項25に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項39】
前記トルク伝達素子がクランクシャフトを備える、請求項38に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項40】
第一の一次磁場センサ及び第二の一次磁場センサが半径方向に整列されている、請求項25に記載の磁気トルク感知デバイス。
【請求項41】
第一の一次磁場センサ及び第二の一次磁場センサが円周方向に整列されている、請求項25に記載の磁気トルク感知デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図4A】
image rotate


【公開番号】特開2013−92523(P2013−92523A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−229635(P2012−229635)
【出願日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【出願人】(500446638)メソード・エレクトロニクス・インコーポレーテッド (13)