説明

外れ防止具

【課題】 引戸本体の側面側から衝撃が加わると、戸車がレールから浮き上がる形でレールから脱輪するなどし、引戸が転倒することがあるため、前記引戸レールから、引戸が外れることを防止する外れ防止具を提供する。
【解決手段】 引戸7上縁の引掛り寸法の浅い箇所で引戸7本体の側面側から衝撃が加わると、引戸7が溝やレール等のガイドから外れ、引戸7が転倒するのを防止するため、固定体3側壁に設けられた保持穴32と、係止板下部41に配された係止穴42をリベット等の係止片により、係止板4が天井面と床面等のうねりに追随して上下動可能に係止しているため、天井等に設けられた溝やレール等のガイドに差込まれた引戸7の上縁の引掛り寸法が常に一定するよう設定され、さらに、駆動体2が補助レール8に嵌挿されているため、引戸7がレール等から外れても転倒することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井あるいは床部に取付けられたレールをガイドとして走行する引戸が、前記レールから外れることを防止する外れ防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】 特開2001−65235号公報
【特許文献2】 特開2004−27667号公報
【0003】
従来、引戸を施工する場合、天井または鴨居等に設けられた溝やレールをガイドに、引戸上端を差込み、引戸下端を床面等に設置されたレール等のガイド上に設置するものであるため、天井面や床面のうねり等によって、天井と床面の間隔が広いところと狭いところが生じるため、天井または鴨居等に設けられた溝やレールに差込まれた引戸の上縁の引掛り寸法が浅い箇所と深い箇所が発生し、引戸上縁の掛かり具合を一定に保つことが困難であった。
【0004】
さらに、天井または鴨居等に取付けられたレールをガイドとして、引戸上面に戸車を配し、天井から吊り下げるタイプの引戸においては、近年、床面にレールを設置することが少なくなり、引戸の下面に設けられた溝等に内接するよう、床面に定点的に振れ止め等を配し、引戸の横振れを防止しているが、上記従来引戸と同様に天井面や床面のうねり等によって、床面の振れ止めから外れ、引戸が宙に浮いた状態になることがあった。
【0005】
このため、特許文献1に開示された、ケーシング内に嵌挿された車輪が上方に突出するようにスプリングによって付勢する手段が記載されており、特許文献2には引戸本体上端部がガイド溝から離脱しないようにするための離脱防止片を設けた例が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近来の建造物においては、バリアフリーが提唱されるようになり、床面に設置されるレールの溝が小さくされるか、廃止される傾向にあるため、引戸本体の側面側から衝撃が加わると、床面にレールが設置されるタイプの引戸では、戸車がレールから浮き上がる形でレールから脱輪するなどし、引戸が転倒することがあった。
【0007】
また、天井面や床面のうねり等によって、天井と床面の間隔が広いところと狭いところが発生するため、天井等に設けられた溝やレールに差込まれた引戸の上縁の引っかかり寸法が一定せず、引戸上縁の引掛り寸法の浅い箇所で引戸本体の側面側から衝撃が加わると、引戸が溝やレールから外れ、引戸が転倒する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、建造物の天井面あるいは床面に取付けられたレール等をガイドとして走行する引戸において、前記引戸レールから外れることを防止する外れ防止具であって、箱形状に成形され、天井に配された補助レール内を走行可能に車輪を側面に配した胴体部と、前記胴体部上側面には挿入口を設け、下側面には略ハ字形状に形成された下部開口部が設けられる駆動体と、前記駆動体上側面の挿入口から挿入され、前記挿入口の保持部において振動可能に係止され、引戸上縁小口部に設けられた差込口から挿入され、引戸内に挿入固定される固定体上面の係止口から挿入され、固定体側壁に設けられた保持穴からリベット等の係止片により、天井面や床面等のうねりに追随して上下動可能に係止穴を介して係止されてなる係止板とから構成され、天井に固定されるレールで保持される吊車、あるいは床面に嵌合されたレール上を移動する戸車等が外れ、引戸が振れても略ハ字形状に形成された下部開口部により、引戸の横振れに係止板が追随振動し、引戸自体が外れないよう構成されている。
【0009】
また、係止板が軸心と一体に形成され、箱形状に成形され、天井に配された補助レール内を走行可能に車輪を側面に配した駆動体下側面部が、略ハ字形状に形成され、前記略ハ字形状部に挿入嵌合され、引戸の横振れに係止板が追随振動し、引戸自体が外れないようにした。
【0010】
さらに、上記駆動体の車輪を廃し、補助レール内を駆動体が滑るがごとくに移動するようにすると共に、引戸上面部に設けられた差込口に挿入固定される固定体は、引戸上方からねじで引戸に固定されるようにしている。
【0011】
そして、駆動体下部には、係止部が先端略円形状に突出して駆動体と一体形成され、引戸上面部に設けられた略円形の差込口に挿入固定される固定体は、略円筒状に形成され、前記係止部が天井面や床面のうねりに追随可能に、固定体内壁を上下移動可能に、固定体内壁に嵌挿され、天井に固定されるレール等で保持される吊車、あるいは床面に嵌合されたレール等の上を戸車等で移動する戸車等が外れ、引戸が振れても、先端略円形状に形成された係止部4と一致するよう形成された固定体3の内壁により、引戸の横振れに係止部4が追随可能に振動するようにした。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施において、天井面や床面のうねり等によって、天井と床面の間隔が広いところと狭いところが生じるため、天井等に設けられた溝やレール等のガイドに差込まれ、引戸の上縁の引掛り寸法が一定せず、引戸上縁の引掛り寸法の浅い箇所で引戸本体の側面側から衝撃が加わると、引戸が溝やレール等のガイドから外れ、引戸が転倒するのを防止するため、固定体側壁に設けられた保持穴と、係止板下部に配された係止穴をリベット等の係止片により、係止板が天井面と床面等のうねりに追随して上下動可能に係止しているため、天井等に設けられた溝やレール等のガイドに差込まれた引戸の上縁の引掛り寸法が常に一定するよう設定され、さらに、駆動体が補助レールに嵌合しているため、引戸がレール等から外れても転倒することがなく安全である。
【0013】
また、係止板を軸心と一体に形成し、駆動体の車輪を廃し、補助レール内を駆動体が滑るがごとくに移動するようにすると共に、引戸上面部に設けられた差込口に挿入固定される固定体は、引戸上方からねじで引戸に固定されるように構成すると、部品点数が減少し、製造コストを抑えることが可能となり安価に提供することができる。
【発明の実施形態】
【0014】
本発明の実施形態の例を、図によって説明する。
【0015】
図1は、本発明の外れ防止具の取付け実施例を斜め上から見た斜視図であって、1は外れ防止具、2は駆動体、3は固定体、6は取付けねじ、7は引戸、8は天井に取付けられる補助レールである。
【0016】
この時、補助レール8は天井に直接ねじで取付けても、溝を設けて嵌挿してもよい。
【0017】
図2は、本発明の実施例である、外れ防止具1の組立斜視図で、2は駆動体、3は固定体、4は係止板であって、20は駆動体2の胴体部、21は車輪、22は挿入口、25は係止板4を保持する保持部、31は引戸7上縁小口部に設けられた差込口から挿入され、引戸7内に挿入固定される固定体3の嵌合部、32はリベット等の係止片が挿入される保持穴、34は取付けねじ6の挿入穴である。
【0018】
図3は、本発明の実施例である外れ防止具1の構成を説明する斜視図であって、20は胴体部、21は車輪、22は挿入口、25は保持部で駆動体2を構成する。
【0019】
固定体3は、31の嵌合部、32の保持穴、33の係止口と34の取付けねじ6の挿入口である。
【0020】
係止板4は、41の係止部と42の係止穴と43の軸穴及び44のカール部で構成され、軸穴43には軸心5が挿入される。
【0021】
上記のような構成の外れ防止具1であるため、係止板4の軸穴43には軸心5が挿入され、係止部41の下端を駆動体2の挿入口22から挿入し、軸心5が駆動体2の保持部25に脱落不可に保持され、係止部41の下端は駆動体2の下部に貫通突出する形で固定体3の係止口33に挿入され、固定体3の保持穴32と係止板4の係止穴42が一致したところで、リベット等の係止片を介して係止板4は上下移動可能に固定体3に係止されるため、天井面や床面等のうねりに追随して上下動するのである。
【0022】
このとき、固定体3と係止板4は上下移動可能に係止されればよいのであるから、係止片を挿入する穴の形状は、何れか一方が円形で他方が長穴であってもよい。
【0023】
図4は、本発明の実施例の断面図であり、2は駆動体、3は固定体、4は係止板であり、6は取付けねじで、20は駆動体2の胴体部、21は車輪、22は挿入口、23は駆動体2下側面部に形成され略ハ字形状の下部開口部、25は係止板4を保持する保持部、31は固定体3の嵌合部である。
【0024】
図5は、本発明の実施例の振動状態を示す断面図であって、天井面や床面等のうねりに追随して上下動可能に係止される係止板4が、天井に固定されるレール等で保持される吊車、あるいは床面に嵌合されたレール等の上を移動する戸車等が外れ、引戸7が振れても、駆動体2の下側面部に形成された略ハ字形状の下部開口部23において、引戸7の横振れに係止板4が追随振動し、引戸7自体が補助レール8から外れないよう構成されている。
【0025】
このとき、下部開口部23の略ハ字形状の開口角度αは可能な限り大きいほうが引戸7の振れに対応可能となるが、引戸7の大きさや重量に合わせて、係止板4のカール部44を保持する駆動体2の保持部25の強度を考慮し、可能な限り強度的安全率を高くとり、開口部23を設定すると安全である。
【0026】
図6および図7は、天井面や床面のうねり等によって、天井と床面の間隔が広いところと狭いところが生じるため、係止板4が天井面と床面等のうねりに追随して上下動可能に係止している状態を示す側断面図であり、図6は、天井と床面の間隔が狭い場合の側断面図であり、図7は天井と床面の間隔が広い場合の側断面図である。
【0027】
図8は、本発明の他の実施例である、外れ防止具1の組立斜視図であって、軸心5を廃して係止板4を一体に形成することにより、駆動体2下側面部を略ハ字形状に形成し、係止板4のカール部44を駆動体2の略ハ字形状に形成された下側面部に挿入嵌合し、引戸7の横振れに係止板4が振動に追随可能に構成された状態を説明している。
【0028】
このとき、係止板4のカール部44を駆動体2の略ハ字形状に形成された下側面部の開口部23に挿入嵌合するのであるが、カール部44が略ハ字形状の開口部23から脱落せぬよう、リベット等の係止片によって振動に追随可能に係止されていればよい。
【0029】
図9は、駆動体2側面に配した車輪21を廃し、補助レール8内を駆動体2が滑るがごとくに移動するように胴体部20の両側面を突出し、横幅を広げて、補助レール8に脱落不可に嵌挿され、固定体3が引戸7上面部に設けられた差込口に挿入固定され、引戸7上方からねじで固定する、本発明の他の実施例の斜視図である。
【0030】
図10は、本発明の他の実施例の斜視図であって、駆動体2下側部には、係止部4が先端略円形状に突出して駆動体2と一体に形成され、引戸7上面部に設けられた略円形の差込穴に嵌挿固定される固定体3は、略円筒状に形成され、前記係止部4が天井面や床面のうねりに追随可能に、固定体3内壁部に接しながら上下移動可能に固定体3内壁に嵌挿されている。
【0031】
したがって、天井に固定されるレール等で保持される吊車、あるいは床面に嵌合されたレール等の上を戸車等で移動する戸車等が外れ、引戸7が振れても、先端略円形状に形成された係止部4と一致するよう形成された固定体3の内壁により、引戸の横振れに係止部4が追随可能に振動する。
【0032】
図11は、本発明の実施例である引戸7の取り付け状態を示す全体斜視図であり、床面にガイド用レールが嵌合されたタイプの引戸7である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施例の斜視図
【図2】本実施例の組み立て斜視図
【図3】本実施例の構成を示す斜視図
【図4】本実施例の取付け状態を示す正面断面図
【図5】本実施例の振動状態を示す正面断面図
【図6】本実施例において上方に移動した状態を示す側断面図
【図7】本実施例において下方に移動した状態を示す側断面図
【図8】他の実施例の斜視図
【図9】他の実施例の斜視図
【図10】他の実施例の斜視図
【図11】本実施例の全体斜視図
【符号の説明】
【0034】
1 外れ防止具
2 駆動体
20 胴体部
21 車輪
22 挿入口
23 略ハ字形状の開口部
3 固定体
31 嵌合部
32 保持穴
33 係止口
34 取付けねじ挿入口
4 係止板(係止部)
41 係止部
42 係止穴
44 カール部
5 軸心
6 取付けねじ
7 引戸
8 補助レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の天井面あるいは床面に取付けられたレール等をガイドとして走行する引戸において、前記引戸レールから外れることを防止する外れ防止具であって、箱形状に成形され、天井に配された補助レール内を走行可能に車輪を側面に配し胴体部と、前記胴体部上側面には挿入口を設け、下側面には略ハ字形状に形成された下部開口部が設けられる駆動体と、前記駆動体上側面の挿入口から挿入され、前記挿入口の保持部において振動可能に係止され、引戸上縁小口部に設けられた差込口から挿入され、引戸内に挿入固定される固定体上面の係止口から挿入され、固定体側壁に設けられた保持穴からリベット等の係止片により、天井面や床面のうねりに追随して上下動可能に係止穴を介して係止されてなる係止板とから構成され、天井に固定されるレールで保持される吊車、あるいは床面に嵌合されたレール上を移動する戸車等が外れ、引戸が振れても略ハ字状に形成された下部開口部により、引戸の横振れに係止板が追随振動し、引戸自体が外れないようにしたことを特徴とする外れ防止具。
【請求項2】
係止板が軸心と一体に形成されて、駆動体下側面部が略ハ字形状に形成され、駆動体下側面部に挿入嵌合され、引戸の横振れに係止板が追随振動し、引戸自体が外れないようにしてなることを特徴とする請求項1記載の外れ防止具。
【請求項3】
前記駆動体の車輪を廃し、補助レール内を駆動体が滑るがごとくに移動するようにし、引戸上面部に設けられた差込口に挿入固定される固定体は、引戸上方からねじで固定されるようにしたことを特徴とする請求項1記載の外れ防止具。
【請求項4】
駆動体下部には、係止部が先端略円形状に突出して駆動体と一体に形成され、引戸上面部に設けられた差込口に挿入固定される固定体は、略円筒状に形成され、前記係止部が天井部や床部のうねりに追随可能に、固定体内壁を移動可能に固定体内壁に嵌挿され、天井に固定されるレールで保持される吊車、あるいは床面に嵌合されたレール上を戸車等で移動する戸車等が外れても、引戸自体が外れないようにしたことを特徴とする請求項1記載の外れ防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−37694(P2006−37694A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241704(P2004−241704)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000113779)マツ六株式会社 (68)
【Fターム(参考)】