説明

外乱変動磁場のアクティブ磁気シールド方法及びシステム

【課題】磁束密度分布が時間と共に変化するような外乱変動磁場を打ち消すことができるアクティブ磁気シールド方法及びシステムを提供する。
【解決手段】シールド対象位置Pに外乱変動磁場を打ち消す補償磁場の発生用コイル1を設置し、対象位置P周辺の所定センサ位置Saで外乱磁場を検知しながら対象位置Pに影響が及ぶ範囲T内を移動する磁場発生源20aの位置Q1を検出し、センサ位置Saの検知磁場と発生源20aの検出位置Q1とから発生源20aの磁気モーメントを算出し、発生源20aの検出位置Q1と前記磁気モーメントとから対象位置Pに発生すべき補償磁場を算出してコイル1を駆動し、前記外乱磁場の検知からコイル1の駆動までのサイクルを繰り返す。好ましくは、対象位置Pに影響が及ぶ範囲Tの外乱磁場の距離減衰式を予め求め、その距離減衰式に基づき発生源20aの磁気モーメント及び対象位置Saの補償磁場を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外乱変動磁場のアクティブ磁気シールド方法及びシステムに関し、とくにシールド対象位置に影響が及ぶ外乱変動磁場を対象位置に設けたコイルの発生する補償磁場で打ち消すアクティブ磁気シールド方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造施設で用いる電子顕微鏡、EB露光装置、EBステッパー等の電子ビーム応用装置は、例えば100nT(1mG)程度の微弱な磁気ノイズでも電子ビームの軌道が変化するので、製品の品質を維持するために外乱磁場(環境磁場)の影響を避けることが求められる。また、医療施設等で用いるMRI装置、NMR装置、脳磁計や心磁計等のSQUID(超電導量子干渉素子)応用装置も、超微弱な磁気を正確に測定するために外乱磁場の影響を遮断することが求められる。このような外乱磁場の影響を嫌う装置(嫌磁気装置)を外乱磁場から保護して正常な動作を保証するため、半導体製造施設・医療施設等の内部に磁気シールド空間(シールド室)を設けることが必要とされる。
【0003】
磁気シールド室は、例えば透磁率μの高いパーマロイ、電磁鋼板等の強磁性材料で周囲内面を覆うパッシブ型(受動型)構造として構築することができる。ただし、パッシブ型は静的な性能・構造であるため外乱磁場の分布形状等が動的に変化する場合等に対応することができず、例えば外乱磁場の一時的なピークに対応するため過重な強磁性材料を必要とする等の問題点がある。これに対し、シールド室の内面又は周囲に補償磁場発生用のコイル(以下、補償コイルということがある)を配置し、外乱磁場の変動に応じて補償コイルに適切な補償磁場を発生させて外乱磁場の動的な変動を打ち消すアクティブ型(能動型)の磁気シールド構造が開発されている(特許文献1及び2参照)。変動する外乱磁場に効率的・経済的に対応するためには、アクティブ型とパッシブ型とを組み合わせた複合型の磁気シールド構造とすることも有効である。
【0004】
一般的なアクティブ磁気シールドは、図9に示すように、磁気シールド室3の周囲又は内面に配置された補償コイル6a〜6dと、シールド室3の内側又は外側に設置した磁気センサ11と、磁気センサ11の計測磁場(磁束密度)を入力して補償コイル6を駆動する制御装置10とにより構成される。例えばシールド室3内の所定位置Pにシールド対象の嫌磁気装置(例えばMRI装置等)5を設置し、その対象位置P上のX軸に補償コイル6の中心軸線を位置合わせすることにより、補償コイル6の発生する補償磁場で対象位置PのX軸方向の外部磁場の変動を相殺する。図示例はX軸方向の補償コイル6a〜6dのみを示しているが、Y軸方向及びZ軸方向についても同様に補償コイル6を配置することで、あらゆる方向の外部磁場に対応できる。
【0005】
アクティブ磁気シールドの磁気センサ11は、嫌磁気装置5を設置する対象位置P又はその近傍の外部磁場を計測することが望ましいが、例えば強磁場を発生する装置5(例えばMRI装置のデュワ部)の近傍では微弱な外部磁場の変動を計測すること自体が難しい場合があり、また利用者のハンドリング等の観点から装置5の近傍に設置スペースを確保できない場合もあり、現実には対象位置Pから離れたセンサ位置Sに設置せざるを得ないことも多い。実際に、例えばMRI装置を設置するアクティブ磁気シールド室1では、磁気センサ11をMRI装置から離れた天井面等に設置することが通常である。
【0006】
このように外部磁場を制御する対象位置Pと外部磁場を計測するセンサ位置Sとが離れている場合は、外乱磁場の分布が一様でないとき(例えば外乱磁場の磁束密度分布に勾配が存在するとき)に、センサ位置Sの外乱磁場の情報に基づく補償コイル6の駆動では対象位置Pの外乱磁場を十分に打ち消すことができない(アクティブ磁気シールドの性能が劣化する)ことがある。また、補償コイル6の駆動によって対象位置Pの外乱磁場が逆に大きくなる(アクティブ磁気シールドが外乱要因となる)ことも起こり得る。このため、アクティブ磁気シールドでは、対象位置Pとセンサ位置Sとが離隔していることに起因する性能劣化や外乱要因化を防止する対策が必要となる。
【0007】
アクティブ磁気シールドの性能劣化や外乱要因化を防止する対策として、例えば特許文献1は、シールド室3の各内面に補償コイル6と磁気センサ11と制御装置10とが一体型となったパネルをそれぞれ配置し、シールド室3の内面毎に磁気センサ11の計測値が一定となるように(時間的に変動しないように)補償コイル6を駆動することにより、シールド室3内の対象位置Pにおける外乱磁場の時間的変動を抑える方法を提案している。また特許文献2は、図9に示すように、シールド室3内の対象位置Pを囲む複数のセンサ位置S1、S2、S3、S4(同一直線上又は正n角形の各頂点上の位置)にそれぞれ磁気センサ11を配置し、複数の磁気センサ11の外乱磁場計測値からシールド室3内の対象位置Pの外乱磁場を推定して補償コイル6a〜6dを駆動する方法を提案している。例えば図9において、対象位置P1、P2はセンサ位置S2、S4を結ぶ直線上に配置されており、センサ位置S2、S4の計測値を按分(平均操作)することで対象位置P1、P2の外乱磁場を推定することができる。また、センサ位置S1、S3を結ぶ直線上に配置された対象位置P3、P4の外乱磁場も、同様にセンサ位置S1、S3の計測値から按分(平均操作)により推定することができる。対象位置P1〜P4の各々で推定した外乱磁場を相殺するように複数の補償コイル6a〜6dをそれぞれ駆動制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−172151号公報
【特許文献2】特開2009−175067号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】後藤憲一・山崎修一郎「詳解電磁気学演習」共立出版、1970年発行、pp186−187
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1のアクティブ磁気シールド方法は、シールド室3の各内面に配置した複数の補償コイル6を同時に制御する必要があり、各内面の相互干渉を考慮すると複雑な制御が必要となるため、磁束密度分布に勾配があるような外乱磁場を十分に相殺できるか否か必ずしも明らかではない。外乱磁場の分布に勾配がある場合は、シールド室3の各内面で外乱磁場が一定となるように補償磁場を制御しても、内面毎で発生する補償磁場が相違するため、それらの補償磁場の相互干渉によってシールド室3内の対象位置Pに影響を及ぼすこともあり得る。これに対し、特許文献2のアクティブ磁気シールド方法によれば、外乱磁場の分布に勾配があっても、分布勾配が一定であれば、平均操作による推定精度の限界はあるものの、複数のセンサ位置S1〜S4の計測値からシールド室3内の各対象位置P1〜P4の外乱磁場を推定して打ち消すことが期待できる。
【0011】
ただし、特許文献2のアクティブ磁気シールド方法では、例えばシールド室3付近を移動する磁場発生源によって生じる外乱磁場のように、磁束密度分布の勾配が時間と共に変化する外乱磁場に対応できない問題点がある。例えば医療施設等の付近を往来する車両(自動車)や施設内のエレベータ等の移動体は、強磁性材料を部品に含んでいるため、地磁気中を移動することで磁化され(場合によっては移動前から既に着磁していることもある)、シールド室3に外乱磁場を引き起こす磁場発生源となる。図6は、図1(A)のような道路2に隣接するシールド室3において、種類や移動向きの異なる様々な車両の接近・離隔によって起きる外乱磁場の計測結果を示し、車両の移動向きや移動速度によって外乱磁場の波形が大きく異なることを表している。また図7は、同じシールド室3において、シールド室3からの離隔距離の異なる車両の往来によって生じる外乱磁場の計測結果を示し、外乱磁場の波形が検出距離によっても大きく異なることを表している。図6及び図7のように磁場発生源が同じであっても外乱磁場の波形が大きく異なる場合は、センサ位置Sの計測値から特定の波形に基づき対象位置Pの磁場を推定することはできず、センサ位置Sの計測値の単純なスケーリング等によって対象位置Pの磁場を推定することも困難である。
【0012】
図8は、図1(A)のようなシールド室3内の対象位置P(例えばMRI装置等の設置予定位置)及びセンサ位置S(例えば磁気センサの設置予定位置)において、同じ車両の移動によって生じた外乱磁場(磁束密度)の変化をそれぞれ計測した結果を示す。同図は、対象位置P及びセンサ位置Sの検出磁場の比率を併せて示しており、車両の移動によって生じる外乱磁場の磁束密度分布(両位置の検出磁場の比率ないし勾配)が時間と共に変化することを表している(図示例では0.5〜1.5の範囲で変化している)。シールド室3内に設置する嫌磁気装置を外乱磁場から確実に保護して正常な動作を保証するためには、図8のような時間と共に磁束密度分布が変化するような外乱磁場をも相殺できるアクティブ磁気シールドが必要である。
【0013】
そこで本発明の目的は、磁束密度分布が時間と共に変化するような外乱変動磁場を打ち消すことができるアクティブ磁気シールド方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、シールド室3に影響が及ぶ範囲内を移動する磁場発生源の位置を特定することに着目した。例えばシールド室3付近の車両等の磁場発生源の位置は、比較的高速で移動している場合でも、従来技術によって比較的容易に検出できる。磁場発生源の位置が検出できれば、その検出時点における磁場発生源と対象位置Pとセンサ位置Sとの相対的位置(又は距離)関係が求まるので、その時点のセンサ位置Sの計測値から対象位置Pの外乱磁場を推定することができる。また、磁場発生源の位置は実時間(リアルタイム)で検出可能であり、磁場発生源の移動時間に対して十分に短い時間サイクルで対象位置Pの外乱磁場の推定及び補償コイルによる磁場の制御を繰り返すことにより、磁束密度分布が時間と共に変化する外乱磁場であっても打ち消すことが期待できる。本発明は、この着想に基づく研究開発により完成に至ったものである。
【0015】
図1の実施例を参照するに、本発明による外乱変動磁場のアクティブ磁気シールド方法は、シールド対象位置Pに外乱変動磁場Hpを打ち消す補償磁場Cの発生用コイル1を設置し、対象位置P周辺の所定センサ位置Sで外乱磁場Hsを検知しながら対象位置Pに影響が及ぶ範囲T内を移動する磁場発生源20の位置Qを検出し、センサ位置Sの検知磁場Hsと発生源20の検出位置Qとから発生源20の磁気モーメントMを算出し、発生源20の検出位置Qと磁気モーメントMとから対象位置Pに発生すべき補償磁場Cを算出してコイル1を駆動し、前記外乱磁場Hsの検知からコイル1の駆動までのサイクルを繰り返してなるものである。対象位置Pに影響が及ぶ範囲T内の磁場発生源20の一例は、例えば図示例のように対象位置P付近の通路2上を移動する磁性移動体である。
【0016】
また、図1のブロック図を参照するに、本発明による外乱変動磁場のアクティブ磁気シールドシステムは、シールド対象位置Pに設置して外乱変動磁場Hpを打ち消す補償磁場Cの発生用コイル1、対象位置P周辺の所定位置Sで外乱磁場Hsを検知する磁気センサ11、対象位置Pに影響が及ぶ範囲T内を移動する磁場発生源20の位置Qを検出する位置検出器21、及びセンサ位置Sの検知磁場Hsと発生源20の検出位置Qとから発生源20の磁気モーメントMを算出し且つ発生源20の検出位置Qと磁気モーメントMとから対象位置Pに発生すべき補償磁場Cを算出してコイル1を駆動するサイクルを繰り返す制御装置10を備えてなるものである。
【0017】
好ましくは、制御装置10にシールド対象位置Pからの距離R、R、……が異なる複数位置Q、Q、……に磁場発生試験体24を移動させたときのセンサ位置Sの検知磁場H、H、……から対象位置Pに影響が及ぶ範囲Tの外乱磁場Hの距離減衰式Aを求める減衰式推定手段17を含め、その距離減衰式Aに基づき発生源20の磁気モーメントM及び対象位置Sの補償磁場Cを算出する。
【0018】
更に好ましくは、対象位置P周辺の複数の所定位置Sa、Sbにそれぞれ磁気センサ11a、11bを設け、制御装置10により複数のセンサ位置Sa、Sbの検知磁場Ha、Hbと発生源20の検出位置Qとから発生源20の磁気モーメントMを算出する。
【発明の効果】
【0019】
本発明による外乱変動磁場のアクティブ磁気シールド方法及びシステムは、シールド対象位置Pに補償磁場発生用コイル1を設置したうえで、対象位置P周辺のセンサ位置Sで外乱磁場Hsを検知しながら対象位置Pに影響が及ぶ範囲T内を移動する磁場発生源20の位置Qを検出し、センサ位置Sの検知磁場Hsと発生源20の検出位置Qとから発生源20の磁気モーメントMを算出し、発生源20の検出位置Qと磁気モーメントMとから対象位置Pに発生すべき補償磁場Cを算出してコイル1を駆動するサイクルを繰り返すので、次の効果を奏する。
【0020】
(イ)磁場発生源20の位置Qは実時間(リアルタイム)で検出可能であり、その位置Qの検出時に対象位置Pに実際に晒される外乱磁場を推定して補償コイル1を駆動するサイクルを短時間で繰り返すことにより変動波形に拘らず外乱磁場を打ち消すことができ、磁束密度分布が時間と共に変化するような外乱磁場も遮断できる。
(ロ)移動する磁場発生源20の位置Qを検出して補償コイル1を駆動するので、発生源20の種類や移動速度に拘らず適用可能であり、例えば対象位置P付近の屋外を移動する様々な車両による外乱磁場を遮蔽することができると共に、対象位置P付近の屋内のエレベータ等による外乱磁場も遮蔽することができる。
(ハ)磁場発生源20の位置Qから対象位置Pとセンサ位置Sとの相対的位置関係が求まるので、一般的な物理法則(後述の式(1)参照)によって発生源の磁気モーメントMを算出することもできるが、予め対象位置Pに影響が及ぶ範囲Tにおける外乱磁場の距離減衰式Aを求めておけば、発生源の磁気モーメントM及び対象位置Pの外乱磁場の算出精度を高めることができ、ひいてはアクティブ磁気シールドの性能向上を図ることができる。
(ニ)また、対象位置P周辺の複数のセンサ位置Sa、Sbでそれぞれ外乱磁場Ha、Hbを検知し、その複数の検知磁場Ha、Hbから発生源20の磁気モーメントMを算出することにより、アクティブ磁気シールドの更なる性能向上を図ることができる。
(ホ)対象位置Pに影響が及ぶ範囲Tに磁場発生源20が存在しないとき(磁場発生源20の位置Qが検出されていないとき)は、通常のアクティブ磁気シールドシステムとして動作させることが可能であり、移動する磁場発生源20に起因する外乱磁界だけでなくそれ以外の変動する外乱磁界の遮断も可能である。
(ヘ)従来のアクティブ型では対応できずパッシブ型に依存していた外乱変動磁場の遮蔽をアクティブ型のみで対応することが可能となるので、例えばアクティブ・パッシブ複合型の磁気シールド構造においてパッシブ型の強磁性材料を削減し、高性能な複合型磁気シールド構造を経済的に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態及び実施例を説明する。
【図1】本発明によるアクティブ磁気シールドシステムの一実施例の説明図である。
【図2】本発明によるアクティブ磁気シールド方法の流れ図の一例である。
【図3】本発明によるアクティブ磁気シールドの原理を示す説明図である。
【図4】磁場発生源の磁気モーメントMの算出に用いる距離減衰式の説明図である。
【図5】本発明のシステムによるシールド性能を確認した実験結果を示すグラフである。
【図6】移動する磁場発生源(車両)によって生じる外乱変動磁場(磁束密度の変化)の一例を示すグラフである。
【図7】移動する磁場発生源(車両)によって生じる外乱変動磁場(磁束密度の変化)の他の一例を示すグラフである。
【図8】移動する磁場発生源(車両)によって生じる外乱変動磁場を、離隔した対象位置P及びセンサ位置Sでそれぞれ計測したグラフの一例である。
【図9】従来のアクティブ磁気シールドシステムの一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1(A)は、本発明のアクティブ磁気シールドシステムを、車両の通路2に隣接する医療施設等の建築物1内のシールド室3に適用した実施例(俯瞰図)を示す。図示例のシールド室3のシールド対象位置Pには、例えばMRI装置等の嫌磁気装置5が設置される。図1(B)は、そのシールド室3の拡大垂直断面図と磁気シールドシステムのブロック図を示す。図示例の磁気シールドシステムは、図9を参照して説明した従来のアクティブ型のシステムと同様に、シールド室3のシールド対象位置Pの周囲又は内面に配置された補償コイル6a、6bと、対象位置Pから離れたシールド室3の内側又は外側の所定位置Sで外乱磁場Hs(又は磁束密度Bs)を検知する磁気センサ11と、補償コイル6を駆動する制御装置10とを有する。また、従来のシステム構成に加えて、対象位置Pに影響が及ぶ範囲T内を移動する磁場発生源20(図示例では通路2上を往来する車両20a、20b)の位置Qを検出する位置検出器21を有する。位置検出器21の検出位置Qを磁気センサ11の検知磁場Hsと共に制御装置11へ入力し、検出位置Q及び検知磁場Hsの両者に基づいて補償コイル6の駆動を制御する。
【0023】
図示例の磁気サンサ11は、センサ位置Sの3軸方向(例えば図9に示すXYZ軸方向)の外乱磁場Hs(又は磁束密度Bs)を計測できるものであればとくに制限はなく、従来のアクティブ磁気シールドと同様のもの、例えば高感度マイクロ磁気サンサ(MIセンサ)、ホール素子を用いた磁気センサ、磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサ(MRセンサ)、磁性薄膜を用いた高周波駆動型の磁気センサ(TMFセンサ)等を用いることができる。
【0024】
また、図示例の位置検出器21も、対象位置Pに影響が及ぶ範囲T内の磁場発生源20の三次元位置Qを実時間(リアルタイム)で計測できるものであればとくに制限はなく、その設置位置も対象位置Pの周辺の任意位置とすることができる。例えば通路2に沿った複数位置(図示例では建築物1の壁面上の所定位置)に分散配置した車両検出センサ(超音波センサ、光センサ等)、又は車両の通過に伴う圧力変化から車両の位置を特定する圧力センサ等を用いることができる。通路2にITC/DSRC(高度道路交通システムの双方向無線通信技術)が導入されている場合は、位置検出器21をその車両位置情報を利用するものとしてもよい。また、磁場発生源20は通路2上の移動体に限らず、無軌道の移動体とすることも可能であり、その場合はシールド室3の周辺画像から無軌道の移動体の位置を検出できるステレオ式画像解析装置等を位置検出器21に含めることができる。更に、屋外の磁場発生源20だけでなく、屋内のシャフト等を通路2として移動するエレベータ等の磁場発生源20を対象とすることも可能であり、その場合は位置検出器21がエレベータの制御信号を直接利用して位置を検出してもよい。
【0025】
図示例の制御装置10は、磁気センサ11の検知磁場Hs及び位置検出器21の検出位置Qを入力する入力手段12と、その検知磁場Hs及び検出位置Qから磁場発生源20の磁気モーメントMを算出する算出手段14と、その発生源20の磁気モーメントMと検出位置Qとから対象位置Pにおける外乱磁場を推定する外乱磁場算出手段15と、その対象位置Pの外乱磁場に基づき補償コイル6a、6bの制御信号(補償コイル6a、6bにより発生すべき補償磁場C)を算出する制御信号算出手段16とを有する。例えば、補償磁場算出手段16の算出された制御信号をセレクタ7及び増幅器(アンプ)8を介して補償コイル6a、6bに印加するフィードフォワード制御により、シールド対象位置Pに外乱変動磁場を打ち消すために必要な補償磁場Cを発生させる。また、図示例の制御手段10は、対象位置Pに影響が及ぶ範囲Tの外乱磁場の距離減衰式Aを求める距離減衰式算出手段17と記憶手段18とを有する。
【0026】
図2は、図1のシステムを用いて、磁場発生源20の移動によってシールド対象位置Pに生じる外乱変動磁場を打ち消す本発明のアクティブ磁気シールド方法の流れ図を示す。以下、図2を参照して図1のシステムの制御装置10の作用を説明する。ステップS001は、上述した補償コイル6a、6b、磁気センサ11、及び位置検出器21をそれぞれシールド室3の内部又は周辺に設置する初期処理を示す。好ましくは、ステップS002において対象位置Pに影響が及ぶ範囲Tの外乱磁場Hの距離減衰式Aを検出するが、後述するようにステップS002は省略可能である。ステップS003において、対象位置Pに影響が及ぶ範囲T内を移動する磁場発生源20の三次元位置Qを位置検出器21で検出すると共に、センサ位置Sの外乱磁場Hsを磁気センサ11で検知し、発生源位置Q及び検知磁場Hsを制御装置10の入力手段12に入力する。例えば図1のように磁場発生源20を地磁気中で移動する車両とした場合、車両を中心とする磁束密度分布の外乱(地磁気の騒乱)は車両に伴って移動し、磁気センサ11によって経時的に変化する波形(図6及び図7参照)として検出されるが、ステップS003では外乱磁場Hsを波形としてではなく磁場発生源20の検出時点の瞬時値として検知する。
【0027】
図3は、ステップS003の磁場発生源20の検出時点における対象位置Pとセンサ位置Sと発生源位置Qとの相対的位置関係を示す。移動中の磁場発生源20は、地磁気がほぼ一定であることを考慮すると、図示例のように微小距離dを隔てた2つの点磁荷+m、−mからなる単一の微小磁気双極子(磁気モーメントM=md)として近似することが可能である。このように磁場発生源20を磁気双極子で近似することにより、後述するように発生源20の磁気モーメントMを簡易に精度よく推定することができる。またセンサ位置S及び発生源位置Qは、図示例のように磁気双極子で近似した磁場発生源20の磁気モーメントベクトル(その大きさは磁気モーメントM=md)と対象位置Pとを含む平面上に位置付けることができる。図中の符合RsRqは、それぞれ対象位置Pから見たセンサ位置S、発生源位置Qの位置ベクトルを示す。ただし、発生源20の磁気モーメントMのより高精度な推定が必要とされる場合は、磁場発生源20を有限長の磁気双極子又は複数個の微小磁気双極子の組み合わせとして近似することも可能である。
【0028】
図3に示すように、磁気モーメントベクトルと対象位置Pとを含む平面上において、磁気双極子の2磁荷の中点(発生源位置)Qを原点とし、その原点Qから見たセンサ位置Sを位置ベクトル(その大きさはQS間の離隔距離r)とし、磁気モーメントベクトルと位置ベクトルとのなす相対角度をθとし、磁気モーメントベクトルの方向を基線とする極座標をとると、センサ位置Sの検知磁場Hs[A/m]のr軸方向及びθ軸方向の成分H、Hθはそれぞれ式(1)で表すことができる(非特許文献1参照)。式(1)は、センサ位置Sの検知磁場Hsが発生源位置Qとの離隔距離rの3乗に応じて減衰することを示しており、μは真空中の透磁率(=4π×10−7[H/m])を表し、センサ位置Sの検知磁場Hsと磁束密度Bsとの関係はBs=μHsによって表される。

【0029】
図3のステップS004において、制御装置10の磁気モーメント算出手段14により、位置検出器21の検出位置Qと磁気センサ11の検知磁場Hsとを式(1)へ代入することにより、磁場発生源20の磁気モーメントMを算出する。式(1)において、r軸方向及び離隔距離r(図3参照)は検出位置Qとセンサ位置Sとから求めることができ、磁場H及びHθは磁気センサ11の出力値とr軸方向とから求めることができるから、それらを式(1)に代入して解くことにより、残りの未知数である磁気モーメントベクトル(磁気モーメントMと相対角度θ)を算出できる。式(1)は非線形方程式となるが、例えばNewton法等の数値演算を利用して解くことにより、磁気モーメントMを算出することがができる。
【0030】
好ましくは、図1に示すように対象位置P周辺の複数のセンサ位置Sa、Sbにそれぞれ磁気センサ11a、11bを設け、磁気モーメント算出手段14により、複数のセンサ位置Sa、Sbの検知磁場Ha、Hbから発生源20の磁気モーメントベクトルを算出する。上述したように、単一の磁気センサ11の検知磁場Hsから式(1)を解くことも可能であるが、磁気センサ11を増やして連立方程式の数を増やすることにより、磁気モーメントMの算出精度を高めることができる。
【0031】
ステップS005において、制御装置10の外乱磁場算出手段15により、ステップS004で算出した磁場発生源20の磁気モーメントM(及び相対角度θ)と、ステップS003で入力した磁場発生源20の三次元位置Qとから、検出位置Qの磁場発生源20がシールド対象位置Pに及ぼす外乱磁場Hpを算出する。具体的には、発生源20の検出位置Qと対象位置Sとから両者の離隔距離rq(位置ベクトルRqの大きさ)を求めることができ、そのrqと磁気モーメントMと相対角度θとを式(1)の右辺へ代入することにより、対象位置Pにおける外乱磁場Hpのr軸方向成分H及びθ軸方向成分Hθをそれぞれ算出することができる。
【0032】
更にステップS005において、制御装置10の制御信号算出手段16により、例えば極座標の外乱磁場Hp(r軸方向成分H及びθ軸方向成分Hθ)をシールド対象位置Pの補償コイル6a、6bの配置方向に応じたXYZ座標に変換することにより、外乱磁場Hpを打ち消すために必要な補償コイル6a、6bで発生すべき補償磁場C(補償コイル6a、6bの制御信号)を算出する。算出した制御信号をセレクタ7及び増幅器(アンプ)8へ出力して補償コイル6a、6bを駆動することにより、対象位置Pに実際に晒される外乱磁場Hpを打ち消すことができる。
【0033】
ステップS006においてアクティブ磁気シールドを終了するか否かを判断し、継続する場合はステップS003へ戻り、上述したステップS003〜S005を繰り返す。図2の流れ図では、ステップS003においてセンサ位置Sの外乱磁場Hs(又は磁束密度Bs)を瞬時値として検出し、その瞬時値に対応するシールド対象位置Pの外乱磁場HpをステップS005において推定するので、外乱磁場の磁束密度分布の波形に拘らず、センサ位置Sの外乱磁場Hsから対象位置Pの外乱磁場Hpを精度よく推定することができる。また、ステップS003における発生源位置Q及び外乱磁場Hsの検出は実時間(リアルタイム)で実行可能であり、磁場発生源20の移動時間に対してステップS003〜S005を十分短い時間サイクルで繰り返すことにより、磁束密度分布が時間と共に変化する外乱磁場であっても打ち消すことができる。
【0034】
[実験例1]
図5は、上述した本発明のアクティブ磁気シールドシステムによるシールド性能を確認した実験結果を示す。本実験では、図1(A)のシールド室3の内部又は周辺に補償コイル6a、6b及び位置検出器21をそれぞれ配置し、センサ位置Sに磁気センサ11を設置すると共に、シールド対象位置P(MRI装置等の設置する前の対象位置)にも磁気センサ11を設置したうえで、同じ車両の移動によって実際に生じた外乱磁場(磁束密度)の変化をセンサ位置S及び対象位置Pでそれぞれ測定した。また、図2の流れ図に沿ってセンサ位置Sの測定磁場と位置検出器21の検出位置とから、その車両の移動が対象位置Pに及ぼす外乱磁場(磁束密度)を推定した。図5のグラフは、対象位置Pで実際に生じた外乱磁場の3軸方向の磁束密度Bx、By、Bzの測定値と、センサ位置Sの測定値から算出した対象位置Pの外乱磁場の3軸方向の磁束密度Bx、By、Bzの推定値とを併せて表したものである。
【0035】
図5の磁束密度Bx、By、Bzの測定値と推定値とは、何れの軸方向においてもほぼ一致しており、図3に示すように磁場発生源20を磁気双極子で近似する本発明のシールド方法によって、センサ位置Sの測定磁場から対象位置Pの外乱磁場を十分な精度で推定できることを示している。また、図5の磁束密度Bx、By、Bzの推定値から補償コイル6a、6bの制御信号を算出して補償コイル6a、6bを駆動しながら、同様にして同じ車両の移動によって実際に生じる外乱磁場(磁束密度)の変化をセンサ位置S及び対象位置Pでそれぞれ測定する実験を繰り返したところ、今度は対象位置Pの磁束密度Bx、By、Bzの測定値が何れの軸方向においてもほぼ0となることを確認することができた。これらの実験結果から、本発明のアクティブ磁気シールドシステムは、シールド室3付近を移動する磁場発生源20によって生じる外乱磁場(磁束密度分布の勾配が時間と共に変化する外乱磁場)をも十分に打ち消すことが可能であり、シールド室3内に設置するMRI装置等を外乱磁場から確実に保護するために有効であるといえる。
【0036】
こうして本発明の目的である「磁束密度分布が時間と共に変化するような外乱変動磁場を打ち消すことができるアクティブ磁気シールド方法及びシステム」の提供を達成することができる。
【0037】
なお、以上の説明ではシールド室3に磁場発生源20以外の外乱磁場の影響がないことを前提としているが、磁場発生源20以外にも一定レベルの環境磁場(背景磁場)が存在しているようなシールド室3では、例えば図2のステップS001の初期処理(補償コイル6a、6bの設置時)において、予め磁場発生源20の存在しない状態で対象位置P及びセンサ位置Sの初期磁場H(背景磁場)を求めて制御装置10の記憶手段18に記憶しておくことができる。この場合は、ステップS004において、センサ位置Sの検知磁場Hsの初期磁場Hからの偏差(=Hs−H)と、位置検出器21による磁場発生源20の検出位置Qとから発生源20の磁気モーメントMを算出することにより、背景磁場による磁気モーメントMの算出誤差の発生を避けることができる。また、ステップS005において、磁場発生源20の磁気モーメントMから推定した対象位置Pの外乱磁場Hpと対象位置Pの初期磁場Hとの加算値(=Hp+H)によって補償コイル6a、6bの制御信号を算出することにより、背景磁場を含めた対象位置Pの外乱磁場を精度よく打ち消すことができる。本発明のアクティブ磁気シールドシステムは、磁場発生源20の位置Qが検出されていない状態(例えば周辺に車両が存在しない状態)で動作させることも可能であり、磁場発生源20に起因する外乱磁界だけでなくそれ以外の変動する外乱磁界を遮断するためにも適用可能である。
【実施例1】
【0038】
図1のステップS002は、制御装置10の減衰式推定手段17により、対象位置Pに影響が及ぶ範囲Tの外乱磁場Hの距離減衰式Aを求める処理を示す。上述したように磁場発生源20の移動により引き起こされる外乱変動磁場の波形は発生源20の種類や速度等に応じて様々であるが(図6及び図7参照)、外乱磁場の距離減衰特性は一般的な物理法則に従い、式(1)に示すように離隔距離rのほぼ3乗に反比例して減衰すると考えることができる。ただし、実際の外乱磁場の距離減衰特性は、シールド室3の周囲の建築物等の環境条件により相違し、式(1)の離隔距離rの冪次数が変化し得る。
【0039】
図4は、各種車両の移動によって引き起こされる図6のシールド室3の外乱磁場(磁束密度)の計測結果から、外乱磁場が最大となる離隔距離r=3.0mを基準地点とし、離隔距離r(基準地点の離隔距離との差)に応じた外乱磁場の減衰率(基準地点の外乱磁場に対する割合)をプロットしたグラフを示す。同図のグラフから、この実験例のシールド室3の周辺では、周囲の建築物等の影響によって、離隔距離rの3乗ではなくほぼ2.6乗に反比例して外乱磁場が減衰していることが分かる。図2のステップS003において磁場発生源20の磁気モーメントMの推定精度を高め、更にステップS005における対象位置Sの補償磁場Cの算出精度を高めるためには、一般的な距離減衰特性(離隔距離rのほぼ3乗に反比例する式(1))に代えて、図4のように対象位置Pに影響が及ぶ範囲Tにおける実際の距離減衰式(離隔距離rのほぼ2.6乗に反比例する減衰式)を用いることが望ましい。
【0040】
図1の制御装置10には、対象位置Pに影響が及ぶ範囲Tの外乱磁場の距離減衰式Aを求める距離減衰式算出手段17を設けている。図2のステップS002において、例えばシールド対象位置Pからの離隔距離R、R、……が異なる複数位置Q、Q、……にそれぞれ一定の磁場を発生する試験体24を移動させ、シールド室3のセンサ位置Sの磁気センサ11によって各位置Qで発生する外乱磁場H、H、……をそれぞれ検知し、検知した各位置Qの外乱磁場Hを離隔距離Rと共に距離減衰式算出手段17へ入力する。図1のようにシールド室3に隣接して通路2が存在する場合は、図4の場合と同様に、通路2上を移動する移動体(車両やエレベータ)を磁場発生試験体24として利用してもよい。距離減衰式Aの算出精度を高めるためには、対象位置Pに影響が及ぶ範囲T内のできるだけ多くの位置Qに磁場発生試験体24を移動させて外乱磁場Hを検知することが望ましい。
【0041】
制御装置10の距離減衰式算出手段17は、例えば外乱磁場Hが最大となる離隔距離Rを基準地点として検出し、図4に示すように対象位置Pからの離隔距離r(基準地点の離隔距離との差)に応じた外乱磁場Hの減衰率(基準地点の外乱磁場に対する割合)をプロットしたグラフを作成することにより、対象位置Pに影響が及ぶ範囲Tの外乱磁場の距離減衰式Aを算出する。算出した距離減衰式Aを、例えば制御装置10の記憶手段18に記憶しておき、上述したステップS003の磁気モーメントMの推定、及びステップS005の補償磁場Cの算出に利用することにより、本発明のアクティブ磁気シールドシステムのシールド性能を一層高めることができる。
【符号の説明】
【0042】
1…医療施設(又は半導体製造施設) 2…通路(車道)
3…シールド室(シールドルーム) 5…シールド対象装置(嫌磁気装置)
6…補償コイル 7…セレクタ
8…増幅器(アンプ)
10…制御装置 11…磁気センサ
12…入力手段 14…磁気モーメント算出手段
15…外乱磁場算出手段 16…制御信号算出手段
17…距離減衰式算出手段 18…記憶手段
20…磁場発生源 21…位置検出器
24…磁場発生試験体
A…距離減衰式 C…補償磁場
d…磁気双極子の微小距離 Hp…対象位置の外乱磁場
Hs…センサ位置の外乱磁場 H…センサ位置の初期磁場
M…磁気モーメント m…磁気双極子の磁荷
P…シールド対象位置 Q…磁場発生源の位置
r…センサ位置から磁場発生源位置までの離隔距離
S…センサ位置 T…影響が及ぶ範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド対象位置に外乱変動磁場を打ち消す補償磁場発生用コイルを設置し、前記対象位置周辺の所定センサ位置で外乱磁場を検知しながら対象位置に影響が及ぶ範囲内を移動する磁場発生源の位置を検出し、前記センサ位置の検知磁場と発生源の検出位置とから発生源の磁気モーメントを算出し、前記発生源の検出位置と磁気モーメントとから対象位置に発生すべき補償磁場を算出してコイルを駆動し、前記外乱磁場の検知からコイルの駆動までのサイクルを繰り返してなる外乱変動磁場のアクティブ磁気シールド方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、前記対象位置に影響が及ぶ範囲内の磁場発生源を、前記対象位置付近の通路上を移動する磁性移動体としてなる外乱変動磁場のアクティブ磁気シールド方法。
【請求項3】
請求項1又は2の方法において、前記コイル設置時にシールド対象位置からの距離が異なる複数位置に磁場発生試験体を移動させたときのセンサ位置の検知磁場から対象位置に影響が及ぶ範囲の外乱磁場の距離減衰式を求め、その距離減衰式に基づき前記発生源の磁気モーメント及び対象位置の補償磁場を算出してなる外乱変動磁場のアクティブ磁気シールド方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れかの方法において、前記対象位置周辺の複数の所定センサ位置でそれぞれ外乱磁場を検知し、前記複数のセンサ位置の検知磁場と発生源の検出位置とから発生源の磁気モーメントを算出してなる外乱変動磁場のアクティブ磁気シールド方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れかの方法において、前記コイル設置時に磁場発生源の存在しない状態でセンサ位置の初期磁場を求め、前記センサ位置の検知磁場の初期磁場からの偏差と発生源の検出位置とから発生源の磁気モーメントを算出してなる外乱変動磁場のアクティブ磁気シールド方法。
【請求項6】
シールド対象位置に設置して外乱変動磁場を打ち消す補償磁場発生用コイル、前記対象位置周辺の所定位置で外乱磁場を検知する磁気センサ、前記対象位置に影響が及ぶ範囲内を移動する磁場発生源の位置を検出する位置検出器、及び前記センサ位置の検知磁場と発生源の検出位置とから発生源の磁気モーメントを算出し且つ前記発生源の検出位置と磁気モーメントとから対象位置に発生すべき補償磁場を算出してコイルを駆動するサイクルを繰り返す制御装置を備えてなる外乱変動磁場のアクティブ磁気シールドシステム。
【請求項7】
請求項6のシステムにおいて、前記対象位置に影響が及ぶ範囲内の磁場発生源を、前記対象位置付近の通路上を移動する磁性移動体としてなる外乱変動磁場のアクティブ磁気シールドシステム。
【請求項8】
請求項6又は7のシステムにおいて、前記制御装置にシールド対象位置からの距離が異なる複数位置に磁場発生試験体を移動させたときのセンサ位置の検知磁場から対象位置に影響が及ぶ範囲の外乱磁場の距離減衰式を求める減衰式推定手段を含め、その距離減衰式に基づき前記発生源の磁気モーメント及び対象位置の補償磁場を算出してなる外乱変動磁場のアクティブ磁気シールドシステム。
【請求項9】
請求項6から8の何れかのシステムにおいて、前記対象位置周辺の複数の所定位置にそれぞれ磁気センサを設け、前記制御装置により複数のセンサ位置の検知磁場と発生源の検出位置とから発生源の磁気モーメントを算出してなる外乱変動磁場のアクティブ磁気シールドシステム。
【請求項10】
請求項6から9の何れかのシステムにおいて、前記制御装置に磁場発生源の存在しない状態のセンサ位置の初期磁場を記憶し、前記センサ位置の検知磁場の初期磁場からの偏差と発生源の検出位置とから発生源の磁気モーメントを算出してなる外乱変動磁場のアクティブ磁気シールドシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図9】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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