説明

外付けダンパ及び電動パワーステアリング装置

【課題】容易にモータを低騒音化させ得る外付けダンパ及び電動パワーステアリング装置を提案する。
【解決手段】吸音材から形成された吸音シートと、吸音シートと別体に形成され、吸音シートを介してモータのハウジングを締め付けるようにして当該吸音シートを一定の圧縮力で圧縮した状態でモータに固定するバンド状の固定手段とを備え、固定手段は、モータのハウジングを締め付けた状態における当該固定手段の径を調整可能とする調整手段と、モータのハウジングと対向する一面側に設けられた所定高さの複数の突起とを有し、各突起がそれぞれモータのハウジングと接触するようにモータに取り付けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールに印加された操舵トルクに対応して、電動モータから補助操舵トルクを発生して、減速機により減速して操舵機構の出力軸に伝達する電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering)に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モータの作動音を低減させる技術として、
(1)モータのハウジング外周部にリブ(突起)を設けて、ハウジングから放射される音の周波数を制限する。
(2)ステータコアの電磁加振力によるハウジングの振動を抑制するため、制振鋼板を使用する。
(3)正弦波駆動による作動音、振動の低減のため、回転位置検出センサをHICからレゾルバ(正弦波駆動)にする。
(4)ロータのマグネットの着磁スキューや、ステータコアのスキューによる低コギング化して、ステータコアからハウジングへの振動伝播の抑制。
(5)低コギング化するために、多極多スロット化する。
などの技術が知られている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
また、モータハウジングの振動がモータ取付け面に伝達されるのを防止するため、モータハウジング及びモータ取付面間に衝撃を吸収する弾性部材を介在させる方法も提案されている(特許文献3参照)。この方法によれば、モータハウジングの振動がモータ取付け面に伝達されるのを防止できるため、かかる振動がモータ取付け面に伝達されることに起因する振動音の発生を有効に抑制することができる。
【特許文献1】特許第266708号公報
【特許文献2】特開2003−314781号公報
【特許文献3】特開2004−304857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の室内にモータが配置される電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering)においては、大型車両への普及に伴い、モータの高出力化が要求されている。
【0005】
ところが、かかるモータが高出力化するに連れてモータにおける電磁加振力も増加し、ステータコアと圧入等で固定されているハウジングが電磁加振力の増加に伴って共振を起こすことも懸念される。特に動力源としてエンジン及び電動モータを使用するハイブリッド(HV)車では、エンジンが停止した状態でEPSが作動するため、一層の低騒音化が要求される。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、より一層とモータを低騒音化させ得る外付けダンパ及び電動パワーステアリング装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明においては、外付けダンパにおいて、吸音材から形成された吸音シートと、前記吸音シートと別体に形成され、吸音シートを一定の圧縮力で圧縮した状態でモータに固定するように、前記吸音シートを介して前記モータのハウジングを巻き付けられるバンド状の固定手段とを備え、前記固定手段は、前記モータのハウジングに巻き付けた状態における当該固定手段の径を調整可能とする調整手段と、前記モータのハウジングと対向する一面側に設けられた所定高さの複数の突起とを有し、各前記突起がそれぞれ前記モータのハウジングと接触するように前記モータに取り付けられることを特徴とする。
【0008】
この結果この外付けダンパによれば、モータのハウジングに対する吸音シートの密着力を高めることができ、また常に吸音シートを一定の圧力でモータのハウジングに密着させることができる。
【0009】
また本発明においては、電動パワーステアリング装置の電動モータに本発明による外付けダンパを取り付けるようにした。
【0010】
この結果この電動パワーステアリング装置によれば、モータのハウジングに対する吸音シートの密着力を高めることができ、また常に吸音シートを一定の圧力でモータのハウジングに密着させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、モータ(電動パワーステアリング装置の電動モータを含む)から発生する作動音及び共振音をより一層と低減することができ、かくしてより一層とモータを低騒音化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0013】
(1)第1の実施の形態
図1〜図3において、1は全体として電動パワーステアリング装置の電動モータ(以下、これを単にモータと呼ぶ)4に使用される第1の実施の形態による外付けダンパを示す。この外付けダンパ1は、「C」形状の締付けバンド2と、その内面側に配置される吸音シート3とを備えて構成される。
【0014】
締付けバンド2は、吸音シート3をモータ4のハウジングに密着させるためのもので、例えば図4に示すような帯状の樹脂シートから形成される。この締付けバンド2には、外付けダンパ1の内側面を形成する一面側の幅方向の一端側及び他端側にそれぞれ所定高さの突起2Aが複数設けられている。これら突起2Aは、締付けバンド2の幅方向(図4の矢印yで示す方向)の一端側及び他端側に、当該締付けバンド2の長手方向(図4の矢印xで示す方向)に沿って順次交互に一定間隔で形成されている。
【0015】
また外付けダンパ1の外側面を形成する締付けバンド2の他面側には、当該締付けバンド2の長手方向の一端部近傍及び他端部の近傍にそれぞれソケット2B,2Cが設けられている。そしてこれらソケット2B,2Cには、それぞれ締付けバンド2の幅方向に貫通する貫通孔2BX,2CXが設けられている。
【0016】
これにより締付けバンド2においては、図2及び図3に示すように、その長手方向の両端側を一部重ね合わせるようにモータ4のハウジングに巻き付け、略U字状に形成されたクリップ5の各脚部5A,5Bを押し広げてこれら脚部5A,5Bをそれぞれ各ソケット2B,2Cの各貫通孔2BX,2CXに嵌め込むことによって、締付けバンド2をモータ4のハウジングに当該ハウジングを締め付けるように巻き付けた状態に保持することができるようになされている。
【0017】
この場合、クリップ5は、弾力性を有する金属材から構成されており、これによりこのクリップ5の弾性力によって、筒状に丸められた締付けバンド2に対してその径を狭める方向の圧力を印加し、締付けバンド2を常にその突起2Aの先端面がモータ4のハウジングの周囲に接触した状態に保持し得るようになされている。
【0018】
吸音シート3は、モータ4が発生する作動音及び共振音を吸収するためのもので、例えば発砲ウレタン等の吸音材を用いて形成される。この吸音シート3は、締付けバンド2とほぼ同じ長さで、かつ締付けバンド2の幅方向における突起2A間距離とほぼ同じ幅を有する帯状に形成されている。
【0019】
また吸音シート3の厚みは、締付けバンド2の突起2Aの高さよりも僅かに大きく選定されており、これにより図2及び図3のように外付けダンパ1をモータ4に装着したときに、吸音シート3を締付けバンド2の各突起2Aの高さと同じ厚みになるまで圧縮し、モータ4のハウジングに密着させることができるようになされている。
【0020】
以上のように本実施の形態による外付けダンパ1は、吸音シート3と一体に締付けバンド2をモータ4のハウジングに巻き付け、当該締付けバンド2の各ソケット2B,2Cに跨ってクリップ5を取り付けることによって、かかるクリップ5の弾性力によって吸音シート2をモータ4のハウジングに密着させることができる。
【0021】
この場合において、本実施の形態による外付けダンパ1では、モータ4から発生する作動音や振動音を吸収する吸音シート3と、これをモータ4のハウジングに密着させる締付けバンド2とが別体に構成されているため、モータ4のハウジングに対する吸音シート3の密着力を高めることができる。かくするにつき、モータ4から発生する作動音及び共振音をより一層と低減することができ、かくしてモータ4を低騒音化させることができる。
【0022】
また本実施の形態による外付けダンパ1では、締付けバンド2をその長手方向の両端側を一部重ね合わせるようにモータ4のハウジングに巻き付け、クリップ5の弾性力によって当該締付けバンド2をモータ4に巻き付けた状態に保持するようにしているため、締付けバンド2のモータ4への巻付け径を調整することができ、環境温度の変化による締付けバンド2及びモータ4のモータハウジングの寸法変化を吸収しながら、振動による締付けバンド2や吸音シート3の動きを抑制することができ、常に吸音シート3を一定の圧力でモータ4の周囲に密着させることができる。
【0023】
さらに本実施の形態による外付けダンパ1では、締付けバンド2の幅方向の一端部及び他端部にそれぞれ複数の突起2Aを設けているため、これら突起2Aによって吸音シート3の軸方向へのずれを抑止しながら、締付けバンド2による吸音シート3の圧縮率をモータ4のハウジングの一周に渡って均一化させることができ、当該圧縮率の程度のばらつきの発生を防止することができる。
【0024】
(2)第2の実施の形態
図5は、第2の実施の形態による外付けダンパ10を示す。この外付けダンパ10においては、帯状に形成された発砲シート11の幅方向の両端側にそれぞれ同じ長さ及び同じ厚みのゴム製バンド12が固着されることにより吸音シート13が形成されている。
【0025】
また外付けダンパ10の外側面を形成する吸音シート13の一面側にはメッシュシート14が配設されており、吸音シート13はこのメッシュシート14を介して締付けバンド15を構成する2本の結束バンド15A,15Bによりモータ4(図2及び図3)のハウジングに巻き付けられた状態で固定される。なお、本実施の形態の場合、これら結束バンド15A,15Bは、それぞれ樹脂材から構成されている。
【0026】
このように構成された本実施の形態による外付けダンパ10でも、モータ4から発生する作動音や振動音を吸収する吸音シート13と、これをモータ4のハウジングに密着させる締付けバンド15とが異なる部材で構成されているため、第1の実施の形態による外付けダンパ1(図1)と同様に、モータ4のハウジングに対する吸音シート13の密着力を高めることができる。かくするにつき、モータ4から発生する作動音及び共振音をより一層と低減することができ、かくしてモータ4を低騒音化させることができる。
【0027】
(3)第3の実施の形態
図1との対応部分に同一符号を付した図6は、第3の実施の形態による外付けダンパ20を示す。この外付けダンパ20は、帯状の締付けバンド21と、その内側に配置される吸音シート3とを備えて構成される。
【0028】
締付けバンド21は、金属材を用いて形成されている。そして、この締付けバンド21の幅方向の一端部及び他端部には、これら一端部及び他端部に一定間隔で突出形成された複数の凸部をそれぞれ吸音シート3が配置される一面側に折り曲げることにより、第1の実施の形態における突起2A(図1)と同様の機能を有する突起21Aが複数形成されている。また締付けバンド21の長手方向の両端部には、それぞれ当該端部を締付けバンド21の他面側にコ字状に折り曲げることにより、屈曲部21A,21Bが形成されている。
【0029】
これにより本実施の形態による外付けダンパ20においては、図6(D)及び(E)に示すように、締付けバンド21の屈曲部21A,21Bの先端面を付き合わせるように当該締付けバンド21をモータ4のハウジングに巻き付けた後、略U字状に形成された線加工ばね22の各脚部をそれぞれ締付けバンド21の屈曲部21A,21Bに嵌め込むことによって、第1の実施の形態と同様に、吸音シート3を締付けバンド21によりモータ4のハウジングに密着するように固定することができる。
【0030】
そして、このように外付けダンパ20を構成しても、モータ4のハウジングに対する吸音シート3の密着力を高めることができる。かくするにつき、モータ4から発生する作動音及び共振音をより一層と低減することができ、かくしてモータ4を低騒音化させることができる。
【0031】
(4)第4の実施の形態
図1との対応部分に同一符号を付して示す図7は、第4の実施の形態による外付けダンパ30を示す。この外付けダンパ30は、吸音シート3の一面側に断熱シート31が配設されることにより構成されている。そしてこの外付けダンパ30は、一定の張力をもたせながらモータ4(図2及び図3)のハウジングに巻き付けた後、長手方向の両端部を図示しない粘着テープにより一体に固定することにより、吸音シート3をモータ4のハウジングに密着するように固定することができる。
【0032】
このように外付けダンパ30を構成しても、モータ4のハウジングに対する吸音シート3の密着力を高めることができる。かくするにつき、モータ4から発生する作動音及び共振音をより一層と低減することができ、かくしてモータ4を低騒音化させることができる。
【0033】
(5)他の実施の形態
なお上述の第1の実施の形態においては、モータ4のハウジングの周囲に巻き付けられた締付けバンド2に対してその径を狭める方向の圧力をクリップ5により印加するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばゴムやばねなどの他の弾性体により締付けバンドに対してその径を狭める方向の圧力を印加するようにしても良い。
【0034】
また上述の第2の実施の形態においては、締付けバンド15(図5)をそれぞれ樹脂材からなる2本の結束バンド15A,15Bにより構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、樹脂以外の例えばステンレスにより締付けバンド15A,15Bを構成するようにしても良い。
【0035】
さらに上述の実施第1〜第3の実施の形態においては、吸音シートをモータ4のハウジングに固定する固定手段としての締付けバンド2,15,21を図2、図5又は図6のように構成し、上述の第4の実施の形態においては、かかる固定手段として粘着テープを適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、かかる固定手段の構成としてはこの他種々の構成を広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、電動パワーステアリング装置に使用される電動モータのほか、種々の用途のモータに広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施の形態による外付けダンパの全体構成を示す斜視図である。
【図2】外付けダンパの使用状態を示す斜視図である。
【図3】外付けダンパの使用状態を示す断面図である。
【図4】(A)は樹脂バンドの構成を示す平面図、(B)は樹脂バンドの構成を示す側面図である。
【図5】(A)は第2の実施の形態による外付けダンパの構成を示す平面図、(B)は当該外付けダンパの構成を示す正面図である。
【図6】(A)は第3の実施の形態による外付けダンパの構成を示す平面図、(B)は当該外付けダンパの構成を示す正面図、(C)は当該外付けダンパの構成を示す側面図、(D)は当該外付けダンパの使用状態を示す正面図、(E)は当該外付けダンパの構成を示す側面図である。
【図7】(A)は第4の実施の形態による外付けダンパの構成を示す平面図、(B)は当該外付けダンパの構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0038】
1,10,20,30……外付けダンパ、2,15,21……締め付けバンド、2A,21A……突起、2B,2C……ソケット、2BX,2CX……貫通孔、3,13……吸音シート、4……モータ、5……クリップ、5A,5B……脚部、14……メッシュカバー、15A,15B……結束バンド、21A,21B……屈曲部、22……線加工ばね、31……耐熱シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸音材から形成された吸音シートと、
前記吸音シートと別体に形成され、吸音シートを一定の圧縮力で圧縮した状態でモータに固定するように、前記吸音シートを介して前記モータのハウジングに巻き付けられるバンド状の固定手段と
を備え、
前記固定手段は、
前記モータのハウジングに巻き付けた状態における当該固定手段の径を調整可能とする調整手段と、
前記モータのハウジングと対向する一面側に設けられた所定高さの複数の突起と
を有し、
各前記突起がそれぞれ前記モータのハウジングと接触するように前記モータに取り付けられる
ことを特徴とする外付けダンパ。
【請求項2】
前記突起は、前記固定手段の幅方向両側に設けられた
ことを特徴とする請求項1に記載の外付けダンパ。
【請求項3】
前記突起は、
前記固定手段の幅方向の一端側及び他端側に、当該固定手段の長手方向に沿って順次交互に設けられた
ことを特徴とする請求項1に記載の外付けダンパ。
【請求項4】
ステアリングホイールに印加された操舵トルクに対応して、電動モータから補助操舵トルクを発生して、減速機により減速して操舵機構の出力軸に伝達する電動パワーステアリング装置において、
請求項1乃至請求項3に記載の外付けダンパが前記電動モータのハウジングに取り付けられた
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−55743(P2009−55743A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221641(P2007−221641)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】