外力検出装置及び外力検出センサー
【課題】圧電片に加わる外力を高精度にかつ容易に検出することができる外力検出装置を提供すること。
【解決手段】水晶片2を容器1内に片持ちで支持する。水晶片2の例えば中央部にて上面及び下面に夫々励振電極31、41を形成する。水晶片2の下面側の先端部に、下面側の励振電極41に引き出し電極42を介して接続される可動電極5を形成し、この可動電極5に対向して容器1の底部に固定電極6を設ける。上面側の励振電極31と固定電極6とを発振回路14に接続する。水晶片2に外力が加わって撓むと、可動電極5と固定電極6との間の容量が変わり、この容量変化を水晶片の発振周波数の変化として捉える。
【解決手段】水晶片2を容器1内に片持ちで支持する。水晶片2の例えば中央部にて上面及び下面に夫々励振電極31、41を形成する。水晶片2の下面側の先端部に、下面側の励振電極41に引き出し電極42を介して接続される可動電極5を形成し、この可動電極5に対向して容器1の底部に固定電極6を設ける。上面側の励振電極31と固定電極6とを発振回路14に接続する。水晶片2に外力が加わって撓むと、可動電極5と固定電極6との間の容量が変わり、この容量変化を水晶片の発振周波数の変化として捉える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電片例えば水晶片を用い、圧電片に作用する外力の大きさを発振周波数に基づいて検出することにより、加速度、圧力、流体の流速、磁力あるいは静電気力などといった外力を検出する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
系に作用する外力として、加速度に基づく物体に作用する力、圧力、流速、磁力、静電気力などがあるが、これらの外力を正確に測定することが必要な場合が多い。例えば自動車を開発する段階で自動車が物体に衝突したときに座席における衝撃力を測定することが行われている。また地震時の振動エネルギーや振幅を調べるためにできるだけ精密に揺れの加速度などを調べる要請がある。
【0003】
更にまた液体や気体の流速を正確に調べてその検出値を制御系に反映させる場合や、磁石の性能を測定する場合なども外力の測定例として挙げることができる。
このような測定を行うにあたって、できるだけ簡素な構造でありかつ高精度に測定することが要求されている。
【0004】
特許文献1には、圧電フィルムを片持ちで支持し、周囲の磁力の変化により圧電フィルムが変形し、圧電フィルムに流れる電流が変化することが記載されている。
また特許文献2には、容量結合型の圧力センサーと、この圧力センサーの配置領域に対して仕切られた空間に配置された水晶振動子とを設け、これら圧力センサーの可変容量と水晶振動子とを並列に接続し、圧力センサーにおける容量が変化することにより水晶振動子の反共振点が変わることで圧力を検出することが記載されている。
これら特許文献1、2は本発明とは原理が全く異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−138852(段落0021、段落0028)
【特許文献2】特開2008−39626(図1及び図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、圧電片に加わる外力を高精度にかつ容易に検出することができる外力検出装置及び外力検出センサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、圧電片に作用する外力を検出する外力検出装置であって、
一端側が基台に支持された片持ちの圧電片と、
この圧電片を振動させるために、当該圧電片の一面側及び他面側に夫々設けられた一方の励振電極及び他方の励振電極と、
一方の励振電極に電気的に接続された発振回路と、
前記圧電片において前記一端側から離れた部位に設けられ、前記他方の励振電極に電気的に接続された可変容量形成用の可動電極と、
前記圧電片とは離間して、前記可動電極に対向するように設けられると共に前記発振回路に接続され、圧電片の撓みにより前記可動電極との間の容量が変化してこれにより可変容量を形成する固定電極と、
前記発振回路の発振周波数に対応する周波数情報である信号を検出するための周波数情報検出部と、を備え、
前記発振回路から一方の励振電極、他方の励振電極、可動電極及び固定電極を経て発振回路に戻る発振ループが形成され、
前記周波数情報検出部にて検出された周波数情報は、圧電片に作用する力を評価するためのものであることを特徴とする。
【0008】
前記可変容量形成用の可動電極は、例えば前記圧電片の他端側に設けられる。前記可動電極は、圧電片の一面側及び他面側のいずれに設けてもよいし、両方に設けてもよい。
【0009】
本発明の具体的態様の例を列挙する。
圧電片、励振電極、可動電極及び固定電極からなる組として、第1の組及び第2の組を設け、
第1の組及び第2の組に夫々対応して発振回路を設け、
前記周波数情報検出部は、前記第1の組に対応する発振周波数及び前記第2の組に対応する発振周波数の差分に応じた信号を求める機能を有する構成を挙げることができる。この構成においては、第1の組及び第2の組に対して発振回路を共通化することもでき、この場合、第1の組の発振ループと第2の組の発振ループとが交互に形成されるように、発振回路とループとの間に切替えスイッチ部を設ければよい。
【0010】
また前記圧電片を検出用圧電片と呼ぶとすると、共通の容器内に検出用圧電片と参照用圧電片とを設け、
前記参照用圧電片の両面に一方の励振電極及び他方の励振電極を夫々設けると共に、この参照用圧電片を発振させるために一方の励振電極及び他方の励振電極を発振回路に接続し、
前記周波数情報検出部は、検出用圧電片に対応する発振周波数と参照用圧電片に対応する発振周波数との差分に応じた信号を求める構成を挙げることができる。この場合、検出用圧電片と参照用圧電片とは共通化されていてもよい。
【0011】
前記圧電片は水晶片であり、励振電極が設けられている部位の結晶軸と可動電極が設けられている部位の結晶軸とが互に異なる構成であってもよい。
結晶軸が互に異なるとは、例えばX軸の伸びる方向は同じであるが、X軸の正負が逆になる場合、例えばATカットの水晶とDTカットの水晶とが接合されている場合などを挙げることができる。またX軸の伸びる方向が互に異なっていてもよい。
【0012】
本発明は、前記圧電片に外力が加わったときに励振電極が設けられている部位が撓むのを防止するために、前記圧電片の下面側の部位であって、前記圧電片における励振電極と可動電極との間の部位を支持する支持部を前記基台に設けるようにしてもよい。
【0013】
また前記容器内における固定電極が設けられている側の内壁部に、前記圧電片が過剰に撓んだときに当該圧電片の他端よりも一端側に寄った部位を接触させて当該部位の撓みを規制し、これにより圧電片の他端が容器の内壁部に衝突することを避けるための突起部を備えた構成としてもよい。
【0014】
他の発明は、圧電片に作用する外力を圧電基板の発振周波数に基づいて検出するための外力検出センサーであって、
一端側が基台に支持された片持ちの圧電片と、
この圧電片を振動させるために、当該圧電片の一面側に設けられ、発振回路に電気的に接続される一方の励振電極と、
前記圧電片の他面側に設けられた他方の励振電極と、
前記圧電片において前記一端側から離れた部位に設けられ、前記他方の励振電極に電気的に接続された可変容量形成用の可動電極と、
前記圧電片とは離間して、前記可動電極に対向するように設けられると共に前記発振回路に接続され、圧電片の撓みにより前記可動電極との間の容量が変化してこれにより可変容量を形成する固定電極と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、圧電片に外力が加わって撓むとあるいは撓みの程度が変わると、圧電片側の可動電極とこの可動電極に対向する固定電極との間の距離が変わり、このため両電極間の容量が変わり、この容量変化を圧電片の発振周波数の変化として捉えている。圧電片の僅かな変形も発振周波数の変化として検出できるので、圧電片に加わる外力を高精度に測定することができ、しかも装置構成が簡素である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る外力検出装置を加速度検出装置として適用した第1の実施形態の要部を示す縦断側面図である。
【図2】第1の実施の形態に用いられる水晶振動子の上面を及び下面を示す平面図である。
【図3】加速度検出装置の回路構成を示すブロック図である。
【図4】前記加速度検出装置の等価回路を示す回路図である。
【図5】前記加速度検出装置を用いて取得した加速度と周波数差との関係を示す特性図である。
【図6】第1の実施形態の変形例を示す縦断側面図である。
【図7】第1の実施形態の変形例を示す縦断側面図である。
【図8】本発明に係る外力検出装置を加速度検出装置として適用した第2の実施形態を示す縦断側面図である。
【図9】図8におけるA−A線に沿った横断平面図である。
【図10】図8におけるB−B線に沿った横断平面図である。
【図11】第2の実施形態に用いられる水晶振動子の裏面側を示す平面図である。
【図12】第2の実施形態において、水晶片2が外力により撓む様子と各部の寸法とを示す縦断側面図である。
【図13】第2の実施形態に係る加速度検出装置の回路を示すブロック回路図である。
【図14】第2の実施形態に係る加速度検出装置の一部分の外観を示す外観図である。
【図15】本発明のその他の変形例を示す縦断側面図である。
【図16】本発明のその他の変形例を示す縦断側面図である。
【図17】本発明のその他の変形例を示す縦断側面図である。
【図18】図17に示す加速度検出装置に用いられる水晶片を示す斜視図である。
【図19】第3の実施形態に係る水晶振動子の構造及びブロック回路を示す構成図である。
【図20】第2の実施形態及び第3の実施形態の変形例を示すブロック図である。
【図21】本発明に用いる水晶片の支持構造の他の例を示す斜視図である。
【図22】本発明に用いる水晶片の支持構造の他の例を示す斜視図である。
【図23】第4の実施形態に係る要部を示す縦断側面図である。
【図24】第4の実施形態に用いられる水晶振動子を示す平面図である。
【図25】第4の実施形態に用いられる水晶振動子の他の例を示す側面図である。
【図26】第4の実施形態に用いられる水晶振動子を他の例を示す斜視図である。
【図27】第5の実施形態に用いられる水晶振動子を示す平面図である。
【図28】図27に示す水晶板を下側から見た状態を示す平面図である。
【図29】第5の実施形態に用いられる水晶振動子の他の例を示す平面図である。
【図30】第6の実施形態に係る要部を示す縦断側面図である。
【図31】図30におけるC−C線に沿った横断平面図である。
【図32】第6の実施形態の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
本発明を加速度検出装置に適用した第1の実施形態について説明する。図1は加速度検出装置のセンサー部分である外力検出センサーに相当する加速度センサーを示す図であり、図1中、1は直方体形状の密閉型の例えば水晶からなる容器であり、内部に不活性ガス例えば窒素ガスが封入されている。この容器は基台をなす下部分とこの下部分に周縁部にて接合される上部分とから構成されている。なお容器1としては必ずしも密閉型の容器に限定されるものではない。容器1内には、水晶からなる台座11が設けられ、この台座11の上面に導電性接着剤10により圧電片である水晶片2の一端側が固定されている。即ち水晶片2は台座11に片持ち支持されている。水晶片2は、例えばXカットの水晶を短冊状に形成したものであり、厚さが例えば数十μmオーダ、例えば0.03mmに設定されている。従って水晶片2に交差する方向に加速度を加えることにより、先端部が撓む。
【0018】
水晶片2は、図2(a)に示すように水晶片2の上面の中央部に一方の励振電極31が設けられ、また図2(b)に示すように水晶片2の下面における、前記励振電極31と対向する部位に他方の励振電極41が設けられて水晶振動子を構成している。上面側の励振電極31には、帯状の引き出し電極32が接続され、この引き出し電極32は、水晶片2の一端側で下面に折り返されて、導電性接着剤10と接触している。台座11の上面には金属層からなる導電路12が設けられ、この導電路12は、容器1を支持している絶縁基板13を介して、絶縁基板13上の発振回路14の一端に接続されている。
【0019】
下面側の励振電極41には、帯状の引き出し電極42が接続され、この引き出し電極22は、水晶片2の他端側(先端側)まで引き出され、可変容量形成用の可動電極5に接続されている。一方容器1側には、可変容量形成用の固定電極6が設けられている。容器1の底部にはコンベックス状の水晶からなる突起部7が設けられている。この突起部7は平面図で見ると四角形である。本発明は水晶片2の変形に基づいて起こる可動電極5と固定電極6との間の容量変化を介して外力を検出するものであることから、可動電極5は検出用電極と言うこともできる。
【0020】
固定電極6はこの突起部7において、可動電極5と概ね対向するように設けられている。水晶片2は過大に触れて先端が容器1の底部に衝突すると、「劈開」という現象により結晶の塊で欠けやすいという性質がある。このため水晶片2が過大に触れたときに可動電極5よりも水晶片2の基端側(一端側)の部位が突起部7に衝突するように突起部7の形状が決定されている。図1等では実際の装置とは少しイメージを変えて記載してあるが、実際に大きく容器1を振ると、水晶片2の先端よりも中央寄りの部位が突起部7に衝突する。
即ち、前記突起部7は水晶片2が過剰に撓んだときに当該水晶片2よりも一端側に寄った部が接触し、これにより水晶片2の当該部位の撓みを規制することで、水晶片2の先端部が容器1の内壁部に衝突することを避ける役割を持っている。
【0021】
固定電極6は、突起部7の表面及び絶縁基板13を介して配線された導電路15を介して発振回路14の他端に接続されている。図3は加速度センサーの配線の接続状態を示している。図3中、101は例えばパーソナルコンピュータからなるデータ処理部であり、このデータ処理部101は、周波数検出部100から得られた周波数情報例えば周波数に基づいて、水晶片2に加速度が加わらないときの周波数f0と加速度が加わったときの周波数f1との差を求め、この周波数差から算出した周波数の変化分と加速度とを対応付けたデータテーブルを参照して加速度を求める機能を有する。周波数情報としては、周波数差の変化分に限らず、周波数の差分そのものであってもよい。
【0022】
図4は等価回路を示している。図4中、L1は水晶振動子の質量に対応する直列インダクタンス、C1は直列容量、R1は直列抵抗、C0は電極間容量を含む実効並列容量である。上面側の励振電極31及び下面側の励振電極41は発振回路14に接続されるが、下面側の励振電極と発振回路14との間に、前記可動電極5及び固定電極6の間に形成される可変容量Cvが介在することになる。
【0023】
水晶片2の先端部には錘を設けて、加速度が加わったときに撓み量が大きくなるようにしてもよい。この場合、可動電極5の厚さを大きくして錘を兼用してもよいし、水晶片2の下面側に可動電極5とは別個に錘を設けてもよいし、あるいは水晶片2の上面側に錘を設けても良い。
ここで国際規格IEC 60122−1によれば、水晶発振回路の一般式は次の(1)式のように表される。
【0024】
FL=Fr×(1+x)
x=(C1/2)×1/(C0+CL) ……(1)
FLは、水晶振動子に負荷が加わったときの発振周波数であり、Frは水晶振動子そのものの共振周波数である。
本実施形態では、図3及び図4に示されるように、水晶片2の負荷容量は、CLにCvが加わったものである。従って(1)式におけるCLの代わりに(2)式で表されるyが代入される。
y=1/(1/Cv+1/CL) ……(2)
従って水晶片2の撓み量が状態1から状態2に変わり、これにより可変容量CvがCv1からCv2に変わったとすると、周波数の変化dFLは、(3)式で表される。
【0025】
dFL=FL1−FL2=A×CL2×(Cv2−Cv1)/(B×C)…(3)
ここで、
A=C1×Fr/2
B=C0×CL+(C0+CL)×Cv1
C=C0×CL+(C0+CL)×Cv2
である。
【0026】
また水晶片2に加速度が加わっていないときのいわば基準状態にあるときにおける可動電極5及び固定電極6の間の離間距離をd1とし、水晶片2に加速度が加わったときの前記離間距離をd2とすると、(4)式が成り立つ。
Cv1=S×ε/d1
Cv2=S×ε/d2 ……(4)
ただしSは可動電極5及び固定電極6の対向領域の面積、εは比誘電率である。
d1は既知であることから、dFLとd2とが対応関係にあることが分かる。
【0027】
このような実施形態のセンサー部分である加速度センサーは、加速度に応じた外力が加わらない状態においても水晶片2が若干撓んだ状態にある。なお水晶片2が撓んだ状態にあるか水平姿勢が保たれているかは、水晶片2の厚さなどに応じて決まってくる。
そしてこのような構成の加速度センサーを例えば横揺れ検出用の加速度センサーと縦揺れ検出用の加速度センサーとを用い、前者は水晶片2が垂直になるように設置され、後者は水晶片2が水平になるように設置される。
【0028】
そして地震が発生してあるいは模擬的な振動が加わると、水晶片2が図1の鎖線で示すようにあるいは図3に実線で示すように撓む。既述のように水晶片2に外力が加わらない基準の状態において可動電極5と固定電極6との間の容量をCv1とすると、水晶片2に外力が加わって当該水晶片2が撓むと両電極5、6間の距離が変わるので容量がCv1から変化する。このため発振回路14から出力される発振周波数が変化する。
【0029】
振動が加わらない状態において周波数情報検出部である周波数検出部100により検出した周波数をFL1、振動(加速度)が加わった場合の周波数をFL2とすると、周波数の差分FL1−FL2は(3)式で表される。本発明者は状態1から状態2に変わったときの周波数の変化率を周波数の差分FL1−FL2から算出し、周波数の変化率{(FL1−FL2)/FL1}と、加速度との関係を調べて、図5に示す関係を得ている。従って前記周波数の差分を測定することにより加速度が求まることが裏付けられている。なお、FL1の値はある温度を基準温度と決めて、その基準温度例えば25℃における周波数の値である。
【0030】
上述実施の形態によれば、水晶片2に加わる外力を、水晶片2の撓みによる可動電極5と固定電極6との間の容量変化に基づく発振周波数の変化として捉えている。従って水晶片2の僅かな変形も発振周波数の変化として検出できるので、水晶片2に加わる外力を高精度に測定することができ、しかも装置構成が簡素である。
【0031】
水晶片2の先端が容器1側に衝突するのを防止するためには、図6に示す構造であってもよい。この例では、水晶片2の可動電極5よりも基端部側に寄った位置に、平面的に見ると水晶片2と同じ幅の四角形をしているが、側面で見ると水晶片2に力が加わったときの撓み形状に対応するように上面曲面形状の突起部7が設けられている。また固定電極6は、突起部7とは分離された台座61に設けられている。
また本発明では、突起部6を設けた方が好ましいが、図7に示すように突起部7を設けない構成であってもよい。なお、図6、図7では励振電極などは省略している。
[第2の実施形態]
次に本発明を加速度センサーに適用した第2の実施形態について図8〜図14を参照しながら説明する。この第2の実施形態は、既述の水晶片2、励振電極31、41、可動電極5、固定電極6及び発振回路14の組を2組設けた点が第1の実施の形態と異なる。301は容器1の下側を構成する、基台をなす下部分であり、302は容器1の上側をなす蓋体をなす上部分である。水晶片2及び発振回路14について、一方の組の部品には符号「A」を添え、他方の組の部品には符号「B」を添えている。図8では、一方側の水晶片2が示されており、側面から見た図としては図1と同じである。図8の圧力センサーの内部を平面的に見ると、図9に示すように第1の水晶片2Aと第2の水晶片2Bとが横に平行に配置されている。
【0032】
これら水晶片2A、2Bは同一の構造であるため、一方の水晶片2Aについて説明すると、水晶片2Aの一面側(上面側)において一端側から幅の狭い引き出し電極32が他端側に向かって伸び、当該引き出し電極32の先端部に一方の励振電極31が角形形状に形成されている。そして水晶片2Aの他面側(下面側)には、図9及び図11に示すように一方の励振電極31に対向して他方の励振電極41が形成され、当該励振電極41における水晶片2の先端側に向かって幅の狭い引き出し電極42が伸びている。更にこの引き出し電極42の前記先端側には短冊状の可変容量形成用の可動電極5が形成されている。これら電極31等は、導電膜例えば金属膜により形成されている。
【0033】
容器1の底部には、図1と同様にコンベックス状の水晶からなる突起部7が設けられているが、突起部7の横幅は、2枚の水晶片2A、2Bの配置に対応した大きさに設定されている。即ち、突起部7は2枚の水晶片2A、2Bの投影領域を含む大きさに設定されている。そして図9及び図10に示すように突起部7に、水晶片2Aの可動電極5及び水晶片2Bの可動電極5ごとに短冊状の固定電極6が設けられている。なお、図8等では、構造の理解の容易さを優先しているため、水晶片2の撓み形状が正確に記載されていないが、後述の寸法により作成した場合には、水晶片2が過大に触れると、水晶片2の先端よりも中央寄りが突起部7に衝突する。
【0034】
水晶片2及びその周辺部位に関し、図12を参照しながら各部の寸法の一例について説明しておく。水晶片2の長さ寸法S及び幅寸法は、夫々18mm及び3mmである。水晶片2の厚さは、例えば数μmである。水晶片2の一端側における支持面を水平面に平行に設定したとすると、加速度が加わらず放置した状態では自重により撓んだ状態となり、その撓み量d1は例えば150μm程度であり、容器1の下部分における凹部空間の深さd0は、例えば175μmである。また突起部7の高さ寸法は例えば55〜60μm程度である。これらの寸法は一例に過ぎない。
【0035】
水晶片2の好ましい寸法の一例を示しておくと、長さ寸法が15mm〜25mm、幅寸法が1.5mm〜3.0mm、厚さが20μm〜25μmである。このような寸法が好ましい理由は、次の通りである。水晶片2の長さ寸法は大きいほど先端部の寸法変化が大きくなり、静電容量の変化が大きくなり、高感度になるが、あまり長さ寸法を大きくすると、撓みが大きくなって可変電極5と固定電極6とが接触するおそれが生じてくることにある。
【0036】
図13には、第2の実施形態の加速度検出装置の回路が示されている。また図14には、加速度検出装置の一部の外観が示されている。第1の実施の形態と異なる箇所は、第1の水晶片2A及び第2の水晶片2Bに夫々対応して第1の発振回路14A及び第2の発振回路14Bが接続されており、第1の水晶片2A及び第2の水晶片2Bごとに、発振回路14A(14B)、励振電極31、41、可動電極5及び固定電極6を含む発振ループが形成されている。これら発振回路14A、14Bからの出力は周波数情報検出部102に送られ、ここで各発振回路14A、14Bからの発振周波数の差分あるいは周波数の変化率の差が検出される。
【0037】
周波数の変化率とは次の意味である。発振回路14Aにおいて、水晶片2Aが自重で撓んでいる基準状態における周波数を基準周波数と呼ぶとすると、水晶片2Aが加速度により更に撓んで周波数が変化したとき、周波数の変化分/基準周波数で表わされる値であり、例えばppbの単位で表わされる。同様に水晶片2Bについても周波数の変化率が演算され、これら変化率の差分が周波数に対応する情報としてデータ処理部101に出力される。データ処理部101では、例えば変化率の差分と加速度との大きさとを対応付けたデータをメモリに記憶しておき、このデータと変化率の差分とに基づいて加速度が検出できる。
水晶片2A(2B)の撓み量(水晶片が一直線に伸びている状態と撓んでいるときとの先端部分の高さレベルの差分)と周波数の変化量との関係の一例を挙げておくと、例えば水晶片2の先端が10−5 μmオーダで変化すると、発振周波数が70MHzの場合、周波数の変化分は0.65ppbである。従って極めて小さな外力例えば加速度をも正確に検出できる。
【0038】
第2の実施形態によれば、水晶片2A及び水晶片2Bを同一の温度環境に配置しているため、水晶片2A及び水晶片2の各々の周波数が温度により変化したとしても、この変化分がキャンセルされ、結果として水晶片2A、2Bの撓みに基づく周波数の変化分だけを検出できるので、検出精度が高いという効果がある。
【0039】
[第1の実施の形態あるいは第2の実施の形態の変形例]
図15〜図18に本発明の変形例を記載しておく。
図15に示す加速度センサーは、水晶片2の励振電極31、41を水晶片2の先端側に形成し、下面側の励振電極41が可動電極5を兼用している。
図16に示す加速度センサーは、水晶片2を含む水晶振動子として第2の実施形態に用いた水晶片2A(2B)の上面と下面とを反対にした構造を採用している。この場合には可動電極5と固定電極6との間に水晶片2が介在するが、この構造においても同様の作用、効果が得られる。
【0040】
図17に示す加速度センサーは、第2の実施形態に用いられている水晶片2A(2B)において、下面側の可動電極5を上面側に回り込ませると共に、当該可動電極6に対向するように容器1の内部空間の内壁上面側に固定電極6を設けた構成としている。図18は図17に示す加速度センサーの水晶振動子を示している。この場合においても同様の作用、効果が得られる。
図15〜図18に記載した変形例は、後述の第3の実施の形態以降の構成に対する変形例として適用してもよいことは勿論である。
【0041】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態は、水晶振動子を2個用いるという点では第2の実施の形態と同じであるが、一方の水晶振動子については、可変容量を介さずに水晶片2の両面の励振電極31、41と発振回路との間で発振ループを形成するように構成している。即ち第2の実施の形態(図9参照)にて用いている水晶片2Bの下方側には、固定電極6を設けない構成にすると共に、水晶片2Bの他方の励振電極41から水晶片2Bの一端側(基端側)に引き出し電極を引き回し、この引き出し電極に第2の発振回路14Bを電気的に接続する構成とする。
【0042】
図19は、第3の実施形態におけるブロック回路と水晶片2Bを含む水晶振動子の構造とを示す構成図である。第2の水晶片2Bにおける下面側の引き出し電極は、支持部11まで引き回されて当該支持部11にて導電性接着剤を介して容器1内に配線された導電路と接続されているが、図19では煩雑化を避けるために省略している。
第2の実施の形態との比較で説明すると、可動電極5に相当する金属膜を残したまま当該金属膜を錘として使用してもよい。
【0043】
第3の実施の形態によれば、水晶片(検出用水晶片)2A及び水晶片(検出用水晶片)2Bが共通の容器1内に配置されているので、同一の温度環境に配置されていることになる。ここで水晶片2Aに加速度が加わることにより当該水晶片2Aが撓み、電極5、6間の容量(可変容量)が変化して水晶片2Aを含む水晶振動子の発振周波数(第1の発振回路14Aの発振周波数)の周波数がf1からf2に変化したとする。f1は基準温度における基準状態の周波数である。このときの周波数の変化率は(f2−f1)/f1であるが、この変化率の値には温度変化分も含まれている。
【0044】
一方、環境温度が基準温度からずれているとすると、参照用水晶片2Bを含む水晶振動子の発振周波数(第2の発振回路14Bの発振周波数)の周波数がf1´からf2´に変化する。f1、f1´は、基準温度(例えば25℃)における基準状態の周波数である。このときの周波数の変化率は(f2´−f1´)/f1´であるが、この変化率の値には温度変化分も含まれている。
従って両者の変化率の差分である、
{(f2−f1)/f1}−{(f2´−f1´)/f1´}の値は、環境温度の変化による水晶振動子の変化分がキャンセルされることになる。このためこの変化率の差分値と加速度との値との関係を予め求めておき、周波数周波数検出部102により変化率の差分値を求め、データ処理部101にて変化率の差分値から加速度の大きさを求めることにより加速度を高い精度で測定できることになる。
【0045】
[第2の実施形態及び第3の実施形態の変形例]
第1の水晶片2Aを含む水晶振動子及び第2の水晶片2Bを含む水晶振動子を用いる実施形態においては、図20に示すようにこれら水晶振動子に対して発振回路14を共通化し、一方の水晶振動子と他方の水晶振動子とをスイッチ部15により発振回路14に交互に接続して発振ループを形成するようにしてもよい。この場合には、第1の水晶片2Aに係る発振周波数と第2の水晶片2Bに係る発振周波数とが時分割で周波数検出部102に取り込まれる。スイッチ部15の切り替えのタイミングについては例えば100msごとに発振ループを切り替えるように設定することができる。切り替えたときの初期の時間は発振が安定しないため、安定した後の周波数を周波数検出部102にて検出するようにパラメータを設定する。
【0046】
また図21に示すように、例えば角型の水晶板20をエッチングして、枠部21と、枠部21の一辺から平行に伸び出す第1の水晶片2A及び第2の水晶片2Bとが一体化された構造体(水晶板20)を作成し、図22に示すように材質が水晶である容器の下部分301及び上部分302の間に前記水晶板20を挟みこんで3枚重ねの形態とし、これら3枚を貼り合わせた構造としてもよい。図21中、22は切り欠かれて形成された空間を示している。また可動電極5は下面側から上面側に回り込ませて錘の役割も持たせている。枠部21における配線構造としては、枠部21において引き出し電極32が配線される部分について電極32の膜厚相当分の深さの溝を形成し、この溝内に引き出し電極32を引き回す。そして溝の底部から枠部21及び容器の下部分301を貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔内を介して配線を外に引き回す構造とすることができる。
このようにいわばフレーム付きの水晶片2A、2Bを作成した場合、例えばこれら3枚を重ねるだけで特に加圧しなくても水晶同士が密着するが、加圧してもよい。この場合、例えば一方の水晶片2Aのみについて先端部の下方側に固定電極6を設け、電気的配線については図19に示すように構成することができる。
【0047】
以上の構成によれば、第1の実施の形態の構成に比べて次のような利点がある。図1の構成では、可動電極5と固定電極6との離間寸法が導電性接着剤10の量により異なってくるため、前記離間寸法の設定作業が難しいが、図22の構成によれば、水晶板20の厚さを調整することで水晶片2A、2Bの撓みの程度が決まり、これにより前記離間寸法が決まってくることから、上記の設定作業が容易である。
【0048】
[第4の実施形態]
第4の実施の形態は、水晶片2において励振電極31、41が設けられる部位と可動電極5が設けられる部位との結晶軸が異なるように構成し、水晶片2を双晶としたものである。このような構成の一例としては、励振電極31、41が設けられる部位をATカットの水晶片により構成し、可動電極5が設けられる部位をDTカットの水晶片により構成する例を挙げることができる。ATカットの水晶とDTカットの水晶とは、正負を無視した場合においてX軸の伸びる方向は同じであるが、X軸の正負が180度逆になっている。つまりX軸の正の方向が互に逆向きになっている。なお、DTカットの水晶とは、X軸の伸びる方向が性格にDTカットの場合と同じではなく、DTカットに近似した方向の場合も含む意味として、この用語を使用している。
【0049】
図23は、この実施形態におけるセンサー部分を示しており、水晶片2において励振電極31の先端側と可動電極5(水晶片2側の電極であって、固定電極6と対向している部位)における水晶片2の基端側との間にATカット部分とDTカット部分との境界部分がある。即ち当該境界部分よりも水晶片2の基端側が例えばATカットの水晶であり、当該境界分よりも水晶片2の先端側がDTカットの水晶である。図23では、両部分を区分けするために水晶片2のハッチングの向きを互いに異ならせている。
【0050】
図24は図23に示す水晶片2を含む水晶振動子を上から見た図であり、第1の水晶部分(例えばATカット部分)をS1、第2の水晶部分(例えばDTカット部分)をS2で夫々表示している。S1、S2は互に結晶軸が異なる。このように水晶片2に双晶を形成する理由は、励振電極31、41が設けられている水晶部分と検出用電極である可動電極5が設けられている水晶部分との間で弾性的な結合が起こる懸念を払拭するためである。そして前記弾性的な結合を避ける更なる有効な手法として、双方の水晶部分の間に弾性的な境界部位を設けることが挙げられ、その部位の構造としては凹部、孔部、段差の形成を挙げることができる。
【0051】
これらの構造のうち、水晶片2の強度を考慮した場合には、段差が適切な構造ということができる。このため図25及び図26に示すように、第1の水晶部分S1よりも第2の水晶部分S2における水晶片2の厚さを大きくすることが有効である。ところでATカットの水晶の周波数定数は1670kHz・mmであり、DTカットの水晶の周波数定数は2600kHz・mmである。従って両者の厚さが一定であれば、DTカットの水晶の共振周波数fTの方がATカットの水晶の共振周波数fSよりも大きい。このため第2の水晶部分S2の厚さを第1の水晶部分S1の厚さよりも大きくしていくと、第2の水晶部分S2の共振周波数が小さくなっていくので、両者の共振周波数が極めて近似する(fS≒fT)厚さが存在する。DTカットの水晶の周波数温度特性は一次式となるため、両者の周波数が近似すると弾性的な結合が懸念されるため、このような厚さの関係は避けた方が好ましい。
【0052】
水晶片2の先端部の厚さを大きくするという構造は、当該厚さの大きい部分が錘の役割を果たすために有利な構造ということができ、また水晶片2の途中に段差を設けることで既述の弾性的結合を避けるという点でも有効である。そして既述のように水晶片2を第1の水晶部分S1と第2の水晶部分S2とに分けるという構造も更なる有効な手法である。しかしこのような構造、例えば図25及び図26に示す構造を採用する場合には、第2の水晶部分S2の共振周波数よりも第1の水晶部分S1の共振周波数の方が大きくなる(fS>fT)ように厚さ寸法を設定することがより好ましい。
【0053】
ここで双晶(互に異なる結晶軸を有する水晶)を備えた水晶片2を製造する方法としては、例えばレーザ光をATカットの水晶片2に局所的に照射して530℃程度まで加熱し、局所的なアニールを施す手法を挙げることができる。より具体的には、水晶片2においてATカットからDTカットに変化させたい領域に所定のスポット径の例えば炭酸ガスレーザを走査する手法を挙げることができる。レーザ光が透過して加熱が不十分になる場合には、水晶片2の一面側に金属膜を形成し、他面側からレーザを照射して金属膜を介して水晶片2を加熱するようにしてもよい。また所定のスポット径のレーザ光を用いる代わりに、レーザ光の照射領域が広い装置を使用してもよく、この場合には例えばDTカットに変化させたい領域以外について例えば水晶片から少し浮かした状態でステンレスによるマスクを配置するようにしてもよい。
【0054】
水晶片2に既述のように第1の水晶部分S1と第2の水晶部分S2とを形成することの利点として、励振電極31、41が設けられている部位と可動電極5が設けられている部位とが同じ厚さであっても弾性的な結合が生じる懸念が小さいことが挙げられる。従って水晶片2に対して双晶を得るための熱処理工程は必要であるが、厚さを異ならせるといった機械加工作業を行わなくて済み、このため製造工程が簡略化する。一方、図25のように第2の水晶部分S2の厚さを第1の水晶部分S1の厚さよりも大きくすることも有効な手法であることから、使用する周波数、測定対象となる外力の大きさなどによりいずれの構成が有利化を判断して設計すればよい。いずれにしても第1の水晶部分S1及び第2の水晶部分S2を形成することは、単晶領域のみとする構造に比べて有利であり、設計の自由度が大きく、構造の選択も広いということができる。なお励振電極31、41が設けられている部位をDTカットの水晶とし、可動電極5が設けられている部位をATカットの水晶としてもよい。水晶片2において励振電極31、41が設けられる部位と可動電極5が設けられる部位との結晶軸が異なるように構成する例としては、X軸の伸びる方向が互に異なる、つまりX軸が交差する関係であってもよい。
【0055】
水晶片2に双晶を形成した第4の実施形態の構造は、他の実施の形態においても適用でき、例えば第2の実施の形態で用いた第1の水晶片2A及び第2の水晶片2Bに対しても適用できる。
【0056】
[第5の実施形態]
第5の実施の形態は、第2の実施形態及び第3の実施形態の変形例として図21に示した構造の更なる変形例ということができる。図27(上面図)及び図28(下面図)に示す構造体は、第5の実施形態に用いられる水晶片2を示している。この構造体において図21に示した水晶板20と異なる点は、第1の水晶片2A及び第2の水晶片2Bを共通化した構造、言い換えると1枚の水晶片2に、励振電極31A及び可動電極5Aを含む第1の組と、励振電極31B及び可動電極5Bを含む組とを設けた構造ということができる。図27では、可動電極5A、5Bは水晶片2の下面側に形成されているが、図の理解を容易にするために可動電極5A、5Bを上面側にも形成して錘としての役割を持たせた構造として示している。図27においては、水晶片2が1枚であることから、発振ループの組を区別するためにA、Bの符号を付け足している。
【0057】
一方の可動電極5Aの下方側には固定電極6が設けられるが、他方の可動電極5Bの下方側には固定電極6が設けられていない。他方の可動電極5Bを設けた理由は、水晶片2の幅方向中心に対して対称に可動電極5A、5Bを配置することにより、水晶片2の幅方向のバランスを良くして撓むときの姿勢の捩れ(波を打つ姿勢)が無いようにし、水晶片2の撓み量に対して静電容量の変化を安定化させるためである。従って他方の可動電極5Bは、バランス用のダミーの膜と言うことができるが、用語の混乱を避けるために「可動電極」という用語で統一している。
【0058】
また図27及び図28から分かるように、励振電極31Aに対向する励振電極41Aは可動電極5Aに引き出し電極42Aを介して接続されているが、励振電極31Bに対向する励振電極41Bは可動電極5Bに接続されていない。この場合の配線は、図19に示すように第1の組については、発振回路14A、励振電極31A、励振電極41A、可動電極5A、固定電極6、発振回路14Aの発振ループが形成されるが、第2の組については、発振回路14B、励振電極31B、励振電極41B、発振回路14Bの発振ループが形成されることになる。この場合においても第3の実施形態にて述べたと同様な効果が得られる。更にまた水晶片2の幅方向についてみると、第1の組の励振電極31Aと第2の組の励振電極31Bとが非対称に配置されている。即ち、両励振電極31A、31Bの位置が水晶片2の長さ方向に互いに変位している。このため第1の組の振動と第2の組の振動とが弾性的に結合することが確実に避けられる。
【0059】
[第6の実施形態]
図29は第6の実施形態に用いられる水晶板20の構造を示している。この例では、図27に示した水晶板20において、第2の組のダミー電極である可動電極5Bを無くし、第1の組の可動電極5Aを水晶片2の幅方向の中央部に位置させている。水晶片2の幅方向の中心線についてみると、可動電極5Aが左右(幅方向を左右方向としている)に等分されたレイアウトになるように配置されており、従って水晶片2の左右のバランスが良く、水晶片2が撓んだときに姿勢の捩れがなく、撓み量に対する可変容量の変化分が安定している。
【0060】
第5の実施形態及び第6の実施形態においても、第4の実施形態の構造を適用することができる。例えば励振電極31Aと可動電極5との間に、水晶片2の先端側に形成したDTカットの水晶部分(あるいはATカットの水晶部分)と水晶片2の基端側に形成したATカットの水晶部分(あるいはDTカットの水晶部分)との境界領域を位置させる構造とすることができる。
【0061】
第2の実施形態〜第6の実施形態において、水晶片2に形成した第1の組に相当する検出用の水晶振動子の発振周波数(水晶片2Aにおける励振電極31、41間の発振周波数あるいは励振電極31A、41A間の発振周波数)f1と、第2の組に相当する参照用の水晶振動子の発振周波数(水晶片2Bにおける励振電極31、41間の発振周波数あるいは励振電極31B、41B間の発振周波数)f2との周波数差については、f1を基準にした両周波数差の比率、すなわち(f2−f1)/f1の絶対値が100ppmよりも大きいことが好ましい。第1の組に係る水晶振動子と第2の組に係る水晶振動子を用いて温度変化に対応する周波数変化をキャンセルする手法においては、両者の周波数温度特性が近似しているほど、つまり両者の周波数差が小さいほど、効果が大きいが、周波数があまりにも接近していると両者が弾性結合し、周波数が本来の周波数から変化してしまう。一方両者の周波数差が大きいとディジタル回路の設計が難しくなることから、例えば周波数差の比率は3%以下であることが好ましい。
【0062】
[第7の実施形態]
この実施の形態は、水晶片2において、水晶振動子としての役割を持つ部位と外力により撓みを発生させる部位との間を、基台に相当する容器1の下部分に設けた支持部である支持部材により支持する例である。即ち、水晶片2におけるこの支持部による支持部位は、励振電極31、41が設けられている部位と可動電極5が設けられている部位との間である。そして外力が水晶片2に加わったときに水晶片2の撓みの程度が大きくなるように、つまり高い感度が得られるようにするために、前記支持部位から水晶片2の先端までの距離を大きく確保することが好ましい。
【0063】
このような例を図30及び図31に示す。この例では容器の底部に、角型の支持部8を設け、この支持部8の上面により、水晶片2の下面における励振電極41よりも例えば0.1mm〜数mmだけ水晶片2の先端側に寄った部位を支持している。支持部8の横幅は、水晶片2の幅寸法と同じかあるいはそれよりも大きいことが好ましいが、励振電極31、41が配置されている部位の撓みを十分に防止できる機能を発揮できる場合には、水晶片2の幅寸法より小さくてもよい。支持部8の高さ寸法は、例えば水晶片2が台座11の上面から水平に伸び出した状態において水晶片2の下面に接触する寸法に設定される。
【0064】
図30では、容器内の構造を誇張して記載しているため、実際の外力センサーの一例の構造とはイメージが少し異なる。支持部8の寸法の一例としては、高さが例えば0・5mm〜1mm、厚さは0.3mmであり、横幅は水晶片2の幅と同じ1.6mmである。この寸法は一例であって、容器1の構造や水晶片2の設置位置などに応じて決まってくる。
【0065】
支持部8と水晶片2の下面(固定電極6と対向する側の面)とは、例えば導電性接着剤あるいは低誘電ガラスなどの固着材料により互いに固定されている。なお支持部8と水晶片2の下面とは互いに固定されていない構造としてもよい。
【0066】
支持部8を設ける手法としては、例えば容器1の下部分301を製造するときにエッチングにより形成する手法を挙げることができるが、支持部8を下部分301とは別個に製造し、接着剤により接着するようにしてもよい。
【0067】
また支持部8を用いる構造は、2組の水晶振動子を設けてこれら水晶振動子の発振周波数の差分を求める例である第2の実施形態あるいは第3の実施形態などに適用してもよい。この場合各組の水晶片2A、2B(例えば図9を参照)ごとに、支持部8により図30、図31に示したように励振電極31、41と可変電極5との間の部位を支持する構造となる。支持部8としては、水晶片2A、2Bごとに独立して設けてもよいし、水晶片2Aの左縁から水晶片2Bの右縁に亘って延びる共通の支持部8により水晶片2A、2Bを支持してもよい。2組の水晶振動子を用いた例である図27の構造に対して支持部8を用いた構成を図32に示しておく。
【0068】
ここで図30に示す構造において、励振電極41を直接発振回路に接続したサンプルを作成し、水平な面に載置したときの発振周波数f0と、水平面から10度だけ水晶片2の先端側が低くなるように傾斜した面に載置したときの発振周波数f10とを複数回測定した。周波数の変化率である(f0−f10)/f0の値は、0.1ppb〜5ppbであった。
【0069】
これに対して前記サンプルにおいて支持部8を設けない場合のサンプルについて、同様の試験を行ったところ、周波数の変化率である(f0−f10)/f0の値は、8ppb〜45ppbであった。この結果から、水晶片2が外力により撓んだときに、発振周波数の変化分の中で、水晶片2の振動部位(励振電極31,41が設けられている部位)の撓みによる周波数の変化分の占める割合について、支持部8を設ける構造の方が小さいことが分かる。この結果は水晶片2における支持部8の先端側が撓んでも、振動部位は、支持部8の存在によりほとんど撓まないことに基づいた結果であるといえる。
振動部位の周波数の変化は再現性に欠けることから、上述のように支持部8を設ける構造とすることにより、より一層正確に水晶片2の撓みに対応する周波数変化を得ることができる。
【0070】
以上において本発明は、加速度を測定することに限らず、磁力の測定、被測定物の傾斜の度合いの測定、流体の流量の測定、風速の測定などにも適用することができる。
磁力を測定する場合の構成例について述べる。水晶片2における可動電極5と励振電極41との間の部位に磁性体の膜を形成し、磁場に当該磁性体が位置すると水晶片2が撓むように構成する。
また被測定物の傾斜の度合いの測定については、水晶片2あるいは2A、2Bを支持している基台を予め種々の角度に傾け、各傾斜角度ごとに周波数情報を得ておき、当該基台を被測定面に設置したときの周波数情報から傾斜角度を検出することができる。
更にまた気体や液体などの流体中に水晶片2を晒し、水晶片の撓み量に応じて周波数情報を介して流速を検出することができる。この場合、水晶片2の厚さは流速の測定範囲などにより決定される。更にまた本発明は重力を測定する場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0071】
1 容器
11 台座
12 導電路
14、14A、14B 発振回路
15 スイッチ部
2 水晶片
20 水晶板
21 空間
22 枠部
31、31A、31B 励振電極
41、41A、41B 励振電極
5、5A、5B 可動電極
6 固定電極
7 突起部
100 周波数検出部
101 データ処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電片例えば水晶片を用い、圧電片に作用する外力の大きさを発振周波数に基づいて検出することにより、加速度、圧力、流体の流速、磁力あるいは静電気力などといった外力を検出する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
系に作用する外力として、加速度に基づく物体に作用する力、圧力、流速、磁力、静電気力などがあるが、これらの外力を正確に測定することが必要な場合が多い。例えば自動車を開発する段階で自動車が物体に衝突したときに座席における衝撃力を測定することが行われている。また地震時の振動エネルギーや振幅を調べるためにできるだけ精密に揺れの加速度などを調べる要請がある。
【0003】
更にまた液体や気体の流速を正確に調べてその検出値を制御系に反映させる場合や、磁石の性能を測定する場合なども外力の測定例として挙げることができる。
このような測定を行うにあたって、できるだけ簡素な構造でありかつ高精度に測定することが要求されている。
【0004】
特許文献1には、圧電フィルムを片持ちで支持し、周囲の磁力の変化により圧電フィルムが変形し、圧電フィルムに流れる電流が変化することが記載されている。
また特許文献2には、容量結合型の圧力センサーと、この圧力センサーの配置領域に対して仕切られた空間に配置された水晶振動子とを設け、これら圧力センサーの可変容量と水晶振動子とを並列に接続し、圧力センサーにおける容量が変化することにより水晶振動子の反共振点が変わることで圧力を検出することが記載されている。
これら特許文献1、2は本発明とは原理が全く異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−138852(段落0021、段落0028)
【特許文献2】特開2008−39626(図1及び図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、圧電片に加わる外力を高精度にかつ容易に検出することができる外力検出装置及び外力検出センサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、圧電片に作用する外力を検出する外力検出装置であって、
一端側が基台に支持された片持ちの圧電片と、
この圧電片を振動させるために、当該圧電片の一面側及び他面側に夫々設けられた一方の励振電極及び他方の励振電極と、
一方の励振電極に電気的に接続された発振回路と、
前記圧電片において前記一端側から離れた部位に設けられ、前記他方の励振電極に電気的に接続された可変容量形成用の可動電極と、
前記圧電片とは離間して、前記可動電極に対向するように設けられると共に前記発振回路に接続され、圧電片の撓みにより前記可動電極との間の容量が変化してこれにより可変容量を形成する固定電極と、
前記発振回路の発振周波数に対応する周波数情報である信号を検出するための周波数情報検出部と、を備え、
前記発振回路から一方の励振電極、他方の励振電極、可動電極及び固定電極を経て発振回路に戻る発振ループが形成され、
前記周波数情報検出部にて検出された周波数情報は、圧電片に作用する力を評価するためのものであることを特徴とする。
【0008】
前記可変容量形成用の可動電極は、例えば前記圧電片の他端側に設けられる。前記可動電極は、圧電片の一面側及び他面側のいずれに設けてもよいし、両方に設けてもよい。
【0009】
本発明の具体的態様の例を列挙する。
圧電片、励振電極、可動電極及び固定電極からなる組として、第1の組及び第2の組を設け、
第1の組及び第2の組に夫々対応して発振回路を設け、
前記周波数情報検出部は、前記第1の組に対応する発振周波数及び前記第2の組に対応する発振周波数の差分に応じた信号を求める機能を有する構成を挙げることができる。この構成においては、第1の組及び第2の組に対して発振回路を共通化することもでき、この場合、第1の組の発振ループと第2の組の発振ループとが交互に形成されるように、発振回路とループとの間に切替えスイッチ部を設ければよい。
【0010】
また前記圧電片を検出用圧電片と呼ぶとすると、共通の容器内に検出用圧電片と参照用圧電片とを設け、
前記参照用圧電片の両面に一方の励振電極及び他方の励振電極を夫々設けると共に、この参照用圧電片を発振させるために一方の励振電極及び他方の励振電極を発振回路に接続し、
前記周波数情報検出部は、検出用圧電片に対応する発振周波数と参照用圧電片に対応する発振周波数との差分に応じた信号を求める構成を挙げることができる。この場合、検出用圧電片と参照用圧電片とは共通化されていてもよい。
【0011】
前記圧電片は水晶片であり、励振電極が設けられている部位の結晶軸と可動電極が設けられている部位の結晶軸とが互に異なる構成であってもよい。
結晶軸が互に異なるとは、例えばX軸の伸びる方向は同じであるが、X軸の正負が逆になる場合、例えばATカットの水晶とDTカットの水晶とが接合されている場合などを挙げることができる。またX軸の伸びる方向が互に異なっていてもよい。
【0012】
本発明は、前記圧電片に外力が加わったときに励振電極が設けられている部位が撓むのを防止するために、前記圧電片の下面側の部位であって、前記圧電片における励振電極と可動電極との間の部位を支持する支持部を前記基台に設けるようにしてもよい。
【0013】
また前記容器内における固定電極が設けられている側の内壁部に、前記圧電片が過剰に撓んだときに当該圧電片の他端よりも一端側に寄った部位を接触させて当該部位の撓みを規制し、これにより圧電片の他端が容器の内壁部に衝突することを避けるための突起部を備えた構成としてもよい。
【0014】
他の発明は、圧電片に作用する外力を圧電基板の発振周波数に基づいて検出するための外力検出センサーであって、
一端側が基台に支持された片持ちの圧電片と、
この圧電片を振動させるために、当該圧電片の一面側に設けられ、発振回路に電気的に接続される一方の励振電極と、
前記圧電片の他面側に設けられた他方の励振電極と、
前記圧電片において前記一端側から離れた部位に設けられ、前記他方の励振電極に電気的に接続された可変容量形成用の可動電極と、
前記圧電片とは離間して、前記可動電極に対向するように設けられると共に前記発振回路に接続され、圧電片の撓みにより前記可動電極との間の容量が変化してこれにより可変容量を形成する固定電極と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、圧電片に外力が加わって撓むとあるいは撓みの程度が変わると、圧電片側の可動電極とこの可動電極に対向する固定電極との間の距離が変わり、このため両電極間の容量が変わり、この容量変化を圧電片の発振周波数の変化として捉えている。圧電片の僅かな変形も発振周波数の変化として検出できるので、圧電片に加わる外力を高精度に測定することができ、しかも装置構成が簡素である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る外力検出装置を加速度検出装置として適用した第1の実施形態の要部を示す縦断側面図である。
【図2】第1の実施の形態に用いられる水晶振動子の上面を及び下面を示す平面図である。
【図3】加速度検出装置の回路構成を示すブロック図である。
【図4】前記加速度検出装置の等価回路を示す回路図である。
【図5】前記加速度検出装置を用いて取得した加速度と周波数差との関係を示す特性図である。
【図6】第1の実施形態の変形例を示す縦断側面図である。
【図7】第1の実施形態の変形例を示す縦断側面図である。
【図8】本発明に係る外力検出装置を加速度検出装置として適用した第2の実施形態を示す縦断側面図である。
【図9】図8におけるA−A線に沿った横断平面図である。
【図10】図8におけるB−B線に沿った横断平面図である。
【図11】第2の実施形態に用いられる水晶振動子の裏面側を示す平面図である。
【図12】第2の実施形態において、水晶片2が外力により撓む様子と各部の寸法とを示す縦断側面図である。
【図13】第2の実施形態に係る加速度検出装置の回路を示すブロック回路図である。
【図14】第2の実施形態に係る加速度検出装置の一部分の外観を示す外観図である。
【図15】本発明のその他の変形例を示す縦断側面図である。
【図16】本発明のその他の変形例を示す縦断側面図である。
【図17】本発明のその他の変形例を示す縦断側面図である。
【図18】図17に示す加速度検出装置に用いられる水晶片を示す斜視図である。
【図19】第3の実施形態に係る水晶振動子の構造及びブロック回路を示す構成図である。
【図20】第2の実施形態及び第3の実施形態の変形例を示すブロック図である。
【図21】本発明に用いる水晶片の支持構造の他の例を示す斜視図である。
【図22】本発明に用いる水晶片の支持構造の他の例を示す斜視図である。
【図23】第4の実施形態に係る要部を示す縦断側面図である。
【図24】第4の実施形態に用いられる水晶振動子を示す平面図である。
【図25】第4の実施形態に用いられる水晶振動子の他の例を示す側面図である。
【図26】第4の実施形態に用いられる水晶振動子を他の例を示す斜視図である。
【図27】第5の実施形態に用いられる水晶振動子を示す平面図である。
【図28】図27に示す水晶板を下側から見た状態を示す平面図である。
【図29】第5の実施形態に用いられる水晶振動子の他の例を示す平面図である。
【図30】第6の実施形態に係る要部を示す縦断側面図である。
【図31】図30におけるC−C線に沿った横断平面図である。
【図32】第6の実施形態の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
本発明を加速度検出装置に適用した第1の実施形態について説明する。図1は加速度検出装置のセンサー部分である外力検出センサーに相当する加速度センサーを示す図であり、図1中、1は直方体形状の密閉型の例えば水晶からなる容器であり、内部に不活性ガス例えば窒素ガスが封入されている。この容器は基台をなす下部分とこの下部分に周縁部にて接合される上部分とから構成されている。なお容器1としては必ずしも密閉型の容器に限定されるものではない。容器1内には、水晶からなる台座11が設けられ、この台座11の上面に導電性接着剤10により圧電片である水晶片2の一端側が固定されている。即ち水晶片2は台座11に片持ち支持されている。水晶片2は、例えばXカットの水晶を短冊状に形成したものであり、厚さが例えば数十μmオーダ、例えば0.03mmに設定されている。従って水晶片2に交差する方向に加速度を加えることにより、先端部が撓む。
【0018】
水晶片2は、図2(a)に示すように水晶片2の上面の中央部に一方の励振電極31が設けられ、また図2(b)に示すように水晶片2の下面における、前記励振電極31と対向する部位に他方の励振電極41が設けられて水晶振動子を構成している。上面側の励振電極31には、帯状の引き出し電極32が接続され、この引き出し電極32は、水晶片2の一端側で下面に折り返されて、導電性接着剤10と接触している。台座11の上面には金属層からなる導電路12が設けられ、この導電路12は、容器1を支持している絶縁基板13を介して、絶縁基板13上の発振回路14の一端に接続されている。
【0019】
下面側の励振電極41には、帯状の引き出し電極42が接続され、この引き出し電極22は、水晶片2の他端側(先端側)まで引き出され、可変容量形成用の可動電極5に接続されている。一方容器1側には、可変容量形成用の固定電極6が設けられている。容器1の底部にはコンベックス状の水晶からなる突起部7が設けられている。この突起部7は平面図で見ると四角形である。本発明は水晶片2の変形に基づいて起こる可動電極5と固定電極6との間の容量変化を介して外力を検出するものであることから、可動電極5は検出用電極と言うこともできる。
【0020】
固定電極6はこの突起部7において、可動電極5と概ね対向するように設けられている。水晶片2は過大に触れて先端が容器1の底部に衝突すると、「劈開」という現象により結晶の塊で欠けやすいという性質がある。このため水晶片2が過大に触れたときに可動電極5よりも水晶片2の基端側(一端側)の部位が突起部7に衝突するように突起部7の形状が決定されている。図1等では実際の装置とは少しイメージを変えて記載してあるが、実際に大きく容器1を振ると、水晶片2の先端よりも中央寄りの部位が突起部7に衝突する。
即ち、前記突起部7は水晶片2が過剰に撓んだときに当該水晶片2よりも一端側に寄った部が接触し、これにより水晶片2の当該部位の撓みを規制することで、水晶片2の先端部が容器1の内壁部に衝突することを避ける役割を持っている。
【0021】
固定電極6は、突起部7の表面及び絶縁基板13を介して配線された導電路15を介して発振回路14の他端に接続されている。図3は加速度センサーの配線の接続状態を示している。図3中、101は例えばパーソナルコンピュータからなるデータ処理部であり、このデータ処理部101は、周波数検出部100から得られた周波数情報例えば周波数に基づいて、水晶片2に加速度が加わらないときの周波数f0と加速度が加わったときの周波数f1との差を求め、この周波数差から算出した周波数の変化分と加速度とを対応付けたデータテーブルを参照して加速度を求める機能を有する。周波数情報としては、周波数差の変化分に限らず、周波数の差分そのものであってもよい。
【0022】
図4は等価回路を示している。図4中、L1は水晶振動子の質量に対応する直列インダクタンス、C1は直列容量、R1は直列抵抗、C0は電極間容量を含む実効並列容量である。上面側の励振電極31及び下面側の励振電極41は発振回路14に接続されるが、下面側の励振電極と発振回路14との間に、前記可動電極5及び固定電極6の間に形成される可変容量Cvが介在することになる。
【0023】
水晶片2の先端部には錘を設けて、加速度が加わったときに撓み量が大きくなるようにしてもよい。この場合、可動電極5の厚さを大きくして錘を兼用してもよいし、水晶片2の下面側に可動電極5とは別個に錘を設けてもよいし、あるいは水晶片2の上面側に錘を設けても良い。
ここで国際規格IEC 60122−1によれば、水晶発振回路の一般式は次の(1)式のように表される。
【0024】
FL=Fr×(1+x)
x=(C1/2)×1/(C0+CL) ……(1)
FLは、水晶振動子に負荷が加わったときの発振周波数であり、Frは水晶振動子そのものの共振周波数である。
本実施形態では、図3及び図4に示されるように、水晶片2の負荷容量は、CLにCvが加わったものである。従って(1)式におけるCLの代わりに(2)式で表されるyが代入される。
y=1/(1/Cv+1/CL) ……(2)
従って水晶片2の撓み量が状態1から状態2に変わり、これにより可変容量CvがCv1からCv2に変わったとすると、周波数の変化dFLは、(3)式で表される。
【0025】
dFL=FL1−FL2=A×CL2×(Cv2−Cv1)/(B×C)…(3)
ここで、
A=C1×Fr/2
B=C0×CL+(C0+CL)×Cv1
C=C0×CL+(C0+CL)×Cv2
である。
【0026】
また水晶片2に加速度が加わっていないときのいわば基準状態にあるときにおける可動電極5及び固定電極6の間の離間距離をd1とし、水晶片2に加速度が加わったときの前記離間距離をd2とすると、(4)式が成り立つ。
Cv1=S×ε/d1
Cv2=S×ε/d2 ……(4)
ただしSは可動電極5及び固定電極6の対向領域の面積、εは比誘電率である。
d1は既知であることから、dFLとd2とが対応関係にあることが分かる。
【0027】
このような実施形態のセンサー部分である加速度センサーは、加速度に応じた外力が加わらない状態においても水晶片2が若干撓んだ状態にある。なお水晶片2が撓んだ状態にあるか水平姿勢が保たれているかは、水晶片2の厚さなどに応じて決まってくる。
そしてこのような構成の加速度センサーを例えば横揺れ検出用の加速度センサーと縦揺れ検出用の加速度センサーとを用い、前者は水晶片2が垂直になるように設置され、後者は水晶片2が水平になるように設置される。
【0028】
そして地震が発生してあるいは模擬的な振動が加わると、水晶片2が図1の鎖線で示すようにあるいは図3に実線で示すように撓む。既述のように水晶片2に外力が加わらない基準の状態において可動電極5と固定電極6との間の容量をCv1とすると、水晶片2に外力が加わって当該水晶片2が撓むと両電極5、6間の距離が変わるので容量がCv1から変化する。このため発振回路14から出力される発振周波数が変化する。
【0029】
振動が加わらない状態において周波数情報検出部である周波数検出部100により検出した周波数をFL1、振動(加速度)が加わった場合の周波数をFL2とすると、周波数の差分FL1−FL2は(3)式で表される。本発明者は状態1から状態2に変わったときの周波数の変化率を周波数の差分FL1−FL2から算出し、周波数の変化率{(FL1−FL2)/FL1}と、加速度との関係を調べて、図5に示す関係を得ている。従って前記周波数の差分を測定することにより加速度が求まることが裏付けられている。なお、FL1の値はある温度を基準温度と決めて、その基準温度例えば25℃における周波数の値である。
【0030】
上述実施の形態によれば、水晶片2に加わる外力を、水晶片2の撓みによる可動電極5と固定電極6との間の容量変化に基づく発振周波数の変化として捉えている。従って水晶片2の僅かな変形も発振周波数の変化として検出できるので、水晶片2に加わる外力を高精度に測定することができ、しかも装置構成が簡素である。
【0031】
水晶片2の先端が容器1側に衝突するのを防止するためには、図6に示す構造であってもよい。この例では、水晶片2の可動電極5よりも基端部側に寄った位置に、平面的に見ると水晶片2と同じ幅の四角形をしているが、側面で見ると水晶片2に力が加わったときの撓み形状に対応するように上面曲面形状の突起部7が設けられている。また固定電極6は、突起部7とは分離された台座61に設けられている。
また本発明では、突起部6を設けた方が好ましいが、図7に示すように突起部7を設けない構成であってもよい。なお、図6、図7では励振電極などは省略している。
[第2の実施形態]
次に本発明を加速度センサーに適用した第2の実施形態について図8〜図14を参照しながら説明する。この第2の実施形態は、既述の水晶片2、励振電極31、41、可動電極5、固定電極6及び発振回路14の組を2組設けた点が第1の実施の形態と異なる。301は容器1の下側を構成する、基台をなす下部分であり、302は容器1の上側をなす蓋体をなす上部分である。水晶片2及び発振回路14について、一方の組の部品には符号「A」を添え、他方の組の部品には符号「B」を添えている。図8では、一方側の水晶片2が示されており、側面から見た図としては図1と同じである。図8の圧力センサーの内部を平面的に見ると、図9に示すように第1の水晶片2Aと第2の水晶片2Bとが横に平行に配置されている。
【0032】
これら水晶片2A、2Bは同一の構造であるため、一方の水晶片2Aについて説明すると、水晶片2Aの一面側(上面側)において一端側から幅の狭い引き出し電極32が他端側に向かって伸び、当該引き出し電極32の先端部に一方の励振電極31が角形形状に形成されている。そして水晶片2Aの他面側(下面側)には、図9及び図11に示すように一方の励振電極31に対向して他方の励振電極41が形成され、当該励振電極41における水晶片2の先端側に向かって幅の狭い引き出し電極42が伸びている。更にこの引き出し電極42の前記先端側には短冊状の可変容量形成用の可動電極5が形成されている。これら電極31等は、導電膜例えば金属膜により形成されている。
【0033】
容器1の底部には、図1と同様にコンベックス状の水晶からなる突起部7が設けられているが、突起部7の横幅は、2枚の水晶片2A、2Bの配置に対応した大きさに設定されている。即ち、突起部7は2枚の水晶片2A、2Bの投影領域を含む大きさに設定されている。そして図9及び図10に示すように突起部7に、水晶片2Aの可動電極5及び水晶片2Bの可動電極5ごとに短冊状の固定電極6が設けられている。なお、図8等では、構造の理解の容易さを優先しているため、水晶片2の撓み形状が正確に記載されていないが、後述の寸法により作成した場合には、水晶片2が過大に触れると、水晶片2の先端よりも中央寄りが突起部7に衝突する。
【0034】
水晶片2及びその周辺部位に関し、図12を参照しながら各部の寸法の一例について説明しておく。水晶片2の長さ寸法S及び幅寸法は、夫々18mm及び3mmである。水晶片2の厚さは、例えば数μmである。水晶片2の一端側における支持面を水平面に平行に設定したとすると、加速度が加わらず放置した状態では自重により撓んだ状態となり、その撓み量d1は例えば150μm程度であり、容器1の下部分における凹部空間の深さd0は、例えば175μmである。また突起部7の高さ寸法は例えば55〜60μm程度である。これらの寸法は一例に過ぎない。
【0035】
水晶片2の好ましい寸法の一例を示しておくと、長さ寸法が15mm〜25mm、幅寸法が1.5mm〜3.0mm、厚さが20μm〜25μmである。このような寸法が好ましい理由は、次の通りである。水晶片2の長さ寸法は大きいほど先端部の寸法変化が大きくなり、静電容量の変化が大きくなり、高感度になるが、あまり長さ寸法を大きくすると、撓みが大きくなって可変電極5と固定電極6とが接触するおそれが生じてくることにある。
【0036】
図13には、第2の実施形態の加速度検出装置の回路が示されている。また図14には、加速度検出装置の一部の外観が示されている。第1の実施の形態と異なる箇所は、第1の水晶片2A及び第2の水晶片2Bに夫々対応して第1の発振回路14A及び第2の発振回路14Bが接続されており、第1の水晶片2A及び第2の水晶片2Bごとに、発振回路14A(14B)、励振電極31、41、可動電極5及び固定電極6を含む発振ループが形成されている。これら発振回路14A、14Bからの出力は周波数情報検出部102に送られ、ここで各発振回路14A、14Bからの発振周波数の差分あるいは周波数の変化率の差が検出される。
【0037】
周波数の変化率とは次の意味である。発振回路14Aにおいて、水晶片2Aが自重で撓んでいる基準状態における周波数を基準周波数と呼ぶとすると、水晶片2Aが加速度により更に撓んで周波数が変化したとき、周波数の変化分/基準周波数で表わされる値であり、例えばppbの単位で表わされる。同様に水晶片2Bについても周波数の変化率が演算され、これら変化率の差分が周波数に対応する情報としてデータ処理部101に出力される。データ処理部101では、例えば変化率の差分と加速度との大きさとを対応付けたデータをメモリに記憶しておき、このデータと変化率の差分とに基づいて加速度が検出できる。
水晶片2A(2B)の撓み量(水晶片が一直線に伸びている状態と撓んでいるときとの先端部分の高さレベルの差分)と周波数の変化量との関係の一例を挙げておくと、例えば水晶片2の先端が10−5 μmオーダで変化すると、発振周波数が70MHzの場合、周波数の変化分は0.65ppbである。従って極めて小さな外力例えば加速度をも正確に検出できる。
【0038】
第2の実施形態によれば、水晶片2A及び水晶片2Bを同一の温度環境に配置しているため、水晶片2A及び水晶片2の各々の周波数が温度により変化したとしても、この変化分がキャンセルされ、結果として水晶片2A、2Bの撓みに基づく周波数の変化分だけを検出できるので、検出精度が高いという効果がある。
【0039】
[第1の実施の形態あるいは第2の実施の形態の変形例]
図15〜図18に本発明の変形例を記載しておく。
図15に示す加速度センサーは、水晶片2の励振電極31、41を水晶片2の先端側に形成し、下面側の励振電極41が可動電極5を兼用している。
図16に示す加速度センサーは、水晶片2を含む水晶振動子として第2の実施形態に用いた水晶片2A(2B)の上面と下面とを反対にした構造を採用している。この場合には可動電極5と固定電極6との間に水晶片2が介在するが、この構造においても同様の作用、効果が得られる。
【0040】
図17に示す加速度センサーは、第2の実施形態に用いられている水晶片2A(2B)において、下面側の可動電極5を上面側に回り込ませると共に、当該可動電極6に対向するように容器1の内部空間の内壁上面側に固定電極6を設けた構成としている。図18は図17に示す加速度センサーの水晶振動子を示している。この場合においても同様の作用、効果が得られる。
図15〜図18に記載した変形例は、後述の第3の実施の形態以降の構成に対する変形例として適用してもよいことは勿論である。
【0041】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態は、水晶振動子を2個用いるという点では第2の実施の形態と同じであるが、一方の水晶振動子については、可変容量を介さずに水晶片2の両面の励振電極31、41と発振回路との間で発振ループを形成するように構成している。即ち第2の実施の形態(図9参照)にて用いている水晶片2Bの下方側には、固定電極6を設けない構成にすると共に、水晶片2Bの他方の励振電極41から水晶片2Bの一端側(基端側)に引き出し電極を引き回し、この引き出し電極に第2の発振回路14Bを電気的に接続する構成とする。
【0042】
図19は、第3の実施形態におけるブロック回路と水晶片2Bを含む水晶振動子の構造とを示す構成図である。第2の水晶片2Bにおける下面側の引き出し電極は、支持部11まで引き回されて当該支持部11にて導電性接着剤を介して容器1内に配線された導電路と接続されているが、図19では煩雑化を避けるために省略している。
第2の実施の形態との比較で説明すると、可動電極5に相当する金属膜を残したまま当該金属膜を錘として使用してもよい。
【0043】
第3の実施の形態によれば、水晶片(検出用水晶片)2A及び水晶片(検出用水晶片)2Bが共通の容器1内に配置されているので、同一の温度環境に配置されていることになる。ここで水晶片2Aに加速度が加わることにより当該水晶片2Aが撓み、電極5、6間の容量(可変容量)が変化して水晶片2Aを含む水晶振動子の発振周波数(第1の発振回路14Aの発振周波数)の周波数がf1からf2に変化したとする。f1は基準温度における基準状態の周波数である。このときの周波数の変化率は(f2−f1)/f1であるが、この変化率の値には温度変化分も含まれている。
【0044】
一方、環境温度が基準温度からずれているとすると、参照用水晶片2Bを含む水晶振動子の発振周波数(第2の発振回路14Bの発振周波数)の周波数がf1´からf2´に変化する。f1、f1´は、基準温度(例えば25℃)における基準状態の周波数である。このときの周波数の変化率は(f2´−f1´)/f1´であるが、この変化率の値には温度変化分も含まれている。
従って両者の変化率の差分である、
{(f2−f1)/f1}−{(f2´−f1´)/f1´}の値は、環境温度の変化による水晶振動子の変化分がキャンセルされることになる。このためこの変化率の差分値と加速度との値との関係を予め求めておき、周波数周波数検出部102により変化率の差分値を求め、データ処理部101にて変化率の差分値から加速度の大きさを求めることにより加速度を高い精度で測定できることになる。
【0045】
[第2の実施形態及び第3の実施形態の変形例]
第1の水晶片2Aを含む水晶振動子及び第2の水晶片2Bを含む水晶振動子を用いる実施形態においては、図20に示すようにこれら水晶振動子に対して発振回路14を共通化し、一方の水晶振動子と他方の水晶振動子とをスイッチ部15により発振回路14に交互に接続して発振ループを形成するようにしてもよい。この場合には、第1の水晶片2Aに係る発振周波数と第2の水晶片2Bに係る発振周波数とが時分割で周波数検出部102に取り込まれる。スイッチ部15の切り替えのタイミングについては例えば100msごとに発振ループを切り替えるように設定することができる。切り替えたときの初期の時間は発振が安定しないため、安定した後の周波数を周波数検出部102にて検出するようにパラメータを設定する。
【0046】
また図21に示すように、例えば角型の水晶板20をエッチングして、枠部21と、枠部21の一辺から平行に伸び出す第1の水晶片2A及び第2の水晶片2Bとが一体化された構造体(水晶板20)を作成し、図22に示すように材質が水晶である容器の下部分301及び上部分302の間に前記水晶板20を挟みこんで3枚重ねの形態とし、これら3枚を貼り合わせた構造としてもよい。図21中、22は切り欠かれて形成された空間を示している。また可動電極5は下面側から上面側に回り込ませて錘の役割も持たせている。枠部21における配線構造としては、枠部21において引き出し電極32が配線される部分について電極32の膜厚相当分の深さの溝を形成し、この溝内に引き出し電極32を引き回す。そして溝の底部から枠部21及び容器の下部分301を貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔内を介して配線を外に引き回す構造とすることができる。
このようにいわばフレーム付きの水晶片2A、2Bを作成した場合、例えばこれら3枚を重ねるだけで特に加圧しなくても水晶同士が密着するが、加圧してもよい。この場合、例えば一方の水晶片2Aのみについて先端部の下方側に固定電極6を設け、電気的配線については図19に示すように構成することができる。
【0047】
以上の構成によれば、第1の実施の形態の構成に比べて次のような利点がある。図1の構成では、可動電極5と固定電極6との離間寸法が導電性接着剤10の量により異なってくるため、前記離間寸法の設定作業が難しいが、図22の構成によれば、水晶板20の厚さを調整することで水晶片2A、2Bの撓みの程度が決まり、これにより前記離間寸法が決まってくることから、上記の設定作業が容易である。
【0048】
[第4の実施形態]
第4の実施の形態は、水晶片2において励振電極31、41が設けられる部位と可動電極5が設けられる部位との結晶軸が異なるように構成し、水晶片2を双晶としたものである。このような構成の一例としては、励振電極31、41が設けられる部位をATカットの水晶片により構成し、可動電極5が設けられる部位をDTカットの水晶片により構成する例を挙げることができる。ATカットの水晶とDTカットの水晶とは、正負を無視した場合においてX軸の伸びる方向は同じであるが、X軸の正負が180度逆になっている。つまりX軸の正の方向が互に逆向きになっている。なお、DTカットの水晶とは、X軸の伸びる方向が性格にDTカットの場合と同じではなく、DTカットに近似した方向の場合も含む意味として、この用語を使用している。
【0049】
図23は、この実施形態におけるセンサー部分を示しており、水晶片2において励振電極31の先端側と可動電極5(水晶片2側の電極であって、固定電極6と対向している部位)における水晶片2の基端側との間にATカット部分とDTカット部分との境界部分がある。即ち当該境界部分よりも水晶片2の基端側が例えばATカットの水晶であり、当該境界分よりも水晶片2の先端側がDTカットの水晶である。図23では、両部分を区分けするために水晶片2のハッチングの向きを互いに異ならせている。
【0050】
図24は図23に示す水晶片2を含む水晶振動子を上から見た図であり、第1の水晶部分(例えばATカット部分)をS1、第2の水晶部分(例えばDTカット部分)をS2で夫々表示している。S1、S2は互に結晶軸が異なる。このように水晶片2に双晶を形成する理由は、励振電極31、41が設けられている水晶部分と検出用電極である可動電極5が設けられている水晶部分との間で弾性的な結合が起こる懸念を払拭するためである。そして前記弾性的な結合を避ける更なる有効な手法として、双方の水晶部分の間に弾性的な境界部位を設けることが挙げられ、その部位の構造としては凹部、孔部、段差の形成を挙げることができる。
【0051】
これらの構造のうち、水晶片2の強度を考慮した場合には、段差が適切な構造ということができる。このため図25及び図26に示すように、第1の水晶部分S1よりも第2の水晶部分S2における水晶片2の厚さを大きくすることが有効である。ところでATカットの水晶の周波数定数は1670kHz・mmであり、DTカットの水晶の周波数定数は2600kHz・mmである。従って両者の厚さが一定であれば、DTカットの水晶の共振周波数fTの方がATカットの水晶の共振周波数fSよりも大きい。このため第2の水晶部分S2の厚さを第1の水晶部分S1の厚さよりも大きくしていくと、第2の水晶部分S2の共振周波数が小さくなっていくので、両者の共振周波数が極めて近似する(fS≒fT)厚さが存在する。DTカットの水晶の周波数温度特性は一次式となるため、両者の周波数が近似すると弾性的な結合が懸念されるため、このような厚さの関係は避けた方が好ましい。
【0052】
水晶片2の先端部の厚さを大きくするという構造は、当該厚さの大きい部分が錘の役割を果たすために有利な構造ということができ、また水晶片2の途中に段差を設けることで既述の弾性的結合を避けるという点でも有効である。そして既述のように水晶片2を第1の水晶部分S1と第2の水晶部分S2とに分けるという構造も更なる有効な手法である。しかしこのような構造、例えば図25及び図26に示す構造を採用する場合には、第2の水晶部分S2の共振周波数よりも第1の水晶部分S1の共振周波数の方が大きくなる(fS>fT)ように厚さ寸法を設定することがより好ましい。
【0053】
ここで双晶(互に異なる結晶軸を有する水晶)を備えた水晶片2を製造する方法としては、例えばレーザ光をATカットの水晶片2に局所的に照射して530℃程度まで加熱し、局所的なアニールを施す手法を挙げることができる。より具体的には、水晶片2においてATカットからDTカットに変化させたい領域に所定のスポット径の例えば炭酸ガスレーザを走査する手法を挙げることができる。レーザ光が透過して加熱が不十分になる場合には、水晶片2の一面側に金属膜を形成し、他面側からレーザを照射して金属膜を介して水晶片2を加熱するようにしてもよい。また所定のスポット径のレーザ光を用いる代わりに、レーザ光の照射領域が広い装置を使用してもよく、この場合には例えばDTカットに変化させたい領域以外について例えば水晶片から少し浮かした状態でステンレスによるマスクを配置するようにしてもよい。
【0054】
水晶片2に既述のように第1の水晶部分S1と第2の水晶部分S2とを形成することの利点として、励振電極31、41が設けられている部位と可動電極5が設けられている部位とが同じ厚さであっても弾性的な結合が生じる懸念が小さいことが挙げられる。従って水晶片2に対して双晶を得るための熱処理工程は必要であるが、厚さを異ならせるといった機械加工作業を行わなくて済み、このため製造工程が簡略化する。一方、図25のように第2の水晶部分S2の厚さを第1の水晶部分S1の厚さよりも大きくすることも有効な手法であることから、使用する周波数、測定対象となる外力の大きさなどによりいずれの構成が有利化を判断して設計すればよい。いずれにしても第1の水晶部分S1及び第2の水晶部分S2を形成することは、単晶領域のみとする構造に比べて有利であり、設計の自由度が大きく、構造の選択も広いということができる。なお励振電極31、41が設けられている部位をDTカットの水晶とし、可動電極5が設けられている部位をATカットの水晶としてもよい。水晶片2において励振電極31、41が設けられる部位と可動電極5が設けられる部位との結晶軸が異なるように構成する例としては、X軸の伸びる方向が互に異なる、つまりX軸が交差する関係であってもよい。
【0055】
水晶片2に双晶を形成した第4の実施形態の構造は、他の実施の形態においても適用でき、例えば第2の実施の形態で用いた第1の水晶片2A及び第2の水晶片2Bに対しても適用できる。
【0056】
[第5の実施形態]
第5の実施の形態は、第2の実施形態及び第3の実施形態の変形例として図21に示した構造の更なる変形例ということができる。図27(上面図)及び図28(下面図)に示す構造体は、第5の実施形態に用いられる水晶片2を示している。この構造体において図21に示した水晶板20と異なる点は、第1の水晶片2A及び第2の水晶片2Bを共通化した構造、言い換えると1枚の水晶片2に、励振電極31A及び可動電極5Aを含む第1の組と、励振電極31B及び可動電極5Bを含む組とを設けた構造ということができる。図27では、可動電極5A、5Bは水晶片2の下面側に形成されているが、図の理解を容易にするために可動電極5A、5Bを上面側にも形成して錘としての役割を持たせた構造として示している。図27においては、水晶片2が1枚であることから、発振ループの組を区別するためにA、Bの符号を付け足している。
【0057】
一方の可動電極5Aの下方側には固定電極6が設けられるが、他方の可動電極5Bの下方側には固定電極6が設けられていない。他方の可動電極5Bを設けた理由は、水晶片2の幅方向中心に対して対称に可動電極5A、5Bを配置することにより、水晶片2の幅方向のバランスを良くして撓むときの姿勢の捩れ(波を打つ姿勢)が無いようにし、水晶片2の撓み量に対して静電容量の変化を安定化させるためである。従って他方の可動電極5Bは、バランス用のダミーの膜と言うことができるが、用語の混乱を避けるために「可動電極」という用語で統一している。
【0058】
また図27及び図28から分かるように、励振電極31Aに対向する励振電極41Aは可動電極5Aに引き出し電極42Aを介して接続されているが、励振電極31Bに対向する励振電極41Bは可動電極5Bに接続されていない。この場合の配線は、図19に示すように第1の組については、発振回路14A、励振電極31A、励振電極41A、可動電極5A、固定電極6、発振回路14Aの発振ループが形成されるが、第2の組については、発振回路14B、励振電極31B、励振電極41B、発振回路14Bの発振ループが形成されることになる。この場合においても第3の実施形態にて述べたと同様な効果が得られる。更にまた水晶片2の幅方向についてみると、第1の組の励振電極31Aと第2の組の励振電極31Bとが非対称に配置されている。即ち、両励振電極31A、31Bの位置が水晶片2の長さ方向に互いに変位している。このため第1の組の振動と第2の組の振動とが弾性的に結合することが確実に避けられる。
【0059】
[第6の実施形態]
図29は第6の実施形態に用いられる水晶板20の構造を示している。この例では、図27に示した水晶板20において、第2の組のダミー電極である可動電極5Bを無くし、第1の組の可動電極5Aを水晶片2の幅方向の中央部に位置させている。水晶片2の幅方向の中心線についてみると、可動電極5Aが左右(幅方向を左右方向としている)に等分されたレイアウトになるように配置されており、従って水晶片2の左右のバランスが良く、水晶片2が撓んだときに姿勢の捩れがなく、撓み量に対する可変容量の変化分が安定している。
【0060】
第5の実施形態及び第6の実施形態においても、第4の実施形態の構造を適用することができる。例えば励振電極31Aと可動電極5との間に、水晶片2の先端側に形成したDTカットの水晶部分(あるいはATカットの水晶部分)と水晶片2の基端側に形成したATカットの水晶部分(あるいはDTカットの水晶部分)との境界領域を位置させる構造とすることができる。
【0061】
第2の実施形態〜第6の実施形態において、水晶片2に形成した第1の組に相当する検出用の水晶振動子の発振周波数(水晶片2Aにおける励振電極31、41間の発振周波数あるいは励振電極31A、41A間の発振周波数)f1と、第2の組に相当する参照用の水晶振動子の発振周波数(水晶片2Bにおける励振電極31、41間の発振周波数あるいは励振電極31B、41B間の発振周波数)f2との周波数差については、f1を基準にした両周波数差の比率、すなわち(f2−f1)/f1の絶対値が100ppmよりも大きいことが好ましい。第1の組に係る水晶振動子と第2の組に係る水晶振動子を用いて温度変化に対応する周波数変化をキャンセルする手法においては、両者の周波数温度特性が近似しているほど、つまり両者の周波数差が小さいほど、効果が大きいが、周波数があまりにも接近していると両者が弾性結合し、周波数が本来の周波数から変化してしまう。一方両者の周波数差が大きいとディジタル回路の設計が難しくなることから、例えば周波数差の比率は3%以下であることが好ましい。
【0062】
[第7の実施形態]
この実施の形態は、水晶片2において、水晶振動子としての役割を持つ部位と外力により撓みを発生させる部位との間を、基台に相当する容器1の下部分に設けた支持部である支持部材により支持する例である。即ち、水晶片2におけるこの支持部による支持部位は、励振電極31、41が設けられている部位と可動電極5が設けられている部位との間である。そして外力が水晶片2に加わったときに水晶片2の撓みの程度が大きくなるように、つまり高い感度が得られるようにするために、前記支持部位から水晶片2の先端までの距離を大きく確保することが好ましい。
【0063】
このような例を図30及び図31に示す。この例では容器の底部に、角型の支持部8を設け、この支持部8の上面により、水晶片2の下面における励振電極41よりも例えば0.1mm〜数mmだけ水晶片2の先端側に寄った部位を支持している。支持部8の横幅は、水晶片2の幅寸法と同じかあるいはそれよりも大きいことが好ましいが、励振電極31、41が配置されている部位の撓みを十分に防止できる機能を発揮できる場合には、水晶片2の幅寸法より小さくてもよい。支持部8の高さ寸法は、例えば水晶片2が台座11の上面から水平に伸び出した状態において水晶片2の下面に接触する寸法に設定される。
【0064】
図30では、容器内の構造を誇張して記載しているため、実際の外力センサーの一例の構造とはイメージが少し異なる。支持部8の寸法の一例としては、高さが例えば0・5mm〜1mm、厚さは0.3mmであり、横幅は水晶片2の幅と同じ1.6mmである。この寸法は一例であって、容器1の構造や水晶片2の設置位置などに応じて決まってくる。
【0065】
支持部8と水晶片2の下面(固定電極6と対向する側の面)とは、例えば導電性接着剤あるいは低誘電ガラスなどの固着材料により互いに固定されている。なお支持部8と水晶片2の下面とは互いに固定されていない構造としてもよい。
【0066】
支持部8を設ける手法としては、例えば容器1の下部分301を製造するときにエッチングにより形成する手法を挙げることができるが、支持部8を下部分301とは別個に製造し、接着剤により接着するようにしてもよい。
【0067】
また支持部8を用いる構造は、2組の水晶振動子を設けてこれら水晶振動子の発振周波数の差分を求める例である第2の実施形態あるいは第3の実施形態などに適用してもよい。この場合各組の水晶片2A、2B(例えば図9を参照)ごとに、支持部8により図30、図31に示したように励振電極31、41と可変電極5との間の部位を支持する構造となる。支持部8としては、水晶片2A、2Bごとに独立して設けてもよいし、水晶片2Aの左縁から水晶片2Bの右縁に亘って延びる共通の支持部8により水晶片2A、2Bを支持してもよい。2組の水晶振動子を用いた例である図27の構造に対して支持部8を用いた構成を図32に示しておく。
【0068】
ここで図30に示す構造において、励振電極41を直接発振回路に接続したサンプルを作成し、水平な面に載置したときの発振周波数f0と、水平面から10度だけ水晶片2の先端側が低くなるように傾斜した面に載置したときの発振周波数f10とを複数回測定した。周波数の変化率である(f0−f10)/f0の値は、0.1ppb〜5ppbであった。
【0069】
これに対して前記サンプルにおいて支持部8を設けない場合のサンプルについて、同様の試験を行ったところ、周波数の変化率である(f0−f10)/f0の値は、8ppb〜45ppbであった。この結果から、水晶片2が外力により撓んだときに、発振周波数の変化分の中で、水晶片2の振動部位(励振電極31,41が設けられている部位)の撓みによる周波数の変化分の占める割合について、支持部8を設ける構造の方が小さいことが分かる。この結果は水晶片2における支持部8の先端側が撓んでも、振動部位は、支持部8の存在によりほとんど撓まないことに基づいた結果であるといえる。
振動部位の周波数の変化は再現性に欠けることから、上述のように支持部8を設ける構造とすることにより、より一層正確に水晶片2の撓みに対応する周波数変化を得ることができる。
【0070】
以上において本発明は、加速度を測定することに限らず、磁力の測定、被測定物の傾斜の度合いの測定、流体の流量の測定、風速の測定などにも適用することができる。
磁力を測定する場合の構成例について述べる。水晶片2における可動電極5と励振電極41との間の部位に磁性体の膜を形成し、磁場に当該磁性体が位置すると水晶片2が撓むように構成する。
また被測定物の傾斜の度合いの測定については、水晶片2あるいは2A、2Bを支持している基台を予め種々の角度に傾け、各傾斜角度ごとに周波数情報を得ておき、当該基台を被測定面に設置したときの周波数情報から傾斜角度を検出することができる。
更にまた気体や液体などの流体中に水晶片2を晒し、水晶片の撓み量に応じて周波数情報を介して流速を検出することができる。この場合、水晶片2の厚さは流速の測定範囲などにより決定される。更にまた本発明は重力を測定する場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0071】
1 容器
11 台座
12 導電路
14、14A、14B 発振回路
15 スイッチ部
2 水晶片
20 水晶板
21 空間
22 枠部
31、31A、31B 励振電極
41、41A、41B 励振電極
5、5A、5B 可動電極
6 固定電極
7 突起部
100 周波数検出部
101 データ処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電片に作用する外力を検出する外力検出装置であって、
一端側が基台に支持された片持ちの圧電片と、
この圧電片を振動させるために、当該圧電片の一面側及び他面側に夫々設けられた一方の励振電極及び他方の励振電極と、
一方の励振電極に電気的に接続された発振回路と、
前記圧電片において前記一端側から離れた部位に設けられ、前記他方の励振電極に電気的に接続された可変容量形成用の可動電極と、
前記圧電片とは離間して、前記可動電極に対向するように設けられると共に前記発振回路に接続され、圧電片の撓みにより前記可動電極との間の容量が変化してこれにより可変容量を形成する固定電極と、
前記発振回路の発振周波数に対応する周波数情報である信号を検出するための周波数情報検出部と、を備え、
前記発振回路から一方の励振電極、他方の励振電極、可動電極及び固定電極を経て発振回路に戻る発振ループが形成され、
前記周波数情報検出部にて検出された周波数情報は、圧電片に作用する力を評価するためのものであることを特徴とする外力検出装置。
【請求項2】
前記可変容量形成用の可動電極は、前記圧電片の他端側に設けられたことを特徴とする請求項1記載の外力検出装置。
【請求項3】
前記圧電片、励振電極、可動電極及び固定電極からなる組として、第1の組及び第2の組を設け、
前記周波数情報検出部は、前記第1の組に対応する発振周波数及び前記第2の組に対応する発振周波数の差分に応じた信号を求めるものであることを特徴とする請求項1または2記載の外力検出装置。
【請求項4】
前記圧電片を検出用圧電片と呼ぶとすると、共通の容器内に検出用圧電片と参照用圧電片とを設け、
前記参照用圧電片の両面に一方の励振電極及び他方の励振電極を夫々設けると共に、この参照用圧電片を発振させるために一方の励振電極及び他方の励振電極を発振回路に接続し、
前記周波数情報検出部は、検出用圧電片に対応する発振周波数と参照用圧電片に対応する発振周波数との差分に応じた信号を求めるものであることを特徴とする請求項1または2記載の外力検出装置。
【請求項5】
前記検出用圧電片と参照用圧電片とは共通化されていることを特徴とする請求項4記載の外力検出装置。
【請求項6】
前記圧電片は水晶片であり、励振電極が設けられている部位の結晶軸と可動電極が設けられている部位の結晶軸とが互に異なることをことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の外力検出装置。
【請求項7】
前記圧電片に外力が加わったときに励振電極が設けられている部位が撓むのを防止するために、前記圧電片の下面側における励振電極と可動電極との間の部位を支持する支持部を前記基台に設けたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の外力検出装置。
【請求項8】
前記支持部の先端と圧電片とは互いに固定されていることを特徴とする請求項7に記載の外力検出装置。
【請求項9】
圧電片に作用する外力を圧電片の発振周波数に基づいて検出するための外力検出センサーであって、
一端側が基台に支持された片持ちの圧電片と、
この圧電片を振動させるために、当該圧電片の一面側に設けられ、発振回路に電気的に接続される一方の励振電極と、
前記圧電片の他面側に設けられた他方の励振電極と、
前記圧電片において前記一端側から離れた部位に設けられ、前記他方の励振電極に電気的に接続された可変容量形成用の可動電極と、
前記圧電片とは離間して前記可動電極に対向するように設けられると共に圧電片の撓みにより前記可動電極との間の容量が変化してこれにより可変容量を形成し、前記発振回路に接続される固定電極と、を備えたことを特徴とする外力検出センサー。
【請求項1】
圧電片に作用する外力を検出する外力検出装置であって、
一端側が基台に支持された片持ちの圧電片と、
この圧電片を振動させるために、当該圧電片の一面側及び他面側に夫々設けられた一方の励振電極及び他方の励振電極と、
一方の励振電極に電気的に接続された発振回路と、
前記圧電片において前記一端側から離れた部位に設けられ、前記他方の励振電極に電気的に接続された可変容量形成用の可動電極と、
前記圧電片とは離間して、前記可動電極に対向するように設けられると共に前記発振回路に接続され、圧電片の撓みにより前記可動電極との間の容量が変化してこれにより可変容量を形成する固定電極と、
前記発振回路の発振周波数に対応する周波数情報である信号を検出するための周波数情報検出部と、を備え、
前記発振回路から一方の励振電極、他方の励振電極、可動電極及び固定電極を経て発振回路に戻る発振ループが形成され、
前記周波数情報検出部にて検出された周波数情報は、圧電片に作用する力を評価するためのものであることを特徴とする外力検出装置。
【請求項2】
前記可変容量形成用の可動電極は、前記圧電片の他端側に設けられたことを特徴とする請求項1記載の外力検出装置。
【請求項3】
前記圧電片、励振電極、可動電極及び固定電極からなる組として、第1の組及び第2の組を設け、
前記周波数情報検出部は、前記第1の組に対応する発振周波数及び前記第2の組に対応する発振周波数の差分に応じた信号を求めるものであることを特徴とする請求項1または2記載の外力検出装置。
【請求項4】
前記圧電片を検出用圧電片と呼ぶとすると、共通の容器内に検出用圧電片と参照用圧電片とを設け、
前記参照用圧電片の両面に一方の励振電極及び他方の励振電極を夫々設けると共に、この参照用圧電片を発振させるために一方の励振電極及び他方の励振電極を発振回路に接続し、
前記周波数情報検出部は、検出用圧電片に対応する発振周波数と参照用圧電片に対応する発振周波数との差分に応じた信号を求めるものであることを特徴とする請求項1または2記載の外力検出装置。
【請求項5】
前記検出用圧電片と参照用圧電片とは共通化されていることを特徴とする請求項4記載の外力検出装置。
【請求項6】
前記圧電片は水晶片であり、励振電極が設けられている部位の結晶軸と可動電極が設けられている部位の結晶軸とが互に異なることをことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の外力検出装置。
【請求項7】
前記圧電片に外力が加わったときに励振電極が設けられている部位が撓むのを防止するために、前記圧電片の下面側における励振電極と可動電極との間の部位を支持する支持部を前記基台に設けたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の外力検出装置。
【請求項8】
前記支持部の先端と圧電片とは互いに固定されていることを特徴とする請求項7に記載の外力検出装置。
【請求項9】
圧電片に作用する外力を圧電片の発振周波数に基づいて検出するための外力検出センサーであって、
一端側が基台に支持された片持ちの圧電片と、
この圧電片を振動させるために、当該圧電片の一面側に設けられ、発振回路に電気的に接続される一方の励振電極と、
前記圧電片の他面側に設けられた他方の励振電極と、
前記圧電片において前記一端側から離れた部位に設けられ、前記他方の励振電極に電気的に接続された可変容量形成用の可動電極と、
前記圧電片とは離間して前記可動電極に対向するように設けられると共に圧電片の撓みにより前記可動電極との間の容量が変化してこれにより可変容量を形成し、前記発振回路に接続される固定電極と、を備えたことを特徴とする外力検出センサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
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【図18】
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【図21】
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【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2013−33020(P2013−33020A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−280003(P2011−280003)
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
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