説明

外周養生装置およびカーテンウォールの施工方法

【課題】施工階の外周を覆っている養生シートを捲り上げることなく、既設のカーテンウォールに接続する態様で施工階の外周にカーテンウォールを施工することができる外周養生装置を提供すること。
【解決手段】カーテンウォールCWを施工する施工階nFLの階上から階下に亘り、建物の外周を養生する外周養生装置1に、施工階nFLの階上に盛り替えられた作業足場2と、一端が作業足場2に吊り下げられ、他端が既設のカーテンウォールCWを構成するマリオンMにガイドされるミニマルチフレーム3と、ミニマルチフレーム3に貼張された養生シート5とを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高層ビルの外周養生に適した外周養生装置、および当該外周養生装置を用いたカーテンウォールの施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高層ビルの建設工事では、カーテンウォールの施工前であって外周が開放されている施工階から建築資材、工具等が落下しないように、施工階の外周に養生シートを張設することになっている。
【0003】
養生シートは、一端が建方された鉄骨等に張設され、他端が施工階の階下等に張設されたもののほか、養生枠に張設されたものが知られており、養生枠に張設された養生シートは、養生枠とともに盛り替えられ、施工階の外周を養生するようになっている(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−331431号公報
【特許文献2】特開平10−317679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カーテンウォールは、既設のカーテンウォールに接続する態様で施工される場合には、施工階の外周を覆っている養生シートを捲り上げ、既設のカーテンウォールを露出させる必要があった。このように、養生シートを捲り上げ、既設のカーテンウォールを露出させると、養生シートを捲り上げた部分は開口し、落下養生が不十分な状態となる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、施工階の外周を覆っている養生シートを捲り上げることなく、既設のカーテンウォールに接続する態様で施工階の外周にカーテンウォールを施工することができる外周養生装置、および当該外周養生装置を用いたカーテンウォールの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、カーテンウォールを施工する施工階の階上から階下に亘り、建物の外周を養生する外周養生装置であって、施工階の階上に盛り替えられた作業足場と、一端が作業足場に吊り下げられ、他端が施工されたカーテンウォールを構成するマリオンにガイドされるミニマルチフレームと、ミニマルチフレームに張設された養生シートとを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、前記作業足場の下部に吊り下げられた走行レールと、走行レールを走行し、施工階の内方から供給されたカーテンウォール構成部材を吊り下げるテルハクレーンとを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、施工階の階上から階下に亘り、建物の外周を養生するとともに、施工階の内方から供給されたカーテンウォール構成部材を階上に盛り替えられた作業足場から吊り下げ、その後、既設のカーテンウォールと接続することにより、施工階の外周にカーテンウォールを構築することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる外周養生装置は、養生シートが張設されたミニマルチフレームの一端が施工階の階上に盛り替えられた作業足場に吊り下げられ、他端が既設のカーテンウォールを構成するマリオンにガイドされるので、施工階の内方からカーテンウォール構成部材を供給し、カーテンウォールを施工すれば、既設のカーテンウォールに接続する態様で施工階の外周にカーテンウォールを施工する場合であっても、養生シートを捲り上げる必要がなく、十分な落下養生を維持できる。
【0011】
また、本発明にかかる外周養生装置は、作業足場の下部に吊り下げた走行レールをテルハクレーンが走行し、施工階の内方から供給されたカーテンウォール構成部材を吊り下げるので、カーテンウォールを効率的に施工できる。
【0012】
また、本発明にかかる外周養生装置を用いたカーテンウォールの施工方法は、施工階の階上から階下に亘り、建物の外周を養生するとともに、施工階の内方から供給されたカーテンウォール構成部材を階上に盛り替えられた作業足場から吊り下げ、その後、既設のカーテンウォールと接続することにより、施工階の外周にカーテンウォールを構築するので、十分な落下養生を維持した状態でカーテンウォールを効率的に施工できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる外周養生装置および当該外周養生装置を用いたカーテンウォールの施工方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態である外周養生装置を複数設置することにより、施工階の外周を養生した高層ビルの施工現場を示す概念図、図2は図1に示したカーテンウォールの要部拡大平断面図である。
【0015】
本発明の実施の形態である外周養生装置1は、カーテンウォールを施工する施工階nFLの外周を養生するものであって、図1に示すように、大型ビルの施工階nFLの外周を養生する場合には、複数(図1に示す例では三つ)の外周養生装置1により養生するようになっている。
【0016】
施工されたカーテンウォールCWは、所定の間隔でマリオン(開口部の間柱)Mを有している。図2に示すように、マリオンMは、パネル(たとえば、ガラスパネル)PとともにカーテンウォールCWを構成するものであり、前面が開口したリップ溝Lを有している。このリップ溝Lは、高層ビル竣工後において、本設ゴンドラが昇降する際のガイドとして機能するようになっている。
【0017】
図3は、一の外周養生装置の断面図であり、図4は、他の外周養生装置の断面図である。また、図5は、図3および図4に示したミニマルチフレームの吊下部を示す拡大図であり、図6は、図3および図4に示したミニマルチフレームの接続部を示す拡大図である。
【0018】
図3および図4に示すように、外周養生装置1は、作業足場2とミニマルチフレーム3とを備えている。作業足場2は、施工階の階上(たとえば、二階層上となる階(n+2)FL)に設置(盛り替え)され、階上における鉄骨建方作業に供するとともに、階上の落下養生に供するようになっている。本実施の形態の外周養生装置1に用いられる作業足場2は、後述するテルハクレーン4の走行とメンテナンスを可能にするために、マルチトラス21を幅方向に二列、かつ段違いとなるように組み合わせて構成してある。
【0019】
また、作業足場2の高さは、階上における作業の内容、施工現場の特性によって任意に設定されており、たとえば、一の工区において外側に背の高い作業足場2を用いることとし(図3参照)、他の一の工区において外側に背の低い作業足場2を用いることとしている(図4参照)。
【0020】
このように構成した作業足場2は、タワークレーン等の揚重機(図示せず)によって盛り替えられ、施工階nFLの階上(n+2)FLに設置されるようになっている。具体的には、設置する階上階(施工階の二階層上の階)(n+2)FLの床に固定された荷重ブラケット22上に作業足場の内側となる足場21aが設置され、階上階の上の階(施工階の三階層上の階)(n+3)FLの床と作業足場の外側となる足場21bとの間を控えサポート23により接続するようになっている。
【0021】
また、上述した一の工区におけるように外側に背の高い足場21bを用いる場合には、さらに上の階(施工階の四階層上の階)(n+4)FLの床と作業足場2とをつなぎパイプ24によって接続するようになっている。具体的には、つなぎパイプ24の一端を上の階(n+4)FLの床に固定するとともに、つなぎパイプ24の他端をクランプ(図示せず)によって作業足場2の外側となる足場21bに固定するようになっている(図3参照)。
【0022】
作業足場2の外側となる足場21bの下端には、全幅に亘って延在したH鋼25が取り付けてある。H鋼25は、ミニマルチフレーム3を吊り下げるためのもので、マリオンMの間隔(より正確にはリップ溝Lの間隔)と同一の間隔でミニマルチフレーム3が吊り下げられるようになっている。
【0023】
図5に示すように、ミニマルチフレーム3の上端には、ミニマルチ吊金物31が取り付けてあり、H鋼25には、長シャックル26によって吊り下げられるようになっている。ミニマルチ吊金物31は、両端に雄ネジが形成されたUの字状を呈する金物であって、ミニマルチフレーム3に取り付けた場合に環状の吊下部を構成するようになっている。長シャックル26は、Uの字状を呈するクラウンと、クラウンを挿通するボルトとからなる掛け金具であって、ボルトがH鋼25に挿通するようになっている。このように、ミニマルチ吊金物31と長シャックル26とを組み合わせてH鋼25にミニマルチフレーム3を吊り下げると、H鋼25に対してミニマルチフレーム3をある程度自由に動かすことができるようになる。
【0024】
ミニマルチフレーム3は、梯子状に形成した枠体であって、カーテンウォールCWの施工階nFLの開口を塞ぐに足りる長さ、すなわち、作業足場2から既設のカーテンウォールCWに重なる長さ(図3および図4に示す例では、二階層(nFLおよび(n+1)FL)に亘る開口を塞ぐに足りる長さ)を有している。
【0025】
ミニマルチフレーム3の下端内側には、最下部養生ブラケット32が取り付けてあり、最下部養生ブラケット32の先端には、マリオンガイド33が回動可能に取り付けてある。マリオンガイド33は、カーテンウォールCWを構成するマリオンMに形成されたリップ溝Lにガイドされ、作業足場を盛り替える際にもリップ溝から外れることはない。
【0026】
マリオンガイド33には、回転自在に取り付けられたローラ(図示せず)と、ソリ状に形成されたシューブロック(図示せず)とが取り付けてある。ローラとシューブロックとは、協働することにより、マリオンガイド33がリップ溝内をスムーズにガイドされるようになっている。
【0027】
このように、施工階nFLの階上に設置された作業足場2と、一端が作業足場2に吊り下げられ、他端が施工されたカーテンウォールCWを構成するマリオンMにガイドされるミニマルチフレーム3とには、それぞれ養生シート4,5が張設してある。この結果、カーテンウォールCWの施工階nFLとその階上とは養生シート4,5によって養生されることになる。
【0028】
また、作業足場2、より詳細には、作業足場2の外側となる足場21bの下方には、チェーン61とターンバックル62とによって、Iビーム63が吊り下げてある。Iビーム63は、テルハクレーン64の走行レールを構成するもので、一の外周養生装置1の走行レール(Iビーム)と他の外周養生装置1の走行レール(Iビーム63)とは、ジョイント7(図1参照)によって接続可能となっている。
【0029】
Iビーム63には、テルハクレーン64が走行可能に取り付けられており、施工階nFLの内方から供給されたカーテンウォール構成部材Cを吊り下げることができるようになっている。
【0030】
上述した実施の形態である外周養生装置1を用いてカーテンウォールCWを施工する場合には、タワークレーン等の揚重機を用いることにより、カーテンウォールCWを施工する施工階nFLの外周をミニマルチフレーム3に張設された養生シート5が覆うように、作業足場2を盛り替える一方、工事用エレベータ等を用いることにより、施工階nFLにカーテンウォール構成部材Cを搬入する。
【0031】
そして、盛り替えられた作業足場2に吊り下げられた走行レール(Iビーム63)を走行するテルハクレーン64を用いることにより、カーテンウォール構成部材Cを吊り下げ、既設のカーテンウォールCWに接続する態様で、施工階nFLにカーテンウォールCWを施工する。
【0032】
施工階nFLの外周にカーテンウォールCWが施工されると、再び揚重機を用いることにより、新たにカーテンウォールCWを施工する施工階の外周をミニマルチフレーム3に張設された養生シート5が覆うように、作業足場2を盛り替えることになる。この時、ミニマルチフレーム3の一端は、作業足場2に吊り下げられ、ミニマルチフレーム3の他端は、最下部養生ブラケット32およびマリオンガイド33を介してマリオンM(リップ溝L)にガイドされた状態を維持することになる。また、走行レールを構成するIビーム63とテルハクレーン64とは、作業足場2とともに盛り替えられることになるので、別途Iビーム63を盛り替えたり、テルハクレーン64を盛り替えたりする必要はない。
【0033】
以後、作業足場2の盛り替えとカーテンウォールCWの施工を繰り返し、順次上階にカーテンウォールCWを施工することになる。
【0034】
上述した実施の形態である外周養生装置1によれば、作業足場2を盛り替えることにより、ミニマルチフレーム3に張設された養生シート5が盛り替えられることになるので、別途養生シートを張設する必要がない。また、養生シート5が張設されたミニマルチフレーム3の一端が作業足場2に吊り下げられ、ミニマルチフレーム3の他端(マリオンガイド)が施工されたカーテンウォールCWを構成するマリオンMにガイドされるので、施工階の内方からカーテンウォール構成部材Cを供給し、既設のカーテンウォールCWに接続する態様で、新たなカーテンウォールCWを施工することとすれば、養生シート5を捲り上げる必要がなく、十分な落下養生を維持できる。
【0035】
また、作業足場2の下部に吊り下げた走行レール(Iビーム63)をテルハクレーン64が走行し、施工階nFLの内方から供給されたカーテンウォール構成部材Cを吊り下げるので、タワークレーンを用いてカーテンウォール構成部材Cを吊り下げる必要がなく、カーテンウォールCWを効率的に施工できる。
【0036】
また、作業足場2を盛り替えれば、走行レール(Iビーム63)およびテルハクレーン64も盛り替えられるので、走行レールおよびテルハクレーンを別途盛り替える必要がなく、カーテンウォールCWを効率的に施工できることになる。
【0037】
また、外周養生装置1を用いたカーテンウォールCWの施工方法は、施工階nFLの階上から階下に亘り、建物の外周を養生するとともに、施工階の内方から供給されたカーテンウォール構成部材Cを階上に盛り替えられた作業足場2から吊り下げ、その後、既設のカーテンウォールCWと接続することにより、施工階nFLの外周にカーテンウォールCWを構築するので、十分な落下養生を維持した状態でカーテンウォールCWを効率的に施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態である外周養生装置を複数設置することにより、施工階の外周を養生した高層ビルの施工現場を示す概念図である。
【図2】図1に示したカーテンウォールの要部拡大平断面図である。
【図3】一の外周養生装置の断面図である。
【図4】他の外周養生装置の断面図である。
【図5】図3および図4に示した外周養生枠の吊下部を示す拡大図である。
【図6】図3および図4に示した外周養生枠の接続部を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0039】
1 外周養生装置
2 作業足場
3 ミニマルチフレーム
4,5 養生シート
7 ジョイント
21 マルチトラス
21a 足場
21b 足場
22 荷重ブラケット
23 サポート
24 つなぎパイプ
25 H鋼
26 長シャックル
31 ミニマルチ吊金物
32 最下部養生ブラケット
33 マリオンガイド
61 チェーン
62 ターンバックル
63 Iビーム
64 テルハクレーン
CW カーテンウォール
C カーテンウォール構成部材
M マリオン
L リップ溝
nFL 施工階

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーテンウォールを施工する施工階の階上から階下に亘り、建物の外周を養生する外周養生装置であって、
施工階の階上に盛り替えられた作業足場と、
一端が作業足場に吊り下げられ、他端が施工されたカーテンウォールを構成するマリオンにガイドされるミニマルチフレームと、
ミニマルチフレームに張設された養生シートと
を備えたことを特徴とする外周養生装置。
【請求項2】
前記作業足場の下部に吊り下げられた走行レールと、
走行レールを走行し、施工階の内方から供給されたカーテンウォール構成部材を吊り下げるテルハクレーンと
を備えたことを特徴とする外周養生装置。
【請求項3】
施工階の階上から階下に亘り、建物の外周を養生するとともに、施工階の内方から供給されたカーテンウォール構成部材を階上に盛り替えられた作業足場から吊り下げ、
その後、既設のカーテンウォールと接続することにより、施工階の外周にカーテンウォールを構築することを特徴とするカーテンウォールの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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