説明

外壁部材取付装置

【課題】設計現場における建築空間の有効利用を図る際に、ハイテンションボルトを使用する必要がないため、ハイテンションボルトを使用していた際に必要とした養生(ナットの接触面が風雨に晒されないようにする、又、油分が付着しないようにする)が不要となり、外壁部材取付現場での作業が簡易になり、作業能率が向上するとともに作業コストの高額化を防止する。
【解決手段】建築躯体Cに設置される水平板部30と、外壁部材を取り付けるための垂直板部50とをL字状に連設し、水平板部に固定ボルト用孔31を設け、この固定ボルト用孔に、建築躯体に突設した固定ボルト12を貫通し、座金33を介してナット34止めすることにより、外壁部材を建築躯体に設置し、座金の裏面に座金凹凸部を設けるとともに、水平板部の表面における固定ボルト用孔の周縁に、座金凹凸部と噛み合う係止凹凸部35を設けた外壁部材取付装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は外壁部材取付装置に関し、建築躯体に、外壁パネル,建築サッシ用枠体等の外壁部材を設置する際に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来におけるこの種の外壁部材取付装置は、鋼材を切断加工した水平板材と垂直板材とをL字状に溶接したものであり、この水平板材の固定ボルト用長孔に、建築躯体に突設した固定ボルトを貫通させ座金を介してナット止めするとともに、前記垂直板材の取付けボルト孔に、外壁部材に突設した取付ボルトを貫通させナット止めすることによって、前記外壁部材を前記建築躯体に設置していた。
そして、大きな外壁部材を設置する場合には、前記建築躯体への固定を強固にする必要上、前記取付ボルトは大径のものになり、その結果、当該装置自体が大型化せざるを得ないものであった。
ところが、この取付装置が大型化すると、設置スペースとして広い空間を必要とするため、設計現場における建築空間の有効利用しにくいものであった。
このため、従来において、例えば、大きな外壁部材(例えば、建築サッシ用枠体)を設置する場合には、当該外壁部材取付装置をコンパクトにする必要上、前記固定ボルトとしてハイテンションボルトを使用し、一定の締め付けトルクによってナットを締め付け固定していた。
【0003】
【特許文献1】実開昭63−140413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ハイテンションボルトを使用する場合には、ナットの接触面に水分、油分等が付着していると締め付けトルクの調節が難しく、ナットを適正に締め付け固定することができないおそれが生ずるため、作業にあたって、この部分が風雨に晒されないように、又、油分が付着しないように養生をしなければならず、この結果、外壁部材取付け現場での作業に手間がかかり、作業能率を向上させにくいとともに作業コストが高額化せざるを得ないという不都合を有した。
【0005】
また、従来の外壁部材取付装置にあっては、山形鋼材を、切断、加工し、溶接することによって製造していたため、これらの過程で寸法・強度等にバラツキが発生して品質が安定しにくいとうい不都合を有した。
【0006】
この発明の課題はこの不都合を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記不都合を解消するために、この発明に係る外壁部材取付装置においては、建築躯体に設置される水平板部と、外壁部材を取り付けるための垂直板部とをL字状に連設し、
前記水平板部に固定ボルト用孔を設け、この固定ボルト用孔に、建築躯体に突設した固定ボルトを貫通し座金を介してナット止めすることにより、前記外壁部材を前記建築躯体に設置する外壁部材取付装置において、
前記座金の裏面に座金凹凸部を設けるとともに前記水平板部の表面における前記固定ボルト用孔の周縁に前記座金凹凸部と噛み合う係止凹凸部を設けたものである。
【0008】
この場合、前記係止凹凸部を前記水平板部とは別体に構成し、前記水平板部に着脱可能に載置固定することもできる。
【0009】
この場合、この外壁部材取付装置を鋳造によって一体成形することもできる。
【0010】
この場合、前記水平板部における係止凹凸部の凸部のピッチを前記座金における座金凹凸部のピッチと同数又は複数倍に、あるいは、その反対の組み合わせにすることもできる。
【0011】
この場合、前記固定ボルト用孔を垂直板部に向かって延びている固定ボルト用長孔とし、且つ、前記水平板部における係止凹凸部およびこれに噛み合う前記座金の座金凹凸部がこの固定ボルト用孔の長径に対して斜めに配置することもできる。
【0012】
この場合、前記建築躯体をコンクリートに埋設された埋設部材とし、且つ、前記固定固定ボルトをT字固定ボルトにし、前記埋設部材にスライド孔を形成するとともにこのスライド孔に下方から前記T字固定ボルトを貫通し、このT字固体ボルトの頭部の裏面に頭部凹凸部を設けるとともに埋設部材におけるスライド孔の周縁にこのT字固定ボルトの頭部凹凸部と噛み合う調整凹凸部を設置することもできる。
【0013】
この場合、前記調整凹凸部を前記埋設部材とは別体に構成し、前記埋設部材に着脱可能に載置固定することもできる。
【0014】
この場合、前記固定ボルトの頭部凹凸部を当該頭部の外側に向かってボルト先端方向に傾斜させることもできる。
【0015】
この場合、 前記建築躯体としてのコンクリートに埋設される埋設部材はアンカー杭部を有し、このアンカー杭部を取替え可能にすることもできる。
【0016】
この場合、前記固定ボルトのボルト根幹部を矩形状に形成することもできる。
【0017】
この場合、前記固定ボルトの頭部の内側にボルト方向に向いているリブを形成することもできる。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る外壁部材取付装置は、建築躯体に設置される水平板部と、外壁部材を取り付けるための垂直板部とをL字状に連設し、
前記水平板部に固定ボルト用孔を設け、この固定ボルト用孔に、建築躯体に突設した固定ボルトを貫通し座金を介してナット止めすることにより、前記外壁部材を前記建築躯体に設置する外壁部材取付装置において、
前記座金の裏面に座金凹凸部を設けるとともに前記水平板部の表面における前記固定ボルト用孔の周縁に前記座金凹凸部と噛み合う係止凹凸部を設けたものであるため、
前記水平板部の固定ボルト用孔に、建築躯体に突設した固定ボルトを貫通して座金を介してナット止めした場合に、前記座金の座金凹凸部と前記水平板部の係止凹凸部が圧接した状態で噛み合うため、その接触面積は、従来(接触面が平坦であった)よりも広くなり、この結果、ハイテンションボルトの代わりに通常の同径のボルト(ハイテンションボルト以外のボルト)を使用しても大きな締め付けトルクでナット止めすることができるものである。
【0019】
よって、この外壁部材取付装置を使用すれば、設計現場における建築空間の有効利用を図る際に、ハイテンションボルトを使用する必要がないため、ハイテンションボルトを使用していた際に、ナットを適正に締め付けるために必要とする養生(ナットの接触面が風雨に晒されないようにする、又、油分が付着しないようにする)が不要となり、この結果、外壁部材取付現場での作業が簡易になり、作業能率が向上するとともに作業コストの高額化を防止することができるものである。
【0020】
この場合、前記係止凹凸部を前記水平板部とは別体に構成し、前記水平板部に着脱可能に載置固定すれば、この係止凹凸部を別体として製造することができるため、係止凹凸部および水平板部の製造がしやすい。
【0021】
この場合、この外壁部材取付装置を鋳造によって一体成形すれば、寸法・強度等にバラツキのない一定した品質の製品を得ることができる。特に、ダクタイル鋳鉄や鋳鋼で成型し、使用目的に応じて合金元素や熱処理を加えることによって材質を調節することができるものである。
【0022】
この場合、前記水平板部における係止凹凸部の凸部のピッチを前記座金における座金凹凸部のピッチと同数又は複数倍に、あるいは、その反対の組み合わせにすれば、前記係止凹凸部のピッチを鋳造によって大まかに成型し、座金凹凸部のピッチを鍛造に細かに成型しても、又、その逆であっても、両者はガタツキが少ない状態で固着することができる。
【0023】
この場合、前記固定ボルト用孔を垂直板部に向かって延びている固定ボルト用長孔とし、且つ、前記水平板部における係止凹凸部およびこれに噛み合う前記座金の座金凹凸部がこの固定ボルト用孔の長径に対して斜めに配置すれば、座金の外側を叩き前記固定ボルト用長孔の長径に対して垂直方向に押し出すことによって前記水平板部を固定ボルト用長孔の長径に沿ってスライドさせることができるため、この水平板部のスライド状態を微調整することができる。
【0024】
また、前記建築躯体をコンクリートに埋設された埋設部材とし、且つ、前記固定ボルトをT字固定ボルトにし、前記埋設部材にスライド孔を形成するとともにこのスライド孔に下方から前記T字固定ボルトを貫通し、このT字固体ボルトの頭部の裏面に頭部凹凸部を設けるとともに埋設部材におけるスライド孔の周縁にこのT字固定ボルトの頭部凹凸部と噛み合う調整凹凸部を設置すれば、前記水平板部の固定ボルト用孔に、建築躯体に突設したT字固定ボルトを貫通して座金を介してナット止めした場合に、前記T字固体ボルトの頭部凹凸部と前記埋設部材の調整凹凸部とが圧接した状態で噛み合うため、その接触面積は、従来よりも広くなり、この結果、通常のボルトを使用しても大きな締め付けトルクでナット止めすることができる。
【0025】
この場合、前記調整凹凸部を前記埋設部材とは別体に構成し、前記埋設部材に着脱可能に載置固定すれば、この調整凹凸部を別体として製造することができるため、調整凹凸部および埋設部材の製造がしやすいものである。
【0026】
この場合、前記固定ボルトの頭部凹凸部を当該頭部の外側に向かってボルト先端方向に斜め傾斜させることもできる。
【0027】
この場合、前記建築躯体をコンクリートに埋設される埋設部材とし、この埋設部材にアンカー杭部を設け、このアンカー杭部を取替え可能にすれば、アンカー杭部の形状を調整することによって、用途に応じた埋込強度を得ることができる。
【0028】
また、前記固定ボルトのボルト根幹部を矩形状に形成すれば、この根幹部が、前記前記固定ボルト用孔(水平板部)内において回転不可能となるため、ナット締めがしやすいものである。
【0029】
この場合、前記固定ボルトの頭部の内側にボルト方向に向いているリブを形成すれば、このリブがボルトの締め付け力によって対向する壁面に食い込んで固着されるため、ズレや歪みが防止されるとともに振動によるガタツキを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
この発明に係る外壁部材取付装置は、建築躯体に設置される水平板部と外壁部材を取り付けるための垂直板部とをL字状に連設し、前記水平板部に固定ボルト用孔を設け、この固定ボルト用孔に、建築躯体に突設した固定ボルトを貫通し座金を介してナット止めし、 前記座金の裏面に座金凹凸部を設けるとともに前記水平板部の表面における前記固定ボルト用孔の周縁に前記座金凹凸部と噛み合う係止凹凸部を設けたことに最も主要な特徴を有する。また、前記外壁部材取付装置を鋳造によって一体成形したことに主要な特徴を有する。
【実施例】
【0031】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0032】
図1はこの発明に係る外壁部材取付装置の第一実施例の正面断面図、図2は平面図、図3は左側面図、図4は図1における「係止凹凸部」の説明図、図5は同「座金」の説明図、図6は図5のVI−VI線断面図、図7は図1で使用されている「固定ボルト」の拡大図、図8は同底面図、図9は同右側面図、図10は図1におけるX部の拡大断面図、図11は図2における埋込部材の正面図、図12は同右側面図、図13は図11におけるXIII−XIII断面図、図14図は図11におけるXIV−XIV断面図、図15は図13におけるXV矢視における「調整凹凸部」の説明図、図16は図15における「調整凹凸部」の拡大図、 図17は第二実施例における第一実施例の図1に相応する図、図18は第二実施例における第一実施例の図2に相応する図、図19は第二実施例における第一実施例の図3に相応する図、図20は第二実施例における第一実施例の図7に相応する図、図21は第二実施例における第一実施例の図8に相応する図、図22は第二実施例における第一実施例の図9に相応する図、図23は第一実施例の分解斜視図、図24はその改良断面図である。
【0033】
図1〜16,図23において、1は埋設部材であり、建築躯体(コンクリート)Cに埋設されている。この埋設部材1は鋳造製であり、前記建築躯体Cの端沿(外壁部材設置縁)に沿って配置されている。11はスライド孔であり、前記埋設部材1の略中央部に、前記端沿(外壁部材設置縁)に略平行に形成されている(図11,13,14を参照のこと)。前記埋設部材1の裏面におけるこのスライド孔11,11 の両側は離れるに従って下がり傾斜になっている。所謂、断面逆ハ字状である(図1参照のこと)。
【0034】
12,12 は固定ボルトであり、前記スライド孔11,11 を下方から貫通している。13,13 は前記固定ボルト12,12 の頭部であり、偏平状をしている。前記固定ボルト12,12 を前記埋設部材1に設置する場合には、この頭部13,13 を前記スライド孔11,11 に通過させて、略90度回転させればよい(図1の状態を参照のこと)。この固定ボルト12,12 は前記スライド孔11,11 を貫通した状態で前記端縁(外壁部材設置縁)に沿ってスライドすることができる。なお、この頭部(固定ボルト12の)の裏面は前記スライド孔(埋設部材の)11,11 の裏側傾斜面に接触する部分であり、中心から離れるに従ってボルト先端方向に斜め傾斜して上がり傾斜になっている。所謂、断面逆ハ字状である(図1,図7を参照のこと)。
【0035】
なお、前記固定用ボルト12は、図7〜9に示すように、その根幹部121 が、前記前記固定ボルト用長孔31,31 内において回転不可能となるように、その断面が矩形(正方形)状に形成されている。
【0036】
次に、14,14 は調整凹凸部であり、前記埋設部材1の裏面における前記スライド孔11,11 の裏側傾斜面に略平行に形成されている(図1,13,14,15,16を参照のこと)。この両側の調整凹凸部14,14 は平面視した場合同方向に傾斜しており、その傾斜度は、スライド代を大きくすることや振動による緩みを加味して定められる。又、前記固定ボルト12,12 において、15,15 は頭部凹凸部であり、前記頭部13,13 (固定ボルト12,12 の)の裏側に形成されている。この頭部凹凸部15,15 は前記埋設部材1の調整凹凸部14,14 に噛み合うように同傾斜(平面視で)している(図8〜10を参照のこと)。
【0037】
なお、前記調整凹凸部(埋設部材1の)14,14 のピッチは、入れ子により鋳造成型して精度を高くし、鋳造時に砂の焼きつきや形状変化を少なくして、前記調整凹凸部(埋設部材1の)14,14 を鋳造成型しやすいようにした。
【0038】
ここに、前記調整凹凸部(埋設部材1の)14,14 が前記スライド孔11,11 から両方向に延びるに従って下がり傾斜になっており(図1,図14を参照のこと)、前記頭部凹凸部(固定ボルト12,12 の)15,15 が前記中心から離れるに従って上がり傾斜になっているのは、締め付け力によって前記頭部凹凸部(固定ボルト12,12 の)15,15 の付け根で固定するので、このて前記頭部凹凸部(固定ボルト12,12 の)15,15 が上方向へ変形して、緩むのを防止するためである。
【0039】
なお、この実施例では、前記調整凹凸部14,14 を前記埋設部材1に一体成型したが、図24に示すように、この調整凹凸部14を別体製造し、前記埋設部材に着脱可能に載置して、挟んだ状態で締め付け固定することもできる。
【0040】
なお、前記調整凹凸部(埋設部材1の)14,14 および前記固定ボルト12,12 はカバー部材16によって覆われ、コンクリートが浸入しないようにしている。図11,13に示すように、カバー部材16には小孔161 が設けられ、鋳造時の入れ子の動きを拘束する(小孔に掛け止めする)ことができるとともに、この小孔を使って内面の清掃をしやすくするとともに内面の表面処理材の循環や排出をしやすくすることができ、表面を均一にすることができる。この小孔161 には、キャップが取り付けられ、コンクリートの浸入を防止している。なお、このカバー部材16は前記埋設部材1に一体鋳造されている。
【0041】
また、17はボルト18によって固定されたアンカー杭である。このアンカー杭17は一対設置されている。このアンカー杭17の長さを変えることによって、埋設部材は共通品を使用したまま用途に応じて支持力を変えることにより各種設計条件に多面的に対応することができるようになった。
【0042】
次に、図1〜3において、2は鋳造製の外壁部材取付装置であり、水平板部30と垂直板部50とをL字状に連設したものである。31,31 は固定ボルト用長孔であり、前記水平板部30に形成されている。この固定ボルト用長孔31,31 は前記垂直板部50に向かって延びている。
【0043】
33,33 は固定用座金(この発明の「座金」に相当する)であり、前記水平板部30に載置されている。前記固定ボルト12,12 は、前記固定ボルト用長孔31,31 を貫通し、この固定用座金33,33 を介してナット34,34 締めされる。このため、前記水平板部30、ひいては、前記外壁部材取付装置2は前記固定ボルト12,12 を基準として、前記端縁(外壁部材設置縁)に向かって進退することができる。なお、この固定用座金33,33 の孔に対して前記固定ボルト12,12 は余裕をもって貫通されている。即ち、固定用座金33,33 は前記固定ボルト12,12 が貫通した状態で水平方向に移動することができるものである。
【0044】
前記固定ナット34,34 は図10に示すように、雌ねじ部341 と把持部342 とから構成し、前記固定ナット34の外周面における前記雌ねじ部341 と前記把持部342 との間にシャー構造の周溝343 を形成すれば、把持部341 を把持した状態で固定ナット34を締め付けたとき、必要以上の回転トルクがかかった場合にはこの凹溝部343 で捩れが生じて凹溝部343 で破断する。したがって、後日締め付け状態を確認することができる。
【0045】
図2,4に示すように、35,35 は係止凹凸部であり、前記水平板部30の表面における前記固定ボルト用長孔31,31 の両側に形成されている。この両側の係止凹凸部35,35 は図4に示すように、平面の上に傾斜した凸条351,351 …を一体形成したものであり、凸条351 と凸条351 との間は、当該凸条351 の巾と同一又は複数倍になっている。
【0046】
また、図2,5,6に示すように、36,36 は座金凹凸部であり、前記固定用座金33,33 の裏面に形成されている。この座金凹凸部36,36 は前記水平板部30の係止凹凸部35,35 に噛み合うように、同傾斜の状態で、平面の上に傾斜した凸条331,331,…を一体形成したものであり、凸条331 と凸条331 との間は、当該凸条331 の巾と同一又は複数倍になっている。
【0047】
なお、この実施例では、前記係止凹凸部35,35 を前記水平板部30に一体成型したが、この係止凹凸部35,35 を別体製造し、前記水平板部30に着脱可能に載置して、挟んだ状態で締め付け固定することもできる。
【0048】
前記外壁部材取付装置2における係止凹凸部35およびこれに噛み合う前記座金33の座金凹凸部36が前記外壁部材取付装置2の固定ボルト用長孔31の長径に対して斜めに配置されているため、座金33の外側を叩き前記固定ボルト用長孔の長径に対して垂直方向に押し出せば、即ち、図2においてA方向に押し出せば、カム作用によって前記外壁部材取付装置2を前記固定ボルト用長孔31の長径に沿って外壁部材W方向にスライドさせることができる。また、B方向に押し出せば、同様に、カム作用によって反外壁部材W方向にスライドさせることができる。このため、座金33の側縁を叩くことによってこの外壁部材取付装置2のスライド状態を微調整することができる。
【0049】
このため、前記固定ボルト12,12 を前記スライド孔11,11 を前記端沿(外壁部材設置縁)に沿ってスライドさせ、且つ、前記水平板部30、ひいては、前記外壁部材取付装置2を前記固定ボルト12,12 を基準として、前記端沿(外壁部材設置縁)に向かって進退させ、適宜位置において、前記固定ボルト12,12 に前記ナット34,34 を締め付ければ、前記頭部凹凸部(固定ボルト12,12 の頭部の)15,15 が前記埋設部材1の調整凹凸部14,14 に噛み合うととにも前記座金凹凸部(固定用座金33,33 の)36,36 が前記水平板部30の係止凹凸部35,35 に噛み合った状態で固定されるため、前記水平板部30、ひいては、前記外壁部材取付装置2は前記端沿(外壁部材設置縁)に沿ってスライドしないものである。
【0050】
なお、前記係止凹凸部(水平板部30の)35,35 のピッチは前記座金凹凸部(固定用座金33,33 の)36,36 のピッチの複数倍になるように形成されている。これは、前記係止凹凸部(水平板部30の)35,35 を鋳造によって成型しやすいようにしたためである。
【0051】
次に、図1、2において、51,51 は取付ボルト孔であり、前記垂直板部50に形成されている。この取付ボルト孔51,51 は前記水平板部30に向かって垂直方向に延びている(図1,図2を参照のこと)。
【0052】
53,53 は取付ボルトであり、取付用座金54,54 を介して前記取付ボルト用長孔51,51 を貫通し、取付補助具90にナット55,55 で止められている。そして、この取付補助具90は前記外壁部材にボルト・ナット91,91 止めされている。このため、前記垂直板部50,50 、ひいては、前記外壁部材取付装置2に対して、前記取付ボルト53,53 、ひいては、前記外壁部材は垂直方向に進退することができる。なお、92は支持ボルトであり、前記取付補助具90の上部に一体成型(例えば、鋳造)鋳造されたねじ座921 にネジ装着されている。この支持ボルト92は取付補助具90に対して、ネジ回転することによって進退し、その先端面を前記垂直板部(外壁部材取付装置2の)50の上端面に当接することによって、この垂直板部(外壁部材取付装置2の)50が前記取付補助具90の突出半球面93に対して揺動すること、ひいては、前記外壁部材の揺動を防止している。この突出半球面93は軋み音の削減のための対策であり、前記垂直板部(外壁部材取付装置2の)50側に一体鋳造されている。特に、鋳物で作った場合は、鋼材で作った製品に比べて、曲面形状が形成しやすく、その上、黒鉛の量が多いので潤滑効果があり、この結果、軋み音対策にもなる。
【0053】
なお、58は外壁部材取付装置2のリブであり、前記水平板部30と前記垂直板部50との間に一体鋳造されている。このリブ58は製品の補強構造を検討するにあたり最も有効なものであり、その配置は、鋳造成型時の溶湯の流れ、凝固形態を考慮して形状に合わせたものが作成できる。なお、この場合にはFEM解析が有効である。
【0054】
なお、図18〜22は第二実施例を示したものであり、前記外壁部材取付装置2を鉄骨(建築躯体)7に設置したものである。この場合、鉄骨7を貫通している前記固定用ボルト12は、図20〜22に示すように、その根幹部80が、前記前記固定ボルト用長孔31,31 内において回転不可能となるように、その断面が矩形(正方形)状に形成されている。また、振動によるガタツキを防止するために食いつきを良くする小リブ81が根幹部に形成され、固定ボルト12の締め付け力で相手側の壁体の端部に食い込んで固着することによってズレや歪みを防止している。
【0055】
この場合、固定ナット34,34 としては、第一実施例と同じものが使用されている。
なお、外壁部材取付装置2の構造も、第一実施例と同じ構造をしている。
【産業上の利用可能性】
【0056】
この発明は、水平板部の固定ボルト用孔に、建築躯体に突設した固定ボルトを貫通して座金を介してナット止めするのみで、前記座金の座金凹凸部と前記水平板部の係止凹凸部が圧接した状態で噛み合うため、その接触面積は、従来よりも広くなり、この結果、ハイテンションボルトの代わりに通常の同径のボルト(ハイテンションボルト以外のボルト)を使用しても大きな締め付けトルクでナット止めすることができる。設計現場における建築空間の有効利用を図る際に、ハイテンションボルトを使用する必要がないため、ハイテンションボルトを使用していた際に、ナットを適正に締め付けるために必要とした養生(ナットの接触面が風雨に晒されないようにする、又、油分が付着しないようにする)が不要となり、この結果、外壁部材取付け現場での作業が簡易になり、作業能率が向上するとともに作業コストの高額化を防止することができる。よって、建築躯体に外壁部材を設置する際に利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1はこの発明に係る外壁部材取付装置の第一実施例の正面断面図である。
【図2】図2は平面図である。
【図3】図3は左側面図である。
【図4】図4は図1における「係止凹凸部」の説明図である。
【図5】図5は同「座金」の説明図である。
【図6】図6は図5のVI−VI線断面図である。
【図7】図7は図1で使用されている「固定ボルト」の拡大図である。
【図8】図8は同底面図である。
【図9】図9は同右側面図である。
【図10】図10は図1におけるX部の拡大断面図である。
【図11】図11は図2における埋込部材の正面図である。
【図12】図12は同右側面図である。
【図13】図13は図11におけるXIII−XIII断面図である。
【図14】図14図は図11におけるXIV−XIV断面図である。
【図15】図15は図13におけるXV矢視における「調整凹凸部」の説明図である。
【図16】図16は図15における「調整凹凸部」の拡大図である。
【図17】図17は第二実施例の図1に相応する図である。
【図18】図18は同図2に相応する図である。
【図19】図19は同3に相応する図である。
【図20】図20は同図7に相応する図である。
【図21】図21は同図8に相応する図である。
【図22】図22は同図9に相応する図である。
【図23】図23は第一実施例の分解斜視図である。
【図24】図24は第一実施例の改良断面図である。
【符号の説明】
【0058】
C … 建築躯体
1 … 埋設部材
11 … スライド孔
12 … 固定ボルト
121 … 固定ボルト12,12 根幹部
13 … 固定ボルト12,12 の頭部
14 … 調整凹凸部(埋設部材1の)
15 … 頭部凹凸部(固定ボルト12の頭部13の)
16 … カバー材
161 … 小孔
17 … アンカー杭
18 … ボルト
2 … 支持部材
30 … 水平板部(支持部材の)
31 … 固定ボルト用長孔
33 … 固定用座金(座金)
331 … 凸条
34 … ナット
341 …雌ねじ部
342 … 把持部 343 … 周溝
35 … 係止凹凸部(水平板部の)
351 … 凸条
36 … 座金凹凸部(固定用座金の)
50 … 垂直板部(支持部材の)
51 … 取付ボルト孔(垂直板部の)
53 … 取付ボルト
55 … ナット
58 … リブ
7 … 鉄骨(建築躯体)
80 … 固定用ボルト12の根幹部
81 … 小リブ
90 … 取付補助具
91 … ボルト・ナット
92 … 支持ボルト
921 … ねじ座
93 … 突出半球部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築躯体に設置される水平板部と、外壁部材を取り付けるための垂直板部とをL字状に連設し、
前記水平板部に固定ボルト用孔を設け、この固定ボルト用孔に、建築躯体に突設した固定ボルトを貫通し座金を介してナット止めすることにより、前記外壁部材を前記建築躯体に設置する外壁部材取付装置において、
前記座金の裏面に座金凹凸部を設けるとともに前記水平板部の表面における前記固定ボルト用孔の周縁に前記座金凹凸部と噛み合う係止凹凸部を設けたことを特徴とする外壁部材取付装置。
【請求項2】
前記係止凹凸部が前記水平板部とは別体であり、前記水平板部に着脱可能に載置固定されていることを特徴とする請求項1の外壁部材取付装置。
【請求項3】
前記外壁部材取付装置を鋳造によって一体成形したことを特徴とする請求項1又は請求項2の外壁部材取付装置。
【請求項4】
前記水平板部における係止凹凸部の凸部のピッチが前記座金における座金凹凸部のピッチの同数又は複数倍であるか、又、その反対の組み合わせであることを特徴とする請求項1の外壁部材取付装置。
【請求項5】
前記固定ボルト用孔が垂直板部に向かって延びている長孔であり、且つ、前記水平板部における係止凹凸部およびこれに噛み合う前記座金の座金凹凸部がこの固定ボルト用孔の長径に対して斜めに配置されていることを特徴とする請求項1の外壁部材取付装置。
【請求項6】
前記建築躯体がコンクリートに埋設された埋設部材であり、且つ、前記固定ボルトがT字固定ボルトであり、前記埋設部材にスライド孔が形成されているともにこのスライド孔に下方から前記T字固定ボルトが貫通し、このT字固体ボルトの頭部の裏面に頭部凹凸部が設けられ、且つ、前記埋設部材におけるスライド孔の周縁にこのT字固定ボルトの頭部凹凸部と噛み合う調整凹凸部が設置されていることを特徴とする請求項1の外壁部材取付装置。
【請求項7】
前記調整凹凸部が前記埋設部材とは別体であり、前記埋設部材に着脱可能に載置固定されていることを特徴とする請求項6の外壁部材取付装置。
【請求項8】
前記固定ボルトの頭部凹凸部が当該頭部の外側に向かってボルト先端方向に斜め傾斜していることを特徴とする請求項6の外壁部材取付装置。
【請求項9】
前記建築躯体としてのコンクリートに埋設される埋設部材はアンカー杭部を有し、このアンカー杭部を取替え可能にしたことを特徴とする請求項1の外壁部材取付装置。
【請求項10】
前記固定ボルトのボルト根幹部が矩形状に形成されていることを特徴とする請求項1の外壁部材取付装置。
【請求項11】
前記固定ボルトの頭部の内側にボルト方向に向いているリブが形成されていることを特徴とする請求項1の外壁部材取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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