説明

外壁面材の取付け構造

【課題】外壁面材を取付け側に取り付けるための外壁面材に対する加工や成形を容易にかつコスト的に有利に行うことができ、しかも、取付け金物の製作コストも低く抑えることができる外壁面材の取付け構造を提供する。
【解決手段】外壁面材1の背面部に上下方向に延びる直線状の有底スリット3が設けられ、取付け側2に取り付けられた取付け金物4は、有底スリット3内に差し込まれるプレート部7を備え、該プレート部7は、有底スリット3を挟む側面部に弾接する又は食い込む切り起こし8等によるバネ突起を側面部に備え、該プレート部7が有底スリット3内に強制的に差し込まれて外壁面材1が取付け側2に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁面材の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、窯業系の外壁面材を、屋外側の面部をキズ付けることなく、パネルフレーム等の取付け側に取り付ける取付け構造として、従来より、外壁面材の背面部に有底の丸穴を形成すると共に、外壁面材を取り付ける取付け側に前記丸孔に嵌合する嵌合用筒部を備えた取付け金物を設け、該取付け金物の筒部を外壁面材の丸孔に強制的に嵌め込んだ状態にすることで外壁面材を取付け側に取り付ける構造が提案されている。
【特許文献1】特開2000−265645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような取付け構造では、ルータービットを用い、外壁面材の背面部に多数の丸孔を研削加工しなければならず、手間を要すると共に、コストも高くついてしまうという問題があった。
【0004】
また、取付け金物についても、外壁面材側の丸孔に嵌合させる筒部を備えさせなければならず、しかも、そのような筒部に、丸孔を囲む周面部と係合する部分を備えさせなければならず、取付け金物の製作コストが高くついてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、外壁面材を取付け側に取り付けるための外壁面材に対する加工や成形を容易にかつコスト的に有利に行うことができ、しかも、取付け金物の製作コストも低く抑えることができる外壁面材の取付け構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、外壁面材の背面部に直線状の有底スリットが設けられると共に、該外壁面材を取り付ける取付け側に取付け金物が設けられ、
該取付け金物は、前記有底スリット内に差し込まれるプレート部を備えると共に、該プレート部の側面部には、前記有底スリットを挟む側面部に弾接する又は食い込むバネ突起が備えられ、
該取付け金物のプレート部が外壁面材の有底スリット内にバネ突起の弾性付勢力に抗して強制的に差し込まれることで、外壁面材が取付け側に取り付けられていることを特徴とする外壁面材の取付け構造によって解決される(第1発明)。
【0007】
この構造では、取付け金物のプレート部と、外壁面材の有底スリットを挟む側面部との、バネ突起による結合力によって、外壁面材を取付け側にしっかりと取り付けることができるのはもちろん、外壁面材の背面部には、直線状の有底スリットを設ければよいので、外壁面材を取付け側に取り付けるための外壁面材に対する加工や成形を容易にかつコスト的に有利に行うことができる。また、取付け金物には、このような直線状の有底スリットに差し込むプレート部を備えさせればよく、しかも、そのようなプレート部にバネ突起を備えさせればよいので、取付け金物の製作コストも低く抑えることができる。
【0008】
第1発明において、前記有底スリットが外壁面材の背面部に上下方向に延びるよう備えられ、取付け金物のプレート部が垂直に向けられて有底スリット内に差し込まれているとよい(第2発明)。この場合は、取付け状態において、外壁面材の自重を、取付け金物のプレート部にしっかりと支えさせることができる。
【0009】
第1,第2発明において、前記バネ突起は、プレート部の切り起こし部で形成され、該切り起こし部は、プレート部との連接部をプレート部の先端側に、切り起こし部の先端側をプレート部の基端側に備えたものからなっているのもよい(第3発明)。この場合は、プレート部を有底スリットに容易に差し込むことができると共に、差し込んだ後は、外壁面材に屋外方向の力が働いても、切り起こし部の地獄止め作用によって、外壁面材の外れをしっかりと阻止することができる。
【0010】
第1,第2発明において、前記バネ突起は、プレート部の切り起こし部で形成され、該切り起こし部は、一辺を垂直、もう一辺を前記一辺の端部からプレート部の先端側に水平に延ばしたL形の切込み部をプレート部の面内に形成し、L形の切込み部で囲まれた部分をその先端側がプレート部の基端側を向くように起こしたものからなって、前記L形切込み部の垂直辺部を水平辺部の下方に備えた切込み部と、L形切込み部の垂直辺部を水平辺部の上方に備えた切込み部の、いずれか一方又は両方を備えているのもよい(第4発明)。
【0011】
この場合は、プレート部を有底スリットに容易に差し込むことができると共に、差し込んだ後は、外壁面材に屋外方向の力や、下方及び/又は上方への力が働いても、切り起こし部の地獄止め作用によって、外壁面材の外れやズレをしっかりと阻止することができる。
【0012】
特に、L形切込み部の垂直辺部を水平辺部の下方に備えた切込み部と、L形切込み部の垂直辺部を水平辺部の上方に備えた切込み部の両方を備えている場合は、工場で取付け側に外壁面材を取り付けて外壁パネルとし、これを現場に搬送して建方を行う場合でも、切り起こし部の地獄止め作用によって、外壁面材と取付け側とをしっかりとした一体化状態に保持することができる。
【0013】
なお、現場で外壁面材の取付けを行う場合などにおいては、L形切込み部の垂直辺部を水平辺部の下方に備えた切込み部を備えさせ、L形切込み部の垂直辺部を水平辺部の上方に備えた切込み部を省略するようにしてもよいし、両方備えさせるようにしてもよい。
【0014】
第1〜第4発明において、前記取付け金物のプレート部の先端部が凸円弧状に形成されているのもよい(第5発明)。この場合は、プレート部の先端凸円弧状部分の中央部を直線状の有底スリットに差し込めば、残る先端凸円弧状部分が有底スリット内に案内されて差し込まれ、有底スリット内へのプレート部の差込み操作を容易にすることができる。
【0015】
第1〜第4発明において、前記外壁面材と取付け側とが、それらの間に介設された接着剤で接合されているとよい(第6発明)。この場合、取付け金物と接着剤とに、取付け側への外壁面材の取付け能力を補い合わせることができて、取付け安定性の高いしっかりとした取付け状態を形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上のとおりのものであるから、外壁面材を取付け側に取り付けるための外壁面材に対する加工や成形を容易にかつコスト的に有利に行うことができ、しかも、取付け金物の製作コストも低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1〜図3に示す第1実施形態の構造は、外壁面材1が窯業系の面材からなり、図3及び図1(ロ)(ハ)に示すように、外壁面材1を取り付ける取付け側2は、パネルフレーム2aの屋外側にグラスウールボード2bが備えられると共に、その外側の左右と中央部の位置にスチレンボード2c…が互いに間隔をおいて上下方向に延びるように備えられたものからなっている。
【0019】
そして、外壁面材1の背面部には、取付け側2のスチレンボード2c…に対応する各位置において、該外壁面材1の上端から下端までを上下方向に連続して延びる直線状の有底スリット3…が設けられると共に、取付け側2の各スチレンボード2c…には、取付け金物4が複数、上下方向に間隔をおくようにしてビス5…で取り付けられている。
【0020】
各取付け金物4は、図1に示すように、取付け側2のスチレンボード2cに取り付けられるベース部6と、ベース部6から立ち上げられたプレート部7とを備えており、プレート部7は、その先端部が上下方向に直線状をしていて、該直線状先端部に、バネ突起としての切り起こし部8…が設けられている。該切り起こし部8…は、プレート部7の先端部に基端方向に向けた切込みを入れ、該切込みを挟む間の部分、及び、最側部の切込み部の外側の部分を起こしたもので、プレート部7との連接部をプレート部7の先端に、切り起こし部8の先端側をプレート部7の基端側に備えたものからなっていて、切込み後の起こし角度は、鈍角の大きな角度にされており、各切り起こし部8…は、プレート部7を挟む一方の側に切り起こされたものと、プレート部7を挟むもう一方の側に切り起こされたものとを備え、それらが、プレート部7の直線状先端部において、上下方向に交互配置で備えられている。
【0021】
取付け側2への外壁面材1の取付けは、取付け側2のスチレンボード2cに接着剤9を塗布したのち、各取付け金物4…のプレート部7を、外壁面材1の各有底スリット3…内に切り起こし部8…の弾性復元力に抗して強制的に差し込んでいき、スチレンボード2cと外壁面材1とを接着剤9で接着させるというようにして行えば、取付け金物4のプレート部7と有底スリット3を挟む側面部との切り起こし部8…による結合力によって、また、接着剤9による接着力によって、外壁面材1が取付け側2にしっかりと取り付けられる。
【0022】
上記の取付け構造によれば、外壁面材1の背面部には、直線状の有底スリット3…を設けるだけでよいので、外壁面材1を取付け側2に取り付けるための外壁面材1に対する加工や成形を容易にかつコスト的に有利に行うことができる。また、取付け金物4についても、このような直線状の有底スリット3に差し込むプレート部7を備えさせればよく、しかも、そのようなプレート部7に切り起こし部8…を備えさせればよいので、取付け金物4の製作コストも低く抑えることができる。
【0023】
また、上記の実施形態では、各有底スリット3…が外壁面材1の背面部に上下方向に延びるよう備えられ、各取付け金物4…のプレート部7が垂直に向けられて有底スリット3内に差し込まれているので、取付け状態において、外壁面材1の自重を、各取付け金物4…のプレート部7にしっかりと支えさせることができる。
【0024】
更に、本実施形態では、取付け金物4のプレート部7に備えさせるバネ突起として、切り起こし部8…を採用し、各切り起こし部8…は、プレート部7との連接部をプレート部7の先端側に、切り起こし部8の先端側をプレート部7の基端側に備えたものからなっているので、外壁面材1の取付けにおいて、プレート部7を有底スリット3に容易に差し込むことができると共に、差し込んだ後は、外壁面材1に屋外方向の力が働いても、地獄止め作用によって、外壁面材1の外れをしっかりと阻止することができる。
【0025】
また、本実施形態では、外壁面材1と取付け側2とは、取付け金物4…によるほか、それらの間に介設された接着剤9によっても接合されているので、取付け金物4と接着剤9とに、取付け側2への外壁面材1の取付け能力を補い合わせることができて、取付け安定性の高いしっかりとした取付け状態を形成することができる。
【0026】
図4に示す第2実施形態の構造では、取付け金物4のプレート部7の先端部10が凸円弧状に形成されている。また、バネ突起としての切り起こし部8が、プレート部7の面内において、プレート部7との連接部をプレート部7の先端側に、切り起こし部8の先端側をプレート部7の基端側に備えたものからなっていて、切込み後の起こし角度は、鋭角の小さい角度にされている。その他は、第1実施形態と同様である。
【0027】
この構造では、取付け金物4のプレート部7の先端側10が凸円弧状に形成されているので、プレート部7の先端凸円弧状部分10の中央部を直線状の有底スリット3に差し込めば、残る先端凸円弧状部分が有底スリット3内に案内されて差し込まれ、有底スリット3内へのプレート部7の差込み操作を容易にすることができる。
【0028】
また、上記のような切り起こし部8の採用によって、第1実施形態の場合と同様に、外壁面材1の取付けにおいて、プレート部7を有底スリット3に容易に差し込むことができると共に、差し込んだ後は、外壁面材1に屋外方向の力が働いても、地獄止め作用によって、外壁面材1の外れをしっかりと阻止することができる。
【0029】
図5に示す第3実施形態の構造では、各切り起こし部8が、図5(イ)に示すように、一辺8aを垂直、もう一辺8bを前記一辺8aの端部からプレート部7の先端側に水平に延ばしたL形の切込み部をプレート部7の面内に形成し、L形の切込み部8a,8bで囲まれた部分8cを鋭角の小さい角度に起こしたものからなっていて、L形切込み部の垂直辺部8aを水平辺部8bの下方に備えた切り起こし部と、L形切込み部の垂直辺部8aを水平辺部8bの上方に備えた切り起こし部との両方が混在状態に備えられている。その他は、第2実施形態と同様である。
【0030】
この構造では、プレート部7を有底スリット3に容易に差し込むことができると共に、差し込んだ後は、外壁面材1に、図5(ロ)(ハ)(ニ)に示すように、屋外方向や下方、上方への力が働いても、各切り起こし部8…の地獄止め作用によって、外壁面材1の外れやズレをしっかりと阻止することができる。
【0031】
なお、切り起こし部は、一辺8aを垂直、もう一辺8bを前記一辺8aの端部からプレート部7の基端側に水平に延ばしたL形の切込み部をプレート部7の面内に形成し、L形の切込み部8a,8bで囲まれた部分8cを鈍角の大きな角度に起こしたものからなっていてもよい。
【0032】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、外壁面材の背面部に、その上端から下端にわたる連続した直線状の有底スリットを設けた場合を示したが、直線状の有底スリットが上下方向に断続的に備えられたものからなっていてもよい。
【0033】
また、上記の実施形態では、取付け金物が上下方向に間隔をおいて複数備えられている場合を示したが、外壁面材の背面側の直線状有底スリットとの関係や、外壁面材の上下方向の寸法との関係において、取付け金物が上下方向に一つ備えられたものに構成されてもよい。
【0034】
また、上記の実施形態では、外壁面材が窯業系の面材で、バネ突起が切り起こし部からなる場合を示したが、外壁面材やバネ突起として、その他のものが採用されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態の構造を示すもので、図(イ)は取付け金物の斜視図、図(ロ)は外壁面材と取付け側とを分離状態にして示す断面側面図、図(ハ)は図(ロ)のI−I線断面矢視図である。
【図2】図(イ)は取付け状態の断面平面図、図(ロ)は同断面側面図、図(ハ)は要部拡大断面平面図である。
【図3】図(イ)は取付け側の正面図、図(ロ)は外壁面材の背面図である。
【図4】第2実施形態の構造を示すもので、図(イ)は取付け金物の斜視図、図(ロ)は外壁面材と取付け側とを分離状態にして示す断面側面図、図(ハ)は取付け状態の断面側面図、図(ニ)は取付け状態の断面平面図である。
【図5】第3実施形態を示すもので、図(イ)は取付け金物の側面図、図(ロ)〜図(ニ)は取付け状態と、切り起こし部の作用を示す断面側面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…外壁面材
2…取付け側
3…直線状の有底スリット
4…取付け金物
7…プレート部
8…切り起こし部(バネ突起)
9…接着剤
10…凸円弧状部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁面材の背面部に直線状の有底スリットが設けられると共に、該外壁面材を取り付ける取付け側に取付け金物が設けられ、
該取付け金物は、前記有底スリット内に差し込まれるプレート部を備えると共に、該プレート部の側面部には、前記有底スリットを挟む側面部に弾接する又は食い込むバネ突起が備えられ、
該取付け金物のプレート部が外壁面材の有底スリット内にバネ突起の弾性付勢力に抗して強制的に差し込まれることで、外壁面材が取付け側に取り付けられていることを特徴とする外壁面材の取付け構造。
【請求項2】
前記有底スリットが外壁面材の背面部に上下方向に延びるよう備えられ、取付け金物のプレート部が垂直に向けられて有底スリット内に差し込まれている請求項1に記載の外壁面材の取付け構造。
【請求項3】
前記バネ突起は、プレート部の切り起こし部で形成され、該切り起こし部は、プレート部との連接部をプレート部の先端側に、切り起こし部の先端側をプレート部の基端側に備えたものからなっている請求項1又は2に記載の外壁面材の取付け構造。
【請求項4】
前記バネ突起は、プレート部の切り起こし部で形成され、該切り起こし部は、一辺を垂直、もう一辺を前記一辺の端部からプレート部の先端側に水平に延ばしたL形の切込み部をプレート部の面内に形成し、L形の切込み部で囲まれた部分をその先端側がプレート部の基端側を向くように起こしたものからなって、前記L形切込み部の垂直辺部を水平辺部の下方に備えた切込み部と、L形切込み部の垂直辺部を水平辺部の上方に備えた切込み部の、いずれか一方又は両方を備えている請求項1又は2に記載の外壁面材の取付け構造。
【請求項5】
前記取付け金物のプレート部の先端部が凸円弧状に形成されている請求項1乃至4のいずれか一に記載の外壁面材の取付け構造。
【請求項6】
前記外壁面材と取付け側とが、それらの間に介設された接着剤で接合されている請求項1乃至5のいずれか一に記載の外壁面材の取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−285888(P2008−285888A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131508(P2007−131508)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】