説明

外用鎮痛組成物

【課題】関節部位の可動域を制限することがなく、持続的な鎮痛効果を得ることができる製剤を提供する。
【解決手段】組成物100重量%中、清涼化成分6〜11重量%、多価アルコール40〜90重量%を配合し、さらに清涼化成分1重量部に対し、ノナン酸類を0.001〜0.02重量部配合することを特徴とする外用鎮痛組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は、外用鎮痛組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、関節部位の可動域を制限することがなく、関節痛の持続的な鎮痛効果に優れた外用鎮痛組成物に関する。
【従来の技術】
【0002】
関節は、骨と骨との連結部位であり、膝、肘、肩、腰などを含む体中のいたるところに存在する。関節を隔てた骨同士は関節軟骨を介在して接し、筋肉や靭帯によって構成されている。
【0003】
関節は動作時に屈曲伸展を繰り返すので、そこにかかる負担は非常に大きなものである。故に、関節軟骨の磨り減り、筋肉の脆弱化、血行障害などを生じることとなり、種々痛みを感じるようになる。広義に関節痛とよばれる症状である。
【0004】
本症状の改善を目的としては、磨り減った軟骨の補充が有効とされているが、まずは炎症や痛みを改善することが最優先とされている。炎症や痛みは動作時のバランスを欠く結果となり、更なる患部の拡大、症状の悪化を招くからである。このような症状に対し、鎮痛剤の外用による対処が行なわれてきているが、効果が一過性であり歩行・外出時に不安を感じるとか、あるいは剤型によっては可動域を制限されるので不快かつ日常的に対処できないなどの問題があった。
【0005】
特開平7-228537(特許文献1)において、トウガラシエキスを配合することで適度な温感刺激が持続する貼付剤を得ることができると記載されているが、関節痛のような持続的な痛みを伴う疾患に関して、持続的な鎮痛効果を示すには不十分であった。また、貼付剤は関節部位の可動域を制限するので、日常的な対処が困難であった。
【0006】
そのため、関節部位の可動域を制限することがなく、持続的な鎮痛効果を得ることができる製剤、特に、保形性の低いゲル剤が求められていた。
【特許文献1】特開平7-228537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、関節部位の可動域を制限することがなく、持続的な温熱を与えて関節痛の痛みを和らげ、かつ炎症の除去、血行の促進効果を併せ持ち、患部の新陳代謝を改善し、組織修復効果も期待できる関節痛治療に優れた外用鎮痛組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意検討を重ねた結果、ノナン酸類、清涼化成分及び多価アルコールを配合して外用剤とすることによって、優れた外用鎮痛組成物となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の外用鎮痛組成物を提供する。
(1)組成物100重量%中、清涼化成分6〜11重量%、多価アルコール40〜90重量%を配合し、さらに清涼化成分1重量部に対し、ノナン酸類を0.001〜0.02重量部配合することを特徴とする外用鎮痛組成物。
(2)揮発性低級アルコールを含まないことを特徴とする前記(1)に記載の外用鎮痛組成物。
(3)ゲル剤であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の外用鎮痛書生物。
(4)塗布用製剤である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の外用鎮痛組成物。
【0010】
[発明の実施の形態]
本発明の外用鎮痛組成物に配合するノナン酸類は下記の構造を有する血行促進作用を有する化合物である。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、nは7〜10であり、mは15〜20である)
ノナン酸類としては、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルカプサイシン、ホモカプサイシン、オクタン酸バニリルアミド、ノナン酸バニリルアミド等が挙げられる。好ましいノナン酸類はカプサイシン、ノナン酸バニリルアミドである。
【0013】
本発明においてノナン酸類は、外用鎮痛組成物100重量%中、0.001重量%以上が好ましく、0.008〜0.2重量%がより好ましく、0.012〜0.2重量%がさらに好ましい。
【0014】
清涼化成分は清涼感を付与する成分であり、リモネン、テルピノレン、メンタン、テルピネンなどのp−メンタン及びそれから誘導される単環式モノテルペン系炭化水素化合物等のテルペン系炭化水素化合物、l−メントール、イソプレゴール、3,l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、1−(2−ヒドロキジフェニル)−4−(3−ニトロフェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロキシピリミジン−2−オン、エチルメンタンカルボキサミド、p−メンタン−3,8−ジオール、3,8−ジヒドロキシ−p−メンタン−3−9−ジオール、トリアルキル置換シクロヘキサンカルボキシアマイド等メントール類縁化合物等が挙げられる。これらは1種のみを使用でき、または2種以上を組み合わせて使用することもできる。好ましい清涼化成分はl−メントールである。
【0015】
本発明において清涼化剤は、外用鎮痛組成物100重量%中、6〜11重量%が好ましい。さらに、本発明の外用鎮痛組成物においては、清涼化成分1重量部に対し、ノナン酸類が0.001〜0.02重量部であることが好ましく、0.002〜0.018重量部であることがより好ましく、0.002〜0.016重量部であることがさらに好ましい。このような範囲とすることで、患部に適度な冷感を与えつつ、ノナン酸の温熱効果を持続させることができ、効果的に痛みを緩和させることができる。
【0016】
多価アルコールは溶剤、溶解補助剤として知られている成分であり、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、キシリトールなどが好ましく、特にプロピレングリコール及びポリプロピレングリコールが好ましい。多価アルコールの配合量は、外用鎮痛組成物100重量%中、40〜90重量%、好ましくは40〜70重量%である。
【0017】
また、本発明の外用鎮痛組成物には、多価アルコールに加えて、水、またはエタノール、メタノール、プロパノールなどの低級アルコールなど溶剤を配合することができる。本発明においては、温熱持続性の観点から、揮発性低級アルコールを含まないことが好ましい。
【0018】
本発明の外用鎮痛組成物には、その他の任意成分として剤型に応じた適宜な成分を添加し、各製剤の通常の方法で調製することができる。本発明の外用鎮痛組成物は関節などに適用することから、関節部位の可動域を制限せず、かつ関節痛の持続的な鎮痛効果を得ることができる製剤であるゲル剤、又は液剤、クリーム剤、軟膏剤などの塗布用製剤とすることが好ましく、特に保形性の低いゲル剤とすることが好ましい。
【0019】
本発明の外用鎮痛組成物には、粘稠化剤を配合して保形の低いゲル剤とすることが可能である。粘稠化剤は水系粘稠化剤が好ましく、特にポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン・ビニルアセテート共重合体、カルボキシビニル共重合体、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース塩、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、ペクチン、ポリエチレンオキサイド、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体、カルボキシメチルスターチ等の1種又は2種以上の水溶性高分子物質を用いることができ、特にヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系高分子が好ましい。粘稠化剤の配合量は、外用鎮痛組成物100重量%中、0.3〜30重量%、好ましくは0.75〜20.75重量%である。
【0020】
また、本発明の外用鎮痛組成物をゲル剤として製する場合、粉末類を配合することで、剤のべた付を抑え、使用感を高めることができる。粉末類は一般にいう粉体であり、常温で固形のものである。無機粉体としては、タルク、カオリン、ベントナイト及びケイ酸アルミニウムマグネシウム等の層状珪酸塩鉱物、酸化チタン、酸化亜鉛等があげられる。有機粉体としては、ナイロン、シリカ、ポリメタクリル酸メチル等の球状粉体、ポリエチレンビーズ、セルロース粉末、トウモロコシデンプン、高吸水性高分子(ポリアクリル酸デンプンなど)等が挙げられる。トウモロコシデンプン、合成ケイ酸アルミニウム、軽質無水ケイ酸などが特に好ましい。
【0021】
本発明の外用鎮痛組成物は、粘稠化剤としてヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系高分子を添加することにより好ましいゲル剤となるが、この他にもグリセリンモノオレエート等のゲル化剤を添加することができ、ゲル剤を調製する場合、常法によって製造し得、例えばゲル化剤以外の上記各成分を上記溶剤に順次添加、溶解した後、ゲル化剤を添加してゲル化させることによって調製することができる。
【0022】
軟膏剤の場合、基剤として、グリコール類、界面活性剤、水溶性高分子化合物などを配合することができ、具体的には、例えばラノリン、硬化油、レシチン、プラスチベース、流動パラフィン、ミツロウ、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、シリコン油等、グリコール類として、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等、水溶性高分子化合物として、例えばカルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸等を配合することができる。
【0023】
軟膏剤として調製する場合、常法によって製造し得、例えば上記各成分を上記溶剤に順次添加し、適宜時間混練することによって調製することができる。
本発明の外用鎮痛組成物を液剤として調製する場合、通常の液剤の調製方法により調製することができる。例えば、各成分をアルキレングリコール及びポリアルキレングリコールに添加し、必要に応じて加熱し、溶解することによって調製することができる。
【0024】
本発明の外用鎮痛組成物は、上記の成分に加えて、他の薬効成分や各種添加剤(保湿剤、色素、香料、界面活剤、pH調整剤、酸化防止剤等)を含有しても良い。これらの成分は、本発明の効果を妨げない範囲で配合される。
【0025】
他の薬効成分としては、例えば、フルルビプロフェン、フェルビナク、ピロキシカム、インドメタシン、サリチル酸グリコールなどの非ステロイド系抗炎症剤、塩酸プロカイン、リドカインなどの局所麻酔剤、ペニシリン類、セファロスポリン類、アミノグリコシド類、マクロライド類などの抗生物質、グリセオフルビン、アンホテリシンBなどの抗真菌剤、ヒドロコルチゾン、ブレドニゾロンなどのステロイド系消炎剤、クロルフェニラミン、オキサトミドなどの抗アレルギー・抗ヒスタミン剤、クロニジン、カプトプリルなどの抗高血圧剤、ニトログリセリン、硝酸イソソルビットなどの冠血管拡張剤、ニフェジピン、ニカルジピンなどのカルシウム拮抗剤、ピンドロール、プロプラノールなどのβブロッカー、デオフィリン、ハイドロサイアザイドなどの降圧利尿剤、塩酸ドパミン、ジキタリスなどの強心剤、バルプロ酸ナトリウム、フェニトインなどの抗てんかん剤、スコポラミンなどの抗めまい剤、ハロペリドールなどの抗精神病剤、塩酸フルラゼパム、フェノバルビタールなどの睡眠調整剤、5−フルオロウラシル、マイトマイシンC、ブレオマイシンなどの抗悪性腫瘍剤、エストラジオール、インスリンなどのホルモン剤、ビタミンEなどのビタミン類等を挙げることができる。
【0026】
他の添加剤としては、タルク、カオリン、ベントナイト及びケイ酸アルミニウムマグネシウム等の層状珪酸塩鉱物、酸化チタン、酸化亜鉛、ナイロン、シリカ、ポリメタクリル酸メチル等の球状粉体、ポリエチレンビーズ、セルロース粉末、トウモロコシデンプン、高吸水性高分子(ポリアクリル酸デンプンなど)などの粉末類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムなどの保湿剤、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート)、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、グリセリルモノステアレート、イソオクタン酸グリセリン、グリセリルモノミリステアレート)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えば、ジグリセリルモノオレエート、テトラグリセリルモノステアレート)、プロピレングリコール脂肪酸エステル(例えば、プロピレングリコールモノステアレート)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(例えば、ポリオキシエチレン(5)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油)などの界面活性剤、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、クエン酸、塩酸などのpH調整剤等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ノナン酸類、清涼化成分及び多価アルコールを配合して外用剤とすることにより、鎮痛効果に優れた外用鎮痛組成物とすることができる。
【実施例】
【0028】
以下において、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
外用組成物の調製
下記の表1〜6に示す割合で以下の方法により製剤(実施例1〜29及び比較例1〜10)を調製した。
(1)水、多価アルコールおよび/または無水エタノールにノナン酸類とl−メントールを溶解させる。
(2)溶解させたものにヒドロキシプロピルセルロースを加え、1時間撹拌する。
(3)粉末類を分散させて、撹拌する。
【0029】
なお、各表中の各成分の数値は重量部であり、ノナン酸バニリルアミド及びl−メントールは長岡実業株式会社、カプサイシンはアルプス薬品工業、プロピレングリコールは株式会社ADEKA、1,3−ブチレングリコールは協和発酵ケミカル株式会社、ポリエチレングリコール200及びポリエチレングリコール400は三洋化成工業株式会社、ポリプロピレングリコール400は純正化学株式会社、無水エタノールはコニシ株式会社、合成ケイ酸アルミニウム(重質)は協和化学工業株式会社、トウモロコシデンプンは日澱化学株式会社、軽質無水ケイ酸は富士シリシア化学株式会社、ヒドロキシプロピルセルロースは信越化学工業株式会社からそれぞれ購入したものを使用した。
評価者
膝関節に痛みをもつ対象者10名に各例の製剤を適用して、鎮痛効果を評価した。
鎮痛効果の評価
塗布後1時間までの鎮痛効果について、5段階で評価(最高5点、最低1点)し、35点以上を◎、30点以上〜34点未満を○、30点未満を×として評価した。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
【表4】

【0034】
【表5】

【0035】
【表6】

【0036】
表1〜3に示されるように、ノナン酸類、清涼化成分および多価アルコールのいずれかを欠く比較例1〜3の組成物、組成物100重量%中の清涼化成分が6〜11重量%の範囲外である比較例4および5の組成物、組成物中の多価アルコール40〜90重量%の範囲外となっている比較例6の組成物、組成物中のノナン酸類/清涼化成分が0.001よりも小さい比較例7および9の組成物、ならびにノナン酸類/清涼化成分が0.02よりも大きい比較例8および10の組成物では、好適な鎮痛効果が得られなかった。
【0037】
一方、上記3成分を全て含み、組成物中のノナン酸類/清涼化成分の比が0.001〜0.02である実施例1〜14の組成物は、鎮痛効果は好適なものであった。また、実施例1は低級アルコールを含まないので、低級アルコールを含む実施例14よりも鎮痛効果が優れていた。
【0038】
また、実施例1〜13においては、精製水の量によって効果の差は見られなかったが、べた付きなどの使用感については、多価アルコールを75重量%以上含む実施例6および8の組成物よりも、実施例1〜5、7、および9〜13の組成物が優れていた。
【0039】
さらに、表4〜6にしたがって実施例15〜29の外用鎮痛組成物を製したところ、鎮痛効果について、実施例1〜4同様に優れた効果が認められた。
以下に処方例を示す。
処方例1〜11:液剤
表7に記載の処方例に従い、常法通り調製して液剤を調製した。
【0040】
処方例12〜16:ゲル化剤
表8に記載の処方例に従い、常法通り調製してゲル剤を調製した。
処方例17:軟膏剤
表8に記載の処方例に従い、常法通り調製して軟膏剤を調製した。
【0041】
【表7】

【0042】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物100重量%中、清涼化成分6〜11重量%、多価アルコール40〜90重量%を配合し、さらに清涼化成分1重量部に対し、ノナン酸類を0.001〜0.02重量部配合することを特徴とする外用鎮痛組成物。
【請求項2】
揮発性低級アルコールを含まないことを特徴とする請求項1に記載の外用鎮痛組成物。
【請求項3】
ゲル剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の外用鎮痛組成物。
【請求項4】
塗布用製剤である請求項1〜3のいずれかに記載の外用鎮痛組成物。

【公開番号】特開2010−83824(P2010−83824A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255825(P2008−255825)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】